説明

波長変換素子

【課題】 小型かつ簡単な構成の電磁波波長変換素子、前記電磁波波長変換素子を用いた波長分割多重光通信システム、波長可変光源および光発電システム、ならびに電磁波波長変換素子の製造方法を提供する。
【解決手段】
入射電磁波202をエバネッセント波204に変換するエバネッセント波変換手段401と、
エバネッセント波204を表面プラズモンポラリトン205に変換する表面プラズモンポラリトン変換手段401と、
表面プラズモンポラリトン205の周波数を変調する表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410と、
周波数変調手段410により周波数変調された表面プラズモンポラリトン205に結合したエバネッセント波206を出射電磁波208に変換する出射電磁波変換手段402とを有することを特徴とする波長変換素子1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学装置においては、半導体レーザ等の半導体発光素子がよく用いられる。半導体発光素子は、小型で発光効率に優れる等の利点があるためである。
【0003】
半導体素子が発光または吸収する波長、および前記波長に相当するエネルギー差は、半導体材料の組成、構造等に起因したバンドギャップに依存する。したがって、半導体発光素子の波長を所定の値とするためには、前記半導体発光素子を形成する半導体材料のバンドギャップが、前記所定の波長に対応する値となるように前記半導体材料を設計すれば良い。しかし、実際には、使用できる材料、製造方法等には制限があるため、半導体材料のバンドギャップを任意に制御することは困難を伴う。このため、半導体発光素子において、発光波長を自在に調節することは難しい。また、半導体発光素子に限らず、発光素子の発光波長は材料に依存するために、発光素子自体で任意の発光波長を得ることは困難である。そこで、必要とする任意の波長の光を得るために、波長変換素子が用いられる。
【0004】
現在知られている波長変換素子は、主に電気駆動型と全光型に分けられる。
【0005】
電気駆動型の波長変換素子には、例えば、音響光学効果で生成されたブラッグ格子により周波数をシフトさせるもの、および、電気光学効果により単側波帯(サイドバンド)へ周波数をシフトさせるものがある。電気駆動型波長変換素子は、主に半導体やLN(ニオブ酸リチウム)によりマッハツェンダー型変調器を構成して実用化されている。
【0006】
全光型の波長変換素子は、光の非線形光学効果を用いた素子で、原理的に次の2つに大別される。1つは、3次の非線形光学効果である相互利得変調、相互位相変調(カー効果)等を利用して、信号光によって被変換光を変調する方法である。もう1つは、2次の非線形光学効果である差周波発生、3次の非線形光学効果である四光波混合等を利用して、信号光の位相まで含めた情報を別の波長の光へと転写させる方法である。これらの方式は、半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)、半導体レーザ(Laser Diode:LD)等の半導体活性層、LN等の非線形光学結晶、光ファイバを使って実用化されている。
【0007】
なお、上記のような各種波長変換素子については、例えば、特許文献1または非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3548472号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】黒川 隆志 著「光機能デバイス」、共立出版、平成16年10月25日初版発行、第186〜195頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
波長変換素子において、所望の波長変換量を得るためには、相互作用係数と伝搬方向の相互作用距離との積が所望の値を満たす必要がある。しかしながら、前記の波長変換素子においては、その波長変換の原理となる、音響光学効果、電気光学効果、非線形光学効果のいずれも、光との相互作用係数が小さい。したがって、前記の波長変換素子では、相互作用係数が小さい分、相互作用距離を長くする必要があるため、光伝搬方向の寸法を大きくしなければならず、小型化が困難である。また、これらの波長変換素子は、例えば、非線形光学結晶およびフィルタなど、複数の素子を組み合わせる必要があるため、構成が複雑である。
【0011】
さらに、電気駆動型の波長変換素子の動作には高速・大振幅なRF信号源等が、全光型の波長変換素子の動作には励起用の高強度ポンプ光または被変換光の光源等が、それぞれ必要不可欠である。したがって、これらの波長変換素子およびその動作に必要な装置を含めたシステム全体では、大型で消費電力も大きくなり、コストも増大する。
【0012】
本発明は、小型かつ簡単な構成で電磁波(例えば光)の波長を変換可能な電磁波波長変換素子、前記電磁波波長変換素子を用いた波長分割多重光通信システム、波長可変光源および光発電システム、ならびに電磁波波長変換素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の第1の電磁波波長変換素子は、
半導体と正誘電体との積層構造を有し、
前記正誘電体は、前記半導体の表面に直接接触しており、
電圧印加状態または電圧非印加状態の前記半導体が、前記正誘電体との界面近傍に電子蓄積層を有し、
前記積層構造の一端に、電磁波入射領域が形成され、
前記積層構造の他端に、電磁波出射領域が形成され、
前記電子蓄積層は、その層平面に沿って、表面プラズモンポラリトンを前記電磁波入射領域から前記電磁波出射領域まで伝搬する層であり、
前記電子蓄積層において、前記電磁波入射領域と前記電磁波出射領域との間に、表面プラズモンポラリトン周波数変調領域が形成され、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域は、前記電磁波入射領域側から前記電磁波出射領域側に向かって変化する電子密度を有し、
前記電磁波入射領域に入射した入射電磁波を、前記電磁波入射領域の前記電子蓄積層内でエバネッセント波に変換し、さらに、表面プラズモンポラリトンに変換し、
前記表面プラズモンポラリトンの周波数を、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域の前記電子密度変化により変調し、
周波数が変調された前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント波を、前記電磁波出射領域において出射電磁波に変換し、前記入射電磁波から前記出射電磁波への波長変換を行うことを特徴とする。なお、以下において、表面プラズモンポラリトンを、SPP(Surface Plasmon Polariton)ということがある。
【0014】
または、本発明の第2の電磁波波長変換素子は、
入射電磁波をエバネッセント波に変換するエバネッセント波変換手段と、
前記エバネッセント波を表面プラズモンポラリトンに変換する表面プラズモンポラリトン変換手段と、
前記表面プラズモンポラリトンの周波数を変調する表面プラズモンポラリトン周波数変調手段と、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段により周波数変調された前記表面プラズモンポラリトンを出射電磁波に変換する出射電磁波変換手段とを有し、
前記表面プラズモンポラリトン変換手段および前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段が、正誘電体と負誘電体との積層構造を有し、前記正誘電体と前記負誘電体との界面を表面プラズモンポラリトンが伝搬することを特徴とする。
【0015】
本発明の波長分割多重(Wavelength Division Multiplex:WDM)光通信システムは、単一波長の光を発する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの出射光を分波する光分波器と、前記光分波器から発する光を複数の異なる波長の出射光に変換可能な前記本発明の電磁波波長変換素子とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明の波長可変光源は、前記本発明の電磁波波長変換素子と、集積光源とが、同一半導体基板上に集積されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の光発電システムは、前記本発明の電磁波波長変換素子と、前記電磁波波長変換素子からの出射光を起電力に変換する光起電力発生装置とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の電磁波波長変換素子の製造方法は、
半導体を形成する半導体形成工程と、
前記半導体表面に直接接触する正誘電体を形成する正誘電体形成工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の第2の電磁波波長変換素子の製造方法は、
前記エバネッセント波変換手段を形成するエバネッセント波変換手段形成工程と、
前記表面プラズモンポラリトン変換手段を形成する前記表面プラズモンポラリトン変換手段形成工程と、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段を形成する表面プラズモンポラリトン周波数変調手段形成工程と、
前記出射電磁波変換手段を形成する出射電磁波変換手段形成工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、小型かつ簡単な構成で電磁波(例えば光)の波長を変換可能な電磁波波長変換素子、前記電磁波波長変換素子を用いた波長分割多重光通信システム、波長可変光源および光発電システム、ならびに電磁波波長変換素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1(a)は、第1の実施形態の電磁波波長変換素子における光伝搬方向の断面図である。図1(b)は、図1(a)の電磁波波長変換素子の一部の上面図である。図1(c)は、図1(a)の電磁波波長変換素子の変形例の一部の上面図である。
【図2】図2(a)は、図1の電磁波波長変換素子の別の変形例における光伝搬方向の断面図である。図2(b)は、図2(a)の電磁波波長変換素子の一部の上面図である。図2(c)は、図2(a)の電磁波波長変換素子のさらに別の変形例の一部の上面図である。
【図3】第1の実施形態の電磁波波長変換素子における素子内電子密度分布を例示するグラフである。
【図4】第1の実施形態の電磁波波長変換素子における入射伝搬光およびSPPの分散関係を例示するグラフである。
【図5】第2の実施形態の電磁波波長変換素子の断面図である。
【図6】第2の実施形態の電磁波波長変換素子における入射伝搬光およびSPPの分散関係を例示するグラフである。
【図7】図7(a)は、第3の実施形態の電磁波波長変換素子における光伝搬方向の断面図である。図7(b)は、図7(a)の電磁波波長変換素子の上面図である。
【図8】図7の電磁波波長変換素子のバンドエネルギーを例示する模式図である。
【図9】第4の実施形態の電磁波波長変換素子における光伝搬方向の断面図である。
【図10】図10(a)は、第5の実施形態の電磁波波長変換素子における断面斜視図であり、図10(b)は、図10(a)の電磁波波長変換素子における、光伝搬方向と垂直方向の断面図である。
【図11】第6の実施形態の電磁波波長変換素子における光伝搬方向の断面図である。
【図12】第6の実施形態の電磁波波長変換素子における光伝搬方向と垂直方向の断面図である。
【図13】図11および12の電磁波波長変換素子のバンドエネルギーを例示する模式図である。
【図14】電子密度とプラズマ波長との関係を例示するグラフである。
【図15】本発明の電磁波波長変換素子を用いたWDM用光送信システムを例示するブロック図である。
【図16】本発明の電磁波波長変換素子と集積光源を組み合わせた波長可変光源を例示するブロック図である。
【図17】本発明の電磁波波長変換素子と電界吸収型変調器集積光源を組み合わせた変調器集積波長可変光源を例示するブロック図である。
【図18】本発明の電磁波波長変換素子と光起電力発生素子を備えた光発電システムのブロック図である。
【図19】3次非線形媒質を使った波長変換の例を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0023】
表面プラズモンポラリトンを伝搬させるためには、物質の表面または界面に、電磁波に結合しうる自由電荷が存在することが必要である。このためには、例えば、前記電磁波に対し、前記物質の表面または界面の両側で、誘電率の符号が異なるようにすれば良い。前記自由電荷は、正孔でも電子でも良いが、電子が好ましい。本発明の波長変換素子は、例えば、複数の異なる種類の物質から形成され、前記異種物質間の界面近傍に自由電荷が存在してもよい。前記自由電荷は、例えば、前記物質内の電子が蓄積された電子蓄積層として存在してもよい。より具体的には、例えば、後述の各実施形態のとおりである。
【0024】
例えば、本発明の前記第1の電磁波波長変換素子は、前記半導体が、前記正誘電体との界面近傍に前記電子蓄積層を有することで、前記エバネッセント波が、前記電子蓄積層における自由電子の集団振動と結合し、表面プラズモンポラリトンを形成することができる。また、前記電子蓄積層が、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって変化する電子密度を有することで、前記表面プラズモンポラリトンの周波数を変調することができる。前記電子蓄積層は、電圧非印加状態で前記電子密度変化を有していても良いし、電圧非印加状態では前記電子密度変化を有さず、電圧印加状態で前記電子密度変化を有していても良い。また、例えば、前記電子蓄積層は、電圧印加状態により前記電子密度変化の状態を変化させることが可能であっても良い。
【0025】
本発明の前記第1の電磁波波長変換素子において、
前記半導体が、n型半導体とp型半導体との積層構造を有し、
前記p型半導体は、前記n型半導体の表面に直接接触しており、
前記正誘電体は、絶縁体であり、かつ、前記p型半導体の表面に直接接触していることが好ましい。
【0026】
また、本発明の前記第1の電磁波波長変換素子において、
前記半導体が、真性半導体であり、
前記正誘電体が、n型半導体であり、
さらに、金属または絶縁体を含み、
前記金属または絶縁体が、前記n型半導体を挟んで前記真性半導体と反対側に設けられており、かつ、前記n型半導体の表面に直接接触していることが好ましい。
【0027】
また、本発明の前記第1の電磁波波長変換素子は、前記正誘電体に代えて、金属を有していても良い。
【0028】
本発明の前記第1の電磁波波長変換素子において、
前記電磁波入射領域における前記半導体が、第1の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第1の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記正誘電体は、前記第1の凹凸繰り返し構造における凹凸表面に直接接触していることが好ましい。
【0029】
または、前記電磁波入射領域が、前記積層構造に代えて、第1の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第1の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記第1の凹凸繰り返し構造により、前記入射電磁波をエバネッセント波に変換するとともに、前記エバネッセント波を伝搬し、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域において、前記エバネッセント光を表面プラズモンポラリトンに変換することが好ましい。
【0030】
本発明の前記第1の半導体波長変換素子において、
前記電磁波出射領域における前記半導体が、第2の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第2の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記正誘電体は、前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸表面に直接接触していることが好ましい。
【0031】
または、前記電磁波出射領域が、前記積層構造に代えて、第2の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第2の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記第2の凹凸繰り返し構造が、前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント波を伝搬可能であることが好ましい。
【0032】
本発明の第1の電磁波波長変換素子は、
さらに、電磁波透過性部材を有し、
前記電磁波透過性部材は、前記電磁波入射領域において前記半導体または前記正誘電体に接触するように配置され、
前記電磁波透過性部材から入射した光を、前記電磁波透過性部材と前記半導体または前記正誘電体との界面で全反射させても良い。
【0033】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子において、
前記エバネッセント波変換手段が、単一波数の入射電磁波を、複数の波数のエバネッセント波に変換し、
前記表面プラズモンポラリトン変換手段が、前記複数の波数のエバネッセント波の中から、前記表面プラズモンポラリトン変換手段を伝搬しうる表面プラズモンポラリトンの波数と整合する波数のエバネッセント波を前記表面プラズモンポラリトンに変換することが好ましい。
【0034】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子において、
前記表面プラズモンポラリトン変換手段および前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段が、半導体と正誘電体との積層構造を有し、
