説明

注射器のルアーロックアダプター

【課題】 注射針を外筒に固定する際のルアーロックアダプターの空回りを回避して、注射液の漏洩を確実に防止する。
【解決手段】 ルアーロックアダプター2の後端部に筒状の嵌合部23を設けると共に、この嵌合部に3個の軸方向スリット23aを形成する。さらに軸方向スリット23aの前側に位置する内周23bの径を、外筒1の外周径と同等以上にすると共に、後端における内周の径を、この外筒の外周径より小さくする。嵌合部23は、軸方向スリット23aによって拡径可能となるため、両者の間に高精度な嵌め合い寸法が不要になると共に、注射針3を外筒1に固定する際のルアーロックアダプター2の空回りを、確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外筒の先端に注射針を固定するための、注射器のルアーロックアダプターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、注射器の外筒の先端に注射針を固定する手段が、多数提案されている。その1つとして、次に示す手段がある(特許文献1参照)。なおこの特許文献1は、本願発明者による別の発明に関するものであって、注射器の外筒の先端に注射針を固定するための手段については、必ずしも詳述されていない。そこで図6及び図7参照しつつ詳述する。
【0003】
すなわち図6に示すように、ガラス製の外筒201の先端には、この外筒を縮径して形成したルアー211が一体的に形成してあり、このルアーの外周211aは、先端に向かって先細状になっている。またルアー211の後端部の外周には、円周溝211bが形成してある。
【0004】
注射針203は、合成樹脂からなるコーン状の針基232と、この針基の先端に挿設した針231とからなる。針基232の外周の後端には、雄ねじのねじ山形状に形成した外側フランジ232aが設けてある。また針基232の内周232bは、ルアー211の先細状の外周211aに密接するコーン状に形状してある。すなわち注射針203は、その針基232のコーン状の内周232bを、ルアー211の先細状の外周211aに挿入して取り付けて、両者を密接させる。したがって薬剤が外部に漏れない構造になっている。
【0005】
ところが注射針203の針基232を、ルアー211の外周211aに密接挿入するだけでは、容易に抜け落ちてしまう。そこで注射針203の針基232が、ルアー211から抜け落ちないように、両者を、ルアーロックアダプター202によって固定する。すなわちルアーロックアダプター202は、合成樹脂からなる筒状の部材であって、その先端部の内周には、雌ねじ部221が形成してあり、その後端部には、係止部222が設けてある。
【0006】
さてルアーロックアダプター202を先端側から見た正面形状を図7に示す。この図7に示すように、ルアーロックアダプター202の後端部に設けた係止部222は、内側に向かって突設した内側フランジ222aを有し、この内側フランジの中心には、円形穴からなる係止穴222bが開口している。係止穴222bの内周径は、ルアー211の外周211aの後端部に形成した円周溝211bの溝底径より、やや小さく形成してある。また内側フランジ222aには、係止穴222bの内周から放射状に伸びる6個のスリット222cが、周方向に均等に設けてある。すなわち係止穴222bは、それぞれ両側をスリット222cで挟まれた6個のリード部材222dの先端で形成されている。またルアーロックアダプター202の内周に形成した雌ねじ部221は、針203の針基232の後端に設けた外側フランジ232aの外周と、螺合する形状にしてある。
【0007】
次に注射針203の針基232を、ルアーロックアダプター202によって、外筒201の先端に形成したルアー211に固定する手順を説明する。最初に、ルアーロックアダプター202の内側フランジ222aの中心に開口する係止穴222bを、ルアー211の先細状の外周211aに挿入する。上述したように係止穴222bは、6個のリード部材222dの先端で形成されているため、ルアーロックアダプター202を挿入方向に押圧すれば、このリード部材が後方に撓んで、この係止穴が拡径する。したがって係止穴222bを、ルアー211の後端部の外周に形成した円周溝211bに、容易に嵌め込むことができる。
【0008】
なお円周溝211bの溝底径は、係止穴222bの内周よりやや大きく形成してあるため、6個のリード部材222dの先端は、それぞれの弾性力によって、この円周溝の溝底を半径方向に強く締め付ける。したがってルアーロックアダプター202は、その係止穴222bが円周溝211bに係合することによって軸方向に係止され、さらにこの係止穴の内周と、この円周溝の溝底との間の摩擦力によって、相互に回転しないように連結される。
