説明

注射器

【課題】複雑な作業を要することなく、安全且つ容易に廃棄可能な、新規の注射器を提供する。
【解決手段】本発明の注射器1は、シャフト3の先端にピストン4が設けられたプランジャ2と、ピストン3を収納して内容物の充填空間Sを形成し先端に充填空間Sを外界に通じさせる貫通孔A2が形成されたシリンジ5と、充填空間S内を移動可能に保持される内部スライダ6とを有し、内部スライダ6とプランジャ2とにそれぞれ、プランジャ2の押し込みにより互いに固定保持される係止部C5,C6を設け、内部スライダ6にニードル9を取り付けることにより、貫通孔A2を通して外界に突出するニードル9をプランジャ2の引き戻しにより充填空間S内に収納可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用後に安全に廃棄することができる注射器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
注射器は、針を備えるため、その取り扱い(特に、廃棄時)に際しての安全性を確保する観点から、使用済みの注射器には、保護カバーを取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−220139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、保護カバーを用いる場合、保護カバーの装着作業が煩雑で、改善の余地があった。
【0005】
本発明の目的とするところは、複雑な作業を要することなく、安全且つ容易に廃棄可能な、新規の注射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明である、注射器は、シャフトの先端にピストンが設けられたプランジャと、ピストンを収納して内容物の充填空間を形成し先端に充填空間を外界に通じさせる貫通孔が形成されたシリンジと、充填空間内を移動可能に保持される内部スライダとを有し、内部スライダとプランジャとにそれぞれ、当該プランジャの押し込みにより互いに固定保持される係止部を設け、内部スライダにニードルを取り付けることにより、貫通孔を通して外界に突出するニードルをプランジャの引き戻しにより充填空間内に収納可能にしたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明に従えば、内部スライダにシリンジ軸線に沿って延在する複数のアーム部分をシリンジの内径周りに間隔を空けて設けると共に、当該アーム部分とシリンジとにそれぞれ、互いに固定保持される係止部を設けることができる。またこの場合、アーム部分で取り囲まれた内側に、当該アーム部分の内側への変形を阻止するリング部材を配置すると共に、当該リング部材とアーム部分とにそれぞれ、互いに固定保持されると共に当該固定がリング部材の押し込みにより解除されてアーム部分の内側への変形を許容する係止部分を設けることができる。
【0008】
また、本発明に従えば、プランジャを通す開口部が形成されてシリンジを移動可能な外部スライダを有し、当該外部スライダとプランジャとにそれぞれ、外部スライダの移動により互いに固定保持される係止部を設けることができる。
【0009】
更に、本発明に従えば、外部スライダとシリンジとにそれぞれ、外部スライダの移動により互いに固定保持される係止部を設けることができる。
【0010】
加えて、本発明に従えば、内部スライダは、別体のニードルを取り付け可能とするものとすることができる。
【0011】
また、本発明に従えば、シリンジとプランジャとの間に、当該プランジャに着脱可能に嵌合してその押し込みを阻止するストッパを設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、プランジャをいっぱいまで押し込んで液体を注出すれば、プランジャは、内部スライダに引っ掛かって一体化する。このため、プランジャを引き戻せば、内部スライダもプランジャと共にシリンジの先端から遠ざかる方向に引き離される。
【0013】
即ち、内部スライダに取り付けられたニードルも、シリンジの先端から遠ざかる方向に移動する。これにより、シリンジの貫通孔を通して露出していたニードルは、単に押し込んだプランジャを引き戻すという、注射器本来の単純な操作により、シリンジ内に収納することができる。
【0014】
