説明

波長変換性樹脂組成物、波長変換型太陽電池封止材およびその製造方法、並びに、太陽電池モジュールおよびその製造方法

【課題】安定性と発電効率に優れる太陽電池モジュールを構成可能な波長変換性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】波長変換性樹脂組成物を、透明分散媒樹脂と、下記一般式(I)で表される蛍光物質と、を含んで構成する。



(一般式(I)中、Mは、Sr、Ca、La、Ce、Pr、Nb、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、およびYから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIは、Zn、Cu、Ag、およびAuから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIIは、Ga、In、Si、Ge、およびSnから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、xは0.00001より大きく0.2未満であり、yは0.1未満であり、zは0.1未満であり、aは0.05より大きく0.25未満であり、bは0.1より大きく0.4未満である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換性樹脂組成物、波長変換型太陽電池封止材およびその製造方法、並びに、太陽電池モジュールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン結晶系の太陽電池モジュールにおいては、表面の保護ガラス(カバーガラスともいう)は、耐衝撃性を重んじて強化ガラスが用いられており、封止材(通常、エチレン−ビニルアセテートコポリマーを主成分とする樹脂、充填材ともいう)との密着性をよくするために、片面はエンボス加工による凹凸模様が施されている。また、その凹凸模様は内側に形成されており、太陽電池モジュールの表面は平滑である(太陽光の導入効率を高めるため、外側にも凹凸形状が施されている場合もある)。また保護ガラスの下側には太陽電池セル、タブ線を保護封止するための封止材及びバックフィルムが設けられている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ところで、太陽電池の発電効率を向上させるために様々な提案がなされている。例えば、蛍光物質である希土類錯体を、封止材中に含有させ、太陽光スペクトルのうち、発電に寄与の少ない紫外域又は赤外域の光を波長変換することにより、発電に寄与の大きい波長域の光を発光する層を太陽電池受光面側に設ける手法は、多数提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに蛍光物質として無機材料を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−195674号公報
【特許文献2】特開2003−218379号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】濱川圭弘編「太陽光発電」―最新の技術とシステム―、2000年、株式会社シーエムシー
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池において、発電に寄与の少ない波長域の光を発電に寄与の大きい波長域の光に波長変換する方法としては、例えば、波長変換層に蛍光物質を含有させる方法が挙げられる。一般に結晶シリコン太陽電池セルは、350nmから感度を有し、450nm付近で感度最大となり、800nm付近まで十分な感度を有している。従って前記蛍光物質には、励起波長が300〜450nmであり、発光波長が450〜800nmであり、発光量子効率が高いことが求められる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、封止材として広く用いられているエチレンビニルアセテート(EVA)が加水分解によって酸を発生しやすく、この酸が、例えば蛍光物質として用いられる希土類錯体を加水分解して劣化させるという課題があった。
また特許文献2に記載の発明では、所望の特性を得ることが困難であり、十分な発電効率が得られない場合があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、安定性に優れ、良好な発電効率向上の効果を与えうる波長変換性樹脂組成物、これを用いた波長変換型太陽電池封止材およびその製造方法、並びに、該波長変換性樹脂組成物を含む光透過層を備える太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、蛍光物質として特定構造の無機蛍光物質を使用することが、安定性に優れ、高い発光量子効率で、所望の励起波長、蛍光波長の制御が可能となり、結晶シリコン太陽電池に対して良好な発電効率向上の効果を与えうることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 透明分散媒樹脂と、下記一般式(I)で表される無機蛍光物質と、を含む波長変換性樹脂組成物。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)中、Mは、Sr、Ca、La、Ce、Pr、Nb、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、およびYから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIは、Zn、Cu、Ag、およびAuから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIIは、Ga、In、Si、Ge、およびSnから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、xは0.00001より大きく0.2未満であり、yは0.1未満であり、zは0.1未満であり、aは0.05より大きく0.25未満であり、bは0.1より大きく0.4未満である)
【0011】
<2> 前記無機蛍光物質の含有率が、0.0001質量%以上1質量%以下である、前記<1>に記載の波長変換性樹脂組成物。
【0012】
<3> 前記<1>または<2>に記載の波長変換性樹脂組成物に由来する樹脂組成物層を備える波長変換型太陽電池封止材。
【0013】
<4> 前記樹脂組成物層、及び、前記樹脂組成物層以外の光透過性層からなるm個の層を備え、且つ、前記m個の層のそれぞれの屈折率を、光入射側から順にn、n、・・・、n(m−1)、nとした場合に、n≦n≦・・・≦n(m−1)≦nである、前記<3>に記載の波長変換型太陽電池封止材。
【0014】
<5> 太陽電池セルと、前記太陽電池セルの受光面側に配置された前記<3>または<4>に記載の波長変換型太陽電池封止材と、を有する太陽電池モジュール。
【0015】
<6> 下記一般式(I)で表される無機蛍光物質を透明分散媒樹脂に混合または分散して得られる波長変換性樹脂組成物を、シート状に形成するシート形成工程を有する波長変換型太陽電池封止材の製造方法。
【0016】
【化2】

【0017】
