説明

洋風どら焼

【課題】機械化による量産が可能で、油脂分を含む焼き皮を使用した濃厚でしっとりした食感のどら焼を提供する。
【解決手段】本発明による洋風どら焼は、小麦粉と砂糖と卵と油脂を含む生地を使用して焼き上げられた2枚の焼き皮と、焼き皮によって挟み込まれたフィリング材からなり、焼き皮は、フィリング材が充填される中央凹部と、中央凹部の周囲に形成された互いに重ね合わされる環状凸部を有している。焼き皮は、層状に1層ずつ重ね焼きされ、焼き色の付いた複数の層からなるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂分を含む生地を使用して焼き皮を形成し、濃厚でしっとりした食感が得られるようにした洋風どら焼に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、どら焼の皮の生地は、小麦粉、砂糖及び卵の3つの素材をほぼ同率(重量比)に混ぜ合わせ、これに水、膨張剤、水あめ、塩、蜂蜜、粉乳等を少量加えて混練したものである。どら焼の作り方を図9の(a)〜(d)に示す。まず、厚みのある銅板または鉄板50を170〜190℃に熱しておいて、上側の平坦な面に生地1を定量分滴下して、丸く薄く伸ばして約2分程度焼く。次に、ひっくり返して数十秒の裏焼きを行なう。このようにして2枚の焼き皮15を2枚作る。どら焼は、図9(c)に示すように、一方の焼き皮15に小倉餡等のフィリング材10を載せ、他方の焼き皮15でフィリング材10を挟んだものである。高級品の場合、図9(d)に示すように、周囲7〜8mmを耳締め器55で閉じ、フィリング材10の乾燥を防いでいる。
【0003】
フィリング材には小倉餡が圧倒的に多い。近年、フィリング材として生クリームと小倉餡を混ぜたものや、栗やイチゴを入れたもの、あるいはチーズやカスタードクリームを入れたものなど、バラエティ化が進んでいる。(特許文献1参照)しかし、どら焼の焼き皮は、素材配合に多少の違いがあるもののほとんど変わっていない。小麦粉、砂糖及び卵に油脂(例えばバター)を加えた生地としては、タルトやバウムクーヘンが知られる。
【0004】
タルトは、卵の量を少なくして練り固め、板状にした生地を円形にくり貫いて、例えばアルミカップの内側に貼り付けて作る。このような貼り付け作業は機械化が難しい。タルトの機械化に適した作り方もある。図10は、タルトのお菓子容器を機械的に作るようにした流れ図である。生地2の塊をメス金型51の内部に落とし、オス金型52でプレスして、タルトのお菓子容器53を成形し、これを焼成するものである。このやり方でどら焼の焼き皮を作ると、焼き皮の外縁部が薄くて丸まっているから、重ねた場合の安定感がなくずれたりするおそれもある。
【0005】
バウムクーヘンは、卵を多く使って流動性ある生地を作り、心棒を生地に浸漬して層を形成しながら焼くもので、円筒型のバウムクーヘンの内部に小倉餡を詰めたものなどがある。このようなやり方は、1つ1つを容器状に形作ることができない。以上のような事情があるけれども、食生活の変化に伴って、どら焼にも、バターなどの素材を使った焼き皮が求められている。
【特許文献1】実用新案登録第3104115号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、機械化による量産が可能で、油脂分を含む焼き皮を使用した濃厚でしっとりした食感のどら焼を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明による洋風どら焼は、小麦粉と砂糖と卵と油脂を含む生地を使用して焼き上げられた2枚の焼き皮と、前記焼き皮によって挟み込まれたフィリング材からなり、前記焼き皮は、前記フィリング材が充填される中央凹部と、前記中央凹部の周囲に形成された互いに重ね合わされる環状凸部を有していることを特徴とする。
【0008】
前記焼き皮が、層状に1層ずつ重ね焼きされ、焼き色の付いた複数の層からなることが好ましい。
【0009】
