説明

洗浄剤組成物

【課題】衣類の洗濯において移染を防止し得る洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)ベントナイト、(b)過炭酸ナトリウム30〜80質量%、及び(c)界面活性剤を含有し、(a)/(c)の質量比が特定範囲にある洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類から放出された染料に起因する衣料間の色移り(以下、移染と呼ぶ)は、衣類の洗濯における大きな問題のひとつであり、これを解決するための様々な試みがなされてきた。
【0003】
特許文献1には、移染防止剤として、アミン系化合物等を含有する洗剤が記載されている。
【0004】
特許文献2には、染料吸収剤として、不溶性の高分子アミンを含む洗濯添加剤物品が記載されている。
【0005】
特許文献3には、鉱物性物質を酸素系漂白剤組成物の退色抑制剤として用いることが記載されている。
【特許文献1】特開平8−151596号公報
【特許文献2】特開2004−511648号公報
【特許文献3】特開平6−57297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、衣類の洗濯において移染を防止し得る洗浄剤組成物を提供することにある。特に、近年、少量の水で衣類を洗浄することができる洗濯機(例えば、ドラム式洗濯機)の普及に伴い、衣類の移染発生の問題が顕在化しつつあるため、本発明の課題は、少量の水で洗濯する場合においても、移染を防止し得る洗浄剤組成物を提供することにある。なお、特許文献3は、界面活性剤を含有する洗浄剤組成物について、移染発生を防止するという課題やそのための具体的な組成について何ら言及していない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、界面活性剤と過炭酸ナトリウムとを含有する浄剤組成物中に、ベントナイトを界面活性剤に対して所定の比率で配合することによって、移染を防止できることを見出した。
【0008】
本発明は、(a)ベントナイト、(b)過炭酸ナトリウム30〜80質量%、及び(c)界面活性剤を含有し、(a)/(c)の質量比が200〜1である、洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、移染防止効果に優れた洗浄剤組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の洗浄剤組成物に用いられる成分について説明する。
<(a)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(a)成分として、ベントナイトを含有する。本発明のベントナイトは、50〜100meq/100gのイオン交換能力を有するものが好ましく、具体的には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属モンモリロナイト、サポナイトまたはヘクトライトからなる群から選択されるモンモリロン石群鉱物粘土(smectitic clay)、イライト、アタパルジャイト(attapulgite)、及びカオリナイトから選ばれる1種以上が好ましい。
【0011】
本発明の洗浄剤組成物中の(a)成分の含有量は、1〜60質量%が好ましく、移染防止の観点から、10〜50質量%がより好ましく、15〜40質量%が更に好ましい。
【0012】
<(b)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(b)成分として、過炭酸ナトリウムを含有する。本発明の洗浄剤組成物は、過炭酸ナトリウムの添加により、優れた洗浄効果及び移染防止効果を発揮し得る。
【0013】
本発明の洗浄剤組成物中の(b)成分の含有量は、30〜80質量%であり、優れた洗浄効果及び移染防止効果を得るため、35〜80質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
【0014】
<(c)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(c)成分として、界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤を使用し得る。洗浄性及び移染防止の観点から、非イオン界面活性剤及び/又は陰イオン界面活性剤が好ましく、非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤の併用が特に好ましい。その場合、非イオン界面活性剤/陰イオン界面活性剤=1/10〜2/3、更に1/6〜1/2の質量比とすることが好ましい。
【0015】
本発明の非イオン界面活性剤としては、アルコールにアルキレンオキサイドを付加した非イオン界面活性剤、特に、下記一般式(1)の非イオン界面活性剤が挙げられる。
1a−O[(EO)a/(PO)b]−H (1)
〔式中、R1aは炭素数10〜18、好ましくは12〜14のアルキル基又はアルケニル基を示す。EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を示す。aは平均付加モル数であり0〜20の数、bは平均付加モル数であり0〜20の数を示し、a及びbの両者が同時に0の場合を除く。〕
【0016】
一般式(1)中、aは6〜15、更に7〜12が好ましく、bは0〜10、更に1〜5、特に1〜3が好ましい。
【0017】
なお、一般式(1)においては、EO基単独又はPO基単独で配合されてもよく、EO基とPO基とがランダム共重合体又はブロック共重合体のいずれの形態で配列されていてもよい。
【0018】
本発明における非イオン界面活性剤は特に限定されないが、具体例としては、日本触媒(株)製ソフタノール120〔炭素数12/14/16混合アルコールのEO12モル付加物〕、花王(株)製エマルゲン507〔炭素数12/13混合アルコールのEO7モル付加物(融点17.5℃)〕、花王(株)製エマルゲン109P〔炭素数12アルコールのEO9.2モル付加物(融点21℃)〕、花王(株)製、エマルゲンKS−108〔炭素数12アルコールのEO5モルPO2モルEO3モル付加物(融点−9℃)〕、花王(株)製エマルゲンKS−110〔炭素数12/14混合アルコールのEO7モルPO2モルEO3モル付加物(融点20℃)〕、花王(株)製エマルゲンLS−106〔炭素数12アルコールのEO2.5モルPO1.5モルEO3モル付加物(融点−9℃)〕等がある。その中でも溶解性の観点より、EO/PO付加型の非イオン界面活性剤が好ましい。ここでEOはエチレンオキサイド、POはプロピレンオキサイドであり、付加モル数は平均付加モル数である。