【0009】
次に、注射針203の針基232の後端に設けた外側フランジ232aを、ルアーロックアダプター202の内周に形成した雌ねじ部221に螺合させつつ、この針基の内周232bを、ルアー211の外周211aに挿入する。さらに外側フランジ232aと雌ねじ部221との螺合を進めると、針基232のコーン状の内周232bが、先細状のルアー211の外周211aに密着し、相互に軸方向と半径方向とに強く押圧された状態で、両者が連結される。以上によって、注射針203は、軸方向に抜けたり相互に回転したりしないようにして、外筒201に固定することができる。
【0010】
すなわち上述した手段では、注射器の内部と外部とを隔てる境界は、注射針203の針基232の内周232bと、ルアー211の外周211aとの合わせ面だけであり、両者は相互に密接するコーン状に形成してある。したがって上述したように、ルアーロックアダプター202の雌ねじ部221に、注射針203の針基232を螺合させつつ締め付ければ、両者の合わせ面は、いわば楔のように、相互に軸方向と半径方向とに強く押圧された状態で密着する。このため注射液が両者の合わせ面から漏洩することを、容易かつ確実に防止できるという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−282358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかるに上述した手段には、さらに改良すべき問題があることが判明した。すなわち上述した手段では、外筒201の先端に注射針203を固定するときは、この注射針の針基232の後端に設けた外側フランジ232aを、ルアーロックアダプター202の内周に形成した雌ねじ部221に螺合させつつ締め付ける。ここで両者を螺合させつつ締め付けるときに、外筒201に対してルアーロックアダプター202が空回りすると、注射針203の針基232をルアー211の外周211aに締め付ける力が弱くなる。このような場合は、上述した両者のコーン状の合わせ面に掛かる押圧力も少なくなって、注射液が外部に漏洩する可能性がある。
【0013】
上述した手段では、ルアーロックアダプター202に設けた係止穴222bの内周径を、ルアー211に形成した円周溝211bの溝底径より、やや小さく形成することによって両者間の摩擦力を確保し、これにより、このルアーロックアダプターの空回りを防止している。
【0014】
ところが係止穴222bの内周や、円周溝211bに、注射液や潤滑剤等が付着した場合には、両者の間の摩擦力が確保できない可能性があることが判明した。特に外筒201の内周は、プランジャーが滑らかに摺動するように、通常、潤滑剤としてシリコンをコーティングするため、このシリコンが円周溝211bに付着する可能性を否定できない。さらに円周溝211bの溝底径は、雌ねじ部221の径に較べて小さいため、回転モーメントアームが短くなり、この円周溝との摩擦力によって、大きな空回り防止トルクを発生させる点において不利な構造になっている。
【0015】
そこで本発明の目的は、ルアーロックアダプターの空回りを回避して、注射液の漏洩を確実に防止できる、注射器のルアーロックアダプターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決すべく、本発明による注射器のルアーロックアダプターの特徴は、ルアーロックアダプターの後端部に筒状の嵌合部を設けると共に、この嵌合部に複数の軸方向スリットを形成し、さらにこの軸方向スリットの前側に位置する内周径を、外筒の外周径と同等以上にすると共に、後端における内周径を、この外筒の外周径より小さくすることにある。
【0017】
すなわち本発明による注射器のルアーロックアダプターは、注射器の外筒の先端を縮径して形成したルアーに、注射針を固定するためのルアーロックアダプターであって、このルアーが、先端に向かって先細状に形成された外周と、この外周の後端部に形成された円周溝とを有するものに適用する。上記ルアーロックアダプターは、合成樹脂製の筒状の形状であって、その先端部の内周に設けた雌ねじ部と、この雌ねじ部の後側に位置する係止部と、この係止部の後側に位置する嵌合部とを備えている。
【0018】
