説明

洗剤組成物

【課題】使用水が少量であるために汚れの再付着が促進されるようになった洗濯条件において、十分な汚れ再付着防止効果を発現する洗剤組成物の提供。
【解決手段】(a)下記構成単位(A)及び(B)よりなるポリマー。(A)平均重合度が1〜200のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル及びメトキシポリエチレングリコールアリルエーテル等から選ばれる少なくとも1種のモノマー単位及び、(B)置換基として1つの水酸基を有していても良い、炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、アルキルビニルエステル、アルケニルビニルエステル及びベンジル(メタ)アクリレート等から選ばれる少なくとも1種のモノマー単位を有するポリマー、及び(b)スメクタイト型粘土鉱物を含有する洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境意識の高まり等から、節水タイプの洗濯機、つまり、洗浄に使用される水量が少ない洗濯機が普及している。その顕著な例として、一般にドラム式洗濯機と呼ばれる洗濯機があり、世界中で広く受け入れられている。しかしながら、この被洗浄物に対して使用される水量が少ない洗浄システムには、洗濯をすることで、被洗浄物が黒ずんでいくという課題がある。省エネルギーによる環境負荷の削減、経済性等の点から、洗濯水の節減は好ましいものの、下記のように、被洗浄物の「黒ずみ」は、使用水量が少ないことが主な原因の1つと考えられるために、洗濯機自体による改善が困難な課題となっている。
【0003】
したがって、節水タイプの洗濯機の普及がすすむ現在、このような使用水量の少ない洗浄システムにおいても、高い洗浄性を発揮するのみでなく、被洗浄物の黒ずみを抑制できるような洗剤組成物が、強く求められている。
【0004】
洗濯毎に被洗浄物が黒ずんでいく典型的な現象として、洗浄過程で被洗浄物から離脱した汚れ等の着色成分が、再び洗濯水中の被洗浄物に再付着する現象が挙げられる。洗濯水量が少なくなると、洗濯水中の汚れ濃度が高くなるため、これらの再付着は起こりやすくなる。たとえ、水量が少なくなることで、汚れと同様に洗濯液中の界面活性剤等の洗浄剤、分散剤濃度が高くなる場合でも、これらの成分による再付着防止への正の効果以上に、水中の汚れ濃度が高くなることによる負の効果が大きいために、被洗浄物への汚れの再付着の促進が起こることも確認できる。
【0005】
洗濯液中の汚れのうち、その着色成分として代表的なものの1つに、すすのような疎水性の微粒子がある。一方、被洗浄物としては、木綿のような比較的親水性の高い繊維と、比較的疎水性の高い化学繊維とがある。黒ずみを防止するためには、これらのような異なる表面特性をもつ繊維いずれに対しても、高い付着防止性をもつ洗剤組成物が必要である。
【0006】
従来、汚れの再付着防止技術として、特許文献1のように、高分子などの分散剤を用いて洗濯液中における汚れの分散性を向上させるものが知られている。
【0007】
また、これとは異なる機構に基づく技術として、繊維に特定の化学種を吸着させることで、繊維の表面物性を変化させ、汚れの再付着を防止するものがある。例えば、特許文献2には、スメクタイト型の粘土鉱物を繊維に付着させることで、汚れの再付着防止性を向上させる記載がある。しかし、特許文献2の場合、化学種が付着することで効果が現れるような再付着防止機構では、洗濯液中で汚れ粒子を安定に分散させる機構の示唆がなく、その化学種の繊維への付着性が良くない場合には効果がほとんど現れない。特に、分散系の技術に関する示唆がないために、化学繊維に対する疎水性微粒子の再付着防止に対する性能が十分でない。また、このメカニズムでは、洗濯を繰り返すことが効果発現の必要条件となるために、一回の洗濯でも黒ずみが認知されてしまうような、高い汚れ濃度溶液での黒ずみを防止するのに十分ではない。
【0008】
また、衣料用洗剤組成物に陽イオン性基及び陰イオン性基を有する両性ポリマーを応用して、洗濯機の洗いの工程において衣類を防汚処理する技術も知られている(特許文献3)。しかし、洗濯時の皮脂汚れに対して洗浄効果が高いが、洗濯液中の疎水性の微粒子汚れの再付着防止性が十分ではない。
【0009】
これらのいずれの技術も、上記のような、洗濯水量が少ないことにより極端に汚れ濃度が増加した洗濯水における汚れの再付着を防止する為には十分ではない。
【特許文献1】特開昭62−253694号公報
【特許文献2】特開昭56−167798号公報
【特許文献3】特許第3405941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、家庭で行われる洗濯で被洗浄物の黒ずみを防止するために、特に、使用水が少量であるために汚れの再付着が促進されるようになった洗濯条件において、十分な汚れ再付着防止効果を発現する、洗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、洗濯液中での汚れの再付着を防止するというニーズに対して研究を重ねた結果、1分子中に、疎水性粒子汚れや繊維に吸着するためのアルキル基、フェニル基等の疎水基と、親水性保護層を形成するポリアルキレングリコールグラフト鎖を有するポリマーと、特定の粘土鉱物とを組み合わせることで、木綿繊維に対しても、化学繊維に対しても高い再付着防止性を発現する洗剤組成物が得られることを見出した。
【0012】
即ち本発明は、下記(a)成分及び(b)成分を含有する洗剤組成物を提供する。
(a):一般式(I)で表される構成単位(A)及び一般式(II)で表される構成単位(B)を有するポリマー