(一般式(I)中、Mは、Sr、Ca、La、Ce、Pr、Nb、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、およびYから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIは、Zn、Cu、Ag、およびAuから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIIは、Ga、In、Si、Ge、およびSnから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、xは0.00001より大きく0.2未満であり、yは0.1未満であり、zは0.1未満であり、aは0.05より大きく0.25未満であり、bは0.1より大きく0.4未満である)
【0018】
<7> 複数の光透過性層および太陽電池セルを有する太陽電池モジュールの製造方法であって、前記<3>または<4>に記載の波長変換型太陽電池封止材を、太陽電池セルの受光面側に配置して、前記光透過性層の1つを形成する工程を有する太陽電池モジュールの製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、安定性に優れ、良好な発電効率向上の効果を与えうる波長変換性樹脂組成物、これを用いた波長変換型太陽電池封止材およびその製造方法、並びに、該波長変換性樹脂組成物を含む光透過層を備える太陽電池モジュールおよびその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示すものとする。
【0021】
<波長変換性樹脂組成物>
本発明の波長変換性樹脂組成物は、透明分散媒樹脂の少なくとも1種と、下記一般式(I)で表される無機蛍光物質の少なくとも1種と、を含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
【0022】
【化3】

【0023】
一般式(I)中、Mは、Sr、Ca、La、Ce、Pr、Nb、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、およびYから選ばれる少なくとも1種の元素である。またMIIは、Zn、Cu、Ag、およびAuから選ばれる少なくとも1種の元素である。MIIIは、Ga、In、Si、Ge、およびSnから選ばれる少なくとも1種の元素である。
【0024】
また、xは0.00001より大きく0.2未満であり、yは0.1未満であり、zは0.1未満であり、aは0.05より大きく0.25未満であり、bは0.1より大きく0.4未満である。すなわち、x、y、z、aおよびbは以下の関係を満たす。
0.00001<x<0.2、y<0.1、z<0.1、0.05<a<0.25、0.1<b<0.4。
【0025】
蛍光物質として上記一般式(I)で表される無機蛍光物質を用いることで、太陽電池モジュールに適用したときに、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与の少ない波長域の光を発電に寄与の大きい波長域の光へ変換し、効率よく且つ安定的に太陽光を利用できる。さらに高温高湿下での安定性や、耐光性が向上し、太陽電池としての信頼性も向上する。
【0026】
[無機蛍光物質]
本発明における無機蛍光物質は上記一般式(I)で表されるように、BaMgAl1017:Eu,Mn系の無機蛍光物質であり、Baの一部が他の原子に置換されていることを特徴とする。本発明においてはさらにMgおよびAlの一部が他の原子に置換されていることが好ましい。
BaMgAl1017:Eu,Mn系の無機蛍光物質は、緑色発光蛍光体であって、300〜450nmに励起波長帯があり、蛍光波長は515nmであり、発光量子効率は86%と十分に高い。
【0027】
一方、無機蛍光物質としてYS:Eu赤色発光蛍光体が知られているが、励起波長は300〜400nmであり、励起波長がやや短波長であるため、波長変換性樹脂組成物に用いるには、やや不向きである。また無機蛍光物質としてYAl12:Ce黄色発光蛍光体が知られているが、350〜400nmの励起強度が小さく、波長変換性樹脂組成物に用いるには、不向きである。また無機蛍光物質としてCaS:Eu赤色発光蛍光体が知られているが、350〜400nmの励起強度が小さく、波長変換性樹脂組成物に用いるには、不向きである。
以上のように、蛍光が450〜800nmにある無機蛍光物質であっても、励起波長が300〜450nmにある無機蛍光物質は限られたものしかなく、その中でもBaMgAl1017:Eu,Mn系の無機蛍光物質は、波長変換性樹脂組成物に用いる無機蛍光物質として優れている。
【0028】
本発明における無機蛍光物質は、BaMgAl1017:Eu,Mn系の無機蛍光物質の中でも、Ba、Mg、およびAlの一部が、それぞれ特定の他の原子に置換されていることでさらに優れた蛍光特性を示すことができる。
【0029】
前記無機蛍光物質におけるBaサイトは、Sr、Ca、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、およびYからなる第1の元素群から選ばれる少なくとも1種の元素によってその一部が置換されている。中でも、励起波長、発光波長、量子効率の観点から、Sr、Ca、La、Tb、Ce、Tm、およびYbから選ばれる元素であることが好ましく、Sr、Ca、La、およびTbから選ばれる元素であることがより好ましく、SrおよびCaから選ばれる元素であることがさらに好ましい。
【0030】
また前記無機蛍光物質におけるBaサイトは、前記第1の元素群から選ばれる2種以上の元素でその一部が置換されていてもよい。例えば、SrとCaによって置換されていていることもまた好ましい。
【0031】
Baサイトの置換量は、一般式(I)におけるxが0.00001より大きく0.2未満、すなわちBaサイトの置換量は0.001モル%より大きく20モル%未満であれば特に制限されないが、0.001モル%より大きく10モル%以下であることが好ましく、0.001モル%より大きく1モル%以下であることがより好ましい。
xが0.00001以下では、発光輝度、励起波長等に対する十分な効果を得ることができない。また、0.2以上では発光輝度が低下する場合がある。
【0032】
本発明においては、励起波長、発光波長、量子効率の観点から、BaサイトがSr、Ca、La、およびTbから選ばれる元素の少なくとも1種によって、0.001モル%より大きく10モル%以下の範囲で置換されていることが好ましく、SrおよびCaから選ばれる元素の少なくとも1種によって、0.001モル%より大きく1モル%以下の範囲で置換されていることがより好ましい。
【0033】
また前記無機蛍光物質におけるMgサイトは、Zn、Cu、AgおよびAuからなる第2の元素群から選ばれる少なくとも1種の元素によってその一部が置換されていることが好ましい。中でも、励起波長、発光波長、量子効率の観点から、Zn、Cu、およびAgから選ばれる元素によってその一部が置換されていることが好ましく、ZnおよびCuから選ばれる元素によってその一部が置換されていることがより好ましい。
【0034】
Mgサイトの置換量は、一般式(I)におけるyが0.1未満、すなわちMgサイトの置換量は10モル%未満であれば特に制限されないが、Mgサイトの置換量が0.001モル%〜1モル%であることが好ましく、0.001モル%〜0.1モル%であることがより好ましい。