上記係止部は、上記ルアーロックアダプターの内周に突設した内側フランジを有し、この内側フランジの中心には係止穴が開口している。上記係止穴の内周径は、上記円周溝の溝底径と同等、またはこの溝底径より小さくしてあり、上記内側フランジには、上記係止穴の内周から放射状に延びる複数の半径方向スリットが、円周方向に等間隔に形成してある。
【0019】
上記嵌合部は、上記外筒の外周に挿入する内周を有すると共に、その後端から前側に延伸する複数の軸方向スリットが、円周方向に等間隔に形成してある。上記軸方向スリットの先端より前側に位置する嵌合部の内周径は、上記外筒の外周径と同等、またはこの外筒の外周径より大きくしてあり、上記嵌合部の後端における内周径は、上記外筒の外周径より小さくしてある。
【0020】
ここで本発明の特徴をより明確にするため、本発明による注射器のルアーロックアダプターの作用効果について説明する。すなわちルアーロックアダプターの後端部に筒状の嵌合部を設け、この嵌合部の内周と外筒の外周との間に摩擦力を生じさせることによって、上述したルアーの円周溝と間の摩擦力が低下した場合であっても、このルアーロックアダプターの空回りを確実に防止することができる。特に外筒の外周との嵌合部は、ルアーの円周溝に較べて、回転モーメントアームが大きいため、大きな空回り防止トルクを発生させる点において、極めて有利となる。
【0021】
以上に加えて、上記嵌合部に複数の軸方向スリットを形成することによって、外筒の外周との嵌め合い寸法精度を、大幅に緩和することができる。すなわち嵌合部に軸方向スリットを設けない場合には、外筒の外周との間で、確実に摩擦力を得ようとするためには、外筒の外周及び嵌合部の内周を、いずれも高い嵌め合い寸法精度に仕上げる必要がある。つまり嵌め合いが緩いと、十分な摩擦力が得られず、逆に嵌め合いがきついと、嵌合部を外筒の外周に挿入することが困難となる。
【0022】
しかるに嵌合部に複数の軸方向スリットを設ければ、比較的大きな直径差をもって、この嵌合部の内周径を外筒の外周径より小さくすることが可能となり、これにより、外筒の外周及び嵌合部の内周の嵌め合い寸法精度を、大幅に緩和することができる。すなわち外筒の外周と嵌合部の内周との嵌め合いがきつくとも、複数の軸方向スリットを設ければ、嵌合部は容易に拡径するため、容易に挿入することができる。
【0023】
また本発明によるルアーロックアダプターは、係止穴がルアーの円周溝に係止されるため、軸方向に抜け落ちることがない。したがってルアーロックアダプターと外筒とは、相互に回転しないようにすれば足り、軸方向に抜け落ちることを防止するため、突起部や溝部等を形成することを省くことができる。
【0024】
さらに軸方向スリットの先端より前側に位置する嵌合部の内周径を、外筒の外周径と同等、またはこの外筒の外周径より大きくし、かつ嵌合部の後端における内周径を、外筒の外周径より小さくすることによって、外筒の外周及び嵌合部の内周の嵌め合い寸法精度を、さらに緩和することができる。すなわち軸方向スリットの先端より前側に位置する嵌合部の内周は、殆んど拡径しないが、この内周径を外筒の外周径より、有る程度大きくしておけば、外筒の外周に容易に挿入することができる。また嵌合部の後端における内周径は、上述したように、複数の軸方向スリットによって容易に拡径するため、この内周径を外筒の外周径より、かなり小さくしても、外筒の外周に容易に挿入することができる。つまり嵌合部の内周と外筒の外周との寸法精度を低くしても、先端における内周径を、この寸法精度を超えて大きくし、後端における内周径を、この寸法精度を超えて小さくすれば、ルアーロックアダプターの嵌合部を外筒に容易に挿入することができると共に、外筒との間に十分な摩擦力を発生させることができる。
【0025】
さらに本発明による注射器は、上述したように、コーン状のルアーの外周と注射針の針基の内周との密着面において、注射液が外部に漏洩することを確実に防止されるため、外筒の外周と嵌合部の内周との嵌め合い部分においては、注射液の外部への漏洩を考慮する必要はない。したがってルアーロックアダプターの嵌合部には、複数の軸方向スリットを設けたり、軸方向スリットの先端より前側に位置する嵌合部の内周と外筒の外周との間に、半径方向クリアランスを設けたりすることが可能となる。
【0026】
またルアーロックアダプターは、合成樹脂を射出成形して成形するが、この場合嵌合部の内周、すなわち内部空間の形成には、中子を用いる必要がある。この嵌合部の内周は、上述したように、先端より後端のほうが径が小さくなっているため、嵌合部が拡径しなければ、合成樹脂を金型内に射出した後に、中子を抜き出すことができなくなる。本発明においては、嵌合部に複数の軸方向スリットを設けることによって、後端の拡径が可能となるため、中子を容易に抜き出すことができるという特徴を有する。