従って、本発明によれば、複雑な作業を要することなく、安全且つ容易に廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明である、注射器の第1の形態であって、その使用前の状態を示す縦断面図及び、その要部拡大図である。
【図2】同形態に係る、内部シリンダとリング部材との関係をOリングと共に示す分解斜視図である。
【図3】同形態に係るプランジャの押し込み中の状態を示す縦断面図である。
【図4】同形態に係るプランジャを押し込みにより内部スライダと一体化させた状態を示す縦断面図である。
【図5】同形態に係るプランジャを引き戻してシリンジ内にニードルを収納した廃棄可能状態を示す縦断面図である。
【図6】同形態に係る外部スライダ及びシリンジに設けたフランジをそれぞれ、互いの合せ面側から示す分解斜視図である。
【図7】(a)は、図1のA−A断面図であり、(b)は、同形態の使用状態におけるA−A断面図である。
【図8】本発明である、注射器の第2の形態であって、その使用前の状態を示す縦断面図である。
【図9】同形態において、ニードルを取り付ける直前の状態を示す要部断面図である。
【図10】同形態に係る外部スライダ及びシリンジに設けたフランジをそれぞれ、互いの合せ面側から示す分解斜視図である。
【図11】(a)は、図8のB−B断面図であり、(b)は、同形態の使用状態におけるB−B断面図である。
【図12】同形態に係るプランジャを押し込みにより内部スライダと一体化させた状態を示す縦断面図である。
【図13】同形態に係るプランジャを引き戻してシリンジ内にニードルを収納した廃棄可能状態を示す縦断面図である。
【図14】本発明である、注射器の第3の形態であって、その使用前の状態を示す縦断面図である。
【図15】同形態に係るストッパの正面図及び側面図である。
【図16】同形態に係るプランジャを引っ張って、シリンジ内に液体を充填させた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明である、注射器の様々な形態を詳細に説明する。
【0017】
図1〜7には、本発明の第1の形態である、注射器1を示す。注射器1は、予め液体が充填されたタイプである。
【0018】
符号2は、液体の吸入、加圧及び圧送を行うプランジャである。プランジャ2は、図1等に示すように、使用者が操作するシャフト3と、このシャフト3の先端に設けられたピストン4とを有する。
【0019】
符号5は、ピストン4を収納して内溶液の充填空間Sを形成するシリンジである。シリンジ5は、ピストン4を挿入するための開口部A1を有してフランジ5aが設けられた大径部5bと、この大径部5bよりも小径の小径部5cとからなる。小径部5cは、シリンジの先端を構成し、その内側には、充填空間Sを外界に通じさせる貫通孔A2が形成されている。
【0020】
符号6は、シリンジ5内に収納される内部スライダである。内部スライダ6は、充填空間Sを外界に通じさせる通路R1が形成された内筒部6aと、この内筒部6aを取り囲む外筒部6bとを有し、内筒部6aと外筒部6bとの間に形成された環状溝に、ニードル9のベース10を螺合させることで保持固定されている。なお、ニードル9の取り付けは、螺合に限定されるものではなく、凹凸や凸凸の引っ掛かりによって固定保持されるアンダーカット嵌合等の既存の手法を用いることができる。
【0021】
また、内部スライダ6は、内筒部6aと外筒部6bとの間が環状の隔壁部6cで連結されている。隔壁部6cには、シリンジ5の長手方向(シリンジ軸線O)に沿って後方に延在する複数のアーム部6dが一体に設けられている。アーム部6dは、図2に示すように、隔壁部6cの外縁に沿ってシリンジ5の内径周りに間隔を空けて設けられている。これにより、内部スライダ6は、アーム部6dにより、シリンジ5の内面を案内に、充填空間S内をシリンジ5の長手方向に沿って移動することができる。
【0022】
シリンジ5及びアーム部6dにはそれぞれ、図1の拡大図に示すように、互いに引っ掛かって固定保持される係止部(ロック部)C1,C2が設けられている。係止部C1,C2は、内部スライダ6をシリンジ5の先端側に位置決めする。
【0023】
本形態では、シリンジ5に設けた係止部C1は、シリンジ5の内面に形成された突起5p1で構成され、また、アーム部6dに設けた係止部C2は、アーム部6dの先端6eで構成されている。
【0024】