yが0.1以上では発光輝度が低下する場合がある。
【0035】
また前記無機蛍光物質におけるAlサイトは、Ga、In、Si、GeおよびSnからなる第3の元素群から選ばれる少なくとも1種の元素によってその一部が置換されていることが好ましい。中でも、励起波長、発光波長、量子効率の観点から、Ga、Si、およびGeから選ばれる元素によってその一部が置換されていることが好ましく、Ga、およびSiから選ばれる元素によってその一部が置換されていることがより好ましい。
【0036】
Alサイトの置換量は、一般式(I)におけるzが0.1未満、すなわちAlサイトの置換量は10モル%未満であれば特に制限されないが、Alサイトの置換量が0.001モル%〜1モル%であることが好ましく、0.001モル%〜0.1モル%であることがより好ましい。
zが0.1以上では発光輝度が低下する場合がある。
【0037】
前記一般式(I)におけるaは0.05より大きく0.25未満であるが、0.05より大きく0.2以下であることが好ましく、0.1〜0.15であることがより好ましい。またbは0.1より大きく0.4未満であるが、0.15〜0.35であることが好ましく、0.2〜0.3であることがより好ましい。
【0038】
前記無機蛍光物質は、無機化合物の製造に用いられる通常の製造方法で製造することができる。例えば、前記無機蛍光物質を構成する元素をそれぞれ含む化合物を、所定の割合で混合した後、焼成処理することで所望の構成を有する無機蛍光物質を製造することができる。
それぞれの元素を含む化合物としては、例えば、酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を挙げることができる。
【0039】
また前記無機蛍光物質の製造においては、必要に応じてフラックスを用いてもよい。フラックスとしては例えば、AlF、BaCl等を挙げることができる。前記無機蛍光物質の製造にフラックスを用いた場合には、F、Cl、Br、I等のハロゲン元素が一種あるいは複数種、無機蛍光物質中に少量混じることがある。
【0040】
また、前記一般式(I)で表される無機蛍光物質の製造においては、それぞれの原子の含有比率が、所望の構成比率から−10モル%〜+10モル%の範囲であれば、十分な発光輝度が得られる。
【0041】
焼成処理の条件としては、例えば1200〜1600℃で、1〜10時間とすることができる。また焼成処理は還元雰囲気下で行うことが好ましい。例えば、窒素−水素還元雰囲気下で行なうことが好ましい。窒素−水素還元雰囲気下の水素濃度は特に制限されないが、例えば、0.5〜4質量%とすることができる。
【0042】
波長変換性樹脂組成物における一般式(I)で表される無機蛍光物質の含有率は特に制限されないが、励起波長、発光波長、量子効率の観点から、0.0001質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.0005質量%以上0.05質量%以下であることがより好ましい。
0.0001質量%以上であることで発電効率がより向上する。また1質量%以下であると濃度消光により蛍光効率が低下することを抑制でき、さらに入射光の散乱による発電効率の低下を抑制できる。
【0043】
波長変換性樹脂組成物における一般式(I)で表される無機蛍光物質の粒子径は特に制限されないが、発光輝度と発電効率の観点から、体積平均粒子径が0.001μm〜100μmであることが好ましく、0.001μm〜1μmであることがより好ましい。
無機蛍光物質の粒子径は、ボールミル、ビーズミル、ジェットミルなどの粉砕機を用いて、常法により粉砕処理することで調整することができる。
【0044】
一般式(I)で表される無機蛍光物質は1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、必要に応じて一般式(I)で表される無機蛍光物質以外のその他の蛍光物質を併用してもよい。
【0045】
その他の蛍光物質としては、例えば、YS:Eu,Mg,Tiの蛍光粒子、Er3+イオンを含有した酸化フッ化物系結晶化ガラス、酸化ストロンチウムと酸化アルミニウムからなる化合物に希土類元素のユウロピウム(Eu)とジスプロシウム(Dy)を添加したSrAl:Eu,Dyや、SrAl1425:Eu,Dyや、CaAl:Eu,Dyや、ZnS:Cu等の無機蛍光材料や、シアニン系色素、ピリジン系色素、ローダミン系色素等の有機色素、BASF社製のLumogen F Violet570、同Yellow083、同Orange240、同Red300、田岡化学工業(株)製の塩基性染料Rhodamine B、住化ファインケム(株)製のSumiplast Yellow FL7G、Bayer社製のMACROLEX Fluorescent Red G、同Yellow10GN等の有機蛍光体を挙げることができる。
【0046】
本発明において前記無機蛍光物質は、無機蛍光物質が後述する樹脂粒子に内包された波長変換用蛍光材料、または、蛍光物質が高分子分散剤で被覆された波長変換用蛍光材料として用いられることもまた好ましい。これにより太陽光発電に寄与が少ない波長域の光の散乱をより効果的に抑制できる。
これは例えば、透明分散媒樹脂に比べて屈折率が大きい無機蛍光物質が、透明分散媒樹脂と同程度の屈折率を示す高分子化合物(樹脂粒子、高分子分散剤)に内包または被覆されていることにより、効果的に光の散乱が抑制されるためと考えることができる。
【0047】
樹脂粒子を構成するモノマーとしては特に制限はなく、付加重合性のモノマーであっても、縮重合性のモノマーであってもよいが、発電効率の観点から、付加重合性のビニル化合物であることが好ましい。
本発明においてビニル化合物とは、エチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限はなく、重合反応した際にビニル樹脂、特にアクリル樹脂又はメタクリル樹脂になり得るアクリルモノマー、メタクリルモノマー、アクリルオリゴマー、メタクリルオリゴマー等を特に制限なく用いることができる。本発明において好ましくは、アクリルモノマー、およびメタクリルモノマー等が挙げられる。
【0048】
アクリルモノマー、およびメタクリルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、これらのアルキルエステルが挙げられ、またこれらと共重合し得るその他のビニル化合物を併用してもよく、1種単独でも、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0049】
アクリル酸アルキルエステル、およびメタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステルおよびメタクリル酸無置換アルキルエステル;ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート;多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等);グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等);多価カルボン酸(例えば、無水フタル酸)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質(例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物;アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル);ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等);これらのアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステル又はメタクリル酸置換アルキルエステル;等が挙げられる。