【0013】
【化3】

【0014】
[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示し、n個のR2は同一でも異なっていても良い。R3は水素原子、又は炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、あるいはフェニル基を示し、Xは−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−又は−CO−NR5−(R5は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示す)を示し、nはR2Oの平均付加モル数を示す1〜200の数である。]
【0015】
【化4】

【0016】
[式中、R1は前記の意味を示し、R4は炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基あるいはフェニル基を示し、これらの基は置換基として1つの水酸基を有していても良い。Yは−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−NR5−(R5は前記の意味を示す)又は−O−CO−を示す。]
(b):一般式(III)で表される粘土鉱物
[Si8(MgaAlb)O20(OH)4x-・Mx+ (III)
(式中、a,bは、0<a≦6、0<b≦4となる数、xは、x=12−2a−3bとなる数を示し、MはNa、K、Li、Ca、Mg及びNH4から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【発明の効果】
【0017】
本発明の洗剤組成物を用いることで、通常の洗濯はもちろん、特に洗濯に使用する水量が少ないような汚れ濃度等が高い洗濯液においても、洗濯による被洗浄物の黒ずみ、汚れの再付着が防止できるという顕著な効果が奏される。具体的には、本発明の洗剤組成物を用いることで、特にすすのような疎水性の微粒子が存在する洗濯液において、それらの汚れがその洗濯浴中にある被洗浄物へ再付着するのを効果的に防止し、黒ずみを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[(a)成分]
本発明の(a)成分であるポリマーは、前記一般式(I)で表される構成単位(A)及び前記一般式(II)で表される構成単位(B)を有する。
【0019】
本発明の構成単位(A)は、式−(R2O)n−R3
(式中、R2、R3及びnは前記の意味を示す。)
で表されるポリアルキレングリコールグラフト鎖を有し、ポリマー表面に親水性保護層を形成させる構成単位である。
【0020】
ポリアルキレングリコールグラフト鎖は、(1)ポリアルキレングリコール鎖を有する不飽和結合含有モノマーを共重合する方法、(2)ポリマー主鎖にポリアルキレングリコールを高分子反応によりグラフトさせる方法等の方法でポリマー中に導入可能であるが、反応性や設計の自由度の面から、(1)の方法が好ましい。
【0021】
(1)の方法に用いられるモノマーとしては、一般式(IV)で表されるモノマー(以下モノマー(A)という)が挙げられる。
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、R1、R2、R3、X及びnは前記の意味を示す。)
モノマー(A)中のポリアルキレングリコール鎖のR2は、炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基から選ばれるが、炭素数2の直鎖アルキレン基が好ましい。また、n個のR2は同一でも異なっていてもよい。R2Oの平均付加モル数を示すnは、1〜200の数であるが、4〜120の数が好ましい。ポリアルキレングリコール鎖の末端基R3は、水素原子、又は炭素数1〜22、好ましくは1〜8の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基あるいはフェニル基を示すが、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0024】
モノマー(A)中のXは、−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−又は−CO−NR5−(R5は前記の意味を示す)を示すが、−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−が好ましく、−CH2−O−、−CO−O−がより好ましい。
【0025】
モノマー(A)の具体例としては、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル等のポリアルキレングリコール鎖を有するビニルエーテル;ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル等のポリアルキレングリコール鎖を有するアリルエーテル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリルアミド、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリルアミド等のポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリルアミド(ここでアルキレングリコールの平均重合度は何れも1〜200)等が挙げられる。
【0026】