【0027】
ところで図6に示す従来例によるルアーロックアダプターに注射針を螺合すると、上述したように、この注射針とルアーロックアダプターとは、ルアーの外周と円周溝とに固定される。しかるにこのルアーは、注射器の外筒に比べて直径が小さく、しかもルアーの後端部には円周溝が形成されているため、注射針やルアーロックアダプターに、不用意に過度の力が加わった場合には、このルアーの円周溝において破損する恐れがある。また注射針をルアーロックアダプターに螺合する場合にも、不用意に過度の力を加えると、ルアーの円周溝において破損する恐れがある。
【0028】
ところが本発明によるルアーロックアダプターは、その後端側に位置する嵌合部が、注射器の直径が大きい外筒の外周に装着される。したがって注射針をルアーロックアダプターを介してルアーに装着する際や、装着した後において、注射針やルアーロックアダプターに、不用意に過度の力が加わった場合にも、このルアーが、その後端部に設けた円周溝において破損することを防止できる。
【0029】
さてここで「注射器の外筒」とは、少なくともルアーロックアダプターを挿着する部分において外周径が一定の、合成樹脂製またはガラス製の中空容器を意味する。「注射器の外筒の先端を縮径して形成したルアー」とは、外筒の先端から突出するように一体的に形成した、注射針を連結する部材であって、この外筒の外周径より小さい先細状の外周径を有し、中心に注射液を抽出する流路を有するものを意味する。「注射針」とは、ルアーの先細状の外周に密接する、コーン状の内周を備えるものを意味する。「円周溝」とは、ルアーの外周の全周にわたって、外周方向に沿って設けた凹状の断面形状を有する溝を意味し、その断面形状の詳細は問わない。例えば矩形、半円形、あるいは円弧形の断面形状の場合が該当する。
【0030】
「合成樹脂製のルアーロックアダプター」の「合成樹脂製」とは、例えばポリプロピレンあるいはポリカーボネート等の熱可塑性樹脂が該当する。なお「ルアーロックアダプター」は、金型を用いて射出成形する。「雌ねじ部」とは、注射針の外周に設けた雄ねじ部と螺合するものを意味するが、そのねじ山形状、ねじ径、ピッチ、及びねじの条数を問わない。「上記係止穴の内周径は、上記円周溝の溝底径と同等、またはこの溝底径より小さくしてあり」において「上記円周溝の溝底径と同等」としたのは、ルアーロックアダプターの嵌合部の内周と、外筒の外周との間の摩擦力によって、このルアーロックアダプターの空回りを十分防止することが可能となるため、従来のように係止穴の内周とルアーの円周溝との間の摩擦力は、必ずしも必要ではないからである。したがって上記円周溝の溝底径と同等」には、係止穴の内周径が円周溝の溝底径より、わずかに大きい場合も含まれる。
【0031】
なお従来のように、係止穴の内周径を円周溝の溝底径より小さくすれば、ルアーロックアダプターの嵌合部の内周と外筒の外周との間の摩擦力に、係止穴の内周とルアーの円周溝との間の摩擦力も加わるため、ルアーロックアダプターの空回りを、より強力に防止することが可能となる。「複数の半径方向スリット」の「複数」とは、6個が望ましいが、少なくとも2個以上であればよい。また「半径方向スリット」の形状は問わない。「複数の軸方向スリット」の「複数」とは、3個が望ましいが、少なくとも2個以上であればよい。また「軸方向スリット」の形状は問わない。
【0032】
ところで上記嵌合部の内周は、その後端に向かって径が小さくなる逆テーパー状に形成することが望ましい。嵌合部を外筒の外周に挿着すると、軸方向スリットが形成してある部分の内周が拡径し、その内周と外筒の外周とを、ほぼ平行な状態で密着させることができる。したがって密着面積を広くできるため、摩擦力を高めることができる。
【0033】
また上記嵌合部の後端の内周に、突条部を円周方向に沿って突設し、この突条部の頂部で形成される内周径を、上記外筒の外周径より小さくするように構成してもよい。なお突条部の前側側壁を、緩やかな傾斜面とすることが望ましい。射出成形後において、より容易に中子を抜き出すことができるからである。
【0034】
さらに上記外筒は、ガラス製であることが望ましい。ガラス製の外筒の場合には、一般に合成樹脂製を射出成形する外筒に較べて、ルアーロックアダプターを挿着する部分に、ルアーロックアダプターの抜け止め用の突条部や凹溝を形成することが困難となる。しかるに本発明においては、上述したように、ルアーロックアダプターを挿着する部分に、ルアーロックアダプターの抜け止め用の突条部や凹溝を形成する必要がない。したがって本発明によるルアーロックアダプターは、抜け止め用の突条部や凹溝を形成することが困難なガラス製の外筒に対して、より適用性に優れる。