【0019】
本発明に用いられる陰イオン界面活性剤としては、より具体的にはオレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、α−スルホ脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩を挙げることができ、特にアルキル基の炭素数が8〜15、好ましくは10〜15のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル基の炭素数が8〜14、好ましくは10〜14のアルキル硫酸エステル塩、アルキル基の炭素数が8〜14、好ましくは10〜14、平均付加モル数が1〜6のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤を用いることが好ましい。より好ましくは、炭素数10〜14のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩である。
【0020】
洗浄剤組成物中の(c)成分の含有量は、0.1〜10質量%が溶解性や造粒物物性の観点から好ましく、0.1〜8質量%が更に好ましく、0.1〜6質量%が更に好ましい。
【0021】
さらに、本発明の洗浄剤組成物では、移染防止及び洗浄性の観点から、(a)/(c)の質量比が200〜1であり、180〜2.5が好ましく、180〜5がより好ましい。
【0022】
<(d)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(d)成分として、漂白活性化剤を含有し得る。本明細書中において、漂白活性化剤とは、無機過酸化物と反応することで有機過酸を生成する化合物を意味する。漂白活性化剤としては、例えば、下記一般式(2)で表されるエステル結合を有する化合物が挙げられる。
R−C(=O)−LG (2)
[式中、Rは、炭素数8〜14の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、アリール基、又はアルキル基置換アリール基であり、好ましくは炭素数10〜14の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である。LGは脱離基である。]
脱離基LGとしては、例えば、
【0023】
【化1】

【0024】
−O−Ra−(O)p−SO3-及び−O−Ra−(O)p−SO3M(ここでRaはアルキレン基、pは0又は1、Mは水素原子又はアルカリ金属を表す。)が挙げられる。なお、Raのアルキレン基は、炭素数1〜5が好ましい。
【0025】
本発明における漂白活性化剤は、一般式(2)で表される化合物に限定されず、従来一般に用いられてきた漂白活性化剤を用いることができる。例えばテトラアセチルエチレンジアミン、グルコースペンタアセテート、テトラアセチルグリコールウリル、アルカノイルもしくはアルケノイル(これらの基の炭素数は8〜14)オキシベンゼンカルボン酸又はその塩、アルカノイル又はアルケノイル(これらの基の炭素数は8〜14)オキシベンゼンスルホン酸塩が挙げられ、アルカノイルもしくはアルケノイル(これらの基の炭素数は8〜14、漂白効果の点から好ましくは10〜14)オキシベンゼンカルボン酸又はその塩及びアルカノイル又はアルケノイル(これらの基の炭素数は8〜14、漂白効果の点から好ましくは10〜14)オキシベンゼンスルホン酸塩から選ばれる1種以上が好ましい。これら漂白活性化剤は、任意の1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。特に、デカノイルオキシベンゼンカルボン酸又はこのナトリウム塩、ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
【0026】
洗浄剤組成物中の(d)成分の含有量は、0.1〜10質量%が溶解性や造粒物物性の観点から好ましく、0.1〜8質量%が更に好ましく、0.1〜6質量%が更に好ましい。
【0027】
<(e)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(e)成分として、ポリアルキレングリコールを含有し得る。
【0028】
本発明のポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリプロピレングリコール(平均分子量2000)(融点45〜50℃)、ポリエチレングリコール(平均分子量4000)(融点50〜58℃)、ポリエチレングリコール(平均分子量6000)(融点55〜62℃)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本発明の洗浄剤組成物中の(e)成分の含有量は、溶解性の観点から、0.1〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が更に好ましい。
【0030】
<(f)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(f)成分として、炭酸ナトリウムを含有し得る。本発明の洗浄剤組成物中の(f)成分の含有量は、移染防止性の観点から、1〜50質量%が好ましく、1〜45質量%がより好ましく、1〜40質量%が更に好ましい。
【0031】
<(g)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(g)成分として、金属封鎖剤を含有し得る。金属封鎖剤としては、特開平11−181482号公報に記載のものを使用することができる。本発明の洗浄剤組成物中の(g)成分の含有量は、移染防止性の観点から、0.0005〜5質量%が好ましく、0.01〜3質量%がより好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましい。
【0032】
<(h)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(h)成分として、結晶性アルミノケイ酸塩を含有し得る。結晶性アルミノケイ酸塩としては、特開平8−170095号公報に記載のものが挙げられる。本発明の洗浄剤組成物中の(h)成分の含有量は、移染防止性の観点から、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜4質量%がより好ましく、0.1〜3質量%が更に好ましい。
