説明

波長変換部材およびそれを用いた発光装置

【課題】蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れる波長変換部材および発光装置を提供する。
【解決手段】波長変換部材70は、蛍光体粒子71の表面側に、微細凹凸構造を有するモスアイ状構造部74とモスアイ状構造部74の先細り状の微細突起75間に入り込んだ透光性媒体73とで構成される反射防止部76を備える。モスアイ状構造部74の各微細突起75は、蛍光体粒子71よりも粒径が小さく且つ透光性媒体73よりも屈折率が大きな微粒子72を蛍光体粒子71の表面側で蛍光体粒子71に複合化することで形成されている。微粒子72の屈折率nを蛍光体粒子71の屈折率nと同じにすれば、反射防止部76の有効屈折率は、蛍光体粒子71の表面の法線方向において図1(d)に示すように蛍光体粒子71の屈折率nと透光性媒体73の屈折率nとの間で連続的に変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粒子が当該蛍光体粒子よりも屈折率が小さな透光性媒体内に散在する波長変換部材に関し、特に、蛍光体粒子としてLEDチップ(発光ダイオードチップ)からの光(励起光)によって励起されてLEDチップよりも長波長の可視光を放射する蛍光体粒子を用いた波長変換部材に関するものである。また、本発明は、波長変換部材を用いた発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、LEDチップを用いたLEDランプは、信号灯、携帯電話機、各種の電飾、車載用表示器、各種の表示装置など、多くの分野に利用されている。また、LEDチップとLEDチップから放射された光によって励起されてLEDチップよりも長波長の光を放射する蛍光体粒子とを組み合わせてLEDチップの発光色とは異なる色合いの光を出す発光装置の研究開発が各所で行われている。この種の発光装置としては、例えば、LEDチップと蛍光体とを組み合わせて白色の光(白色光の発光スペクトル)を得る白色発光装置(一般的に白色LEDと呼ばれている)の商品化がなされており、液晶表示器のバックライト、小型ストロボなどへの応用が盛んになってきている。
【0003】
また、最近の白色LEDの高出力化に伴い、白色LEDを照明用途に展開する研究開発が盛んになってきており、長寿命・水銀フリーといった長所を活かすことにより、環境負荷の小さい蛍光灯代替光源として期待されている。
【0004】
上述の白色LEDとしては、例えば、青色光を放射するLEDチップと、赤色蛍光体粒子および緑色蛍光体粒子を透光性媒体(シリコーン樹脂、ガラスなど)に分散させた波長変換部材(色変換部材)とを組み合わせた発光装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここにおいて、上記特許文献1に開示された波長変換部材は、蛍光体粒子(赤色蛍光体粒子、緑色蛍光体粒子)が透光性被膜で覆われており、当該透光性被膜の材料として、蛍光体粒子の屈折率と透光性媒体の屈折率との中間の屈折率のものを用いているので、LEDチップから放射される光が蛍光体粒子内へ入射する効率(蛍光体粒子への励起光の入射効率)および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−324475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示された波長変換部材では、図8(a)に示すように、蛍光体粒子171の屈折率をn11、透光性媒体173の屈折率をn13、透光性被膜172の屈折率をn12とすると、n13<n12<n11であり、図8(b)に示すように蛍光体粒子171の表面の法線方向において屈折率が段階的に変化しており、透光性媒体173と透光性被膜172との界面、透光性被膜172と蛍光体粒子171との界面それぞれでLEDチップからの励起光の一部はフレネル反射するので、蛍光体粒子171への励起光の入射効率のより一層の向上が望まれている。また、上述の波長変換部材では、蛍光体粒子171の屈折率n11に比べて透光性被膜172の屈折率n12が小さくなっており、蛍光体粒子171と透光性被膜172との界面で蛍光体粒子171からの変換光が全反射される全反射角が存在するので、蛍光体粒子171からの変換光の取り出し効率のより一層の向上が望まれている。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れる波長変換部材およびそれを用いた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、蛍光体粒子が当該蛍光体粒子よりも屈折率が小さな透光性媒体内に散在する波長変換部材であって、蛍光体粒子の表面側に、微細凹凸構造を有するモスアイ状構造部とモスアイ状構造部の先細り状の微細突起間に入り込んだ前記透光性媒体とで構成される反射防止部を備え、モスアイ状構造部の各微細突起は、蛍光体粒子よりも粒径が小さく且つ前記透光性媒体よりも屈折率が大きな微粒子を蛍光体粒子の表面側において蛍光体粒子に複合化することにより形成されてなることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、蛍光体粒子の表面側に、微細凹凸構造を有するモスアイ状構造部とモスアイ状構造部の先細り状の微細突起間に入り込んだ透光性媒体とで構成される反射防止部を備え、モスアイ状構造部の各微細突起が、蛍光体粒子よりも粒径が小さく且つ透光性媒体よりも屈折率が大きな微粒子を蛍光体粒子の表面側において蛍光体粒子に複合化することにより形成されているので、フレネル反射の抑制によって蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記微粒子の屈折率が前記蛍光体粒子の屈折率と同じであることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、前記蛍光体粒子の表面の法線方向において前記反射防止部の有効屈折率が前記蛍光体粒子の屈折率と前記透光性媒体の屈折率との間で連続的に変化するので、前記蛍光体粒子への励起光の入射効率の向上および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率の向上を図れる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記微粒子の屈折率が前記蛍光体粒子の屈折率よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、前記微粒子の屈折率が前記蛍光体粒子の屈折率よりも小さい場合に比べて、前記蛍光体粒子からの変換光が前記微粒子中へ入射しやすくなり、前記蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率を向上できる。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記微粒子は、前記蛍光体粒子への励起光および前記蛍光体粒子からの変換光に対して透明な金属酸化物により形成されてなることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、前記微粒子が前記蛍光体粒子への励起光および前記蛍光体粒子からの変換光に対して透明であり、励起光や変換光が前記微粒子に吸収されるのを防止することができる。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記蛍光体粒子の前記表面の全体が前記蛍光体粒子と略同一の屈折率を有する金属酸化物層によりコーティングされ、前記微粒子が前記金属酸化物層を介して前記蛍光体粒子に複合化されてなることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、前記蛍光体粒子の前記表面の全体が前記蛍光体粒子と略同一の屈折率を有する金属酸化物層によりコーティングされており、前記蛍光体粒子と前記微粒子との間に金属酸化物層が介在しているので、外部からの水分が前記蛍光体粒子へ到達するのを抑制することができ、耐湿性を向上させることができる(湿度の影響で前記蛍光体粒子の特性が劣化するのを抑制することができる)から、前記蛍光体粒子の材料の選択の自由度が高くなり、しかも、前記金属酸化物層の屈折率が前記蛍光体粒子の屈折率と略同一であることにより、前記モスアイ状構造部の反射防止効果の低下を抑制することができるとともに励起光の反射を抑制できる。