【0050】
また、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルと共重合し得るその他のビニル化合物としては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、1種単独でも、2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
本発明におけるビニル化合物としては、形成される樹脂粒子の屈折率が所望の値になるように適宜選択することが好ましく、アクリル酸アルキルエステルおよびメタクリル酸アルキルエステルから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0052】
本発明においてはビニル化合物を重合させるためにラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、特に制限なく通常用いられるラジカル重合開始剤を用いることができる。例えば、過酸化物等が好ましく挙げられる。具体的には、熱により遊離ラジカルを発生させる有機過酸化物やアゾ系ラジカル開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤の具体例については後述する。
【0053】
無機蛍光物質を樹脂粒子に内包する方法としては、無機蛍光物質と樹脂粒子を構成するモノマー化合物の混合物を調製し、これを重合することで調製することができる。具体的には、例えば、無機蛍光物質およびビニル化合物を含む混合物を調製し、ラジカル重合開始剤を用いてビニル化合物を重合することで、無機蛍光物質が内包された樹脂粒子として波長変換用蛍光材料を構成することができる。
【0054】
また無機蛍光物質を水不溶性の高分子分散剤を用いて水系媒体中に分散処理することで、無機蛍光物質が高分子分散剤で被覆された波長変換用蛍光材料を構成することができる。
具体的には例えば、ビニル化合物を重合させて得られる、親水性構成単位および疎水性構成単位を含む水不溶性のビニル系高分子分散剤と、前記無機蛍光物質とを水系媒体中で分散処理することで、ビニル系高分子分散剤で被覆された無機蛍光物質として波長変換用蛍光材料を構成することができる。前記分散処理の方法としては、特に制限なく公知の分散処理方法を採用することができる。
【0055】
[透明分散媒樹脂]
本発明の波長変換性樹脂組成物は、透明分散媒樹脂の少なくとも1種を含む。前記透明分散媒樹脂としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が好ましく用いられる。
従来から、太陽電池用封止剤樹脂として用いられている樹脂は、熱硬化性が付与されたエチレン−酢酸ビニル共重合体(「EVA」ともいう)がコスト及び透明性の点から広く用いられており、本発明における透明分散媒樹脂もEVAを含むものが好ましい。
しかしながら、本発明は、分散媒を兼ねた透明分散媒樹脂を限定するものではなく、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等のいずれを使用してもよい。
【0056】
透明分散媒樹脂に光硬化性樹脂を用いる場合、光硬化性樹脂の樹脂構成や光硬化方法は特に制限はない。例えば、光ラジカル重合開始剤による光硬化方法では、波長変換性樹脂組成物は、上記無機蛍光物質の他、(A)バインダー樹脂、(B)架橋性モノマー及び(C)光又は熱により遊離ラジカルを生成する重合開始剤等からなる。
【0057】
ここで(A)バインダー樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、これらのアルキルエステルを構成モノマーとしたホモポリマー、及びこれらと共重合し得るその他のビニルモノマーを構成モノマーとして共重合してなる共重合体を用いることができる。
これらの共重合体は、単独でも2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
【0058】
アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸無置換アルキルエステル又はメタクリル酸無置換アルキルエステル;これらのアルキル基に水酸基、エポキシ基、ハロゲン基等が置換したアクリル酸置換アルキルエステル及びメタクリル酸置換アルキルエステル等が挙げられる。
【0059】
また、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステルと共重合しうるその他のビニルモノマーとしては、アクリルアミド、アクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。これらのビニルモノマーは、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、(A)バインダー樹脂の重量平均分子量は、塗膜性及び塗膜強度の点から10,000〜300,000であることが好ましい。
【0060】
(B)架橋性モノマーとしては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物(例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(エチレン基の数が2〜14のもの)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート(プロピレン基の数が2〜14のもの)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAトリオキシエチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAデカオキシエチレンジ(メタ)アクリレート等);グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を付加して得られる化合物(例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート等);多価カルボン酸(例えば、無水フタル酸)と水酸基及びエチレン性不飽和基を有する物質(例えば、β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)とのエステル化物;アクリル酸若しくはメタクリル酸のアルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル);ウレタン(メタ)アクリレート(例えば、トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとシクロヘキサンジメタノールと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸エステルとの反応物等);等を挙げることができる。
