説明

洗濯方法および洗濯機

【課題】使用者が再生のために特別な剤を補給する必要なく再生可能な軟水化装置を搭載した洗濯機を実現すること。
【解決手段】静電結合作用を有する陽イオン交換材を充填した軟水化手段5を有し、洗浄に用いる水を軟水化手段5によって軟水化して洗剤ケース9を介して洗濯物を収容する洗濯槽1に供給し、その後、キレート結合作用のある柔軟剤を軟水化手段5に供給することによって、軟水化手段5から硬水成分をキレート作用によって脱離させて再生してから、柔剤軟供給手段10から柔軟剤を含む水を洗濯槽1に導入してすすぎに用いるようにしたので、使用者が再生のために特別な剤を補給する必要なく再生可能な軟水化装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水化装置を用いる洗濯方法および洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗濯機に利用される洗濯用水は通常水道水や地下水、井戸水などであり、洗濯機を使用する場所の水質の影響を大きく受ける。特に、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)などの硬水成分は界面活性剤の洗浄力を低下させる性質があり、洗浄性能に対して負の影響を与える。また、硬水の場合、洗剤を溶解させにくいため、洗濯機の各部が洗剤カスで汚れやすくカビの発生などの原因になりうる。また、微量溶解している鉄やマンガン、アルミニウムなどの多価金属イオンも洗剤と相互作用して同様の問題を引き起こす。
【0003】
この課題に対処するため、市販洗剤には硬水成分を吸着するゼオライトなどの軟水化剤が配合される。ゼオライトは多価陽イオンを吸着しやすい特性があるためにある程度の軟水化効果を発揮するが、洗剤の溶けた洗浄水中に混ぜられた状態で使われるために一部の硬水成分や金属イオンは洗浄水中に再溶解して上記の問題を起こすので効果には限度がある。
【0004】
そのため、硬水地域では軟水地域に比べてより多くの洗剤を投入することによって洗浄性能を発揮している。硬水地域の洗剤のパッケージには硬度に応じて投入量を増やすように指示してあることが多い。しかし、洗剤の使用量が多くなることは環境に負担をかけるとの懸念がある。また、洗剤カスの問題については抜本的な対策にならない。
【0005】
洗濯機に陽イオン交換樹脂などの軟水化装置を搭載して硬水成分を除去するという技術がある(例えば、特許文献1、2参照)。最も一般的な陽イオン交換樹脂は、スルホン酸基などの酸性イオン交換基を表面に有し、静電気力によって陽イオンを吸着保持する。酸性イオン交換基は、イオンの価数やイオン半径に応じて吸着のしやすさが異なる。強酸性イオン交換基であるスルホン酸基の場合、3価イオン>2価イオン>1価イオンの順に、またイオンの価数が同じ場合イオン半径が大きいほど吸着されやすい。Na型のイオン交換樹脂に硬水を通水すると硬水成分であるCa2+やMg2+がNaよりも選択性が強いためにイオン交換樹脂に保持されて、代わりに等量のNaが流出する。
【0006】
陽イオン交換樹脂の軟水化作用は、酸性イオン交換基の表面荷電の大部分が硬水成分で飽和されたときに失われる。したがって、定期的に食塩(NaCl)などの再生剤を加えて、高濃度のNaを陽イオン交換樹脂に通水することによってCa2+やMg2+を交換再生する必要がある。
【0007】
一方、強酸性陽イオン交換樹脂の代わりに、弱酸性陽イオン交換樹脂やキレート樹脂を用いた軟水化装置も提案されている(例えば、特許文献3参照)。これらのイオン交換樹脂は、カルボキシル基をイオン交換基として有する。カルボキシル基は、上記のスルホン酸基と異なって、弱酸性イオン交換基は、数式1のようにHイオン(酸)に対して大きな選択性を持つ。
【0008】
【数1】

【0009】
カルボキシル基のpKa値は5〜6であるので、処理する水のpHの値がpKaよりも通常0.5以上高い場合には大部分が解離して負電荷を発現しCa2+やMg2+イオンを吸着するが、処理する水のpHの値がpKaよりも通常0.5以上低い場合にはHが吸着して大部分が非解離型となりCa2+やMg2+を吸着しない。このようなHに対する特異的な選択性を応用して、処理水のpHを制御することにより中性〜アルカリ性で軟水化作用を発揮させたり酸性で樹脂の再生をおこなったりすることができる。
【0010】
酸性水およびアルカリ水の生成を隔膜つき電解槽によっておこなえば、弱酸性イオン交換樹脂の再生のために剤を加える必要がなく、自動再生型の軟水化装置にすることが原理上可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−319383号公報
【特許文献2】特開平11−70296号公報
【特許文献3】特開2005−161144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
Naは、Ca2+やMg2+に比べて陽イオン交換樹脂に対する選択性が低いため、通常、交換排出されるCa2+やMg2+の量に比べて1000倍以上のNaを再生剤として添加する必要がある。使用者は、食塩などの再生剤をたびたび補給しなければならないという手間を必要とする。本来、洗剤の使用量を少なく抑えたいという要求に対して再生剤という別の補給剤が必要になるため、本質的に使用者の欲求に応えることにならない。
【0013】
加えて、高濃度の食塩水が何らかの理由でこぼれたり手に付着したりすると、感電の危険が生じる。また、洗濯機の内部や排水管などの周辺設備に金属が使用されている場合、高濃度の食塩水によって腐食する懸念があり好ましくない。
【0014】
既存の弱酸性陽イオン交換樹脂やキレート樹脂はpKa値が5〜6のカルボキシル基を陽イオン交換基として有する。そのため、それらの樹脂を再生するためには、pHが4.5〜5.5の酸性水を生成する必要があり、再生剤を投入することなくそのようにpHの低い酸を生成するには水を電解する装置や直流電源を別途搭載することが必要である。一般に家庭用洗濯機の場合は、設置スペースの大きさに制約があるため、電解装置を必要とする上記の技術は実用上の課題が大きい。
【0015】
本発明は、上記の課題を解決して、使用者が再生のために特別な剤を補給する必要なく再生可能な軟水化装置を搭載した洗濯機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
静電結合作用を有する陽イオン交換材を充填した軟水化手段を有し、洗浄に用いる水を前記軟水化手段によって軟水化して洗濯物を収容する洗濯槽に供給し、その後、キレート結合作用のある柔軟剤を前記軟水化手段に供給することによって、前記軟水化手段から硬水成分をキレート作用によって脱離させて再生してから前記柔軟剤を含む水をすすぎに用いるようにした洗濯方法としたものである。
【発明の効果】
【0017】
キレート結合は静電結合よりも強いために、軟水化手段に静電結合によって吸着されている硬水成分は、柔軟剤を含むすすぎ水が投入されることによって脱離する。その結果、
本発明の洗濯方法によって軟水化手段を自動再生することが可能になる。その際、使用者は洗剤および柔軟剤以外の薬剤を補給する手間が必要ない。また、洗濯機自体によって自動再生できるため、常に安定して軟水を供給することができて洗浄性能が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯機の構成図
【図2】(a)同洗濯機の洗浄工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図(b)同洗濯機のすすぎ工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図
【図3】同洗濯機の軟水化手段の別の作動シーケンスを示す図
【図4】(a)本発明の実施の形態2における洗濯機の洗浄工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図(b)同洗濯機のすすぎ工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図
【図5】(a)本発明の実施の形態3における洗濯機の洗浄工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図(b)同洗濯機のすすぎ工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明は、静電結合作用を有する陽イオン交換材を充填した軟水化手段を有し、洗浄に用いる水を前記軟水化手段によって軟水化して洗濯物を収容する洗濯槽に供給し、その後、キレート結合作用のある柔軟剤を前記軟水化手段に供給することによって、前記軟水化手段から硬水成分をキレート作用によって脱離させて再生してから前記柔軟剤を含む水をすすぎに用いるようにした洗濯方法である。キレート結合は静電結合よりも強いために、本発明の洗濯方法によって軟水化手段を自動再生することが可能になる。その際、使用者は洗剤および柔軟剤以外の薬剤を補給する必要がないため使用者は投入の手間を要することがない。また、洗濯機自体によって自動再生できるため、常に安定して軟水を供給することができて洗浄性能が安定する。
【0020】
第2の発明は、洗濯物を収納する洗濯槽と、前記洗濯槽内に収容された前記洗濯物を洗浄する洗浄手段と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽内の水を排水する排水手段と、前記給水手段と前記洗濯槽との間に静電結合作用を有する陽イオン交換材を充填した軟水化手段と、衣類用柔軟剤を前記軟水化手段および前記洗濯槽に供給する柔剤軟供給手段と、前記給水手段、前記洗浄手段、前記排水手段、前記柔軟剤供給手段を制御するための制御手段とを備え、前記制御手段は、洗浄時において、給水した水を前記軟水化手段に導入することによって水の硬度を低下させて前記洗濯槽に導入して洗濯槽に供給し、すすぎ時において、前記柔軟剤供給手段を作動させてキレート作用のある衣類用柔軟剤を前記軟水化手段に導入することによって前記陽イオン交換材から硬水成分を脱離して再生するようにした洗濯機である。キレート作用のある柔軟剤を軟水化手段の再生に用いることによって、自動再生可能な軟水化手段を備えた洗濯機を実現することができる。
【0021】
第3の発明は、特に、第2の発明の洗濯機において、給水手段と軟水化手段との間に設けられ、洗浄に用いる水を給水する洗浄給水流路と、すすぎに用いる水を給水するすすぎ給水流路とに切り替える流路切り替え手段を有し、柔軟剤供給手段は前記すすぎ給水流路の一部に設けられて、前記柔軟剤供給手段に収容された柔軟剤がすすぎに用いる水に混ぜられて前記軟水化手段に供給されて前記軟水化手段を再生するようにしたものである。柔軟剤がすすぎ水を供給する際に軟水化手段に導入されることによって、自動再生可能な軟水化手段を備えた洗濯機を実現することができる。
【0022】
第4の発明は、特に、第2または第3の発明の洗濯機において、給水手段と軟水化手段との間にイジェクターを設け、前記イジェクターの吸入部は柔軟剤供給手段に接続され、前記吸入部は吸入経路を開閉する吸入制御弁を有し、すすぎ水の給水の水流によって前記
イジェクターを作動させて負圧を発生させることによって柔軟剤供給手段からキレート作用のある衣類用柔軟剤を吸入して前記軟水化手段に前記柔軟剤を供給するようにしたものである。柔軟剤がすすぎ水を供給する際に軟水化手段に導入されることによって、自動再生可能な軟水化手段を備えた洗濯機を実現することができる。
【0023】
第5の発明は、特に、第2〜4のいずれか1つの発明の洗濯機において、柔軟剤供給手段は、洗浄に用いる水を軟水化手段に供給した後、すぐにキレート作用のある液体の衣類用柔軟剤を軟水化手段に供給するようにしたものである。柔軟剤と軟水化手段とを比較的長く反応させることにより、軟水化手段の再生をより確実におこなうことができる。
【0024】
第6の発明は、特に、第3の発明の洗濯機において、洗浄給水流路と前記すすぎ給水流路とは、前記軟水化手段に異なる向きに給水をおこなうようにしたものである。逆向きに再生用の柔軟剤を流すことによって、軟水化手段の再生をより確実におこなうことができる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯機の正面図を示す。
【0027】
図1に示すように、本発明の実施の形態1における洗濯機は、洗濯物を収納する洗濯槽1と、洗濯槽1を攪拌して物理的洗浄作用を発揮するモーターなどの洗浄手段2と、洗浄槽1に給水をおこなう給水手段3と、洗濯槽1から排水をおこなう排水手段4と、給水手段3によって給水された水を軟水化する軟水化手段5と、給水手段3と軟水化手段5との間に設けられ洗浄に用いる水を直接軟水化手段5に給水する洗浄給水流路6と、給水手段3と軟水化手段5との間に設けられすすぎに用いる水を給水するすすぎ給水流路7と、洗浄給水流路6とすすぎ給水流路7とを切り替える流路切り替え手段8と、軟水化手段5と洗濯槽1との間に設けられた洗剤ケース9と、すすぎ給水流路7の途中に設けられた柔軟剤供給手段10と、各構成物の動作を制御する制御手段11とからなる。
【0028】
