説明

洗浄液の自動濃度管理装置およびその使用方法

【課題】粉体洗剤を用いた管路洗浄装置において、洗浄液の調製を容易にし、洗浄液の濃度を自動管理して洗浄液を調製し、そのシステム全体を円滑に機能させる装置及びその使用方法を提供する。
【解決手段】液体の混合、加工等の管路を持つプラントにおいて、管路の洗浄を行うために、粉体洗剤Aからなる洗浄液を用いて管路内部を洗浄する場合、プラント本体から洗浄液製造過程の装置を分離して設置し、高濃度洗浄液を調整する過程と希釈洗浄液Cを調整する過程に分けることで、洗剤の均等拡散、濃度調整を容易にし、かつ、複数の粉体を容易に混合調製し、即時に連続的に使用可能となるよう導電率計5等のセンサーとコンピューター制御装置により、洗浄液の自動濃度管理装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液の自動濃度管理装置およびその使用方法に関するもの、詳しくは、単数あるいは複数の粉体洗浄剤を溶解してなる洗浄液の濃度を自動調整するための自動濃度管理装置およびその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶液の濃度管理方法および装置については、数多く知られている。また、粉体を溶解して濃度管理する方法および装置も色々なものが建設されている。例えば、ホッパーを用いて上部から分体を投入するにあたり、開口面を下方に回転させる駆動手段を備えた粉体供給手段とその下方に位置する溶融槽とを設けてなる誘拐装置(例えば、特許文献1)、貯蔵ホッパーから溶解槽に供給された粉体の計量手段と粉体量に基づいて給水量を制御するコンピューターとを有する溶解装置(例えば、特許文献2)が提案されている。
【0003】
食品生産工場(特に飲料水や牛乳などの液状食品)において、製造施設の洗浄方法としては、COP(Cleaning Out Place;分解洗浄)、CIP(Cleaning In Place;定置洗浄)がある。
COPは、機械や部品を分解し、洗剤溶液を用いて手洗い(ブラッシング)もしくは、洗剤を循環させて洗浄する方法。構造の複雑な機器や部品の洗浄、床・壁・天井・タンク外面等の洗浄に採用される。
CIPは、機器や部品を分解することなく、設備構成の中に洗浄機能を組み込ませて構築を行い、洗剤溶液の化学エネルギー・熱エネルギー・運動エネルギーを利用して洗浄する方法をいう。パイプライン等洗浄設備の構造が複雑でないものに利用されている。
使用する薬剤は、注意深く取扱い、食品を汚染する危険を避けるために食品とは区別し、明確に表示した容器に保存する必要がある。
【0004】
CIP洗浄は、一般的にアルカリ性洗浄剤による洗浄、および酸性洗浄剤による洗浄があり、1000〜2000L程度の洗浄液貯蔵タンク(アルカリ性、酸性共に)を有している。
CIP洗浄は、設備の使用後に アルカリ洗い→水洗→酸洗い→水洗 の順で行い、洗浄液劣化や、水洗水の混入によりタンク内の洗浄液の洗浄剤濃度が低下するために洗浄剤の原液、又は、粉末を定期的に補給する必要があった(補給時期を洗浄液の導電率で管理する場合もある。)
【特許文献1】特開平10−232号公報
【特許文献2】特開平6−226068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗剤液を上部から投入することで、洗浄を行う装置では、粉体の供給装置と溶解装置とが一体化され、供給装置のフィーダーも固定されたものであり、1種類の決められた粉体か似たような粉体(食塩、塩類)(特許文献1)、染料(特許文献2)にしか適応されず、そのため、多様な特性を有するものには対応が難しく、高精度で迅速に濃度管理をする機能を有する装置がなかった。
【0006】
例えば、粉体界面活性剤や粉体洗浄剤のようなものは非常に多くの種類や形状があり、粒子径や吸湿性等の性状が異なり、これらを自動で供給し濃度管理をする装置はなかった。
また、供給装置と溶解装置との高さ、位置関係が使用条件により異なる場合にも、対応が面倒であった。本発明の目的は、粉体洗浄剤(A)の特性、当該粉体供給装置と溶解装置の位置関係が変わっても簡易に対応できる、多種類の粉体洗浄剤からなる洗浄液を迅速正確に自動濃度管理ができる方法を提供することである。