【0061】
特に好ましい(B)架橋性モノマーとしては、架橋密度や反応性を制御しやすいという意味において、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAポリオキシエチレンジメタクリレートが挙げられる。なお、上記化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0062】
特に波長変換性樹脂組成物の屈折率を高くする場合には、(A)バインダー樹脂及び/又は(B)架橋性モノマーに、臭素、イオウ原子を含んでいることが有利である。臭素含有モノマーの例としては、第一工業製薬(株)製、ニューフロンティアBR−31、ニューフロンティアBR−30、ニューフロンティアBR−42M等が挙げられる。イオウ含有モノマー組成物としては、三菱ガス化学(株)製、IU−L2000、IU−L3000、IU−MS1010が挙げられる。ただし、本発明で使用される臭素、イオウ原子含有モノマー(それを含む重合物)は、ここに挙げたものに限定されるものではない。
【0063】
(C)光により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤としては、紫外線又は可視光線により遊離ラジカルを生成する光重合開始剤が好ましく、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジルジメチルケタール(BASFジャパン社製、IRGACURE(イルガキュア)651)、ベンジルジエチルケタール等のベンジルケタール類、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のキサントン類、あるいはヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン社製、IRGACURE(イルガキュア)184)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ビトロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(BASFジャパン社製、ダロキュア1116)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(BASFジャパン社製、ダロキュア1173)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0064】
また、(C)光重合開始剤として使用しうる光重合開始剤としては、例えば、2,4,5−トリアリルイミダゾール二量体と2−メルカプトベンゾオキサゾール、ロイコクリスタルバイオレット、トリス(4−ジエチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン等との組み合わせも挙げられる。また、それ自体では光開始性はないが、前記物質と組み合わせて用いることにより全体として光開始性能のより良好な増感剤系となるような添加剤、例えば、ベンゾフェノンに対するトリエタノールアミン等の三級アミンを用いることができる。
【0065】
また(C)熱により遊離ラジカルを生成する熱重合開始剤を用いることで熱硬化性とすることができる。
熱重合開始剤としては、熱により遊離ラジカルを発生させる有機過酸化物が好ましく、例えば、イソブチルパーオキサイド、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、ビス−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ビス−s−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルネオデカノエート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、ビス−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ビス(エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、ビスメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ビス(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、サクニックパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイル)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオノイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサノン、2,2−ビス(4,4−ジブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレート、α,α‘ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシ、p−メンタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等を使用することができる。
【0066】
波長変換性樹脂組成物の透明分散媒樹脂に、加熱又は加圧により流動する熱可塑性樹脂を用いる場合、熱可塑性樹脂としては例えば、天然ゴム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、ポリイソプレン、ポリ−1,2−ブタジエン、ポリイソブテン、ポリブテン、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン、ポリ−1,3−ブタジエン等の(ジ)エン類の重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルヘキシルエーテル、ポリビニルブチルエーテル等のポリエーテル類、ポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネート等のポリエステル類、ポリウレタン、エチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリスルホン、フェノキシ樹脂、ポリエチルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート、ポリ−t−ブチルアクリレート、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリドデシルメタクリレート、ポリテトラデシルメタクリレート、ポリ−n−プロピルメタクリレート、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリ(メタ)アクリル酸エステルが分散媒樹脂として使用可能である。
これらの熱可塑性樹脂は、必要に応じて2種以上のモノマーからなる共重合体であってもよいし、2種類以上の熱可塑性樹脂をブレンドして使用することも可能である。
【0067】