アーム部6dが隔壁部6cを基点にして内向き(シリンジ軸線Oに向かう方向)に変形すると、その先端6eが突起6p1を乗り越えることで引っ掛かりを解除することができる。即ち、内部スライダ6をシリンジ5の長手方向に引っ張れば、アーム部6dの先端6eが突起6p1を乗り越えることで、内部スライダ6をシリンジ2の先端位置から引き出すことができる。
【0025】
なお、突起5p1は、シリンジ5の内面に全周に亘って設けることも、間隔を空けて間欠的に設けることもできる。更に、係止部C1,C2は、シリンジ5の突起5p1とアーム部6dの先端6eとの構成に限定されない。例えば、互いを突起で構成することや、突起と窪み(溝)で構成することもできる。
【0026】
また、符号7は、アーム部分6dで取り囲まれた内側に配置されるリング部材である。リング部材7は、アーム部分6dの内側に配置されることで、アーム部分6dの内側への変形を阻止する。これにより、内部スライダ6は、リング部材7を取り除かない限り、シリンジ5内を長手方向に移動することができない。
【0027】
また、アーム部分6dとリング部材7にもそれぞれ、図1の拡大図に示すように、互いに引っ掛かって固定保持される係止部(ロック部)C3,C4が設けられている。係止部C3,C4は、その引っ掛かりがリング部材7の押し込みにより解除されることで、アーム部6dの内側への変形を許容する。
【0028】
本形態では、アーム部材6dに設けた係止部C3は、アーム部材6dの先端内側に、シリンジ長手方向に間隔を空けて2つの突起6p1,6p2を設け、これら突起6p1,6p2と、その相互間に形成された凹部6nで構成され、また、リング部材7に設けた係止部C4は、リング部材の外周縁部7aで構成されている。
【0029】
内部スライダ6が図1に示すように係止部C1,C2によってシリンジ5の先端側に固定された状態で、アーム部6dの先端6e側から、その内側にリング部材7を押し込むと、リング部材7の外周縁部7aがアーム部6dに設けた突起6p1を乗り越えて凹部6nに嵌合する。これにより、アーム部材6dの動きは、リング部材7によって阻止されるため、内部スライダ6は、シリンジ5の先端部分(小径部5c側)に位置決めされた状態で固定される。
【0030】
そして、更にリング部材7を押し込むと、リング部材7の外周縁部7aがアーム部6dに設けた突起6p2を乗り越えることで、リング部材7は、突起6p2と隔壁部6cとの間に配置される。これにより、内部スライダ6は、その先端側の拘束がなくなるので、アーム部6dの内側への変形が許容される。即ち、内部スライダ6は、リング部材7が押し込まれてアーム部6dが自由になることで、シリンジ5の突起5p1を乗り越えてその先端側から開口部A1に向かって移動することができる。
【0031】
更に、プランジャ2及び内部スライダ6にもそれぞれ、図1の拡大図に示すように、係止部(ロック部)C5,C6が設けられている。係止部C5,C6は、プランジャ2の押し込みにより互いに引っ掛かることで、プランジャ2及び内部スライダ6を一体に連結する。
【0032】
本形態では、プランジャ2に設けた係止部C5は、シャフト3の先端に一体に設けられた抜け止めピン3aで構成されている。抜け止めピン3aは、シャフト3と一体に繋がる基部3a1と、この基部3a1の先端に設けられた膨出部(ヘッド)3a2とを有する。また、内部スライダ6に設けた係止部C6は、内筒部6aの通路R1の入口側に環状突起6hを設け、この環状突起6hと環状突起6hの内側に形成された開口部A3とで構成されている。
【0033】
開口部A3は、ヘッド3a2よりも若干小径に構成されている。このため、プランジャ2の押し込みにより、ヘッド3a2がリング部材7の内側に形成された貫通孔A4を通って開口部A3に押し込まれると、ヘッド3a2が環状突起6hを乗り越えることで、ヘッド3a2は、環状突起6hに嵌合保持される。
【0034】
即ち、プランジャ2をシリンジ5の長手方向に沿って押し込めば、当該プランジャ2を内部スライダ6に一体化させることができる。これにより、プランジャ2をシリンジ5の先端までいっぱいに押し込んで引き戻せば、貫通孔A1を通してニードル9を内部スライダ6と共に充填空間S内に引き入れることができる。
【0035】
また、符号11は、シリンジ5に設けたフランジ5aに沿って移動する外部スライダである。外部スライダ11は、図6に示すように、フランジ5aとの合せ面側に、周壁11aで取り囲まれた凹部nを有する。凹部nには、シャフト3を通す開口部A5が形成されている。