【0007】
また、従来の洗剤液を上部から投入する技術では、洗浄剤のタンクが5000L以上になってくると、タンクの高さが高くなり、洗浄剤を補給するのに大変手間がかかっていた。洗浄剤が液体の場合であれば、配管を行いポンプで移送すれば容易であるが、液体洗浄剤は粉体洗浄剤に対して有効成分(アルカリ洗剤は主に水酸化ナトリウム、界面活性剤、キレート剤。酸性洗剤は主に硝酸尿素、硝酸、燐酸、キレート剤、界面活性剤。)の濃度が低く(約1/3程度)、流動性、ハンドリング性、保管場所等の問題でコスト的に不利、液体洗浄剤の濃度を高くすれば、粘性が高くなり流速が低下し、更に液体が均一にならず、分離が起こるという問題があった。
【0008】
粉体洗浄剤の場合、通常5Kgバッグで小分けされているが、その袋を持ってタンクに登って補給する作業が非常に面倒であり、また、水酸化ナトリウム等の劇物を含有した洗浄剤を高所で取り扱う必要があり、落下や飛散した場合に非常に危険であった。
【0009】
また、タンクのホッパーへの粉体移送装置を用いて洗浄液タンクの下から移送しようとした場合には、トランジー等の非常に高価な移送装置が必要となり、ベルトコンベアー等を用いると、狭い作業現場では設置のスペースが得にくい、また、水酸化ナトリウム等の潮解性の激しい薬品を使用するため、移送装置内に残った洗剤が湿気の為に潮解し、目詰まりをおこす等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を構造的に解決するため、粉体供給装置の下方に高濃度液調製装置(溶解槽)を設けると共に、高濃度液を希釈する希釈洗浄装置(希釈槽)と導電率計を設け、導電率に基づいて高濃度液供給量および給水量を制御する手段を設けることで、容易に対応でき、同時にこの装置を用いて迅速正確に濃度を管理する手法を確立した。
具体的には、本発明は、上述の洗浄液の自動濃度管理装置を備えた洗浄液の濃度調製供給装置とそのシステム全体の運用方法から課題の解決をはかるものである。
【0011】
具体的なシステムの構成としては、粉体攪拌機(1a)とホッパー(1b)を備え、粉体洗浄剤(A)を供給する、粉体供給装置(1);液体攪拌機(2a)を備えた溶解槽(2b)から構成され、ホッパー(1b)の下方に設けられた、高濃度液調製装置(2);給水装置(3);高濃度液を移送する液体移送管路(4);導電率計(5);液体攪拌機(6a)を備えた希釈槽(6b)から構成される、希釈洗浄液調製装置(6);および、導電率計(5)で計測された誘電率に基づいて、液体移送管路(4)もしくは給水装置(3)に供給指示を出す制御装置(7)、すなわち、自動濃度管理装置から構成される。
【0012】
作動の流れとしては、粉体洗浄剤(A)の洗浄液の自動濃度管理装置、ならびに、自動濃度管理装置を作動させて、粉体攪拌機(1a)を始動させて、粉体供給装置(1)のホッパー(1b)から粉体洗浄剤(A)を溶解槽に投入すると共に、給水装置(3)からの水もしくは希釈槽(6b)からの希釈洗浄液を溶解槽(2b)に投入すると共に、給水装置(3)からの水もしくは希釈槽(6b)からの希釈洗浄液を溶解槽(2b)に投入し、液体攪拌機(2a)を始動させ、粉体洗浄剤(A)を水もしくは、希釈洗浄液に溶解させた、5〜30%の高濃度液(B)を調製し、高濃度液(B)を液体移送管路(4)から、希釈槽(6b)に投入すると共に給水装置(3)から水を投入し、液体攪拌機(6a)を始動させて高濃度溶液(B)を水で希釈して、0.5〜3%(以後、本出願中の溶質の濃度は、通常用いられる溶液に対する質量パーセント濃度を表すものとする)の希釈液を調製して行うが、導電率計(5)で希釈洗浄液(C)の導電率を計測し、計測された導電率に基づいて制御装置(7)から、液体移送管路(4)もしくは供給装置(3)に給水指示を出すことによって、粉体洗浄剤(A)の希釈洗浄液(C)の濃度を自動的に調整することにより、洗浄液の自動濃度管理装置を効果的に用いることができる。
【0013】