【0019】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記透光性媒体は、前記微粒子が前記表面に複合化された前記蛍光体粒子が散在する透光性母材と、前記透光性母材と略同一の屈折率を有し前記蛍光体粒子と前記微粒子との複合粒子と前記透光性母材との間に介在して前記反射防止部の一部を構成する金属酸化物層とからなることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、前記透光性媒体が、前記微粒子が前記表面に複合化された前記蛍光体粒子が散在する透光性母材と、前記透光性母材と略同一の屈折率を有し前記蛍光体粒子と前記微粒子との複合粒子と前記透光性母材との間に介在して前記反射防止部の一部を構成する金属酸化物層とからなるので、前記蛍光体粒子の前記表面側において前記微粒子間の隙間が金属酸化物層によりコーティングされており、外部からの水分が前記蛍光体粒子へ到達するのを抑制することができ、耐湿性を向上させることができる(湿度の影響で前記蛍光体粒子の特性が劣化するのを抑制することができる)から、前記蛍光体粒子の材料の選択の自由度が高くなり、しかも、前記金属酸化物層の屈折率が前記透光性母材の屈折率と略同一であることにより、前記モスアイ状構造部の反射防止効果の低下を抑制することができるとともに励起光の反射を抑制できる。
【0021】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項5の発明において、前記透光性媒体は、シリコーン樹脂もしくはガラスであることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、前記蛍光体粒子の励起光として一般的な青色光や紫外光を採用した場合に前記透光性媒体が励起光により劣化するのを抑制することができる。
【0023】
請求項8の発明は、請求項6の発明において、前記透光性母材は、シリコーン樹脂もしくはガラスであることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、前記蛍光体粒子の励起光として一般的な青色光や紫外光を採用した場合に前記透光性媒体が励起光により劣化するのを抑制することができる。
【0025】
請求項9の発明は、LEDチップと、LEDチップから放射される光の一部を当該光よりも長波長の光に変換して放射する色変換部材とを備え、当該色変換部材として請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の波長変換部材を用いてなることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、LEDチップから放射される光の一部を当該光よりも長波長の光に変換して放射する色変換部材として請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の波長変換部材を用いているので、色変換部材における蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れ、光出力の高出力化を図れる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1の発明では、蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れるという効果がある。
【0028】
請求項9の発明では、色変換部材における蛍光体粒子への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れ、光出力の高出力化を図れるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態1を示し、(a)は波長変換部材を用いた発光装置の概略断面図、(b)〜(d)は波長変換部材の要部説明図である。
【図2】同上における発光装置の概略分解斜視図である。
【図3】同上における理想的な波長変換部材の要部説明図である。
【図4】実施形態2を示し、(a)は波長変換部材を用いた発光装置の概略断面図、(b)〜(d)は波長変換部材の要部説明図である。
【図5】同上における波長変換部材の要部説明図である。
【図6】実施形態3を示し、(a)は波長変換部材を用いた発光装置の概略断面図、(b)〜(d)は波長変換部材の要部説明図である。
【図7】同上における波長変換部材の要部説明図である。
【図8】従来例を示す波長変換部材の要部説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(実施形態1)
本実施形態では、図1(a)および図2に示すようにLEDチップ10と波長変換部材70とを備えた発光装置1について説明した後で、波長変換部材70について説明する。
【0031】
本実施形態における発光装置1は、LEDチップ10と、一表面側にLEDチップ10への給電用の導体パターン23,23を有しLEDチップ10が上記一表面側に実装された矩形板状の実装基板20と、LEDチップ10から放射された光の配光を制御する光学部材であって実装基板20との間にLEDチップ10を収納する形で実装基板20の上記一表面側に固着された透光性材料からなるドーム状の光学部材60と、光学部材60と実装基板20とで囲まれた空間に充実されLEDチップ10および当該LEDチップ10に電気的に接続された複数本(本実施形態では、2本)のボンディングワイヤ14を封止した透光性の封止材料からなる封止部50と、LEDチップ10から放射された光(励起光)によって励起されて励起光よりも長波長の光(LEDチップ10の発光色とは異なる色の光からなる変換光)を放射する蛍光体粒子71(図1(b)参照)が透光性媒体73(図1(b)参照)に分散されたものであって実装基板20の上記一表面側において実装基板20との間にLEDチップ10などを囲む形で配設されるドーム状の波長変換部材(色変換部材)70とを備え、光学部材60と波長変換部材70との間に気体層(例えば、空気層など)80が形成されている。ここにおいて、実装基板20は、上記一表面において光学部材60の外側に、光学部材60を実装基板20に固着する際に上記空間から溢れ出た封止樹脂を堰き止める環状の堰部27が突設されている。
【0032】
LEDチップ10は、青色光を放射するGaN系の青色LEDチップであり、結晶成長用基板としてサファイア基板に比べて格子定数や結晶構造がGaNに近く且つ導電性を有するn形のSiC基板を用いており、SiC基板の主表面側にGaN系化合物半導体材料により形成されて例えばダブルへテロ構造を有する積層構造部からなる発光部がエピタキシャル成長法(例えば、MOVPE法など)により成長されている。ここで、LEDチップ10は、一表面側(図1(a)における上面側)にアノード電極(図示せず)が形成され、他表面側(図1(a)における下面側)にカソード電極が形成されている。上記カソード電極および上記アノード電極は、Ni膜とAu膜との積層膜により構成してあるが、上記カソード電極および上記アノード電極の材料は特に限定するものではなく、良好なオーミック特性が得られる材料であればよく、例えば、Alなどを採用してもよい。また、LEDチップ10の構造は特に限定するものではなく、例えば、結晶成長用基板の主表面側に発光部などをエピタキシャル成長した後に発光部を支持する支持基板(例えば、Si基板など)を発光部に固着してから、結晶成長用基板などを除去したものを用いてもよい。
