説明

注入ノズル、及び注入ノズルと内部ノズルの組立体

本発明は、上流端(32)において頂面(16)及び底面を有する略矩形状のプレート(34)を備えた注入ノズル(30)に関する。ノズル(30)は、軸(40)がプレート(34)の頂面(16)に略直交するチューブ(38)を有する。チューブ(38)は、プレート(34)の底面からノズルの下流端(36)まで延びる。ノズルは、プレート(34)の表面(16)を貫通して形成された入口オリフィス(18)と、プレート(34)の内腔と、チューブ(38)の内腔(50)とから構成される注入路を含み、チューブの下流端(36)は閉鎖され、注入路は下流端(36)近傍においてチューブ(38)の側壁に形成された出口(46,46´)を通って抜け、プレートのオリフィス(18)、プレートとチューブの内腔、及び出口は流体連通する。出口(46,46´)はチューブ(38)の軸線(40)の両側に対称配置される。軸線(40)の両側に設けられた出口(46,46´)の中心は、チューブ(38)の軸線(40)と略直交する出口の軸線(48)を規定する。出口の軸線はプレート(34)の一対の辺と略平行している、オリフィス(18)は長円形で、長軸(42)及び短軸(44)を有する。オリフィス(18)の短軸(44)は出口の軸線(48)と平行している。他の目的によれば、本発明は、内部ノズルを有するノズルの組立体に関する。本発明のノズルと、内部ノズルを有する組立体は、タンディッシュから連続鋳造鋳型に向けて鋼を連続的に注入するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼を上流側冶金容器から下流側冶金容器に連続注入するために用いられる耐火要素に関する。
【0002】
本発明の特定の実施形態によれば、溶鋼を分配タンク(タンディッシュともいう)から鋳型又は鋳塊鋳型(シェル(coquille)ともいう)に流し込むためにノズルが用いられる。
【背景技術】
【0003】
鋼をタンディッシュから鋳塊鋳型に連続注入する際に、注入ノズルは、周囲雰囲気からの化学的攻撃から溶鋼を保護すると共に、溶鋼を上流側容器から下流側容器に移送する間これを熱的に遮断する。これらのノズルは、略円筒形状を呈し、上流側容器の底部近傍に配置される概ね先細の入口を備えた上流端を有する単一部品から構成される。これらのノズルは、注入路を形成する内腔によって貫通されており、該注入路によって溶鋼は鋳塊鋳型内に浸漬されるノズルの下流端に向かって流動可能となる。ほとんどの場合、ノズルの底端部は、鋼の垂直方向の噴流を制限するために閉鎖されるか又は少なくとも狭窄部が設けられており、鋼は主に、ノズルの下流端部に設けられた側方開口(出口ともいう)を通過して鋳塊鋳型内に吐出される。本発明の明細書において、ノズルの「閉鎖された」底端部という用語は、底端部が実際に閉鎖されたノズル、及び、単に上記狭窄部を備えたノズルの双方を示すものとして使用される。スラブ等の平坦な製品として鋼を鋳造する場合、鋳塊鋳型が使用され、該鋳塊鋳型は、概して銅製で、水冷され、対で平行に設けられる四つの側壁を有する底のない鋳型であり、スラブの幅と厚みに概ね一致する略矩形状の断面を有する。鋳塊鋳型は、その幅よりも実質的に大きな長さを有する。ノズル底部に設けられる側方開口は通常、鋳塊鋳型内への均一な流れを許容するために互いに対称に配置される。また側方開口は、ノズルに最も近接する鋳塊鋳型の長壁に正対向しないように設けられる。そうでなければ、タンディッシュから吐出された依然として高温の溶鋼が直接長壁に接触することにより過度の加熱をもたらし、一定の時間の経過後、銅壁の溶融を生ぜしめる。その結果、鋼が漏出し、設備と作業員の双方に甚大な被害をもたらす。これに対し、ノズルの側方開口を、最も離間した鋳塊鋳型の狭壁に向けることで、タンディッシュから吐出された鋼は、壁に到達する前に、先に注入された鋼に接触して温度を下げる時間を有する。
【0004】
このような注入ノズルは、その耐用寿命が注入時間を制限するほどに強い応力を受ける摩耗部品である。とりわけ、これらのノズルは、アルミナの堆積により閉塞したり、高侵食性スラグや鋼のグレードによって化学的に侵食されたり、あるいは熱的衝撃や機械的衝撃により亀裂が生じたりすることがある。そのため、1980代以来、ノズルを移動及び交換するための装置が開発されてきた。
【0005】
