説明

洗い場拡張型浴室

【課題】 建物基礎に変更を加えることなく、換言するとコストの増加を招くことなく、洗い場の有効面積を広げ、車椅子や介護者と一緒でも快適に入浴できる洗い場拡張型浴室を提供する。
【解決手段】 入浴用品1を載置するためのカウンター2を、洗い場3に面する側壁4に、洗い場3側に突き出して設けている浴室であって、上記のカウンター2に対応する側壁4の位置を、外側に張り出して拡張空間部5に形成する。この拡張空間部5内に、上記のカウンター2を納めて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室に関し、更に詳しくは建築躯体を変更することなく、洗い場の床面積を広く確保できるよう形成した洗い場拡張型浴室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば浴室と脱衣室との間に、ニッチパネルを設置し、このニッチパネル内を収納スペースに形成した浴室や、側壁に設けた鏡の下方部を、斜め上向きに傾斜したことを特徴とする浴室は公知である(例えば特許文献1、2参照)。
そしてこれらの公知例に見られるように、従来、入浴用品を載せるためのカウンターは、通常、洗い場に面した側壁から洗い場側に突き出されて設けられている。
【0003】
ところで近時の高齢化社会においては、車椅子で入浴したり、介護者と一緒に入浴するケースが増えている。従って浴室は、車椅子で入浴しても狭くならないよう、洗い場が広く形成されているのが望ましい。
しかるに従来の浴室は、上記の通り、洗面器等を載せるカウンターが、洗い場に面する側壁から洗い場側に突き出されて設けられている。従って従来の浴室は、カウンターが突き出されている分だけ(通常、300mm程度)、洗い場の面積が狭くなるのを避けられず、その結果例えば車椅子で入浴するときなどに使い勝手が悪い、という問題点があった。
而してこの場合、浴室の建築躯体であるコンクリートの基礎や土台を壊したり、基礎を外側に拡げることによって洗い場を拡張するのでは、工事が大掛かりになり、コストが高く付くことになる。
【特許文献1】特開平11−62284号公報
【特許文献2】特開平7−79846号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来の実情に鑑み、提案されたものである。
従って本発明の解決しようとする技術的課題は、建物基礎に変更を加えることなく、換言するとコストの増加を招くことなく、洗い場の有効面積を広げ、車椅子や介護者と一緒でも快適に入浴できるよう形成した洗い場拡張型浴室を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するため、次のような技術的手段を採る。
即ち本発明は、図1等に示されるように、入浴用品1を載置するためのカウンター2が、洗い場3に面する側壁4に、洗い場3側に突き出されて設けられている浴室であって、上記のカウンター2に対応する側壁4の位置が外側に張り出されて拡張空間部5に形成され、この拡張空間部5内に上記のカウンター2が納められて設けられていることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
本発明の場合、拡張空間部5は、側壁4を形成する、例えば側壁パネル9自体を外側に凹ませて形成するのでも、或いはユニット化した別部材で形成するのでも良い。またここで、カウンター2が拡張空間部5内に納められて設けられている、とは、カウンター2によって洗い場空間を狭小化することがない状態を意味し、具体的には、カウンター2を、その前端2aが洗い場3側に突き出ないよう設けることで実現される。ただこの場合本発明は、例えば中央部、端部等の一部のみが若干突き出ている、或いは全幅に亘って極小さな寸法で突き出ている場合等、洗い場3の使い勝手を害さない範囲で、カウンター2の前端2aが洗い場3に僅かに突き出ている場合を除外するものではない。なお拡張空間部5の前面の横幅や高さは、適宜選定されるので良い。
【0007】
また本発明の場合、カウンター2は、着脱、且つ高さ調節自在に形成されているのが好ましい(請求項2)。
なぜならこれによると、入浴の支障になるときはカウンター2を取り外したり、カウンター2の高さを調節することができ、使い勝手が一層良くなるからである。
【0008】
また本発明は、拡張空間部5の上部に、鏡11が浴室内に向かって上り傾斜状に設けられ、この鏡11の傾斜角度が調節自在に形成されているのが好ましい(請求項3)。
なぜならこれによると、鏡11を拡張空間部5に、高さを大きく占めることなく配置でき、また角度を変えることができ、顔や身体をうつし易くなるからである。
【0009】
また本発明は、拡張空間部5の床6が、高さ調節自在の支持部材19で支持されているのが好ましい(請求項4)。
なぜならこれによると、拡張空間部5の床6の耐荷重性が高まり、床6に車椅子や入浴者の体重が加わっても、安心して入浴できるからである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、このようにカウンターに対応する側壁の位置を外側に張り出し、側壁に拡張空間部を形成し、この拡張空間部内にカウンターを納めて設けているものである。
従って本発明によれば、建築躯体を変更することなく、換言すると施工コストを増加することなく洗い場を拡張でき、親子や介護者と一緒に、また車椅子を使用したまま、快適に入浴できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
図1等において、1は、例えば洗面器や石鹸、シャンプー容器等の入浴用品である。また2は、この入浴用品1を載置するためのカウンターであり、3は洗い場である。
【0012】
而して本発明の場合、上記のカウンター2に対応する側壁4の位置は、外側に張り出されて拡張空間部5に形成されている。この拡張空間部5は、この実施形態では洗い場3を形成する防水パンの壁載せ部3aに屈曲状の前端部6aが係合する床6と、この床6の両側及び後側の三方を囲む囲い壁7と、この囲い壁7の上部の天井8とを備え、例えば合成樹脂材で一体成形されている。側壁4は、このように形成された拡張空間部5が、側壁パネル9の下部に連結されることにより、形作られている。なお拡張空間部5の天井8は、浴室内に向かって上り傾斜状に形成されている。また拡張空間部5の横幅は、この実施形態では洗い場3の横方向の一辺の長さと同一に形成されている。