【0033】
実装基板20は、熱伝導性材料からなりLEDチップ10が搭載される矩形板状の伝熱板21と、伝熱板21の一面側(図1(a)における上面側)に例えばポリオレフィン系の固着シート29(図2参照)を介して固着された矩形板状のフレキシブルプリント配線板からなる配線基板22とで構成され、配線基板22の中央部に伝熱板21におけるLEDチップ10の実装面(上記一面の一部)を露出させる矩形状の窓孔24が形成されており、LEDチップ10が窓孔24の内側に配置された後述のサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されている。したがって、LEDチップ10で発生した熱が配線基板22を介さずにサブマウント部材30および伝熱板21に伝熱されるようになっている。
【0034】
上述の配線基板22は、ポリイミドフィルムからなる絶縁性基材22aの一表面側に、LEDチップ10への給電用の一対の導体パターン23,23が設けられるとともに、各導体パターン23,23および絶縁性基材22aにおいて導体パターン23,23が形成されていない部位を覆う白色系のレジスト(樹脂)からなる保護層26が積層されている。したがって、LEDチップ10の側面から放射され保護層26の表面に入射した光が保護層26の表面で反射されるので、LEDチップ10から放射された光が配線基板22に吸収されるのを防止することができ、外部への光取り出し効率の向上による光出力の向上を図れる。なお、各導体パターン23,23は、絶縁性基材22aの外周形状の半分よりもやや小さな外周形状に形成されている。また、絶縁性基材22aの材料としては、FR4、FR5、紙フェノールなどを採用してもよい。
【0035】
保護層26は、配線基板22の窓孔24の近傍において各導体パターン23,23の2箇所が露出し、配線基板22の周部において各導体パターン23,23の1箇所が露出するようにパターニングされており、各導体パターン23,23は、配線基板22の窓孔24近傍において露出した2つの矩形状の部位が、ボンディングワイヤ14が接続される端子部23aを構成し、配線基板22の周部において露出した円形状の部位が外部接続用電極部23bを構成している。なお、配線基板22の導体パターン23,23は、Cu膜とNi膜とAu膜との積層膜により構成されている。
【0036】
ところで、LEDチップ10は、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率の差に起因してLEDチップ10に働く応力を緩和する上述のサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されている。ここで、サブマウント部材30は、LEDチップ10のチップサイズよりも大きなサイズの矩形板状に形成されている。
【0037】
サブマウント部材30は、上記応力を緩和する機能だけでなく、LEDチップ10で発生した熱を伝熱板21においてLEDチップ10のチップサイズよりも広い範囲に伝熱させる熱伝導機能を有している。したがって、本実施形態における発光装置1では、LEDチップ10がサブマウント部材30を介して伝熱板21に搭載されているので、LEDチップ10で発生した熱をサブマウント部材30および伝熱板21を介して効率良く放熱させることができるとともに、LEDチップ10と伝熱板21との線膨張率差に起因してLEDチップ10に働く応力を緩和することができる。
【0038】
サブマウント部材30の材料としては、熱伝導率が比較的高く且つ絶縁性を有するAlNを採用しており、LEDチップ10は、上記カソード電極がサブマウント部材30におけるLEDチップ10側の表面に設けられ上記カソード電極と接続される電極パターン(図示せず)および金属細線(例えば、金細線、アルミニウム細線など)からなるボンディングワイヤ14を介して一方の導体パターン23と電気的に接続され、上記アノード電極がボンディングワイヤ14を介して他方の導体パターン23と電気的に接続されている。なお、LEDチップ10とサブマウント部材30とは、例えば、SnPb、AuSn、SnAgCuなどの半田や、銀ペーストなどを用いて接合すればよいが、AuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田を用いて接合することが好ましく、サブマウント部材30がCuであって、AuSnを用いて接合する場合には、サブマウント部材30およびLEDチップ10における接合表面にあらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が必要である。また、サブマウント部材30と伝熱板21とは、例えば、AuSn、SnAgCuなどの鉛フリー半田を用いて接合することが好ましいが、AuSnを用いて接合する場合には、伝熱板21における接合表面にあらかじめAuまたはAgからなる金属層を形成する前処理が必要である。
【0039】
サブマウント部材30の材料はAlNに限らず、線膨張率が結晶成長用基板の材料である6H−SiCに比較的近く且つ熱伝導率が比較的高い材料であればよく、例えば、複合SiC、Si、Cu、CuWなどを採用してもよい。なお、サブマウント部材30は、上述の熱伝導機能を有しており、伝熱板21におけるLEDチップ10側の表面の面積はLEDチップ10における伝熱板21側の表面の面積よりも十分に大きいことが望ましい。
【0040】
また、本実施形態における発光装置1では、サブマウント部材30の厚み寸法を、当該サブマウント部材30の表面が配線基板22の保護層26の表面よりも伝熱板21から離れるように設定してあり、LEDチップ10から側方に放射された光が配線基板22の窓孔24の内周面を通して配線基板22に吸収されるのを防止することができる。なお、サブマウント部材30においてLEDチップ10が接合される側の表面においてLEDチップ10との接合部位の周囲に、LEDチップ10から放射された光を反射する反射膜を形成すれば、LEDチップ10の側面から放射された光がサブマウント部材30に吸収されるのを防止することができ、外部への光取出し効率をさらに高めることが可能となる。ここで、反射膜は、例えば、Ni膜とAg膜との積層膜により構成すればよい。
【0041】
上述の封止部50の材料である封止材料としては、シリコーン樹脂を用いているが、シリコーン樹脂に限らず、例えば、アクリル樹脂や、ガラスなどを用いてもよい。
【0042】
光学部材60は、透光性材料(例えば、シリコーン樹脂、ガラスなど)の成形品であってドーム状に形成されている。ここで、光学部材60をシリコーン樹脂の成形品により構成すれば、光学部材60と封止部50との屈折率差および線膨張率差を小さくすることができる。
【0043】
また、光学部材60は、光出射面60bが、光入射面60aから入射した光を光出射面60bと上述の空気層80との境界で全反射させない凸曲面状に形成されており、LEDチップ10と光軸が一致するように配置されている。したがって、LEDチップ10から放射され光学部材60の光入射面60aに入射された光が光出射面60bと気体層80との境界で全反射されることなく波長変換部材70まで到達しやすくなり、全光束を高めることができる。なお、光学部材60は、位置によらず法線方向に沿って肉厚が一様となるように形成されている。
【0044】
