説明

波長変換素子

【課題】波長500nm〜200nmの可視〜深紫外領域においてコヒーレント光を発生できる擬似位相整合を用いた波長変換素子を提供すること。
【解決手段】非線形光学結晶に式(1)で表される周期dで正負の極性が図1に示すように交番する周期的分極反転構造を形成し、擬似位相整合を用いて周波数ωの入射光に対し周波数2ωの光を出力する波長変換素子であって、上記非線形光学結晶がAlN単結晶で構成されていることを特徴とする。 d=mλ/[2(n2ω−nω)] (1)
[式(1)において、mは位相整合の次数、λは入射光の波長、nωは周波数ωの光に対するAlN単結晶の屈折率、n2ωは周波数2ωの光に対するAlN単結晶の屈折率]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長300nm以下の深紫外光源、波長200nm以下の真空紫外光源として利用可能な擬似位相整合技術を用いた波長変換素子の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、波長300nm以下の深紫外領域および波長200nm以下の真空紫外領域の短波長レーザーは、材料加工や高密度光記録、高輝度白色発光光源、医療や殺菌分野等で幅広い応用が期待されている。この波長領域でのレーザー光源として、KrF(発振波長248nm)やArF(発振波長193nm)等のエキシマレーザーがあるが、これ等のレーザー装置は連続発振が不可能で、また、パルス発振を行った場合は繰り返し周波数を大きくすることが出来ないため1パルス当りのエネルギーが大きくなり、光学部品の損傷が生じやすい。また、有毒なフッ素ガスを使用するため、レーザー装置のメンテナンスが煩雑で維持費用が高額であることや、レーザー装置全体が大型となり、更にレーザーのビーム品質が悪い等の問題点があり、その用途が限定されている。これ等の理由から深紫外領域レーザー装置の固体化・小型化が強く望まれている。
【0003】
そして、固体化・小型化の方法として半導体レーザー化が検討され、バンドギャップが6.4eVである窒化アルミニウム(AlN)、あるいは窒化アルミニウムと窒化ガリウム(GaN)の混晶系半導体を用いた深紫外領域での半導体レーザーの開発が活発に行われているが、結晶性の問題等により充分な発光効率は得られておらず、出力が小さいという課題がある(非特許文献1)。
【0004】
一方、固体化・小型化のもう一つの方法として、固体レーザーと非線形光学結晶を用いた波長変換素子の組み合わせにより、深紫外領域でのコヒーレント光を得る試みもなされている。この組み合わせによれば原理上は連続発振も可能であり、また、パルス発振の場合に繰り返し周波数を大きくすることが可能である。更に、波長の狭帯域化も可能であり、空間モードの品質が良いという特徴も有している。
【0005】
ここで、非線形光学結晶とは非線形光学効果を示す結晶のことである。また、非線形光学効果とは、物質の分極応答の非線形性による効果のことであり、物質中にレーザー光のような強い光を入射したときに、入射光の電界に対する分極の応答が比例しなくなることで入射光の一部が波長変換される現象である。特に、2次の非線形光学効果を利用して入射光の半分の波長の光を取り出す第2高調波発生は、レーザー光の短波長への波長変換方法として最も良く知られている。この方法により、例えばNd:YAGレーザー光(波長1064nm)を波長532nmに変換し、更にもう一段の波長変換により266nmにすることが出来る。
【0006】
但し、この方法では、波長変換を行う非線形光学結晶に屈折率分散があるため、結晶中の第2高調波の波長は結晶中の入射光の波長に対して正確に1/2にはならず、結晶中の各所で発生した第2高調波同士に位相ずれが生じて、充分な強度の第2高調波を取り出すことが困難な問題を有する。このため、通常は結晶の複屈折を利用して入射光と第2高調波との波長比が正確に1/2になる結晶方位を用いることにより位相を整合させている。
【0007】
しかし、複屈折を利用した位相整合では、結晶の複屈折量を超える位相整合が不可能である。そこで、非線形光学結晶の限界を超えて位相整合を行う技術として、擬似位相整合という方法が提案されている(特許文献1)。
【0008】
擬似位相整合は、非線形光学結晶に周期的分極反転構造を形成することによって実現される。擬似位相整合によれば、非線形光学結晶が所望の波長において適当な複屈折を有していなくても、基本波と第2高調波の位相を整合させることで変換効率を向上させることができる。また、擬似位相整合による波長変換は、結晶の複屈折性を利用しないため、基本波と第2高調波の進行方向によって生じる変換効率の低下やビーム品質の悪化も回避できるという利点を有している。
【0009】