このシステムの運用方法により、特にCIP洗浄においては、装置、部品を分解することなく、設備の使用後に製造ラインの管路に沿って洗浄液を流し込むため、残留液のために経時的に洗浄液の濃度が希釈されるという特性があるので、洗浄液の濃度が薄くなり過ぎないように次のような濃度の自動測定結果によるフィードッバック濃度調整をうまく行うことが可能になる。
【0014】
導電率からの下限値以下の濃度の信号が来た場合に、一定量の洗浄剤を溶解槽にて計量し、ポンプで移送可能な濃度(50%以下、好ましくは25%以下)まで、水で希釈後、攪拌して洗浄液タンクへの配管で移送する。
高濃度液を移送後に溶解槽に水を送り、溶解槽、ポンプ、配管をすすぐようにする。
洗浄液タンク内の洗浄液の濃度は、注水して任意の濃度(通常3〜1%)に再調整されるか、高濃度洗浄液が注水後に洗浄液タンク内の濃度が許容される上限値(通常5〜3%)以下であれば、CIPの水洗水や洗浄液の劣化の為に、経時的に規定濃度まで低下する。いずれにしても、下限値(0.8%以下程度)を下回れば、自動的に高濃度液が補充される。
【発明の効果】
【0015】
低コストの粉体の洗浄剤を手間をかけずに安全に洗浄液タンクに投入可能となった。
【0016】
高濃度洗浄液を移送直前に溶解槽で攪拌して、全量を移送するために、高濃度洗浄液が分離するような液であっても、成分比に変動なく洗浄タンクへ移送可能となった。
【0017】
高濃度洗浄液を移送後に、溶解槽、ポンプ配管を水ですすぐため、層分離する液体を成分比に変動無く送られる利点に加えて、ポンプや配管が洗剤の残渣による腐食や目詰まりを起こすことも無くなる利点がある。
【0018】
移送する必要量の洗剤(通常5Kg)のみを溶解し、移送するため、溶解槽、攪拌設備等が非常に小型で低コストで作製することが可能になった。
【0019】
非常に多種類の性状も異なる粉体、例えば、吸湿性や潮解性を有し、ブロックキング、未混合塊状残留、未溶解物残存を起こしやすい粉体洗浄剤についても、迅速正確に濃度調整された洗浄液を製造することができる。特に、水酸化ナトリウムについては、潮解性の高い劇薬で上記の取扱いが困難な粉体あるが、従来から、洗浄用としての需要が高く、近年、狂牛病の異常プリオンの毒性の除去においても、厚生労働省指定の世界保健機関(WHO)の処理基準でも約2.8パーセントの水酸化ナトリウム水溶液の使用が義務付けられ、その優れた洗浄殺菌力は、高く評価され、食品産業の代表的な洗浄剤であり、中でも、CIP洗浄においては、初期洗浄に不可欠な洗浄液となっている。
【0020】
未溶解粉体の溶解を完了させるための手段(未溶解粉体を溶解槽に押戻す、噴射ノズルや循環ライン)を用いる必要がなく、未溶解粉体の溶解に要する時間と手間がかからないようにできる。
【0021】
従来の直接、生産ラインの上方からホッパーで洗浄液を投入するのでなくて、洗浄液の攪拌製造を分離したことにより、プラントの構成が、用地の形状、製造ラインの形態に合わせて設置することができる、また運転やメンテナンスも容易となり、低コスト化を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の1実施例(洗浄後の自動濃度管理装置)を模式的に示すフロー図である。
この自動濃度管理装置は、粉体供給装置(1)、高濃度液調製装置(2)、給水装置(3)、液体移送管路(4)、導電率形(5)、希釈溶液調製装置(6)、および制御装置(7)から構成される。各装置の大きさや形状は、特に限定されない。
【0023】
粉体供給装置は(1)は、必要に応じてブリッジ防止機能を有する粉体攪拌機(1a)とホッパー(1b)を備える。
粉体攪拌機(1a)は、ホッパーの投入口から鉛直線方向に設置された粉体のブリッジ防止機能を備えた攪拌翼のついたもの、例えば、スクリュー型やリボン型、ミキサー型が好ましい形状である。
【0024】
ホッパー(1b)は、粉体洗浄剤をその下方の溶解槽(2b)落下投入するので、その投入に適した外形状のものであれば特に制限されないが、滑らかな形状であることが望ましい。また、ホッパーの少なくとも内壁表面にフッ素系樹脂加工のような低摩擦、低付着処理を施すことが望ましい。また、ホッパーに振動を加え、粉体が、落下しやすくする方式を採用することもできる。
