説明

洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパー

【課題】洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの強度、柔らかさ、ほぐれ易さを評価できる洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの測定方法を提供する。
【解決手段】 洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの測定方法であって、
前記トイレ用トイレットペーパーを4組重ね縦横を114mmとした試験片を、等間隔でひし形連続溝が5mm間隔で形成されたアクリル板からなる摩擦プレート上に載置して水を0.5mL滴下し浸透後、前記試験片上に重さ300g、直径55mm、高さ16mmの錘を載せ、該試験片の一端にクリップで紐を付け、滑車を通して引張り試験機で引っ張り速度10mm/secで前記摩擦プレート上を300mmの距離引っ張る試験を5回繰り返し、前記シートの破れ及びムケの有無を目視し、以下の基準で湿潤摩擦テストを評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温水洗浄便座等の洗浄機能付きトイレでの使用に適したトイレットペーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、温水洗浄便座等の洗浄機能付きトイレが急速に普及しており、さらに洗浄便座と便器の一体型トイレも販売されている。そして、このような洗浄機能付きトイレにおいても、トイレットペーパーで局部に付いた水分を拭き取るのが通例である。
ところが、通常のトイレットペーパーは水溶性が高く、洗浄時に局部に付着した水分で容易に破れたり、繊維がほぐれて付着したりするため、洗浄機能付きトイレで使用しづらいという問題がある。
【0003】
このようなことから、原料パルプに対し、カチオン性アルデヒド変性ポリアクリルアミド系共重合体を含有させて抄紙し、ほぐれ易さと紙の強度をコントロールしたトイレットペーパーが開発されている(特許文献1)。
又、原料パルプに分散剤、紙力増強剤、サイズ剤を所定量添加することで、水に濡れたときに破れにくいトイレットロールが開発されている(特許文献2)。
さらに、紙に湿潤紙力増強剤を使用して湿潤強度を保持し、エンボス加工することによってボリューム感と柔らかさを改善する技術が開発されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3512481号公報
【特許文献2】特開2006-320688号公報
【特許文献3】特開平2005-168582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の技術の場合、一時湿潤紙力剤としてカチオン性アルデヒド変性ポリアクリルアミド系共重合体を添加するが、湿潤強度の劣化に分単位の時間を要し、強度低下も従来の半分程度と小さいことから強度コントロールが難しく、湿潤強度が高くなりすぎて、ほぐれ易さを適性に管理するのが困難で生産性に難点がある。
又、特許文献2記載の技術の場合、水の浸透性を遅らせることで水に濡れたときの強度を維持しているが、速やかな水分の拭取り性能に劣るという問題がある。
又、特許文献3記載の技術の場合、湿潤紙力増強剤へ適正な範囲での強度コントロールが難しく、ほぐれ易さがバラつくという問題がある。
従って本発明は、強度、柔らかさ、ほぐれ易さに共に優れた洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの測定方法は、前記トイレ用トイレットペーパーを4組重ね縦横を114mmとした試験片を、等間隔でひし形連続溝が5mm間隔で形成されたアクリル板からなる摩擦プレート上に載置して水を0.5mL滴下し浸透後、前記試験片上に重さ300g、直径55mm、高さ16mmの錘を載せ、該試験片の一端にクリップで紐を付け、滑車を通して引張り試験機で引っ張り速度10mm/secで前記摩擦プレート上を300mmの距離引っ張る試験を5回繰り返し、前記シートの破れ及びムケの有無を目視し、以下の基準で湿潤摩擦テストを評価する。
但し、
湿潤摩擦テスト(ムケ)の評価基準
◎:ムケが全く見られない(試験5回とも)
○:表面の1シートにムケが極僅かに見られるが、シートから剥がれない(試験5回のうち2回以内なら○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートにムケが僅かにみられるがポロポロほぐれない(試験5回のうち2回まで該当すれば評価△、但し3回以上であれば×とする)
×:2シート以上にムケが顕著に生じた(5回のうち1回でも該当すれば評価×)
湿潤摩擦テスト(破れ)の評価基準
◎:全く破れない(試験5回とも)
○:表面の1シートが僅かに(5mm以下)破れる(試験5回のうち2回まで該当すれば評価○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートが(10mm以下)破れる(試験5回のうち1回でも該当すれば評価△、2回以上であれば×とする)
×:3シート以上に破れが生じた(試験5回のうち1回でも該当すれば評価×)
【0007】
前記洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーがシートを2枚重ねしてなっているとよい。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、洗浄機使用後の水分拭取り性能である強度、吸水性、使用感、使用後の水洗ほぐれ易さを評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】湿潤摩擦テストを行うための試験機の構成を示す上面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの測定方法は、後述する図1に示すように、トイレ用トイレットペーパーを4組重ね縦横を114mmとした試験片を、等間隔でひし形連続溝が5mm間隔で形成されたアクリル板からなる摩擦プレート上に載置して水を0.5mL滴下し浸透後、前記試験片上に重さ300g、直径55mm、高さ16mmの錘を載せ、該試験片の一端にクリップで紐を付け、滑車を通して引張り試験機で引っ張り速度10mm/secで前記摩擦プレート上を300mmの距離引っ張る試験を5回繰り返し、前記シートの破れ及びムケの有無を目視し、以下の基準で湿潤摩擦テストを評価する。
但し、
湿潤摩擦テスト(ムケ)の評価基準
◎:ムケが全く見られない(試験5回とも)
○:表面の1シートにムケが極僅かに見られるが、シートから剥がれない(試験5回のうち2回以内なら○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートにムケが僅かにみられるがポロポロほぐれない(試験5回のうち2回まで該当すれば評価△、但し3回以上であれば×とする)
×:2シート以上にムケが顕著に生じた(5回のうち1回でも該当すれば評価×)
湿潤摩擦テスト(破れ)の評価基準
◎:全く破れない(試験5回とも)
○:表面の1シートが僅かに(5mm以下)破れる(試験5回のうち2回まで該当すれば評価○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートが(10mm以下)破れる(試験5回のうち1回でも該当すれば評価△、2回以上であれば×とする)
×:3シート以上に破れが生じた(試験5回のうち1回でも該当すれば評価×)
【0011】
まず、測定対象となるトイレ用トイレットペーパーの構成例について説明するが、本発明の測定対象は下記に限られるものではない。
好ましくは、洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーは、以下に述べるシートを2枚重ねしてなる。なお、特に断らない限り、%は質量%を表す。
このシートの1枚当りの坪量を15.0g/m以上19.0g/m以下とする。
又、上記シートは、重さ平均繊維長約2.5mm以上で且つ比引張り強さが18.0(N・m/g)以上の第1パルプ70質量%以上と、重さ平均繊維長1.0mm以下で且つ比引張り強さが18.0(N・m/g)以上の第2パルプ30%質量以下からなる原料パルプを抄造してなる。
第1パルプの重さ平均繊維長は針葉樹パルプにほぼ該当し、第2パルプの重さ平均繊維長は広葉樹パルプにほぼ該当する。
パルプ繊維は水に触れると繊維同士の水素間結合が瞬時にはずれ、結合強度を失う。しかし、長繊維の第1パルプを70質量%以上配合して繊維同士の絡みつきを大きくすれば、繊維間の結合が失われても、物理的な絡み合いによってシートの強度を水分拭取りの行為に十分耐える強度レベルに確保することができる。水分拭取りの行為に十分耐える強度レベルとは、通常の水分拭取りの行為によって、シート表面の繊維がポロポロムケたりシートが破れたりしない強度である(後述の実験結果参照)。
尚、ここで言う比引張り強さはJIS P 8223「パルプ−試験用手すき紙−物理的物性試験方法」による手すき紙による乾燥時の強度である。一般に乾燥時の強度は湿潤時の強度と正の相関があるので、乾燥時の強度を目安にすることができる。
【0012】
また、本発明では原料パルプに紙力増強剤を配合して強度向上を補助する必要はない。湿潤紙力剤は、対パルプ0.01%程度の微量添加でも鋭敏に作用し、強度発現のバラツキも大きいことから、シートが水洗時にほぐれ難い原因になる。
シート中の第1パルプの含有量が70質量%未満になると、長繊維のパルプの割合が減少し、シートの表面強度が低下し、湿潤時の水分拭き取り時に繊維がポロポロと剥け易くなる。さらに、シートの強度が弱い場合には破れてしまう。
また、シート1枚当りの坪量が15.0g/m未満の場合も、同様に強度低下が生じる。一方、シート1枚当りの坪量が19.0g/m未満を超えると、シートの強度は確保されるが、シートがゴワついて硬くなり、また水洗時のほぐれ易さも損なわれる。
【0013】
第1パルプの繊維粗度が10〜20mg/100mであり、第2パルプの繊維粗度が12mg/100m以下である。
繊維粗度は、強度と地合とウェブの柔らかさを決定する重要な要素であり、繊維粗度を適正な範囲に管理することで、柔らかで地合の整った強度の高い紙が得られる。
第1パルプの繊維粗度が10mg/100m未満であると、繊維が細かすぎて長繊維としての役割を満たさない。第1パルプの繊維粗度が20mg/100mを超えると、一般に繊維が厚膜且つ剛直となり、しなやかさが損なわれる。
第2パルプの繊維粗度が12mg/100mを超えると、短繊維に分類される広葉樹パルプの場合、細胞壁が厚く剛直となり、しなやかさに欠け製品がガサついたり硬くなる原因になる。
【0014】
ここで、重さ平均繊維長は、
【数1】

で表される。但し、K:最大繊維長さ、xi;繊維長さ、ni;長さxiを有する繊維の数である。
又、繊維粗度は、{繊維重量/(測定本数×数平均繊維長)}で表され、繊維の平均的な太さを表す。
なお、重さ平均繊維長及び繊維粗度は、所定の測定器(例えば、ローレンツェン・アンド・ベットレー(Lorentzen & Wettre)株式会社の製品名ファイバーテスター(Fiber Tester))を用いて測定することができる。
フリーネスは、JIS P 8121に規格された「パルプのろ水度試験方法」で測定することができ、比引張り強さ、JIS P 8223に規格された「パルプ−試験用手すき紙−物理的特性の試験方法」により測定した値(坪量で補正した引っ張り強さの値)を用いることができる。
【0015】
以上のように、本発明の実施形態に係る洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーは、1枚当りの坪量が比較的高いシートを2枚重ねしているため、面積あたりの吸水速度が速く、吸水量が大きくなる。又、平均繊維長が長い第1パルプを多く含んでいるので、シート(ウェブ)の強度が高く、濡れて拭いた時に紙のムケ(濡れたトイレットペーパーの肌への付着)が小さく、洗浄機能付きトイレでの使用に適する。さらに、強度が高いわりに柔らかく、ほぐれ易さに優れる。
【0016】
本発明の実施形態に係る洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーにおいて、上記した第1パルプのフリーネスが650mlCSF以上で、第2パルプのフリーネスが500mlCSF以上であることが好ましい。第1パルプのフリーネスが650mlCSF未満であり、第2パルプのフリーネスが500mlCSF未満であると、抄紙工程での脱水性が低下し、エネルギー原単位が増加する要因になる。
又、第1パルプ及び第2パルプのクレム吸水度がいずれも80mm以上であることが好ましい。各パルプのクレム吸水度が80mm未満であるとやや吸水速度が低下して、軽くサッと拭取れないので満足度が低下する。
クレム吸水度は、JIS P 8141に規格され「紙及び板紙のクレム法による吸水度試験法」にて測定することができ、短冊紙片に毛細管現象で吸水される吸水量を示す。
【0017】
本発明の実施形態に係る洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーにおいて、シートにそれぞれ5〜15個/cmのエンボスが施され、各シートのエンボス凸面同士、又は各シートのエンボス凸面とエンボス凹面同士が水溶性糊によって接着され、当該接着部分の接着面積率が前記シートの面積あたり5〜20%であることが好ましい。
各シートのエンボス凸面同士を合わせて張り合わせたものは、ピン・トゥー・ピンエンボスと称され、各シートのエンボス凸面とエンボス凹面同士を合わせて張り合わせたものは、ネステッドエンボスと称される。
上記した接着面積率は、同一形状のエンボス模様の場合には(エンボス1個当りの凸面頂頭部の面積(平方センチメートル))×(単位面積(平方センチメートル)当りのエンボス個数)で表される。又、エンボス凸面の頂頭部の面積は、エンボスパターンの設計上の面積から算出する。
又、水溶性糊を用いることで、トイレに流したときのほぐれ易さを向上させる。
接着面積はトイレットペーパーの柔らかさと、ほぐれ易さに影響する。接着面積率がシートの面積あたり5%未満であると、プライ剥がれが生じ易く、トイレットペーパーのボリュウム感が低下し、肌触りが劣る。接着面積率がシートの面積あたり20%を超えると、トイレに流したときのほぐれ易さが劣る。ほぐれ易さはJIS−P4501「トイレットペーパー」規格では100秒以内とされているが、より安全には60秒以内が望ましい。