【0033】
<(i)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(i)成分として、酵素を含有し得る。酵素としては、特開平11−217590号公報に記載のものを使用することができる。本発明の洗浄剤組成物中の(i)成分の含有量は、洗浄性の観点から、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜3質量%がより好ましく、0.1〜2質量%が更に好ましい。
【0034】
<(j)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、粒子汚れ洗浄力を更に向上させるために、(j)成分として、分散剤を配合し得る。分散剤としては一般的に使用されているポリマー成分を配合しても良く、特に、重量平均分子量5千〜4万のポリアクリル酸又はその塩、ポリメタクリル酸又はその塩、重量平均分子量3万〜10万のアクリル酸とマレイン酸のコポリマー又はその塩等のカルボン酸系ポリマーや、重量平均分子量4千〜1万のポリエチレングリコール等の非イオン性ポリマーが好ましい。分散剤の含有量は組成物中に0.5〜20質量%、特に1〜15質量%が好ましい。
【0035】
<(k)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、(k)成分として、香料を含有し得る。香料としては、従来洗剤に配合されている香料、例えば特開昭63−101496号公報記載の香料、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、トリシクロ[5.2.1.02,6]−デセ-3-エン-8-イルアセテート、トリシクロ[5.2.1.02,6]−デセ-3-エン-8-イソプロピオネート、3-アミル-4-アセトキシテトラヒドロピラン、4-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、2-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ブチル−α−メチルヒドロシンナミックアルデヒド、4-(4-ヒドロキシ-4-メチルペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、α,α’−ジメチル-p-エチルヒドロシンナミックアルデヒド等を挙げることができる。もちろんその他の洗剤成分による劣化のないように、配合する各香料成分の種類及び場合により配合比率や配合量を考慮する。
【実施例】
【0036】
実施例1〜6、比較例1〜4
下記成分を用い、表1に示す組成の洗浄剤組成物を調製した。この洗浄剤組成物について、下記方法で、移染防止効果を評価した。
【0037】
(1)過炭酸ナトリウム粒子:
非イオン界面活性剤(ソフタノール120 日本触媒(株))及び/又は陰イオン界面活性剤(エマール10P 花王(株)製)を、20〜40質量%程度の水溶液とし、それを過炭酸ナトリウムに霧状にスプレーしたのち、熱乾燥をすることにより過炭酸ナトリウム粒子を得た。表中、「PC粒子」と表記した。
(2)ベントナイト:Sued-Chemie(Munich(DE))社のLaundrosil DGA(登録商標)
(3)ゼオライト:合成ゼオライト 日本ビルダー(株)製
(4)漂白活性化剤粒子:
ドデカノイルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウム(三井化学(株)製)70質量%、非イオン界面活性剤(花王(株)製:KS108S95)3質量%と、陰イオン界面活性剤(花王(株)製:E-10P)13質量%、コハク酸(川崎化成工業(株)製)3質量%を混合機(ホソカワミクロン(株)製:ナウターミキサーNX-S型)に仕込み、ジャケット温度80℃、自転回転数121rpm、公転回転数5.5rpmで混合・昇温し、粉体の温度が60℃になった時点で予め70℃で溶融したポリエチレングリコール(花王(株)製:K-PEG6000LA)11質量%加え、更に25分混合を行った後に混合物を抜き出した。次に、得られた混合物を押出し造粒機(不二パウダル製:ペレッターダブルEXD-60)により孔径700μmのスクリーンを通して押出して圧密化した。得られた押出し物を冷却した後、整粒機(不二パウダル製:フラッシュミルFL200)にて解砕し、分級によって粒径を350〜1410μmに調整して漂白活性化剤造粒物を得た。
(5)その他の成分:硫酸ナトリウム(四国化成(株)製)
【0038】
(移染防止効果の評価方法)
染料(Kayanol Milling Scarlet FGW 酸性染料 日本化薬(株)製)を10ppm濃度、洗浄剤組成物を0.5質量%濃度になるように20℃、1Lの交換水に溶解させ、ポリエステル/コットン=65/35ブロード布((株)谷頭商店製)を5枚入れ、ターゴトメーターにて100rpm、10分洗浄後、水道水で濯いだ。乾燥後、Lab値を測定し、ΔEを算出した。ΔEが小さいほど、移染防止効果に優れることを意味する。この試験法では、ΔEが11以下であれば、十分な移染防止効果が得られていると言える。
【0039】
ΔEは、以下に従って算出した。上記の洗浄前のブロード布のL111値(L;明度、a;赤色度、b;黄色度)と、洗浄後のブロード布のL222値を測定し、以下の式に従い、ΔEを算出した。なお、Labの測定装置には、日本電色工業(株)製のSpectro Color Meter SE2000を使用した。
【0040】
ΔE=√{(L1−L22+(a1−a22+(b1−b22
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベントナイト、(b)過炭酸ナトリウム30〜80質量%、及び(c)界面活性剤を含有し、(a)/(c)の質量比が200〜1である、洗浄剤組成物。
【請求項2】
更に(d)漂白活性化剤を含有する、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
(c)界面活性剤が、非イオン界面活性剤及び/又は陰イオン界面活性剤である請求項1又は2記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2008−163077(P2008−163077A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351304(P2006−351304)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】