説明

洗濯乾燥機

【課題】電気ヒータ式洗濯乾燥機と比べて消費電力量を削減し、かつ、室内に高湿・高温の空気を放出しない洗濯乾燥機を提供する。
【解決手段】外槽6、内槽8、ダクト24,25、ダクト24,25内に設置される加熱手段22、冷却手段21、および送風手段35を備えた洗濯乾燥機1の筐体2内に、筒状空間49を設ける。この筒状空間49に、磁気冷凍装置17を構成する磁気作業物質19と磁場発生機18を設ける。磁気作業物質19および磁場発生機18の少なくともいずれか一方が移動することによって磁気冷凍装置17の一方端(高温端)に高温熱媒体を生成させると共に他方端(低温端)に低温熱媒体を生成させる。乾燥用空気を、加熱手段22、外槽6、冷却手段21そして加熱手段22の順序で順次循環させることで洗濯物を乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類の洗濯および乾燥を行うための洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗濯乾燥機の乾燥用熱源として電気ヒータを用いるものが知られている。最近では、従来の電気ヒータ式と比べて消費電力量を削減できるとして、ヒートポンプ(冷凍サイクル)を用いた洗濯乾燥機が出現してきた。
【0003】
ヒートポンプ式洗濯乾燥機では、衣類乾燥用空気を、洗濯槽からヒートポンプの蒸発器を通して除湿し、凝縮器で加熱して再び洗濯槽にもどすといった閉ループで循環させる。しかし、凝縮器と蒸発器を含む冷凍サイクルにより具現化されるヒートポンプでは、凝縮器の凝縮熱量Qcは、蒸発器の蒸発熱量Qeに圧縮機の入力分の熱量Qiを加えた値となる(Qc=Qe+Qi)。そのため、閉ループでの循環を繰り返すにつれて乾燥用空気の温度は徐々に上昇していく。すると、冷凍サイクルの凝縮温度と蒸発温度も上昇していく。その結果、ヒートポンプを安定させて運転することができなくなってしまう。
【0004】
こうした課題を解決し、ヒートポンプによる乾燥性能を低下させずに安定運転を行わせるアプローチの一つとして、洗濯槽からヒートポンプに戻す高湿の循環空気の一部を、そのまま排気させるか、または、外気と置換させて排熱させる方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−215943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に係るヒートポンプを搭載した洗濯乾燥機では、乾燥運転中に圧縮機や、洗濯槽やファンの駆動モータ、および外槽やダクトから出る排熱を無駄に捨てており、消費電力量の低減の観点から改良の余地があった。
【0007】
また、ヒートポンプを用いた従来技術では、洗濯槽からヒートポンプに戻す高湿の循環空気の一部を、そのまま排気させるか、または、外気と置換させて排熱させるため、洗濯乾燥機が設置された洗面所室内等の周囲環境を悪化させるという問題もある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高効率で環境に優しい洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、筐体内に、乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、前記外槽内に回転自在に設けられて洗濯物を収容する内槽と、乾燥用空気が循環するダクトと、前記ダクト内に設けられて洗濯物を乾燥させる加熱手段、冷却手段、および送風手段とを備えた洗濯乾燥機において、前記筐体内に設けられた筒状空間と、磁気熱量効果を発生する磁気作業物質およびこの磁気作業物質に磁場を作用させる磁場発生機を有して前記筒状空間に設けられる磁気冷凍装置と、を備え、前記磁気作業物質および前記磁場発生機の少なくともいずれか一方が移動することによって前記磁気冷凍装置の一方端に比較的高温の高温熱媒体を生成させると共に他方端に前記高温と比べて比較的低温の低温熱媒体を生成させ、前記加熱手段は、前記磁気冷凍装置の前記一方端から送られてきた熱媒体の熱を放熱する加熱手段であり、前記冷却手段は、前記磁気冷凍装置の前記他方端から送られてきた熱媒体の熱を吸熱する冷却手段であり、前記乾燥用空気を、前記加熱手段、前記外槽、前記冷却手段、そして前記加熱手段の順序で順次循環させることで洗濯物を乾燥させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗濯乾燥機に磁気熱量効果を利用した磁気冷凍装置を搭載したので、高効率で環境に優しい洗濯乾燥機を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のドラム式洗濯乾燥機を左前方から見た斜視図。
【図2】底面部に磁気冷凍装置を設置した図1の洗濯乾燥機の内部構造を示す側面断面図。
【図3】底面部に磁気冷凍装置を設置した図1の洗濯乾燥機の内部構造を示す背面正面図。
【図4】背面部に磁気冷凍装置を設置した図1の洗濯乾燥機の内部構造を示す背面正面図。
【図5】円盤状ケースに収容する磁気冷凍装置の概要を示す斜視図。
【図6】円筒状ケースに収容する磁気冷凍装置の概要を示す斜視図。
【図7】磁場発生機が回転移動する方式の磁気冷凍装置を図5の矢印A方向から見た断面図。
【図8】図7の磁気冷凍装置の一要素を矢印B方向から見た部分斜視図。
【図9】本発明の洗濯乾燥機における磁気熱量効果の取り出しを説明する説明図。
【図10】両端面に継ぎ手を有する管状流路の斜視図。
【図11】側面端部に垂直な継ぎ手を有する管状流路の斜視図。
【図12】フィンの短い方向に空気が流れるクロス・フィン・チューブ式熱交換器の斜視図。
【図13】図7の円盤状ケースに収容する磁気冷凍装置を円盤側面から見た展開図。
【図14】図13の磁場発生機を一工程分進ませた円盤側面の展開図。
【図15】本発明の磁気熱量効果を利用した洗濯乾燥機の全体システム構成図。
【図16】磁場発生機と磁気作業物質を内包する断面円形状の管状流路の断面図。
【図17】磁場発生機と磁気作業物質を内包する断面角形状の管状流路の断面図。
【図18】磁場発生機と磁気作業物質を内包する断面長円(楕円)形状の管状流路の断面図。
【図19】180度U字形状に折り返した管状流路における磁気熱量効果の取り出しを説明する説明図。
【図20】1台のポンプで熱媒体を送る本発明の磁気熱量効果を利用した洗濯乾燥機の全体システム構成図。