【0018】
水溶性糊がメチルセルロース、澱粉、及びPVAの群から選ばれる1種以上を主成分とする接着剤であり、前記水溶性糊は固形分1〜10%の糊であって、前記水溶性糊の塗布量が0.1〜0.8g/mであることが好ましい。メチルセルロース系接着剤としては、JW-5612(積水フーラー製)、PVA系接着剤としては、JW-5606(積水フーラー製)、カネビノールTV200(ヘンケルテクノロジージャパン製)が挙げられる。
【0019】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【実施例】
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの例に限定されるものではない。
【0021】
表2に示す第1パルプ及び第2パルプを配合し実際のフォードリニア型ティシュマシンでベースシートを抄造した。このシートをエンボス加工し(エンボス凸面の頂頭部の面積:0.96mm、エンボス個数:12個/cm)、メチルセルロース系接着剤(JW-5612、固形分1〜3%、積水フーラー製)を用いてシートを2枚重ねして各シートのエンボス凸面とエンボス凹面同士を接着(ネステッドエンボス)してトイレットペーパーを製造した。なお、比較例1は、メチルセルロース系接着剤に代えてPVA系接着剤(JW-5606 固形分6-10%)を、エンボスの接着に使用した。
得られたトイレットペーパーに対し、以下の湿潤摩擦テスト(ムケ及び破れ)及びハンドフィールの評価を行った。
【0022】
湿潤摩擦テスト
図1に示す試験機を作成し、得られたトイレットペーパーを4組(2プライシート×4)重ねた試験片を取り付けて引張り、評価を行った。この試験機は、摩擦プレート(アクリル板)2と、錘4(重さ300g、直径55mm、高さ16mm)と、滑車6とを備え、摩擦プレート2には、等間隔でひし形連続溝が5mm間隔で形成されている。この溝の幅が1.5mm、深さが1mmである(図1(a)の上面図)。
又、試験片10の長さはミシン目間隔(114mm)とし、幅はトイレットペーパー製品幅(114mm)とした。そして、試験片10を摩擦プレート2の一端に載置して水を0.5mL滴下し浸透後、試験片10上に錘4を載せ、試験片10の一端にクリップ11で紐12を付け、滑車6を通して図示しない引張り試験機(テンシロン)で引っ張り速度10mm/secで摩擦プレート2上を300mmの距離引っ張った(図1(b)の側面図)。この試験を5回繰り返し、シートの破れ、及びシートが部分的に剥けたか否かを目視し、以下の基準で評価した。
【0023】
湿潤摩擦テスト(ムケ)の評価基準
◎:ムケが全く見られない(試験5回とも)
○:表面の1シートにムケが極僅かに見られるが、シートから剥がれない(試験5回のうち2回以内なら○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートにムケが僅かにみられるがポロポロほぐれない(試験5回のうち2回まで該当すれば評価△、但し3回以上であれば×とする)
×:2シート以上にムケが顕著に生じた(5回のうち1回でも該当すれば評価×)
湿潤摩擦テスト(破れ)の評価基準
◎:全く破れない(試験5回とも)
○:表面の1シートが僅かに(5mm以下)破れる(試験5回のうち2回まで該当すれば評価○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートが(10mm以下)破れる(試験5回のうち1回でも該当すれば評価△、2回以上であれば×とする)
×:3シート以上に破れが生じた(試験5回のうち1回でも該当すれば評価×)
【0024】
なお、湿潤摩擦テストの結果と、このテストに用いたトイレットペーパー試験片を男女4名ずつのモニターに使用してもらった使用感の結果とを表1に示す。使用方法には個人差があり、評価にバラツキが見られるが、湿潤摩擦テストで○以上の評価であれば、実際の使用感が満足できるレベルと判断される。
【0025】
【表1】

【0026】
ハンドフィールは、得られたティッシュペーパーに対し、5人のパネラーによる手触り官能試験(極めて柔らかい:5点、まあまあ柔らかい:4点、普通:3点、やや硬い:2点、硬い:1点)を行って評価した。ハンドフィールの評価基準は以下とした。
◎:5人の平均4.5点以上
○:5人の平均3.5以上
△:5人の平均3.5未満3.0以上
×:5人の平均3.0未満
【0027】
又、パルプの各種特性を測定した。パルプの重さ平均繊維長及び繊維粗度は、測定器(ローレンツェン・アンド・ベットレー(Lorentzen & Wettre)株式会社の製品名ファイバーテスター(Fiber Tester))を用いて測定した。