これらのモノマーの中でも、エチレングリコールの平均重合度が1〜200の、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル又はメトキシポリエチレングリコールアリルエーテルがより好ましい。
【0027】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを、(メタ)アクリル酸はアクリル酸又はメタクリル酸を、(メタ)アクリルアミドはアクリルアミド又はメタクリルアミドを示す。
【0028】
本発明の構成単位(B)は、−R4で示される疎水性基を有し、ポリマー表面に繊維への吸着層を形成させる構成単位である。−R4で示される疎水性基は何れの方法でも導入可能であるが、一般式(V)で表されるモノマー(以下モノマー(B)という)を共重合する方法が、反応性や設計の自由度の面から好ましい。
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、R1、R4及びYは前記と同じ意味を示す。)
モノマー(B)において、R4は置換基として1つの水酸基を有していても良い炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基あるいはフェニル基を示すが、置換基として1つの水酸基を有していても良い炭素数1〜18の直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいはベンジル基、フェニル基が好ましい。Yは−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−NR5−(R5は前記の意味を示す)又は−O−CO−を示すが、−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−、−O−CO−が好ましく、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−、−O−CO−がより好ましく、−CO−O−、−O−CO−が更に好ましい。
【0031】
モノマー(B)の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキル基を有するビニルエーテル;メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ラウリルアリルエーテル等のアルキル基を有するアリルエーテル;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の置換基として1つの水酸基を有していても良いアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;ベンジル(メタ)アクリレート等のアリールアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;メチル(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ブチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、2−エチルヘキシル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド等の置換基として1つの水酸基を有していても良いアルキル基又はアルケニル基を有する(メタ)アクリルアミド類;ベンジル(メタ)アクリルアミド等のアリールアルキル基を有する(メタ)アクリルアミド;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、オクタン酸ビニル、デカン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のアルキル基又はアルケニル基を有するビニルエステル等が挙げられる。
【0032】
これらのモノマーの中でも、置換基として1つの水酸基を有していても良い炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、アルキルビニルエステル、アルケニルビニルエステル、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0033】
本発明のポリマーにおいて、構成単位(A)、構成単位(B)は、それぞれ1種以上を用いることができる。本発明のポリマー中の構成単位(A)と構成単位(B)の重量比率は、親水性保護層及び吸着層形成の観点より、構成単位(A)/構成単位(B)=1/99〜99/1が好ましく、30/70〜99/1がより好ましく、40/60〜95/5がさらに好ましい。
【0034】
本発明のポリマーを得る際には、モノマー(A)及びモノマー(B)以外に、モノマー(A)及びモノマー(B)と共重合可能な不飽和結合含有モノマー(以下モノマー(C)という)を本発明の効果を損なわない範囲で共重合しても良い。
【0035】
モノマー(C)としては、例えば、(1)親水性ノニオン性モノマー:ビニルアルコール(モノマーは安定でないため、酢酸ビニルを重合後、鹸化してこの構造単位を得る);グリセリン(メタ)アクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;アクリルアミド;ジアセトン(メタ)アクリルアミド;N−ビニルピロリドン等のN−ビニル環状アミド;N−(メタ)アクロイルモルホリン;塩化ビニル;アクリロニトリル等、(2)アニオン性モノマー:(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有する不飽和結合含有モノマー;2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有する不飽和結合含有モノマー等、及びそれらの塩、(3)カチオン性モノマー:ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー等、及びそれらの塩又は4級化塩、(4)スチレン系モノマー:スチレン、α−メチルスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン等の一般式(VI)
