説明

注入管

【課題】隣接する単位管の連結を確実に行なうと共に、製作コストの低減を図ることができる注入管を提供する。
【解決手段】外管11と、この外管11内に軸方向に対して平行して設けられた少なくとも2以上の内管12と、を備え、各種の流体を搬送する多孔管構造の単位管10を連結して形成される注入管であって、前記内管12の両端部分には、これら内管12を嵌挿するアダプター13,14が取付けられ、該アダプター13,14は、前記外管11内周に取付けられた軸受13,14によって回動自在に軸支され、隣接する単位管10の内管12の連結は、差込式ジョイントであり、隣接する単位管10の外管11の連結は、ねじ込み式ジョイントとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注入管に関し、詳しくは多孔管構造の単位管を連結して形成される注入管の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
「高圧噴射注入地盤改良工法」や撹拌や混合の程度により「高圧噴射撹拌混合地盤改良工法」といわれる工法は、地盤中に挿入した注入管を、地盤中に回転、下降させて、その先端部側壁に設けた噴射ノズルから空気を伴った超高圧水を噴射させてプレカッティングを行い、所定深度までプレカッティングした後、噴射ノズルからの空気と超高圧水の噴射を継続して、この噴射ノズルとは別の噴射ノズルからセメントミルク等を高圧噴射させると共に、軸回りに回転させながら引き上げる過程で処理することにより改良体を造成するものである。そして、この注入管は二重管や三重管等からなる単位管を順次連結して形成される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭58−27364号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これら単位管が、図12及び図13に示す同心円状の構造(三重管構造)であれば、図14に示すように、単位管50,50相互の連結は、それぞれ隣接する雄連結部50Aと雌連結部50Bとを螺合させて一体化(ねじ込み式ジョイント)させることができるが、例えば、図15乃至図17に示すように、外管内に複数の内管が軸方向に対して平行して並設されたような構造であれば、隣接する単位管51,51の内管相互の連結はねじ込み式では難しく、図18に示すように、多角形状のジョイント部分である雄連結部51Aと雌連結部51Bとを嵌合させ、ロックピン51Cで差し込むことにより固定する方法(差込式ジョイント)しかなかった。そのため、継手部分が肉厚になってしまうと共に、多角形状の加工に手間が掛かり製作コストの低減が図れないという問題点があった。
そこで、本発明の主たる課題は、隣接する単位管の連結を確実に行なうと共に、製作コストの低減を図ることができる注入管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は、次のとおりである。
<請求項1記載の発明>
請求項1記載の発明は、外管と、この外管内に軸方向に対して平行して設けられた少なくとも2以上の内管と、を備え、各種の流体を搬送する多孔管構造の単位管を連結して形成される注入管であって、前記内管の両端部分には、これら内管を嵌挿するアダプターが取付けられ、該アダプターは、前記外管内周に取付けられた軸受によって回動自在に軸支され、隣接する単位管の内管の連結は、差込式ジョイントであり、隣接する単位管の外管の連結は、ねじ込み式ジョイントである構成とされた、ことを特徴とする注入管である。
【0005】
<請求項2記載の発明>
請求項2記載の発明は、隣接する単位管の内管の連結は、一方のアダプターに取付けられた雄スリーブと他方のアダプターに取付けられた雌スリーブとの嵌挿によって行なわれ、隣接する単位管の外管の連結は、それぞれの外管の両端部と継手部材の両端部との螺合によって行なわれる構成とされた、請求項1記載の注入管である。
【0006】
(作用効果)
内管の両端部分には、これら内管を嵌挿するアダプターが取付けられ、該アダプターは、前記外管内周に取付けられた軸受によって回動自在に軸支された構成とすることにより、外管の円周方向の動きに対して内管はフリーな状態とすることができ、隣接する単位管の内管の連結が差込式ジョイントであっても、隣接する単位管の外管相互の連結をねじ込み式ジョイントとすることができる。そのため、従来例のような差込式ジョイントに比べて、確実な連結を確保することができ、また、外管の肉厚を薄くすることができる。さらに、従来例の差込式のジョイント部分のような複雑な加工をする必要がないため製作コストも抑えることができる。