波長変換部材70は、蛍光体粒子71が当該蛍光体粒子71よりも屈折率が小さな透光性媒体(例えば、シリコーン樹脂など)73に分散されており(蛍光体粒子71が透光性媒体73内に散在しており)、蛍光体粒子71として、赤色蛍光体粒子および緑色蛍光体粒子を採用している。したがって、本実施形態における発光装置1は、LEDチップ10から放射された青色光と波長変換部材70の赤色蛍光体粒子および緑色蛍光体粒子それぞれから光とが波長変換部材70の光出射面(外面)70bを通して放射されることとなり、白色光を得ることができる。ここで、波長変換部材70の蛍光体粒子71としては、赤色蛍光体粒子および緑色蛍光体粒子を用いる代わりに、例えば、黄色蛍光体粒子を用いてもよいし、緑色蛍光体粒子と橙色蛍光体粒子とを用いてもよいし、黄緑色蛍光体粒子と橙色蛍光体粒子とを用いてもよい。また、LEDチップ10として青色光を放射する青色LEDチップを用いる代わりに、紫外光を放射する紫外LEDチップを用い、蛍光体粒子71として赤色蛍光体粒子、緑色蛍光体粒子および青色蛍光体粒子を用いることで白色光を得るようにしてもよい。また、波長変換部材70の材料として用いる透光性媒体73は、シリコーン樹脂に限らず、例えば、ガラスでもよく、シリコーン樹脂やガラスを採用することにより、励起光として一般的な青色光や紫外光を採用した場合に透光性媒体73が励起光により劣化するのを抑制することができる。
【0045】
また、波長変換部材70は、光入射面(内面)70aが光学部材60の光出射面60bに沿った形状に形成されている。したがって、光学部材60の光出射面60bの位置によらず法線方向における当該光学部材60の光出射面60bと波長変換部材70との間の距離が略一定値となっている。なお、波長変換部材70は、位置によらず法線方向に沿った肉厚が一様となるように成形されている。また、波長変換部材70は、実装基板20側の端縁(開口部の周縁)を実装基板20に対して、例えば接着剤(例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂など)を用いて固着すればよい。
【0046】
ところで、本実施形態の波長変換部材70は、図1(b),(c)に示すように、蛍光体粒子71の表面側に、微細凹凸構造を有するモスアイ状構造部74とモスアイ状構造部74の先細り状の微細突起75間に入り込んだ透光性媒体73とで構成される反射防止部76を備えており、モスアイ状構造部74の各微細突起75が、蛍光体粒子71よりも粒径が小さく且つ透光性媒体73よりも屈折率が大きな微粒子72を蛍光体粒子71の表面に複合化することにより形成されている(蛍光体粒子71の表面の略全面が多数の微粒子72により被覆されている)。ここで、蛍光体粒子71の表面に微粒子72を複合化するにあたっては、例えば、蛍光体粒子71を分散した微粒子72の前駆体の水溶液を噴霧熱分解法によって噴霧熱分解することにより、各蛍光体粒子71それぞれに多数の微粒子72を複合化しており、上記水溶液における微粒子72の前駆体の濃度および噴霧熱分解温度を調整することにより、微粒子72の粒径を制御している。なお、微粒子72を蛍光体粒子71の表面に複合化する方法は、上述の方法に限らず、例えば、ゾル−ゲル法、プラズマ蒸着法などを適用してもよい。
【0047】
モスアイ状構造部74における微細突起75の突出寸法および微細突起75のピッチは、励起光の波長をλ、透光性媒体73の屈折率をnとすれば、λ/n以下に設定する必要がある。したがって、例えば、励起光が青色光で当該青色光の波長λが480nm、透光性媒体73がシリコーン樹脂で屈折率nが1.4の場合には、微細突起75の突出寸法およびピッチを480/1.4≒343nm以下に設定する必要があり、λ=350nm〜480nm、n=1.4の場合には、微細突起75の最大突出寸法および最大ピッチを250nm〜343nmの範囲で適宜設定すればよい。
【0048】
ところで、仮に、図3(a)に示すように、蛍光体粒子71の表面側の反射防止部76におけるモスアイ状構造部74が錘状の微細突起75が配列された微細凹凸構造を有しており、微細突起75間に入り込んだ透光性媒体73の屈折率をn、蛍光体粒子71の屈折率をnとし、微細突起75の屈折率が蛍光体粒子71の屈折率と同じであるとすれば、反射防止部76の有効屈折率は、蛍光体粒子71の表面の法線方向において図3(b)に示すように蛍光体粒子71の屈折率nと透光性媒体73の屈折率nとの間で連続的に変化する。
【0049】
しかしながら、蛍光体粒子71の表面側に図3(a)に示すような微細凹凸構造を有するモスアイ状構造部74を形成するのは困難であり、本実施形態の波長変換部材70では、図1(b),(c)に示すような先細り状の微細突起75が配列された微細凹凸構造となっており、微粒子72の屈折率nを蛍光体粒子71の屈折率nと同じにすれば、反射防止部76の有効屈折率は、蛍光体粒子71の表面の法線方向において図1(d)に示すように蛍光体粒子71の屈折率nと透光性媒体73の屈折率nとの間で連続的に変化する。なお、微粒子72の中心粒径d50は、λ/(10n)≦d50≦λ/nの範囲で設定することが好ましい。
【0050】
また、波長変換部材70における蛍光体粒子71に関し、赤色蛍光体粒子として組成がCaAlSiN:Eu2+で屈折率が2.0、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子を用い、緑色蛍光体粒子として組成がCaSc:Ce3+で屈折率が1.9、中心粒径d50が8μmの蛍光体粒子を用いているが、これらの組成に限定するものではなく、赤色蛍光体粒子としては、例えば、組成が、(Ca、Sr)AlSiN:Eu2+、CaS:Eu2+、(Ca、Sr)Si:Eu2+などのものを用いてもよく、緑色蛍光体粒子としては、例えば、組成が、CaScSi12:Ce3+、(Ca、Sr、Ba)Al:Eu2+、SrGa:Eu2+などのものを用いてもよい。また、蛍光体粒子71として黄色蛍光体粒子を採用する場合には、例えば、組成が、YAl12:Ce3+、(Ca、Sr、Ba、Zn)SiO:Eu2+などのものを用いればよく、蛍光体粒子71として黄緑色蛍光体粒子と橙色蛍光体粒子とを採用する場合には、例えば、黄緑色蛍光体粒子として、組成が、(Ba、Sr)SiO:Eu2+などのものを用いればよく、橙色蛍光体粒子として、組成が、SrSiO:Eu2+、Ca0.7Sr0.3AlSiN:Eu2+などのものを用いればよい。なお、蛍光体粒子71は、中心粒径d50が大きい方が、欠陥密度が小さくエネルギ損失が少なくて発光効率が高くなるので、発光効率の観点から中心粒径d50が5μm以上のものを採用することが好ましい。
【0051】
本実施形態では、微粒子72の材料として、蛍光体粒子71への励起光および蛍光体粒子71からの変換光に対して透明な金属酸化物(例えば、ZrOなど)を採用しているので、微粒子72が蛍光体粒子71への励起光および蛍光体粒子71からの変換光に対して透明であり、励起光や変換光が微粒子72に吸収されるのを防止することができる。ここで、微粒子72の屈折率をnとすれば、微粒子72としては、屈折率nが蛍光体粒子71の屈折率n以上のものを採用することが好ましく、屈折率nが2.05のZrOを採用しているが、ZrOに限らず、例えば、屈折率nが2.3〜2.55のTiOを採用してもよい。ただし、微粒子72の屈折率nについては、蛍光体粒子71の屈折率と同じであるのがより好ましい。なお、微粒子72の材料は、蛍光体粒子71の屈折率nおよび透光性媒体73の屈折率nに応じて各種金属酸化物から適宜選択すればよく、例えば、SiO、Al、Yなどを採用することも可能である。ここで、SiOの屈折率は1.46、Alの屈折率は1.63、Yの屈折率は1.87であり、例えば、蛍光体粒子71がYAG:Ce3+からなる黄色蛍光体粒子で屈折率nが1.83、透光性媒体73がシリコーン樹脂で屈折率nが1.4の場合には、微粒子72として屈折率nが1.87のYを採用すれば、蛍光体粒子71の屈折率nと微粒子72の屈折率nとが略同じとなる。