さら上記樹脂の共重合成分として、エポキシモノマー、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレート等を使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシモノマー、ポリエーテルアクリレートが好ましい。
【0068】
エポキシモノマーとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0069】
エポキシモノマー等を共重合成分として得られる樹脂のように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。
これらの共重合樹脂は、必要に応じて、2種以上併用することができる。
またこれら樹脂の軟化温度は、取扱い性から150℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましい。太陽電池モジュールの使用環境温度が通常は80℃以下であることと、加工性とを考慮すると、上記樹脂の軟化温度は特に好ましくは80〜120℃である。
【0070】
熱可塑性樹脂を透明分散媒樹脂として用いた場合の、波長変換性樹脂組成物のその他の構成は、一般式(I)で表される無機蛍光物質を含有させれば特に制限はないが、通常用いられる成分、例えば、可塑剤、難燃剤、架橋助剤、接着助剤、紫外線吸収剤、安定剤等を含有させることが可能である。
【0071】
本発明の波長変換性樹脂組成物の透明分散媒樹脂としては、上記のように、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、特に樹脂を制限するものではないが、特に好ましい樹脂として、従来の太陽電池用の透明分散媒樹脂として広く利用されているエチレン−酢酸ビニル共重合体に熱ラジカル重合開始剤、必要に応じて架橋助剤、接着助剤、紫外線吸収剤、安定剤等を配合した組成が挙げられる。
【0072】
<波長変換性樹脂組成物の製造方法>
本発明の波長変換性樹脂組成物は、一般式(I)で表される無機蛍光物質を、透明分散媒樹脂に混合または分散し、波長変換性樹脂組成物を得る工程を有する方法で製造可能である。混合または分散条件としては、例えば、透明分散媒樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体に混合する場合、ロールミルを用いることができる。具体的には、90℃に調整したロールミルを用いて、ペレット状または粉末状のエチレン−酢酸ビニル共重合体に、前記無機蛍光物質、ラジカル重合開始剤、接着助剤としてのシランカップリング剤、その他の添加剤を加えて混練することにより得られる。
尚、一般式(I)で表される無機蛍光物質を含む前記波長変換用蛍光材料を用い、これを透明分散媒樹脂に混合または分散して、波長変換性樹脂組成物を得ることもまた好ましい。
【0073】
<波長変換性太陽電池封止材およびその製造方法>
本発明の波長変換性太陽電池封止材は、前記波長変換性樹脂組成物に由来する樹脂組成物層を備え、必要に応じてその他の層を備えて構成される。
前記波長変換型太陽電池封止材が、前記樹脂組成物層、及び、前記樹脂組成物層以外の光透過性層からなるm個の層を備える場合、前記m個の層のそれぞれの屈折率を、光入射側から順にn、n、・・・、n(m−1)、nとした場合、n≦n≦・・・≦n(m−1)≦nであることが好ましい。これにより、発電効率がより効果的に向上する。
【0074】
前記波長変換型太陽電池封止材は、例えば、上記一般式(I)で表される無機蛍光物質を、透明分散媒樹脂に混合または分散して得られる樹脂組成物を、シート状に形成するシート形成工程を有する製造方法で製造される。
混合または分散方法としては、例えば、透明分散媒樹脂であるエチレン−酢酸ビニル共重合体に混合する場合、ロールミルを用いることができる。具体的には例えば、90℃に調整したロールミルを用いて、ペレット状または粉末状のエチレン−酢酸ビニル共重合体に、前記無機蛍光物質、ラジカル重合開始剤、接着助剤としてのシランカップリング剤、その他の添加剤を加えて、混練することにより、樹脂組成物が得られる。
【0075】
上記のようにして得られた樹脂組成物は、太陽電池モジュールの光透過性層として用いることができる。光透過性層を構成するための形態は特に制限はないが、シート状に形成するのが、使用のし易さの点から好ましい。シート状にするには、90℃に調整したプレス機によりスペーサーを介して形成しうる。スペーサーの厚みは、0.4〜1.0mm程度とすることにより、使用しやすいシート状波長変換型太陽電池封止樹脂組成物が得られる。またさらにシート表面に、エンボス加工を施すことにより、太陽電池モジュールを作製する工程で、気泡の巻き込みを少なくできる。
【0076】
また波長変換型太陽電池封止材は、キャストフィルム状に形成して太陽電池セル又は保護ガラスの内側に貼り付け、太陽電池モジュールの光透過性層の少なくとも一つの層を構成することが可能である。
キャストフィルムに用いるための樹脂組成物は、トルエン等の溶液中で重合したアクリル樹脂に適宜架橋性モノマー、光または熱重合開始剤を配合し、これに前記無機蛍光物質を混合することで得られる。
この得られた樹脂組成物を基材となるフィルム(たとえばPETフィルム)上に、アプリケータ等を用いて塗布し、溶剤を乾燥させることでキャストフィルムを得ることができる。
【0077】
<太陽電池モジュールおよびその製造方法>
本発明の太陽電池モジュールは、前記波長変換型太陽電池封止材を光透過性層の一つとして有することを特徴とする。前記波長変換型太陽電池封止材に用いる蛍光物質として前記BaMgAl1017:Eu,Mn系の無機蛍光物質を用いることで、高い発電効率を有する太陽電池モジュールを実現出来る。前記BaMgAl1017:Eu,Mn系の無機蛍光物質は短波長域の光を高い効率で緑色の波長域の光に変換する。この変換された光が太陽電池セルで発電に寄与し、これにより発電効率が安定的に向上する。
【0078】
太陽電池モジュールは、例えば、反射防止膜、保護ガラス、封止材、太陽電池セル、バックフィルム、セル電極、タブ線等の必要部材から構成される。これらの部材の中で、光透過性を有する光透過性層としては、反射防止膜、保護ガラス、封止材、太陽電池のSiNx:H層及びSi層等が挙げられる。
本発明の波長変換性樹脂組成物は、上記光透過性層の中でも封止材として用いることが好ましい。また、保護ガラスと封止材との間、又は封止材と太陽電池セルの間に波長変換用フィルムとして配置することも可能である。
【0079】
波長変換性樹脂組成物を光透過性層として用いる場合、透明分散媒樹脂は少なくともその入射側の層よりも高屈折あるいは同程度であることが好ましい。
詳細には、前記複数の光透過性層を、光入射側から順に層1、層2、・・・、層mとし、またこれらの屈折率をn、n、・・・nm−1、nとしたとき、n≦n≦・・・・≦nm−1≦nが成り立つことが好ましい。
【0080】
本発明において、上記で挙げられる光透過性層の積層順は、通常、太陽電池モジュールの受光面から順に、必要により形成される反射防止膜(n<1.4)、保護ガラス(n≒1.5)、封止材(n≒1.5)、太陽電池セルのSiNx:H層(n≒2.1)、Si層(n≒3.4)となる。
【0081】