前記正誘電体は、前記半導体の表面に直接接触しており、
電圧印加状態または電圧非印加状態の前記半導体が、前記正誘電体との界面近傍に電子蓄積層を有し、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変換手段における前記電子蓄積層は、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって変化する電子密度を有することが好ましい。
【0035】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子において、
前記エバネッセント波変換手段が、第1の凹凸繰り返し構造から形成され、
前記第1の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられていることが好ましい。
【0036】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子は、前述のとおり、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段により周波数変調された前記表面プラズモンポラリトンを出射電磁波に変換する出射電磁波変換手段を有する。前記出射電磁波変換手段は、特に制限されない。例えば、前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント波を、光出射部(素子端など)から出射させることにより、直接、出射電磁波(出射伝搬光)に変換しても良い。この場合、少なくとも前記光出射部(素子端など)が、前記出射電磁波変換手段に相当する。また、例えば、前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント波を、回折、散乱などにより波数変換することで出射電磁波(出射伝搬光)に変換し、さらに、光出射部(素子端など)から出射させても良い。この場合、少なくとも、前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント波を、回折、散乱などにより波数変換することで出射電磁波(出射伝搬光)に変換する手段が、前記出射電磁波変換手段に相当する。
【0037】
なお、本発明において、「伝搬波」は、エバネッセント波ではない電磁波を言い、例えば、通常の媒質中または空間中を3次元的に伝搬することが可能である。「伝搬光」は、光である伝搬波を言う。また、本発明において、電磁波の「伝搬」は、電磁波が空間中を伝わる場合、および電磁波が媒質中を伝わる場合を含む。
【0038】
前記出射電磁波変換手段は、複数の異なる波数の表面プラズモンポラリトンを、前記表面プラズモンポラリトンの周波数と整合する波数の出射電磁波に変換可能であることが好ましい。また、前記出射電磁波変換手段は、第2の凹凸繰り返し構造を含み、前記第2の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられていることが好ましい。
【0039】
本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔は、規則的であっても良い。この場合において、本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子が、前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造の両方を有し、前記第1の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔が、均一であり、前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔が、均一であり、前記第1の凹凸繰り返し構造と前記第2の凹凸繰り返し構造とは、前記凹凸の寸法および配置間隔の少なくとも一方が異なることがより好ましい。このような構造によれば、例えば、波長変換が行いやすい。
【0040】
また、本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記第1の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔は、前記のとおり規則的であっても良いが、不規則であっても良い。前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔は、前記のとおり規則的であっても良いが、不規則であっても良い。前記第1の凹凸繰り返し構造は、人為的に形成されたものでも良いし、非人為的に形成されたものでも良い。例えば、前記第1の凹凸繰り返し構造は、あらかじめ設計したパターンを転写して作製したものでも良いし、または、物質の表面粗さ、自己集合等の現象により形成されたランダムな表面凹凸(ラフネス)であっても良い。前記第2の凹凸繰り返し構造においても同様である。
【0041】
本発明の電磁波波長変換素子は、電磁波を波長変換可能である。前記電磁波は、光であることが好ましく、実用度の高さの観点から、可視光または赤外光であることがより好ましい。すなわち、本発明の電磁波波長変換素子において、前記入射電磁波は、電磁波であれば良いが、光であることが好ましく、可視光または赤外光であることがより好ましい。前記出射電磁波は、電磁波であれば良いが、光であることが好ましく、可視光または赤外光であることがより好ましい。また、前記電磁波に対する誘電率が正か負か(正誘電体であるか負誘電体であるか)は、前記電磁波の波長に応じて決まる。このため、前記電子蓄積層において表面プラズモンポラリトンを励起し、かつ伝搬するためには、前記正誘電体は、前記エバネッセント波に対して誘電率が正となる物質で形成されている必要がある。なお、本発明の第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記半導体における前記電子蓄積層以外の部分は、前記エバネッセント波に対して誘電率が正(正誘電体)となる性質を持っていても良い。したがって、本発明の第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記エバネッセント波およびSPPは、前記電子蓄積層と前記「正誘電体」との界面を伝搬しても良いし、前記電子蓄積層と前記「半導体」との界面を伝搬しても良い。
【0042】
また、前記電子蓄積層において表面プラズモンポラリトンを励起し、かつ伝搬するためには、前記電子蓄積層は、前記エバネッセント波に対して誘電率が負となる(負誘電体となる)電子密度を有している必要がある。本発明において、前記半導体波長変換素子の使用時における前記電子蓄積層の電子密度は、好ましくは1×1021cm−3以上、より好ましくは1×1022cm−3以上である。前記電子蓄積層の電子密度が1×1021cm-3以上であれば、近赤外領域以上の波長のエバネッセント波に対して前記電子蓄積層が負誘電体となりやすい。前記電子蓄積層の電子密度が1×1022cm-3以上であれば、可視光領域以上の波長のエバネッセント波に対して前記電子蓄積層が負誘電体となりやすい。前記電子蓄積層の電子密度の上限値は、特に制限されないが、例えば、1×1023cm−3以下または金属と同程度である。なお、本発明において、電子または不純物等の密度または濃度を表す場合、特に断らない限り、電子数または不純物の原子数についての密度または濃度をいうものとする。
【0043】
本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面に平行な平面を有することが好ましい。この構造によれば、前記積層構造の層平面に垂直な方向の電場振動を伴う表面プラズモンポラリトンを伝搬しやすい。
【0044】
本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面から傾斜し、かつ電磁波入射側から電磁波出射側への方向に平行な平面を有することが好ましい。この構造によれば、前記積層構造の層平面に垂直な方向から傾斜した方向の電場振動を伴う表面プラズモンポラリトンを伝搬しやすい。
【0045】
本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面に垂直であり、かつ電磁波入射側から電磁波出射側への方向に平行な平面を有することが好ましい。この構造によれば、前記積層構造の層平面に平行な方向の電場振動を伴う表面プラズモンポラリトンを伝搬しやすい。また、これに加え、前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、さらに、前記積層構造の層平面に平行な平面を有していれば、前記積層構造の層平面に垂直な方向の電場振動を伴う表面プラズモンポラリトン、および、前記積層構造の層平面に平行な方向の電場振動を伴う表面プラズモンポラリトンのいずれをも伝搬しやすい。
【0046】
本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子において、前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記電磁波波長変換素子の電磁波入射側から電磁波出射側まで連続していることが好ましい。この構造によれば、前記電磁波波長変換素子の電磁波入射側から電磁波出射側までにおいて、前記表面プラズモンポラリトンの伝搬効率に優れる。
【0047】
本発明の第1または第2の電磁波波長変換素子は、さらに、電圧印加手段を有し、前記電圧印加手段への電圧印加により、前記電子蓄積層の少なくとも一部、または前記正誘電体と前記負誘電体との界面の少なくとも一部の電子密度を変化させることが可能であることが好ましい。前記電圧印加手段は、電極であることがより好ましい。本発明の波長変換素子において、前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層は、例えば、電圧を印加しない状態で、表面プラズモンポラリトンが伝搬可能な電子密度を有していても良い。前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層は、電圧を印加しない状態では表面プラズモンポラリトンが伝搬可能な電子密度を有さず、電圧を印加することにより表面プラズモンポラリトンが伝搬可能となる部分であっても良い。本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子は、電圧を印加せずに使用できる電磁波波長変換素子であっても良いし、電圧を印加して使用する電磁波波長変換素子であっても良い。本発明の電磁波波長変換素子において、前記表面プラズモンポラリトンが伝搬する部分の電子密度は、例えば後述のとおりである。
【0048】
本発明の前記第1の電磁波波長変換素子は、前記電圧印加手段により、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域の電子密度を変化させることが可能であることが好ましい。
【0049】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子は、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段が、前記正誘電体と前記負誘電体との界面において、電磁波入射側から電磁波出射側へ向かって変化する電子密度変化を有し、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段への電圧印加により、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段の電子密度を変化させることが可能であることが好ましい。
【0050】
本発明の前記第1の電磁波波長変換素子は、前記電磁波入射領域への電圧印加により、前記エバネッセント波の波数と前記表面プラズモンポラリトンの波数が整合するように、前記電磁波入射領域における前記電子蓄積層の電子密度を変化させることが可能であることが好ましい。
【0051】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子は、前記表面プラズモンポラリトン変換手段への電圧印加により、前記エバネッセント波の波数と前記表面プラズモンポラリトンの波数が整合するように、前記表面プラズモンポラリトン変換手段における前記正誘電体と前記負誘電体との界面の電子密度を変化させることが可能であることが好ましい。
【0052】
本発明の前記第1または第2の電磁波波長変換素子は、前記第2の凹凸繰り返し構造への電圧印加により、前記第2の凹凸繰り返し構造に入射する表面プラズモンポラリトンの波数と、前記第2の凹凸繰り返し構造におけるエバネッセント波の波数が整合するように、前記第2の凹凸繰り返し構造における前記電子蓄積層の電子密度を変化させることが可能であることが好ましい。
【0053】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子は、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段への電圧印加により、前記出射電磁波変換手段に入射する表面プラズモンポラリトンの波数と前記エバネッセント波の波数とが整合するように、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段における前記正誘電体と前記負誘電体との界面の電子密度を変化させることが可能であることが好ましい。
【0054】
本発明の波長分割多重(Wavelength Division Multiplex:WDM)光通信システムは、前記半導体発光素子、前記電磁波波長変換素子、および前記光分波器が、同一半導体基板上に集積されていることが、小型化、低消費電力化等の観点から好ましい。
【0055】
本発明の波長可変光源は、前述の通り、前記本発明の電磁波波長変換素子と、集積光源とが、同一半導体基板上に集積されていることを特徴とする。前記集積光源は、分布帰還型(distributed feedback laser,DFB)レーザまたは分布反射型(Distributed Bragg Reflector,DBR)レーザであることが好ましい。DFBレーザ、DBRレーザ等の光源によれば、例えば、半導体結晶のへき開面が不要である。
【0056】
また、本発明の波長可変光源は、例えば、前記集積光源が、電界吸収型変調器集積光源であり、変調器集積波長可変光源として用いられることが好ましい。
【0057】
本発明の光発電システムは、前記電磁波波長変換素子と、前記光起電力発生装置とが、同一半導体基板上に集積されていることが、小型化等の観点から好ましい。
【0058】
本発明の電磁波波長変換素子の製造方法は、特に制限されないが、前記本発明の第1または第2の製造方法により製造することが好ましい。前記本発明の第1および第2の製造方法において、各工程を行う順序は特に制限されず、同時でも逐次でも良く、逐次の場合はどの工程が先でも良い。前記本発明の第1の製造方法は、さらに、前記半導体表面の電磁波入射側に、第1の凹凸繰り返し構造を形成する第1の凹凸繰り返し構造形成工程を含み、前記第1の凹凸繰り返し構造形成工程において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられるように前記第1の凹凸繰り返し構造を形成し、前記正誘電体形成工程において、前記半導体の、前記第1の凹凸繰り返し構造形成側の表面に直接接触するように前記正誘電体を形成することが好ましい。また、前記本発明の第1の製造方法は、さらに、前記半導体表面の電磁波出射側に、第2の凹凸繰り返し構造を形成する第2の凹凸繰り返し構造形成工程を含み、前記第2の凹凸繰り返し構造形成工程において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられるように前記第2の凹凸繰り返し構造を形成し、前記正誘電体形成工程において、前記半導体の、前記第2の凹凸繰り返し構造形成側の表面に直接接触するように前記正誘電体を形成することが好ましい。
【0059】
次に、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0060】
[第1の実施形態]
図1(a)および(b)に、本実施形態の電磁波波長変換素子の構造を示す。この電磁波波長変換素子は、前記本発明の第2の電磁波波長変換素子の一例である。図1(a)は、光伝搬方向(光入射側から光出射側への方向)の断面図である。また、図1(b)は、図1(a)の電磁波波長変換素子における第1の凹凸繰り返し構造401または第2の凹凸繰り返し構造402の構造を模式的に示す上面図である。ただし、同図では、図示の便宜上、正誘電体層(正誘電体)209を省略している。図1(a)に示すとおり、この電磁波波長変換素子1は、第1の凹凸繰り返し構造401と、表面プラズモンポラリトンの周波数を変調する表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410と、第2の凹凸繰り返し構造402とを含む。同図の電磁波波長変換素子において、第1の凹凸繰り返し構造401は、後述するように、入射光(入射電磁波)をエバネッセント光(エバネッセント波)204に変換することで、波数を変換する機能と、前記エバネッセント光(エバネッセント波)を表面プラズモンポラリトンに変換する機能とを有する。すなわち、第1の凹凸繰り返し構造401は、前記「エバネッセント波変換手段」と、前記「表面プラズモンポラリトン変換手段」とを兼ねる。第2の凹凸繰り返し構造402は、後述するように、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410により周波数変調された前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント光206の波数を変換することで、出射光(出射電磁波、または出射伝搬光とも言う)208に変換する機能を有する。すなわち、第2の凹凸繰り返し構造402は、前記「出射電磁波変換手段」に相当する。第1の凹凸繰り返し構造401、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410、および第2の凹凸繰り返し構造402は、基板110上に、一体に形成されている。また、第1の凹凸繰り返し構造401、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410、および第2の凹凸繰り返し構造402は、それぞれ、電子蓄積層(負誘電体層)201上に、正誘電体層(正誘電体)209が積層されて形成されている。第1の凹凸繰り返し構造401および第2の凹凸繰り返し構造402においては、電子蓄積層201の上部がところどころ除去されている。電子蓄積層201が除去された部分には、正誘電体層209が入り込み、光入射側(電磁波入射側)から光出射側(電磁波出射側)に向かって、凹凸が交互に設けられた構造を形成している。第1の凹凸繰り返し構造401における凹凸の寸法および配置間隔は、均一である。第2の凹凸繰り返し構造402における凹凸の寸法および配置間隔は、均一である。第1の凹凸繰り返し構造401と第2の凹凸繰り返し構造402とは、前記凹凸の寸法および配置間隔が異なる。電子蓄積層201は、電磁波波長変換素子1の光入射側から光出射側まで連続している。基板110の材質は、特に制限されない。電子蓄積層201および正誘電体層209の材質は、特に制限されず、後述のように、それぞれ、半導体、金属、絶縁体等から適宜選択可能である。