【0036】
【化7】

【0037】
(式中、R1は前記と同じ意味を示し、R6はベンゼン環の任意の位置に置換されていても良い炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又はアルケニルを示し、mは0〜3の整数を示す。)
で表されるスチレン系モノマー等が挙げられる。
【0038】
これらのモノマーの中でも、(1)の親水性ノニオン性モノマーが好ましい。
【0039】
これらのモノマー(C)の割合は、ポリマーを構成する全モノマー重量に対して、0〜40重量%が好ましく、0〜30重量%がさらに好ましい。
【0040】
本発明のポリマーは、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の一般的な重合法を用いて、前記モノマー(A)とモノマー(B)を含むモノマー成分をラジカル重合又はイオン重合等の付加重合によって製造することができるが、合成のし易さや組成の自由度の観点から、ラジカル重合することが好ましい。
【0041】
ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤を用いることができ、例えばラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過酸化物系開始剤;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤等が例示される。好ましいラジカル重合開始剤の使用量は、モノマーの種類や濃度、開始剤の種類、反応温度等により変化するが、通常全モノマー量に対して0.01〜10モル%が好ましく、0.1〜8モル%がより好ましい。
【0042】
ラジカル重合は、モノマー及び重合開始剤を水やアルコール、ケトン類等の有機溶媒と共に反応容器内に仕込み(モノマー濃度は5〜80重量%程度)、窒素等の不活性ガスによる置換等により系内の溶存酸素を除去した後、30〜120℃まで昇温して1〜20時間程度重合する方法等の一般的な方法で行うことができる。
【0043】
本発明のポリマーの重量平均分子量(Mw)は、再汚染防止性効果の点から2,000〜500,000が好ましく、5,000〜400,000がさらに好ましい。
【0044】
尚、本発明のポリマーのMwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定による値を使用する。溶離液としては、水、アルコール、クロロホルム、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル及びこれらの溶媒を組み合わせた液の何れかを使用し、ポリエチレンオキシド又はポリスチレン換算の分子量とする。
【0045】
本発明のポリマーの構造は、ランダム型、ブロック型のいずれも可能であるが、ランダム型が好ましい。
【0046】
本発明のポリマーは、水溶性又は水分散性であることが好ましい。水溶性とは、ポリマーの1重量%水溶液が25℃において目視で透明であることを示す。また、水分散性とは、ポリマーの1重量%水溶液が混合・分散処理後、25℃においてほぼ均一に分散している状態を示す。
【0047】
[(b)成分]
本発明の(b)成分である粘土鉱物は、前記一般式(III)で表されるスメクタイト型粘土鉱物である。
【0048】
一般式(III)において、a,bは、0<a≦6、0<b≦4となる数を示すが、0<a<6、0<b<4が好ましい。xは、x=12−2a−3bとなる数を示す。MはNa、K、Li、Ca、Mg及びNH4から選ばれる少なくとも1種を示すが、Na及びCaを含むものが好ましい。
【0049】
汚れの再付着防止性の観点から、一般式(III)で表される粘土鉱物中のNa/Caの重量比は1.0以上が好ましく、2.0以上がより好ましく、3.0以上が更に好ましい。
【0050】
尚、粘土鉱物中のNa/Caの重量比は、次の方法で測定する。
【0051】
粘土鉱物を乳鉢で粉砕し、目開き125μmの篩を通過した試料0.1gをマイクロウェーブ湿式灰化装置(自動)で硫酸−過酸化水素分解したのち、メスフラスコにて50mLにメスアップして、ICP発光分析装置で測定してNaとCa量を定量して計算する。
【0052】
Na/Caの重量比が高い粘土鉱物を得る方法として、天然品であれば、産地を選択すればよいし、または、例えば粘土鉱物を製造する際に、Na塩等を添加して調製することも可能である。また、合成品であれば公知の方法にて任意に調製が可能である。
【0053】
Na/Caの重量比が高い粘土鉱物を製造する方法としては、水分を20重量%以上含む原料粘土鉱石に粉末の炭酸ナトリウム等のNa塩を添加した後に乾燥する工程を含む製法、または、パウダー状に粉砕した粘土鉱物を、造粒機を用いて造粒する際に炭酸ナトリウム等のNa塩の粉末や水溶液を添加する工程を含む製法が有用である。
【0054】
粘土鉱物に含有されるCaの重量割合は、汚れの再付着防止性の観点から、粘土鉱物中、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。Caの重量割合は、上記のNa/Caの重量比と同様に、Ca定量値をサンプル重量と比較して計算することができる。
【0055】
一般式(III)で表される粘土鉱物として、市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば、ズード・ケミ社製の「ラウンドロジルDGA212」、「ラウンドロジルPR414」、「ラウンドロジルDG214」、「ラウンドロジルDGAパウダー」、「フラソフト−1パウダー」、ラヴィオッサ社製の「デタソフトGIS」、「デタソフトGIB」、「デタソフトGISW」、CSM社製のピュアベントナイト、スタンダードベントナイト、プレミアムベントナイト等が挙げられる。
【0056】
[洗剤組成物]
本発明の洗剤組成物は、上記(a)成分及び(b)成分を含有する。
【0057】
本発明の洗剤組成物中における(a)成分の含有量は、汚れの再付着防止性に対する効果の点から、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましく、0.1重量%以上が更に好ましく、0.3重量%以上が更により好ましく、0.5重量%以上が特に好ましい。また、洗剤の粉末・溶液の物性、その経時安定性の点から、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、3重量%以下が更に好ましい。
【0058】
本発明の洗剤組成物中における(b)成分の含有量は、汚れの再付着防止性の点から、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上が更に好ましく、7重量%以上が更により好ましく、10重量%以上が特に好ましい。また組成のバランスの点から、25重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。
【0059】
なお、(b)成分の粘土鉱物は、特に天然の場合、クォーツ、クリストバライト、カルサイト、長石などの不純物を含有するため、(b)成分の含有量とは、これらの不純物も含んだものとする。
【0060】
本発明の洗剤組成物は、(a)成分及び(b)成分を配合することで、木綿繊維、化学繊維に対する疎水性微粒子の再付着防止に関して、それぞれの効果を加算した以上の高い効果が達成される。汚れの再汚染防止性を効果的に高める点から、(a)成分と(b)成分の重量比[(a)成分/(b)成分]は、1/1〜1/500が好ましく、1/3〜1/100がより好ましい。
【0061】
本発明の洗剤組成物の製造法は特に限定されず、一般の洗剤組成物の製法として知られる、例えば特許庁公報10(1998)−25(7159)周知慣用技術集(衣料用粉末洗剤)や、特許第3123757号公報に記載の方法に準じて製造することができる。
【0062】
本発明の洗剤組成物中への(a)成分と(b)成分の配合方法は、それぞれを別々に添加して製剤化しても良いし、上記のような(b)成分の製造時に炭酸ナトリウム等のNa塩を添加する工程や、粉末状の粘土鉱物を造粒する工程で(a)成分のポリマーを添加する等して、予め混合して複合材料化した後に、洗剤組成物として製剤化しても良い。
【0063】
(a)成分を洗剤組成物に配合するに際しては、(a)成分のポリマー製造で得られた反応溶液をそのまま使用しても良いし、再沈殿や溶媒の留去等によりポリマーを回収して使用しても良い。また(a)成分を単独で添加・混合してもよいし、他の化合物とともに造粒粉末ないし、液体あるいはゲル状の製剤としたのち混合してもよい。
【0064】
(b)成分を洗剤組成物に配合する際には、例えば、粉末状の粘土鉱物を、粉末洗剤の造粒工程や表面改質工程で、他の洗剤成分と混合して洗剤粒子としても良いし、予め粘土鉱物を主成分とする造粒物を作成した後に、アフターブレンド工程で、他の洗剤粒子に添加して洗剤組成物としても良い。洗剤が液体状である場合、溶解して供することもできるが、(b)成分の粘土鉱物を製品の外観や品質安定性を損なわずに多く配合できる点から、本発明の洗剤組成物は粉末状であることが好ましい。
【0065】
本発明の洗剤組成物は、通常、洗剤組成物に含有される界面活性剤、アルカリ剤、金属イオン封鎖剤等の洗剤用ビルダー、その他通常の洗剤成分を含有することができる。
【0066】
本発明の洗剤組成物に用いられる界面活性剤は、従来知られている物質を使用することができる。界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を主界面活性剤として使用することが好ましい。
【0067】
陰イオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル鎖を持つ直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、アルキル又はアルケニルリン酸エステル又はその塩等が使用できる。特に、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩が好ましい。本発明の洗剤組成物中の陰イオン性界面活性剤の含有量は、良好な洗浄性を得る観点から、1〜30重量%が好ましく、5〜25重量%がより好ましい。
【0068】
非イオン性界面活性剤としては、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等が使用できる。中でもポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。非イオン性界面活性剤は、皮脂汚れなどの油性汚れに対する洗浄性が際立っている上、疎水性微粒子の分散性にも高い効果がある。本発明の洗剤組成物中の非イオン性界面活性剤の含有量は、起泡性やすすぎの観点から、1〜20重量%が好ましく、5〜18重量%がより好ましい。
