説明

洗浄装置

【課題】倒立状態で樽を洗浄する洗浄装置において、樽を下方に押圧していた押圧パッドを上方に移動させた際にそれとともに樽が持ち上げられることを防止する。
【解決手段】洗浄の際に、支持テーブル20上に倒立状態で置かれた樽10を押圧機構60によって支持テーブル20に押し付ける。押圧機構60は、押圧パッド44が下部に設けられた昇降部42と、昇降部42を昇降させるアクチュエータ46と、鉛直方向に移動可能に昇降部42に取り付けられバネ50によって下方に押し出される分離用部材48とを含む。押圧パッド44によって樽10が押圧されている状態でバネ50が圧縮され、アクチュエータ46によって昇降部42が上方に駆動されたときに、圧縮されていたバネ50の復元力によって分離用部材48が樽10を下方に押圧することによって押圧パッド44と樽10とが引き離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樽を倒立状態で洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビール樽等の樽を洗浄する洗浄装置は、一般に、口部(口金)を下方に向け底部を上方に向けた倒立状態で樽を下方から支持し、洗浄ヘッドから口部を通して樽内に洗浄液を供給することによって樽を洗浄する。この洗浄の際に、洗浄液の圧力によって、樽を支持している支持テーブルから樽が浮き上がったり転倒したりすることを防止するために、樽を支持テーブルに押し付ける押圧機構が使用されうる。
【0003】
特許文献1には、ビール樽を倒立状態で洗浄する洗浄装置が記載されているが、ビール樽を支持テーブルに押し付ける機構やその改良に関しては開示されていない。
【特許文献1】特開平11−33512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような倒立状態で樽を洗浄する洗浄装置において、洗浄が完了した状態では、樽から洗浄液が排出されて樽全体の重量が軽くなる。この状態で、支持テーブル上から樽を移動させるために、樽を支持テーブルに押し付けていた押圧機構を上方に退避させると、押圧機構に設けられている押圧パッドに樽の底部がくっついた状態で樽が上方に持ち上げられ、その途中で落下することがある。大型の洗浄装置では、支持テーブルの高さが床から1m以上にも及び、支持テーブルから樽が落下すると非常に危険である。
【0005】
本発明は、上記のような課題認識を基礎としてなされたものであり、例えば、樽を下方に押圧していた押圧パッドを上方に移動させた際にそれとともに樽が持ち上げられることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の側面は、樽を洗浄する洗浄装置に係り、前記洗浄装置は、口部を下方に向け底部を上方に向けた倒立状態で樽を下方から支持する支持テーブルと、前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽の口部に洗浄液を供給し樽内を洗浄するように前記支持テーブルの内側に配置された洗浄ヘッドと、前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽を洗浄時に前記支持テーブルに押し付ける押圧機構とを備える。前記押圧機構は、樽を下方に押圧する押圧パッドが下部に設けられた昇降部と、前記昇降部を昇降させるアクチュエータと、前記アクチュエータによって前記昇降部が上方に駆動されるときに樽を下方に押圧することによって前記押圧パッドと樽とを引き離す分離用部材とを含む。
【0007】
本発明の第2の側面もまた、樽を洗浄する洗浄装置に係り、前記洗浄装置は、口部を下方に向け底部を上方に向けた倒立状態で樽を下方から支持する支持テーブルと、前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽の口部に洗浄液を供給し樽内を洗浄するように前記支持テーブルの内側に配置された洗浄ヘッドと、前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽を洗浄時に前記支持テーブルに押し付ける押圧機構とを備え、ここで、前記押圧機構は、樽を下方に押圧する押圧パッドが下部に設けられた昇降部と、前記昇降部を昇降させるアクチュエータと、鉛直方向に移動可能に前記昇降部に取り付けられバネによって下方に押し出される分離用部材とを含み、前記押圧パッドによって樽が押圧されている状態で前記バネが圧縮され、前記アクチュエータによって前記昇降部が上方に駆動されたときに、圧縮されていた前記バネの復元力によって前記分離用部材が樽を下方に押圧することによって前記押圧パッドと樽とが引き離される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、樽を下方に押圧していた押圧パッドを上方に移動させた際にそれとともに樽が持ち上げられることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の好適な実施形態の洗浄装置の概略構成を示す側面図である。洗浄装置100は、ビール樽等の樽を倒立状態で洗浄するように構成されている。洗浄装置100は、例えば、図1に示す構成を複数組備え、それらを公転させながら複数の樽を連続的かつ並行して洗浄するように構成されうる。このような構成においては、典型的には、樽受け取り位置においてコンベアから第1スターホイールによって送り込まれる樽を支持テーブル上に受け取って公転させながら洗浄し、洗浄が完了した樽は、樽排出位置において第2スターホイールによって支持テーブル上からコンベアに送り出され、次工程の装置(例えば、充填装置、検査装置)に搬送されうる。
【0011】
洗浄装置100は、樽10を下方から支持する支持テーブル20を有する。支持テーブル20には、口部12を下方に向け底部14を上方に向けた倒立状態で樽10が供給される。倒立状態で洗浄を実施する方式は、洗浄のために樽内に送り込まれた洗浄液(例えば、殺菌用薬液、リンス液)が自重によって完全に排出される点において優れている。
【0012】
支持テーブル20の内側には、洗浄ヘッド30が配置されている。典型的には、支持テーブル20は、開口部を有し、その開口部内に洗浄ヘッド30が配置されうる。洗浄ヘッド30は、樽10の口部12に洗浄液を供給し、樽10内を洗浄する。洗浄液は、典型的には、樽10のダウンチューブを通して樽10内に供給され、ガス流路(ビール等の液体製品を注ぐ際に液体製品を押し出すためにディスペンスヘッドを通して樽内にガス圧を印加するための流路)を通して排出されうる。
【0013】