【図21】磁場発生機が往復移動する方式の磁気冷凍装置を図5の矢印A方向から見た断面図。
【図22】磁場発生機が電磁石で構成される磁気冷凍装置を図5の矢印A方向から見た断面図。
【図23】磁場に沿った曲率を有する管状流路で構成される磁気冷凍装置を図5の矢印A方向から見た断面図。
【図24】フィンの長手方向に空気が流れるクロス・フィン・チューブ式熱交換器の斜視図。
【図25】底面部に磁気冷凍装置を設置した本発明の縦型洗濯乾燥機の内部構造を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明がなされた経緯について説明する。高効率で環境に優しい洗濯乾燥機を具現化するために、本発明者らは、気体の圧縮・膨張を応用した従来の冷凍技術とはまったく異なる原理で、磁性体に磁場を作用させることにより高温および低温を生成する磁気熱量効果に注目した。ある種の磁性体(以下、磁気作業物質と言う)には、外部から磁場(磁界)を加えると温度上昇(放熱)し、磁場を取り除くと温度低下(吸熱)するといった可逆的な現象が観測される。これが磁気熱量効果である。
【0013】
磁気熱量効果の原理は以下の通りである。すなわち、磁気作業物質に磁場を加えた状態と取り去った状態とでは、磁気作業物質内部のスピン系の自由度の相違に起因して、電子系のエントロピーが変化する。このエントロピー変化に伴い、磁気作業物質内部では、電子系と格子系との間で瞬時にエネルギーのやりとりが生じる。これによって磁気作業物質の温度(格子振動の度合い)が変化する。これが、磁気熱量効果の原理である。
【0014】
こうした磁気熱量効果を利用して対象物に対して熱交換を行うものを、以下では磁気冷凍装置と呼ぶ。特に、常温付近の温度帯域で磁気熱量効果を利用するものを、常温磁気冷凍装置と呼ぶ。本発明者らは、かかる磁気熱量効果を生じる磁気冷凍装置に着目し、この磁気冷凍装置を、洗濯乾燥機に組み込み適用する際に生じる種々の問題点について検討した。こうした検討を経て、本発明者らは、遂に本発明を完成させた。
以下、本発明の複数の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1を左前方から見た斜視図、図2は、図1に示すドラム式洗濯乾燥機1の筐体の一部を切断して内部構造を示す側面断面図、図3は、図1に示すドラム式洗濯乾燥機1の背面カバーを外して内部構造を示す背面正面図である。図4は、実施形態1の変形例に係る洗濯乾燥機の内部構造を示す背面正面図である。
【0016】
ドラム式洗濯乾燥機1の筐体2には、図1に示すように、前面側に衣類(洗濯物)4を出し入れするドア3が、背面側に背面カバー5が、それぞれ設けられている。筐体2の内側には、図2に示すように、回転しない(固定された)円筒状の外槽6が備えられる。外槽6は、筐体2の下部に設けられた複数個のサスペンション7により、筐体2の設置面(床面)に対して浮上支持されている。外槽6の内側には、円筒状の回転ドラム(“内槽”に相当する)8が回転自在に設けられている。この回転ドラム8は、外槽6と相似の形状を有している。回転ドラム8のサイズは、外槽6と比べて小さく設定されている。外槽6および回転ドラム8は、ドア3の開口部に対応する前面側が開放されている。これにより、ドア3を開けて衣類4を回転ドラム8内に投入可能になされている。回転ドラム8の開口部の外周には、脱水時の衣類4のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサー9が設けられている。
【0017】
また、回転ドラム8の内側には、衣類4をかきあげる複数個のリフター10が設けられている。回転ドラム8は、ドラムの後方側に設けられたドラム駆動モータ11に直結されている。このドラム駆動モータ11の駆動によって、回転ドラム8は、その回転軸周りに回転自在になっている。
【0018】
外槽6の開口部には、シリコーンゴム等の弾性体からなるパッキン12が取り付けられている。このパッキン12は、外槽6内とドア3との水密性を維持する役割を果たす。これにより、洗い、すすぎ、および脱水時の水漏れの防止が図られている。
【0019】
回転ドラム8は、図2に示すように、その周側壁に遠心脱水および通風用の小孔38を多数有する。外槽6の底壁に開口した排水口13は、排水ホース14に接続されている。筐体2の前面上部には、図1に示すように、洗濯や乾燥のモード選択等を行う際に用いられる操作部15が設けられている。なお、図2中の符号16は、衣類の乾燥に用いる循環空気流(温風)を表す。循環空気流16は、図3および図4に示すように、送風手段に相当するファン35により送風される。
【0020】
ファン35は、高圧力を出せるターボファンやシロッコファンでもよいし、軸流ファン,プロペラファン等であってもよい。ファン35の設置場所は特に限定されない。循環空気流16の途中(たとえば、後述するドラム入口ダクト25やドラム出口ダクト24等)であれば、ファン35をどこに設けてもよい。
【0021】
筐体2の下部には、図2に示すように、本発明の熱源である磁気冷凍装置17が設けられている。磁気冷凍装置17は、後述するように、磁気作業物質19、および、磁気作業物質19に磁場を加える磁場発生機18を主要な構成部品として有する。図2および図3の例では、磁気冷凍装置17は、筐体2の底面部1aに設けられている。詳しく述べると、磁気冷凍装置17は、図2または図3に示すように、筐体2の底面部1aに設けた筒状空間49に設けられる。円盤状あるいはドーナツ状の筒状空間49は、底面である平面の面積が広く、軸方向である周側面の距離が短い形状を有する。
【0022】
磁気冷凍装置17を筐体2の底面部1aに設置するメリットは、磁気冷凍装置17が重い場合には、重心を低く抑えることができ、洗濯乾燥機1の本体の安定性がよいこと、並びに、磁気冷凍装置17の一部が回転移動(運動)する場合には、洗濯乾燥機1の本体の振動を抑制しやすいことなどがあげられる。
【0023】
ただし、磁気冷凍装置17は、筐体2の底面部1aに代えて、図4に示すように、筐体2の背面部1bに設けた筒状空間(円盤状あるいはドーナツ状空間)49に設けてもよい。磁気冷凍装置17を筐体2の背面部1bに設けるメリットは、ドラム駆動モータ11と後述する磁場発生機駆動モータ39との共用化などがあげられる。要するに、磁気冷凍装置17の主要構成部品である磁気作業物質19および磁場発生機18は、収容スペースさえ許すのであれば、筐体2内のどこに設けてもよい。