【発明の効果】
【0035】
上述した特有の作用効果を発揮しつつ、ルアーロックアダプターの空回りを回避して、注射液の漏洩を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】注射器を構成する外筒、注射針及びルアーロックアダプターの断面図である。
【図2】ルアーロックアダプターの拡大断面図である。
【図3】ルアーロックアダプターの正面図である。
【図4】ルアーロックアダプターの背面図である。
【図5】他のルアーロックアダプターの一部拡大断面図である。
【図6】従来例による注射器を構成する外筒、注射針及びルアーロックアダプターの断面図である。
【図7】従来例によるルアーロックアダプターの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1〜図4を参照しつつ、本発明による注射器のルアーロックアダプターの1例を説明する。すなわち図1に示すように、本発明による注射器のルアーロックアダプター2は、注射器の外筒1の先端を縮径して形成したルアー11に、注射針3を固定するためのものである。なお外筒1はガラス製であって、ルアーロックアダプター2は、熱可塑性樹脂、例えばポリカーボネートを射出成形して成形する。また注射針3は、合成樹脂製の針基32の先端部分に、針31を挿設した構造になっている。
【0038】
ルアー11は、先端に向かって先細状に形成された外周11aと、この外周の後端部に形成された円周溝11bとを有する。なお図1に示すように、注射針3の針基32の外周の後端には、雄ねじのねじ山形状に形成した外側フランジ32aが設けてある。また針基32の内周32bは、ルアー11の先細状の外周11aに密接するコーン状に形状してある。すなわち注射針3は、その針基32のコーン状の内周32bを、ルアー11の先細状の外周11aに挿入して取り付けて、両者を密接させる。したがって薬剤剤が外部に漏れない構造になっている。
【0039】
さて図2に示すように、ルアーロックアダプター2は、筒状の形状であって、先端部の内周には、雌ねじ部21が設けてあり、この雌ねじ部の後側には、係止部22が隣接して設けてある。さらに係止部22の後側には、嵌合部23が隣接して設けてある。雌ねじ部21は、注射針3の針基32の後端に設けた外側フランジ32aに、螺合する形状に形成してある。
【0040】
図3に、ルアーロックアダプター2を先端側から見た正面形状を示す。図2及び図3に示すように、ルアーロックアダプター2に設けた係止部22は、内側に向かって突設した内側フランジ22aを有し、この内側フランジの中心には、円形穴からなる係止穴22bが開口している。係止穴22bの内周径は、ルアー211の外周211aの後端部に形成した円周溝211bの溝底径と同等、またはこの溝底径より、やや小さく形成してある。また内側フランジ22aには、係止穴22bの内周から放射状に伸びる6個のスリット22cが、周方向に均等の間隔をもって設けてある。すなわち係止穴22bは、それぞれ両側をスリット22cで挟まれた6個のリード部材22dの先端で形成されている。
【0041】
なおルアーロックアダプター2の外周には、軸方向の全長にわたって、6個の突条部25が、円周方向に等間隔に形成してある。突条部25によってルアーロックアダプター2の剛性を確保できるため、他の部分の薄肉化を図ることが可能となる。また注射器をテーブル等に置いたときに、転がり落ちることを防止することもできる。
【0042】
図4に、ルアーロックアダプター2を後端側から見た背面形状を示す。図2及び図4に示すように、嵌合部2は、外筒1の外周に挿入する内周23bを有すると共に、その後端から前側に延伸する3個の軸方向スリット23aが、円周方向に等間隔に形成してある。図2に示すように、嵌合部2の内周23bは、その後端に向かって径が小さくなる逆テーパー状に形成してある。ここで嵌合部2の内周23bの径は、軸方向スリット23aの先端より前側においては、外筒1の外周径より、わずかに大きくしてある。一方嵌合部2の内周23bの直径は、その後端において、外筒1の外周径より、2 × ΔR分だけ小さくしてある。
【0043】