【0061】
図1(a)の電磁波波長変換素子1は、例えば、以下のようにして動作させることができる。すなわち、まず、第1の凹凸繰り返し構造401に、入射光(入射伝搬光)202を、入射角θaで入射させる。前記入射角とは、光伝搬方向に垂直な平面とのなす角である。前記光伝搬方向とは、光入射側から光出射側に向かう方向をいう。図中の矢印203は、入射光(入射伝搬光)202の、光伝搬方向成分である。入射光202は、第1の凹凸繰り返し構造により回折光に変換され、前記回折光の少なくとも一部は、エバネッセント光204となり、電子蓄積層201の表面(正誘電体層209との界面)を伝搬する。さらに、エバネッセント光204は、第1の凹凸繰り返し構造401において、その場で、電子蓄積層201における自由電子の振動と結合し、表面プラズモンポラリトン205に変換される。表面プラズモンポラリトン205は、光入射側から光出射側に向かって伝搬し、さらに、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410内を伝搬する際に、周波数が変調される。この周波数変調は、例えば、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410が、光入射側から光出射側に向かって変化する電子密度(電子密度勾配)を有することにより、達成できる。表面プラズモンポラリトン205に結合したエバネッセント光206は、第2の凹凸繰り返し構造402を伝搬する。エバネッセント光206は、第2の凹凸繰り返し構造402によって、伝搬光の分散関係を満たした出射光(出射伝搬光)208に変換され、出射角θbで出射される。前記出射角とは、光伝搬方向に垂直な平面とのなす角である。矢印207は、前記出射光(出射伝搬光)208の、光伝搬方向成分である。なお、図1(a)では、エバネッセント光204、表面プラズモンポラリトン205、およびエバネッセント光206を表す矢印は、図示の便宜上、電子蓄積層201の上方を通っているが、実際には、これらは、電子蓄積層201の表面(正誘電体層209との界面)を伝搬する。以下の各実施形態においても同様である。
【0062】
本発明の電磁波波長変換素子は、従来の電気駆動型や全光型とは異なった、表面プラズモンポラリトン(Surface Plasmon Polariton:SPP)の性質を利用した新しい電磁波波長変換素子である。以下、本発明の電磁波波長変換素子の動作原理について、さらに具体的に説明する。ただし、以下の説明は例示であって、本発明を限定しない。また、数式は理論式であり、本発明における実際の現象を定性的にまたは近似的に表す。本発明は、数式と完全に一致する場合には限定されない。
【0063】
低次元の波動が、負誘電体と正誘電体との界面に局在しながら前記界面を伝搬する現象がある。この波動は電磁波の一種であり、表面プラズモンポラリトン(Surface Plasmon Polariton:SPP)と呼ばれている。SPPが前記界面を伝搬できるためには、前述のように、前記界面を構成する2つの媒質の誘電率が異符号であればよい。なお、本発明の電磁波波長変換素子において、前記入射電磁波、前記エバネッセント波、および前記出射電磁波は、前述のとおり、電磁波であれば良い。本実施形態および以下の各実施形態では、主に、前記電磁波が光である場合について説明する。ただし、光以外の電磁波についても、理論的には、光の場合と同様の原理で波長変換が可能である。
【0064】
入射光をSPPに変換して(入射光によりSPPを励起して)前記界面を伝搬させるためには、前記負誘電体の電子密度が所定の条件を満たす必要がある。以下、これについて説明する。
【0065】
例えば、金属中の自由電子のような束縛の小さい電子気体の場合、誘電関数ε(ω)の周波数ω依存性は、電場の中での自由電子の運動方程式から、下記数式(1)で表される。
【0066】
ε(ω)=1−ω/(ω+iΓω) (1)
【0067】
前記数式(1)において、ωはプラズマ周波数であり、下記数式(2)で定義される。
【0068】
ω(n)=ne/(εm) (2)
【0069】
前記数式(2)において、nは電子密度、eは電気素量、εは真空中の誘電率、mは電子の質量、Γはプラズマ振動の減衰を決める減衰係数である。ここで、定性的な議論のためにプラズマ振動の減衰Γを無視すると、前記数式(2)は実数となる。したがって、誘電率の符号と周波数の関係は、プラズマ周波数を境に、高周波数(短波長)側では正となるのに対し、低周波数(長波長)側では負となる。
【0070】
したがって、SPPを伝搬させるためには、使用したい光の波長域における周波数ωよりも、プラズマ周波数ωが高くなるような条件が必要となる。前記数式(2)からわかるように、プラズマ周波数ωは電子密度nに依存する。すなわち、目的とする(使用したい)波長域における周波数ωよりも、プラズマ周波数ωが高くなるように、前記負誘電体の電子密度nが十分大きい必要がある。
【0071】
例えば、SPPを利用して、金属などの負誘電体から構成された導波路構造により、低次元光波をナノ領域で伝搬させることが可能である。特に、1組以上の負誘電体と誘電体を組み合わせた例として、ある金属を誘電率の異なる金属で挟んで接合した構造が提案されている(特開2006−190446号公報)。この構造は、金属の接合方向に沿って伝搬したSPPが誘電率の異なる金属との境界で反射されて干渉することにより、電場強度が増強することが特徴である。これらの導波路構造は、回折限界による波長オーダーの光分布の影響を受けないことを利用した高感度、高精細な光センシング、素子の大幅な小型化、負誘電体による電場増強効果を利用した局所高強度光の生成等を目的として使用されるが、波長変換を目的としたものではない。また、金属のみを用いた場合は、その金属材料によって電子密度、すなわちプラズマ周波数ωが決まっているため、材料によってSPPを伝搬させることができる周波数域が決まり、波長変換には適さない。仮に、複数の周波数帯域でSPPを伝搬させることを目的として、さらに多種類の金属材料を組み合わせたとしても、プラズマ周波数は、金属材料の電子密度に応じて離散的な値しかとることができず、かつ、素子の構成が複雑になる。これに対し、本発明の電磁波波長変換素子は、半導体材料を用いる。半導体材料は、金属材料と異なり、電子密度を変化させることができるため、簡単な構成で、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域に、前記電磁波入射領域側から前記電磁波出射領域側に向かって変化する電子密度を持たせることができる。例えば、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域に、連続的な電子密度勾配を持たせることも可能である。このように、半導体材料を用いて電子密度を変化させるという本発明の技術的思想は、特開2006−190446号公報等には開示されておらず、これらの発明の技術的思想の延長上にはないため、本発明は、これらの発明から当業者が想到することは困難である。
【0072】
一方、前記数式(2)は、特定の物質だけではなく、半導体中のフリーキャリアに対しても成り立つ。すなわち、半導体中のフリーキャリア密度を、前記所定の条件を満たすように増大させて、使用する波長域に対して負誘電体として振舞わせることで、半導体と誘電体との界面にSPPを伝搬させることができる。このようにしてSPPを伝搬させる方法としては、例えば、HEMT(High Electron Mobility Transistor、高電子移動度トランジスタ)構造に類似した、高濃度n型半導体と真性半導体層のヘテロ界面の2次元電子ガスによる方法(WO2006/030608)がある。また、n型半導体層上にp型半導体層および絶縁層を前記順序で積層させ、前記p型半導体層と絶縁層との界面の反転分布層を利用する方法(特開2006−343410号公報)等もある。しかし、金属ではなく、半導体でフリーキャリア密度を増大させて負誘電体として(金属的に)振舞わせる目的は、前者においては、非放射プラズモン波から放射電磁波への変換効率の向上であり、後者においては、表面プラズモンポラリトンの伝搬損失低減である。すなわち、いずれの技術も、波長変換を目的としたものではない。また、前記各公報には、電磁波入射領域側から電磁波出射領域側に向かって電子密度を変化させることは記載されていない。このように、半導体の電子密度の変化を波長変換目的で利用するという技術的思想は、前記各公報には記載も示唆もなく、本発明者らが初めて見出したことである。
【0073】
なお、本実施形態の電磁波波長変換素子(図1(a))は、前述のように、電子蓄積層内において、正誘電体との界面を表面プラズモンポラリトン(SPP)が伝搬する。ここで、前記正誘電体は、前記SPPを前記正誘電体内に伝搬して拡散させない性質を持っていれば良く、電気的絶縁体でなくても良い。前記数式(2)を用いて説明したとおり、前記SPPに対し、正誘電体であるか負誘電体であるかは、前記SPPの周波数に依存する。本実施形態の電磁波波長変換素子では、伝搬しようとする周波数のSPPに対し、前記電子蓄積層が負誘電体であるように、前記電子蓄積層の電子密度を適切に選択し、かつ、前記正誘電体を適切に選択すれば良い。
【0074】
SPPの周波数と波数の関係を決める分散関係は、誘電関数ε(ω)の負誘電体と誘電率εの誘電体の2次元界面においては、下記数式(3)で表される。
【0075】
sp(ω)=ω/c×ε1/2×(ω−ω/((ε+1)ω−ω))1/2 (3)
【0076】
前記数式(2)で説明したとおり、プラズマ周波数ωは、負誘電体の電子密度nによって一意に決まる。したがって、前記負誘電体の電子密度nが決まると、前記数式(2)によってプラズマ周波数ωが決まり、誘電率εの前記正誘電体との界面のSPPの分散関係は、前記数式(3)のように決まる。すなわち、前記数式(3)の分散関係は、本波長変換素子を構成する前記正誘電体が決まれば、前記負誘電体の電子密度nによって一意に決まり、異なる電子密度nに対しては異なる分散関係を与えることになる。また、特定の1組の負誘電体と正誘電体の組み合わせによれば、前記負誘電体と前記正誘電体との界面では、SPPの波数の伝搬方向成分が保存する。したがって、前記数式(3)によれば、前記特定の1組の負誘電体と正誘電体の組み合わせにおいては、SPPが一定の周波数で伝搬する。
【0077】
図4のグラフに、SPPの分散関係および通常の伝搬光の分散関係を例示する。同図において、SPPの分散関係は、絶縁部(例えばSiO層:ε=4.1)との界面に形成された電子蓄積層内をSPPが伝搬する場合を想定している。図中、横軸は、波数(cm−1)であり、縦軸は、角振動数(Hz)である。301は、通常の伝搬光の分散関係を示す直線である。分散直線301により示される前記伝搬光は、入射光(入射伝搬光)202の、光伝搬方向成分203に対応する。304は、電子密度nが、n=1×1021cm−3である電子蓄積層におけるSPPの分散関係を示す曲線である。306は、電子密度nが、n=2×1022cm−3である電子蓄積層におけるSPPの分散関係を示す曲線である。図示のとおり、誘電率εの前記正誘電体との界面のSPPの分散関係は、電子密度nによって一意に決まる。前記数式(2)を用いて説明したとおり、プラズマ周波数ωが電子密度nによって一意に決まるためである。図4から、一定の電子密度を有する電子蓄積層中をSPPが一定の波数kspで伝搬する場合、前記SPPの周波数(角振動数)は一定となることが分かる。これはすなわち、前記電子蓄積層の電子密度を変化させることで、前記電子蓄積層(誘電体と負誘電体との界面)での波数の伝搬方向成分を保存しながら、周波数を変えられることを意味する。例えば、前記電子蓄積層の電子密度勾配を連続的とすることで、前記周波数を連続的に変えることができる。従来は、SPP伝搬領域の電子密度に、勾配(特に、連続的な勾配)を形成できる構造は存在しなかった。そのような構造、および前記構造を用いて周波数を(特に、連続的に)変えることができることは、本発明者らが初めて見出した。
【0078】
また、伝搬光でSPPを励起するためには、伝搬光の位相速度とSPPの位相速度が一致する必要がある。x方向の波数をkとすると、x方向の位相速度は、ω/kで与えられる。したがって、伝搬光とSPPとの位相速度が一致するためには、伝搬光の分散曲線とSPPの分散曲線とが交点をもつ必要がある。しかしながら、図4に示すとおり、通常の伝搬光の分散直線301は、SPPの分散曲線と交点を有しない。したがって、単に電子蓄積層(負誘電体)と正誘電体との界面に光を入射しても、その入射光によりSPPを励起する(入射光をSPPに変換する)ことはできない。したがって、本発明の第2の電磁波波長変換素子においては、前述の通り、前記積層構造の光入射側に、エバネッセント波変換手段および表面プラズモンポラリトン変換手段が形成されている。前記エバネッセント波変換手段および前記表面プラズモンポラリトン変換手段により、入射電磁波(入射伝搬波)を表面プラズモンポラリトンに変換することが可能である。
【0079】
図1(a)の電磁波波長変換素子において、第1の凹凸繰り返し構造401では、入射した光が、回折によりエバネッセント光を生じさせることを利用して、そのエバネッセント光により、前記電子蓄積層においてSPPを励起することができる。すなわち、前記第1の繰り返し構造では、入射光をエバネッセント光に変換し、そのエバネッセント光によりSPPを励起することで、前記入射光をSPPに変換することができる。例えば、周期aの1次元周期構造を有する第1の凹凸繰り返し構造401に、波数ベクトルk、入射角θで入射光(入射伝搬光)202が入射し、波数ベクトルkaxのエバネッセント光204が生じたとすると、その波数は、入射光202のx方向(伝搬方向)成分203の波数ベクトルkixと、周期構造に対応する逆格子ベクトルgの和になり、下記数式(4)で表される。ただし、式中のmは、回折の次数を表す整数である。ここで、電子蓄積層201におけるプラズマ振動数が入射光の振動数と一致したとき、エバネッセント光204によって前記電子蓄積層201と正誘電体層209の界面に表面プラズモンポラリトンが励起される。このとき、波数の伝搬方向に沿った成分の保存則により下記数式(5)が満たされる。ここで、kbxは、周期bの1次元周期構造を有する第2の凹凸繰り返し構造402に生じたエバネッセント光206の波数である。前記波数kbxのエバネッセント光206は、周期bの1次元周期構造を有する第2の凹凸繰り返し構造402によって周期構造に対応する逆格子ベクトルgの分だけ減少した波数koxを有するx方向の伝搬光207になり、下記数式(6)で表される。最終的に、角度θ方向に出射される出射光208の波数成分は、下記数式(7)で示したkとなる。この式より、出射される波数は、入出射角θおよびθと、周期構造の周期aおよびbで決まる値に変化することがわかる。伝搬光においては、振動数は波数に比例するので、振動数すなわち波長が変化したことになる。
【0080】
ax=kix+g=ω/c×ε1/2×sinθ+2πm/a (4)
ax=ksp=kbx (5)
ox=kbx−g=ω/c×ε1/2×sinθ+2πm/a−2πm/b(6)
=kox/sinθ
=ω/c×ε1/2×sinθ/sinθ+2πm(1/a−1/b)/sinθb (7)
【0081】
前記数式(5)のようにkax=ksp=kbxが満たされることにより、すなわちエバネッセント光の分散曲線とSPPの分散曲線が交点をもてば、エバネッセント光とSPPとで相互に変換がおこなわれる。すなわち、本発明の電磁波波長変換素子において、前記光入射側から前記光出射側への方向をx方向とした場合に、kax=ksp=kbxであれば、前記表面プラズモンポラリトン変換構造において、入射光をSPPに変換し、前記光出射側に向けて伝搬できる。
【0082】