【0052】
以上説明した本実施形態の波長変換部材70では、蛍光体粒子71の表面側に、微細凹凸構造を有するモスアイ状構造部74とモスアイ状構造部74の先細り状の微細突起75間に入り込んだ透光性媒体73とで構成される反射防止部76を備え、モスアイ状構造部74の各微細突起75が、蛍光体粒子71よりも粒径が小さく且つ透光性媒体73よりも屈折率が大きな微粒子72を蛍光体粒子71の表面に複合化することにより形成されているので、フレネル反射の抑制によって蛍光体粒子71への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子71からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れ(励起光の反射損失の低減を図れるとともに変換光の反射損失の低減を図れ)、結果として、波長変換部材70の光取り出し効率が向上し、発光装置1全体の外部への光取り出し効率が向上し、光束を向上させることができる。しかして、本実施形態の発光装置1は、LEDチップ10から放射される光の一部を当該光よりも長波長の光に変換して放射する色変換部材として上述の波長変換部材70を用いているので、色変換部材における蛍光体粒子71への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子71からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れ、光出力の高出力化を図れる。
【0053】
また、本実施形態の波長変換部材70では、微粒子72の屈折率nを蛍光体粒子71の屈折率nと同じにすれば、蛍光体粒子71の表面の法線方向において反射防止部76の有効屈折率が蛍光体粒子71の屈折率nと透光性媒体73の屈折率nとの間で連続的に変化するので、蛍光体粒子71への励起光の入射効率の向上および蛍光体粒子71からの変換光の取り出し効率の向上を図れ、微粒子72の屈折率nを蛍光体粒子71の屈折率nよりも大きくすれば、微粒子72の屈折率nが蛍光体粒子71の屈折率nよりも小さい場合(つまり、n>n>nの場合)に比べて、蛍光体粒子71からの変換光が微粒子72中へ入射しやすくなり、蛍光体粒子71からの変換光の取り出し効率を向上できる。
【0054】
(実施例1)
本実施例では、実施形態1の発光装置1において、LEDチップ10として発光ピーク波長が460nmの青色LEDチップを採用し、波長変換部材70に関して、透光性媒体73として、屈折率が1.4のシリコーン樹脂を採用し、蛍光体粒子71に関して、赤色蛍光体粒子として組成がCaAlSiN:Eu2+で屈折率が2.0、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子、緑色蛍光体粒子として組成がCaSc:Ce3+で屈折率が1.9、中心粒径d50が8μmの蛍光体粒子を採用し、微粒子72として屈折率nが2.05のZrOを採用し、蛍光体粒子71を分散した微粒子72の前駆体の水溶液であるオキシ硝酸ジルコニウム水溶液を熱噴霧乾燥することにより、各蛍光体粒子71それぞれに中心粒径d50が100nmの微粒子72を複合化しており、蛍光体粒子71に微粒子72を複合化してない波長変換部材70を用いた比較例1に比べて、発光装置1の光束が約7%向上した。
【0055】
(実施形態2)
図4(a)に示す本実施形態の発光装置1の基本構成は実施形態1と同じであり、波長変換部材70に関して、図4(b)〜(d)に示すように、蛍光体粒子71の表面の全体が蛍光体粒子71と略同一の屈折率を有する金属酸化物層77によりコーティングされ、微粒子72が金属酸化物層77を介して蛍光体粒子71に複合化されている点が相違するだけである。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
金属酸化物層77の材料は、蛍光体粒子71の屈折率に応じて各種の金属酸化物から適宜選択すればよく、例えば、ZrO、Yなどを採用すればよい。また、本実施形態では、金属酸化物層77の厚みを100nm〜150nmの範囲で設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0057】
ここで、蛍光体粒子71の表面側に微粒子72を複合化するにあたっては、まず、蛍光体粒子71の表面に金属酸化物層77をコーティングし、その後、微粒子72を複合化する。ここにおいて、蛍光体粒子71の表面に金属酸化物層77をコーティングするにあたっては、例えば、所定量の蛍光体粒子71を分散した金属酸化物層77の前駆体のスラリーを熱噴霧乾燥することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面に金属酸化物層77を形成している。更に緻密な金属酸化物層77とするために、必要に応じて熱処理を行ってもよい。その後、金属酸化物層77がコーティングされた蛍光体粒子71を分散した微粒子72の前駆体のスラリーを熱噴霧乾燥することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面側に金属酸化物層77を介して多数の微粒子72を複合化しており、上記スラリーにおける微粒子72の前駆体の濃度および噴霧熱乾燥温度を調整することにより、微粒子72の粒径を制御している。なお、微粒子72を蛍光体粒子71の表面側に複合化する方法は、上述の方法に限らず、例えば、ゾル−ゲル法、流動層コーティング法、プラズマ蒸着法などを適用してもよい。
【0058】
ここにおいて、実施形態1と同様、微粒子72の屈折率をn、蛍光体粒子71の屈折率をn、透光性媒体73の屈折率をnとし、金属酸化物層77の屈折率をnとすれば、反射防止部76の有効屈折率は、蛍光体粒子71の表面の法線方向において図4(d)に示すように微粒子72の屈折率nと透光性媒体73の屈折率nとの間で連続的に変化する。微粒子72の屈折率nは、蛍光体粒子71の屈折率nよりも高く設定してあるが、微粒子72の屈折率nと蛍光体粒子71の屈折率nとは略同一であることが好ましく、同一であることがより好ましい。また、金属酸化物層77の屈折率nは、蛍光体粒子71の屈折率nと略同一としてあるが、図4(d)では、金属酸化物層77の屈折率nに関して、蛍光体粒子71の屈折率nと略同一とみなす屈折率nの上限値をn4max、下限値をn4minとして図示してある。
【0059】
ここで、金属酸化物層77の屈折率nを蛍光体粒子71の屈折率nと略同一であるとみなす範囲を規定するために、蛍光体粒子71の屈折率nと金属酸化物層77の屈折率nとの屈折率差(|n−n|)の蛍光体粒子71の屈折率nに対する比率({|n−n|/n}×100)と、金属酸化物層77と蛍光体粒子71との界面(屈折率界面)における相対反射損失(正反射成分のみを考慮した反射損失の相対値)との関係をシミュレーションした結果を図5に示す。図5から分かるように、屈折率差の屈折率nに対する比率が22%以上になると、金属酸化物層77と蛍光体粒子71との界面(屈折率界面)における相対反射損失が1%を超える。一方、上述の実施例1の発光装置1では、比較例1に対する光取り出し効率のアップ率が7%であるので、相対反射損失の1%という値は無視できる値ではない。そこで、屈折率差の屈折率nに対する比率が15%以下(相対反射損失が0.5%以下)となる場合に、金属酸化物層77の屈折率nを蛍光体粒子71の屈折率nと略同一であるとみなすこととする。なお、微粒子72の屈折率nが蛍光体粒子71の屈折率nよりも大きい場合、微粒子72の屈折率nと金属酸化物層77の屈折率nとの屈折率差を小さくする観点から、金属酸化物層77の屈折率nを蛍光体粒子71の屈折率nと略同一であるとみなす屈折率nの範囲においては、n>nであることが好ましい。
【0060】