したがってルアーロックアダプター2の嵌合部23を、外筒1に挿入するときには、軸方向スリット23aが形成されていない前側においては、内周23bは拡径しないものの、両者が緩めの嵌め合いになっているため、容易に挿入することができる。一方嵌合部23の後端においては、その内周23bの直径が、外筒1の外周径より、2 × ΔR分だけ小さくしてあるものの、軸方向スリット23aによって容易に拡径するため、この外筒の外周に容易に挿入することができる。また嵌合部23の逆テーパー状の内周23bは、外筒1に挿入すると、ほぼ全長にわたって、この外筒の外周と平行になり、両者の間に、広い密接面積を確保することができる。
【0044】
図5に、嵌合部の他の形態を示す。なお図2に示したものと同等な部位については、参照等の便宜のため、図2に示す符号に、一律100を加えた符号にしてある。さてルアーロックアダプター102の嵌合部123の後端の内周123bには、突条部123cが円周方向に沿って突設してある。突条部123cの頂部で形成される内周径は、外筒101の外周径より2 × ΔRだけ小さくしてある。なおルアーロックアダプター102の他の部分は、上述したルアーロックアダプター2と同等に形成してある。
【0045】
このようにルアーロックアダプター102を構成することによって、軸方向スリット123aが形成されていない前側において、嵌合部123の内周123bを外筒101の外周径より大きく形成したり、後端において、その内周を、この外筒の外周径より、2 × ΔR分だけ小さく形成したりすることが容易にできる。なお嵌合部123の後端に、突条部123cを設けてあっても、3個の軸方向スリット123a1によって、この嵌合部の後端は拡径が可能となり、射出成形後において中子を容易に抜き出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
ルアーロックアダプターの空回りを回避して、注射液の漏洩を確実に防止できるため、注射器に関する産業に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1、101、201 外筒
11、211 ルアー
11a、211a 外周
11b、211b 円周溝
2、102、202 ルアーロックアダプター
21、221 雌ねじ部
22、222 係止部
22a、222a 内側フランジ
22b、222b 係止穴
22c、222c 半径方向スリット
23、123 嵌合部
23a、123a 軸方向スリット
23b、123b 内周
123c 突条部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射器の外筒の先端を縮径して形成したルアーに、注射針を固定するためのルアーロックアダプターであって、
上記ルアーは、先端に向かって先細状に形成された外周と、この外周の後端部に形成された円周溝とを有するものにおいて、
上記ルアーロックアダプターは、合成樹脂製の筒状の形状であって、その先端部の内周に設けた雌ねじ部と、この雌ねじ部の後側に位置する係止部と、この係止部の後側に位置する嵌合部とを備え、
上記係止部は、上記ルアーロックアダプターの内周に突設した内側フランジを有し、この内側フランジの中心には係止穴が開口しており、
上記係止穴の内周径は、上記円周溝の溝底径と同等、またはこの溝底径より小さくしてあり、
上記内側フランジには、上記係止穴の内周から放射状に延びる複数の半径方向スリットが、円周方向に等間隔に形成してあり、
上記嵌合部は、上記外筒の外周に挿入する内周を有すると共に、その後端から前側に延伸する複数の軸方向スリットが、円周方向に等間隔に形成してあり、
上記軸方向スリットの先端より前側に位置する嵌合部の内周径は、上記外筒の外周径と同等、またはこの外筒の外周径より大きくしてあり、
上記嵌合部の後端における内周径は、上記外筒の外周径より小さくしてある
ことを特徴とする注射器のルアーロックアダプター。
【請求項2】
上記嵌合部の内周は、その後端に向かって径が小さくなる逆テーパー状に形成してある
ことを特徴とする請求項1に記載の注射器のルアーロックアダプター。
【請求項3】
上記嵌合部の後端の内周には、突条部が円周方向に沿って突設してあり、
上記突条部の頂部で形成される内周径は、上記外筒の外周径より小さくしてある
ことを特徴とする請求項1に記載の注射器のルアーロックアダプター。
【請求項4】
上記外筒は、ガラス製である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの1に記載の注射器のルアーロックアダプター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate