説明

洗浄剤組成物

【課題】環境や人体に悪影響を及ぼすことなく、油性汚染物質を容易に取り除くことができ、支持体に傷が付きにくい固形状の洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】油性汚染に対し洗浄能力を有する溶剤成分を内包するマイクロカプセルと有機可塑剤が樹脂媒体中に分散された洗浄剤組成物であり洗浄能力を有する溶剤成分中にリモネン化合物が20%以上含まれることが好ましく、また洗浄剤組成物中に占める洗浄能力を有する溶剤成分を内包するマイクロカプセルの質量比率が5〜60%の範囲であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染部分を直接擦ることによって、除去又は消去可能な消しゴム状の洗浄剤組成物に関するものであり、特に油性汚染の除去又は消去に効果的な固形状の洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に汚れの種類は、鉱物系の無機系物質と油脂、皮脂成分等からなる有機系物質とに大別される。衣類等に付着したこれらの汚れは、家庭用洗剤を用いることにより比較的容易に洗浄することが可能である。しかしながら、機械油、食用油、油性塗料、油性フェルトペン、クレヨン、粘着剤、接着剤、チューイングガム等の油性汚染物質等は、市販の家庭用洗剤だけでは容易に取りきれない場合が多い。そこで、ドライクリーニング法を用いるか、市販の油性のベンジンオイルや有機溶剤スプレータイプの洗浄剤を用いて、汚れ部分を直接浸したり、汚れ部分に噴霧したりして、布地やブラシ等を用いて強制的に擦り落とす操作が必要となる。
【0003】
また、最近では、公共建造物への落書きが社会問題化している。大面積の壁部分の汚れを落とす際には溶剤が多量に必要になるため、有機溶剤スプレータイプの洗浄剤では空気中への飛散量が多くなり、環境への悪影響や、人が吸い込んだり皮膚に付着することによる健康被害も無視できないものとなっていた。また、火災の危険性もあった。また、通常クレンザーと称される粉末状洗浄剤(磨き粉)は、主たる成分として粒子状の鉱物性研磨剤と界面活性剤とからなり、汚れを物理的に掻き落とすものである。しかし、ガラスや貴金属等比較的柔らかい支持体を対象に強く擦りすぎると、細かな傷がつき支持体の光沢を著しく損なうことがあるため、高価なものや柔らかいものの洗浄剤としてはふさわしくない。特に、炭酸水素ナトリウム(重曹)は、結晶が大きく、かつ堅く角張っていて、引っ掻き傷を伴いやすいものであるため、柔らかな支持体に対しては不向きであった。
【0004】
洗浄剤の環境や人体への悪影響、柔らかい支持体の擦過傷等の課題を解決するために、洗浄剤を内包するマイクロカプセルを繊維やシートに含浸又は付着させたシートを得て、水に浸したり、圧力を加えたりして、マイクロカプセルを破壊することにより、直接特別な洗浄剤を吹き付けたりしなくても、汚れを除去できるシートの提案が成されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、手の力のみでマイクロカプセルを完全に破壊するためには、極めて強い力が必要であり、破壊されずに洗浄に寄与しなかったマイクロカプセルが多く残存することになるため、充分汚れが落ちないばかりでなく、洗浄に与らなかったマイクロカプセルが多量にシート上に残存してしまうために非効率的であるという欠点があった。
【0005】
マイクロカプセルを用いたシートとは異なり、メガネや光学レンズ等の傷つきやすい支持体の汚れを拭き取ることを目的とするシートとして、構成される繊維の材質、太さ、製造方法を工夫することにより、優れた洗浄機能を有する不織布、織布等の布帛が提案されている(例えば、特許文献4及び5参照)。これらの布帛は、微細繊維で構成されているため、汚れを掻き取っても支持体を傷つけることがない。そして、汚れのみを落とすことが可能であるため、使い捨てのシートとして広く使用されている。しかしながら、極細繊維で構成される布帛は、比較的高価格であるので、メガネ、カメラ等の光学機器、貴金属等の汚れやほこり落としに用途が限定されるものであった。
【特許文献1】特開平8−118894号公報
【特許文献2】特開平8−324192号公報
【特許文献3】実開平3−010840号公報
【特許文献4】特開平5−192284号公報
【特許文献5】特開平8−260325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、環境や人体に悪影響を及ぼすことなく、油性汚染物質を容易に取り除くことができ、支持体に傷が付きにくい洗浄剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題は、油性汚染に対し洗浄能力を有する溶剤成分(以下、洗浄用溶剤という)を内包するマイクロカプセルと有機可塑剤を樹脂媒体中に分散し、消しゴム状の洗浄剤組成物とすることにより達成される。
【発明の効果】
【0008】
発明の洗浄剤組成物は、ゴム弾性体なので、通常の消しゴムと同様の使い方で、汚染部分を擦ることによって、マイクロカプセル内の洗浄用溶剤成分が流出して、油汚れ、塗料、クレヨン、油性フェルトペン等の油性汚染物質を、大量の有機溶剤を使用することなく、容易に消去又は除去することが可能である。通常の家庭内や公共建造物では、火災の危険性があるため多量の有機溶剤を噴霧することは困難であるが、洗浄用溶剤をマイクロカプセル化し、さらに消しゴム状、つまり、固形状化することによって、霧状に噴霧することが不必要であるため、火災防止及び健康上の安全性を高めることができる。さらに、本発明の洗浄剤組成物は、固形状なので、携帯性にも優れた洗浄剤組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で述べる洗浄剤組成物の基本構成物は、1.洗浄用溶剤成分を内包するマイクロカプセル、2.1.のマイクロカプセルを固形状化せしめるための樹脂媒体、3.洗浄剤組成物に粘弾性を付与するための有機可塑剤である。