隣接する単位管の内管の連結を、それぞれ内管の両端相互を嵌挿させることによって行なってもよいが、一方のアダプターに取付けられた雄スリーブと他方のアダプターに取付けられた雌スリーブとの嵌挿によって行なってもよい。また、隣接する単位管の外管の連結を、それぞれ外管の両端相互を嵌挿させることによって行なってもよいが、それぞれの外管の両端部と継手部材の両端部との螺合によって行なってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、隣接する単位管の連結を確実に行なうと共に、製作コストの低減を図ることができる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1乃至図11に基づき本発明の実施の形態を説明する。なお、図1は高圧噴射注入地盤改良装置の一実施例であり、図2は本発明に係る注入管の正面断面図であり、図3はそのI方向から見た側面図であり、図4はそのII方向から見た側面図であり、図5は内管とアダプターとの関係を説明するための正面断面図であり、図6はそのIII方向から見た側面図であり、図7はそのIV−IV断面図であり、図8はそのV方向から見た側面図であり、図9はその単位管同士の連結を説明するための正面図及び断面図であり、図10は単位管と継手部材との連結状態を説明するための部分断面図であり、図11は注入管の単位管を構成する各部材の斜視図である。
【0009】
本発明に係る注入管は、例えば、図1に示す高圧噴射注入地盤改良装置における流体(高圧水、セメントミルク、圧縮エアなど)を搬送する搬送管路としての役割を有している。なお、図1に示す高圧噴射注入地盤改良装置は、スイベル4と、カップリング5と、注入管本体部(注入管)1と、この注入管1の先端に取付けられた注入管先端部2と、この注入管先端部2の先端に取り付けられた削孔ビット3と、を備えている。具体的には、スイベル4に流入された流体は、カップリング5を介して注入管1のそれぞれ別の経路(内管等)に搬送される。地盤改良に先行する削孔の際には、この注入管1により搬送される流体のうち削孔水を、注入管先端部2の自穿孔バルブ21を介して削孔ビット3の先端から吐出する。そして、地盤改良工程の際には、注入管先端部2のモニター部分の一方の噴射ノズル22から圧縮エアと高圧水を噴射して地盤を切削し、他方の噴射ノズル23からセメントミルクを噴射するものである。なお、高圧噴射注入地盤改良装置の構成において、本発明に係る注入管1以外については、上記に限定されず、公知のものを使用することができる。
【0010】
本発明に係る注入管1は、図1に示すように、単位管10を連結して形成されるものである。この単位管10は、図2乃至図8に示すように、外管11と、この外管11内に軸方向に対して平行して設けられた2本の内管12,12と、を備えている。なお、内管は2本に限られず、2以上の複数本であってもよい。また、図示はしないが、例えば、外管の軸芯から偏心している場合(同心円状でない場合)では、内管が1本であってもよい。
内管12,12の両端部分は、図2、図10及び図11に示すように、それぞれアダプター13,14に嵌挿されている。これらアダプター13,14は、並設された内管12,12同士や外管11との間隔を一定の間隔に保つと共に、後述する軸受13A,13B,14Aのジャーナルとして機能している。また、アダプター13には、内管12,12の両端部分から延在するように雄スリーブ15、15が取付けられており、アダプター14には、内管12,12の両端部分から延在するように雌スリーブ16、16が取付けられている。後述するように、雄スリーブ15、15は、雌スリーブ16、16内に嵌挿され連結されるようになっている。さらに、アダプター13,14には、図3、図4、図6、図7及び図11に示すように、それぞれ貫通孔13C,14Cが形成されており、外管11内であって外管11と内管12との間に形成される空間に搬送される流体を注入管先端部1まで流す構成になっている。この構成により、例えば、削孔水、圧縮エア及びセメントミルクをそれぞれ、内管12,12及び外管11と内管12との間に形成される空間に別々に流すことが可能になっている。
【0011】
外管11の両端には、図2及び図10に示すように、外管雌連結部11A,11Aが形成されている。この外管雌連結部11Aは、端縁にいくにしたがって階段状に内周が拡大しており、図10に示す段差部11a,11aと軸受13A,14Aの側面とが当接することによって、外管11の両端部側から内部側への軸受13A,14Aの移動が制約されている。また、後述するように、継手部材17が外管雌連結部11A,11Aに螺着されることによって、継手部材17の先端が軸受13A,14Aの側面に当接し、外管11の内部側から両端部側への軸受13A,14Aの移動が制約されている。すなわち、軸受13A,14Aは、段差部11a,11aと継手部材17の先端とによって挟み込まれ固定されている。
【0012】
外管雌連結部11A,11Aには、その両端の内周に雌ネジが螺刻されて、前述したように、両端に雄ネジが螺刻された継手部材17が連結されるようになっている。この継手部材17の両端に雄ネジが形成されていることによって、この継手部材17を介して単位管10の外管11同士が連結可能となっている。なお、図示はしないが、外管11の両端の一方と他方に雌ネジと雄ネジを螺刻し、これら雌ネジと雄ネジと相互に螺合できるようにすれば、継手部材17を用いなくてもよい。
【0013】