即ち、本発明の波長変換性樹脂組成物を封止材として用いる場合、受光面から入り込む外部光が反射損失少なく、効率よく太陽電池セル内に導入するために、波長変換性樹脂組成物の屈折率が、該波長変換性樹脂組成物より光入射側に配置される光透過性層、すなわち、反射防止膜、保護ガラス等の屈折率より高く、且つ本発明の波長変換性樹脂組成物からなる封止材の反光入射側に配置される光透過性層、すなわち、太陽電池セルのSiNx:H層(「セル反射防止膜」ともいう)及びSi層等の屈折率よりも低くすることが好ましい。
【0082】
本発明の波長変換性樹脂組成物を封止材として用いる場合は、太陽電池セルの受光面上に配置される。そうすることで、太陽電池セル受光表面の、テクスチャー構造、セル電極、タブ線等を含めた凹凸形状に隙間なく追従できる。
【0083】
本発明の波長変換性樹脂組成物を用いて得られるシート状の樹脂組成物層を用いて、太陽電池セルと保護ガラスの間の、例えば波長変換型太陽電池封止材として、太陽電池モジュールを製造することが可能である。
具体的には、通常のシリコン結晶系太陽電池モジュールの製造方法に準じて太陽電池モジュールを構成することができ、通常の封止材シートに代えて、前記波長変換型太陽電池封止材を用いることで、本発明の太陽電池モジュールを製造することができる。
【0084】
一般的に、シリコン結晶系太陽電池モジュールは、まず、受光面であるカバーガラスの上に、シート状の封止材(多くは、エチレン−酢酸ビニル共重合体を熱ラジカル重合開始剤で、熱硬化型にしたもの)を載せる。本発明では、ここで用いられる封止材として、本発明の波長変換型太陽電池封止材を用いる。次に、タブ線で接続されたセルを載せ、さらにシート状の封止材(ただし本発明では、受光面側のみに波長変換性樹脂組成物を用いればよく、この裏面に関しては、従来のものでも構わない)を載せ、さらにバックシートを載せて、太陽電池モジュール専用の真空加圧ラミネータを用いて、モジュールとする。
【0085】
このとき、ラミネータの熱板温度は、封止材が軟化、溶融し、セルを包み込み、さらに硬化するのに必要な温度となっており、通常、120〜180℃、多くは、140〜160℃でこれらの物理変化、化学変化が起こるように設計されている。
【0086】
本発明の波長変換性樹脂組成物は、太陽電池モジュールとする前の状態のものである。具体的には硬化性樹脂を用いた場合は、半硬化状態をいう。なお、半硬化状態の波長変換性樹脂組成物からなる層と、硬化した後(太陽モジュール化した後)の層との屈折率は大きくは変わらない。
【0087】
また、波長変換性樹脂組成物をキャストフィルム状にして使用する場合は、まず保護ガラスの反光入射面、又は太陽電池セルの光入射面上に真空ラミネータを用い、ラミネートし、基材フィルムを取り除く。光硬化性であれば、光照射により、硬化させる。熱硬化性であれば、熱をかけて硬化させるが、ラミネート時に熱をかけ同時に硬化することも可能である。つづく工程は、通常の太陽電池モジュールの製造方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0088】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0089】
<無機蛍光物質の合成>
(合成例1)
〜BaMgAl1017:Eu,Mn緑色発光蛍光体の合成〜
原料として、BaCO、MgCO、Al、Eu、およびMnCOを用いた。また、フラックスとしてAlFを用いた。Eu含有率が15mol%、Mn含有率が35mol%となるように、上記原料を秤量して、乳鉢にて乾式混合して混合物を得た。次いでアルミナルツボに混合物を充填して、管状炉にて1450℃、N−H還元雰囲気(H濃度2%)にて3時間、焼成を行った。得られた焼成物をほぐして、目的とするBa0.85Mg0.65Al1017:Eu0.15,Mn0.35緑色発光蛍光体を得た。
【0090】
(合成例2)
〜(Ba,Sr)MgAl1017:Eu,Mn緑色発光蛍光体の合成〜
原料として、合成例1に記載の化合物に加えて、SrCOを用いた。Sr含有率が1mol%となるようにSrCOを添加したこと以外は合成例1と同様にして、目的とする(Ba0.84,Sr0.01)Mg0.65Al1017:Eu0.15,Mn0.35緑色発光蛍光体を得た。
【0091】
(合成例3)
〜(Ba,Ca)MgAl1017:Eu,Mn緑色発光蛍光体の合成〜
原料として、合成例1に記載の化合物に加えて、CaCOを用いた。Ca含有率が1mol%となるようにCaCOを添加したこと以外は合成例1と同様にして、目的とする(Ba0.84,Ca0.01)Mg0.65Al1017:Eu0.15,Mn0.35緑色発光蛍光体を得た。
【0092】
(合成例4)
〜(Ba,Sr,Ca)MgAl1017:Eu,Mn緑色発光蛍光体の合成〜
原料として、合成例1に記載の化合物に加えて、SrCO、CaCOを用いた。Sr含有率が1mol%、Ca含有率が3mol%となるようにSrCO、CaCOを添加した以外は合成例1と同様にして、目的とする(Ba0.81,Sr0.01,Ca0.03)Mg0.65Al1017:Eu0.15,Mn0.35緑色発光蛍光体を得た。
【0093】
(合成例5)
〜(Ba,Sr)(Mg,Zn)(Al,Ga)1017:Eu,Mn緑色発光蛍光体の合成〜
原料としては合成例1に記載の化合物に加えて、SrCO、Zn(NO・6HO、およびGa(NO・HOを用いた。またM含有率が1mol%、MII含有率が0.1mol%、MIII含有率が0.1mol%となるように、SrCO、Zn(NO・6HO、およびGa(NO・HOをそれぞれ添加した以外は合成例1と同様にして、目的とする(Ba0.84,Sr0.01)(Mg0.649,Zn0.001)(Al0.999,Ga0.0011017:Eu0.15,Mn0.35緑色発光蛍光体を得た。
【0094】
<波長変換性樹脂組成物の製造>
(実施例1〜4)
透明分散媒樹脂としてエチレン−酢酸ビニル樹脂:NM30PW(東ソー(株)製)を100部、過酸化物熱ラジカル重合開始剤:ルペロックス101(アルケマ吉富(株)製、この場合架橋剤としても働く)を1.5部、シランカップリング剤:SZ6030(東レ・ダウコーニング(株)製)を0.5部、及び、上記合成例4で得られた緑色発光蛍光体(無機蛍光物質)を用い、その添加量を表1に示したように適宜変更し、90℃のロールミルで混練して、波長変換性樹脂組成物をそれぞれ得た。
【0095】
<波長変換型太陽電池封止材の製造>
上記で得られた波長変換性樹脂組成物を、離型PETシートに挟み、0.6mm厚のステンレス製スペーサーを用い、熱板を90℃に調整したプレスにて、シート状に形成して波長変換型太陽電池封止材を得た。
【0096】
<太陽電池モジュールの製造および評価>
シリコン結晶系太陽電池セルに日立化成工業(株)製太陽電池用導電フィルム、CF−105を用い、専用の圧着装置によりタブ線(厚み0.14mm、幅2mm、亜鉛めっきしたもの)を表2本、裏2本接続し、さらにこれら表裏それぞれを横タブ線(日立電線(株)製、A−TPS 0.23x6.0)を用い、外部取り出し線とした。これをワコム電創(株)製ソーラーシミュレータWXS−155S−10,AM1.5G、英弘精機(株)製ソーラーシミュレータ用I−VカーブトレーサーMP−160を用い、JIS−C−8914に準拠して、太陽電池I−V特性を得た。このときの短絡電流密度をJsc(セル)とした。
【0097】