【0024】
磁気冷凍装置17には、図3に示すように、磁気作業物質19内に熱媒体を移動させるポンプ等の駆動手段20、湿った空気を除湿冷却する冷却手段21、および衣類4の乾燥時に用いる空気流16の加熱源となる加熱手段22が付加的に設けられている。これは、図4に示す磁気冷凍装置17でも同様である。
【0025】
衣類4の乾燥時に用いる循環空気流16は、図3に示すように、加熱手段22で高温低湿の空気流16aとなり、ドラム入口ダクト25を通ってドラム入口26から回転ドラム8内に供給される。回転ドラム8内では、高温低湿の空気流16aが衣類4から水分を奪い、高湿の空気流16bとなってドラム出口23からドラム出口ダクト24に送られる。
【0026】
そして、冷却手段21で高湿の空気流16bが冷やされて除湿され、低温高湿の空気流16cとなり、再び加熱手段22に送られる。乾燥に利用する空気流16は、以上の循環を繰り返すことで、衣類4から水分を奪って衣類を乾燥させてゆく。
【0027】
本実施形態1の特徴は、外槽6、回転ドラム(内槽)8、磁気作業物質19および磁場発生機18を有する磁気冷凍装置17、加熱手段22、冷却手段21、並びに、ファン等の送風手段35を含む、すべての構成要素が1台の洗濯乾燥機1の筐体2内に実装されている点である。
【0028】
次に、実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1に搭載する磁気冷凍装置17の構造を図面に基づいて説明する。図5は、実施形態1に係る洗濯乾燥機1に搭載される磁気冷凍装置17の概要を示す斜視図である。図6は、実施形態1の変形例に係る洗濯乾燥機1に搭載される磁気冷凍装置17の概要を示す斜視図である。
【0029】
図5に示すように、実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1に搭載される磁気冷凍装置17は、底面である平面の面積が広く、軸方向である側面が短い筒状空間(円盤状あるいはドーナツ状空間)49に構成されている。磁気作業物質19を内包する管状流路28は、筒状空間49の半径方向に沿って延びるように放射状に複数本(具体的には8本)敷設されている。複数本の管状流路28の両端部を所定間隔で保持するために、筒状空間49の半径方向両端には、その外周側端部に管状流路ホルダ54aが、その内周側端部に管状流路ホルダ54bが、それぞれ設けられている。
【0030】
また、図6に示す実施形態1の変形例では、磁気冷凍装置17が、底面である平面の面積が狭く、底面に対して側面が軸方向に長い筒状空間(円筒状あるいは管状空間)49に構成されている。この場合、磁気作業物質19を内包する管状流路28は、筒状空間49の軸方向(長手方向)に長くなるように複数本敷設されている。複数本の管状流路28の両端部を所定間隔で保持するために、筒状空間49の軸方向両端には、その上側端部に管状流路ホルダ54aが、その下側端部に管状流路ホルダ54bが、それぞれ設けられている。
【0031】
ここで、本発明で言う筒状空間49は、図5のような薄い円盤状空間でもよいし、図6のような細長い円筒状空間でもよい。また、平面の形状は円形状に限る必要はなく、正方形等の四角形や、六角形あるいは八角形等であってもよい。また、中央に空間を有する環状(中空状)に代えて、円柱や角柱のように柱状(中実状)であってもよい。
【0032】
図5および図6において、符号30aおよび30bは永久磁石を表す。永久磁石30a,30b(“永久磁石30”と総称する場合がある。)の材質は、ネオジム系かフェライト系のいずれかで構成されることが好ましい。ただし、それ以外の材質であっても良く、必要な磁力や実装寸法等に応じて決めればよい。また、一つの磁気冷凍装置17内に、数種類の材質からなる永久磁石30が混在して使われていてもよい。
【0033】
以下では、図5に示す実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1に搭載される磁気冷凍装置17に沿って説明を進める。ただし、図6に示す実施形態1の変形例に係るドラム式洗濯乾燥機1に搭載される磁気冷凍装置17であっても、基本的な考え方は同じである。
【0034】
図7は、図5に示す円盤状の筒状空間49に収容する磁気冷凍装置17を図5の矢印A方向から見た平面をカットした断面図である。また、図8は、図7の磁気冷凍装置17を図7の矢印B方向から見た部分斜視図であり、ひとつの管状流路28が一対の永久磁石30a,30bに挟まれるように位置している状態を部分的に切り取って示している。
【0035】
図7では、磁気作業物質19を内包する管状流路28を8本(28a〜28h)設置した例を示している。なお、磁気作業物質19を内包する管状流路28の本数は、これより少なくてもよいし、逆に多くてもよい。ただし、図9に示すように、本発明の特徴である磁気冷凍装置17の高温端(“一方端”に相当する)に生成される比較的高温の高温熱媒体27bと、低温端(“他方端”に相当する)に生成される前記高温と比べて比較的低温の低温熱媒体27aの両方を利用する場合には、管状流路28の本数は、偶数本に設定するのが好ましい。特に、高温熱媒体27bと低温熱媒体27aの両方の熱量をほぼ同量必要な場合は、高温熱媒体27bと低温熱媒体27aがそれぞれ生成される管状流路28の本数を半々とすべく、偶数本に設定するのがよい。
【0036】
磁場発生機18は、図8に示すように、管状流路28の上面(円盤状の筒状空間49の平面部上面)と下面(平面部下面)にそれぞれ設けた一対の永久磁石30a,30b、これら一対の永久磁石30a,30bを所定の間隔を置いて保持するコの字状の磁石ホルダ29、磁石ホルダ29を回転させる磁場発生機駆動モータ39、および、磁石ホルダ29と磁場発生機駆動モータ39との間を連結する連結シャフト40により構成される。図8中の符号53は、永久磁石30a,30bによって発生する磁場(磁界)であり、磁場の向きを波線で示している。
【0037】
ここで、図7に示すように、磁場発生機18は、軸回り方向に均等な間隔を置いて4個設けられており、一つの駆動モータ39で一体となって回転駆動される。図7に示す符号34は、磁場発生機移動方向である。なお、磁場発生機18の数は4個に限定されない。磁場発生機18の数は、例えば6個や8個など、任意の数に設定することができる。
【0038】