フリーネスは、JIS P 8121に規格された「パルプのろ水度試験方法」で測定し、比引張り強さは、JIS P 8223に規格された「パルプ−試験用手すき紙−物理的特性の試験方法」により測定した値(坪量で補正した引っ張り強さの値)を用いた。クレム吸水度は、JIS P 8141に規格された「紙及び板紙のクレム法による吸水度試験法」にて測定した。
吸水速度(秒)は、2枚重ねシート上の約10mmの高さから温度20±1℃の蒸留水を0.1ml滴下し、水滴がシートに接触したときから、完全にシートに吸収されて反射光が消えるまでの時間を0.1秒単位で測定した。。ほぐれ易さ(秒)はJIS P-4501「トイレットペーパー」に記載されるほぐれ易さ試験法によった。
【0028】
さらに、実際のフォードリニア型ティシュマシンで表2に示す第1パルプ及び第2パルプを配合したパルプスラリーを用いてシートを抄造し、このシートの引張強さを、JIS P 8113「紙及び板紙−引張特性の試験法」に従って測定した(表2の「評価」の欄参照)。
【0029】
得られた結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表2から明らかなように、各実施例の場合、ティッシュペーパーがほぐれ易く、ハンドフィールに優れ、湿潤摩擦テストも良好であり、洗浄機能付きトイレでの使用に適したものとなった。
一方、シート1枚当りの坪量が15.0g/m未満である比較例1の場合、湿潤摩擦テストに劣り、水分で容易に破れた。また、糊の量が多いため、やや硬く感じ、ほぐれ易さが悪く洗浄機能付きトイレでの使用に適さないものとなった。
シートの1枚当りの坪量が19.0g/mを超えた比較例2の場合、硬くなって肌触りが悪いと共に、ほぐれ易さに劣った。
シート中の第1パルプの配合量が70質量%未満である比較例3の場合、長繊維のパルプの割合が減少し、表面強度が低くなり繊維のムケが生じ、また繊維粗度の大きな繊維の割合が大きくなったためにハンドフィールに劣った(硬くなった)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの測定方法であって、
前記トイレ用トイレットペーパーを4組重ね縦横を114mmとした試験片を、等間隔でひし形連続溝が5mm間隔で形成されたアクリル板からなる摩擦プレート上に載置して水を0.5mL滴下し浸透後、前記試験片上に重さ300g、直径55mm、高さ16mmの錘を載せ、該試験片の一端にクリップで紐を付け、滑車を通して引張り試験機で引っ張り速度10mm/secで前記摩擦プレート上を300mmの距離引っ張る試験を5回繰り返し、前記シートの破れ及びムケの有無を目視し、以下の基準で湿潤摩擦テストを評価する洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの測定方法。
但し、
湿潤摩擦テスト(ムケ)の評価基準
◎:ムケが全く見られない(試験5回とも)
○:表面の1シートにムケが極僅かに見られるが、シートから剥がれない(試験5回のうち2回以内なら○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートにムケが僅かにみられるがポロポロほぐれない(試験5回のうち2回まで該当すれば評価△、但し3回以上であれば×とする)
×:2シート以上にムケが顕著に生じた(5回のうち1回でも該当すれば評価×)
湿潤摩擦テスト(破れ)の評価基準
◎:全く破れない(試験5回とも)
○:表面の1シートが僅かに(5mm以下)破れる(試験5回のうち2回まで該当すれば評価○、但し3回以上であれば△とする)
△:表面の2シートが(10mm以下)破れる(試験5回のうち1回でも該当すれば評価△、2回以上であれば×とする)
×:3シート以上に破れが生じた(試験5回のうち1回でも該当すれば評価×)
【請求項2】
前記洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーがシートを2枚重ねしてなる請求項1記載の洗浄機能付きトイレ用トイレットペーパーの測定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−141320(P2012−141320A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73249(P2012−73249)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【分割の表示】特願2010−14439(P2010−14439)の分割
【原出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【Fターム(参考)】