【0036】
また、フランジ5aには、シリンジ5の開口部A1を形作る環状リブ5d1と共に、この環状リブ5d1を挟んで対向する位置に、2つの縦リブ5d2が一体に設けられている。縦リブ5d2はそれぞれ、フランジ5aの長手方向に沿って延在する。これにより、外部スライダ11は、図7(a),(b)に示すように、周壁11aのうち、長手方向の部分を案内として、フランジ5aの長手方向に沿って移動する。
【0037】
なお、本形態では、2つの縦リブ5d2にそれぞれ、当該縦リブ5d2の長手方向に延在する凹溝5nを形成すると共に、この凹溝5nに摺動可能に嵌合する凸部11pを、外部スライダ11の長手方向に延在する周壁11aそれぞれの内側に設けている。これにより、外部スライダ11は、フランジ5aの長手方向に沿って移動できる。また、凹溝5nと凸部11pの位置は、フランジ5a及び外部スライダ11の構成に応じて適宜、変更することができる。更に、本発明に従えば、凹溝5nと凸部11pの関係は、外部スライダ11の周壁11aに縦リブを設け、この縦リブをフランジ5aの縦リブ5d2に形成することもできる。
【0038】
また、プランジャ2及び外部スライダ11にはそれぞれ、図1等に示すように、互いに引っ掛かって固定保持される係止部(ロック部)C7,C8が設けられている。係止部C7,C8は、外部スライダ6の移動によって、シリンジ5に対してプランジャ2を固定する。
【0039】
本形態では、プランジャ2に設けた係止部C7は、シャフト3の周方向に延在する溝3eで構成され、外部スライダ11に設けた係止部C8は、開口部A5を形作る内周縁部11eで構成されている。内周縁部11eは、フランジ5aに対して外部スライダ11を移動させることで溝3eに嵌合される。プランジャ2における溝3eの位置は、図1等に示すように、プランジャ2を引き戻したとき、シリンジ2から抜けない位置に設定する。
【0040】
即ち、図1に示すように、外部スライダ11の内周縁部11eをプランジャ2に設けた溝3eに引っ掛けた状態では、プランジャ2を押し込むことができず、図3等に示すように、外部スライダ11をずらして外部スライダ11の内周縁部11eをプランジャ2に設けた溝3eから解除すれば、 プランジャ2の押し込み及び引き戻しが可能になる。これにより、使用者が外部スライダ11をフランジ5aに沿って移動させれば、プランジャ2を固定することは勿論、その押し込み及び引き戻しも可能になる。
【0041】
なお、凹部nには、図6に示すように、長手方向に沿って延在する2つの縦リブ11r1及び11r2が設けられている。縦リブ11r1及び11r2はそれぞれ、環状リブ5d1と接触することで、外部スライダ11の移動を制限するストッパとして機能する。なお、本発明に従えば、上述の凹溝5nの端部を閉じることで、凸部11pとの接触を可能とすることで、ストッパとして機能させることもできる。
【0042】
ここで、本形態の作用を説明する。
【0043】
本形態では、当初外部スライダ11は、図7(a)に示す位置にある。即ち、プランジャ2は、図1に示すように引き出した状態で固定されている。このため、使用者は、プランジャ2を押し込んで、液体をニードル9から注出することができない。
【0044】
そこで、使用者が外部スライダ11を図7(b)に示す位置に移動させると、開口部A5がシャフト3と同軸上に配置されることで、プランジャ2を図3に示すように押し込むことが可能になる。この押し込みをいっぱいまで行って、ニードル9から液体を注出すると、図4に示すように、プランジャ2と内部スライダ6とが係止部C5,C6により一体化する。
【0045】
このとき、プランジャ2は、リング部材7を押し込むことで、図4に示すように、係止部C3,C4による、リング部材7と内部スライダ6との引っ掛かりが解除される。即ち、プランジャ2をいっぱいまで押し込めば、プランジャ2と内部スライダ6とが一体化すると共に、アーム部6dの内側への変形も許容される。
【0046】
このため、プランジャ2をいっぱいまで押し込んで引き戻せば、内部スライダ6がシリンジ5の突起5p1を乗り越えることで、内部スライダ6は、ニードル9と共に開口部A1に向かって移動する。これにより、ニードル9は、図5に示すように、プランジャ2の引き戻しによって、充填空間S内に収納される。
【0047】