これらの装置において、単一部品から構成され且つタンディッシュの底壁から鋳塊鋳型の中心部まで延在する従来の浸漬式注入ノズル(submerged entry nozzle)は、鋼をタンディッシュの底壁を通過して移送する内部ノズル(浸漬式注入ノズルの上部に相当)と、鋼を鋳塊鋳型内に移送する注入ノズル(浸漬式注入ノズルの下部に相当)とを含む組立体に代替される。一般に、内部ノズル及び注入ノズルは単一部品から構成されるが、これらは例えばプレートとチューブを組み立てたものであってもよい。プレートを前もって作られたチューブの周りに鋳造してもよい。注入位置において、内部ノズル及び注入ノズルの注入路は流体連通する。内部ノズルの下流端部は、オリフィスを設けたプレートから構成され、該プレートは、注入ノズルの上流端部を構成する同じくオリフィスを設けた別のプレートに密封的に押し付けることができる。二つのプレートは、第一に二つのノズルの間の接続を堅固にし、第二に注入ノズルのスタンバイ位置から注入位置への摺動を確実にする。これらのプレートは、ガイドシステム内を摺動可能となるように略矩形状を有する。本明細書では、例えばプレートの角が丸められ又は切り落とされている場合等、実際にはプレートが矩形から外れているとしても、略矩形状という。いかなる場合においても、プレートは、互いに直交する四辺を有し且つその二対の対辺同士が平行する矩形によって画定される。ここで留意すべきは、注入ノズルが、一対の辺と平行する方向、すなわち側方開口の重心を通過する軸線(出口軸線)によって規定される方向と一致する方向に、ガイドシステム内を摺動することである。また、場合によっては、ノズルの側方開口が鋳塊鋳型の狭壁に正対向しないように意図的にオフセットされることにも留意されたい。例えば、鋳造製品の均一性を向上させるべく鋳塊鋳型内における鋼の循環を促進するために、出口軸線を25°までオフセットさせることができる。またノズルを移動及び交換するための装置も、同装置の干渉を避けるためにオフセットさせることができる。この場合、出口軸線を鋳塊鋳型の軸線に対して厳密に平行に保つことが所望されるのであれば、ガイドシステム内における摺動方向に対して同軸線をオフセットさせる必要がある。本発明の明細書において、方向が出口軸線に対して規定される場合、該方向は−25°から+25°の範囲で変更可能であることに留意されたい。従って、出口軸線に平行する方向と記載される場合、該方向は、出口軸線に、25°の範囲内で平行であると解すべきである。
【0006】
このようなノズル移動交換装置を使用する設備では、夫々の内腔が連通する内部ノズル及び第1の注入ノズルを通して注入が行われる。注入位置にある注入ノズルを交換しなければならない場合、該装置は、それまでスタンバイ位置にあった新しい注入ノズルを、注入位置に向かうガイドレールを有するガイドシステムにおいて摺動させる。新しい注入ノズルは、摺動しながら交換すべき注入ノズルを押し退ける。この摺動中に、注入ノズルの上流端部を形成するプレートは、内部ノズルの注入路と一直線上に並びこれを閉鎖する。特許文献1は、斯かる装置を開示する。該装置は、市場の要求を完全に満たすと共に、一連の鋳造工程の長さの大幅な延長をもたらした。
【0007】
多くの場合、注入された鋼の流れ制御、特に一連の注入工程終了時における注入の中断は、タンディッシュの頂部から作動されるストッパーロッドを用いて行われ、ロッドの本体は溶鋼液に挿入され、ロッドのノーズは内部ノズルの入口を閉鎖するように構成される。
【0008】
時として、鋳造オペレータは、即座に注入を中断する必要がある緊急事態に直面することがある。例えば、鋳造作業中にストッパーロッドの破損や何らかのインシデントがあった場合である。従来技術では、このような場合、新しいノズルの代わりに遮断プレートを使用することを推奨している。遮断プレートが(むしろ閉鎖位置と呼ぶべき)注入位置に到達すると、内部ノズルの下流側オリフィスが該プレートに遮断されて注入作業が中断される。緊急事態に対処するために、注入オペレータは通常、必要に応じて即座に遮断プレートを閉鎖位置にスライドさせることができるよう同プレートを常にガイドシステムのスタンバイ位置に配置しておく。注入ノズルを交換しなければならないときは、遮断プレートを除去してこれを新しいノズルと取り替える必要がある。まさにこの瞬間に緊急事態が発生すると、一般に重大なインシデントを招く結果となる。なぜなら、遮断プレートによって注入作業を中断できるようにするには、まず新しいノズルをガイドシステムから解放してこれを注入設備から除去し、次に遮断プレートを戻してガイドシステムに配置してから閉鎖位置にスライドさせる必要があるためである。かくして貴重な数秒が失われ、その間に装置が損壊したりあるいはオペレータが装置にアクセスできなくなり、注入作業の中断が不可能になることがある。