【0010】
2.の樹脂媒体は、特に限定はされないが、マイクロカプセルとの相溶性が良い熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体−ポリ塩化ビニルグラフト重合体、ポリ塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−アクリルエステル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−アクリル共重合体、天然ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体等が単独又は混合して用いられる。これらの樹脂の軟化点は、マイクロカプセルを練り込んだ場合の劣化を極力防止するために、150℃以下であることが好ましい。
【0011】
1.のマイクロカプセルに内包される洗浄用溶剤としては炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、動植物油等の有機溶剤等が挙げられる。洗浄用溶剤の具体例としては、ブチルアルコール(3異性体を含む)、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアルコール、テルペンアルコール、ヘキサン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、3−メトキシ−3−メチル−ブチルアセテート、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、ノナン、2,2,5−トリメチルヘキサン、デカン、不飽和脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、ブチルベンゼン、p−シメン、シクロヘキシルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ジペンチルベンゼン、ドデシルベンゼン、スチレン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘキセン等、
【0012】
α−ピネン、デカリン、石油エーテル、石油ベンジン、石油ナフサ、リグロイン、工業ガソリン、灯油、ソルベントナフサ、ミネラルスピリット、ショウノウ油、テレピン油、テルペン類、コハク酸、グリタル酸、アジピン酸のジメチルエステル等の炭化水素類や脂肪酸エステル類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、塩化エチル、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、臭化メチル等のハロゲン化炭化水素類等が挙げられる。これらは汚れの種類、マイクロカプセル化のし易さ、毒性等の観点から選択される。
【0013】
洗浄用溶剤の中でも、比較的マイクロカプセル化し易く、なおかつ油性汚染物質に対する洗浄効果が高いものとして、テルペン類であるリモネン化合物が挙げられる。リモネン化合物は、単環式モノテルペンの一種で、天然にはd体とl体の2種類が存在する。特に、d体はレモン等の柑橘類全般の果皮に含まれる天然物であり、洗浄力だけでなく、抗菌性にも優れるため、特に好ましい洗浄用溶剤として挙げられる。リモネン化合物の洗浄用溶剤中に占める質量比率は、20%以上が好ましく、50%以上がより好ましい。20%未満の質量比率であると、洗浄効果が劣るため好ましくない。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物中に、3.有機可塑剤を添加することにより、洗浄剤組成物の強度の調節が可能で、汚染物質除去効果も高めることが可能となるので、適量添加することが好ましい。有機可塑剤の具体例としては、フタル酸ジエチルヘキシル、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸イソノニル、フタル酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、アゼライン酸ジオクチル、リン酸トリクレシル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル等の多塩基性酸エステル系可塑剤やアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸等の二塩基性酸とグリコール、ハロゲン化炭化水素、脂肪族炭化水素、グリセリン類及び一塩基性酸等とのポリマー、アクリロニトリル系合成ゴム、ポリエチレングリコールエステル、ファクチスのような高分子系可塑剤が挙げられる。有機可塑剤の添加量は、樹脂媒体の種類によっても異なるが、洗浄剤組成物の硬さ、消去性等の関係から、樹脂媒体100質量部に対し、50〜200質量部の範囲で使用するのが好ましい。200質量部を超えると、組成物が柔らかすぎて粘着性が生じたり、更に多すぎる場合には粘弾性を失い溶液状を呈する様になり、本発明の洗浄剤組成物の特徴である固形状を逸脱してしまうため好ましくない。逆に50質量部未満であると、樹脂媒体が軟化しなくなり、脆性が著しくなり、ぱさついた状態になるため好ましくない。
【0015】
1.のマイクロカプセルの製法は特に限定されない。具体的方法としては、相分離法、液中乾燥法、融解分散冷却法、パンコーティング法、界面重合法、インサイチュー法、液中硬化被覆法等が挙げられる。内包される洗浄用溶剤の種類に合わせて、マイクロカプセル化の方法を適宜選択することができる。マイクロカプセルの強度を調節する因子として、膜厚と粒子径の要因が大きい。特に、粒子径が小さいほど、剪断応力に対して壊れにくくなるため、マイクロカプセルは極力大粒子に設定することが望ましい。しかし、あまりに大きすぎると、樹脂媒体や有機可塑剤との混練りの際に容易にマイクロカプセルが破壊されてしまうため、両者を満足する粒子径に設定する必要がある。これら両者の条件を満たす粒子径の条件として、マイクロカプセルの一次粒子径としては、1〜100μmの範囲が好ましく、5〜50μmの範囲がより好ましいことが分かった。なお、本発明で述べる一次粒子径とは、米国コールター社製粒度測定装置マルチサイザーII型で測定した体積平均粒子径をいう。
【0016】
マイクロカプセル壁材の具体例としては、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、メラミンホルマリン樹脂、尿素ホルマリン樹脂、ワックス類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明のマイクロカプセルは樹脂媒体中に練り込まれるため、水分を保持していると均一に樹脂媒体中に分散しにくくなる。そのため、乾燥した微細粉末状にして練り込まれることが好ましい。微細粉末状に乾燥するためには、市販の乾燥装置が用いられ、具体的には、スプレードライヤー、ドラムドライヤー、凍結乾燥機等が用いられる。粉体は大きすぎると樹脂媒体中への分散性が悪くなるので、10mm以下、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは100μm以下にすることが好ましい。以下、この粉体の粒子径をマイクロカプセル二次粒子径とする。
【0017】
本発明で用いられる洗浄剤組成物の中に占める洗浄用溶剤を内包するマイクロカプセルの固形質量比率は5〜60%の範囲、好ましくは20〜60%の範囲、さらに好ましくは30〜60%の範囲で添加することが好ましい。洗浄効果を増すためには含有比率は高い方が好ましいが、マイクロカプセルの質量比率が極端に高すぎると、洗浄剤組成物の弾力性が低下し、パサパサした物性になり、洗浄剤組成物が折れやすくなるため好ましくない。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物中には、必要に応じて無機質顔料や劣化防止剤を添加することもできる。具体的には、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、シリカ、珪藻土、酸化マグネシウム、タルク、セリサイト、石英粉末、モンモリロナイト等の充填剤、染料等の着色剤、安定剤、滑剤、紫外線吸収剤、防カビ剤、香料等の各種添加物を適宜選択して使用することが可能である。
【0019】
次に、本発明の洗浄剤組成物の製法を簡単に説明する。(I)配合工程:樹脂媒体と有機可塑剤とを混合し、100℃以上に加熱して、樹脂媒体を軟化させる。(II)混合工程:マイクロカプセルや必要な添加剤を(I)の樹脂媒体軟化物と良く混合し、均一なスラリー状の混合物を得、必要であれば脱泡操作等を加える。(III)プレス工程:得られたスラリー状の混合物を成型し、必要とする形態に凝固させ、適当なサイズに裁断して、工程を終了する。成型方法は、押し出し型成型法や型枠に入れてプレス成形する手法等が用いられる。
【実施例】
【0020】
マイクロカプセル粉体の調製例−1
メラミン粉末5質量部に37質量%ホルムアルデヒド水溶液7質量部と水30質量部を加え、pHを8に調整した後、約70℃まで加熱して、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。pHを4.5に調整した10質量%スチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液100質量部中に、洗浄用溶剤としてd−リモネン80質量部を激しく撹拌しながら添加し、粒子径が20μmになるまで乳化を行った。得られた乳化液に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加して、70℃で2時間撹拌を施した後、pHを9まで上げて、乾燥固形分濃度40質量%のマイクロカプセル分散液を得た。かくして得られたマイクロカプセル分散液をスプレードライヤーで、水分含有率1質量%以下まで乾燥し、粉体粒子径50μmのマイクロカプセル粉体を得、樹脂中に分散するために使用するマイクロカプセル粉体−1を得た。
【0021】
マイクロカプセル粉体の調製例−2
上記調整例−1で洗浄用溶剤として使用したd−リモネン80質量部の代わりに、d−リモネン40質量部と石油系溶剤ミネラルスピリット40質量部の混合物を洗浄用溶剤として用いた以外は同様の手法で、マイクロカプセル粉体−2を得た。
【0022】
マイクロカプセル粉体の調製例−3
上記調整例−1で洗浄用溶剤として使用したd−リモネン80質量部の代わりに、d−リモネン20質量部と石油系溶剤ミネラルスピリット60質量部の混合物を洗浄用溶剤として用いた以外は同様の手法で、マイクロカプセル粉体−3を得た。
【0023】
マイクロカプセル粉体の調製例−4
上記調整例−1で洗浄用溶剤として使用したd−リモネン80質量部の代わりに、d−リモネン12質量部と石油系溶剤ミネラルスピリット68質量部の混合物を洗浄用溶剤として用いた以外は同様の手法で、マイクロカプセル粉体−4を得た。
【0024】
マイクロカプセルの調製例−5
上記調整例−1で洗浄用溶剤として使用したd−リモネン80質量部の代わりに石油系溶剤ミネラルスピリット80質量部を単独で使用して洗浄用溶剤として用いた以外は同様の手法で粉体化し、マイクロカプセル粉体−5を得た。
