説明

注出栓

【課題】容器内に充填材を投入することなく、異なる成分の内容液としての取り出しが可能な、新規な注出栓を提案する。
【解決手段】本発明の注出栓は、容器30の内側に通じる注出筒1cを有し容器口部31に着脱可能な本体1と、本体1の上側に着脱可能に配置される蓋体2とを有する。容器30の内容液Cを通すことでその成分を変更可能な充填材5を有し、当該充填材5に内容液Cを導入するためのスリットSと、充填材5を通して注出筒1cに排出するための排出部とが形成されたケース4を備え、ケース4は、その内側に排出孔A1が形成された仕切壁4a3を有する筒状壁4a4を有し、当該筒状壁4a4には、本体1の裏側から注出筒1cに掛り止めされる係止突起4a5が設けられていると共に、仕切壁4a3よりも排出側には、注出筒1cとの間に形成した隙間gを通る内容液Cが導入される開口部A2が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に着脱可能であって、容器に充填された内容液を取り出すときに、成分の異なる内容液として取り出すことができる注出栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の注出栓には、本体に設けられた注出筒に、茶葉等を充填した収納筒を配置し、この収納筒を使用時に落下させることにより、内容液の成分を変更するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−44693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の注出栓は、蓋体の抜取りによって収納筒が落下する構成であるため、内容液の成分変更を行おうとする場合、その決定を蓋体の抜取り前に行わなければならない。即ち、従来の注出栓には、使用者の意思によって内容液の成分変更を行うことについて改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、容器内に充填材を投入することなく、異なる成分の内容液としての取り出しが可能な、新規な注出栓を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器の内側に通じる注出筒を有し容器の口部に着脱可能な本体と、この本体の上側に着脱可能に配置される蓋体とを有する注出栓であって、
容器の内容液を通すことでその成分を変更可能な充填材を有し、当該充填材に内容液を導入するための導入部と、充填材を通して本体の注出筒に排出するための排出部とが形成されたケースを備え、当該ケースは、その排出部に、本体の注出筒に掛り止めされる係止部を備えることを特徴とするものである。
【0007】
本発明に係る、ケースは、本体の下端から注出筒に挿入して当該注出筒に掛り止めすることも、本体の上端側から注出筒に挿入することで当該注出筒に掛り止めすることもできる。前記排出部は、その内側に排出孔が形成された仕切壁を有する筒状壁とすることで、充填材を通った内容液のみを外界に注出させることは勿論、当該筒状壁に開口部を形成し、この開口部を通して、本体の注出筒との間に形成した隙間を通る内容液を仕切壁よりも排出側に導入させることも可能である。
【0008】
前記ケースとしては、前記係止部を備えその下端に開口部が形成されたケース本体と、このケース本体の開口部を封止して当該ケース本体との間に充填材の配置空間を形成するシート材とからなるものが挙げられる。
【0009】
また前記ケースとしては、前記係止部を備えその下端に開口部が形成されたケース本体と、このケース本体の開口部と嵌合して当該ケース本体との間に充填材の配置空間を形成する中栓とからなるものが挙げられる。
【0010】
加えて、中栓は、ケース本体と別体のものとすることも、ヒンジを介して連結されたものとすることも可能である。この場合、中栓は、ヒンジを介して開閉可能な構成とすることも、ケース本体に対して固定する構成とすることも可能である。前記導入部は、中栓に形成された開口部とすることができる。
【0011】
また、本発明に従えば、前記導入部をケース本体の側壁に形成したスリットとすることもできる。また、充填材は、茶葉に代表されるような、内容液に対して他の成分を付加するものだけでなく、ろ過等を目的とした多孔質材に代表されるような、内容液に含まれる成分の一部を除去するものも含み、内容液の成分を変更(変化)させるものであれば、様々なものを採用できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内容液の導入及び排出が可能なケースに充填材を収納し、このケースの排出部を、本体の注出筒に掛り止めされるように構成したことから、充填材を容器内に投入することなく、異なる成分の内容液としての取り出しが可能になる。また、本発明によれば、充填材が蓋体の取り外しに連動して投入されないため、蓋体の取り外し後においても、使用者の意思によって成分の異なる内容液の取り出しが可能となる。
【0013】
また、本発明では、充填材を容器内に投入しないので、前記排出部を、その内側に排出孔が形成された仕切壁を有する筒状壁とし、当該筒状壁に、本体の注出筒との間に形成した隙間を通る内容液が仕切壁よりも排出側に導入される開口部を形成すれば、成分の異なる内容液が混合された状態で本体の注出筒から取り出すことができる。
【0014】
また、前記ケースを、前記係止部を備えその下端に開口部が形成されたケース本体と、このケース本体の開口部を封止して当該ケース本体との間に充填材の配置空間を形成するシート材とからなるものにできる。
【0015】