【0069】
洗浄性の点から、ポリオキシエチレンアルキルエーテルは、アルキル鎖が直鎖であることが好ましく、炭素数は10〜14が好ましく、12〜14が最も好ましい。すすのような疎水性微粒子の再付着防止性の点から、エチレンオキサイド(EO)の平均付加モル数は、4〜12が好ましく、4.5〜10がより好ましく、4.5〜8が更に好ましい。平均付加モル数は、例えば水酸基価の測定により求めることができる。また、付加モル数の分析は、ガスクロマトグラフィーやLC−マススペクトルを用いた方法、より正確には、3,5−ジニトロベンゾイルクロライドによりノニオンの末端ヒドロキシ基をUVラベル化した後、HPLCで分析する方法を用いることができる。
【0070】
本発明の洗剤組成物において、微粒子の被洗浄物への再付着を促進する傾向をもつことから、陽イオン性界面活性剤を用いることは好ましくはないが、所望の範囲内で使用することができる。用いられる陽イオン性界面活性剤は、特に限定されない。洗剤組成物中の陽イオン性界面活性剤の含有量は、2重量%以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましく、0.5重量%以下がさらにより好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0071】
その他の界面活性剤として、ベタイン型両性界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤等の界面活性剤も適宜配合することができる
本発明の洗剤組成物はアルカリ剤を含有することが好ましい。使用できるアルカリ剤としては、従来知られているものが挙げられる。洗浄性の点からは、アルカリ剤を洗剤組成物に別途配合することが好ましい。アルカリ剤の例としては、デンス灰やライト灰と総称される炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、並びにJIS1号、2号、3号等の非晶質のアルカリ金属珪酸塩、結晶性アルカリ金属珪酸塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。洗浄性の点から、アルカリ剤の配合量は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上が更に好ましい。配合のバランスの点から、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下が更に好ましい。
【0072】
本発明の洗剤組成物は、金属イオン封鎖剤を含有することが、塩強度の増加による汚れ付着の促進を抑制する効果があるため好ましい。また、ビルダーとして、金属イオン封鎖剤を洗剤組成物に配合し、洗濯水中の硬度成分を捕捉することは、洗浄性の点から非常に効果的である。特にカルシウムイオン捕捉能100mgCaCO3/g以上である金属イオン封鎖剤を配合することがより効果的である。かかる金属イオン封鎖剤としては、結晶性アルミノ珪酸塩、結晶性珪酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、メチルグリシン二酢酸が挙げられる。ただし、炭酸ナトリウム、非晶質珪酸ナトリウムは、本発明においては金属イオン封鎖剤に含まれないこととする。洗剤組成物中の金属イオン封鎖剤の含有量は、洗浄性の観点から、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上が特に好ましい。また、配合のバランスの観点から、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、35重量%以下がさらに好ましい。
【0073】
本発明の洗剤組成物には、(a)成分のポリマー以外に重量平均分子量数千〜数十万の有機ポリマー、例えばアクリル酸系ポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。再汚染防止性の点から、重量平均分子量50万以上の有機ポリマーは配合しないことが好ましい。
【0074】
アクリル酸系ポリマーとしては、重量平均分子量5000以上10万以下のポリアクリル酸もしくはその塩、または重量平均分子量5000以上10万以下のアクリル酸−マレイン酸共重合体もしくはその塩等が好ましい。これらのポリマーは、泥のような親水性の微粒子に対する分散性に優れるために、これらの粒子の再付着防止性に効果を発揮する。更に、炭酸イオンの存在下で、本発明の(b)成分によるすすのような疎水性微粒子の再汚染防止性向上を促進する効果を持つ。この点から、本発明の洗剤組成物中のアクリル酸系ポリマーの含有量は、0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。泥汚れの再付着防止性の点から、ポリアクリル酸またはその塩がより好ましい。汚れの再付着防止性の観点から、ポリアクリル酸またはその塩の重量平均分子量は5000以上5万以下が好ましく、5000以上3万以下がより好ましい。
【0075】
カルボキシメチルセルロースは、固体粒子汚れを洗濯浴中へ分散させる作用があり、分散性の点から、重量平均分子量は1000以上10万以下、エーテル化度0.2〜1.0のものが好ましい。
【0076】
本発明の洗剤組成物には、蛍光染料を好適に配合できる。蛍光染料としては、ビフェニル型蛍光染料とスチルベン型蛍光染料が使用できる。
【0077】