【0009】
従来技術(特許文献2)は、(例えば第1のガイドレールに対して垂直に配置される)追加のガイドシステムを備えた装置を提供することで、この問題の解決策を提案している。この追加のガイドシステムによって、まさに注入ノズルの交換時であっても、遮断プレートは引き続きスタンバイ位置に保持され閉鎖位置にスライド可能に準備されるため、遮断プレートをいつでも導入することが可能になる。しかしながら、上記装置はかなり嵩張るため、全ての注入設備に適しているわけではない。
【0010】
また、注入ノズルであって、その上流端部を構成するプレートが少なくとも注入口と等しい距離だけスライド方向と逆方向に延伸された注入ノズルを使用することが提案されている。この方法では、注入ノズルを僅かに押すと、オリフィスを有しない注入ノズルの上流側プレートの部分が内部ノズルの底端に設けられた注入路のオリフィスと一直線上に並ぶことにより、注入路を閉鎖することができる。この開発は、注入ノズルの上流側プレートを、ひいてはジャッキのストロークを延伸することを必要とするため、大きな商業的成功には至っていない。それ故、タンディッシュの下又は鋳塊鋳型内において利用可能なスペースが限られている設備には適用することができない。
【0011】
従って、現在通常用いられる緊急閉鎖システムは、上述した全ての欠点を備えた遮断プレートである。
【0012】
そのため、当該産業界は、いかなる設備においても、特に利用可能なスペースが限られている設備においても使用することができる連続鋳造ノズル移動交換装置のための緊急閉鎖システムを今もなお探し求めている。加えて、この緊急閉鎖システムは、いかなるときでも、特にオペレータが注入ノズルの交換に直面しているときであっても、極めて迅速に使用できることが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許第192019号
【特許文献2】米国特許第5,494,201号
【特許文献3】英国特許出願公開第2160803号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、上記課題の解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、注入ノズルであって、一方の端(上流端と呼ぶ)に設けられた頂面及び底面を有する略矩形状のプレートと、チューブとを含み、該チューブの軸線はプレートの頂面に略直交し、該チューブはプレートの底面からノズルの他方の端(下流端と呼ぶ)まで延在する注入ノズルによって解決される。ノズルは、プレート表面を貫通して形成された入口オリフィスと、プレートの内腔と、チューブの内腔とから構成される注入路を含み、チューブの下流端は閉鎖され、注入路は、下流端近傍においてチューブの側壁に設けられた出口を通って抜ける。プレートのオリフィス、プレート及びチューブの内腔、並びに出口は、流体連通し、出口は、チューブの軸線の両側に対称配置され、チューブ軸線の両側に設けられた出口の中心は、チューブ軸線と略直交する軸線(出口軸線と呼ぶ)を規定し、出口軸線は、プレートの一対の辺と略平行している。本発明によれば、オリフィスは、長円形で、長軸及び短軸を有し、オリフィスの短軸は、出口の軸線と平行している。
【0016】
長円形オリフィスを設けた注入ノズルを使用することは既に提案されている(特許文献3を参照)ことに留意されたい。当該ノズルは、一方の端(上流端と呼ぶ)に設けられた頂面及び底面を有する略矩形状のプレートと、チューブとを含み、該チューブの軸線はプレートの頂面に略直交し、該チューブはプレートの底面からノズルの他方の端(下流端と呼ぶ)まで延在する。ノズルは、プレート表面を貫通して形成された入口オリフィスと、プレートの内腔と、チューブの内腔とから構成される注入路を含む。ノズルの注入路は、その全長に沿って入口オリフィスの形状と同一の長円形状を有する。プレートのオリフィス、プレートの内腔及びチューブの内腔は、流体連通している。ノズルの下流端は、下流端から吐出される溶融金属の噴流が鋳型底に向かって一直線に流入するように開放されている。このようなノズルは、アルミニウム等の非鉄金属を鋳造鋳型に注入する鋳造用途向けのものであることに留意すべきである。このようなノズルは、溶鋼をタンディッシュから連続鋳造鋳型に連続的に注入するために用いることはできない。実際に、冷却されていない鋼の噴流が連続的にノズルから吐出されて鋳塊鋳型の底端部に向かって一直線に流入した場合、深刻な安全上の問題(漏出リスク)を招くであろう。一方、本発明によれば、連続注入ノズルは、閉鎖された下流端を有し、注入路は、下流端近傍においてチューブの側壁に設けられた出口を通って抜ける。
【0017】
本発明の明細書において、注入オリフィスの最大寸法を「長軸」と呼び、長軸に直交する方向における注入オリフィスの最大寸法を短軸と呼ぶ。たとえ問題となる軸が対称軸でなくても同様である。
【0018】
プレートの頂面に設けられた注入路のオリフィスのこの特定の形状のおかげで、オリフィスを有しないプレートの部分が内部ノズルの底端に形成された注入路のオリフィスと一直線上に並ぶように注入ノズルをスライドさせることによって極めて迅速に注入路を閉鎖することができる。注入路のオリフィスの同一注入断面に対し、注入路のオリフィスの該形状は、完全な開放位置から完全な閉鎖位置に動かすためにノズルによって移動されるべき距離を短縮する。その結果、等しい動作速度において且つ同一の断面を有することで、上述した円形オリフィスを有するノズルに比べてより迅速に注入路の閉鎖が行われる。これにより、オペレータは注入作業を中断する貴重な時間をセーブすることができる。
【0019】
その上、先のシステムが商業的に受け入れられない原因となった欠点、すなわち、注入ノズルのプレートの延長及びそれに伴うジャッキストロークの延長の必要性、並びに、根本的な装置の嵩張りは、オリフィスを長円形状にすることでプレートの大幅な延長を要しなくなるため大分解消される。
【0020】
好適には、長円形オリフィスの長軸は、出口軸線に対して直角をなす矩形の辺に関して中心からずれている。このようにすることで、プレート表面が最大限に活用される。これにより寸法を小さくしたプレートを用いても注入路を閉鎖することができる。一般にプレートの寸法は、注入オリフィスとプレート周縁との間、注入オリフィスと内部ノズルのオリフィスを閉鎖するのに用いられるプレートの領域との間、及び該閉鎖領域と周縁との間、に十分な安全域を残すように設定される。詳細には、注入オリフィスの周囲とプレート周縁との間に約30mm、好適には40mm、更に好適には50mmの最小距離を有することが推奨される。この距離は、注入オリフィスの周囲と出口軸線と平行する辺との間においては短縮可能である。なぜなら、注入ノズルの移動交換装置(特にガイドレール)によって加えられる推力は、概して注入オリフィスに近い辺に沿って分散されるからである。従って、20乃至30mmの安全距離で十分である。同様に、注入オリフィスと内部ノズルのオリフィスを閉鎖するのに用いられるプレートの領域との間、及び該閉鎖領域と周縁との間には、5乃至20mm残しておけば十分であろう。プレート自体は、(注入オリフィスと閉鎖領域を収容するために)出口軸線と一致する方向にオリフィスの短軸寸法の2倍に等しい寸法を有しなければならず、更に該寸法は安全域によって増大される。従って好適には、プレートの該寸法は、オリフィスの短軸寸法の少なくとも3倍になる。
【0021】
長円形オリフィスは、例えば、矩形、卵形、楕円形、直線線分によってつながれた円弧等のいかなる細長形状を有してもよい。純然たる幾何学的見地からは、所定の短軸寸法に対して最大の流れ断面積を有することができる矩形形状が最も有利的である。しかしながら、製造が容易であるという理由から、直線線分によってつながれた円弧からなる形状とすることが好ましい。更に好適には、注入口オリフィスは、半径が等しい円であって、中心を分割する距離の二倍に相当する直径の円の二つの円弧を、平行する直線線分によってつないだ形状とする。該形状は、(出口軸線に直交する直径が長円形オリフィスの長軸に相当する)円形のように見えるが、その寸法は(出口軸線に直交する)平行な弦に沿って両端を切り落とされており、弦の間隔は短軸に相当する。
【0022】
上述したように、注入路は、流体連通するプレートのオリフィス、プレート及びチューブの内腔、並びに出口を備える。それ故、特定の方向を向く長円形の注入オリフィスに侵入した噴流が直角をなす方向に向けられた出口から再び吐出されるように、これらの種々の要素を連続的に接続する必要がある。噴流方向の変更を許容する注入路は、様々な実施形態が考えられる。この方向の変更は、注入路内において急激に行うことも、あるいは同注入路内の溶鋼通路の全長にわたって徐々に行うこともできる。前者の場合、変更が行われるのは、注入ノズルの最初の入口部分でもよいし、あるいは出口のかなり近くでもよい。
【0023】
有限要素法による流れの研究によって、上記変更はノズルの注入路の入口オリフィス近くで急激に行うことが非常に有利的であると確認されている。本発明の非常に有利的な実施形態によれば、注入路は、(ノズルの上流側プレートの頂面から20〜50mmの間の距離にかけて)長円形断面から円形断面に急激に変化する。この急激な変化は、溶鋼の注入ノズル内の通過によって生じる圧力の急降下を部分的に補償する効果を有し、圧力の急降下によって内部ノズルと注入ノズルとの間の表面接続部から空気を吸引し易くなる傾向を低減する。
【0024】
好適には、本発明による注入ノズルのすぐ上流に位置する部品である内部ノズルは、ノズルの注入路の入口オリフィスと実質的に同一となるように形成された出口オリフィスを有することで、該二つの注入要素間の接続部における溶鋼流の乱れを最小限に抑える。そこで、本発明のもう一つの目的は、本発明による注入ノズルと内部ノズルの組立体に関する。該内部ノズルは、一方の端(下流端と呼ぶ)に、吐出オリフィスを備えたプレートを含み、注入ノズルと内部ノズルとの間のシールは、内部ノズルの下流側プレートと注入ノズルの上流側プレートとを連結することにより行われる。本発明の本形態によれば、内部ノズルの吐出オリフィスを注入ノズルの注入路の入口オリフィスと実質的に同様に形成することで、注入位置においてこの二つのオリフィスは流体連通する。
【0025】
本発明は、単なる例示として図面を参照してなされる以下の説明を読むことで更に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来技術による注入ノズルを備える連続鋳造用鋳塊鋳型の概略平面図である。
【図2】本発明の一実施形態による注入ノズルを備える連続鋳造用鋳塊鋳型の概略平面図である。
【図3】本発明の一実施形態による注入ノズルの斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態による注入ノズルの断面を含む斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
二つの長辺12,12´及び二つの短辺14,14´を有する略矩形状の鋳塊鋳型20が、図1及び図2に概略的に示されている。鋳塊鋳型の中央には上方から見た注入ノズルが示され、注入オリフィス18を備えた頂面16のみが見える。これらの図には移動交換装置の詳細は示されていない。また、ノズル移動交換装置内における注入ノズルの摺動方向20が、各鋳塊鋳型において示されている。図1及び図2に示す注入ノズルの吐出オリフィスは、摺動方向20と平行する方向に位置合わせされることに留意されたい。従来技術(図1)によって知られるノズルの注入オリフィス18は、円形で、頂面16に対して中央に配置されるのに対し、本発明(図2)による注入ノズルの注入オリフィス18は、長円形状を有する。該オリフィスは、ノズルの摺動方向20すなわち出口方向(図示せず)に直交する方向に細長く延びる。この細長オリフィス18は、摺動方向20に偏心され、同方向におけるプレートの前よりに配置される。
【0028】
図3及び図4は、本発明の特定の実施形態による注入ノズル30の詳細を示す。両図は同一の注入ノズル30を示し、該ノズルは、その上流端32に頂面16と底面とを備えた略矩形状のプレート34を有する。更にノズル30はチューブ38を有し、該チューブの軸線40はプレート34の頂面16と略直交する。チューブ38は、プレート34の底面からノズルの下流端36まで延在する。ノズルは、プレート34の表面16を貫通して設けられた入口オリフィス18と、プレート34の内腔と、チューブ38の内腔50とから構成される注入路を有する。チューブの下流端36は閉鎖されており、注入路は、下流端36近傍においてチューブ38の側壁に設けられた出口46,46´を通って抜ける。プレート34のオリフィス、プレート及びチューブの内腔、並びに出口は、流体連通している。出口46,46´は、チューブ38の軸線40の両側に対称的に配置される。軸線40の両側の出口46,46´の中心は、注入路によって規定される軸線に略直交する出口軸線48を規定する。出口軸線は、プレート34の一対の辺と略平行している。オリフィス18は長円形で、長軸42及び短軸44を有する。オリフィス18の短軸44は、出口軸線48と平行している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼をタンディッシュから連続鋳造鋳型に連続的に注入するための注入ノズル(30)であって、
