説明

注出キャップ

【課題】加熱した内容物が充填された容器を冷却する際に、蓋体と注出キャップ本体との間に水が浸入する不具合を有効に防止することができる注出キャップを提案する。
【解決手段】本発明の注出キャップ1は、注出筒16を有し、容器の口部Kに固定保持されるキャップ本体10と、キャップ本体10に合わさって注出筒16をその内側に収める蓋体20とを備え、キャップ本体10は、注出筒16を隙間を隔てて取り囲みこの注出筒16との相互間に環状空間Cを形成するとともに、蓋体20を着脱自在かつ密着して保持する外筒17を有し、注出筒16と外筒17とを連結する連結壁18に、環状空間Cと外界とを連通させる貫通開口18aを設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に固定保持される注出キャップに関するものであり、加熱された内容物を容器に充填して注出キャップを容器の口部に固定保持した後、容器及び注出キャップをシャワー水(温水シャワー)によって冷却する際に、注出キャップ内に水が浸入する不具合を有効に防止しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
内容物を容器に充填した後、注出キャップを打栓して容器の口部に固定保持する、内容物の充填、打栓工程においては、例えば内容物が食品である場合には、充填される内容物の他、容器及び注出キャップ内の殺菌処理を行うために、内容物を加熱して容器に充填することが行われている。そして、内容物の加熱充填を行うにあたっては、引き続いて、容器及び注出キャップの外側にシャワー水をかけて容器全体の冷却を行う(冷却工程)ことが一般的である。
【0003】
ところで、加熱充填後の容器に打栓される注出キャップにおいては、この注出キャップ内の空気(キャップ本体と蓋体との間の空気)が内容物によって温められた状態となっており、この状態でシャワー水をかけると、その空気は冷やされて注出キャップ内が負圧になるため、元の圧力に戻る際、注出キャップ内に水を引き込むおそれがあった。このような不具合に対応するものとして、例えば特許文献1には、キャップ基体の覆板上面に気密リングを設け、上蓋に気密リングの外周に嵌合締着される係合リングを設けて、これらリング間からの水の浸入を阻止しようとする合成樹脂製の中栓付キャップが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−150858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の中栓付キャップを含む、このような注出キャップは、蓋体を、キャップ本体に設けた外筒にて着脱自在に保持するとともに、この蓋体と外筒とを密着させてそれらの相互間をシールすることが通常である。ここで、注出キャップを打栓する際には、蓋体の天壁に強い押圧力が加わるため、天壁が一旦内側に撓んで蓋体と外筒とが僅かに離れた状態となる。その後、撓んだ分の復元力でもって蓋体は元の形状に戻るが、注出キャップへの打栓具合によっては、蓋体が元の状態へ復元するのに時間がかかる場合があり、シールが不十分となった蓋体と外筒との隙間から水が浸入するおそれがあった。また、注出キャップの製品形状のばらつきによっては、上述した気密リング及び係合リングを設けてもなお十分にシールできないおそれがあり、シャワー水による冷却にて負圧状態となった注出キャップ内に水が浸入する懸念があった。このため、冷却工程後に注出キャップ内に水が浸入していないか確認し水が浸入している場合にはこれを取り除く、面倒な作業を要することとなっていて、打栓具合や製品形状のばらつきにかかわらず、水の浸入を確実に防止できる新たな注出キャップの出現が強く求められていた。
【0006】
本発明の課題は、加熱した内容物が充填された容器をシャワー水にて冷却するにあたり、注出キャップ内に水が浸入する不具合を有効に防止することができる注出キャップを提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、注出筒を有し、容器の口部に固定保持されるキャップ本体と、該キャップ本体に合わさって該注出筒をその内側に収める蓋体とを備える注出キャップにおいて、
前記キャップ本体は、前記注出筒を隙間を隔てて取り囲み該注出筒との相互間に環状空間を形成するとともに、前記蓋体を着脱自在かつ密着して保持する外筒を有し、
前記注出筒と前記外筒とを連結する連結壁に、前記環状空間と外界とを連通させる貫通開口を設けることを特徴とする注出キャップである。
【0008】
前記連結壁は、前記貫通開口につながる凹部を有し、該凹部は該貫通開口に向けて下向きに傾斜する底部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
キャップ本体に、注出筒を隙間を隔てて取り囲んで注出筒との相互間に環状空間を形成するとともに、蓋体を着脱自在かつ密着して保持する外筒を設け、注出筒と外筒とを連結する連結壁に、環状空間と外界とを連通させる貫通開口を設けたので、加熱した内容物によって温められた注出キャップをシャワー水によって冷却しても、注出キャップ内は負圧になることがなく、水の浸入が有効に防止される。また、打栓具合によって、蓋体と外筒との間にできた隙間から水が浸入することがあっても、貫通開口から注出キャップ外に排水することができ、加えて、貫通開口を通して環状空間内に取り込まれる外気によって残った水を蒸発させてしまうことができるので、注出キャップ内に浸入した水の残留を有効に防止することができる。
【0010】
注出筒と外筒とを連結する連結壁に、貫通開口につながる凹部を設け、この凹部に貫通開口に向けて下向きに傾斜する底部を設ける場合は、環状空間内に浸入した水をより効果的に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従う注出キャップの実施の形態を示す側面視での断面図であって、二点鎖線で示す容器の口部の断面を併せて示す図である。
【図2】図1に示す注出キャップにつき、蓋体を取り除いて示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う注出キャップの実施の形態を示す側面視での断面図であって、二点鎖線で示す容器の口部の断面を併せて示す図であり、図2は、図1に示す注出キャップにつき、蓋体を取り除いて示す平面図である。