上述のように、本形態では、プランジャ2をいっぱいまで押し込んで液体を注出すれば、プランジャ2は、内部スライダ6に引っ掛かって一体化する。このため、プランジャ2を引き戻せば、内部スライダ6もプランジャ2と共にシリンジ5の先端から遠ざかる方向に移動する。
【0048】
即ち、内部スライダ6に取り付けられたニードル9も、シリンジ5の先端から遠ざかる方向に移動する。これにより、シリンジ5の貫通孔を通して露出していたニードル9は、単に押し込んだプランジャ2を引き戻すという、注射器本来の単純な操作により、シリンジ5内に収納することができる。
【0049】
従って、本形態によれば、複雑な作業を要することなく、安全且つ容易に廃棄することができる。
【0050】
また、本形態の如く、内部スライダ6に複数のアーム部6dを設け、このアーム部6dとシリンジ5とを、互いに係止部C1,C2によって固定保持すれば、係止部C1,C2の引っ掛かりにより、シリンジ5内での内部スライダ6の容易な移動を防止できる一方、プランジャ2と内部スライダ6が一体化した後は、プランジャ2の引き戻しで係止部C1,C2が解除されることで、内部スライダ6と共にニードル9を充填空間S内に収納できる。
【0051】
更に、この場合、アーム部6dで取り囲まれた内側にリング部材7を配置して、当該リング部材7とアーム部分6dとを、互いに係止部C3,C4によって固定保持すると共に、当該引っ掛かりがリング部材7の押し込みにより解除されてアーム部6dの内側への変形が許容されるようにすれば、内部スライダ6をシリンジ5に対して強固に固定させつつ、プランジャ2と一体化した後は、プランジャ2と共に容易に引き抜くことができる。
【0052】
更に、本形態の如く、シリンジ5に外部スライダ11を設け、この外部スライダ11とプランジャ2とを、互いに係止部C7,C8によって固定保持することで、シリンジ5に対してプランジャ2を固定保持すれば、誤って廃棄の際にプランジャ2を押し込むようなことがあっても、ニードル9がシリンジ5から飛び出すことがない。また、この場合、本形態のように予めシリンジ5内に液体を充填しておくができる。
【0053】
また、本発明に従えば、外部スライダ11をフランジ5aに対して固定することができる。
【0054】
図8〜13は、本発明の第2の形態である。本形態は、第1の形態の変形例であって、予め液体Cが充填されたタイプである。なお、以下の説明において、第1の形態と同一の部分は、同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0055】
本形態では、図8に示すように、未使用の状態では、シリンジ5の貫通孔A2を通してキャップ13が取り付けられている。キャップ13は、図9に示すように、フランジ13aを有し、このフランジ13aが内部スライダ6の環状溝に形成された突起6p3により嵌合保持されている。ニードル9は、ベース10に取り付けられたカバー14によって保護された状態で、キャップ13を取り外して取り付けられる。ニードル9の取り付けは、ベース10に設けられたフランジ10aを突起6p3に嵌合させることで行われる。
【0056】
フランジ5aと外部スライダ11にはそれぞれ、図10に示すように、係止部C9,C10が設けられている。係止部C9,C10は、外部スライダ11の移動により互いに引っ掛かることで、フランジ5aに対して外部スライダ11を固定保持する。
【0057】
本形態では、図10に示すように、フランジ5aに設けた係止部C9は、フランジ5aに形成されたスリット5sにより形作られた片持ち支持部5fで構成されている。片持ち支持部5fは、環状リブ5d1側から外部スライダ11に向かって傾斜する傾斜面5f1を有し、その先端5f2が平坦面を構成する。また、外部スライダ11に設けた係止部C10は、縦リブ11fで構成されている。縦リブ11fは、周壁11aからフランジ5aに向かって傾斜する傾斜面11f1を有し、その先端部分が段部11f2を構成する。
【0058】
外部スライダ11の内周縁部11eがプランジャ2の溝3eに引っ掛らない状態では、図8等に示すように、外部スライダ11の傾斜面11f1がフランジ5aの傾斜面5f1と合わさることで、外部スライダ11の移動を許容する。このため、外部スライダ11を移動させて外部スライダ11の内周縁部11eがプランジャ2の溝3eに引っ掛ると、外部スライダ11の縦リブ11fが片持ち支持部5fを外側に押し退けて乗り越えた後、図13等に示すように、外部スライダ11の段部11f2にフランジ5aの先端5f2がつっかえる。これにより、外部スライダ11は、図13等に示すように、内周縁部11eが溝3eに引っ掛かった状態のまま、シリンジ5に対して固定保持されて戻ることがない。