ホッパーは、また、湿気を遮断した構造、例えば、特許文献1に記載のような構造、すなわち、外部から異物が混入しないように、側面が囲い(13)で覆われ、また上面が開閉蓋(14)で覆われた密閉構造、下方の溶解槽(2b)からの湿気の影響を受けて粉体が、吸湿固化しないように、ホッパー(1)下部側に開口部をもたない構造、囲い(13)の側面の一部には、フィルター(15)が設けられていて、内部の湿気を外部に排気するとともに外部の異物などが混入しない構造とすることもできる。
【0025】
ホッパー(1b)は、粉体洗浄剤をその下方の溶解槽(2b)に落下投入するので、ホッパー(1b)の下部には、その投入に用いる粉体投入弁としてスライドゲートバルブ(SGB)を設けることが好ましく、それによって粉体投入の制御(投入の時期、速度および投入量の調整)を行うこと(すなわち、通常行われる、1回目は、全開にして大投入(約3〜4Kg)を行い、2回目以降は、半開または、微開にして、小投入を繰り返す好ましい方法など)ができる。また、粉体投入弁に代えて、他の投入手段、例えば、特許文献1時記載のような、開口部を上面に有し、開口面を下方に移動させる駆動手段を備えた粉体供給手段を用いて、粉体投入の制御を行うこともできる。
【0026】
粉体供給装置(1)粉体攪拌機(1a)粉体投入弁(SGB)もしくは、他の投入制御手段は、制御装置(7)と連携して、攪拌のオン・オフおよび攪拌速度を自動で制御し、自動的に所望量の粉体洗浄剤(A)の投入を制御することができる。
【0027】
高濃度液調製装置(2)は、液体攪拌機(2a)を備えた溶解槽(2b)から構成さえる。液体攪拌機(2a)および溶解槽(2b)としては、従来公知のものを用いることができる。
液体攪拌機(2a)には、粉体の液体中への混合攪拌に通常用いられているものが使用でき、攪拌翼によるものが代表的であり、3枚プロペラによるものが好ましい。
液体攪拌装置(2a)を用いる数に制限は、無く、設置位置にも制限はないが、洗剤を上部からの投入するため、攪拌は、底面から行うのが好ましい。
【0028】
溶解槽(2b)としては、粉体の溶解に通常使用されているものが使用できる。その形状は、とくに制限されず、円筒状でも、直方体状でもよく、底面に傾斜部分を設け、粉体が攪拌部(攪拌機に近い部分)に集まりやすい構造としたのでよい。その材質も特に限定されず、ステンレススチール製のものが好適に使用できる。また、溶解槽(2b)の容量は用途に応じて設定が可能である。通常は、10〜50L、好ましくは、20〜30Lである。
【0029】
溶解槽(2b)は、ホッパー(1b)から、粉体投入弁または、他の手段(好ましくは粉体投入弁)を介して、粉体洗浄剤が投入されるように、ホッパー(1b)の下方に設けられ、一方、給水装置(3)から水が供給されるように配管する。また、必要により、給水装置(3)からの給水に加えて(または、それに代えて)、希釈槽(2b)の上方に設置される粉体供給装置(1)〔粉体攪拌機(1a)およびホッパー(1b)〕は、1個でも複数個でもよい。
【0030】
溶解槽(2b)には、必要により、液面センサー(2c)が備えられ。また、他の測定装置(温度計など)が差し込まれている。これらは、制御装置(7)に繋がっており、それらの測定値に基づいて、制御装置(7)による供給等の指示を行うことができる。
高濃度液調製装置(2)〔液体攪拌機(2a)、液面センサー(2c)〕も制御装置(7)に連絡して攪拌のオン・オフおよび攪拌速度、ならびに粉体洗浄剤および水(もしくは希釈液)の供給がコンピューター制御により、細かく設定条件で自動的に制御できる構成とする。
【0031】
給水装置(3)としては、給水が制御できるものなら、特に限定はされず、溶解槽(2b)への配管の先端部もしくは、その近辺に制御弁(水投入弁)を設けたものでも、給水源そのものに制御弁が連結したものでもよい。給水装置(3)は、制御装置(7)と連結して自動給的に給水が制御できる構成とする。給水装置(3)には、溶解槽(2b)へ給水するものと希釈槽(6b)へ給水するものとが含まれ、それぞれの水投入弁が制御装置(7)の指示に従って自動的に給水が制御できるようにする。
【0032】