【0013】
図1において、符号1は注出キャップである。注出キャップ1は、キャップ本体10と、キャップ本体10に合わさる蓋体20とを備えている。また、キャップ本体10と蓋体20とは、ヒンジhを介して一体成形される。
【0014】
キャップ本体10は、図1中、二点鎖線で示す容器の口部Kにアンダーカット係合によって固定保持されるベース11を備えている。図示の例でベース11は、その下端に内向きの爪部tを備える内側壁11aと、内側壁11aを隙間をあけて取り囲む外側壁11bとを備える二重壁構造となるものであり、図2に示すように周方向に間隔をあけて切り離し可能に配設される複数個の連結片11cを介して、それらの下端をつないで一体となっている。また、内側壁11aの半径方向内側には、容器の口部Kの内周面に液密に当接する環状壁12が設けられている。ここで、爪部tは、連結片11cにて、半径方向外側への撓みが抑えられているので、容器の口部Kに強固に保持することができる一方、例えば使用後に容器と注出キャップ1とを分離させる場合には、上蓋20を持ち上げて外側壁11bを、連結片11cを切り離すことで、容易に取り外すことができる。
【0015】
符号13は、ベース11の内側に一体成形される密閉壁である。密閉壁13は、図示の例では裏面側が凹となる破断予定溝13aを備えている。なお、破断予定溝13aは表面側が凹となるように設けてもよい。
【0016】
符号14は、密閉壁13の表面側に一端を接続させた支柱である。また、符号15は支柱14の他端に接続する環状のプルリングであり、このプルリング15に指を差し込んで引き上げることで、密閉壁13は破断予定溝13aに沿って引きちぎられて注出開口が形成される。
【0017】
符号16は、密閉壁13を取り囲みキャップ本体10から立ち上がる注出筒である。注出筒16の内周側は、注出開口から流出する内容物の注出経路となっていて、その先端は外側に向かって湾曲してリップを形成しており、液切れ性能を高めている。
【0018】
符号17は、注出筒16を隙間を隔てて取り囲む外筒である。注出筒16と外筒17との相互間には、環状空間Cが形成される。図示の例で外筒17は、その先端に半径方向外側に向けて凸となる環状凸部17aを備えている。また、注出筒16と外筒17の下端は、連結壁18で連結している。
【0019】
ここで、連結壁18には、その表裏を貫く貫通開口18aが設けられている。図2に示す例で貫通開口18aは、周方向に均等配置で総計4個形成されている。さらに内側壁11aの内周面には、貫通開口18aにつながる溝部18bが形成されていて、容器の口部Kに固定保持された際に溝部18bと容器の口部Kとの間には、環状空間Cと外界とをつなぐ連通路Rが形成される。
【0020】
さらに、連結壁18には、貫通開口18aにつながる凹部18cを設けるとともに、この凹部18cの底部18dを、図1に示すように、貫通開口18aに向けて下向きに傾斜するものとすることが好ましい。
【0021】
そして、蓋体20は、ベース11の外周面に連続する環状の外周壁21と、外周壁21の上端に連結する天壁22とを備えている。外周壁21の内周面には、環状凸部17aに係合するとともに、環状凸部17aと密着してその相互間をシールする環状凹部21aが形成されている。また、天壁22の裏面側には、注出筒16の内周面に当接して内容物の注出経路を密閉するシール筒23を連結させている。
【0022】
上記のように構成される注出キャップ1は、加熱された内容物を充填した後、蓋体20を閉めた状態で、打栓によって容器の口部Kに固定保持される。そして、注出キャップ1内の空気は、加熱された内容物によって温められ、引き続いて行われる冷却工程にて冷やされるが、貫通開口18aにて外界と連通する環状空間Cは負圧になることがないので、水の浸入を有効に防止することができる。また、打栓具合や製品形状のばらつきによっては、打栓時に内側に撓んだ天壁22が元の形状に戻る前に冷却が行われるおそれがあるが、注出キャップ1内に水が浸入したとしても、貫通開口18aから連通路Rを通して排水することができる。特に、凹部18c及び底部18dを設ける場合は、排水効果をより高めることができる。加えて、環状空間Cは、貫通開口18aにて外界と連通しているので、注出キャップ1内に残った水が蒸発しやすくなり、水の残留を有効に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、加熱した内容物が充填された容器をシャワー水にて冷却する際に、蓋体と注出キャップ本体との間に水が浸入する不具合を有効に防止することができる注出キャップを提供できる。
【符号の説明】
【0024】
1 注出キャップ
10 キャップ本体
11 ベース
12 環状壁
13 密閉壁
14 支柱
15 プルリング
16 注出筒
17 外筒
18 連結壁
18a 貫通開口
18b 溝部
18c 凹部
18d 底部
20 蓋体
21 外周壁
22 天壁
23 シール筒
K 容器の口部
C 環状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出筒を有し、容器の口部に固定保持されるキャップ本体と、該キャップ本体に合わさって該注出筒をその内側に収める蓋体とを備える注出キャップにおいて、
前記キャップ本体は、前記注出筒を隙間を隔てて取り囲み該注出筒との相互間に環状空間を形成するとともに、前記蓋体を着脱自在かつ密着して保持する外筒を有し、
前記注出筒と前記外筒とを連結する連結壁に、前記環状空間と外界とを連通させる貫通開口を設けることを特徴とする注出キャップ。
【請求項2】
前記連結壁は、前記貫通開口につながる凹部を有し、該凹部は該貫通開口に向けて下向きに傾斜する底部を有する請求項1に記載の注出キャップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−79083(P2013−79083A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218509(P2011−218509)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】