ビフェニル型蛍光染料としては4,4’−ビス(2−スルホスチリル)ビフェニルジナトリウムや4,4’−ビス(2−スルホ−4−クロロスチリル)ビフェニルジナトリウムをあげることができ、特に4,4’−ビス(2−スルホスチリル)ビフェニルジナトリウムが好ましい。商品名として、チノパールCBS−X(チバスペシャリティケミカルス社製)等が挙げられる。
【0078】
スチルベン型蛍光染料としては、一般式(VII)で表される化合物が好ましい。ここで、陽イオンとしては、ナトリウムイオン等のアルカリ金属イオン、マグネシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン、アンモニウムイオンが挙げられる。特にアルカリ金属イオンが好ましい。この化合物はチノパールAMS−GX(チバスペシャリティケミカルス社製)として入手可能である。
【0079】
【化8】

【0080】
疎水性微粒子の再汚染防止性に対する、粘土鉱物の効果を高める点から、[スチルベン型蛍光染料/全蛍光染料]の重量比は、0/100以上75/100以下が好ましく、0/100以上50/100以下がより好ましい。
【0081】
本発明の洗剤組成物には、酵素、香料、着色剤(顔料や染料)等も適宜配合することができる。
【0082】
本発明の洗剤組成物の洗濯使用時の浴中濃度は特に限定されないが、10〜2000mg/kgが好ましく、200〜2000mg/kgがさらに好ましい。
【実施例】
【0083】
以下の合成例において、ポリマーの重量平均分子量は、以下の方法で測定した。
【0084】
<ポリマーの重量平均分子量(Mw)の測定法>
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。カラムには、K−804L(昭和電工(株)製)を2本接続したものを用いた。溶離液には、ジメチルラウリルアミンの1mMクロロホルム溶液を用いた。検出器には、RIを用いた。分子量は全てポリスチレン換算で算出した。
【0085】
合成例1
メトキシポリエチレングリコール(平均重合度9)メタクリレート(NKエステルM−90G;新中村化学工業(株)製)47.7g、メチルメタクリレート32.3g、エタノール46.3gを均一に混合し、内容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で一定時間攪拌した。その反応溶液を80℃付近まで昇温し、そこに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65;和光純薬工業(株)製)0.84gをエタノール7.6gに溶解した溶液を添加した。80℃付近で6時間保持することで重合・熟成した。この反応溶液を冷却することで、ポリマーの60重量%エタノール溶液として、ポリマー1を得た。GPC測定の結果、Mwは55000であった。また1H−NMR(高分解能FT−NMR装置MERCURY400(バリアン社製)により測定)により分析したポリマー1の組成はほぼ仕込みモノマー組成どおりであった。
【0086】
合成例2〜7
表1に示すモノマー(A)、モノマー(B)を用い、合成例1と同様の方法で表1のように条件を変えてポリマー2〜7を得た。同定は合成例1と同様の方法で行い、組成比はほぼ仕込みモノマー組成どおりであった。
【0087】
尚、表1中の略号は以下の意味を示す。
PEG(n)MA:メトキシポリエチレングリコール(平均重合度n)メタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
BMA:ブチルメタクリレート
LMA:ラウリルメタクリレート
【0088】
【表1】

【0089】
実施例1〜7及び比較例1〜3
表2に記載の各成分を用い、表2に示す組成の洗剤ベースを得た。
【0090】
【表2】

【0091】
*1 陰イオン性界面活性剤:炭素数12〜14のアルキル基を有する直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム
*2 非イオン性界面活性剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル):炭素数10〜14の1級アルコールにEOを平均8モル付加させたもの
*3 石鹸:ルナックL−98(花王(株)製)、ルナックMY−98(花王(株)製)、ルナックP−95(花王(株)製)の中和物。混合比は脂肪酸純分として、40重量%、10重量%、50重量%。
*4 ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量1.5万;GPC測定、ポリエチレングリコール換算)
*5 ソーダ灰:デンス灰(セントラル硝子(株)製)
*6 結晶性シリケート:プリフィード顆粒品(株式会社トクヤマシルテック製)
*7 ゼオライト:「ゼオビルダー」(4A型、ゼオビルダー社製)
*8 芒硝:無水中性芒硝(四国化成(株)製)
*9 蛍光染料:チノパールCBS−X(チバスペシャリティケミカルス社製)
上記洗剤ベース、及び(a)成分のポリマーとして合成例で得られたポリマー1〜7、(b)成の粘土鉱物としてベントナイト造粒物(ズード・ケミ社製、品名:ラウンドロジルDGA、Na/Ca重量比:2.7)を用い、表3に示す組成の洗剤組成物を調製した。得られた洗剤組成物について、下記方法で再汚染防止性を評価した。その結果を表3に示す。
【0092】
<再汚染防止性評価法>
(1)処理布の調製法