なお、前記数式(4)〜(7)においては、周期aの周期構造を考えたが、周期aの値は一定でなくても良い。すなわち、前記第1の凹凸繰り返し構造においては、前記半導体と異種半導体または半導体と絶縁体とから形成された誘電率の符号が異なる部分が交互に配置されて形成された凹凸の寸法および配置間隔(周期)は、一定であっても良いが、一定でなくても良い。例えば、前記第1の凹凸繰り返し構造は、設計したパターンを転写して作製したか、または、表面粗さや自己集合といった現象により形成されたランダムな表面凹凸(ラフネス)であってもエバネッセント波が発生し得る。図1(b)の上面図は、第1の凹凸繰り返し構造401の一例を示している。同図においては、前記のとおり、電子蓄積層201が形成する凹凸の寸法および配置間隔(周期)が一定である。また、図1(c)の上面図は、図1(a)および(b)の電磁波波長変換素子の変形例である。同図は、第1の凹凸繰り返し構造401における凹凸の寸法および配置間隔(周期)が不規則(ランダム)である場合を示す。図1(b)と同様、正誘電体層209は省略して示している。前記ランダムな表面凹凸は、多数の周期の重ね合わせであるため、エバネッセント光204の波数kaxは、単一ではなく、広がりを持つことになる。この場合において、本発明の電磁波波長変換素子が、前記第1の凹凸繰り返し構造(表面プラズモンポラリトン変換構造)に電圧を印加する第1の電極を有することが好ましい。前記第1の電極の電圧を調整することにより、前記エバネッセント光の中から、目的のSPPと整合する波数のエバネッセント光を任意に選ぶことができる。これを利用すれば、任意の波長の入射光から任意の波長の出射光への変換も可能となる。また、第2の凹凸繰り返し構造402も、第1の凹凸繰り返し構造401と同様、例えば、図1(b)のように凹凸の寸法および配置間隔(周期)が一定であっても良いし、図1(c)のように凹凸の寸法および配置間隔(周期)が不規則(ランダム)であっても良い。
【0083】
なお、第1の凹凸繰り返し構造401が、図1(b)に示す構造の場合、入射光(入射伝搬光)202は、例えば、前記のとおり、回折により、エバネッセント光204に変換される。第1の凹凸繰り返し構造401が、図1(c)に示す構造の場合、入射光(入射伝搬光)202は、例えば、散乱により、または散乱および回折により、エバネッセント光204に変換されると考えられる。第2の凹凸繰り返し構造402が、図1(b)に示す構造の場合、エバネッセント光206は、例えば、回折により、出射光(出射伝搬光)208に変換される。第2の凹凸繰り返し構造402が、図1(c)に示す構造の場合、エバネッセント光206は、例えば、散乱により、または散乱および回折により、出射光(出射伝搬光)208に変換されると考えられる。ただし、これらは、可能な機構の例示である。第1の凹凸繰り返し構造401における入射光(入射伝搬光)202からエバネッセント光204への変換機構、および、第2の凹凸繰り返し構造402におけるエバネッセント光206から出射光(出射伝搬光)208への変換機構は、前記の例示に限定されない。
【0084】
なお、電子蓄積層201は、例えば、電極による電圧印加で、電子密度または光入射側から光出射側への電子密度勾配を変化させてもよい。この電極の作用効果においては、後の実施形態において詳しく述べる。前記のとおり、図1(a)の電磁波波長変換素子は、前記本発明の第2の電磁波波長変換素子の一例であるが、前記本発明の第1の電磁波波長変換素子も、動作原理および波長変換原理は同様である。
【0085】
また、図2(a)に、図1(a)の電磁波波長変換素子の変形例を示す。図示のとおり、この電磁波波長変換素子は、第1の凹凸繰り返し構造401および第2の凹凸繰り返し構造402の凹部において、電子蓄積層201が存在せず、正誘電体層209が、基板110に接触している。すなわち、第1の凹凸繰り返し構造401および第2の凹凸繰り返し構造402においては、電子蓄積層201が連続しておらず、光入射側から光出射側に向かって断続的に配置されている。これ以外は、図2(a)の電磁波波長変換素子は、図1(a)の電磁波波長変換素子と同様である。なお、図2(b)は、図2(a)における第1の凹凸繰り返し構造401の上面図(正誘電体層209は省略)であり、凹部に電子蓄積層201が存在しない以外は、図1(b)と同様である。図2(c)は、図2(a)における第1の凹凸繰り返し構造401の上面図(正誘電体層209は省略)の変形例(凹凸の周期がランダムな例)であり、凹部に電子蓄積層201が存在しない以外は、図1(c)と同様である。
【0086】
本発明の電磁波波長変換素子において、前記エバネッセント波変換手段または前記第1の凹凸繰り返し構造は、電子蓄積層(自由電荷を有する表面)を有さず、SPPが伝搬しない構造であっても良い。このような構造であっても、前記エバネッセント波変換手段または前記第1の凹凸繰り返し構造により生じたエバネッセント波が、表面プラズモンポラリトン変換手段まで到達すれば、前記エバネッセント波を表面プラズモンポラリトンに変換することができる。例えば、図2(b)において、第1の凹凸繰り返し構造(エバネッセント光変換手段)401が電子蓄積層を有さず、エバネッセント光204が、周波数変調手段410まで伝搬されて、そこで表面プラズモンポラリトンに変換されても良い。この場合、第1の凹凸繰り返し構造401がエバネッセント波変換手段であり、410が、表面プラズモンポラリトン変換手段と周波数変調手段を兼ねることとなる。本発明の電磁波波長変換素子は、図1(a)または図2(a)のように、前記エバネッセント波変換手段または前記第1の凹凸繰り返し構造が電子蓄積層(自由電荷を有する表面)を有し、SPPが伝搬する構造であることが好ましい。このような構造であると、前記エバネッセント波をその場でSPPに変換し、SPPに結合させて効率よく伝搬させることができるため、入射光からSPPへの変換効率が良くて好ましい。第1の凹凸繰り返し構造(エバネッセント波変換手段)401は、図2(a)のように電子蓄積層が断続的な構造よりも、図1(a)のように電子蓄積層が連続的な構造の方が、SPPの伝搬効率がより良いため、さらに好ましい。
【0087】
本発明の前記第2の電磁波波長変換素子において、前記出射電磁波変換手段または前記第2の凹凸繰り返し構造は、電子蓄積層(自由電荷を有する表面)を有さず、SPPが伝搬しない構造であっても良い。ただし、例えば図1(a)または図2(a)のように、前記出射電磁波変換手段または前記第2の凹凸繰り返し構造が電子蓄積層(自由電荷を有する表面)を有し、SPPが伝搬する構造であることが好ましい。このような構造であると、前記SPPに結合したエバネッセント波を効率よく伝搬させることができるため、SPPから出射光への変換効率が良くて好ましい。第2の凹凸繰り返し構造(出射電磁波変換手段)402は、図2(a)のように電子蓄積層が断続的な構造よりも、図1(a)のように電子蓄積層が連続的な構造の方が、SPPの伝搬効率がより良いため、さらに好ましい。また、本発明の電磁波波長変換素子において、前記出射電磁波変換手段または前記第2の凹凸繰り返し構造がなくても良いが、前記出射電磁波変換手段または前記第2の凹凸繰り返し構造により、波数変換することが好ましい。また、SPPは、SPPのままでも、少なくとも一部を、素子端などから出射電磁波として出射させることができるが、SPPをエバネッセント波に変換してから出射電磁波に変換させるほうが、変換効率が良くて好ましい。
【0088】
なお、本発明の前記第1および第2の電磁波波長変換素子は、例えば、光入射側と光出射側とを逆にして使用可能であることが好ましい。例えば、図1(a)または図2(a)に示す電磁波波長変換素子は、光入射側と光出射側とを逆にして使用可能である。これにより、入射光と出射光の波長を逆にして、逆向きの波長変換をすることができる。この場合、図中の402が第1の凹凸繰り返し構造となり、エバネッセント波変換手段および表面プラズモンポラリトン変換手段を兼ねることとなる。また、図中の401が第2の凹凸繰り返し構造となり、出射電磁波変換手段の機能を有することとなる。以下の各実施形態に示す電磁波波長変換素子も、同様に、光入射側と光出射側とを逆にして使用可能である。
【0089】
[第2の実施形態]
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
【0090】
本発明の電磁波波長変換素子において、入射光(入射伝搬光)をエバネッセント光に変換し、さらにSPPに変換するためには、例えば前記第1の実施形態のように、凹凸繰り返し構造を用いても良い。別の方法として、本実施形態(図5)のような電磁波波長変換素子を用いた、全反射減衰(Attenuated Total Reflection:ATR)がある。このような全反射減衰型の電磁波波長変換素子は、前記本発明の第2の電磁波波長変換素子の一例である。
【0091】
本発明において、このような全反射減衰型の電磁波波長変換素子の構造としては、例えば、オットー(Otto)配置およびクレッチマン(Kretschmann)配置が挙げられる。図5(a)の断面図に、オットー(Otto)配置の電磁波波長変換素子の構造の一例を示す。図示のとおり、この電磁波波長変換素子51aは、基板110の平面上に、電子蓄積層201、正誘電体層209、および電磁波透過部材210が、前記順序で積層されている。また、この電磁波波長変換素子51aは、光入射側の領域(電磁波入射領域)401と、光出射側の領域(電磁波出射領域)402において、電子蓄積層201と正誘電体層209との界面が、凹凸を有さず、平坦である。このことと、電磁波透過部材210を有すること以外は、この電磁波波長変換素子51aの構造は、図1(a)の電磁波波長変換素子1と同じである。この電磁波波長変換素子51aは、光入射側の領域401が、エバネッセント波変換手段と表面プラズモンポラリトン変換手段とを兼ねる。また、この電磁波波長変換素子51aは、光出射側の領域(電磁波出射領域)402において、SPP205を、出射光(出射電磁波、または出射伝搬光とも言う)208(207)に変換して光出射部(素子端など)から出射させる。したがって、この電磁波波長変換素子51aにおいて、少なくとも前記光出射部(素子端など)が、出射電磁波変換手段に相当する。また、同図では、便宜上、電磁波波長変換素子51aを、光入射側の領域401と、周波数変調手段410と、光出射側の領域402とに分けて図示しているが、これらの境界は明確ではない。また、図5(b)に、クレッチマン(Kretschmann)配置の電磁波波長変換素子の構造の一例を示す。図示のとおり、この電磁波波長変換素子51bの構造は、電子蓄積層201と正誘電体層209との積層順序が逆であること以外は、図5(a)の素子51aと同じである。図5(a)の素子51aおよび図5(b)の素子51bにおいて、基板110の材質は、特に制限されない。また、基板110は、なくても良い。電子蓄積層201および正誘電体層209の材質は、特に制限されず、例えば前記第1の実施形態と同様に、それぞれ、半導体、金属、絶縁体等から適宜選択可能である。電磁波透過部材210は、電磁波透過性材料(例えば、透光性材料)から形成されている。電磁波透過部材210は、特に制限されないが、例えば、プリズム等である。電磁波透過部材210の形成材料も特に制限されないが、例えば、ガラス等から形成される。電磁波透過部材210は、屈折率が正誘電体層209または電子蓄積層201より大きい方が好ましい。これは、電磁波透過部材210の屈折率が。その接する面の屈折率よりも小さいと、理論上、全反射とならないためである。また、全反射が起こる屈折率の条件を満たせるならば、電磁波透過部材210を設けずに、電子蓄積層201または正誘電体層209に直接光を入射させても良い。
【0092】
図5(a)の電磁波波長変換素子51aまたは図5(b)の電磁波波長変換素子51bにおいて、入射電磁波の入射角を全反射する臨界角θ以上とすると、誘電率εの光入射領域210の表面にエバネッセント光204が生じる。エバネッセント光204の波数kevは、入射光を角度θATR(ただしθ<θATR<90°)で入射させると、下記数式(8)で表され、kev=kspが満たされる角度で、正誘電体層209と電子蓄積層201との界面を伝搬するSPPに変換される。また、SPP205が出射光208(207)に変換される機構は、必ずしも明らかではない。例えば、SPP205がエバネッセント光に変換されずに素子端などの光出射部に到達し、SPP205に結合したエバネッセント光が前記光出射部から直接出射(放射)されることで、出射光208(207)に変換されると考えられる。これら以外は、本実施形態の電磁波波長変換素子51aまたは51bによる波長変換機構は、前記第1の実施形態と同様である。また、例えば、電磁波出射領域に、前記第1の実施形態のような第2の凹凸繰り返し構造等を設けても良い。また、本発明の電磁波波長変換素子において、前述のとおり、前記電磁波透過性部材は、前記電磁波入射領域において前記半導体または前記正誘電体に接触するように配置される。ただし、前記電磁波透過性部材は、例えば、図5(a)または(b)のように、前記電磁波入射領域以外にも設けられていても良い。

ev=ω/c×ε1/2×sinθATR (8)

【0093】
図6のグラフに、SPPの分散関係、全反射によるエバネッセント光の分散関係および通常の伝搬光の分散関係を例示する。同図において、SPPの分散関係は、絶縁部(例えばSiO層)との界面に形成された電子蓄積層内をSPPが伝搬する場合を想定している。図中、横軸は、波数(cm−1)であり、縦軸は、角振動数(Hz)である。301は、通常の伝搬光の分散関係を示す直線である。304は、電子密度nが、n=1×1021cm−3である電子蓄積層におけるSPPの分散関係を示す曲線である。306は、電子密度nが、n=2×1022cm−3である電子蓄積層におけるSPPの分散関係を示す曲線である。例えば入射光の周波数がωであったとすると、404は、角度θATRでのエバネッセント光の分散関係を示す直線である。この角度θATRは、電子密度nが、n=1×1021cm−3である電子蓄積層におけるSPPの分散関係と交点を持つように設定する。406は、角度θOUTでのエバネッセント光の分散関係を示す直線である。この角度θOUTは、電子密度nが、n=2×1022cm−3である電子蓄積層におけるSPPの分散関係と交点を持つように設定する。このとき出射光の周波数はωとなる。図4においても説明したとおり、SPPの分散関係は、用いる正誘電体が決まれば、電子密度nによって一意に決まる。前記数式(2)を用いて説明したとおり、プラズマ周波数ωが電子密度nによって一意に決まるためである。また、図4においても述べた通り、伝搬光とSPPとの位相速度が一致するためには、伝搬光の分散曲線とSPPの分散曲線とが交点をもつ必要がある。しかしながら、図4および図6に示すとおり、通常の伝搬光の分散直線301は、SPPの分散曲線と交点を有しない。したがって、単に電子蓄積層(負誘電体)と正誘電体との界面に光を入射しても、その入射光によりSPPを励起する(入射光をSPPに変換する)ことはできない。しかし、図6に示すように、全反射によるエバネッセント光404および406の分散直線は、通常の伝搬光の分散直線301と傾きが異なり、SPPの分散曲線と交点をもつ。このため、全反射によるエバネッセント光404および406は、SPPとの間で相互変換が可能である。
【0094】
また、図5の電磁波波長変換素子は、本発明の前記第1の電磁波波長変換素子(半導体波長変換素子)であっても良い。すなわち、例えば、図5の電磁波波長変換素子は、基板110上に半導体が形成され、電子蓄積層201が、前記半導体の一部であり、正誘電体層209との界面近傍に形成されていても良い。この場合において、例えば、図5中の401が前記「電磁波入射領域」であり、402が前記「電磁波出射領域」であり、領域410における電子蓄積層201が、前記「表面プラズモンポラリトン周波数変調領域」であっても良い。
【0095】
[第3の実施形態]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
【0096】
図7に、本実施形態の電磁波波長変換素子の構造を示す。この電磁波波長変換素子は、本発明の前記第1の電磁波波長変換素子の一例であり、かつ、前記第2の電磁波波長変換素子の一例でもある。図7(a)は、光伝搬方向(光入射側から光出射側への方向)の断面図であり、図7(b)は、上面図である。この電磁波波長変換素子は、半導体を主な材料として形成された、半導体波長変換素子である。図示のとおり、この半導体波長変換素子71は、図1(a)の半導体素子と同様、第1の凹凸繰り返し構造401と、第2の凹凸繰り返し構造402とを含み、さらに、半導体と正誘電体との積層構造410を含む。積層構造410は、表面プラズモンポラリトンの周波数を変調する表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410としての機能を有する。また、積層構造410における電子蓄積層201は、前記「表面プラズモンポラリトン周波数変調領域」ということができる。同図の半導体波長変換素子において、第1の凹凸繰り返し構造401は、図1(a)の半導体素子と同様、入射光(入射電磁波)をエバネッセント光(エバネッセント波)に変換する機能と、前記エバネッセント光(エバネッセント波)を表面プラズモンポラリトンに変換する機能とを有する。すなわち、第1の凹凸繰り返し構造401は、前記「エバネッセント波変換手段」と、前記「表面プラズモンポラリトン変換手段」とを兼ねる。また、第1の凹凸繰り返し構造401が形成されている領域は、前記「電磁波入射領域」ということができる。第2の凹凸繰り返し構造402は、図1(a)の半導体素子と同様、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410により周波数変調された前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント光(エバネッセント波)を、出射光(出射電磁波)に変換する機能を有する。すなわち、すなわち、第2の凹凸繰り返し構造402は、前記「出射電磁波変換手段」に相当する。前記第2の凹凸繰り返し構造402が形成された領域は、前記「電磁波出射領域」ということができる。第1の凹凸繰り返し構造401、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410、および第2の凹凸繰り返し構造402は、基板110上に、一体に形成されている。また、第1の凹凸繰り返し構造401、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410、および第2の凹凸繰り返し構造402は、それぞれ、半導体と、絶縁層103との積層構造を有する。絶縁層103は、「正誘電体」に相当し、絶縁体から形成されている。前記半導体は、n型半導体層101と、p型半導体層102とから形成されている。n型半導体層101と、p型半導体層102と、絶縁層103とは、基板110上に、前記順序で積層されている。絶縁層103は、p型半導体層102の上面に直接接触しており、p型半導体層102は、n型半導体層101の上面に、直接接触している。第1の凹凸繰り返し構造401および第2の凹凸繰り返し構造402においては、n型半導体層101およびp型半導体層102がところどころ除去されており、除去された部分には、絶縁層103が入り込んで基板110上面まで達し、光入射側(電磁波入射側)から光出射側(電磁波出射側)に向かって、凹凸が交互に設けられた構造を形成している。第1の凹凸繰り返し構造401における凹凸の寸法および配置間隔は、均一である。第2の凹凸繰り返し構造402における凹凸の寸法および配置間隔は、均一である。第1の凹凸繰り返し構造401と第2の凹凸繰り返し構造402とは、前記凹凸の寸法および配置間隔が異なる。前記半導体においては、p型半導体層102の上面における絶縁層103との界面に、前記光入射側から前記光出射側まで表面プラズモンポラリトンを伝搬する電子蓄積層201が形成されている。
【0097】
絶縁層103における前記光入射側の上面には、第1の凹凸繰り返し構造401に電圧を印加する第1の電極105が設けられている。絶縁層103における前記光出射側の上面には、第2の凹凸繰り返し構造402に電圧を印加する第2の電極106が設けられている。この半導体波長変換素子71では、第1の凹凸繰り返し構造(表面プラズモンポラリトン変換構造)401への電圧印加により、前記第1の凹凸繰り返し構造内を伝搬する前記エバネッセント波の波数と前記表面プラズモンポラリトンの波数が整合するように、第1の凹凸繰り返し構造401における前記電子蓄積層の電子密度を変化させることが可能である。また、第2の凹凸繰り返し構造(周波数変換構造)402への電圧印加により、前記第2の凹凸繰り返し構造に入射する表面プラズモンポラリトンの波数と、前記第2の凹凸繰り返し構造におけるエバネッセント波の波数が整合するように、第2の凹凸繰り返し構造402における前記電子蓄積層の電子密度を変化させることが可能である。なお、本発明において「上に」は、特に断らない限り、上面に直接接触した状態でも、間に他の構成要素が存在していても良いものとする。「下に」も同様とする。「上面に」は、特に断らない限り、上面に直接接触した状態であるものとする。「下面に」も同様とする。
【0098】
n型半導体層101は、例えば、n型の不純物が高濃度に導入されたシリコンからなる膜厚50nm程度の層である。p型半導体層102は、例えば、p型の不純物が低濃度に導入されたシリコンからなる膜厚20nm程度の層である。絶縁層103は、例えば、酸化シリコンからなる膜厚30〜50nm程度の層である。n型半導体層101は、例えば、リン(P)が不純物として1018cm−3程度導入されている。またp型半導体層102、は、例えばボロン(B)が1013cm−3程度導入されている。ただし、前記各層の厚み、不純物濃度等は、これらに限定されないし、シリコンに限らず、他の半導体材料を用いてもよい。また、基板110は、例えば、シリコン、サファイア等、どのような基板でも良い。第1の電極105および第2の電極106も、特に制限されず、例えば、通常の金属電極等で良い。
【0099】
また、この半導体波長変換素子71において、光入射側の第1の凹凸繰り返し構造401と、光出射側の第2の凹凸繰り返し構造402とは、前記半導体および前記絶縁層により形成された凹凸の寸法および配置間隔(周期)が異なる。これらは、前記凹凸の寸法および配置間隔を制御して人為的に作製した構造であっても良いし、または、非人為的に形成された凹凸繰り返し構造(表面ラフネス)であっても良い。これらの凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔は、規則的であっても良いし、不規則であっても良い。例えば、これらの凹凸繰り返し構造は、あらかじめ設計したパターンを転写して作製したものでも良いし、または、物質の表面粗さ、自己集合等の現象により形成されたランダムな表面凹凸(ラフネス)であっても良い。これら凹凸繰り返し構造(周期構造)の周期は、変換元(入射光)の波長と変換先(出射光)の波長によって適切に選ぶ必要があるが、例えば、およそ数100nmである。この程度のオーダーであれば、通常の製造プロセス技術により適切に制御可能である。なお、本発明の電磁波波長変換素子においては、入射電磁波の少なくとも一部をエバネッセント波に変換すれば、前記エバネッセント波によりSPPを励起できるが、前記入射電磁波から前記エバネッセント波への変換効率がなるべく高いことが好ましい。本発明の電磁波波長変換素子において、前記第1の凹凸繰り返し構造により、入射電磁波を効率よくエバネッセント波に変換するためには、前記第1の凹凸繰り返し構造における凹凸の周期が、前記入射電磁波の波長以下であることが好ましい。前記凹凸の周期が、前記入射電磁波の波長よりも大きいと、理論上、前記第1の凹凸繰り返し構造においてエバネッセント波が発生しないためである。
【0100】
図7に示すこの半導体波長変換素子71の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下のようにして製造できる。すなわち、まず、基板110を準備し、その上に、n型半導体層101およびp型半導体層102を、この順序で積層させる(半導体形成工程)。積層方法は、例えば、有機金属気相成長(Metal−Organic Vapor Phase Epitaxy;MOVPE)法、分子線エピタキシャル成長(Molecular Beam Epitaxy;MBE)法等が挙げられる。なお、有機金属気相成長法は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法ということもある。その後、p型半導体層上面に凹凸繰り返し構造401および402のパターニングをし、光入射側から光出射側に向かって、凹凸が交互に設けられるように、n型半導体層101およびp型半導体層102の一部をエッチングにより除去する。さらに、絶縁層103を、前記半導体表面に直接接触するように積層させる(正誘電体形成工程)。または、n型半導体層101のみを形成した後に、パターニングおよびエッチングによる除去を行い、その後、p型半導体層102の成長と絶縁層103の成膜を行っても良い。n型半導体層101およびp型半導体層102を両方形成してからエッチングする方が、半導体層の再成長が不要である(半導体層の形成を一度に行うことができる)ため簡便で好ましい。n型半導体層101およびp型半導体層102を形成するとき、同時に、これらの層にドーピングを行う。このようにして、前記積層構造を形成することができる。なお、電子蓄積層201は、p型半導体層102上面における絶縁層103との界面部分である。この半導体波長変換素子71では、電圧を印加しない状態では、電子蓄積層201の電子密度、例えば、p型半導体層102における他の部分と同程度である。後述のように、前記積層構造への電圧印加により、絶縁層103との界面(電子蓄積層201)の電子密度が高くなる。さらに、第1の凹凸繰り返し構造401の上方に、第1の電極105を、絶縁層103上面に接するように形成する。同様に、第2の凹凸繰り返し構造402の上方に、第2の電極106を、絶縁層103上面に接するように形成する。以上のようにして、図7の半導体波長変換素子71を製造できる。なお、この製造方法は、前記本発明の第1の製造方法(半導体形成工程と、正誘電体形成工程を含む)であるとともに、前記本発明の第2の製造方法(エバネッセント波変換手段形成工程と、表面プラズモンポラリトン変換手段形成工程と、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段形成工程と、出射電磁波変換手段形成工程とを有する)であり、エバネッセント波変換手段形成工程と、表面プラズモンポラリトン変換手段形成工程と、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段形成工程と、出射電磁波変換手段形成工程とを同時に行っている。ただし、この半導体波長変換素子71の製造方法は、これに限定されない。
【0101】
なお、基板110の下面に、第1の電極105および第2の電極106の対となる電極を、さらに形成してもよい。このようにすると、例えば、第1の凹凸繰り返し構造401および第2の凹凸繰り返し構造402に電圧を印加しやすくなる、印加電圧の調整がしやすくなる、印加電圧の調整可能範囲が広くなる等の効果が得られる。この場合、例えば、基板110を、n型半導体基板(不純物を導入して導電性を持たせた基板)とする。または、基板110が高抵抗基板である場合、前記高抵抗基板に、エッチングによりビアホール等を形成してn型半導体層101下面を露出させ、前記対となる電極を、n型半導体層101下面に接触するように形成してもよい。
【0102】
この半導体波長変換素子71は、例えば、以下のようにして動作させることができる。すなわち、まず、第1の凹凸繰り返し構造401に、入射光(入射伝搬光)202を、任意の入射角で入射させる。図中の矢印203は、入射光(入射伝搬光)202の、光伝搬方向成分である。入射光202は、第1の凹凸繰り返し構造401により、第1の凹凸繰り返し構造401の凹凸周期に応じた波数のエバネッセント光204に変換され、電子蓄積層201の表面(絶縁層103との界面)を伝搬する。さらに、エバネッセント光204は、第1の凹凸繰り返し構造401において、その場で、電子蓄積層201における自由電子の振動と結合し、表面プラズモンポラリトン205に変換される(SPPが励起される)。表面プラズモンポラリトン205は、光入射側から光出射側に向かって伝搬し、さらに、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410内を伝搬する際に、周波数が変調される。この半導体波長変換素子71では、電子蓄積層201の、表面プラズモンポラリトン205伝搬方向に沿った電子密度勾配により、表面プラズモンポラリトン205を、伝搬方向の波数を保存したまま分散関係を満たす異なる周波数へ変調することができる。表面プラズモンポラリトン205に結合したエバネッセント光206は、第2の凹凸繰り返し構造402を伝搬する。エバネッセント光206は、第2の凹凸繰り返し構造402によって、伝搬光の分散関係を満たした出射光(出射伝搬光)208に変換され、所定の出射角で出射される。前記出射角とは、光伝搬方向に垂直な平面とのなす角である。矢印207は、前記出射光(出射伝搬光)208の、光伝搬方向成分である。このようにして、入射光202から出射光208への波長変換を実現できる。また、この半導体波長変換素子71では、第1の電極105および第2の電極106により、凹凸繰り返し構造401および402に電圧を印加可能である。これにより、使用する波長域が変化しても、前記波長域に対して電子蓄積層201の誘電率が負となり、かつエバネッセント光とSPPの波数が整合する電子密度に調整し、SPPを励起および伝搬可能とすることができる。
【0103】
本実施形態の半導体波長変換素子71において、第1の電極105、および第2の電極106にそれぞれ異なる正のバイアス電圧v1、v2を印可すると、p型半導体層102と絶縁層103との界面のバンドが歪む。これにより、p型半導体層102上面の電子蓄積層201に、印加する電圧の差に応じた電子密度差nv2−nv1の電子密度勾配が形成される。図3に、前記電子密度勾配(電子密度分布)を例示する。電子蓄積層201は、p型半導体層102の絶縁層103側のごく表面の浅い部分に形成されるため、蓄積する電子数密度は、通常のドーピングで得られる電子密度に比べて非常に高くなる。例えば、ある位置で1015cm−2程度の表面電荷密度を仮定し、さらに、電子蓄積層201は膜厚が1nm程度であり、ここに電子が集約されるものと考える。この場合、電子蓄積層201の電子密度は、1022cm−3と試算される。このときのプラズマ周波数は、可視から近赤外領域でSPPを導波させるのに典型的に使われるAuの1/3程度に達するため、SPPを導波させることが十分可能である。
【0104】
なお、図8に、図7の波長変換素子71に電圧を印加した場合のエネルギーバンド図を例示する。ただし、図8は、説明の便宜のための例示的な模式図であり、本発明を何ら限定しない。図示のとおり、伝導帯のエネルギーがフェルミ準位Eよりも低くなった反転分布層が、電子蓄積層201となり、トンネル効果により電子が蓄積される。図7のように、n型半導体の表面に接触するようにp型半導体が積層され、前記p型半導体の表面に接触するように絶縁体(または金属)が積層されている構造では、電子蓄積層201に電子が蓄積されるためには、電圧を印加する必要がある。なお、このようなエネルギーバンド図は、特開2006−343410号公報にも記載されている。前記のとおり、特開2006−343410号公報では、波長変換素子71と同様の積層構造を利用してSPPを伝搬させる。ただし、SPPが伝搬する電子蓄積層201の電子密度に勾配(特に、連続的な勾配)を設けることで、波長変換が可能であることを見出したのは、前記のとおり、本発明者らがはじめてである。
【0105】
本発明の半導体波長変換素子において、SPPを半導体表面で伝搬させるためには、使用する波長域に対して誘電率が負となる、高密度な電子層(電子蓄積層)を用いれば良い。したがって、前記電子蓄積層は、本実施形態の電子蓄積層201に限定されない。
【0106】
図7の半導体波長変換素子71において、第1の電極105および第2の電極106に電圧を印加して電子密度勾配をつけた場合の電子蓄積層201内の、その位置での電子密度に対応したSPPの分散関係を、図4に示す。図4は、一例として、電子密度nが1×1021cm−3の場合の第1の分散関係304と、2×1022cm−3の場合の第2の分散関係306を示した。なおこの2本の分散曲線304、および306の間においては、電子密度が連続的に変化しうるため、前記電子密度に応じた無数の連続した分散曲線が存在する。
【0107】
図7の半導体波長変換素子71に伝搬光(入射光)202を入射した場合、第1の凹凸繰り返し構造(表面凹凸構造)401によってエバネッセント光204が生じる。周期aの周期構造で回折されるエバネッセント光の波数は、前記数式(4)より、周期aに依存する。これは図4に示す伝搬光の分散関係301および前記数式(4)から、前記エバネッセント光の分散関係は、第1の凹凸繰り返し構造(表面凹凸構造)401に応じた波数範囲を有する。図4において、404が、前記第1の凹凸繰り返し構造における前記エバネッセント光の、波数と角振動数(周波数)との分散関係である。このエバネッセント光204の分散関係404と電子蓄積層201の電子密度で決まるSPPの分散関係304が交点をもつときに、エバネッセント光204はSPP205に変換されて伝搬する。言い換えると、第1の凹凸繰り返し構造(周期構造)401に入射された伝搬光202の波数の周期構造に沿った成分とその周期に対応した逆格子ベクトルの和が、電子蓄積層201の電子密度で決まるSPPの波数と一致したときに、SPPに変換されて伝搬する(図4)。なお、第1の凹凸繰り返し構造401がランダムな表面凹凸構造の場合は、フーリエ変換の考え方を適用することができる。すなわち、ランダムな周期は様々な周期をもつ周期関数の重ね合わせとしてとらえることができることから、エバネッセント光204は、連続的に変化する広範囲の波数を含んでいると考えることができる。
【0108】
電子蓄積層201を伝搬するSPP205は、電子密度の勾配により変調を受け(周波数が変化し)、第2の凹凸繰り返し構造(表面凹凸構造)402によって散乱され、再びエバネッセント光206に変換される。第2の凹凸繰り返し構造402は、半導体部および絶縁部の寸法および配置間隔(周期)が、第1の凹凸繰り返し構造401とは異なる。このため、第2の凹凸繰り返し構造402内を伝搬するエバネッセント光206の、波数と角振動数(周波数)との分散関係は、図4の406で表される。電子密度勾配の分だけ入射側とは異なったSPPの分散関係306とエバネッセント光206の分散関係406が交点をもつときに、伝搬光の分散関係301に戻る。ここで、自由空間中(厳密には、一切の物質が存在しない空間中、すなわち真空中)における伝搬光の分散関係は、ω=ckの関係が成り立つことから常に一定である。したがってこのときの伝搬光に戻った出射光208(207)は、SPPの伝搬方向に沿った成分の波数が保存すること、および分散関係を満たすことから、入射時の周波数ωとは異なる周波数ωとなっている。すなわち、入射光の波長が変換されて出力されたことになる。ここでは、前記分散関係が傾きをもっていること、すなわち、異なる波数に対して異なる周波数が対応することに着目した。このように、入射側と出射側で寸法または配置間隔(周期)が異なる周期構造を利用することで、波長変換が可能であることが分かる。
【0109】
ここで、第1の電極105および第2の電極106に印加する電圧を調整すると、電子蓄積層201の電子密度の絶対値および勾配を調整できる。これにより、変換元(入射光)の周波数ωおよび変換先(出射光)の周波数ωを、凹凸繰り返し構造(表面凹凸構造)401および402に応じた波数範囲を持ったエバネッセント光の分散関係404および406の範囲の中から、任意に選ぶことが可能である。すなわち、ある範囲内での任意波長から任意波長への変換が可能である。また、電子蓄積層201において、光入射側から光出射側への(SPPの伝搬方向の)電子密度勾配の傾きは、正負どちらでも良い。具体的には、前記電子密度勾配の正負によって、周波数の変換方向が逆転するため、目的に応じて設定すればよい。
【0110】
また、図9の断面図に、本実施形態の波長変換素子の変形例を示す。同図は、光伝搬方向(光入射側から光出射側への方向)の断面図である。図示のとおり、この波長変換素子91は、基板110が、第1の凹凸繰り返し構造401、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410および第2の凹凸繰り返し構造402に対応する凹凸を有することと、その凹凸の上面および側面に、n型半導体層101、p型半導体層102、および絶縁層103が、前記順序で、光入射側から光出射側まで連続して形成されている。電子蓄積層201は、p型半導体層102内における、絶縁層103との界面近傍に、光入射側から光出射側まで連続して形成されている。これら以外は、図9の波長変換素子の構造は、図7の波長変換素子と同様である。このような構造によれば、電子蓄積層201が、光入射側から光出射側まで連続して形成されているため、エバネッセント光およびSPPの伝搬効率がより優れており、さらに好ましい。
【0111】
図9の半導体波長変換素子91の製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下のようにして製造できる。すなわち、まず、基板110を準備し、その上面に、凹凸繰り返し構造401および402のパターニングをし、基板110の一部をエッチングにより除去する。この上にn型半導体層101およびp型半導体層102を、この順序で積層させる。積層方法は、例えば、有機金属気相成長法、分子線エピタキシャル成長法等が挙げられる。その後、絶縁層103を積層させる。前記各半導体層の作製方法はこれに限定されないが、この方法は、基板110へパターンニング後は、半導体層を一括して成膜でき、再成長が不要であるため好ましい。n型半導体層101およびp型半導体層102を形成するとき、同時に、これらの層にドーピングを行う。このようにして、前記半導体形成工程を行うことができる。なお、電子蓄積層201は、p型半導体層102上面における絶縁層103との界面部分である。この半導体波長変換素子91では、電圧を印加しない状態では、電子蓄積層201の電子密度、例えば、p型半導体層102における他の部分と同程度である。図7の半導体波長変換素子71と同じように、前記積層構造への電圧印加により、絶縁層103との界面(電子蓄積層201)の電子密度が高くなる。さらに、第1の凹凸繰り返し構造401の上方に、第1の電極105を、絶縁層103上面に接するように形成する。同様に、第2の凹凸繰り返し構造402の上方に、第2の電極106を、絶縁層103上面に接するように形成する。以上のようにして、図9の半導体波長変換素子91を製造できる。ただし、この半導体波長変換素子91の製造方法は、これに限定されない。
【0112】
[第4の実施形態]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
【0113】
図10(a)の断面斜視図に、本実施形態の半導体波長変換素子の構造を示す。ただし、同図においては、簡略化のため、光出射側の第1の凹凸繰り返し構造(表面凹凸構造)近傍の構造のみ示している。図示のとおり、この半導体波長変換素子71’は、第1の凹凸繰り返し構造において、前記光入射側から前記光出射側への方向(光伝搬方向)に垂直かつ前記積層構造の層平面に平行な方向に沿って前記正誘電体(絶縁層103)と前記半導体とが交互に配置されている。すなわち、前記積層構造の層平面に平行な方向に沿って、光伝搬方向のみならず光伝搬方向と垂直な方向にも、凹凸の繰り返し構造が形成されている。前記半導体において、p型半導体層102は、n型半導体層101上面に加え、n型半導体層101側面にも直接接触し、n型半導体層101を覆うように形成されている。電子蓄積層201は、前記積層構造の層平面に平行な層平面を有し、かつ、前記光入射側から前記光出射側に向かって前記積層構造の層平面に垂直な層平面を有する。なお、図示していないが、光出射側の第2の凹凸繰り返し構造も同様の構造を有することが好ましい。また、図10(b)は、図10(a)の半導体波長変換素子において、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410の、光伝搬方向と垂直方向に見た断面図である。図示のとおり、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410においても、p型半導体層102は、n型半導体層101上面に加え、n型半導体層101側面にも直接接触し、n型半導体層101を覆うように形成されている。電子蓄積層201は、前記積層構造の層平面に平行な層平面を有し、かつ、前記光入射側から前記光出射側に向かって前記積層構造の層平面に垂直な層平面を有する。ただし、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410は、図7の半導体波長変換素子71と同様、光入射側から光出射側に向かって凹凸が交互に設けられた構造は有さない。電子蓄積層201は、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410の光入射側から光出射側まで連続している。これら以外は、図10の半導体波長変換素子71’の構造は、図7の半導体波長変換素子71と同様である。
【0114】
SPPは、その電磁波としての性質から、伝搬する界面に垂直な方向に電場振動を伴う、いわゆるTM波(Transverse Magnetic Wave)である。すなわち、SPPを励起するための伝搬光(入射光)もTM(Transverse Magnetic)偏光である必要がある。したがって、本発明の半導体波長変換素子において、入射光は、前記電子蓄積層の層平面に垂直な偏光成分(TM波)を含む必要がある。しかし、例えば本実施形態のように、電子蓄積層が、縦横両方の層平面を含むことで、入射光の偏光方向が縦横いずれであっても、偏光方向に垂直に電子蓄積層の層平面が存在するため、それぞれSPPの励起(SPPへの結合)が可能となる。また、前記のように、光出射側の第2の凹凸繰り返し構造も同様の構造を有することで、それぞれの偏光を、入射したときの偏光状態を保って出力することができる。これにより、複数の偏光状態に対しても素子1つで波長変換が可能である。このように、偏光方向が90°異なる光のいずれに対しても素子1つで波長変換が可能であることは、特に、光通信への適用において、大きなメリットがある。また、前記電子蓄積層の層平面は、前記積層構造の層平面に対し平行および垂直には限定されず、前述のように、前記積層構造の層平面から傾斜していても良い。このように、前記電子蓄積層の層平面を任意に設定すれば、入射光の任意の偏光成分に対し、前述の機構で波長変換が可能である。
【0115】
なお、図10の半導体波長変換素子71’は、図7の半導体波長変換素子71と同様、表面プラズモンポラリトン周波数変調手段410以外の部分では、電子蓄積層201が、光入射側から光出射側まで連続していない。しかしながら、図9の半導体波長変換素子91と同様、電子蓄積層201が、光入射側から光出射側まで連続した構造とすると、エバネッセント光およびSPPの伝搬効率がさらに優れるため、いっそう好ましい。
【0116】
[第5の実施形態]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。
【0117】
図11および12の断面図に、本実施形態の半導体波長変換素子の構造を示す。図11は、光入射側から光出射側への方向(光伝搬方向)の縦断面図である。図12は、光入射領域の第1の凹凸繰り返し構造401を、光入射側の端面と平行方向に(光伝搬方向と垂直に)見た断面図である。図示のとおり、この半導体波長変換素子は、図1の半導体波長変換素子1および図7の半導体波長変換素子71において、半導体層101および102と基板110の上部に相当する部分が、真性半導体層108と、n型半導体層101および、その界面に形成される電子蓄積層201となっている。基板110は、高抵抗基板である。基板110は、例えば、GaAs、またはInPなどである。真性半導体層108は、例えば真性GaAs、または真性InGaAsなどである。n型半導体層101は、過剰な電子を有したn型半導体層であり、AlGaAs、InGaP、またはInAlAsなどである。前記n型半導体層は、例えば、リン(P)などのn型不純物を高濃度にドーピングするか、またはSiをドナーとして変調ドーピングをしても良い。n型半導体層101は、「正誘電体」に相当し、真性半導体層108の表面に直接接触している。第1の電極105と第2の電極106は、金属であり、n型半導体層101を挟んで真性半導体層108と反対側に設けられ、かつ、n型半導体層101の表面に直接接触している。電子蓄積層201は、n型半導体層101が真性半導体層108に電子を供給することで、n型半導体層101と真性半導体層108の異種半導体層の界面(真性半導体層108内における、n型半導体層101との界面近傍)に形成される。これは通常のHEMT(高電子移動度トランジスタ)と同じ機構である。または、ZnOとMgZnOといった分極の大きさが異なる強誘電体材料を用いると、分極効果により電子蓄積層201が形成される。電子蓄積層201の電子密度は、電圧を印加しない状態で、例えば1×1021cm−3以上、好ましくは1×1022cm−3以上である。これらの電子密度は、例えば、接合する材料を適切に選択することで実現できる。半導体波長変換素子使用時における電子蓄積層201の電子密度は、材料の選択、製造時の設計、または印加電圧により、例えば1020cm-3〜1022cm-3オーダー(1×1020cm-3〜1×1023cm-3)で可変とする。この半導体波長変換素子は、電圧を印加して使用することもできるが、電圧を印加せずに使用しても良い。これは、一般的なHEMTに類似した構造または分極効果により、電圧を印加しなくても、電子蓄積層201に、高い電子密度が生じているためである。これら以外は、図11および12の半導体波長変換素子の構造は、図10の半導体波長変換素子71’と同様である。なお、図12に示すように、電子蓄積層201は、図10の半導体波長変換素子71’と同様、絶縁層103との界面を、縦横両方向に有する。このため、縦方向に振動するSPP206’および横方向に振動するSPP207’の両方を伝搬可能である。
【0118】
なお、図13に、図11および12に示す半導体波長変換素子1001におけるバンドエネルギーを例示する。ただし、図13は、説明の便宜のための例示であり、本発明を何ら限定しない。図13に示すとおり、真性半導体層108内における、n型半導体層101との界面近傍では、伝導体エネルギーEが、フェルミ準位Eよりも低くなっている。これにより、前記界面近傍では、電子が蓄積されて二次元電子ガス(Two Dimensional Electron Gas;2DEG)の層(電子蓄積層)201が形成されている。また、電子蓄積層201の厚みは、例えば、図13に示すとおり、約1nmであるが、これに限定されない。
【0119】
図11および12に示す半導体波長変換素子1001の製造方法も特に制限されない。例えば、基板110として高抵抗基板を用いることと、基板110の上部の一部をエッチングして第1の凹凸繰り返し構造401および第2の凹凸繰り返し構造402を形成すること以外は、前記第3および第4の実施形態と同様で良い。
【0120】
本発明において、前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造は、あらかじめ、変換元(入射光)と変換先(出射光)の波長の波数が、SPPの分散関係と整合するように周期構造を設計することができる。前記の通り、SPPの分散関係は電子密度に依存するため、最適な波数整合になるように2電極の電圧により電子密度を調整することで、波数を保存した状態で周波数を変化させることができる(図4)。例えば、電子密度差が〜7×1019cm−3程度で100nm、〜6×1020cm−3で500nmもの波長差で、入射光から出射光への変換が可能である(図14参照)。なお、本実施形態では、電子蓄積層201は、前記の通り、電圧の印加のみならず、製造時の設計により、電圧非印加時に適切な値を有するよう設定することもできる。
【0121】
前記の原理によれば、前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸の周期および電子蓄積層の電子密度差により、変換できる波長差が規定される。ただし、本発明は、これに限定されない。例えば、前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造(周期構造)の光の波数に対するトレランスの広さを利用し、ある波数の範囲で伝搬光からSPPへ、またその逆の結合が可能なように設計することで、単一波長から複数波長への変換が可能である。例えば、図4で低い周波数ωで光が入射した場合を想定する。このとき、第1の凹凸繰り返し構造におけるSPPの分散関係304が波数無限大のSPPに漸近していく範囲を利用する。これにより、単一波長で、ある範囲内の任意の波数のSPPを電子密度によって選択可能とする。一方、光出射側(第2の凹凸繰り返し構造)は、SPPの分散関係306が波数に対して周波数変化が急になる範囲を利用する。これにより、単一の波数および電子密度に対して周波数をωの範囲で選択することが可能である。以上の通り、電子密度差の初期設定(製造時の設計)または電圧による制御と、周期構造の設計により、単一波長から任意の波長へと変換が可能である。なお、このメカニズムは、本実施形態に限定されず、例えば、前記第1および第2の実施形態の半導体波長変換素子にも、同様に適用できる。また、前記のメカニズムを逆にたどることで、反対に、任意の波長から単一波長への変換も可能である。
【0122】
以下、本発明と関連する波長変換素子について説明する。本発明者らは、これらに着目し、鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。
【0123】
波長分割多重(Wavelength Division Multiplex:WDM)を利用した光通信システムは、通信容量の拡大に用いられる。このWDMは、異なる搬送波長(チャンネル)に割り当てられた複数の光信号を同時に伝送できる方式で、チャンネル数に応じて通信容量を増大することができる。
【0124】
このWDMシステムの送信側では、例えば、光通信で用いられる標準チャンネルに対してそれぞれの波長に応じたレーザ装置を用意する。したがって、100チャンネル分に対しては100品種のレーザ装置が必要となる。これにより、在庫管理・棚卸しコストが増大するという問題点がある。そこで、WDMシステムを、1種類で100チャンネルの設定が可能な波長可変レーザに置き換えることが考えられる。波長可変レーザの原理としては、例えば、レーザの内部に波長可変フィルタが内蔵されていて、波長を選択できるものがある。しかしながら、波長可変レーザは、機構が複雑となる問題がある。もし小型で高効率な波長変換素子が実現できれば、従来の波長可変レーザに代えて、固定波長レーザから出射された光を変換して、実用的な波長可変レーザが可能になる。
【0125】
また、WDMシステム内ネットワークノードでのチャンネル、すなわち波長の切り替えには、既存の光素子では制御が困難であるため、例えば、一度電気信号に変換してから処理し、再び光信号に戻す。この方法では、消費電力の増加とスピードの低下が問題となる。そこで、WDMシステムを低消費電力かつ高速に(柔軟かつ効率的に)運用するために、例えば、光信号を電気信号に変換することなく処理できるフォトニックネットワークシステムが有効と考えられる。波長変換素子は、これを実現するためのキーデバイスとなり得る。
【0126】
また、現在、再生可能エネルギーとして注目されている太陽光発電は、太陽電池が用いられる。太陽電池は、広い波長域をもった太陽光に対して、吸収して光起電力として取り出せる波長域が限られているため、発電効率に限界がある。これに対し、異なる波長域の光を吸収できるように、異なる吸収層を多層構造にした素子を用いることが考えられる。しかし、多層化によるコスト増大と、各層が直列に接合されていることにより、1つの層の不具合が全体に影響する、といった歩留まりの低下が問題となる。そこで、小型で高効率な波長変換素子が実現できれば、直接吸収できない波長域の光を、吸収させる素子に応じて光起電力として取り出すのに最適な波長域へと変換することができる。これにより、発電効率を上げることが可能である。
【0127】
波長変換素子には、前述のとおり、主に電気駆動型と全光型とがある。電気駆動型は、主に半導体やLN(ニオブ酸リチウム)によりマッハツェンダー型変調器を構成して実用化されており、周波数シフト量を精密に制御できる。しかし、電気駆動型の波長変換素子は、周波数の変換帯域が狭い、電場の1次の項を使うため入射光の偏光依存性が大きい、素子の駆動に消費電力が大きいRF信号源が必要という問題がある。これらを抜本的に解決する対策は見出されていない。例えば、電気駆動型の波長変換素子には、前述のとおり、音響光学効果で生成されたブラッグ格子により周波数をシフトさせるもの、および、電気光学効果により単側波帯(サイドバンド)へ周波数をシフトさせるものがある。変換帯域(周波数シフト量)は、例えば、前者が数GHz、後者は数10GHz程度である。しかしながら、WDMシステムより密な波長間隔を用いるDense WDM(DWDM)システムにおいても、周波数間隔は、例えば、100GHzまたは50GHzである。この観点からすると、前記電気駆動型の波長変換素子における周波数シフト量は大きくはない。
【0128】
全光型の波長変換素子は、光の非線形光学効果を用いた素子で、前述のとおり、原理的に次の2つに大別される。1つは、3次の非線形効果である相互利得変調、相互位相変調(カー効果)等を利用して、信号光によって被変換光を変調する方法である。もう1つは、2次の非線形効果である差周波発生、3次の四光波混合等を利用して、信号光の位相まで含めた情報を別の波長の光へと転写させる方法である。これらの方式は、SOA、LD等の半導体活性層、LN等の非線形光学結晶、光ファイバを使って実用化されている。
【0129】
図19に、SOAやLD、光ファイバなどの3次非線形媒質10を用いた四光波混合による波長変換の例を示す。図示のとおり、周波数整合条件、および位相整合条件から、高強度でコヒーレントな周波数ωのCWポンプ光11と、周波数ω+Δωの信号光12を媒質(3次非線形媒質)10に入射する。これにより、媒質10から、ω−Δωの変換光13が発生する。ただし、ポンプ光11も一部は透過するため、波長フィルタ14で変換光13のみを取り出せるようにする。全光型の波長変換素子は、動作速度が、例えば数10フェムト秒(fs)から数ピコ秒(ps)と十分高速であるが、非線形光学効果の励起や被変換光として高強度な別の光源と、その光が信号光と混ざらないための波長選択フィルタが必要である。また変換帯域は、電気駆動型波長変換素子よりは広いものの、数10ナノメートル(nm)程度であり、応用範囲が通信用等の狭い範囲に限られるという問題がある。また偏光依存性は、非線形光学効果を用いるため、電気駆動型に比べるとほとんどないが、差周波発生や四光波混合においては完全な偏光無依存化はできていない。