【0059】
ここで、本形態の作用を説明する。
【0060】
本形態では、当初外部スライダ11は、図8(a)に示すように、開口部A5がシャフト3と同軸上にあるため、プランジャ2の押し込みは可能である。しかし、シリンジ5には予め液体Cが充填されているため、プランジャ2を押し込むことはできない。即ち、プランジャ2は、図8に示すように引き出した状態で固定されている。
【0061】
そこで、使用者がシリンジ5からキャップ13を取り除いてニードル9を取り付けると、ニードル9からの注出が可能になるため、プランジャ2を押し込むことができる。この押し込みをいっぱいまで行って、ニードル9から液体を注出すると、図12に示すように、第1の形態と同様、プランジャ2と内部スライダ6とが一体化する。
【0062】
このとき、リング部材7と内部スライダ6との引っ掛かりも、第1の形態と同様、解除されるため、アーム部6dの内側への変形も許容される。このため、プランジャ2を引き戻せば、第1の形態と同様、内部スライダ6がシリンジ5の突起5p1を乗り越えることで、図13に示すように、ニードル9は、シリンジ5内に収納される。
【0063】
次いで、外部スライダ11を移動させれば、図13に示すように、外部スライダ11の内周縁部11eがプランジャ2の溝5eに嵌合することで、プランジャ2の押し込みを阻止すると同時に、外部スライダ11の段部11f2にフランジ5aの先端5f2がつっかえることで、外部スライダ11は、戻ることなく、シリンジ5に対して固定保持される。
【0064】
本形態の如く、シリンジ5及び外部スライダ11にそれぞれ、外部スライダ11をシリンジに対して固定保持する係止部C9,C10を設ければ、誤って廃棄の際に外部スライダ11を動かそうとしても、外部スライダ11はロックされた状態となるので、プランジャ2の押し込みを防止することができる。また、本形態も、第1の形態のように予めシリンジ5内に液体を充填しておくができる。
【0065】
なお、外部スライダ11は、本形態の如く、使用者が注出の際に指を掛けるフランジ5aを流用すれば、操作性やレイアウト性に有効であるが、本発明に従えば、シリンジ5に別途、外部スライダ11を保持する部分を設けることもできる。また、上述の各形態では、シリンジ5の内面には、開口部A1の近傍に、環状の抜け止め突起5p2が設けられている。これにより、プランジャ2は、その引き抜きに対して抜け止め保持されている。
【0066】
更に、本発明は、予めプランジャ2を押し込んだ場合にも適用することができる。
【0067】
図14〜16は、本発明の第3の形態である。本形態は、液体を別途吸入するタイプであり、液体は、アンプル等の容器から充填する。なお、以下の説明において、第1の形態と同一の部分は、同一の符号をもって、その説明を省略する。
【0068】
本形態では、プランジャ2に設けたフランジ2fとシリンジ5に設けたフランジ5aとの間に、ストッパ15が設けられている。ストッパ15は、プランジャ2に着脱可能に嵌合してその押し込みを阻止する。
【0069】
本形態では、ストッパ15は、図15に示すように、シャフト3に着脱可能に嵌合するC字断面形状の本体15aと、この本体15aに繋がる摘み15bとを有する。これにより、使用者は、摘み15bを用いて、ストッパ15をシャフト3に嵌合させれば、本体15aの長さD分だけ、プランジャ2を引き出した状態でシリンジ5に対して位置決めできる。
【0070】
ここで、本形態の作用を説明する。
【0071】
本形態では、図14に示すように、プランジャ2は、ストッパ15によって予め長さDを残してシリンジ5に押し込まれた状態にある。また、外部スライダ11も、その開口部A4がシャフト3と同軸上となる位置にあるため、プランジャ2の引き出しは可能である。このため、使用者がこのままプランジャ2を引けば、図16に示すように、アンプル等の容器から液体をシリンジ5内に充填することができる。
【0072】
その後、ストッパ15をシャフト2から取り外せば、第2の形態と同様、図12に示すように、プランジャ2をいっぱいまで押し込むことで、ニードル9から液体を注出できると共に、プランジャ2と内部スライダ6とを一体化できる。このため、プランジャ2を引き戻せば、ニードル9は、第2の形態と同様、図13に示すように、シリンジ5内に収納される。