【0025】
実施例1
市販のポリ塩化ビニル樹脂30質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル40質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を30質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0026】
実施例2
市販のポリ塩化ビニル樹脂30質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル40質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−2を30質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0027】
実施例3
市販のポリ塩化ビニル樹脂30質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル40質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−3を30質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0028】
実施例4
市販のポリ塩化ビニル樹脂30質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル40質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−4を30質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0029】
実施例5
市販のポリ塩化ビニル樹脂47質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル50質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を3質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0030】
実施例6
市販のポリ塩化ビニル樹脂45質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル50質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を5質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0031】
実施例7
市販のポリ塩化ビニル樹脂20質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル30質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を50質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、粘凋かつ均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して完全に固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0032】
実施例8
市販のポリ塩化ビニル樹脂15質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル25質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を60質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0033】
実施例9
市販のポリ塩化ビニル樹脂10質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル20質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を70質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全に脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0034】
実施例10
市販のポリ塩化ビニル樹脂30質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル40質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を10質量部、無機質顔料として重質炭酸カルシウム粉末20質量部を添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧して完全脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して完全に固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0035】
実施例11
市販のポリ塩化ビニル樹脂30質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル40質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−5を30質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み、粘凋かつ均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧し脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して完全に固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0036】