さらにこのタブ線接続されたシリコン結晶系太陽電池セルを用いて、下からカバーガラス(旭硝子(株)製)、上記で得られた波長変換型太陽電池封止材(EVA)から離型PETシートを剥がしたシート、上記太陽電池セル、裏面用のEVAシート(蛍光物質を含まない)、PETフィルム(東洋紡績(株)製東洋紡エステルフィルムA4300)の順に載せ、太陽電池用真空加圧ラミネータ((株)ネヌ・ピー・シー、LM−50x50−S)を用い、熱板150℃、真空10分、加圧15分の条件で、評価用太陽電池モジュールを作製した。得られた評価用太陽電池モジュールについて上記と同様な方法で太陽電池I−V特性を得た。このときの短絡電流密度を、Jsc(モジュール)とした。
各種測定値のうち、Jsc(短絡電流密度)に関して、下式で算出されるΔJscを用いて評価用太陽電池モジュールを評価した。
ΔJsc = Jsc(モジュール)− Jsc(セル)
ここでの評価では、ソーラーシミュレータのUVフィルターを用いた状態と用いない状態の両方で測定を行なった。
【0098】
<高温高湿耐性の評価>
50x60mmのガラス片に、上記で得られた波長変換型太陽電池封止材(EVA)から離型PETシートを剥がしたシートを置き、さらにPETフィルムを置いて、太陽電池用真空加圧ラミネータ((株)ネヌ・ピー・シー、LM−50x50−S)を用い、熱板150℃、真空10分、加圧15分の条件で、試験片を得た。これを85℃、85%相対湿度に保った恒温恒湿槽中で所定の時間放置した後、UV光(365nm)を照射し、蛍光の有無を観察した。蛍光が消失するまでに要した時間を表1にまとめた。
【0099】
(実施例5〜7)
上記合成例2、3および5で得られた緑色発光蛍光体を用いたこと以外は上記と同様にして波長変換型太陽電池封止材を得た。得られた波長変換型太陽電池封止材について、上記と同様にして高温高湿耐性の評価を行なったところ、いずれも蛍光消失に要した時間は1600時間を越えていた。
【0100】
(比較例1)
実施例1の<波長変換性樹脂組成物の製造>において、蛍光物質として一般式(I)で表される無機蛍光物質の代わりに、ユーロピウム錯体、Eu(TTA)Phenを0.01部用い、90℃のロールミルで混練して、波長変換性樹脂組成物を得た。得られた波長変換性樹脂組成物を用いて、上記と同様にして波長変換型太陽電池封止材を製造した。
得られた波長変換型太陽電池封止材に関し、上記<蛍光高温高湿耐性の評価>と同様の方法で、蛍光の有無を観察した。得られた結果を表1にまとめた。
尚、TTAは4,4,4−トリフルオロ−1−チエニル−1,3−ブタンジオンを、Phenは1,10−フェナントロリンを意味する。
【0101】
(比較例2)
実施例1の<太陽電池モジュールの製造および評価>において、波長変換型太陽電池封止材を用いる代わりに、市販の太陽電池用封止材(商品名:ソーラーエバSC50B、三井化学ファブロ社製)を用いたこと以外は、上記と同様にして太陽電池モジュールの製造および評価を行なった。得られた結果を表1にまとめた。
【0102】
(比較例3)
一般式(I)で表される無機蛍光物質の代わりに、カラー用蛍光体P22−RE3(無機蛍光物質、YS:Eu,Sm、化成オプトロニクス(株)製)を用いたこと以外は、上記と同様にして太陽電池モジュールの製造および評価を行なった。得られた結果を表1にまとめた。
【0103】
【表1】

【0104】
表1から、一般式(I)で表される無機蛍光物質を含む波長変換性樹脂組成物を用いて構成した太陽電池モジュールは、高温高湿環境下における安定性に優れるとともに、発電効率が向上することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、蛍光物質として、BaMgAl1017:Eu,Mn系の無機蛍光物質を用いた波長変換性樹脂組成物を太陽電池モジュールに適用したときに、入射した太陽光のうち太陽光発電に寄与の少ない光を発電に寄与の大きい波長へ変換するのと同時に、劣化することなく効率よく且つ安定的に太陽光を利用できる波長変換性樹脂組成物を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明分散媒樹脂と、
下記一般式(I)で表される無機蛍光物質と、を含む波長変換性樹脂組成物。
【化1】


(一般式(I)中、Mは、Sr、Ca、La、Ce、Pr、Nb、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、およびYから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIは、Zn、Cu、Ag、およびAuから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIIは、Ga、In、Si、Ge、およびSnから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、xは0.00001より大きく0.2未満であり、yは0.1未満であり、zは0.1未満であり、aは0.05より大きく0.25未満であり、bは0.1より大きく0.4未満である)
【請求項2】
前記無機蛍光物質の含有率が、0.0001質量%以上1質量%以下である、請求項1に記載の波長変換性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の波長変換性樹脂組成物に由来する樹脂組成物層を備える波長変換型太陽電池封止材。
【請求項4】
前記樹脂組成物層、及び、前記樹脂組成物層以外の光透過性層からなるm個の層を備え、且つ、前記m個の層のそれぞれの屈折率を、光入射側から順にn、n、・・・、n(m−1)、nとした場合に、n≦n≦・・・≦n(m−1)≦nである、請求項3に記載の波長変換型太陽電池封止材。
【請求項5】
太陽電池セルと、
前記太陽電池セルの受光面側に配置された請求項3または請求項4に記載の波長変換型太陽電池封止材と、を有する太陽電池モジュール。
【請求項6】
下記一般式(I)で表される無機蛍光物質を透明分散媒樹脂に混合または分散して得られる波長変換性樹脂組成物を、シート状に形成するシート形成工程を有する波長変換型太陽電池封止材の製造方法。
【化2】


(一般式(I)中、Mは、Sr、Ca、La、Ce、Pr、Nb、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、およびYから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIは、Zn、Cu、Ag、およびAuから選ばれる少なくとも1種の元素であり、MIIIは、Ga、In、Si、Ge、およびSnから選ばれる少なくとも1種の元素である。また、xは0.00001より大きく0.2未満であり、yは0.1未満であり、zは0.1未満であり、aは0.05より大きく0.25未満であり、bは0.1より大きく0.4未満である)
【請求項7】
複数の光透過性層および太陽電池セルを有する太陽電池モジュールの製造方法であって、請求項3または請求項4に記載の波長変換型太陽電池封止材を、太陽電池セルの受光面側に配置して、前記光透過性層の1つを形成する工程を有する太陽電池モジュールの製造方法。

【公開番号】特開2012−59987(P2012−59987A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202877(P2010−202877)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】