こうした擬似位相整合を用いた波長変換素子としては、LiNbO3やLiTaO3等の強誘電体酸化物結晶が主に知られているが、これ等LiNbO3やLiTaO3等の強誘電体酸化物結晶は、波長300nm近辺に吸収端を有するため、波長変換素子として適用できる波長範囲が波長300nm以上に限定されており、波長300nm〜210nmの深紫外領域においては、現在、擬似位相整合を用いた波長変換を行うことが出来ないという問題があった。更に、現実的な問題として、上記LiNbO3やLiTaO3等を用いた擬似位相整合による波長変換においては、波長500nm以下、例えば450nm等の波長においてビーム品質等に問題が生じている。
【0010】
このような技術的背景の下、上記LiNbO3やLiTaO3等に代えて非線形光学結晶としてフッ化物単結晶を用い、波長300nm以下の深紫外線や、波長200nm以下の真空紫外線を発生させる波長変換素子が提案されている(特許文献2および特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−122898号公報(特許請求の範囲、段落0056)
【特許文献2】特開2005−272219号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】WO2004/083497号公報(特許請求の範囲)
【非特許文献1】Y.Taniyasu, M.Kasu and T.Makimoto , Nature 441,325(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、特許文献2や特許文献3に記載されたフッ化物単結晶以外の非線形光学結晶を用い、波長500nm〜200nmの可視〜深紫外領域においてコヒーレント光を発生できる擬似位相整合を用いた波長変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明者等は、上述した波長領域において波長変換素子として機能しうる結晶材料の検討を行った。目的とする波長変換素子用の結晶には、吸収端波長が300nm以下であること、擬似位相整合技術を適用するための強誘電性を持つことが求められる。更に、波長変換素子を実際に製造するためには、これ等の物性が満たされた上で一定の大きさ以上の単結晶を製造できなければならない。
【0013】
そして、これ等の条件を満たしかつフッ化物単結晶以外の材料として、本発明者等は窒化物単結晶が好適であることを見出し本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、請求項1に係る発明は、
非線形光学結晶に下記式(1)で表される周期dで正負の極性が交番する周期的分極反転構造を形成し、擬似位相整合を用いて、周波数ωの入射光に対し周波数2ωの光を出力する波長変換素子において、
上記非線形光学結晶が窒化物単結晶で構成されていることを特徴とし、
d=mλ/[2(n2ω−nω)] (1)
[上記式(1)において、mは位相整合の次数、λは入射光の波長、nωは周波数ωの光に対する窒化物単結晶の屈折率、n2ωは周波数2ωの光に対する窒化物単結晶の屈折率である]
また、請求項2に係る発明は、
非線形光学結晶に下記式(2)で表される周期d’で正負の極性が交番する周期的分極反転構造を形成し、擬似位相整合を用いて、周波数ω1および周波数ω2の光を同時に入射することにより周波数ω3=ω1+ω2の光を出力する波長変換素子において、
上記非線形光学結晶が窒化物単結晶で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
d’=m/[(n/λ3)−(n/λ2)−(n/λ1)] (2)
[上記式(2)において、mは位相整合の次数、λ1、λ2、λ3はそれぞれ周波数ω1、ω2、ω3の光の波長、n、n、nはそれぞれ周波数ω1、ω2、ω3の光に対する窒化物単結晶の屈折率である]
次に、請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る波長変換素子において、
上記窒化物単結晶がAl1-xGaxN(但し、0≦x≦1)で表される窒化物であることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る波長変換素子において、
上記窒化物単結晶がAlNであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の発明に係る波長変換素子において、
上記窒化物単結晶がバルク状結晶で構成されていることを特徴とし、
請求項6に係る発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載の発明に係る波長変換素子において、
上記窒化物単結晶が基板上に形成された薄膜で構成されていることを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