【0073】
そして、第2の形態と同様、外部スライダ11を外向きに移動させれば、プランジャ2の押し込みが阻止されると共に、外部スライダ11は、シリンジ5に対して固定保持される。
【0074】
本形態の如く、シリンジ5とプランジャ2との間に、当該プランジャの押し込みを阻止するストッパ15を設ければ、予めプランジャ2を押し込んだ場合でも、ニードル9をシリンジ5内に収納できる。このため、本形態は、液体を吸入して使用する場合に有効である。また、本形態によれば、製品としての小型化を図ることができる。
【0075】
上述したところは、本発明の一形態を示したにすぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。各形態に採用された各構成はそれぞれ、互いに適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、シャフトの先端にピストンが設けられたプランジャと、ピストンを収納して内容物の充填空間を形成し先端に充填空間を外界に通じさせる貫通孔が形成されたシリンジと、シリンジから突出するニードルを有するものであれば、医療分野は勿論、様々な分野に採用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 注射器
2 プランジャ
3 シャフト
4 ピストン
5 シリンジ
6 内部スライダ
7 リング部材
8 Oリング
9 ニードル
10 ベース
11 スライダ
13 キャップ
15 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトの先端にピストンが設けられたプランジャと、ピストンを収納して内容物の充填空間を形成し先端に充填空間を外界に通じさせる貫通孔が形成されたシリンジと、充填空間内を移動可能に保持される内部スライダとを有し、
内部スライダとプランジャとにそれぞれ、当該プランジャの押し込みにより互いに固定保持される係止部を設け、内部スライダにニードルを取り付けることにより、貫通孔を通して外界に突出するニードルをプランジャの引き戻しにより充填空間内に収納可能にしたことを特徴とする注射器。
【請求項2】
請求項1において、内部スライダにシリンジ軸線に沿って延在する複数のアーム部分をシリンジの内径周りに間隔を空けて設けると共に、当該アーム部分とシリンジとにそれぞれ、互いに固定保持される係止部を設けたことを特徴とする注射器。
【請求項3】
請求項2において、アーム部分で取り囲まれた内側に、当該アーム部分の内側への変形を阻止するリング部材を配置すると共に、当該リング部材とアーム部分とにそれぞれ、互いに固定保持されると共に当該固定がリング部材の押し込みにより解除されてアーム部分の内側への変形を許容する係止部分を設けたことを特徴とする注射器。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、プランジャを通す開口部が形成されてシリンジを移動可能な外部スライダを有し、当該外部スライダとプランジャとにそれぞれ、外部スライダの移動により互いに 固定保持される係止部を設けたことを特徴とする注射器。
【請求項5】
請求項4において、外部スライダとシリンジとにそれぞれ、外部スライダの移動により互いに固定保持される係止部を設けたことを特徴とする注射器。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項において、内部スライダは、別体のニードルを取り付け可能とするものであることを特徴とする注射器。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項において、シリンジとプランジャとの間に、当該プランジャに着脱可能に嵌合してその押し込みを阻止するストッパを設けたことを特徴とする注射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−139324(P2012−139324A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293356(P2010−293356)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】