支持テーブル20の上方には、樽10の洗浄時に樽10を支持テーブル20に向けて下方に押し付ける押圧機構60が配置されている。洗浄時に押圧機構60によって樽10を支持テーブル20に押し付けることにより、樽10が支持テーブル20から浮き上がったり、転倒したりすることを防止することができる。
【0014】
押圧機構60は、エアシリンダ等のアクチュエータ46によって昇降駆動される昇降部42を有する。昇降部42は、アクチュエータ46の作動部材(例えば、ピストンロッド)47に連結されている。昇降部42の下部には、樽10を下方に押圧する押圧パッド44が設けられている。押圧パッド44は、例えば、互いに分離された複数個(例えば、3個、4個)の部材が円周上に適当な間隔を置いて配置されて構成されてもよいし、リング状に形成された単一部材で構成されてもよい。
【0015】
この実施形態の押圧機構60は、更に、樽10の洗浄が完了した後に昇降部42を上方に移動させて樽10の押さえ付けを解除する際に、樽10から押圧パッド44を引き離す(分離する)ための分離機構を備えている。分離機構は、分離用部材48を有し、分離用部材48は、例えば、図2及び図3に例示的に示すように、昇降部42のセンタガイド(ガイド部材)49によってガイドされて鉛直方向に移動可能に配置されている。分離用部材48は、例えば、円筒形状を有しうる。
【0016】
この実施形態において、分離用部材48は、バネ50によって下方に押し出されるように配置されている。樽10の洗浄のために(樽10の押さえ付けのために)、アクチュエータ46によって昇降部42が下方に駆動され、押圧パッド44によって樽10が下方に押圧されている状態では、図2に示すように、樽10の底部(底面)14に分離用部材48に当接することによりバネ50が圧縮される。一方、樽10の洗浄が完了し、樽10の押さえ付けを解除する際は、図3に示すように、アクチュエータ46によって昇降部42が上方に駆動される。このとき、圧縮されていたバネ50の復元力によって分離用部材48が昇降部42に対して相対的に下方に押し出され(実際には、分離用部材48の下端位置は変化せず、昇降部42が上方に移動する)、これにより押圧パッド44と樽10とが引き離される。
【0017】
バネ50は、例えば、コイルバネ、板バネ等のバネの他、空気バネ等の流体バネとすることもできる。また、このようなバネ50に代えて、昇降部42を上昇させる際に、樽10を下方に押圧して押圧パッド44と樽10とを引き離すように分離用部材48を駆動する駆動機構を備えてもよい。
【0018】
このように、昇降部42が上昇する際に、樽10の底部を下方に押し付ける分離部材48を設けることにより、昇降部42の上昇時に押圧パッド44に樽10の底部14がくっついた状態で樽10が持ち上がられ、その後に落下することを防止することができる。
【0019】
図4は、分離機構を有しない構成を比較のために示した図である。分離機構を有しない構成においては、昇降部42が上昇する際に、押圧パッド44の下面と樽10の底部(底面)14との間が真空状態になるなどの理由で押圧パッド44に樽10の底部14がくっついている場合に、昇降部42とともに樽10が持ち上げられる可能性がある。一般に、押圧パッド44と樽10との間の吸着力は弱いので、樽10が継続的に押圧パッド44にぶら下がっていることはなく、上方に持ち上げられた樽10は、その直後に落下して転倒し、支持テーブル20上から転がり落ちうる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適な実施形態の洗浄装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】押圧パッドと樽とを引き離す分離機構の構成例を示す図である。
【図3】押圧パッドと樽とを引き離す分離機構の構成例を示す図である。
【図4】分離機構を有しない構成を比較のために示した図である。
【符号の説明】
【0021】
10 樽
12 口部(口金)
14 底部
20 支持テーブル
30 洗浄ヘッド
42 昇降部
44 押圧パッド
46 アクチュエータ
47 作動部材
48 分離用部材
49 センタガイド
50 バネ
60 押圧機構
100 洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樽を洗浄する洗浄装置であって、
口部を下方に向け底部を上方に向けた倒立状態で樽を下方から支持する支持テーブルと、
前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽の口部に洗浄液を供給し樽内を洗浄するように前記支持テーブルの内側に配置された洗浄ヘッドと、
前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽を洗浄時に前記支持テーブルに押し付ける押圧機構とを備え、
前記押圧機構は、
樽を下方に押圧する押圧パッドが下部に設けられた昇降部と、
前記昇降部を昇降させるアクチュエータと、
前記アクチュエータによって前記昇降部が上方に駆動されるときに樽を下方に押圧することによって前記押圧パッドと樽とを引き離す分離用部材とを含む、
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
樽を洗浄する洗浄装置であって、
口部を下方に向け底部を上方に向けた倒立状態で樽を下方から支持する支持テーブルと、
前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽の口部に洗浄液を供給し樽内を洗浄するように前記支持テーブルの内側に配置された洗浄ヘッドと、
前記支持テーブル上に倒立状態で置かれた樽を洗浄時に前記支持テーブルに押し付ける押圧機構とを備え、
前記押圧機構は、
樽を下方に押圧する押圧パッドが下部に設けられた昇降部と、
前記昇降部を昇降させるアクチュエータと、
鉛直方向に移動可能に前記昇降部に取り付けられバネによって下方に押し出される分離用部材とを含み、
前記押圧パッドによって樽が押圧されている状態で前記バネが圧縮され、前記アクチュエータによって前記昇降部が上方に駆動されたときに、圧縮されていた前記バネの復元力によって前記分離用部材が樽を下方に押圧することによって前記押圧パッドと樽とが引き離される、
ことを特徴とする洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−26482(P2006−26482A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206383(P2004−206383)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】