前記焼き皮は、中央凸部と、前記中央凸部の周囲に設けられた下り傾斜部と、前記下り傾斜部の周囲に設けられた環状凹部と、前記環状凹部の周囲に設けられた上り傾斜部と、前記上り傾斜部の周囲に設けられた外縁部とを有する皿状の金型に、流動性のある前記生地が滴下され、前記生地を包み込むように高温の熱気で焼き上げられることによって作られることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による請求項1のどら焼によれば、焼き皮に小麦粉と砂糖と卵と油脂を含む生地を使用したから、いわゆる洋風の新しい食感を得ることができる。焼き皮に中央凹部を設けたので、フィリング材が容易に充填できる。フィリング材がやわらかい場合でも横からこぼれでない。環状凸部を互いに重ね合わせることにより、フィリング材の乾燥を防ぐことができる。環状凸部の面を互いに重ね合わせるから、多少ずれても内部を封じることができる。中央凹部及び環状凸部は、耳締めで焼き皮を大きく変形させる必要がないから型崩れがない。
【0011】
本発明の請求項2によれば、焼き皮を1層ずつの重ね焼をしたので、お菓子の王様と言われるバウムクーヘンのような食感を得ることができる。1層ずつ焼くから、表面に焼き色がついて腰の強いものにできる。また、焼き色はタンパク質やアミノ酸が糖と結合する反応で、香ばしさもかもし出すことができる。
【0012】
本発明の請求項3によれば、焼き皮を作る金型は、皿状であるから流動性のある生地を容易に滴下でき、その周囲から高温の熱気で焼き上げることができる。また、傾斜部を設けたから、焼成した焼き皮を金型から容易に分離できる。そのため、どら焼を量産する自動機械などに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明による洋風どら焼を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明による洋風どら焼の外観図である。内部が見えるように一部分を切り取って表示している。洋風どら焼100は、直径が約90mm、厚さが約30mmである。フィリング材10は、2枚の焼き皮15が重ね合わされてできる中央凹部6の空間に充填される。中央凹部6は、上面から見て円形、楕円形、長円形、多角形、その他の形状に形成することができる。この中央凹部6の周囲には、当該中央凹部6を囲む環状凸部7が形成されている。環状凸部7は環状で一続きのものである。また、環状凸部7の重ね合わせ面の幅は、必ずしも一定の幅でなくてもよい。また、フィリング材10は小倉餡やクリームを使用することができる。フィリング材10の量が多いと環状凸部7が重なり合わず、フィリング材10が横からはみ出して見える。フィリング材10の量が少ないと、上側の焼き皮15がフィリング材10に接触しないので、上側の焼き皮15が動いて外れやすくなる。従って、フィリング材10は適量を充填することが好ましい。フィリング材10の周囲側面は、焼き皮15の環状凸部7が重なり合って閉じる。これにより、フィリング材10の乾燥を防いでいる。焼き皮15は、小麦粉と砂糖と卵と油脂であるバターをほぼ同率混ぜ合わせたものを焼き上げたものである。図1では、焼き皮15は、3層で構成した場合を示した。層4は、第1層4a、第2層4b、第3層4cからなる。それぞれ1層ずつ重ね焼きを行なって形成する。熱気の温度を上げて各層の表面に焼き色5を付けることもできる。焼き色はタンパク質やアミノ酸が糖と結合するメイラード反応と呼ばれ、香ばしさもかもし出すことができる。
【0015】
図2は、本発明による洋風どら焼の全体外観図である。洋風どら焼100は、上下に2枚の焼き皮15の間にフィリング材を挟んだものである。金型を使って焼き皮15を作っている。
【0016】
図3は、焼き皮の層が1層の場合の断面図である。上下の2枚の焼き皮15を示している。どちらも同じ作りである。下側の焼き皮15で説明すると、中央にフィリング材が収納される円形等の形状をした中央凹部6がある。この中央凹部6の周囲に環状凸部7がある。2枚の焼き皮15を上下に重ねた場合、環状凸部7が互いに重なり合う。焼き色5(点線で示す)が、高温の熱気による焼き上げで焼き皮15の表面に付けられる。
【0017】
図4は、焼き皮の層が3層の場合の断面図である。層は内側から1層ずつ焼いてゆくから、層ごとに焼き色5が付けられる。
【0018】
図5は、本発明による洋風どら焼の金型の平面図である。金型20は、円形等の皿状で、外側から、外縁部21、下り傾斜部22、次に環状凹部23があり、再び上り傾斜部24を経て、円形等の形状をした中央凸部25がある。なお、凸部と凹部は、金型を側面から見て、水平な中心線より上に出ているか、下にへこんでいるかで呼称している。
【0019】
図6は、図5の金型のX−X断面図である。中央凸部25は、焼き皮15のフィリング材が充填される中央凹部6に対応する箇所である。環状凹部23は、焼き皮15の環状凸部7に対応する箇所である。金型20の直径Aは100mmとした。中央凸部25の頂部の直径Bは50mmとした。中央凸部25の高さCは5mmとした。すなわち、これにより焼き皮15の中央凹部6の深さが5mmとなる。なおこの寸法は、従来のどら焼の大きさに合わせたもので、これに限定されるものではない。金型20は、その上側に生地を敷いて焼成する。下り傾斜部22と上り傾斜部24は、焼成した焼き皮を金型20から分離しやすくするためである。外縁部21の上面は、中央凸部25の上面と同じ水平な位置にある。このことは、中央凸部25の中央付近に滴下した生地は、環状凹部23に落ちて環状凹部23を埋め、外縁部21からこぼれ出ることになる。そのため、中央凸部25の生地に一定の厚みがあり、環状凹部23からあふれる前に焼き固めるのがよい。その場合、生地に流動性がありすぎると、すぐに平坦になってしまうので、生地は適度な粘性を有することが望ましい。
【0020】
図7は、本発明による洋風どら焼の焼き皮が1層の場合の製造工程図である。
焼き皮15と金型20は断面図で示している。焼き皮15を作る場合、生地は、小麦粉と砂糖と卵と油脂であるバターをほぼ同率(重量)混ぜ合わせたものを使用する。卵は黄身と白身に分け、卵黄とバターと小麦粉を攪拌し、これに泡立てた卵白を加えている。これにより生地は流動性を有するものになる。図7(a)は、デポジター30から、生地2を金型20に適量分だけ滴下させ伸ばす工程である。金型20はあらかじめ熱しておくとよい。生地には流動性があり、時間が経って平坦になれば、外縁部21からこぼれることになるから、その前に焼き上げることが望ましい。図7(b)は、焼成する工程である。焼成は高温の熱気60を生地2の表面に与えて行なう。熱気の温度は約200〜300℃で、焼く時間は約1〜2分である。層4の表面の焼き色5は、高温によって付けることができ、低温では焼き色5が付かない。生地2の厚さを10mmとすると、焼成によって膨らみ、15mm程度となる。
【0021】
図8は、本発明による洋風どら焼の焼き皮が複数層の場合の製造工程図である。生地は、小麦粉と砂糖と卵と油脂であるバターをほぼ同率(重量)混ぜ合わせたものである。卵は黄身と白身に分け、卵黄とバターと小麦粉を攪拌し、これに泡立てた卵白を加えて、生地に流動性を与えている。図8(a)は、デポジター30から、生地2を金型20に適量分だけ滴下させ、これを金型20の表面に薄く伸ばす工程である。金型20はあらかじめ熱しておくとよい。生地には流動性があるので伸ばすことは難しくない。また、生地2は適度な粘性もあるから、上り傾斜部24や下り傾斜部22の箇所が薄くなり過ぎないようにできる。
【0022】
図8(b)は、第1層4aを焼成する工程である。焼成は高温の熱気60を生地2の表面に与えて行なう。熱気の温度は200〜300℃で、焼く時間は約20〜30秒である。焼き色5は、このような高温によって付けることができる。生地2の厚さを2mmとすると、焼成によって膨らみ、3mm程度となる。
【0023】
図8(c)は焼成された第1層の表面に生地2をデポジター30から滴下し、薄く伸ばす工程である。図8(d)は、第2層4bを重ね焼きする工程である。焼き色5は、第2層4bの表面にも付けられる。図8(e)は焼成された第2層の表面に生地2をデポジター30から滴下し、薄く伸ばす工程である。図8(f)は、第3層4cを重ね焼きする工程である。焼き色5が、第3層4cの表面にも付けられる。図8(f)に示すように、焼き皮15は、ここでは3つの層4からなるようにした。なお、層4の層数は3層に限るものではない。第1層4a、第2層4b、第3層4cを各3mmとすると、焼き皮15の厚さは9〜10mmとなる。中央凸部25の高さが5mmであるから、焼き皮15の厚さを10mmとすると、焼き皮15の高さは中央付近で約15mmとなる。中央凸部25の上部の焼き皮15の厚さをより厚くなるよう生地2を滴下してもよい。これによりボリューム感を出すことができる。第1層4aを中央凸部25の上部のみに限定してもよい。これにより、焼き皮15の周囲をより薄くできる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によるどら焼は、焼き皮に小麦粉と砂糖と卵と油脂を含む生地を使用した洋風のどら焼であるから、フィリング材と組み合わせて、色々なバリエーションを実現できる。また、金型を使って焼成するので、量産にも適している。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による洋風どら焼の内部が見えるように一部分を切り取った外観図である。(実施例1)
【図2】本発明による洋風どら焼の全体外観図である。(実施例1)
【図3】本発明による焼き皮の層が1層の場合の断面図である。
【図4】本発明による焼き皮の層が3層の場合の断面図である。
【図5】本発明による洋風どら焼の金型の平面図である。(実施例1)
【図6】図5のX−X断面図である。
【図7】本発明による洋風どら焼の焼き皮が1層の場合の製造工程図である。(a)は、デポジター30から、生地2を金型20に適量分だけ滴下する工程である。(b)は焼き皮を焼成する工程である。
【図8】本発明による洋風どら焼の焼き皮が複数層の場合の製造工程図である。(a)は、デポジターから、生地を金型に滴下し表面に伸ばす工程である。(b)は、第1層4aを焼成する工程である。(c)は、焼成された第1層の表面に生地を滴下し伸ばす工程である。(d)は第2層4bを重ね焼きする工程である。(e)は焼成された第2層の表面に生地滴下し伸ばす工程である。(f)は、第3層を重ね焼きする工程である。
【図9】従来のどら焼の作り方を示す流れ図である。
【図10】従来のタルトのお菓子容器の作り方を示す流れ図である。(a)はメス金型に生地を投入する工程を示す。(b)は、オス金型で生地をメス金型の内側に伸ばす工程を示す。(c)は、生地がお菓子容器の形状に形作られる工程を示す。(d)は、オス金型をメス金型から離す工程を示す。
【符号の説明】
【0026】
1 焼き皮
2 生地
4 層
4a 第1層
4b 第2層
4c 第3層
5 焼き色
6 中央凹部
7 環状凸部
10 フィリング材
15 焼き皮
20 金型
21 外縁部
22 下り傾斜部
23 環状凹部
24 上り傾斜部
25 中央凸部
30 デポジター
50 銅板または鉄板
51 メス金型
52 オス金型
53 タルトのお菓子容器
55 耳締め器
60 高温の熱気
100 洋風どら焼
A 金型の直径
B 中央凸部の頂部の直径
C 中央凸部の高さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
小麦粉と砂糖と卵と油脂を含む生地を使用して焼き上げられた2枚の焼き皮と前記焼き皮によって挟み込まれたフィリング材からなり、
前記焼き皮は、前記フィリング材が充填される中央凹部と、前記中央凹部の周囲に形成された互いに重ね合わされる環状凸部を有していることを特徴とする洋風どら焼。
【請求項2】
前記焼き皮が、層状に1層ずつ重ね焼きされ、焼き色の付いた複数の層からなることを特徴とする請求項1に記載の洋風どら焼。
【請求項3】
中央凸部と、前記中央凸部の周囲に設けられた下り傾斜部と、前記下り傾斜部の周囲に設けられた環状凹部と、前記環状凹部の周囲に設けられた上り傾斜部と、前記上り傾斜部の周囲に設けられた外縁部とを有する皿状の金型に、流動性のある前記生地が滴下され、前記生地を包み込むように高温の熱気で焼き上げられることによって前記焼き皮が作られることを特徴とする請求項1に記載の洋風どら焼。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−306850(P2007−306850A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139279(P2006−139279)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000191157)株式会社マスダック (16)
【Fターム(参考)】