以上説明した本実施形態の波長変換部材70では、蛍光体粒子71の表面の全体が蛍光体粒子71と略同一の屈折率nを有する金属酸化物層77によりコーティングされており、蛍光体粒子71と微粒子72との間に金属酸化物層77が介在しているので、外部からの水分が蛍光体粒子71へ到達するのを抑制することができ、耐湿性を向上させることができる(湿度の影響で蛍光体粒子71の特性が劣化するのを抑制することができる)から、蛍光体粒子71の材料の選択の自由度が高くなり、しかも、金属酸化物層77の屈折率nが蛍光体粒子71の屈折率nと略同一であることにより、モスアイ状構造部74の反射防止効果の低下を抑制することができるとともに蛍光体粒子71と金属酸化物層77との界面での励起光の反射を抑制できる。
【0061】
また、本実施形態の発光装置1も、実施形態1と同様、LEDチップ10から放射される光の一部を当該光よりも長波長の光に変換して放射する色変換部材として上述の波長変換部材70を用いているので、色変換部材における蛍光体粒子71への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子71からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れ、光出力の高出力化を図れる。
【0062】
(実施例2)
本実施例では実施形態2の発光装置1において、LEDチップ10として発光ピーク波長が460nmの青色LEDチップを採用し、波長変換部材70に関して、透光性媒体73として、屈折率が1.4のシリコーン樹脂を採用し、蛍光体粒子71に関して、緑色蛍光体粒子として組成がCaSc:Ce3+で屈折率が1.9、中心粒径d50が8μmの蛍光体粒子、橙色蛍光体粒子として組成がCa0.7Sr0.3AlSiN:Eu2+で屈折率が2.1、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子を採用し、金属酸化物層77として屈折率が2.05のZrOを採用し、微粒子72として屈折率nが2.05のZrOを採用している。
【0063】
ここにおいて、波長変換部材70の製造に際し、蛍光体粒子71の表面に金属酸化物層77をコーティングするにあたっては、例えば、緑色蛍光体粒子、橙色蛍光体粒子それぞれについて、n−ブタノール中で所定量の蛍光体粒子71(所定量の緑色蛍光体粒子、或いは、所定量の橙色蛍光体粒子)、ジルコニウムテトライソプロポキシド、微量の水を混合攪拌して得たスラリーを熱噴霧乾燥し、次いで350℃で熱処理することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面に厚さが100nm〜150nm程度のZrO層からなる金属酸化物層77を形成している。また、蛍光体粒子71の表面側に微粒子72を複合化するにあたっては、金属酸化物層77がコーティングされた緑色蛍光体粒子、金属酸化物層77がコーティングされた橙色蛍光体粒子それぞれについて、n−ブタノール中で上述の金属酸化物層77がコーティングされた所定量の蛍光体粒子71(金属酸化物層77がコーティングされた所定量の緑色蛍光体粒子、或いは、金属酸化物層77がコーティングされた所定量の橙色蛍光体粒子)、酸化ジルコニウムのゾルを混合攪拌して得たスラリーを熱噴霧乾燥することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面側に金属酸化物層77を介して中心粒径d50が100nm〜150nm程度の多数のZrO微粒子からなる微粒子72を複合化している。その後、微粒子72が複合化された蛍光体粒子71を屈折率が1.4のシリコーン樹脂に分散し、ドーム状に成形することにより、波長変換部材70を形成している。また、比較例2として、実施例2と同様の構成で金属酸化物層77および微粒子72を備えていない発光装置を作成した。
【0064】
以上説明した実施例2および比較例2について、温度85℃、相対湿度85%RH、断続通電(30分点灯、30分消灯のサイクル)の試験条件で信頼性加速試験を行った。試験前の全光束および試験開始から1000時間が経過した後の全光束それぞれを測定した結果を下記表1に示す。なお、表1では、比較例2の試験前の光束を100として規格化した相対値を記載してある。
【0065】
【表1】

【0066】
表1から、実施例2の発光装置1では、比較例2に比べて、試験開始前の光束が7%向上するとともに、試験開始から1000時間が経過した後の光束の劣化も少なくなっており、高出力化および耐湿性の向上を図れていることが分かる。
【0067】
(実施例3)
本実施例では実施形態2の発光装置1において、LEDチップ10として発光ピーク波長が460nmの青色LEDチップを採用し、波長変換部材70に関して、透光性媒体73として、屈折率が1.4のシリコーン樹脂を採用し、蛍光体粒子71に関して、黄緑色蛍光体粒子として組成が(Ba,Sr)SiO:Eu2+で屈折率が1.9、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子、橙色蛍光体粒子として組成がSrSiO:Eu2+で屈折率が1.9、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子を採用し、金属酸化物層77として屈折率が1.87のYを採用し、微粒子72として屈折率nが1.87のYを採用している。
【0068】
ここにおいて、波長変換部材70の製造に際し、蛍光体粒子71の表面に金属酸化物層77をコーティングするにあたっては、例えば、黄緑色蛍光体粒子、橙色蛍光体粒子それぞれについて、n−ブタノール中で所定量の蛍光体粒子71(所定量の黄緑色蛍光体粒子、或いは、所定量の橙色蛍光体粒子)、イットリウムトリイソプロポキシド、微量の水を混合攪拌して得たスラリーを熱噴霧乾燥し、次いで300℃で熱処理することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面に厚さが100nm〜150nm程度のY層からなる金属酸化物層77を形成している。また、蛍光体粒子71の表面側に微粒子72を複合化するにあたっては、金属酸化物層77がコーティングされた黄色蛍光体粒子、金属酸化物層77がコーティングされた橙色蛍光体粒子それぞれについて、n−ブタノール中で上述の金属酸化物層77がコーティングされた所定量の蛍光体粒子71(金属酸化物層77がコーティングされた所定量の黄緑色蛍光体粒子、或いは、金属酸化物層77がコーティングされた所定量の橙色蛍光体粒子)、酸化イットリウムのゾルを混合攪拌して得たスラリーを熱噴霧乾燥することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面側に金属酸化物層77を介して中心粒径d50が100nm〜150nm程度の多数のY微粒子からなる微粒子72を複合化している。その後、微粒子72が複合化された蛍光体粒子71を屈折率が1.4のシリコーン樹脂に分散し、ドーム状に成形することにより、波長変換部材70を形成している。また、比較例3として、実施例3と同様の構成で金属酸化物層77および微粒子72を備えていない発光装置を作成した。
【0069】
以上説明した実施例3および上述の比較例3について、温度85℃、相対湿度85%RH、断続通電(30分点灯、30分消灯のサイクル)の試験条件で信頼性加速試験を行った。試験前の光束および試験開始から1000時間が経過した後の光束を測定した結果を下記表2に示す。なお、表2では、比較例3の試験前の光束を100として規格化した相対値を記載してある。
【0070】
【表2】

【0071】
表2から、実施例3の発光装置1では、比較例3に比べて、試験開始前の光束が10%向上するとともに、試験開始から1000時間が経過した後の光束の劣化も少なくなっており、高出力化および耐湿性の向上を図れていることが分かる。
【0072】
(実施形態3)