請求項6に記載の発明に係る波長変換素子において、
薄膜が形成される上記基板が、Si、GaAs、AlN、InP、AlGaN、Al、β−Gaのいずれかであることを特徴とする。
【0017】
次に、請求項8に係る発明は、
請求項1〜7のいずれかに記載の発明に係る波長変換素子において、
上記窒化物単結晶が気相成長法により製造されていることを特徴とし、
請求項9に係る発明は、
請求項1〜7のいずれかに記載の発明に係る波長変換素子において、
上記窒化物単結晶が液相成長法若しくは溶液成長法により製造されていることを特徴とし、
また、請求項10に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る波長変換素子において、
波長変換して出力される光の少なくとも1つの光が波長500nm以下であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る波長変換素子によれば、波長500nm〜200nmの可視〜深紫外領域において擬似位相整合による波長変換が可能となり、特に深紫外レーザー光源の固体化や小型化を実現出来るという効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
本発明に係る波長変換素子は、窒化物単結晶により構成された非線形光学結晶に、周期的分極反転構造を形成して擬似位相整合を実現したものである。
【0021】
図1は擬似位相整合により第2高調波を発生する波長変換素子の概略構成図である。
【0022】
すなわち、この波長変換素子は、略直方体形状の窒化物単結晶(非線形光学結晶)により構成され、かつ、この窒化物単結晶には下記式(1)で表される周期dで正負の極性が図1に示すように交番する周期的分極反転構造が形成されている。
【0023】
d=mλ/[2(n2ω−nω)] (1)
[上記式(1)において、mは位相整合の次数、λは入射光の波長、nωは周波数ωの光に対する窒化物単結晶の屈折率、n2ωは周波数2ωの光に対する窒化物単結晶の屈折率である]
そして、図1に示すように周期的分極反転構造が形成された窒化物単結晶の一方の端面から、周期的分極反転構造の境界面に垂直に所定の周波数ωの光を入力すれば、他方の端面から周波数が2倍となった第2高調波2ωの光が出力され、波長変換素子として機能する。このとき、光の入射面または出射面となる窒化物単結晶端面には光学研磨を施し、更に透過する光の波長に対応した反射防止膜を形成すれば波長変換素子としての効率を高めることが出来る。このような周期的分極反転構造を形成する方法としては特に制限はなく、通常行われる高電圧印加による方法を用いれば、窒化物単結晶に対しても容易に周期的分極反転構造を形成することが出来る。
【0024】
また、窒化物単結晶に、下記式(2)で表される周期d’で正負の極性が図2に示すように交番する周期的分極反転構造を形成することにより、擬似位相整合を用いた和周波発生による波長変換素子としても構成することが可能である。
【0025】
d’=m/[(n/λ3)−(n/λ2)−(n/λ1)] (2)
[上記式(2)において、mは位相整合の次数、λ1、λ2、λ3はそれぞれ周波数ω1、ω2、ω3の光の波長、n、n、nはそれぞれ周波数ω1、ω2、ω3の光に対する窒化物単結晶の屈折率である]
次に、非線形光学結晶を構成する本発明の窒化物単結晶として、Al1-xGaxN(但し、0≦x≦1)で表されるAlNとGaNの混晶が好適であり、特に、短波長化に対してはAlNを用いることが有効である。また、窒化物単結晶の形態としては、バルク状結晶あるいは基板上に形成された薄膜を用いることが出来、また、薄膜が形成される上記基板としては、Si、GaAs、AlN、InP、AlGaN、Al、β−Gaのいずれかで構成される基板を用いることが出来る。更に、本発明で用いられる窒化物単結晶の製造方法としては、気相成長法(昇華法、有機金属気相成長法、ハイドライド気相成長法、分子線エピタキシー法)、液相成長法、溶液成長法を用いることが出来るが、その製造方法や成長の条件等により限定されるものではない。
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的内容が実施例によって何ら限定されるものでは無い。
【実施例1】
【0027】
この実施例では、昇華法によって成長させたAlN単結晶を用いて波長変換素子を作製した。尚、以下の説明は本発明の例示に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0028】
ここで、上記昇華法とは、図3に示すように、加熱装置2によって成長用ルツボ1内に高温部6と低温部7を持つような温度分布を設け、かつ、高温部6側に配置された原料5を昇華させて低温部7側に配置された種結晶3上に析出させることにより、成長結晶4を製造する方法である。
