説明

洋式便器の蓋または便座の開閉装置

【課題】 洋式便器の蓋や便座を開閉する際かがむのを避ける従来の洋式便器は、専用の蓋や便座を使用したり、蓋や便座に金具を取り付けたりしなければならない。
【解決手段】 基台11上に直立し、基台11との離間距離を調節可能な外筒12と、外筒12内を移動可能なロッド13と、ロッド13に備えられたラック13aと、ラック13aと噛み合うピニオン14と、ピニオン14と結合し洋式便器19の蓋または便座19aを挟む挟み18と、ロッド13に弾性力を加える弾性体16と、弾性体16の弾性力を調節する調節手段17と、ロッド13と結合したペダル15とを備えた洋式便器の蓋または便座の開閉装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋式便器の蓋または便座の開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
洋式便器の蓋や便座は通常手で開閉しているが、老人や腰を痛めた人などにとっては、かがんで蓋や便座を開くことは苦痛である。かがむのを避けるため、ラックを有する直立した操作桿、ラックと噛み合うピニオン、ピニオンと噛み合う歯車を有する蓋と便座を設け、操作桿を手で引き上げて蓋と便座を開く考案が提案されている。(特許文献1)。また直立したラック、蓋と便座に取り付けたラック、両ラックと噛み合うピニオン、直立したラックの下端に取り付けたペダルを設け、ペダルを足で踏んで蓋と便座を開く考案が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】実開昭51−70048号公報
【特許文献2】実開昭52−120437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の考案は、操作桿を手で引き上げるのでかがむ必要はないが、操作桿が便器の後方横にあるため老人や腰を痛めた人などにとっては操作しにくいと思われる。また蓋と便座は支点に歯車を有する特別な構造であるため通常の蓋と便座は使用できない。そのため専用の蓋と便座に交換しなければならない。
【0004】
特許文献2の考案は、ペダルを足で踏むのでかがむ必要はないが、ペダルを踏むときバネを圧縮しなければならない。したがって蓋または便座の重さにバネを圧縮する力が加わるためペダルを踏むのに強い力が必要である。また蓋または便座が戻るとき、バネの解放される力が加わるため、蓋や便座が勢いよく落下して便器に衝突するおそれがある。さらに蓋と便座にピニオンを取り付ける工事が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置は、基台と、前記基台上に直立した外筒と、前記外筒内を移動可能なロッドと、前記ロッドに備えられたラックと、前記外筒に支持され前記ラックと噛み合うピニオンと、前記ピニオンと結合し洋式便器の蓋または便座を挟む挟みと、前記ロッドに下向きの弾性力を与える弾性体と、前記ロッドと結合したペダルとを備えた、洋式便器の蓋または便座の開閉装置である。
【0006】
上記の構成によりペダルを踏むとロッドおよびラックが下降し、ピニオンおよび挟みが回転し、挟みに挟まれた蓋または便座が開くので、蓋または便座を開く際にかがむ必要がない。さらにロッドが下降する方向すなわち蓋または便座が開く方向に弾性力が加えられているので、従来品に比べペダルを踏む力が少なくてよい。
【0007】
また取り付けは挟みで既存の便器の便座または蓋を挟むだけであるから、便座や蓋を専用品に交換したり、特別な器具の取り付け工事をしたりする必要がない。また挟みを便座または蓋から抜けば即座に原状回復でき傷を残すことはない。したがって従来品よりはるかに経済的でしかも手軽に使える。
【0008】
請求項2に記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置は、請求項1に記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置において、前記基台からの前記外筒の高さを調節可能な洋式便器の蓋または便座の開閉装置である。
【0009】
上記の構成により、蓋または便座の床面からの高さが異なる種々の洋式便器に対しても、基台からの外筒の高さを調節することで、挟みの高さを蓋または便座の高さと合わせることができる。
【0010】
請求項3に記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置は、請求項1または2のいずれかに記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置において、前記弾性力を調節する調節手段を備えた洋式便器の蓋または便座の開閉装置である。
【0011】
上記の構成により、重量の異なる種々の蓋または便座に対しても、弾性体の弾性力を調節することで、蓋または便座の重量と弾性力を釣り合うようにできる。
【0012】
請求項4に記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置は、請求項1〜3のいずれかに記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置において、閉じた位置にある前記蓋または便座の重量と前記弾性力がほぼ釣り合う洋式便器の蓋または便座の開閉装置である。
【0013】
上記の構成により、閉じた位置にある蓋または便座の重量と弾性力がほぼ釣り合うので、ペダルを踏む力が僅かでよい上に、蓋または便座を閉じるとき途中で手を放しても蓋または便座は便器と強く衝突せず静かに閉じる。したがって蓋または便座を閉じるときも最後まで手で支える必要がないのでかがむ必要がない。
【発明の効果】
【0014】
ペダルを踏むと挟みに挟まれた蓋または便座が開くので、蓋または便座を開ける際にかがむ必要がない。このとき蓋または便座が開く方向に弾性力が加えられているのでペダルを踏む力が少なくてよい。また挟みに既存の便器の蓋または便座を挟むだけであるから、蓋や便座を専用品に交換したり、蓋や便座に特別な器具の取り付け工事をしたりする必要がない。したがって従来品よりはるかに経済的で手軽である。
【0015】
閉じた位置にある蓋または便座の重さと弾性力がほぼ釣り合うので、ペダルを踏む力が僅かでよい上に、蓋または便座を閉じるとき途中で手を放しても静かに着地する。したがって蓋または便座を閉じるときもかがむ必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の洋式便器の蓋または便座の一実施例の開閉装置10の(a)正面図、(b)側面図である。本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置10では床に置かれた基台11上に外筒12が直立している。床からの外筒12の高さは下端近くの長孔12aをビス12bで基台11上に止める位置で調節できる。外筒12の内部にはロッド13があり、外筒12の内部を上下に移動できる。ロッド13の一部にラック13aが設けられており、外筒12に支持されたピニオン14と噛み合っている。ロッド13の下端13bはペダル15とピン結合している。ペダル15の端は基台11にヒンジ15aで結合している。ロッド13の上端13cは圧縮バネ16の下端で押さえられており、圧縮バネ16の上端は外筒12に取り付けられた調節ねじ17で押さえられている。調節ねじ17により圧縮バネ16がロッド13の上端13cを押圧する力を調節する。ピニオン14の軸先端にはバネ性を持つ挟み18が備えられている。挟み18で便器19の便座19aの支持軸付近を、ピニオン14と便座19aの支持軸が一致する位置で挟んでおく。(なお図1では挟み18は便座19aを挟んでいるが、挟む対象は蓋(図示しない)でもよい。)床からの外筒12の高さ調節(長孔12aをビス12bで止める位置で調節)はピニオン14と便座19aの支持軸を一致させるのに用いる。圧縮バネ16は調節ねじ17により、僅かの力をかければ便座19aが開く強さに圧縮されている。
【0017】
図1ではロッド13の上方に圧縮バネ16を設けているが、ロッド13の下方に引っ張りバネを設けてもよい。いずれの場合もバネの力が蓋または便座を開く方向に働くように設定する。なおバネ以外にゴムブロック(圧縮の場合)、ゴムひも(引っ張りの場合)なども使用可能である。
【0018】
図2は挟み18とピニオン14の斜視図、図3はペダル15の斜視図である。
【0019】
本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置10の機能を説明する。便座19aを開くときは図1に矢印で示すようにペダル15を踏む。するとペダル15とピン結合しているロッド13が下降する。このときラック13aも一緒に下降するので、ラック13aと噛み合ったピニオン14が矢印の方向に回転する。ピニオン14の軸と便座19aの支持軸は一致しているので、ピニオン14の回転が挟み18に伝わり便座19aが開く。閉じた位置にある便座19aの重量と圧縮バネ16はほぼ釣り合うように圧縮バネ16の押圧力が調節ねじ17で調節されているので僅かの力をかければ便座19aは開く。そのためペダル15を踏む力は僅かでよい。このようにして便座19aを開くに際してペダル15を軽く踏むだけよいのでかがむ必要もなく老人や腰を痛めた人に好適である。
【0020】
便座19aを閉じるときは便座19aの端を手で持って閉じる。従来は便座19aを閉じるとき便座19aが落下して便器19に衝突しないように、便座19aが便器19に接するまで手で持っている必要があった。このときもかがむ必要があるので老人や腰を痛めた人などには苦痛であった。それに対し本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置10では便座19aが閉じるほど圧縮バネ16が圧縮され、バネの弾性力で便座19aを支えることができる。そのため閉じる途中で便座19aを手放しても便座19aは便器19に強く衝突することなく静かに閉じる。そのためかがむのが苦痛な人が閉じる途中で便座19aを閉まる途中で手放しても問題ない。
【0021】
本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置10は既存の便器19の便座19a(または蓋)を挟み18で挟むだけであるから、便座19aや蓋を専用品に交換したり、それらに特別な器具の取り付け工事をしたりする必要がない。また挟み18を便座19aまたは蓋から抜けば即座に原状回復でき便座19aまたは蓋に傷を残すことはない。したがって経済的で手軽である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
老人や腰を痛めた人などにとって、かがんで洋式便器の蓋や便座を開くのは苦痛である。本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置はペダルを踏むと蓋または便座が開くので、かがむ必要がない。このとき蓋または便座が開く方向に弾性力が加えられているのでペダルを踏む力が少なくてもよい。また挟みに既存の便器の便座または蓋を挟むだけであるから、便座や蓋を専用品に交換したり、それらに特別な器具の取り付け工事をしたりする必要がない。
【0023】
本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置では閉じた位置にある蓋または便座の重さと弾性力がほぼ釣り合っているので、ペダルを踏む力が僅かでよい上に、蓋または便座を閉じるとき途中で手を放しても静かに閉まる。したがって蓋または便座を閉じるときもかがむ必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置の正面図、側面図
【図2】本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置の挟みとピニオンの斜視図
【図3】本発明の洋式便器の蓋または便座の開閉装置のペダルの斜視図
【符号の説明】
【0025】
10 洋式便器の蓋または便座開閉装置
11 基台
12 外筒
12a 長孔
12b ビス
13 ロッド
13a ラック
13b ロッドの下端
13c ロッドの上端
14 ピニオン
15 ペダル
15a ヒンジ
16 圧縮バネ
18 挟み
19 便器
19a 便座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、前記基台上に直立した外筒と、前記外筒内を移動可能なロッドと、前記ロッドに備えられたラックと、前記外筒に支持され前記ラックと噛み合うピニオンと、前記ピニオンと結合し洋式便器の蓋または便座を挟む挟みと、前記ロッドに下向きの弾性力を与える弾性体と、前記ロッドと結合したペダルとを備えた、洋式便器の蓋または便座の開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置において、前記基台からの前記外筒の高さを調節可能な洋式便器の蓋または便座の開閉装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置において、前記弾性力を調節する調節手段を備えた洋式便器の蓋または便座の開閉装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の洋式便器の蓋または便座の開閉装置において、閉じた位置にある前記蓋または便座の重量と前記弾性力がほぼ釣り合う洋式便器の蓋または便座の開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−61947(P2008−61947A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245716(P2006−245716)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(506307511)
【Fターム(参考)】