一方の端(上流端(32)と呼ぶ)に設けられた頂面(16)及び底面を有する略矩形状のプレート(34)と、
チューブ(38)とを含み、
チューブの軸線(40)はプレート(34)の頂面(16)に略直交し、チューブはプレートの底面からノズルの他方の端(下流端(36)と呼ぶ)まで延在し、
ノズル(30)は、プレート(34)の表面(16)を貫通して形成された入口オリフィス(18)と、プレートの内腔と、チューブの内腔(50)とから構成される注入路を含み、
チューブの下流端(36)は閉鎖され、注入路は下流端(36)近傍においてチューブ(38)の側壁に形成された出口(46,46´)を通って抜け、
プレートのオリフィス(18)、プレートとチューブの内腔、及び出口は流体連通し、 出口(46,46´)はチューブ(38)の軸線(40)の両側に対称配置され、
軸線(40)の両側に設けられた出口(46,46´)の中心は、チューブ(38)の軸線(40)と略直交する軸線(出口軸線(48)と呼ぶ)を規定し、
出口軸線(48)はプレート(34)の一対の辺と略平行している、注入ノズルにおいて、
オリフィス(18)は、長円形で、長軸(42)及び短軸(44)を有し、
オリフィス(18)の短軸(44)は出口軸線(48)と平行していることを特徴とする、注入ノズル(30)。
【請求項2】
長円形のオリフィス(18)の長軸(42)は、出口軸線(48)に直交する矩形の辺に関して中心からずれていることを特徴とする、請求項1に記載の注入ノズル(30)。
【請求項3】
出口軸線(38)と一致する方向におけるプレート(34)の寸法は、オリフィス(18)の短軸(44)の寸法の少なくとも3倍に等しいことを特徴とする、請求項1又は2に記載の注入ノズル(30)。
【請求項4】
長円形のオリフィス(18)は、半径が等しい円であって、中心を分割する距離の二倍に相当する直径の円の二つの円弧を、平行する直線線分によってつないだ形状とし、直線線分は同一の長さを有し且つ出口軸線(48)に直交することを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の注入ノズル(30)。
【請求項5】
注入路は、プレート(34)の頂面(16)から2〜50mmの間の距離にわたって長円形断面から円形断面に変化することを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載の注入ノズル(30)。
【請求項6】
断面の変化は流れ断面積の減少を伴うことを特徴とする、請求項5に記載の注入ノズル(30)。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の注入ノズル(30)と内部ノズルの組立体であって、内部ノズルは、その一端(下流端と呼ぶ)に吐出オリフィスを備えたプレートを含み、注入ノズルと内部ノズルとの間のシールが、内部ノズルの下流側プレートと注入ノズルの上流側プレート(34)との間の連結によって行われる組立体において、
内部ノズルの吐出オリフィスを注入ノズル(30)の注入路の入口オリフィス(18)と実質的に同様に形成することによって、二つのオリフィスが注入位置において流体連通することを特徴とする、組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−508160(P2013−508160A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534577(P2012−534577)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006410
【国際公開番号】WO2011/047850
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(500180226)ベスビウス グループ ソシエテ アノニム (15)
【Fターム(参考)】