図6(a)に示す本実施形態の発光装置1の基本構成は実施形態1と同じであり、波長変換部材70に関して、図6(b)〜(d)に示すように、透光性媒体73が、微粒子72が表面に複合化された蛍光体粒子71が散在する透光性母材(例えば、シリコーン樹脂、ガラスなど)73aと、透光性母材73aと略同一の屈折率を有し蛍光体粒子71と微粒子72との複合粒子と透光性母材73aとの間に介在して反射防止部76の一部を構成する金属酸化物層73bとからなる点が相違するだけである。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0073】
金属酸化物層73bの材料は、透光性母材73aの屈折率に応じて各種の金属酸化物から適宜選択すればよく、例えば、SiOなどを採用すればよい。また、本実施形態では、金属酸化物層73bの厚みを100nm〜150nmの範囲で設定してあるが、この数値は一例であり、特に限定するものではない。
【0074】
ここで、波長変換部材70の製造に際しては、蛍光体粒子71を分散した微粒子72の前駆体のスラリーを熱噴霧乾燥することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面に多数の微粒子72を複合化し、その後、金属酸化物層73bを例えばゾル−ゲル法により形成してから、当該金属酸化物層73bによりコーティングされた蛍光体粒子71を透光性母材73aの材料であるシリコーン樹脂もしくはガラスに分散し、ドーム状に成形している。なお、金属酸化物層73bの形成方法は、ゾル−ゲル法に限らず、例えば、プラズマ蒸着法でもよい。更に緻密な金属酸化物層73bとするために、必要に応じて熱処理を行ってもよい。
【0075】
ここにおいて、実施形態1と同様、微粒子72の屈折率をn、蛍光体粒子71の屈折率をnとし、透光性母材73aの屈折率をn、金属酸化物層73bの屈折率をnとすれば、反射防止部76の有効屈折率は、蛍光体粒子71の表面の法線方向において図6(d)に示すように微粒子72の屈折率nと金属酸化物層73bの屈折率nとの間で連続的に変化する。微粒子72の屈折率nは、蛍光体粒子71の屈折率nよりも高く設定してあるが、微粒子72の屈折率nと蛍光体粒子71の屈折率nとは略同一であることが好ましく、同一であることがより好ましい。また、金属酸化物層73bの屈折率nは、透光性母材73aの屈折率nと略同一としてあるが、図6(d)では、金属酸化物層73bの屈折率nに関して、透光性母材73aの屈折率nと略同一とみなす屈折率nの上限値をn4max、下限値をn4minとして図示してある。
【0076】
ここで、金属酸化物層73bの屈折率nを透光性母材73aの屈折率nと略同一であるとみなす範囲を規定するために、透光性母材73aの屈折率nと金属酸化物層73bの屈折率nとの屈折率差(|n−n|)の透光性母材73aの屈折率nに対する比率({|n−n|/n}×100)と、透光性母材73aと金属酸化物層73bとの界面(屈折率界面)における相対反射損失(正反射成分のみを考慮した反射損失の相対値)との関係をシミュレーションした結果を図7に示す。図7から分かるように、屈折率差の屈折率nに対する比率が22%以上になると、透光性母材73aと金属酸化物層73bとの界面(屈折率界面)における相対反射損失が1%を超える。一方、上述の実施例1の発光装置1では、比較例1に対する光取り出し効率のアップ率が7%であるので、相対反射損失の1%という値は無視できる値ではない。そこで、屈折率差の屈折率nに対する比率が15%以下(相対反射損失が0.5%以下)となる場合に、金属酸化物層73bの屈折率nを透光性母材73aの屈折率nと略同一であるとみなすこととする。
【0077】
以上説明した本実施形態の波長変換部材70では、透光性媒体73が、微粒子72が表面に複合化された蛍光体粒子71が散在する透光性母材73aと、透光性母材73aと略同一の屈折率nを有し蛍光体粒子71と微粒子72との複合粒子と透光性母材73aとの間に介在して反射防止部76の一部を構成する金属酸化物層73bとからなるので、蛍光体粒子71の表面側において微粒子72間の隙間が金属酸化物層73bによりコーティングされており、外部からの水分が蛍光体粒子71へ到達するのを抑制することができ、耐湿性を向上させることができる(湿度の影響で蛍光体粒子71の特性が劣化するのを抑制することができる)から、蛍光体粒子71の材料の選択の自由度が高くなり、しかも、金属酸化物層73bの屈折率nが透光性母材73aの屈折率nと略同一であることにより、モスアイ状構造部74の反射防止効果の低下を抑制することができるとともに励起光の反射を抑制できる。
【0078】
また、本実施形態の波長変換部材70では、透光性母材73aが、シリコーン樹脂もしくはガラスであるので、蛍光体粒子71の励起光として一般的な青色光や紫外光を採用した場合に透光性媒体73が励起光により劣化するのを抑制することができる。
【0079】
また、本実施形態の発光装置1も、実施形態1と同様、LEDチップ10から放射される光の一部を当該光よりも長波長の光に変換して放射する色変換部材として上述の波長変換部材70を用いているので、色変換部材における蛍光体粒子71への励起光の入射効率のより一層の向上および蛍光体粒子71からの変換光の取り出し効率のより一層の向上を図れ、光出力の高出力化を図れる。
【0080】
(実施例4)
本実施例では実施形態3の発光装置1において、LEDチップ10として発光ピーク波長が460nmの青色LEDチップを採用し、波長変換部材70に関して、透光性母材73aとして、屈折率が1.4のシリコーン樹脂を採用し、蛍光体粒子71に関して、緑色蛍光体粒子として組成がCaSc:Ce3+で屈折率が1.9、中心粒径d50が8μmの蛍光体粒子、赤色蛍光体粒子として組成がCa0.7Sr0.3AlSiN:Eu2+で屈折率が2.1、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子を採用し、金属酸化物層73bとして屈折率が1.5のSiOを採用し、微粒子72として屈折率nが2.05のZrOを採用している。
【0081】
ここにおいて、波長変換部材70の製造に際し、蛍光体粒子71の表面に微粒子72を複合化するにあたっては、緑色蛍光体粒子、赤色蛍光体粒子それぞれについて、イソプロパノール中で所定量の蛍光体粒子71(所定量の緑色蛍光体粒子、或いは、所定量の赤色蛍光体粒子)、酸化ジルコニウムのゾルを混合攪拌して得たスラリーを熱噴霧乾燥することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面に中心粒径d50が100nmの多数のZrO微粒子からなる微粒子72を複合化している。その後、蛍光体粒子71の表面側に金属酸化物層73bをコーティングするにあたっては、例えば、微粒子72が複合化された緑色蛍光体粒子、微粒子72が複合化された赤色蛍光体粒子それぞれについて、イソプロパノール中で所定量の蛍光体粒子71(所定量の緑色蛍光体粒子、或いは、所定量の赤色蛍光体粒子)、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)、水、触媒としての塩酸を60℃で所定時間(6時間)だけ混合攪拌して得たスラリーを、濾過、洗浄、300℃での熱処理を施すことにより、SiO層からなる金属酸化物層73bを形成している。その後、微粒子72が複合化され更に金属酸化物層73bによりコーティングされた蛍光体粒子71を屈折率が1.4のシリコーン樹脂に分散し、ドーム状に成形することにより、波長変換部材70を形成している。
【0082】
(実施例5)
本実施例の発光装置1の基本構成は実施形態1と同じであり、金属酸化物層73bを形成していない点のみが実施例4と相違する。
【0083】