液体移送管路(4)は高濃度制御装置(2)で、調整された高濃度液(B)を希釈洗浄液調製装置(6)〔希釈槽(6b)〕へ移送するラインである。管路(4)は、高濃度液投入弁(4a)および排出ポンプ(4b)を備えた液体配管から構成される。
高濃度液投入弁(4a)および排出ポンプ(4b)は制御装置(7)と連結して、自動的に高濃度液の供給が制御できる。管路(4)の途中もしくは、高濃度液調製装置(2)〔溶解槽(2b)〕の排出口には、必要により、未溶解の粉体洗浄を濾別する手段(ストレイナー、フィルター、スクリーン等)が設けられてもよい。
【0033】
導電率計(5)としては、液体の導電率(電導度)の測定に通常使用されているものが使用できるし、多様な洗浄液の濃度調整に対応できるよう、ペーハー(水素イオン濃度)測定を併側するなど多機能を備えたものを用いることもできる。
【0034】
希釈洗浄液調製装置(6)は、液体攪拌機(6a)を備えた希釈槽(6b)から構成される。
液体攪拌機(6a)には、液体の混同攪拌に通常用いられているものが使用でき、攪拌翼がプロペラとして、底面から設置されているものが好ましい。また、攪拌翼は、1個用いても複数個用いてもよい。
希釈槽(6b)としては、従来公知のものが使用でき、その形状は特に制限されず、円筒状でも、直方体状でもよい。その材質も特に限定されず、ステンレススチール製のものが好適に使用できる。希釈槽の容量は、洗浄液の用途、使用量等に応じて種々変更が可能である。
希釈槽(6b)には、液体移送管路(4)から高濃度液が供給され、給水装置(3)から給水されるように配管され、また、希釈槽(6b)で調製された希釈液が排出ポンプ(6c)から、洗浄配管へ送り出されるよう配管される。
【0035】
希釈槽(6b)には、導電率計(5)が装備されるが、特にCIP洗浄では、洗浄液の濃度管理上、特に重要であり、同時に液面センサー(6c)や温度計が装備されることが好ましい。これらのセンサーは、制御装置(7)に繋がっており、それらの測定情報に基づいて、制御装置(7)による供給等の指示が可能となる。
【0036】
制御装置(7)は、導電率計(5)で計測された導電率に基づいて、液体移送管路(4)に高濃度液の供給の指示〔高濃度投入弁(4a)および排出ポンプ(4b)のオン・オフの指示〕もしくは給水装置(3)に給水の指示を出す〔すなわち、希釈液の導電率を測定して濃度が薄ければ、高濃度液の供給の指示を出し、一方、濃度が濃ければ、給水装置(3)に給水の指示を出す〕場合もあるが、特に、CIP洗浄では、経時的に洗浄液の濃度が薄くなる傾向がある。この制御装置は、コンピューターで制御されるシステムを用いて制御される。制御装置(7)には、通常測定機能も内蔵されるが、導電率計測機能(装置)は別装置でもよい。
【0037】
また、制御装置(7)は、希釈槽(6b)に設けられた液面センサー(6c)で計側された液量と導電率計(5)で計測された伝導率に基づいて、液体移送管(4)もしくは、給水装置(3)に供給指示を出すことができる。制御装置(7)は、高濃度液の供給もしくは、給水の指示を出すと共に、液体攪拌機(6a)のオン・オフの指示を出し、また、前述のように、粉体攪拌機(1a)、粉体投入弁(SGC)および液体攪拌機(2a)のオン・オフの指示を出す。
【0038】
希釈洗浄液調製装置(6)の希釈液(6b)で調整された希釈液は、導電率計(5)で導電率を計測し、制御装置(7)による指示に従って、規定の範囲内の導電率に達するまで濃度調整が行われる。所定の範囲内の導電率に調整された希釈液は、希釈洗浄液調製装置(6)の排出ポンプ(6c)から、洗浄配管へ送り出され、その使用(対象物の洗浄)に供される。
【0039】
次に、本発明に係る洗浄液の自動濃度管理装置の使用方法(濃度管理方法)を説明する。洗浄液の調製は、基本的には、給水装置から溶解用水を溶解槽に入れ粉体供給装置から粉体洗浄剤を供給して溶解させて高濃度液を調製し、次いで高濃度液を希釈槽に移送して希釈すると共に洗浄液を測定して洗浄液の濃度調整を行う(すなわち導電率を計測しながら、自動的に水を追加し、所定の導電率になるよう希釈する)。また、当然、同じ仕組みでCIP洗浄に伴う複数回洗浄(アルカリ洗い→水洗→酸洗い→水洗 )の水洗工程にも応用することができる。
【0040】
