説明

洋式便器の便座洗浄装置に於ける便座収納方法

【課題】本発明は洗浄室が低く且つ奥行きも少なくしてコンパクト化し、乗物用などにも便座洗浄装置を設置させることが可能となる洋式便器の便座洗浄装置に於ける便座収納方法を提供することを目的とする。
【解決手段】便座2の前部が持上げられるように回転すると共に洗浄室3の下方へ移動しながら便座2が収納される便座収納方法とする。また前記便座2の後端に回転軸4を固着すると共にその回転軸4の端部に歯車5を固着させ、洗浄室3の下部にラック部6を傾斜させて配置し、歯車5がラック部6と噛合しながら便座2が洗浄室3に立設状態で収納される機構を用いると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使用後の便座を自動的に洗浄して乾燥させるための洋式便器の便座洗浄装置に於ける便座収納方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋式便器の便座洗浄装置に於いて、便座表面を一気に洗浄した後、乾燥させるものや、便座を持上げて立設した状態で且つ密閉状態で洗浄液を噴射し、蒸気又はエアを噴射して乾燥させるものなど多くの提案がなされている。特に簡単な構造で且つ小型化したものとして、特開昭63−97124号がある。この構造は、便器の後部領域に鉛直に配置されその前面の少なくとも一部に出入用トラップドアが形成された密閉容器と、便器上に水平に載置された使用位置から密閉容器内に鉛直に配置される洗浄位置まで便座を案内し出入用トラップドアの開閉を同時に制御すべく機能する移動手段であって、連結手段によって便器の後部領域と出入用トラップドアとに連結され鉛直方向で上下に移動すべくモーター駆動されるアセンブリを内包する移動手段と、密閉容器に内蔵され洗浄水を便座に噴出すべく構成された洗浄手段と、密閉容器内で空気を循環させるように構成された乾燥手段と、モーター駆動されるアセンブリと洗浄手段と乾燥手段とのタイミング制御手段とを組み合わせて有する構造としたものである。
【0003】
しかしながら特開昭63−97124号は、便座の後部が引上げられて密閉容器内に且つ鉛直に収納されるが、この時、便座の前部下面が便器表面を摺動するため、便座の下面が汚れていると便器表面を毎回汚れが塗布された状態となってしまう恐れがあると共に便座下面と便器表面に硬いゴミや砂状のゴミなどが付着していると、便器表面に、擦り傷やペーパーを掛けたような艶消し状の微小な傷を付ける恐れがあった。更に便座表面は毎回トラップドアの裏面に接触して擦れるため、便器表面と同様に、トラップドアの裏面に汚れが付着すると毎回汚れが便座表面に塗布された状態となってしまう恐れがあると共にトラップドアの裏面に硬いゴミや砂状のゴミなどが付着していると、便座表面には、擦り傷や艶消し状の微小な傷が付き、便器全体のイメージダウンとなる恐れがあった。又、便座が密閉容器の内部で洗浄された後に乾燥しても、便座を完全に乾燥させるためには時間が長く掛かると共に洗浄水が下方へ流れて集められるため、便座前側及びトラップドア下部に水滴が残り易く、且つ、トラップドア下部と便座表面が接触して便器にセットされるため、便座表面に水滴が残って完全な乾燥が難しいものであった。
【0004】
このため、出願人が特願2009−206748に於いて、便座の表面側と裏面側の洗浄を同時に行うと共に便座の乾きを早めて完全に乾燥させることが可能で、且つ、洗浄後による便座の汚れや擦り傷などが付かず、見た目が良く、更に洗浄水や温風が人の背中に向って出る恐れもなくなると共に簡単な構造で行える洋式便器の便座洗浄装置を提供したところである。しかしながら特願2009−206748は、立設した便座を水平移動させるため、洗浄室を小型化するのが難しく、設置スペースの少ない場所での設置が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−97124号公報