【0029】
本実施例における昇華法では、加熱方法として高周波誘導加熱を用い、真空排気および高純度窒素ガスの供給が可能な石英容器中に内径50mmφ、高さ80mmの空間を持つ厚さ10mmのグラファイトルツボをセットした。グラファイトルツボの上部低温側に、主面方位がc面であり、表面を化学研磨によって鏡面状に加工した厚さ1mm、直径25mmのAlN単結晶基板(種結晶)をセットした。
【0030】
原料にはAlN多結晶粉末を用い、グラファイトルツボ下部の高温側に配置した。雰囲気は高純度窒素101kPaとし、高周波誘導加熱によってグラファイトルツボ上部の種結晶が配置された部分を低温側として2200℃、グラファイトルツボ底部の原料が配置された部分を高温側として2250℃とし、80時間AlN結晶の成長を行った。そして、成長終了後に室温まで冷却を行ってAlN結晶を得た。
【0031】
得られたAlN結晶は、直径約30mm、厚さ約10mmの円柱状であり、結晶の外周部に一部多結晶化している部分があるが、それ以外の部分は単結晶であり、上記種結晶の方位であるc面を引き継いで成長していた。
【0032】
このようにして得られたAlN単結晶から必要な寸法を有したAlN単結晶板を切り出し、波長変換素子を作製した。
【0033】
本実施例における波長変換素子は、AlN単結晶板に、下記式(1)で表される周期dで正負の極性が図1に示すように交番する周期的分極反転構造を形成し、擬似位相整合を利用して、波長420nmの光を入射光(基本波)とし、第2高調波である210nmの光を出力するものである。
【0034】
d=mλ/[2(n2ω−nω)] (1)
[上記式(1)において、mは位相整合の次数、λは入射光(基本波)の波長、nωは周波数ωの光(基本波)に対するAlN単結晶の屈折率、n2ωは周波数2ωの光(第2高調波)に対するAlN単結晶の屈折率である]
本実施例ではAlNの有する強誘電性を利用して周期的分極反転構造を形成した。具体的にはAlNが有する自発分極軸であるc軸方向に、自発分極の向きとは逆方向に外部から高電界を印加することによって自発分極の極性を反転させ、分極反転構造を形成した。
【0035】
まず始めに、得られたAlN単結晶をc軸に垂直にスライスして、厚さ方向がc軸である、10mm×10mm×0.5mmの薄板状AlN単結晶板に加工した。このAlN単結晶板に関しては、薄い方が分極反転構造加工の際に結晶内部に印加される電界強度を大きくとることが出来るが、基本波として入射させる光のビーム径よりは厚くすることが望ましい。これ等の条件を考慮すると、AlN単結晶板の厚さとしては、0.5mm〜1.0mm程度が適当である。
【0036】
次に、薄板状に加工したAlN単結晶板のc軸に垂直な面(〔0001〕面)に、形成しようとする周期的分極反転構造に対応した周期的構造を有する電極を形成した。周期的構造を有する電極は、対向する〔0001〕面(上面および下面)の内、少なくとも一方の面に形成すればよく、他方の面に形成する電極は全面一様なものでもよい。当然のことながら両面に同一の周期的構造を有する電極を形成しても良い。本実施例では、図4に示すように、AlN単結晶板9の下面に一様な下面電極膜10を、また、上面には周期的構造を有する上面電極膜11をそれぞれスパッタリング法によって形成した。
【0037】
電極材の材質には白金を用いたが、白金以外にもアルミニウムやニッケルクロム合金等の他の金属材料を電極膜として使用することは可能である。電極膜の形成方法としてはスパッタリング法の他、真空蒸着法やイオンプレーティング法等、従来の薄膜形成方法を用いることができ、素子のサイズや電極膜の材質等によって適当な方法を選択すれば良い。
【0038】
電極膜に周期的パターンを形成する方法として、半導体デバイスの製造に一般的に用いられているフォトリソグラフィ技術を適用した。
【0039】
以上の工程より、AlN単結晶板上に所定の周期的構造を有する電極を形成した後、電極に高電圧を印加して該当部分の自発分極を反転させた。印加電圧は数kV〜10kVの範囲内でAlN単結晶板の抗電界および素子厚に応じて調整し、パルス状で印加した。1パルスの時間は数10μs〜200μs程度とした。印加電圧および1パルスあたりの印加時間は、電界印加の際に流れる総電荷量のモニター、分極反転のその場観察および素子作成後のエッチング等により、形成された分極反転構造を観察することにより最適化した。
【0040】
尚、分極反転時に印加する電界は結晶中である程度の広がりを持つため、加工後の分極反転部の長さは電極の長さとは完全に一致せず、通常は電極の長さを所望の分極反転部の長さよりも短めに設定することになる。本実施例では最適な電極の長さを実験的に求めたが、結晶内の電界強度分布をシミュレーションすることにより、予め最適な電極の長さを求めても良い。