本発明に係る方法の各ステップを具体的に説明すると。次の通りである。
〔1〕高濃度液調製工程
(I−1)先ず、スタートスイッチを手動でオンにし、粉体攪拌機(1a)を始動させ、粉体投入弁(スライドゲートバルブ:SGB)を開いて、粉体供給装置(1)のホッパー(1b)から、粉体洗浄剤(A)を溶解槽(2b)に投入する。制御装置(7)で指示された量の粉体洗浄剤(A)が投入されると、粉体攪拌機(1a)を停止し、粉体投入弁(SGB)を閉じる。粉体洗剤(A)は、一括投入しても、分割して投入してもよいが、分割して投入するのが好ましい。
【0041】
〔I−2〕次いで、溶解槽(2b)に水投入弁を開いて給水装置(3)から水を投入し、液体攪拌機(2a)を始動させ、粉体洗浄剤(A)を水もしくは希釈洗浄液に溶解させて、高濃度液(B)を調製する。制御装置(7)で指示された時間だけ攪拌した後に液体攪拌機(2a)を停止し、水投入弁を閉じる。
高濃度液(B)の濃度は洗浄剤の種類や用途に応じて変えられるが、通常は5〜30%、好ましくは、10〜20%である。
【0042】
(II)希釈洗浄液調製工程
(II‐1)工程(I)に続いて、導電率計から、下限レベル信号が出されたときに、液体攪拌機(6a)を始動させ、高濃度液投入弁(4a)を開き、排出ポンプ(4b)を作動させて液体移送管路(4)から高濃度液(B)を希釈槽(6b)に投入し、高濃度液(B)の全量が投入されると、液体攪拌機(6a)および排出ポンプ(4a)を停止し、高濃度液投入弁(4a)を閉じる。
水投入弁を開いて、溶解槽に一定量の水(約2Kg)を投入し、再び、排出ポンプを作動させて、希釈液へ投入する(すすぎ作業)。
【0043】
(II‐2)かくして調製された希釈洗浄液(C)の導電率を導電率計(5)で計測する。その導電率が制御装置(7)で指示された範囲内であれば、希釈洗浄液調製は、完了し、その範囲外である場合は、計測された導電率に基づいて、制御装置(7)から、液体移送管路(4)もしくは給水装置(3)に供給の指示が出され、上記範囲内の導電率に達すると供給が停止され、希釈洗浄液(C)の濃度が自動的に調製される。
希釈液洗浄液(C)の濃度は洗浄剤の種類や用途に応じて変えられるが、通常0.5〜3%、好ましくは、1〜%である。また、希釈洗浄液(C)の導電率の範囲は、洗浄剤の種類や用途によって種々異なるが、一般には、10〜100mS/cm(ミリジーメンス毎センチメートル)、好ましくは、30〜60mS/cmである。
【0044】
また、本発明に係る洗浄液の自動濃度管理装置を複数組(2セットまたはそれ以上)用意して、2種またはそれ以上の、異なる洗浄液(希釈洗浄剤)(C)、(C’)等、たとえば、アルカリ洗浄液と酸洗浄液を調製し、これらの洗浄液を希釈槽(6b)、(6b’)等から排出ポンプ(6c)、(6c’)等を経て洗浄配管へ送り出されるよう、配管し、各洗浄液(C)、(C’)等を使用(対象物の洗浄、たとえばCIP洗浄)に供することもできる。複数組の自動濃度管理装置を用いる場合、制御装置(7)は、それぞれの装置に個別に設けてもよいが、各組に共通した単一の制御装置(7)を用いて洗浄液(C)(C’)等の全体の自動濃度管理を行うことができる。
【0045】
本発明に係る洗浄液の自動濃度管理装置は、これらの操作を自動的にかつ連続的に行えるよう、希釈洗浄液を所定の濃度に調整するために導電率測定による濃度を検出しつつ、高濃度液の供給量を制限して希釈槽に供給するように作動するが、希釈洗浄液濃度の検出手段に使用する導電率計による濃度の検出原理は、導電率が洗浄剤の濃度により異なることに基づいている。導電率と洗浄剤の濃度との関係は、洗浄剤の濃度との関係を求めておき、導電率から粉体洗浄剤の濃度を求める。この関係を制御装置にインプットしておき、また、この誘電率は洗浄液の濃度によって異なる。
洗浄液の温度が高いほど、濃度変化に対する伝導率の変化が大きい。これは、洗浄温度が高い方が、導電率による濃度の検出感度が高く、濃度の微小差も導電率の変化として、より容易に検出できることを示している。これは、洗浄剤の濃度を精度良く調整するために必要な条件である。
【0046】