【特許文献2】特願2009−206748号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は洗浄室が低く且つ奥行きも少なくしてコンパクト化し、乗物用などにも便座洗浄装置を設置させることが可能となる洋式便器の便座洗浄装置に於ける便座収納方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は便座洗浄装置に於いて、便座の前部が持上げられるように回転すると共に洗浄室の下方へ移動しながら便座が収納される便座収納方法と成す。また前記便座の後端に回転軸を固着すると共にその回転軸の端部に歯車を固着させ、洗浄室の下部にラック部を傾斜させて配置し、歯車がラック部と噛合しながら便座が洗浄室に立設状態で収納される機構を用いると良い。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のように洋式の便器(1)の便座(2)を持上げる共に洗浄室(3)へ立設した状態で収納させ、洗浄室(3)内で便座(2)を洗浄・乾燥する便座洗浄装置に於いて、便座(2)の前部が持上げられるように回転すると共に洗浄室(3)の下方へ移動しながら便座(2)が立設状態で収納されることにより、洗浄室(3)が低く且つ奥行きも少なくしてコンパクト化し、乗物用などにも便座洗浄装置を設置させることが可能となる。また便器(1)自体をコンパクト化することも可能である。
【0009】
請求項2のように便座(2)の後端に回転軸(4)を固着すると共にその回転軸(4)の端部に歯車(5)を固着させ、洗浄室(3)の下部にラック部(6)を傾斜させて配置し、歯車(5)がラック部(6)と噛合しながら便座(2)が洗浄室(3)に立設状態で収納される機構を用いることにより、簡単な構造で確実に洗浄室(3)へ便座(2)を立設状態で収納することが出来ると共に製作費を安くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明方法の実施形態の動作を示す説明図である。
【図2】本実施形態で用いる便座洗浄装置の要部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
出願人が特願2009−206748で提案した便座洗浄装置をコンパクト化し、用途を広げるために、便座(2)の前部が持上げられ、且つ、便座(2)が洗浄室(3)の下方へ移動しながら立設されて収納する便座収納方法と成すことにより、実現した。
【実施例1】
【0012】
図1、図2は本発明方法の1実施例を示す図であり、この図の番号について説明する。(1)は洋式の一般的な便器であるが、該便器(1)の後方を短くしたものとしても良い。(2)は便器(1)上から持上げ可能に取付けられた便座であり、該便座(2)の後端部は回転軸(4)で貫通して固定されている。(3)は前面に自動開閉戸が備えられた密閉可能な洗浄室であり、該洗浄室(3)は便器(1)の後部に配置している。また前記自動開閉戸が開かれた時は、便座(2)が余裕を持って洗浄室(3)の内部に収納される広さが確保されている。(5)は回転軸(4)の両端部に固着する扇状の歯車であり、該歯車(5)は扇状に限定されるものではなく、一般の円形歯車を使用しても良い。尚、前記歯車(5)は回転軸(4)の中央に1つ固着させたものとしても良い。(6)は歯車(5)と噛合するラック部であり、該ラック部(6)は後方(右側)下方へ傾斜されて配置している。このラック部(6)は三角状の台の斜面に平歯部を形成或いは平板歯車自体を固定させたものとするのが良い。又、前記ラック部(6)の傾斜を大きく(急勾配に)すると、洗浄室(3)の奥行きを傾斜に応じて短く(狭く)することが出来るものとなる。
【0013】
尚、前記便器(1)の便座(2)を持上げる共に洗浄室(3)へ立設した状態で収納させ、密閉された洗浄室(3)内で便座(2)を洗浄・乾燥する方法は、一般的に行われている表面側の洗浄方法で良いが、出願人が提案した特願2009−206748と略同一とするのが好ましい。また便座収納手段の基本構成は、出願人が提案した特願2009−206748と略同一のものを用いれば良い。又、図示しないガイド部材は特願2009−206748と略同一の基本構成のものを用いれば良いが、単に歯車(5)の両側をガイドする板状のものが突出されたものを用いても良い。
【0014】