或いは、前記ケースは、前記係止部を備えその下端に開口部が形成されたケース本体と、このケース本体の開口部と嵌合して当該ケース本体との間に充填材の配置空間を形成する中栓とからなるものにできる。
【0016】
更に、前記ケースを中栓で構成する場合、当該中栓を、ケース本体にヒンジを介して開閉可能に連結されたものにできる。
【0017】
また、前記ケースを中栓で構成する場合、前記導入部を中栓に形成された開口部とすれば、内容液を効果的に充填材に通すことができる。
【0018】
前記導入部は、ケース本体の側壁に形成されたスリットにできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明である、注出栓の第1の形態を容器口部に装着した状態で模式的に示す要部断面図である。
【図2】(a),(b)はそれぞれ、同形態に係る、充填ケースの一部を模式的に示す平面図及び、同ケースを一部断面で模式的に示す側面図である。
【図3】本発明に従う、充填ケースの第2の形態を一部断面で模式的に示す側面図である。
【図4】本発明に従う、充填ケースの第3の形態を一部断面で模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明である注出栓を詳細に説明する。
【0021】
図1にて、符号1は、飲料等の内容液Cを充填した容器30の口部(以下、「容器口部」)31に装着される本体である。
【0022】
本体1は、容器口部31に着脱可能に螺着される周壁1aと、この周壁1aの上端に繋がる天壁1bと、この天壁1bに繋がり容器30の内側に通じる注出筒1cとを有する。注出筒1cの内周面には、軸線Oを取り囲むように環状に突出する係止段部1pが形成されている。
【0023】
符号2は、本体1の上側に着脱可能に配置される蓋体である。蓋体2は、2つのヒンジ3を介して開閉可能に繋がる。また、蓋体2には、ヒンジ3の間に爪部2aが一体に形成されている。爪部2aは、蓋体2を開いたとき、周壁1aの上端に形成された段差1sに引っ掛かることで取り外し可能に掛り止めされる。これにより、蓋体2は、本体1から開いたときも、本体1に対して安定した状態に固定される。
【0024】
符号4は、本体1の裏側から取り付け可能な充填ケースである。充填ケース4は、その下端に開口部Aが形成されたケース本体4aと、このケース本体4aの開口部Aを封止して当該ケース本体4aとの間に空間Rを形成するシート材4bとからなる。
【0025】
ケース本体4aは、その内側に開口部Aを形成し、シート材4bが接着されるフランジ4a1と、このフランジ4a1の内側から軸線Oを取り囲むようにして起立する側壁4a2と、この側壁4a2の上端と仕切壁4a3を介して繋がり当該仕切壁4a3から起立する筒状壁4a4とを一体に有する。
【0026】
ケース本体4aの側壁4a2には、軸線Oの周りに複数のスリット(開口)Sが形成されている。スリットSは、内容液Cを空間Rに導入するための導入部を構成する。また、仕切壁4a3には、複数の貫通孔A1が形成されている。貫通孔A1は、注出筒1c内に内容液Cを排出するための排出部を構成する。
【0027】
加えて、充填ケース4には、筒状壁4a4の外周面に、注出筒1cに設けた係止段部1pに引っ掛かることで取り外し可能に掛り止めされる係止突起4a5が一体に形成されている。これにより、本体の裏側から筒状壁4a4を注出筒1c内に差し込むと、充填ケース4は本体1の裏側から垂下した状態で着脱可能に固定される。
【0028】
更に、充填ケース4には、筒状壁4a4の外周面に、注出筒1cとの間に隙間gを形成する複数の縦リブ4a6が一体に形成されていると共に、仕切壁4a3よりも排出側には、2つの開口部A2が形成されている。開口部A2は、隙間gを通る内容液Cを仕切壁4a3よりも排出側に導入する。
【0029】
これにより、本発明に従う注出栓を容器30に装着した後、容器30を傾けると、注出筒1cからは、スリットSから空間Rを通って貫通孔A1を取り出される内容液Cと、隙間gから開口部A2を通って取り出される内容液Cとの混合液が内容液として取り出される。
【0030】
符号5は、ケース本体4aとシート材4bとの間に形成された空間Rに充填される充填材である。充填材5には、例えば、内容液Cに対して溶解可能な内容液Cと異なる成分が含まれている。これにより、内容液Cを充填材5に通せば、内容液Cの成分を変更させることができる。
【0031】
即ち、本発明に従う注出栓を容器30に装着した後、容器30を傾けると、注出筒1cからは、充填材5によって成分変化した内容液Cと、容器30に充填された内容液Cとの混合液が、最終的な内容液として取り出される。
【0032】
図1に示す注出栓によれば、内容液Cの導入及び排出が可能な充填ケース4に充填材5を収納し、この充填ケース4の排出部である筒状壁4a4を、注出筒1cを有する本体1の裏側から当該注出筒1cに掛り止めさせるように構成したことから、充填材5を容器30内に投入することなく、異なる成分の内容液Cとしての取り出しが可能になる。また、本形態によれば、充填材5が蓋体2の取り外しに連動して投入されないため、蓋体2の取り外し後においても、使用者の意思によって成分の異なる内容液Cの取り出しが可能となる。
【0033】
また、本発明では、充填材5を容器30内に投入しないので、本形態のように、充填ケース4の排出部を、その内側に排出孔A1が形成された仕切壁4a3を有する筒状壁4a4とし、当該筒状壁4a4に、注出筒1cとの間に形成した隙間gを通る内容液Cが仕切壁4a3よりも排出側に導入される開口部A2を形成すれば、成分の異なる内容液Cが混合された状態で注出筒1cから取り出すことができる。
【0034】