導電率の温度検出感度を高くするためには、洗浄液温度を高くすることが必要で、溶解用水を加温するか、洗浄液を加温するなど、洗浄液温度を適当な温度範囲(好ましくは20〜70℃)に保つようにする。このようにして、洗浄液温度の微小差を検出できる手段を講じ、所定の洗浄剤の濃度になるように粉体洗浄剤や水の供給量を制御することにより、濃度精度の良い洗浄液を調製することができる。
【0047】
本発明で用いられる粉体洗剤(A)としては、従来公知の粉体洗浄剤が用いられ、洗浄液製作時に粉体であればよい。種類としては、中性、アニオン性、カチオン性、および両性の界面活性剤をはじめ、水酸化ナトリウムやクエン酸などの酸性やアルカリ性物質といった幅広い洗浄力をもった物資が使用できる。
特に、界面活性剤とキレート剤、および、水酸化ナトリウム等のアルカリビルダーとの混合液を用いることが好ましい。
粉体は粉末状もしくは粒状を意味し、粉体供給装置でフィードできれば、粒度についても、特に限定はない。また、溶解度についても、特に、制限はない。
【0048】
実施のフローチャート
本発明に係る洗浄液の自動濃度管理測定装置およびその使用方法を実施例により解明するが、本発明はこれに限定されるものでは無く、システムとしての可能な運用方法の総てにわたるものである。
【0049】
ステップ1
制御装置(7)の指示に従って、電導モーター(M1)で粉体攪拌機(1a)を始動させ、粉体投入弁(SGB)を開いて、粉体供給装置(1)のホッパー(1b)から粉体洗浄剤(A)を、溶解槽(2b)に連続的に投入する。所定量〔制御装置(7)で指示された量〕の粉体洗浄剤(A)が投入されると、粉体攪拌機(1a)を停止し、
粉体投入弁(SGB)を閉じる。
【0050】
ステップ2
次いで、高濃度液調製装置(2)において、溶解槽(2b)に、水投入弁を開いて給水装置(3)から所定量の水を投入し、粉体洗剤(A)を水に溶解させて、高濃度液(B)を調製する。
【0051】
ステップ3
一方、希釈洗浄液調製装置(6)において、電動モーター(M3)で、液体攪拌機(6a)を始動させ、高濃度液投入弁(4a)を開き排出ポンプ(4b)を作動させて液体移送管路(4)から、高濃度液(B)を希釈槽(6b)に投入し、希釈洗浄液(C)を調整する。高濃度液全量を移送後、搬出ポンプ(4b)を停止し、高濃度投入弁(4a)および水投入弁を閉じる。
【0052】
ステップ4
調整された希釈洗浄液(C)の導電率を導電率計(5)で測定し、その導電率が所定の範囲内〔制御装置(7)で指示された範囲内〕であれば、希釈洗浄液調製は完了する。その範囲外にある場合は、計測された導電率に基づいて、制御装置(7)から液体移送管路(4)もしくは給水装置(3)に供給の指示が出され、上記範囲内の導電率に達すると供給が停止され、希釈洗浄液(C)の濃度が、自動的に調整される。
導電率は希釈槽に入れられたセンサーを通じて導電率計測装置で(4)で想定され、信号が制御装置(5)に送られ、濃度が感知される。この場合、目標の洗浄液濃度調整は、たとえば、目標よりも若干高めの濃度(2.0%)に設定され、それを補充給水しながら、目標の1.5%に調製するというフィードバックによる調整が有効である。
【0053】
ステップ5
かくして調製された自動濃度管理されたアルカリ洗浄液(希釈洗浄液)(C)と粉体洗浄液(A)を用いて、上記と同様にして調製された自動濃度管理された酸洗浄液(希釈洗浄液)(C’)とを、それぞれ、希釈槽(6b)および(6b’)から排出ポンプ(6C)および(6C’)を始動させて、連続的に洗浄配管に送り出し、両洗浄液(C)および(C’)をその使用(CIP洗浄)に供した希釈洗浄液(C)、(C’)を洗浄配管へ送り出して、希釈槽(6b’)の液面が所定のレベル(L)以下になった段階で、制御装置(7)より、高濃度液(B)および水の供給の指示が出され、ステップ1の操作が繰り返されて、次いでステップ2に移る。
【0054】
ステップ6