以上説明した実施例4、金属酸化物層73bを形成していない実施例5、および上述の比較例2について、温度85℃、相対湿度85%RH、断続通電(30分点灯、30分消灯のサイクル)の試験条件で信頼性加速試験を行った。試験前の光束および試験開始から1000時間が経過した後の光束を測定した結果を下記表3に示す。なお、表3では、比較例2の試験前の光束を100として規格化した相対値を記載してある。
【0084】
【表3】

【0085】
表3から、実施例4,5の発光装置1では、比較例2に比べて、試験開始前の光束が7%向上するとともに、試験開始から1000時間が経過した後の光束の劣化も少なくなっており、高出力化および耐湿性の向上を図れていることが分かる。また、実施例4と実施例5との比較から、金属酸化物層73bを備えた実施例4の方が金属酸化物層73bを備えていない実施例5に比べて、耐湿性が向上していることが分かる。
【0086】
(実施例6)
本実施例では実施形態3の発光装置1において、LEDチップ10として発光ピーク波長が460nmの青色LEDチップを採用し、波長変換部材70に関して、透光性母材73aとして、屈折率が1.4のシリコーン樹脂を採用し、蛍光体粒子71に関して、黄緑色蛍光体粒子として組成が(Ba、Sr)SiO:Eu2+で屈折率が1.9、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子、橙色蛍光体粒子として組成がSrSiO:Eu2+で屈折率が1.9、中心粒径d50が10μmの蛍光体粒子を採用し、金属酸化物層73bとして屈折率が1.5のSiOを採用し、微粒子72として屈折率nが1.87のYを採用している。
【0087】
ここにおいて、波長変換部材70の製造に際し、蛍光体粒子71の表面に微粒子72を複合化するにあたっては、黄緑色蛍光体粒子、橙色蛍光体粒子それぞれについて、n−ブタノール中で所定量の蛍光体粒子71(所定量の黄緑色蛍光体粒子、或いは、所定量の橙色蛍光体粒子)、イットリウムトリイソプロポキシド、微量の水を混合攪拌して得たスラリーを噴霧熱分解法によって噴霧熱分解することにより、各蛍光体粒子71それぞれの表面に中心粒径d50が100nm〜150nm程度の多数のY微粒子からなる微粒子72を複合化している。その後、蛍光体粒子71の表面側に金属酸化物層73bをコーティングするにあたっては、例えば、微粒子72が複合化された黄緑色蛍光体粒子、微粒子72が複合化された橙色蛍光体粒子それぞれについて、イソプロパノール中で所定量の蛍光体粒子71(所定量の黄緑色蛍光体粒子、或いは、所定量の橙色蛍光体粒子)、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)、水、触媒としての塩酸を60℃で所定時間(6時間)だけ混合攪拌して得たスラリーを、濾過、洗浄、300℃での熱処理を施すことにより、SiO層からなる金属酸化物層73bを形成している。その後、微粒子72が複合化され更に金属酸化物層73bによりコーティングされた蛍光体粒子71を屈折率が1.4のシリコーン樹脂に分散し、ドーム状に成形することにより、波長変換部材70を形成している。
【0088】
(実施例7)
本実施例の発光装置1の基本構成は実施形態1と同じであり、金属酸化物層73bを形成していない点のみが実施例6と相違する。
【0089】
以上説明した実施例6、金属酸化物層73bを形成していない実施例7、および上述の比較例3について、温度85℃、相対湿度85%RH、断続通電(30分点灯、30分消灯のサイクル)の試験条件で信頼性加速試験を行った。試験前の光束および試験開始から1000時間が経過した後の光束を測定した結果を下記表4に示す。なお、表4では、比較例3の試験前の光束を100として規格化した相対値を記載してある。
【0090】
【表4】

【0091】
表4から、実施例6,7の発光装置1では、比較例3に比べて、試験開始前の光束が10%向上するとともに、試験開始から1000時間が経過した後の光束の劣化も少なくなっており、高出力化および耐湿性の向上を図れていることが分かる。また、実施例6と実施例7との比較から、金属酸化物層73bを備えた実施例6の方が金属酸化物層73bを備えていない実施例7に比べて、耐湿性が向上していることが分かる。
【0092】
ところで、波長変換部材70の形状および波長変換部材70を適用する発光装置1の構造は上記各実施形態および上記各実施例の構造に限定するものではなく、波長変換部材70の形状はドーム状に限らず、例えば、シート状の形状でもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 発光装置
10 LEDチップ
70 波長変換部材(色変換部材)
71 蛍光体粒子
72 微粒子
73 透光性媒体
73a 透光性母材
73b 金属酸化物層
74 モスアイ状構造部
75 微細突起
76 反射防止部
77 金属酸化物層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粒子が当該蛍光体粒子よりも屈折率が小さな透光性媒体内に散在する波長変換部材であって、蛍光体粒子の表面側に、微細凹凸構造を有するモスアイ状構造部とモスアイ状構造部の先細り状の微細突起間に入り込んだ前記透光性媒体とで構成される反射防止部を備え、モスアイ状構造部の各微細突起は、蛍光体粒子よりも粒径が小さく且つ前記透光性媒体よりも屈折率が大きな微粒子を蛍光体粒子の表面側において蛍光体粒子に複合化することにより形成されてなることを特徴とする波長変換部材。
【請求項2】
前記微粒子の屈折率が前記蛍光体粒子の屈折率と同じであることを特徴とする請求項1記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記微粒子の屈折率が前記蛍光体粒子の屈折率よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記微粒子は、前記蛍光体粒子への励起光および前記蛍光体粒子からの変換光に対して透明な金属酸化物により形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
前記蛍光体粒子の前記表面の全体が前記蛍光体粒子と略同一の屈折率を有する金属酸化物層によりコーティングされ、前記微粒子が前記金属酸化物層を介して前記蛍光体粒子に複合化されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記透光性媒体は、前記微粒子が前記表面に複合化された前記蛍光体粒子が散在する透光性母材と、前記透光性母材と略同一の屈折率を有し前記蛍光体粒子と前記微粒子との複合粒子と前記透光性母材との間に介在して前記反射防止部の一部を構成する金属酸化物層とからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記透光性媒体は、シリコーン樹脂もしくはガラスであることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記透光性母材は、シリコーン樹脂もしくはガラスであることを特徴とする請求項6記載の波長変換部材。
【請求項9】
LEDチップと、LEDチップから放射される光の一部を当該光よりも長波長の光に変換して放射する色変換部材とを備え、当該色変換部材として請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の波長変換部材を用いてなることを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−100827(P2010−100827A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−205060(P2009−205060)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】