前述したように、雄スリーブ15、15は、内管12,12の端部から延在するようにアダプター13に螺着して取付けられている。また、同様に、雌スリーブ16、16も内管12,12の端部から延在するようにアダプター14に螺着して取付けられている。そして、図10に示すように、雄スリーブ15、15は、雌スリーブ16、16内に嵌挿され連結される構成となっており、このことによって隣接する単位管10,10における内管12,12相互が連結できるようになっている。なお、挿入される雌スリーブ16、16の内周部分にOリングが取付けられており、これによって連結部分の水密性が保たれている。本実施の形態では、雄スリーブ15、15と雌スリーブ16、16とはそれぞれアダプター13,14に螺合されて連結される構成となっているが、これに限らず、溶接等によって連結されてもよい。また、図示はしないが、それぞれ内管12,12の両端部分の一方を雌スリーブ状及び他方を雄スリーブ状に形成し、隣接する単位管の内管12,12の連結を内管12,12の両端部分相互を嵌挿させる構成としてもよい。
【0014】
軸受13A,13B,14Aは、アダプター13,14を回動自在に軸支しており、このことによって内管12,12は外管11や継手部材17内を回動できるようになっている。内管12,12が外管11の円周方向に自在に回動できることによって、適度な位置に内管12,12のセットを回動させ、隣接する単位管10,10の内管12相互を雄スリーブ15、15と雌スリーブ16、16を介して連結させればよいので、従来例の差込式ジョイントに比べて、連結作業を容易化することができる。また、外管11の円周方向の動きに対して内管12,12はフリーな状態であることにより、図9に示すように、隣接する単位管10,10の外管11相互の連結を、継手部材17を介して、ねじ込み式で行うことができる。そのため、差込式ジョイントに比べて、確実な連結を確保することができる。また、ねじ込み式ジョイントであることにより外管11の肉厚を薄くすることができ、さらに、差込式のジョイント部分のような複雑な加工をする必要がないため製作コストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】高圧噴射注入地盤改良装置の一実施例である。
【図2】本発明に係る注入管の正面断面図である。
【図3】そのI方向から見た側面図である。
【図4】そのII方向から見た側面図である。
【図5】内管とアダプターとの関係を説明するための正面断面図である。
【図6】そのIII方向から見た側面図である。
【図7】そのIV−IV断面図である。
【図8】そのV方向から見た側面図である。
【図9】その単位管同士の連結を説明するための正面図及び断面図である。
【図10】単位管と継手部材との連結状態を説明するための部分断面図である。
【図11】注入管の単位管を構成する各部材の斜視図である。
【図12】従来例の三重管構造の注入管の正面断面図である。
【図13】その側面図である。
【図14】その単位管同士の連結を説明するための正面図及び断面図である。
【図15】従来例の多孔管構造の注入管の正面断面図である。
【図16】そのVI方向から見た側面図である。
【図17】そのVII方向から見た側面図である。
【図18】その単位管同士の連結を説明するための正面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…注入管本体部(注入管)、2…注入管先端部、3…削孔ビット、4…スイベル、5…カップリング、10…単位管、11…外管、11A…外管雌連結部、11a…段差部、12…内管、13…アダプター、13A…軸受、13B…軸受、13C…貫通孔、14…アダプター、14A…軸受、14C…貫通孔、15…雄スリーブ、16…雌スリーブ、17…継手部材、21…自穿孔バルブ、22…噴射ノズル、23…噴射ノズル、50…従来例の単位管、50A…雄連結部、50B…雌連結部、51…従来例の単位管、51A…雄連結部、51B…雌連結部、51C…ロックピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外管と、この外管内に軸方向に対して平行して設けられた少なくとも2以上の内管と、を備え、各種の流体を搬送する多孔管構造の単位管を連結して形成される注入管であって、
前記内管の両端部分には、これら内管を嵌挿するアダプターが取付けられ、
該アダプターは、前記外管内周に取付けられた軸受によって回動自在に軸支され、
隣接する単位管の内管の連結は、差込式ジョイントであり、隣接する単位管の外管の連結は、ねじ込み式ジョイントである構成とされた、
ことを特徴とする注入管。
【請求項2】
隣接する単位管の内管の連結は、一方のアダプターに取付けられた雄スリーブと他方のアダプターに取付けられた雌スリーブとの嵌挿によって行なわれ、
隣接する単位管の外管の連結は、それぞれの外管の両端部と継手部材の両端部との螺合によって行なわれる構成とされた、請求項1記載の注入管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−307547(P2006−307547A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−131678(P2005−131678)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000115463)ライト工業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】