また、高濃度液(B)が、液体移送管(4)へ移送された溶解槽(2b)の液面が所定のレベル(L)以下になった段階で、制御装置(7)より、粉体洗浄剤(A)および水の供給の指示が出され、ステップ1〜2の操作が繰り返され、ステップ3以降の操作に引き継ぐ。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る洗浄液の自動濃度装置および、その使用方法は、粉体洗浄剤を用いた洗浄液を使用するあらゆる工場、研究所等で種々の対象物の洗浄に好適に用いられる。本発明は、自動化された(コンピューター制御された)洗浄配管を経て対象物の洗浄を行う用途、特に食品産業を中心とするCIP洗浄において、水酸化ナトリウムの高濃度溶液(25%程度)から、自動的に希釈洗浄液(0.5〜3%)を他の洗浄剤との混合調製できることは、生産性、信頼性の向上に大きく貢献するものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の洗浄液の自動濃度管理装置の実施例を模式的に示すフロー図である。
【符号の説明】
【0057】
(A)粉体洗剤
(B)高濃度液
(C)希釈洗浄液
(1)粉体供給装置
(2)高濃度液調製装置
(3)給水装置
(4)液体移送管路
(5)伝導率計
(6)希釈洗浄液調製装置
(7)制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体攪拌機(1a)とホッパー(1b)を備え、粉体洗浄剤(A)を供給する粉体供給装置(1)、液体攪拌機(2a)を備えた溶解槽(2)から構成され、ホッパー(1b)の下方に設けられた、高濃度液調製装置(2)、給水装置(3)、高濃度液を移送する液体移送管路(4)、導電率計(5)、液体攪拌機(6a)を備えた希釈槽(6b)から構成される、希釈洗浄液調製装置(6)、および、導電率計で計測された導電率に基づいて、液体移送管路(4)もしくは給水装置(3)に供給指示を出す、制御装置(7)から構成される、洗浄液の自動濃度管理装置。
【請求項2】
希釈洗浄液調製装置(6)が液面センサーを含む流量計(6c)を備え、制御装置(7)が、流量計(6c)で計測された液量と導電率計(5)で、計測された導電率に基づいて、液体移送管路(4)もしくは、給水装置(3)に供給指示を出す、請求項1記載の洗浄液の自動濃度管理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の洗浄液の自動濃度管理装置を用いて、粉体攪拌機(1a)を作動させて、粉体供給装置(1)のホッパー(1b)から、粉体洗浄剤(A)を溶解槽(2b)に投入すると共に、給水装置(3)からの水もしくは希釈槽(6b)からの希釈洗浄液を溶解槽(2b)に投入し、液体攪拌機(6a)を始動させ、5〜30%質量%濃度の高濃度液(B)を調製し、高濃度液(B)を水で希釈して、0.5〜3質量%濃度の希釈洗浄液(C)を2段階または、複数回で単独あるいは、他の粉体洗剤と混合調製し、導電率計(5)で希釈洗浄液の導電率を計測し、計測された導電率に基づいて、制御装置(7)から、液体移送管路(4)もしくは給水装置(3)に給水指示を出すことによって、希釈洗浄剤(C)の濃度をフィードバックシステムにより、自動的に調整することを特徴とする、洗浄液の自動濃度管理装置の使用方法、ならびにCIP洗浄に伴うアルカリ洗浄、水でのすすぎ、酸での洗浄、水でのすすぎ工程を取り入れた上記洗浄液の自動濃度管理装置の使用方法。
【請求項4】
上記、請求項1、請求項2および請求項3における、フィードバックシステムを構成する「導電率計(5)」をペーハー測定器、比重測定器、粘性測定器、屈折率測定器、透明度測定器、色測定器、圧力計などの「液体センサー(5)」に置き換え、請求項2および請求項3に記載の「計測された導電率」を「計測された液体センサーの数値」の置き換えた請求項1および請求項2に規定する規定する洗浄液の自動濃度管理装置。ならびに請求項3に規定する自動濃度管理装置の使用方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−13211(P2009−13211A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173711(P2007−173711)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(593045123)中央化学株式会社 (3)
【Fターム(参考)】