試験布として、木綿メリヤス(蛍光染料未染着布)及びポリエステル(PE)ジャージ(蛍光染料未染着布)を、(株)谷頭商店TEL06-6328-6134より入手した。試験布のサイズは、それぞれ4×5cmとした。この試験布について、衣料用洗剤(花王株式会社製 ニュービーズ)を0.083重量%の割合で用い、全自動洗濯機・標準コースにより、5回累積洗濯処理を行い、恒温室(25℃/40%RH)において一昼夜の乾燥及び調湿を行ったものを処理布とした。なお、浴処理条件は、Haier(株)製全自動洗濯機JW−Z20A型を用い、標準コース(洗い15分、濯ぎ2回、脱水5分、水量15L)、水温20℃、浴比40である。
【0093】
(2)再汚染防止性試験
再汚染防止効果の評価には、ラウンダオメーターを使用した。表3の洗剤組成物を72mg/L(CaCO3換算)のカルシウム硬水100mLに各々溶解し、0.15%になるように調整した。次いで浴液中に、0.2gのカーボンを入れ、超音波発振器((株)国際電気エルテック製 型式U0600PB-Y)の浴槽を用いて15分間超音波照射し分散させ、ラウンダオメーター用のガラスカップに移した。
【0094】
(1)で調製した2種類の処理布をそれぞれサイズ4×5cmとして、1種類を5枚組で計20枚組にしたものをカップ内の浴液中に投入し、25℃、30分間、ポット回転速度40±2回/分でラウンダオメーターにて洗浄を行った。5Lの水道水でためすすぎの後、アイロンプレス処理を行った。次いで、木綿メリヤス布及びPEジャージ布について、それぞれ洗浄前の原布、再汚染試験布の550nmにおける反射率を日本電色工業(株)製 分光色差計SE2000にて測定し、次式から再汚染防止率(%)を算出し、その平均値をそれぞれの評価値とした。
【0095】
再汚染防止率(%)=〔洗浄後の試験布の反射率/原布の反射率〕×100
【0096】
【表3】

【0097】
表3の結果から明らかなように、実施例1〜7の洗剤組成物は、木綿繊維、ポリエステルのような化学繊維両者に対して、比較例1〜3と比較した場合、有意に高い再汚染防止性を実現する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分及び(b)成分を含有する洗剤組成物。
(a):一般式(I)で表される構成単位(A)及び一般式(II)で表される構成単位(B)を有するポリマー
【化1】

[式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示し、n個のR2は同一でも異なっていても良い。R3は水素原子、又は炭素数1〜22の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、あるいはフェニル基を示し、Xは−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−又は−CO−NR5−(R5は炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基を示す)を示し、nはR2Oの平均付加モル数を示す1〜200の数である。]
【化2】

[式中、R1は前記の意味を示し、R4は炭素数1〜22の直鎖、分岐鎖若しくは環状のアルキル基又はアルケニル基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、アルケニルアリール基あるいはフェニル基を示し、これらの基は置換基として1つの水酸基を有していても良い。Yは−O−、−CH2−O−、−CO−O−、−CO−NH−、−CO−NR5−(R5は前記の意味を示す)又は−O−CO−を示す。]
(b):一般式(III)で表される粘土鉱物
[Si8(MgaAlb)O20(OH)4x-・Mx+ (III)
(式中、a,bは、0<a≦6、0<b≦4となる数、xは、x=12−2a−3bとなる数を示し、MはNa、K、Li、Ca、Mg及びNH4から選ばれる少なくとも1種を示す。)
【請求項2】
(a)成分中の構成単位(A)と構成単位(B)の重量比率が、構成単位(A)/構成単位(B)=1/99〜99/1である、請求項1記載の洗剤組成物。
【請求項3】
(a)成分のポリマーの重量平均分子量が2,000〜500,000である請求項1又は2記載の洗剤組成物。
【請求項4】
(a)成分中の構成単位(A)が、エチレングリコールの平均重合度が1〜200の、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル及びメトキシポリエチレングリコールアリルエーテルから選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の構成単位である請求項1〜3いずれかの項記載の洗剤組成物。
【請求項5】
(a)成分中の構成単位(B)が、置換基として1つの水酸基を有していても良い、炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレート、アルケニル(メタ)アクリレート、アルキルビニルエステル、アルケニルビニルエステル及びベンジル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のモノマー由来の構成単位である請求項1〜4いずれかの項記載の洗剤組成物。
【請求項6】
組成物中の(a)成分の含有量が0.01〜10重量%、(b)成分の含有量が1〜25重量%である請求項1〜5いずれかの項記載の洗剤組成物。

【公開番号】特開2010−121045(P2010−121045A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296268(P2008−296268)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】