以上のように、磁気作業物質19が〔N=8:偶数〕本の管状流路28に分割して充填され、磁場発生機18は管状流路28の数Nの半分、つまり〔N/2=4〕個で構成されている。本実施形態1では前記のように「管状流路の数〔N:偶数〕本に対し磁場発生機の数〔N/2〕個」の関係が望ましい。
【0039】
次に、図1から図4で説明した実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1と、図7から図8で説明した磁気冷凍装置17をもとに、図9から図15を用いて、実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1に適用する磁気熱量効果の動作原理と使い方を詳細に説明する。図9は、図7のC部を切り出した図である。ここではこれを一組のシステムとして考える。つまり、図7では、4組のシステムが備わっていることになる。図10は、両端面に継ぎ手を有する管状流路の斜視図である。図11は、側面端部に垂直な継ぎ手を有する管状流路の斜視図である。
【0040】
磁気作業物質19は、8本の管状流路28にそれぞれ均等に収納されている(詰め込まれている)。磁気作業物質19の形状は、管状流路28内を流れる熱媒体27の通路抵抗(圧力損失)を極力少なくする目的から、球状(丸粒状)が好ましい。ただし、これに限る必要はなく、粒形が角状(立方体や直方体)や星粒状でもよいし、各種形状の組み合わせであってもよい。さらには、例えば粒形が同じ球状においても、直径の異なる数種類の粒とし、これらを混ぜ合わせて収納してもよい。この場合、大粒の磁気作業物質19の隙間に小粒の磁気作業物質19が入り込み、管状流路28内への磁気作業物質19の収納密度(実装密度)を向上することができ、好都合である。また、磁気作業物質19の形状は、薄く細長い板状(短冊上)などであってもよい。
【0041】
また、磁気作業物質19の材質としては、常温付近で利用可能なガドリニウム(Gd)およびその合金や、強磁性化合物金属であるMnAs等の強磁性体が望ましい。ただし、本発明はこれらの材質に限る必要はない。洗濯乾燥機で要求される低温端17aおよび高温端17bの温度仕様に応じ、その材質を適宜選択すればよい。なお、状況に応じ、複数の材質を混在させてもよい。
【0042】
管状流路28としては、熱伝導率が低く磁石に影響されない材質がよい。具体的な管状流路28の材質としては、例えば、ポリカーボネイトやテフロン(登録商標)、シリコーン、アクリルなどの樹脂製がよい。なお、管状流路28は、磁気作業物質19と同じ材質で構成してもよい。
【0043】
管状流路ホルダ54における磁気作業物質19を内包する管状流路28から加熱手段22および冷却手段21への熱媒体(本実施形態では水)の取り出しは、例えば図10に概念的に示すように、管状流路28の両端面に継ぎ手48をそれぞれ設け、そのまま水流路(ホース等)31に接続すればよい。また、図11に概念的に示すように、管状流路28の側面端部に略垂直に継ぎ手48をそれぞれ設け、水流路(ホース等)31に接続してもよい。もちろん、両方法による継ぎ手48の組み合わせであってもよい。
【0044】
図9では、管状流路28aが、一対の永久磁石30a,30bに挟まれた状態で磁場発生機18a(図8参照)内に収まっており、管状流路28aの軸方向に直交する方向(紙面と直交する方向)へ磁場が加えられた状態にある。一方、管状流路28bは磁場発生機18aから外れており、磁場が取り去られた状態にある。よって、この場合、後述する磁気熱量効果によって、管状流路28a内の磁気作業物質19が昇温(温度上昇)し、管状流路28b内の磁気作業物質19が降温(温度低下)することになる。
【0045】
熱媒体である水27の流れる流路は、図9に示すように、以下の通り構成されている。まず、管状流路28aの継ぎ手48bには水流路31aが接続され、その水流路31aの他端は加熱手段22に接続される。加熱手段22の他端はポンプ20および水流路31bを介して管状流路28bの継ぎ手48dに接続され、管状流路28bの他端の継ぎ手48aは水流路31cに接続される。その水流路31cの他端は冷却手段21に接続され、その冷却手段21の他端は水流路31dに接続される。その水流路31dは管状流路28aの継ぎ手48cに接続されて、これで熱媒体27の流れは一巡する。
【0046】
ここで用いる水(熱媒体)27は、純水や軟水(硬度成分がゼロか極端に少ない水)であってもよいし、使用状況によっては水道水や井戸水でもよい。さらに、寒冷地等でも利用可能なように不凍液等を混ぜた混合水や、腐食や錆びを防止するために防腐剤や防錆剤を入れた水であってもよい。また、防錆などのために、磁気作業物質19そのものの表面に防錆剤等を塗布あるいはコーティング、メッキを施してもよい。
【0047】
ポンプ20は、熱媒体(水)27を常に一方向に移動(循環)させるものではなく、後述するように水流路31内を往復移動させるもので、往復ポンプ,プランジャーポンプ等で構成される。
【0048】
図9の例の場合、管状流路28aは一対の永久磁石30a,30bによる磁場内に位置しているのに対し、管状流路28bは一対の永久磁石30a,30bによる磁場から外にはみ出している。この場合の磁気熱量効果では、管状流路28a内に収納されている磁気作業物質19は磁場の作用により発熱し、管状流路28bに収納されている磁気作業物質19は磁場から外れることにより吸熱する。
【0049】
このとき、ポンプ20の運転によって、水流路31内の熱媒体(水)27を実線の矢印32,33の方向(いずれも同方向)に流すと、管状流路28bの低温端48aには低温熱媒体27a(冷たい水)が、管状流路28aの高温端48bには高温熱媒体27b(温かい水)がそれぞれ生成され、各熱媒体27a,27bがそれぞれ冷却手段21と加熱手段22に送られる。ここで、図9中の符号32は、管状流路28aで昇温した温かい水(高温熱媒体)の移動方向を前記の実線の矢印で示し、同図中の符号33は、管状流路28bで降温した冷たい水(低温熱媒体)の移動方向を前記の実線の矢印で示している。
【0050】
すると、ドラム出口ダクト24内、あるいはその後方に設けられた冷却手段21において、管状流路28bの低温端48aから水流路31cによって送られてきた低温熱媒体27aは、回転ドラム8から出た高温高湿の空気流16b(図3参照)と熱交換し、空気流16bから熱を奪って昇温したのち冷却手段21を出る。
【0051】
ここで、冷却手段21および後述する加熱手段22を構成する熱交換器41は、熱媒体である水(液体)27と空気(気体)16を効率良く熱交換させる必要がある。そこで、例えば、クロス・フィン・チューブ式熱交換器を用いるのがよい。図12は、フィンの短い方向に空気が流れるクロス・フィン・チューブ式の熱交換器の斜視図である。クロス・フィン・チューブ式の熱交換器41は、複数枚(多数)の薄いフィン42と、これに貫通する複数本のチューブ43と、チューブ43間をU字形状に連結するU字ベンド44となどから構成される。クロス・フィン・チューブ式の熱交換器41では、フィン42の表面が空気流16と接し、チューブ43の内面が水27と接し、これら両者間で熱交換する。
【0052】
フィン42は、熱伝導率のよいアルミニウムかその合金で構成される。チューブ43、U字ベンド44は、同様に熱伝導率のよいアルミニウムか銅、あるいはそれらの合金で構成するのがよい。
【0053】
なお、冷却手段21および加熱手段22は、クロス・フィン・チューブ式の熱交換器41に限らず、よりコンパクトなコルゲートフィン式熱交換器等、それ以外の種類で構成される熱交換器であってもよい。
【0054】
図12に示すクロス・フィン・チューブ式の熱交換器41では、フィン42の短い方向に空気流16が流れる方式で、空気流16が流れるフィン間流路断面積を広く確保できるので、フィン42間を流れる空気流16の通風抵抗(圧力損失)を小さくできる利点がある。
【0055】
さて、冷却手段21での熱交換により、空気流16側では、熱交換器41の狭いフィン間に送られた高温高湿の空気流16bは、低温熱媒体27aと熱交換し、低温熱媒体27aに熱を奪われて冷却され、空気流16中の水分が凝縮される。その後、水分凝縮で除湿冷却された低温高湿の空気流16c(図3参照)は、冷却手段21である熱交換器41を出る。
【0056】
一方、ドラム入口ダクト25内、あるいはその前方に設けられた加熱手段22において、管状流路28aの高温端48bから水流路31aによって送られてきた高温熱媒体27bは、冷却手段21で作られて送られてきた低温高湿の空気流16cと熱交換し、空気流16cに放熱して降温したのち加熱手段22を出る。反対に、加熱手段22である熱交換器のフィン間に送られた低温高湿の空気流16cは、高温熱媒体27bと熱交換し、熱媒体27bから熱を奪って昇温し、高温低湿空気流16aとなって加熱手段22を出る。
【0057】
図13は、図7の側面部を展開した図であり(C部をさらに周方向に延長して展開)、図9に示した管状流路28a,28bに続けて、管状流路28c,28dまで示している。図13に示すように、一方の磁場発生機18aは、管状流路28aの位置に、他方の磁場発生機18bは管状流路28cの位置にあり、それぞれ管状流路28a,28cに磁場を加えている。逆に、管状流路28b,28dの位置には磁場発生機18がなく、磁場が取り去られた状態にある。図13において、管状流路28の内部が網掛けとなっているものは磁場が加わっている状態(磁気作業物質19の磁性を担う電子スピンの向きがそろった状態)を示し、管状流路28の内部が空白となっているものは磁場が加わっていない状態(磁気作業物質19の磁性を担う電子スピンの向きがランダムな状態)を示している。
【0058】
続いて、磁場発生機駆動モータ39により磁場発生機18をゆっくり面内方向に回転させる(34が磁場発生機移動方向)と、図14に示す状態(位置関係)になる。図14は、図13の磁場発生機を一工程分進ませた円盤側面の展開図である。これは、図9において、磁場発生機が実線位置18から破線位置18a’に移動した状態を示す。すると、今度は、磁場発生機18aは管状流路28bの位置に、磁場発生機18bは管状流路28dの位置にあり、それぞれ管状流路28b,28dに磁場を加え(発熱させ)、逆に、管状流路28a,28cの位置には磁場発生機18がなく、磁場が取り去られた状態(冷却状態)となる。
【0059】
このとき、図9において、ポンプ20によって送水方向を切り替えて、管状流路28と水流路31内の水27の流れを逆(破線矢印方向)にすると、今度は、管状流路28bの高温端48dには高温熱媒体27d(温かい水)が、管状流路28aの低温端48cには低温熱媒体27c(冷たい水)がそれぞれ生成され、その水27c,27dがそれぞれ冷却手段21と加熱手段22に送られる。
【0060】
すると、冷却手段21において、管状流路28aの低温端48cから水流路31dによって送られてきた低温熱媒体27cは、回転ドラム8から出た高温高湿の空気流16bと熱交換し、空気流16bから熱を奪って昇温したのち冷却手段21を出る。反対に、冷却手段21での熱交換により、空気流16側では、冷却手段21である熱交換器41の狭いフィン間に送られた高温高湿の空気流16bは、低温熱媒体27cと熱交換し、低温熱媒体27cに熱を奪われて冷却され、空気流16中の水分が凝縮される。その後、水分凝縮で除湿冷却された低温高湿の空気流16cは冷却手段21である熱交換器41を出る。
【0061】
一方、加熱手段22において、管状流路28bの高温端48dから水流路31bによって送られてきた高温熱媒体27dは、冷却手段21で作られて送られてきた低温高湿の空気流16cと熱交換し、空気流16cに放熱して降温したのち加熱手段22を出る。反対に、加熱手段22である熱交換器のフィン間に送られた低温高湿の空気流16cは、高温熱媒体27dと熱交換し、熱媒体27dから熱を奪って昇温し、高温低湿の空気となって加熱手段22を出る。
【0062】
以上のように、一つの磁場発生機駆動モータ39により4個の磁場発生機18a〜18dをゆっくり面内方向に回転させる(34が磁場発生機移動方向)ことで、常に、磁場発生機18の磁場が加わる場所に位置する管状流路28(磁気作業物質19)は昇温し、管状流路18の高温端には高温熱媒体27b,27d(温かい水)が生成される。
【0063】
一方、磁場発生機18から外れた場所に位置する管状流路28(磁気作業物質19)は降温し、管状流路18の低温端には低温熱媒体27a,27c(冷たい水)が生成される。
【0064】
そして、その熱をポンプ20の一定時間毎の往復移動によって、熱媒体27を介してそれぞれ冷却手段21と加熱手段22に導くことにより、乾燥に利用する空気流16の除湿冷却と加熱の両方を連続して行うことができる。
【0065】
図15は、磁気熱量効果を利用した実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1の全体システム構成図である。このシステム構成例は、2本の管状流路28と一つの磁場発生機18で構成される一組のシステムを4組並べてなる。例えば、管状流路28a,28b、ポンプ20a、冷却手段21aおよび加熱手段22aによって一組のシステムが構成される。
【0066】
以下、同様の構成部品の組み合わせにより3組のシステムが構成され、4つの冷却手段21a〜21dはドラム出口ダクト24内に、4つの加熱手段22a〜22dはドラム入口ダクト25内に、それぞれ直列に配備されている。もちろん、冷却手段21や加熱手段22の配置は直列ではなく並列になっていてもよいし、それらの組み合わせに係る配列であってもよい。
【0067】
図15のように構成することで、ドラム8から出た高温高湿の空気流16bは、ドラム出口ダクト24内(ドラム出口ダクト後方部も含む)で、4つの冷却手段21d、21c、21b、21aの順に通過することで徐々に冷却除湿され、低温高湿の空気流16cとなり、ドラム入口ダクト25に至る。ドラム入口ダクト25内(ドラム入口ダクト前方部も含む)では、低温高湿の空気流16cは、4つの加熱手段22a、22b、22c、22dの順に通過することで徐々に加熱され、高温低湿の空気流16aとなり回転ドラム8に至る。
【0068】
回転ドラム8内では、高温低湿の空気流16aが衣類4から水分を蒸発させて衣類から水分を奪い、高温高湿の空気流16bとなってドラム出口ダクト24に送られ、乾燥に利用される空気流16は以上の循環を繰り返すことで衣類が乾燥する。
【0069】
ここで、一例ではあるが、空気流16のそれぞれの乾燥初期時の温度と相対湿度の所望値は、概略以下の通りである。回転ドラム8に入る高温低湿の空気流16aは温度が40〜70℃、相対湿度が0〜20%、回転ドラム8から出る高温高湿の空気流16bは30〜60℃,80〜100%、そして低温高湿の空気流16cは10〜30℃,80〜100%程度である。よって、磁気熱量効果を発揮する本発明の磁気作業物質19は、上記諸数値に対応する性能を有することが最も望ましい。なお、周囲環境(外気の温度,湿度)や乾燥させる衣類容量や種類,乾燥運転のパターン、あるいは利用する磁気作業物質19の制約などにより、前記温度と相対湿度の数値は変化することは言うまでもない。
【0070】
ここで、熱媒体の移動は連続した緩慢な往復移動でもよいが、低温熱媒体27a,27cの最も低温度帯になっている熱媒体が冷却手段21に到達したとき、および高温熱媒体27b,27dの最も高温度帯になっている熱媒体が加熱手段22に到達したときに、ポンプ20の駆動を一時的に停止し、熱交換器41内での熱媒体の静止期間(時間)を設け、更なる効率よい熱交換を図ってもよい。なお、この場合も、空気流16は流し続けるものとする。
【0071】
なお、磁気冷凍装置17や冷却手段21、加熱手段22等の仕様(形状や大きさ等)にもよるが、一例として、磁場発生機駆動モータ39の回転は、1回転10秒程度の低速運転でもよい。
【0072】
また、磁気冷凍装置17を、図4のようにドラム式洗濯乾燥機1の本体背面部1bに設置する場合などは、磁場発生機駆動モータ39はドラム駆動モータ11と共用になっていてもよい。つまり、ドラム駆動モータ11を磁場発生機18の回転用に利用してもよい。この場合、回転ドラム8の回転数と磁場発生機18の回転数とが異なることが想定される。しかし、この回転数の違いについては、変速ギヤの組み合わせやベルト駆動にしてプーリー径を変えるなどの対応を施すことにより吸収すればよい。
【0073】
次に、磁気作業物質19を内包する管状流路28と、磁場発生機18に取り付ける一対の永久磁石30a,30bとの大きさ比較について言及する。図16は、実施形態1に係る円形断面の管状流路28の例を示す。図17は、実施形態1の変形例に係る角形状管状流路45(流路断面は、正方形、長方形いずれでも可)の例を示す。図18は、実施形態1の変形例に係る長円形状管状流路46(楕円、あるいは四角に丸みを帯びた長方形断面でも可)の例を示す。いずれの例でも、管状流路28、45,46の横方向の流路幅Wdと永久磁石30の磁石幅Wmの関係は、等磁場過程(磁気作業物質19への励磁開始から終了まで)に要する時間を確保するため、最低でも「Wd<Wm:流路幅Wdより磁石幅Wmの方が大きい」関係が望ましい。さらに、効率良く熱交換させるため、「Wm=2Wd〜3Wd:磁石幅Wmは流路幅Wdの2〜3倍程度」がより望ましいと言える。
【0074】
以上説明した実施形態1では、図9に示したように、一つの磁場発生機18に収まる管状流路18は曲がり部分のない1本の直管としたが、本発明はこの例に限定されない。図19は、180度U字形状に折り返した管状流路における磁気熱量効果の取り出しを説明する説明図である。一つの磁場発生機18に収まる管状流路18は、図19に示すように、180度U字形状に折り返すヘアピン部を有するU字形状管状流路47であってもよい。この場合、U字形状管状流路47の両端の一対の継ぎ手48(例えば、48aと48b)が相互に隣接する。このため、冷却手段21や加熱手段22への水流路31の接続が容易になる等、便利な場合がある。
【0075】
また、実施形態1では、図15に示したように、2本の管状流路28と一つの磁場発生機18で構成される1組のシステム毎に各1つのポンプ20a〜20dをそれぞれ設けることにより、都合4個のポンプを設ける例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。図20は、1台のポンプで熱媒体を送る本発明の実施形態1の変形例に係る洗濯乾燥機の全体システム構成図である。1組のシステム毎に各1つのポンプ20a〜20dをそれぞれ設ける実施形態1に代えて、図20に示すように、4個のポンプが分割して担っていた役目を一つの大き目のポンプ20に任せ、そのポンプ20から送水される水流路31を4分割してもよい。この場合、4つのシステムの仕様条件(管状流路28、47や冷却手段21、加熱手段22等の通水時の圧力損失など)が完全に揃っているか、あるいは略同一であることが望ましい。
【0076】
また、実施形態1では、磁場発生機18を磁場発生機駆動モータ39により回転移動させる例をあげて説明したが、本来は、管状流路28、47と、磁場発生機18との相対位置関係が順次変化すれば足りるのであり、逆に、磁場発生機18を固定し、管状流路28、47を移動させてもよい。
【0077】