また、本形態のように、充填ケース4を、係止突起4a5を備えその下端に開口部Aが形成されたケース本体4aと、このケース本体4aの開口部Aを封止して当該ケース本体4aとの間に充填材5の配置空間Rを形成するシート材4bとからなるものにできる。
【0035】
また、本発明に従えば、本形態のように、導入部をケース本体4aの側壁4a2に形成されたスリットSにできる。
【0036】
また、本発明に係る、充填ケース4の他の形態としては、図3に示すものがある。本形態は、充填ケース4を形成するにあたり、中栓4cを採用している。このため、ケース本体4aは、フランジ4a1に段差4sを設けると共に、中栓4cの外周面には、段差4sに引っ掛かることで取り外し可能に掛り止めされる環状突起4c1が一体に形成されている。これにより、ケース本体4aの開口部Aに中栓4cを差し込むと、中栓4cはケース本体4aに対して着脱可能に固定されることで、充填ケース4が形成される。
【0037】
本形態のように、充填ケース4は、係止突起4a5を備えその下端に開口部Aが形成されたケース本体4aと、このケース本体4aの開口部Aと嵌合して当該ケース本体4aとの間に充填材5の配置空間Rを形成する中栓4cとからなるものにできる。
【0038】
また、本形態に係る、中栓4cには、複数の開口部A3が形成されている。開口部A3は、スリットSと共に、内容液Cを空間Rに導入するための導入部を構成する。これにより、内容液Cを効果的に充填材5に通すことができる。
【0039】
更に、本発明に係る、充填ケース4の他の形態としては、図4に示すものもある。本形態は、ケース本体4aと中栓4cとをヒンジ4dを介して一体に連結したものである。本形態では、中栓4cに開口部A3を形成することなく、スリットSのみで内容液Cを導入している。但し、本発明に従えば、中栓4cに開口部A3を形成することも可能である。
【0040】
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。充填ケース4は、例えば、本形態に係るケース本体4aのように、その側壁4a2が上端(注出)側に向かうに従って先細りになる形状とは反対に、その下端(容器30内)側に向かうに従って先細りになる形状とすることで、注出筒1cの上端から挿入することで注出筒1cに掛り止めされる構成とすることもできる。また、各形態に採用された各構成はそれぞれ、互いに適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の注出栓は、飲料、薬剤、化粧料等を内容物とする容器に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 本体
1a 周壁
1b 天壁
1c 注出筒
1p 係止段部(係止部)
1s 段部
2 蓋体
3 ヒンジ
4 充填ケース
4a ケース本体
4a1 フランジ
4a2 側壁
4a3 仕切壁
4a4 筒状壁(排出部)
4a5 係止突起(係止部)
4a6 リブ
4b シート材
4c 中栓
4d ヒンジ
5 充填材
A 収納用開口部
1 貫通孔(導入部)
2 開口部(排出部)
3 開口部(導入部)
S スリット(導入部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内側に通じる注出筒を有し容器の口部に着脱可能な本体と、この本体の上側に着脱可能に配置される蓋体とを有する注出栓であって、
容器の内容液を通すことでその成分を変更可能な充填材を有し、当該充填材に内容液を導入するための導入部と、充填材を通して本体の注出筒に排出するための排出部とが形成されたケースを備え、
当該ケースは、その排出部に、本体の注出筒に掛り止めされる係止部を備えることを特徴とする、注出栓。
【請求項2】
請求項1において、前記排出部は、その内側に排出孔が形成された仕切壁を有する筒状壁であって、当該筒状壁に、本体の注出筒との間に形成した隙間を通る内容液が仕切壁よりも排出側に導入される開口部が形成されていることを特徴とする、注出栓。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ケースは、前記係止部を備えその下端に開口部が形成されたケース本体と、このケース本体の開口部を封止して当該ケース本体との間に充填材の配置空間を形成するシート材とからなることを特徴とする、注出栓。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記ケースは、前記係止部を備えその下端に開口部が形成されたケース本体と、このケース本体の開口部と嵌合して当該ケース本体との間に充填材の配置空間を形成する中栓とからなることを特徴とする、注出栓。
【請求項5】
請求項4において、中栓は、ケース本体にヒンジを介して連結されたものであることを特徴とする、注出栓。
【請求項6】
請求項4又は5において、前記導入部が中栓に形成された開口部であることを特徴とする、注出栓。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれか1項において、前記導入部がケース本体の側壁に形成されたスリットであることを特徴とする、注出栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−173730(P2010−173730A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20982(P2009−20982)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】