【0130】
また、これらの波長変換技術において、光を導波させる構造は、誘電体の屈折率差を利用して光を閉じ込めるものである。しかしこの構造では回折限界の制約を受けるために、光を、使用する波長より十分小さいナノメートルオーダーの空間に閉じ込めることはできない。全光型のフォトニックネットワークシステムに向けた、光回路のさらなる大規模集積化のためには、光をナノメートルオーダーで自在に操る必要がある。
【0131】
以下、本発明の電磁波波長変換素子により奏される効果の例について説明する。ただし、これらの説明は、例示であって、本発明を何ら限定しない。
【0132】
第1に、波長変換帯域(周波数変換帯域)の広さが挙げられる。電気駆動型の波長変換素子では、波長変換帯域(波長シフト量)は、広くて数nm程度である。また、非線形光学効果を利用する全光型の波長変換素子では、波長変換帯域(波長シフト量)は、広くて数10nm程度である。しかし、この帯域では、一部の光通信用等の限られた用途にしか適用できない。光通信用における周波数利用幅のさらなる拡大、太陽光発電などに応用するためには、例えば、数100nm程度の波長変換帯域(波長シフト量)が必要となる。
【0133】
本発明では、前記の通り、入射光と出射光との波長差(波長シフト量)、すなわち周波数差は、例えば、前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造における、凹凸の寸法および配置間隔(周期)と、前記電子蓄積層の電子密度勾配とで決まる。前記凹凸繰り返し構造は、例えばグレーティング構造の場合、周期等を自在に設計して作製することが可能である。また、前記電子蓄積層が半導体層であれば、電子密度勾配は、材料だけでなく構造や電界のかけ方によって自由に設定可能であり、金属を用いた場合のように材料のみで決定されることはない。したがって、原理的には、例えば、電子密度の差が7×1019cm−3程度で100nm、6×1020cm−3で500nmもの変換が可能である。ただし、本発明の電磁波波長変換素子における波長変換帯域(波長シフト量)は、何ら限定されない。本発明の電磁波波長変換素子の用途は、特に制限されないので、例えば、広い波長変換帯域(波長シフト量)を必要としない用途であれば、波長変換帯域(波長シフト量)が狭くても良い。また、前述のとおり、本発明の電磁波波長変換素子が半導体波長変換素子であり、前記電子蓄積層が半導体層であれば、前記第1の電極および第2の電極により電圧を印加することで、前記電子蓄積層の電子密度を自在に変化させることができる。しかし、本発明の電磁波波長変換素子は、前述のとおり、電圧をかけずに使用しても良い。
【0134】
第2に、小型化および集積化が挙げられる。屈折率差で光を閉じ込める導波路を用いた波長変換素子では、小型化が困難である。すなわち、この導波路では回折限界により光が広がってしまうため、導波路の幅や曲率半径などの寸法が波長オーダーに制限される。また、導波路の単位長さあたりの変換効率が低いことを素子長で補うために、サイズが大きくなってしまう。実際、実用化されている波長変換素子は、例えば、mmからcmのオーダーの素子長である。また、特に全光型で非線形光学効果を利用する場合は、ニオブ酸リチウム(LN)などの結晶を用いるため、他の半導体発光・受光素子との集積化が困難である。
【0135】
これに対し、本発明は、例えば、図4に示すように、SPPは同じエネルギーの伝搬光と比べて波数が大きい、すなわち波長が短いため回折限界による制限が小さくなるという原理に基づく。例えば、表面凹凸構造のある光結合部(前記第1および第2の凹凸繰り返し構造)が、片側10μm程度、それら以外の電子密度勾配がある領域が10μm程度であれば、全長30μm程度の素子が実現可能である。これは、屈折率差で光を閉じ込める導波路を用いた波長変換素子と比較すると、例えば、1/1000程度の素子長である。また、本発明の電磁波波長変換素子が、半導体を主な形成材料とする半導体波長変換素子であれば、他の半導体素子との集積が容易である。材料として、半導体とその酸化膜などの絶縁体、および電極用の金属以外を使用しなければ、さらに集積は容易である。さらに、半導体素子においては、異なる活性層間をドライエッチングと再成長によってつなぐバットジョイント技術が確立していることも、集積が容易な理由である。
【0136】
第3に、波長変換素子およびそれを用いた装置(システム)の構成を単純化できることが挙げられる。例えば、電気駆動型波長変換素子は、消費電力が大きく、高価なRF信号源が必要である。一方、全光型の波長変換素子は、励起用の高強度ポンプ光か被変換光が必要となる。したがって、素子本体が小型化、低消費電力化できたとしても、システム全体としては大型で消費電力も大きくなり、コストも増大してしまう。これに対し、本発明の電磁波波長変換素子においては、例えば、波長変換には、例えば、DCバイアスをかける電圧源のみがあればよい。このため、RF信号源や他の高強度光を用意する必要がない。そのため、素子単体だけでなく、システム全体として小型化、低消費電力化することが可能である。ただし、本発明は、この説明により限定されない。例えば、前記電圧源としては、DCバイアス以外の任意の電圧源を用いても良い。また、前述のとおり、本発明の電磁波波長変換素子は、電圧を印加せずに波長変換することもできる。これによれば、前記電圧源が不用であるので、システムのさらなる小型化および構成の単純化が可能である。また、この場合、前記第1の電極および第2の電極は、省略することもできる。
【0137】
第4に、波長変換効率(入射光から出射光への変換効率)が挙げられる。例えば、全光型の波長変換素子は、もともと係数が小さい高次の非線形光学効果を用いることと、その効果が光強度に依存することから、高い変換効率を得るためには高強度の光源が必要となる。このことは、前述の、装置構成を複雑にする要因ともなっている。本発明の電磁波波長変換素子では、例えば、前記表面プラズモンポラリトン変換構造を適切に設定することで、伝搬光(入射光)からSPPへの結合効率(変換効率)を高くすることができる。より具体的には、例えば、前記第1の凹凸繰り返し構造(周期構造)の周期、形状、長さ等により、前記入射光から前記SPPへの変換効率を、例えば90%程度まで高めることもできる。また、例えば、SPPに変換された後は、電子密度勾配がある領域(前記光入出射領域それぞれの構造間)の長さをSPPの減衰長以下にすることができる。これにより、再び伝搬光へ変換されて出力される全体の波長変換効率(すなわち、入射光から出射光への変換効率)は、例えば、80%程度とすることが可能である。ただし、これらの波長変換効率の数値は、好ましい数値の例示であって、本発明を何ら限定しない。
【0138】
第5に、入射光の偏光依存性が挙げられる。例えば、電気駆動型の波長変換素子は、電場の1次の項がもたらす電気光学効果を用いるため、偏光依存性が顕著であり、異なる方向の偏光に対しては作用しない。一方、全光型は、電場の2次以上の高次の項、すなわち主に光強度がもたらす非線形光学効果を用いるため、偏光依存性は少ないが、さらなる偏光無依存化が求められる。
【0139】
本発明では、例えば、前記第4または第5の実施形態のように、前記電子蓄積層が、縦横両方の方向に層平面(界面)を有することで、縦横いずれの方向の偏光によってもSPPを励起可能である。さらに、それぞれその偏光を保ったまま波長変換をおこなって伝搬光に戻すことができる。また、例えば、前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面から任意の角度だけ傾斜し、かつ前記光入射側から前記光出射側に向かう方向に沿った方向の層平面を有することで、任意の方向の偏光により、同様にSPPを励起し、その偏光を保ったまま波長変換をおこなって伝搬光に戻すことができる。ただし、これらの説明は例示であって、本発明を何ら限定しない。本発明の電磁波波長変換素子は、例えば前記第1から第3の実施形態のように、前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面と平行方向にのみ、層平面(界面)を有していても良い。また、本発明の電磁波波長変換素子の用途は特に制限されないので、偏光依存性の低さ(偏光無依存化)が要求されない用途に用いるのであれば、偏光依存性が高くても良い。
【0140】
[第6の実施形態]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。図15に示すとおり、本実施形態の波長分割多重(Wavelength Division Multiplex:WDM)光通信システムは、単一波長の光202を発する半導体発光素子31と、半導体発光素子31からの出射光202を分波する光分波器32と、光分波器から発する光202を複数の異なる波長の出射光208に変換可能な本発明の電磁波波長変換素子23と、を有する。電磁波波長変換素子23は、複数である。また、電磁波波長変換素子23は、半導体を主な形成材料とする半導体波長変換素子であることが好ましい。半導体波長変換素子23は、例えば、前記第3から第5のいずれかの実施形態における半導体波長変換素子であっても良い。前記本発明の電磁波波長変換素子と、前記単一波長の光を発する半導体発光素子と、前記光分波器を、それぞれ個別の素子として組み合わせることによって、単一波長の発光素子のみで光通信用のWDM送信システムが実現可能である。または、半導体波長変換素子である前記本発明の電磁波波長変換素子と、前記単一波長の光を発する半導体発光素子と、前記光分波器はすべて半導体で形成可能であるため、同一半導体基板上に集積することで、さらなる小型・低消費電力化が可能である。
【0141】
[第7の実施形態]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。図16に示すとおり、この波長可変光源は、前記本発明の電磁波波長変換素子24と、集積光源31とが、同一半導体基板上に集積されている。電磁波波長変換素子24は、集積光源31からの入射光202を、出射光208に波長変換可能である。また、電磁波波長変換素子24は、半導体を主な形成材料とする半導体波長変換素子であることが好ましい。半導体波長変換素子24は、例えば、前記第3から第5のいずれかの実施形態における半導体波長変換素子と同じであっても良い。集積光源は、特に制限されないが、例えば、分布帰還型(distributed feedback laser,DFB)レーザ、分布反射型(Distributed Bragg Reflector,DBR)レーザ等であると、半導体結晶のへき開面が不要である。例えば、集積光源31としてDFBレーザを集積した場合、DFBレーザが出力する単一波長を任意に変換して出力することが可能である。これにより、例えば、従来の波長可変機構を備えた波長可変レーザと比べてはるかに小型で簡単な構成の波長可変レーザが実現可能である。
【0142】
[第8の実施形態]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。図17に示すとおり、この波長可変光源は、前記本発明の電磁波波長変換素子24と、電界吸収型変調器集積光源33とが、同一半導体基板上に集積されている。電磁波波長変換素子24は、電界吸収型変調器集積光源33からの入射光202を、出射光208に波長変換可能である。また、電磁波波長変換素子24は、半導体を主な形成材料とする半導体波長変換素子であることが好ましい。半導体波長変換素子24は、例えば、前記第3から第5のいずれかの実施形態における半導体波長変換素子と同じであっても良い。この波長可変光源は、変調器集積波長可変光源として用いられる。これによれば、本発明の電磁波波長変換素子(半導体波長変換素子)により、単一波長を変調して出力する電界吸収型変調器集積光源の波長を任意に変換して出力することが可能である。これにより、例えば、従来と比べてはるかに小さな変調器集積波長可変レーザが実現可能である。
【0143】
[第9の実施形態]
次に、本発明のさらに別の実施形態について説明する。図18に示すとおり、この光発電システムは、本発明の電磁波波長変換素子23と、電磁波波長変換素子23からの出射光208を起電力に変換する光起電力発生装置34とを有する。電磁波波長変換素子23は、複数であり、入射光202を、出射光208に波長変換可能である。出射光208の波長は、出射光208の光エネルギーを光起電力発生装置34で光起電力として取り出すために最適な波長とすることが好ましい。同図の光発電システムは、例えば、プリズム等の分光器をさらに含んでいても良い。より具体的には、例えば、複数の波長を含んだ光を、前記プリズム等の分光器で分離して入射光202とし、分離した各入射光202を、それぞれ電磁波波長変換素子23に入射させ、出射光208に波長変換しても良い。また、電磁波波長変換素子23は、半導体を主な形成材料とする半導体波長変換素子であることが好ましい。半導体波長変換素子23は、例えば、前記第3から第5のいずれかの実施形態における半導体波長変換素子と同じであっても良い。このような光発電システムを用いれば、本発明の電磁波波長変換素子により、光起電力発生装置で変換可能な波長範囲を超えた広い波長範囲の光を、光起電力発生装置で変換可能な波長範囲に変換することが可能である。これにより光起電力の変換効率を上げることが可能である。また、前記本発明の波長変換素子または半導体波長変換素子と、前記光起電力発生装置とを、同一半導体基板上に集積すれば、さらに小型化が可能であり、好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0144】
以上、説明したとおり、本発明によれば、小型かつ簡単な構成の電磁波波長変換素子、前記電磁波波長変換素子を用いた波長分割多重光通信システム、波長可変光源および光発電システム、ならびに電磁波波長変換素子の製造方法を提供することができる。本発明の電磁波波長変換素子は、例えば、半導体発光デバイスにも、半導体受光デバイスにも適用可能である。本発明の電磁波波長変換素子は、例えば、任意波長から任意波長への変換が可能な超小型半導体波長変換素子とすることもできる。本発明の電磁波波長変換素子は、前記の通り、波長分割多重光通信システム、波長可変光源、または光発電システムに使用できるが、これに限定されず、種々の用途に使用可能である。例えば、本発明の電磁波波長変換素子は、太陽電池に用いることができる。より具体的には、例えば、広い波長域の太陽光を本発明の電磁波波長変換素子により光変換して、効率よく受光し、太陽電池の発電効率を高めることができる。さらに、本発明の電磁波波長変換素子は、波長多重通信用光源、次世代の光通信システム、アクティブな光源とパッシブな光制御素子の同一活性層上でのモノリシック集積、同一の活性層で異なる複数の波長を発振できる可視光源、複数の波長に対応した受光素子、レーザディスプレイ、記録用の可視光源、照明、医療、センシング等、幅広い用途あるいは技術分野への適用も可能である。
【符号の説明】
【0145】
1、51a、51b、71、71’、91、1001 電磁波波長変換素子
10 3次非線形媒質
11 ポンプ光 ω
12 信号光 ω+Δω
13 変換光 ω−Δω
14 波長フィルタ
23、24 電磁波波長変換素子(半導体波長変換素子)
31 集積光源
32 光分波器
33 電界吸収型変調器集積光源
34 光起電力発生素子
101 n型半導体層
102 p型半導体層
103 絶縁層
105 第1の電極
106 第2の電極
107 第3の電極
108 真性半導体層
110 半導体基板
201 電子蓄積層
202 入射伝搬光
203 入射伝搬光の伝搬方向成分
204 エバネッセント光
205 表面プラズモンポラリトン(Surface Plasmon Polariton:SPP)
206 エバネッセント光
207 出射伝搬光の伝搬方向成分
208 出射伝搬光
209 正誘電体層
210 電磁波透過性部材
301 入射伝搬光および出射伝搬光の分散関係
304 第1のSPPの分散関係
306 第2のSPPの分散関係
401 光入射側の領域(電磁波入射領域)または第1の周期構造(凹凸繰り返し構造)
402 光出射側の領域(電磁波出射領域)または第2の周期構造(凹凸繰り返し構造)
404 第1の周期構造(凹凸繰り返し構造)で変換されるエバネッセント光の分散関係
406 第2の周期構造(凹凸繰り返し構造)で変換されるエバネッセント光の分散関係
410 表面プラズモンポラリトン周波数変調手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体と正誘電体との積層構造を有し、
前記正誘電体は、前記半導体の表面に直接接触しており、
電圧印加状態または電圧非印加状態の前記半導体が、前記正誘電体との界面近傍に電子蓄積層を有し、
前記積層構造の一端に、電磁波入射領域が形成され、
前記積層構造の他端に、電磁波出射領域が形成され、
前記電子蓄積層は、その層平面に沿って、表面プラズモンポラリトンを前記電磁波入射領域から前記電磁波出射領域まで伝搬する層であり、
前記電子蓄積層において、前記電磁波入射領域と前記電磁波出射領域との間に、表面プラズモンポラリトン周波数変調領域が形成され、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域は、前記電磁波入射領域側から前記電磁波出射領域側に向かって変化する電子密度を有し、
前記電磁波入射領域に入射した入射電磁波を、前記電磁波入射領域の前記電子蓄積層内でエバネッセント波に変換し、さらに、表面プラズモンポラリトンに変換し、
前記表面プラズモンポラリトンの周波数を、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域の前記電子密度変化により変調し、