(比較例1)
市販のポリ塩化ビニル樹脂30質量部に、有機可塑剤としてフタル酸ジオクチル40質量部を混合し、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体を使用することなく、重質炭酸カルシウムを30質量部添加し、ニーダーを用いてよく練り込み均一な混合液を得た。この混合液を徐々に減圧し脱気した後、120℃に保温したアルミ製のトレーに流し込み、120℃で10分間放置し、水冷して完全に固まらせた後取り出し、固形状の洗浄剤組成物を得た。
【0037】
(比較例2)
市販のポリ塩化ビニル樹脂50質量部に、有機可塑剤を添加することなく、120℃に保温しながら樹脂を完全に溶解させた後、マイクロカプセル粉体−1を同量の50質量部添加し、ニーダー内で混練りし、室温に冷却したところ、弾性のない極めて堅い塊状の洗浄剤組成物が得られた。
【0038】
(比較例3)
d−リモネンのマイクロカプセル粉体30質量部の代わりに、平均粒径300μmの炭酸水素ナトリウム(重曹)30質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして、洗浄剤組成物を得た。
【0039】
<評価1:洗浄能力>
厚さ200μmのアルミ板に、黒発色の油性フェルトペン(商品名:マジックインキ、寺西化学工業)を用いて、間隙なく直線を書き並べ、3cm四方の黒色塗膜部分を形成した。塗膜部分をよく乾燥させて、洗浄能力確認用の試料とした。実施例及び比較例で得られた洗浄剤組成物を用いてアルミ板上の塗膜部分を市販の消しゴムと同じ要領で、手で10回擦った後の塗膜部分の変化を目視で評価した。洗浄能力は5段階で評価した。
5:アルミ板の地肌が完全に見えるまでに、塗膜部分がきれいに落ちた状態。
4:アルミ板の地肌がほとんど見えるまでに、塗膜部分が落ちた状態。
3:アルミ板の地肌が薄く曇っており、かつ一部の塗膜部分が残っている状態。
2:塗膜部分が落ちているが、アルミ板の地肌が薄く曇っている状態。
1:塗膜部分が全く落ちていない状態。
【0040】
<評価2:アルミ板の損傷>
評価1と同様の方法で、洗浄剤組成物を用いて10回擦った後のアルミ板の地肌の傷つき状態を目視で判断した。
【0041】
<評価3:洗浄剤組成物の物理的強度>
得られた洗浄剤組成物を評価2で用いたアルミ板を用いて、極めて強い力で20回擦った後の変形状態を評価した。洗浄剤組成物に粘弾性があり、強度を有すると、擦った後も変形がなく、洗浄効果の持続性に優れることを示す。
【0042】
実施例と比較例の洗浄剤組成物を評価した結果を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜11の洗浄剤組成物は洗浄能力が高く、そのまま市販の消しゴムと同じ要領で擦るだけで油性の塗膜を除去することができた。また、消し屑は発生するが、塗膜以外の部分にまで、洗浄用溶剤が飛散又は流出することがなかった。これに対し、重質炭酸カルシウムを用いた比較例1や重曹を用いた比較例3の洗浄剤組成物では、洗浄効果が得られないばかりか、アルミ板の傷つきも目立っていた。
【0045】
実施例1〜4、11の洗浄剤組成物を比較すると、洗浄用溶剤としてd−リモネンの含有比率が高いものほど、高い洗浄能力を示した。
【0046】
実施例1、5〜9の洗浄剤組成物を比較すると、洗浄剤組成物に占めるマイクロカプセルの質量比率が高い洗浄剤組成物ほど高い洗浄能力を示した。特に、マイクロカプセルの質量比率が30質量%以上である実施例1、7〜8の洗浄剤組成物での洗浄能力が高かった。マイクロカプセルの質量比率が70質量%である実施例9の洗浄剤組成物は、擦っている途中で、その一部がぽろぽろと崩れることがあった。
【0047】
比較例2の結果から、有機可塑剤の添加は必要であり、洗浄剤組成物の柔軟性と粘弾性を付与し、下地の損傷を低減させるために必要な素材である。
【0048】
実施例10と比較例1の洗浄剤組成物を比較すると、どちらも重質炭酸カルシウムを含有しているが、d−リモネンのマイクロカプセルを併用している実施例10の洗浄剤組成物の方が、洗浄能力が高く、アルミ板の損傷も発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の洗浄剤組成物の使用対象としては、油性筆記用具の消去の他に、台所の流し、換気扇、コンロ付近の油汚れはもちろんのこと、建造物に描かれた落書き、自動車、印刷機のロール、ビル壁やビル窓等の大面積の部分の汚れ等が挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性汚染に対し洗浄能力を有する溶剤成分を内包するマイクロカプセルと有機可塑剤とが樹脂媒体中に分散されてなる洗浄剤組成物。
【請求項2】
該溶剤成分中に占めるリモネン化合物の質量比率が20%以上である請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
該洗浄剤組成物中に占める該マイクロカプセルの質量比率が5〜60%である請求項1記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2009−7445(P2009−7445A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168988(P2007−168988)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】