【0041】
最終的にAlN単結晶板に形成された分極反転構造は図1に示す通りである。結晶端面の矢印が分極方向を示す。尚、実際の分極反転工程では、上下電極間の絶縁を確保するため、AlN単結晶板の周辺部には電極を形成しないマージン部分が設けられる。従って、AlN単結晶板の周辺部には分極反転構造の形成が不完全な部分も存在するが、光軸に沿った部分に所定の周期で分極反転構造が形成されていれば、波長変換素子として十分に機能することは当然でのことである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の波長変換素子によれば、深紫外領域での効率的な発光光源を実現できるので固体化・小型化が可能となり、深紫外線のより有効利用が図れるという産業上の利用可能性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1に係る波長変換素子の分極反転構造を示す説明図。
【図2】本発明の変形例に係る波長変換素子の分極反転構造を示す説明図。
【図3】実施例1の昇華法を示す概略説明図。
【図4】実施例1で形成した電極パターンの概略図
【符号の説明】
【0044】
1 成長用ルツボ
2 加熱装置
3 種結晶
4 成長結晶
5 原料
6 高温部
7 低温部
8 成長方位
9 単結晶板
10 下面電極膜
11 上面電極膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非線形光学結晶に下記式(1)で表される周期dで正負の極性が交番する周期的分極反転構造を形成し、擬似位相整合を用いて、周波数ωの入射光に対し周波数2ωの光を出力する波長変換素子において、
上記非線形光学結晶が窒化物単結晶で構成されていることを特徴とする波長変換素子。
d=mλ/[2(n2ω−nω)] (1)
[上記式(1)において、mは位相整合の次数、λは入射光の波長、nωは周波数ωの光に対する窒化物単結晶の屈折率、n2ωは周波数2ωの光に対する窒化物単結晶の屈折率である]
【請求項2】
非線形光学結晶に下記式(2)で表される周期d’で正負の極性が交番する周期的分極反転構造を形成し、擬似位相整合を用いて、周波数ω1および周波数ω2の光を同時に入射することにより周波数ω3=ω1+ω2の光を出力する波長変換素子において、
上記非線形光学結晶が窒化物単結晶で構成されていることを特徴とする波長変換素子。
d’=m/[(n/λ3)−(n/λ2)−(n/λ1)] (2)
[上記式(2)において、mは位相整合の次数、λ1、λ2、λ3はそれぞれ周波数ω1、ω2、ω3の光の波長、n、n、nはそれぞれ周波数ω1、ω2、ω3の光に対する窒化物単結晶の屈折率である]
【請求項3】
上記窒化物単結晶がAl1-xGaxN(但し、0≦x≦1)で表される窒化物であることを特徴とする請求項1または2に記載の波長変換素子。
【請求項4】
上記窒化物単結晶がAlNであることを特徴とする請求項1または2に記載の波長変換素子。
【請求項5】
上記窒化物単結晶がバルク状結晶で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の波長変換素子。
【請求項6】
上記窒化物単結晶が基板上に形成された薄膜で構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の波長変換素子。
【請求項7】
薄膜が形成される上記基板が、Si、GaAs、AlN、InP、AlGaN、Al、β−Gaのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の波長変換素子。
【請求項8】
上記窒化物単結晶が気相成長法により製造されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の波長変換素子。
【請求項9】
上記窒化物単結晶が液相成長法若しくは溶液成長法により製造されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の波長変換素子。
【請求項10】
波長変換して出力される光の少なくとも1つの光が波長500nm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の波長変換素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−145440(P2009−145440A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320441(P2007−320441)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】