周波数が変調された前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント波を、前記電磁波出射領域において出射電磁波に変換し、前記入射電磁波から前記出射電磁波への波長変換を行うことを特徴とする電磁波波長変換素子。
【請求項2】
前記半導体が、n型半導体とp型半導体との積層構造を有し、
前記p型半導体は、前記n型半導体の表面に直接接触しており、
前記正誘電体は、絶縁体であり、かつ、前記p型半導体の表面に直接接触していることを特徴とする請求項1記載の電磁波波長変換素子。
【請求項3】
前記半導体が、真性半導体であり、
前記正誘電体が、n型半導体であり、
さらに、金属または絶縁体を含み、
前記金属または絶縁体が、前記n型半導体を挟んで前記真性半導体と反対側に設けられており、かつ、前記n型半導体の表面に直接接触していることを特徴とする請求項1または2記載の電磁波波長変換素子。
【請求項4】
前記正誘電体に代えて、金属を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項5】
前記電磁波入射領域における前記半導体が、第1の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第1の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記正誘電体は、前記第1の凹凸繰り返し構造における凹凸表面に直接接触していることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項6】
前記電磁波入射領域が、前記積層構造に代えて、第1の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第1の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記第1の凹凸繰り返し構造により、前記入射電磁波をエバネッセント波に変換するとともに、前記エバネッセント波を伝搬し、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域において、前記エバネッセント波を表面プラズモンポラリトンに変換することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項7】
前記電磁波出射領域における前記半導体が、第2の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第2の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記正誘電体は、前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸表面に直接接触していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項8】
前記電磁波出射領域が、前記積層構造に代えて、第2の凹凸繰り返し構造を有し、
前記第2の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられ、
前記第2の凹凸繰り返し構造が、前記表面プラズモンポラリトンに結合したエバネッセント波を伝搬可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項9】
さらに、電磁波透過性部材を有し、
前記電磁波透過性部材は、前記電磁波入射領域において前記半導体または前記正誘電体に接触するように配置され、
前記電磁波透過性部材から入射した光を、前記電磁波透過性部材と前記半導体または前記正誘電体との界面で全反射させることを特徴とする請求項1から4、7および8のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項10】
入射電磁波をエバネッセント波に変換するエバネッセント波変換手段と、
前記エバネッセント波を表面プラズモンポラリトンに変換する表面プラズモンポラリトン変換手段と、
前記表面プラズモンポラリトンの周波数を変調する表面プラズモンポラリトン周波数変調手段と、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段により周波数変調された前記表面プラズモンポラリトンを出射電磁波に変換する出射電磁波変換手段とを有し、
前記表面プラズモンポラリトン変換手段および前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段が、正誘電体と負誘電体との積層構造を有し、前記正誘電体と前記負誘電体との界面を表面プラズモンポラリトンが伝搬することを特徴とする電磁波波長変換素子。
【請求項11】
前記エバネッセント波変換手段が、単一波数の入射電磁波を、複数の波数のエバネッセント波に変換し、
前記表面プラズモンポラリトン変換手段が、前記複数の波数のエバネッセント波の中から、前記表面プラズモンポラリトン変換手段を伝搬しうる表面プラズモンポラリトンの波数と整合する波数のエバネッセント波を前記表面プラズモンポラリトンに変換することを特徴とする請求項10記載の電磁波波長変換素子。
【請求項12】
前記表面プラズモンポラリトン変換手段および前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段が、半導体と正誘電体との積層構造を有し、
前記正誘電体は、前記半導体の表面に直接接触しており、
電圧印加状態または電圧非印加状態の前記半導体が、前記正誘電体との界面近傍に電子蓄積層を有し、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変換手段における前記電子蓄積層は、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって変化する電子密度を有することを特徴とする請求項10または11記載の電磁波波長変換素子。
【請求項13】
前記エバネッセント波変換手段が、第1の凹凸繰り返し構造から形成され、
前記第1の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられていることを特徴とする請求項10から12のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項14】
前記出射電磁波変換手段が、複数の異なる波数の表面プラズモンポラリトンを、前記表面プラズモンポラリトンの波数と整合する波数の出射電磁波に変換可能であることを特徴とする請求項10から13のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項15】
前記出射電磁波変換手段が、第2の凹凸繰り返し構造を含み、
前記第2の凹凸繰り返し構造において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられていることを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項16】
前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔が規則的であることを特徴とする請求項5から8、13および15のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項17】
前記第1の凹凸繰り返し構造および前記第2の凹凸繰り返し構造の両方を有し、
前記第1の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔が、均一であり、
前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔が、均一であり、
前記第1の凹凸繰り返し構造と前記第2の凹凸繰り返し構造とは、前記凹凸の寸法および配置間隔の少なくとも一方が異なることを特徴とする請求項16記載の電磁波波長変換素子。
【請求項18】
前記第1の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔が不規則であることを特徴とする請求項5、6および13のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項19】
前記第2の凹凸繰り返し構造における凹凸の寸法および配置間隔が不規則であることを特徴とする請求項7、8、15および18のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項20】
前記電磁波波長変換素子の使用時における前記正誘電体と前記負誘電体との界面の電子密度または前記電子蓄積層の電子密度が、1×1021cm−3以上であることを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項21】
前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面に平行な平面を有することを特徴とする請求項1から20のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項22】
前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面から傾斜し、かつ電磁波入射側から電磁波出射側への方向に平行な平面を有することを特徴とする請求項1から21のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項23】
前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記積層構造の層平面に垂直であり、かつ電磁波入射側から電磁波出射側への方向に平行な平面を有することを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項24】
前記正誘電体と前記負誘電体との界面または前記電子蓄積層が、前記電磁波波長変換素子の電磁波入射側から電磁波出射側まで連続していることを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項25】
さらに、電圧印加手段を有し、
前記電圧印加手段への電圧印加により、前記電子蓄積層の少なくとも一部、または前記正誘電体と前記負誘電体との界面の少なくとも一部の電子密度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項1から24のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項26】
前記電圧印加手段が、電極であることを特徴とする請求項25記載の電磁波波長変換素子。
【請求項27】
前記電圧印加手段により、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調領域の電子密度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項25または26記載の電磁波波長変換素子。
【請求項28】
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段が、前記正誘電体と前記負誘電体との界面において、電磁波入射側から電磁波出射側へ向かって変化する電子密度変化を有し、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段への電圧印加により、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段の電子密度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項25または26記載の電磁波波長変換素子。
【請求項29】
前記電磁波入射領域への電圧印加により、前記エバネッセント波の波数と前記表面プラズモンポラリトンの波数が整合するように、前記電磁波入射領域における前記電子蓄積層の電子密度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項25から27のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項30】
前記表面プラズモンポラリトン変換手段への電圧印加により、前記エバネッセント波の波数と前記表面プラズモンポラリトンとの波数が整合するように、前記表面プラズモンポラリトン変換手段における前記正誘電体と前記負誘電体との界面の電子密度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項25から28のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項31】
前記第2の凹凸繰り返し構造への電圧印加により、前記第2の凹凸繰り返し構造に入射する表面プラズモンポラリトンの波数と、前記第2の凹凸繰り返し構造におけるエバネッセント波の波数が整合するように、前記第2の凹凸繰り返し構造における前記電子蓄積層の電子密度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項25から30のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項32】
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段への電圧印加により、前記出射電磁波変換手段に入射する表面プラズモンポラリトンの波数と前記エバネッセント波の波数とが整合するように、前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段における前記正誘電体と前記負誘電体との界面の電子密度を変化させることが可能であることを特徴とする請求項25、26、28、30および31のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子。
【請求項33】
単一波長の光を発する半導体発光素子と、前記半導体発光素子からの出射光を分波する光分波器と、前記光分波器から発する光を複数の異なる波長の出射光に変換可能な請求項1から32のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子とを有することを特徴とする波長分割多重(Wavelength Division Multiplex:WDM)光通信システム。
【請求項34】
前記半導体発光素子、前記電磁波波長変換素子、および前記光分波器が、同一半導体基板上に集積されていることを特徴とする請求項33記載の波長分割多重光通信システム。
【請求項35】
請求項1から32のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子と、集積光源とが、同一半導体基板上に集積されていることを特徴とする波長可変光源。
【請求項36】
前記集積光源は、分布帰還型(distributed feedback laser,DFB)レーザまたは分布反射型(Distributed Bragg Reflector,DBR)レーザであることを特徴とする請求項35記載の波長可変光源。
【請求項37】
前記集積光源が、電界吸収型変調器集積光源であり、変調器集積波長可変光源として用いられることを特徴とする請求項35記載の波長可変光源。
【請求項38】
請求項1から32のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子と、前記電磁波波長変換素子からの出射光を起電力に変換する光起電力発生装置とを有することを特徴とする光発電システム。
【請求項39】
前記電磁波波長変換素子と、前記光起電力発生装置とが、同一半導体基板上に集積されていることを特徴とする請求項38記載の光発電システム。
【請求項40】
前記エバネッセント波変換手段を形成するエバネッセント波変換手段形成工程と、
前記表面プラズモンポラリトン変換手段を形成する前記表面プラズモンポラリトン変換手段形成工程と、
前記表面プラズモンポラリトン周波数変調手段を形成する表面プラズモンポラリトン周波数変調手段形成工程と、
前記出射電磁波変換手段を形成する出射電磁波変換手段形成工程とを有することを特徴とする、請求項10から32のいずれか一項に記載の電磁波波長変換素子の製造方法。
【請求項41】
半導体を形成する半導体形成工程と、
前記半導体表面に直接接触する正誘電体を形成する正誘電体形成工程とを含むことを特徴とする電磁波波長変換素子の製造方法。
【請求項42】
さらに、前記半導体表面の電磁波入射側に、第1の凹凸繰り返し構造を形成する第1の凹凸繰り返し構造形成工程を含み、
前記第1の凹凸繰り返し構造形成工程において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられるように前記第1の凹凸繰り返し構造を形成し、
前記正誘電体形成工程において、前記半導体の、前記第1の凹凸繰り返し構造形成側の表面に直接接触するように前記正誘電体を形成することを特徴とする請求項41記載の製造方法。
【請求項43】
さらに、前記半導体表面の電磁波出射側に、第2の凹凸繰り返し構造を形成する第2の凹凸繰り返し構造形成工程を含み、
前記第2の凹凸繰り返し構造形成工程において、電磁波入射側から電磁波出射側に向かって、凹凸が交互に設けられるように前記第2の凹凸繰り返し構造を形成し、
前記正誘電体形成工程において、前記半導体の、前記第2の凹凸繰り返し構造形成側の表面に直接接触するように前記正誘電体を形成することを特徴とする請求項41または42記載の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−22159(P2012−22159A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160153(P2010−160153)
【出願日】平成22年7月14日(2010.7.14)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】