次に本発明の便座収納方法を図1に基づいて説明する。先ず使用後に人が便器(1)から離れると、図示しないセンサーからの入力により、図示しない制御ボックスで、便座(2)を収納する機構へ指令が送られる。すると図示しない駆動モーターで回転軸(4)が回転され、この歯車(5)が回転すると共に便座(2)が図1に示す点線矢印のように回転しながら持上げられる。更に前記歯車(5)は傾斜したラック部(6)の上を噛合するため、回転軸(4)は回転しながら後方(右側)下方へ移動する。つまり、便座(2)は先端が持上げられて2点鎖線の位置から太い実線の位置まで来ると共に歯車(5)がラック部(6)の中央位置まで移動するのである。更に歯車(5)が回転しながらラック部(6)の上を噛合して行くと、便座(2)は立設した中線位置で洗浄室(3)の内部に収納されるのである。そして駆動モーターは停止するのである。この時、前記回転軸(4)又は歯車(5)は図示しないガイド部材によってスムーズに移動するように配置しておくと良い。
【0015】
尚、前記便器(1)の便座(2)を持上げる共に洗浄室(3)へ立設した状態で収納する本発明方法は、回転軸(4)の両端部に固着する扇状の歯車(5)を、後方下方へ傾斜させて配置したラック部(6)と噛合させる機構に限定されるものではなく、他の機構で上記同様に、便座(2)の前部が持上げられるように回転すると共に洗浄室(3)の下方へ移動しながら便座(2)が立設状態で収納される動作となるものであれば良い。
【0016】
前記回転軸(4)が停止後、特願2009−206748と同一に、密閉した洗浄室(3)で便座(2)は洗浄液によって洗浄され、且つ、エアの噴射によって乾燥が行われるのである。そして、乾燥が終了した後は、制御ボックスの指令により、自動開閉戸を開けて、立設状態の便座(2)を徐々に倒しながら洗浄室(3)から出すと共に、便座(2)を便器(1)上に載置させる。その後、自動開閉戸を閉じるのである。このように上記工程を繰返すのである。尚、前記便座(2)の洗浄は使用毎に行うのが好ましいが、人の数を検知して数人毎に洗浄するようにしても良い。
【0017】
このように本発明方法は、便座(2)の前部が持上げられるように回転すると共に洗浄室(3)の下方へ移動しながら便座(2)が収納されるため、洗浄室(3)が特願2009−206748のものよりも低くしてコンパクト化でき、新幹線や飛行機などの乗物用便器として設置させることが可能なものとなる。また便座(2)を洗浄室(3)に収納する際に、前記便座(2)の後端に回転軸(4)を固着すると共にその回転軸(4)の端部に歯車(5)を固着させ、洗浄室(3)の下部にラック部(6)を傾斜させて配置し、歯車(5)がラック部(6)と噛合しながら便座(2)が洗浄室(3)に立設状態で収納される機構を用いることにより、洗浄室(3)の奥行きがより少なくすることができ、一層のコンパクト化が可能なものとなるのである。
【符号の説明】
【0018】
1 便器
2 便座
3 洗浄室
4 回転軸
5 歯車
6 ラック部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋式の便器(1)の便座(2)を持上げる共に洗浄室(3)へ立設した状態で収納させ、該洗浄室(3)内で前記便座(2)を洗浄・乾燥する便座洗浄装置に於いて、前記便座(2)の前部が持上げられるように回転すると共に前記洗浄室(3)の下方へ移動しながら前記便座(2)が立設状態で収納されることを特徴とする洋式便器の便座洗浄装置に於ける便座収納方法。
【請求項2】
前記便座(2)の後端に回転軸(4)を固着すると共にその回転軸(4)の端部に歯車(5)を固着させ、前記洗浄室(3)の下部にラック部(6)を傾斜させて配置し、前記歯車(5)が前記ラック部(6)と噛合しながら前記便座(2)が前記洗浄室(3)に収納される請求項1記載の洋式便器の便座洗浄装置に於ける便座収納方法。


【図1】
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【図2】
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