【0013】
そして上記のカウンター2は、拡張空間部5内に納められ、前端2aが拡張空間部5と洗い場3との境界線上に配置されて洗い場3側に突き出されている。10は、カウンター2の取付部材である。この取付部材10は、径の拡大した頭部10aと、径の縮小状の首部10bとで鋲形に形成され、拡張空間部5の囲い壁7の奥の垂直壁7aに、水平方向に一定の間隔をあけると共に、縦方向に列を同一にして等間隔をあけ、複数設けられている。カウンター2は、図3に示されるように、奥側の立ち下げ部2bの下端に、取付部材10の首部10bと嵌合する切り欠き2cが形成され、この切り欠き2cが首部10bに嵌合することにより、側壁4に、着脱、且つ高さ調節自在に設けられている。またカウンター2は、この実施形態では、図2に示されるように、前端2aを介して下回り部2dが後方に下り傾斜状に返され、この下回り部2dの後端が囲い壁7の垂直壁7aに当接すると共に、この下回り部2dで下側の取付部材10を覆うよう形成されている。
【0014】
また本発明は、拡張空間部5の上部に、鏡11が浴室内に向かって上り傾斜状に設けられている。この実施形態の場合、鏡11は、拡張空間部5の傾斜状の天井8に沿って配置され、上部が左右方向に延びる軸12で囲い壁7に枢着され、軸12を中心に前後方向に回動可能に形成されている。13は、囲い壁7の両側板7bに、対向状に形成されている係合孔である。この係合孔13は、鏡11の下端の回動軌跡線上に、軸12から半径を同一にして窪み状に複数形成されている。14は、係合孔13に差し込まれるストッパー部材である。このストッパー部材14は、鏡11の下端のカバー15の側部に、洗い場3側から見て横方向に出没動作自在に設けられている。なおこのストッパー部材14は、この実施形態では鏡11の前後の位置に夫々設けられ、前側又は後側のストッパー部材14を係合孔13に差し込むことにより、1個の係合孔13を利用して、鏡11の角度を二通りに変更可能に形成されている。
【0015】
16(図1、図2参照)は、カウンター2の上方に配置されている棚である。この棚16は、上記のカウンター2と同様、立ち下げ部16a(図2参照)の切り欠き16bが棚取付部材17の首部17aに嵌合されることにより、囲い壁7の奥の垂直壁7aに着脱自在に設けられている。また拡張空間部5の前側上部には、蛍光灯等の照明器具18が設けられている。19(図2参照)は、アジャスターボルト等の高さ調節自在の支持部材である。この支持部材19は、拡張空間部5の床6の下面と、土台20との間に設けられ、拡張空間部5の床6は、この支持部材19で支持されている。
【0016】
次に本発明の使用例を説明する。
本発明は、カウンター2の切り欠き2cを取付部材10の首部10bに嵌め直すことにより、カウンター2を最適な位置に配置したり、或いはカウンター2を取り外して使用する。鏡11の角度を調節するときは、先ずストッパー部材14を係合孔13から抜いて係合状態を解き、次に鏡11を、軸12を中心に前後方向に回動させ(図5参照)、ストッパー部材14を係合孔13に差し込み直す。これにより鏡11の下端が係合孔13の位置に係止し、任意の角度に鏡11が配置される。
【0017】
以上の処において、本発明は、例えば図6、図7に示されるように、洗い場3と、拡張空間部5の床6とが面一に形成され、洗い場3と拡張空間部5の境の床面に段差ができないよう形成されているのが好ましい。なぜならこれによると、両者の境の床面が平らになり、入浴者がこの箇所に爪先をぶつけたり、躓いたりすることを防止でき、また車椅子をカウンター2側に深く配置でき、使い勝手が一層良くなるからである。この実施形態では、洗い場3を形成する防水パンの側辺部3bが、凹溝状に形成されている。そしてこの側辺部3bに、拡張空間部5の床6の下方に屈曲した屈曲片6bが係合されると共に、側辺部3bの開口状の上面が、排水用の孔21aを多数有する蓋21で、洗い場3と拡張空間部5の床6とが面一になるよう覆われているものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の浴室の好適な一実施形態を示す要部斜視図である。
【図2】同上浴室の要部縦断面図である。
【図3】カウンターの取付構造を示す要部斜視図である。
【図4】鏡の取付構造を示す要部縦断面図である。
【図5】鏡の作用を説明するための要部縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す要部斜視図である。
【図7】図6のVII−VII線における要部断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 入浴用品
2 カウンター
3 洗い場
4 側壁
5 拡張空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴用品を載置するためのカウンターが、洗い場に面する側壁に、洗い場側に突き出されて設けられている浴室であって、上記のカウンターに対応する側壁の位置が外側に張り出されて拡張空間部に形成され、この拡張空間部内に上記のカウンターが納められて設けられていることを特徴とする洗い場拡張型浴室。
【請求項2】
請求項1記載の洗い場拡張型浴室であって、カウンターが、着脱、且つ高さ調節自在に形成されていることを特徴とする洗い場拡張型浴室。
【請求項3】
請求項1又は2記載の洗い場拡張型浴室であって、拡張空間部の上部に、鏡が浴室内に向かって上り傾斜状に設けられ、この鏡の傾斜角度が調節自在に形成されていることを特徴とする洗い場拡張型浴室。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の洗い場拡張型浴室であって、拡張空間部の床が、高さ調節自在の支持部材で支持されていることを特徴とする洗い場拡張型浴室。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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