また、実施形態1では、熱媒体27として液体、特に利用しやすい水を用いたが、熱媒体27としては気体,特に空気を用いてもよい。この場合、冷却手段21や加熱手段22に用いる熱交換器としては、図12に示したようなクロス・フィン・チューブ式の熱交換器41(フィンチューブ熱交換器)でもよいが、気体(空気)は液体(水)に比べ熱伝達性が悪いので、熱媒体27側の熱交換面積も広くするようにしたい。例えば、フィンプレート熱交換器やプレート熱交換器などの採用が考えられる。熱媒体27として水等の液体を用いると、万が一の漏れ等の対策が必要になるが、空気等の気体を熱媒体27として用いた場合、漏れ等が許容される点で有利となる。
【0078】
以上説明した実施形態1では、主に、図7に示した磁場発生機18が一方向に回転移動34する方式の磁気冷凍装置17について説明したが、以下に、別の実施形態について幾つか説明する。
【0079】
図21は、磁場発生機18が中央の磁場発生機駆動モータ39の回転により、周方向の一定距離間を往復移動34する方式の磁気冷凍装置17の例である。基本的な構成は図7と同じである。図7では中央の磁場発生機駆動モータ39により磁場発生機18(18a、18b、18c、18d)がゆっくりと一方向に回転移動するのに対し、図21では往復移動34する点が大きく相違している。
【0080】
図21に示すように、例えば、磁場発生機18aは管状流路28aと28b間を往復移動34するし、磁場発生機18cは管状流路28eと28f間を往復移動34する。他の磁場発生機18b、18dも同様である。この場合の効果(磁気熱量効果の取り出しなど)も前記(図7など)と同様である。
【0081】
また、図22は、磁場発生機18が電磁石51で構成される磁気冷凍装置17の例を示す。つまり、図8において、永久磁石30a,30bが電磁石51aと51bに置き換わることになり、図22に示すように、一つの管状流路28に一つの磁場発生機18(電磁石51)が配置されることになる。図22において、符号52は状況に応じて電磁石51のONとOFFを制御する制御装置で、符号50はその制御装置52と電磁石51を結ぶ信号線である。
【0082】
図22に示すように、例えば、管状流路28aには磁場発生機18aが配置され、その横の管状流路28bには磁場発生機18bが配置され、磁場発生機18aの電磁石51がON時には、磁場発生機18bの電磁石51はOFF状態となり、管状流路28aには高温の熱媒体27が生成され、管状流路28bには低温の熱媒体27が生成される。
【0083】
逆に、磁場発生機18aの電磁石51がOFF時には、図22に示すように、磁場発生機18bの電磁石51はON状態となり、管状流路28aには低温の熱媒体27が生成され、管状流路28bには高温の熱媒体27が生成される。
【0084】
他の磁場発生機18や管状流路28の動作も同様である。また、前記した説明では、隣同士(管状流路28aと28b)で一対(高温熱媒体27と低温熱媒体27の生成)と考えたが、組み合わせは自由であり、例えば、管状流路28a〜28dが高温熱媒体27を生成時に、管状流路28e〜28hが低温熱媒体27を生成するように構成してもよい。
【0085】
図22に示す実施形態1の変形例の場合、図7や図21に示した例のような磁場発生機駆動モータ39は不要となるが、各磁場発生機18には電気によりON・OFFする電磁石51が必要となるので、両方の系全体の実装性や消費電力量などを比較するなどして、どちらを選択するかを考えればよい。
【0086】
また、図23は、磁場に沿った曲率を有する管状流路で構成される磁気冷凍装置を示す断面図である。図23に示すように、例えば、一対の永久磁石30a,30bの磁場(磁界)53に沿って曲率を有する管状流路28aが構成されている。ここでも、中央の磁場発生機駆動モータ39により、一対の永久磁石30a,30bを搭載した磁場発生機18が一方向34に回転する。
【0087】
また、図24は、図12の(クロス・フィン・チューブ式)熱交換器41の他の実施形態である。図12では、フィン42の短い方向に沿って空気流16が流れるのに対し、図24では、フィン42の長手方向に沿って空気流16が流れる。図24では、空気流16が流れる方向にチューブ43を多数並べることができるので、チューブ43内を流れる熱媒体27の温度をそれぞれ変化させれば、フィン42間を流れる空気流16の温度変化幅を大きくすることも可能である。一方、図12の方式では、フィン42間を流れる空気流16の通風抵抗を小さくできる利点があるので、採用するシステムにより使い分ければよい。
【0088】
さらに、洗濯乾燥機から室内への無駄な排熱を減らして消費電力量を低減する方法として、ドラム式洗濯乾燥機1のドラム駆動モータ11やファン35用モータから熱損失として洗濯乾燥機本体内部に放出される熱(発熱)を、それぞれのモータ周囲を流れる本体内部空気で回収し、その温まった本体内部空気を空気流16に導いてもよい。
【0089】
本実施形態1によれば、筐体2内に、乾燥時に内部が乾燥室となる外槽6と、外槽6内に回転自在に設けられて洗濯物を収容する回転ドラム(内槽)8と、乾燥用空気が循環するダクト24,25と、ダクト24,25内に設けられて洗濯物を乾燥させる加熱手段22、冷却手段21、およびファン(送風手段)35とを備えた洗濯乾燥機1において、筐体2内に設けられた筒状空間49と、磁気熱量効果を発生させる磁気作業物質19およびこの磁気作業物質19に磁場を作用させる磁場発生機18を有して筒状空間49に設けられる磁気冷凍装置17と、を備える。磁気作業物質19および磁場発生機18の少なくともいずれか一方が移動することによって磁気冷凍装置17の高温端に高温熱媒体を生成させると共に低温端に低温熱媒体を生成させる。加熱手段22は、磁気冷凍装置17の高温端から送られてきた熱媒体の熱を放熱し、冷却手段21は、磁気冷凍装置17の低温端から送られてきた熱媒体の熱を吸熱し、乾燥用空気を、加熱手段22、外槽6、冷却手段21、そして加熱手段22の順序で順次循環させることで洗濯物を乾燥させる。これにより、電気ヒータ式の洗濯乾燥機と比べて消費電力量を削減でき、洗濯乾燥機1内または室内に高湿あるいは高温の空気を放出して周囲環境を悪化させず、さらに、洗濯乾燥機1から室内への無駄な排熱を減らして消費電力量を低減することができる。
【0090】
また、従来の電気ヒータ式洗濯乾燥機に比べると、成績係数COP(熱出力/電気入力)として1以上の値が得られ、省エネルギー性能が良好である(消費電力量の低減が可能)。磁気冷凍装置の両端で得られる加熱手段による加熱熱量Qcと冷却手段による冷却熱量Qeの両方を、循環空気(温風)の加熱と冷却(除湿)の両方に同時に利用することができるので、一方の熱を無駄に捨てることがない。
【0091】
また、従来のヒートポンプ式洗濯乾燥機に比べると、地球温暖化係数(GWP)が1300程度の冷媒R134aなどフロン系冷媒を全く使わないので、環境負荷が非常に小さい。また、加熱手段による加熱熱量Qcと冷却手段による冷却熱量Qeがほぼ同じ熱量なので、乾燥に利用する循環空気の一部を洗濯乾燥機の周囲に排熱あるいは排気させる必要がない。さらに、システムの性質上、高速回転する圧縮機を用いないため、低振動、低騒音化も実現可能である。
【0092】
[実施形態2]
図25は、本発明の実施形態2に係るもので、縦型洗濯乾燥機36の筐体の一部を切断して内部構造を示す側面断面図である。図25中、実施形態1に係るドラム式洗濯乾燥機1と同じ符号は同じ役割をする部品であり、内槽8の下部に位置する符号37は衣類を撹拌する回転翼である。
【0093】
本実施形態2では、磁気冷凍装置17を構成する磁場発生機18は、縦型洗濯乾燥機36の底面部36aに設置されているが、磁気冷凍装置17の設置場所は底面部36aではなく、背面部36b等であってもよい。本実施形態2に係る縦型洗濯乾燥機36においても、前記と同様に、磁気熱量効果を利用できる。
【0094】
[実施形態3]
最後に、磁気熱量効果を利用した磁気冷凍装置17(磁気作業物質19、管状流路28、47)の高温端と低温端の両方にそれぞれ発生される熱源(加熱源と冷却源)を同時に/一緒に有効に使える機器として、本発明のように、衣類(洗濯物)を洗濯から乾燥まで1台でできるドラム式洗濯乾燥機や縦型洗濯乾燥機を含むいわゆる洗濯乾燥機以外に、衣類の乾燥のみを行う衣類乾燥機や、その他の乾燥機能(たとえば、食器乾燥,食品乾燥,木材乾燥、塗装や染料乾燥など)を有する機器、および除湿機などがある。本発明の実施形態3では、こうした機器への適用を想定している。
これらの機器においても、高温端と低温端の両方にそれぞれ発生される熱源(加熱源と冷却源)のいずれか一方のみを利用するシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 ドラム式洗濯乾燥機
2 筐体
3 ドア
4 衣類(洗濯物)
5 背面カバー
6 外槽
7 サスペンション
8 回転ドラム(内槽)
9 流体バランサー
10 リフター
11 ドラム駆動モータ
12 パッキン
13 排水口
14 排水ホース
15 操作部
16 空気流(温風)
17 磁気冷凍装置
18 磁場発生機
19 磁気作業物質
20 ポンプ
21 冷却手段
22 加熱手段
23 ドラム出口
24 ドラム出口ダクト(ダクト)
25 ドラム入口ダクト(ダクト)
26 ドラム入口
27 水(熱媒体)
27a 低温熱媒体
27b 高温熱媒体
28 管状流路
29 磁石ホルダ
30 永久磁石
31 水流路
32 温熱(高温)媒体移動方向
33 冷熱(低温)媒体移動方向
34 磁場発生機移動方向
35 ファン
36 縦型洗濯乾燥機
37 回転翼
38 小孔
39 磁場発生機駆動モータ
40 連結シャフト
41 熱交換器(クロス・フィン・チューブ式)
42 フィン
43 チューブ
44 U字ベンド
45 角形状管状流路
46 長円形状管状流路
47 U字形状管状流路
48 継ぎ手
49 筒状空間
50 信号線
51 電磁石
52 制御回路
53 磁場(磁界)
54 管状流路ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に、乾燥時に内部が乾燥室となる外槽と、前記外槽内に回転自在に設けられて洗濯物を収容する内槽と、乾燥用空気が循環するダクトと、前記ダクト内に設けられて洗濯物を乾燥させる加熱手段、冷却手段、および送風手段とを備えた洗濯乾燥機において、
前記筐体内に設けられた筒状空間と、
磁気熱量効果を発生させる磁気作業物質およびこの磁気作業物質に磁場を作用させる磁場発生機を有して前記筒状空間に設けられる磁気冷凍装置と、
を備え、
前記磁気作業物質および前記磁場発生機の少なくともいずれか一方が移動することによって前記磁気冷凍装置の一方端に比較的高温の高温熱媒体を生成させると共に他方端に前記高温と比べて比較的低温の低温熱媒体を生成させ、
前記加熱手段は、前記磁気冷凍装置の前記一方端から送られてきた前記高温熱媒体の熱を放熱し、
前記冷却手段は、前記磁気冷凍装置の前記他方端から送られてきた前記低温熱媒体の熱を吸熱し、
前記乾燥用空気を、前記加熱手段、前記外槽、前記冷却手段、そして前記加熱手段の順序で順次循環させることで洗濯物を乾燥させる、
ことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記筒状空間の半径方向に前記磁気作業物質を設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記筒状空間の軸方向に前記磁気作業物質を設けた、
ことを特徴とする請求項1に記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記磁気作業物質および前記磁場発生機の少なくともいずれか一方の前記移動は、一方向の回転移動である、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【請求項5】
前記磁気作業物質および前記磁場発生機の少なくともいずれか一方の前記移動は、所定距離間の往復移動である、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【請求項6】
前記内槽の回転軸は、前記筐体の設置面に略平行に設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【請求項7】
前記内槽の回転軸は、前記筐体の設置面に略垂直に設けられている、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−179266(P2012−179266A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44599(P2011−44599)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【Fターム(参考)】