軟水化手段5は、Na型のスルホン酸基を表面に有し静電結合によって陽イオン交換作用を発揮する陽イオン交換樹脂を収納する。硬水成分であるCa2+やMg2+はNaよりもスルホン酸基と強い静電結合を形成するために、Ca2+やMg2+が陽イオン交換樹脂表面のNaを置換して軟水化手段5に吸着保持される。通常、陽イオン交換樹脂をNa型に再生するためには、0.1M以上の高濃度のNaを軟水化手段5に供給しなければならない。
【0029】
しかしながら、本発明の洗濯方法および洗濯機では、キレート作用をもつ柔軟剤を用いて軟水化手段5を再生する。EDTAやクエン酸などキレート作用を持つ化合物はCa2+やMg2+などの多価陽イオンに高い選択性を持って結合し、その結合力は静電結合よりも強い。したがって、柔軟剤溶液は軟水化手段5に含まれる陽イオン交換樹脂から硬水成分を脱離させることができる。
【0030】
一例として、硬度300mg/L(CaCO相当)の硬水20Lを硬度100mg/Lまで軟水化させる場合について述べると、下記の数式2で示すように、少なくとも80mモル当量のキレート剤が必要である。
【0031】
【数2】

【0032】
本発明の特徴的な部分である柔軟剤供給手段10について、図2に動作の模式図を示して説明する。図2(a)は、洗浄工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図、図2(b)は、すすぎ工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図である。
【0033】
洗浄工程においては、図2(a)に示すように、水の流路は給水切り替え弁8によって洗浄給水流路6(矢印イ)に設定される。供給された水は軟水化手段5に流入して、含まれるCa2+やMg2+などの硬水成分は静電気力によって弱酸性陽イオン交換材の表面に吸着保持される。300ppmの硬水を500mlの弱酸性陽イオン交換材を含む軟水化手段5に流量5L/分で供給した場合、硬度が約100ppmまで低下する。このようにして軟水化された水が洗剤ケース9に供給される。軟水は洗剤を溶解する能力が硬水よりも強く、また洗剤の洗浄力を発揮させやすいという特長を有する。
【0034】
一方、すすぎ工程においては、図2(b)に示すように、流路は給水切り替え弁8によってすすぎ給水流路7(矢印ロ方向)に設定される。すすぎ工程に用いる水が供給されると、すすぎ給水流路7の途中の柔軟剤供給手段10によって柔軟剤を溶かして、柔軟剤の成分であるキレート剤を含む水が軟水化手段5に流入する。軟水化手段5の陽イオン交換樹脂に吸着していたCa2+やMg2+はキレート剤とより安定なキレート化合物を形成してすすぎ水に溶解する。一方、柔軟剤に含まれるNaやHが代わりに陽イオン交換樹脂に吸着保持されて、軟水化手段5を再生する。
【0035】
本実施の形態1のバリエーションとして、すすぎが1回だけの場合の軟水化手段の作動シーケンスを図3に示す。洗浄に用いる水を軟水化し終えた直後に、軟水化手段5の容積と比較して少量の水が供給されて柔軟剤が軟水化手段に導入されて再生が開始される。残りの洗浄時間の間、比較的高濃度の柔軟剤によって軟水化手段5の再生が継続されるために、時間をかけて再生反応をより確実におこなうことが可能である。
【0036】
(実施の形態2)
本実施の形態2は、上記実施の形態1と共通の部分が多いため、異なる部分のみを説明する。図4(a)は、本実施の形態2の洗濯機の洗浄工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図、図4(b)は、同洗濯機のすすぎ工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図である。
【0037】
本実施の形態2の流路は、給水手段3と軟水化手段5との間に、イジェクター12を有しイジェクター12の吸入部13は柔軟剤供給手段10に接続される。吸入部13は吸入経路を開閉する吸入制御弁14を有する。
【0038】
洗浄工程の前の給水時においては、図4(a)に示すように、吸入制御弁14は閉じられたまま、洗浄に用いられる水は軟水化手段5に供給されて軟水化され、ついで洗剤ケース9に供給されて洗剤を溶かした水を洗浄槽1に供給する(矢印ハ)。
【0039】
一方、すすぎ工程においては、図4(b)に示すように、吸入制御弁14を開けてイジェクター12によって発生する負圧で柔軟剤供給手段10から柔軟剤を吸入して軟水化手段5に供給し(矢印ニ)、再生をおこなう。
【0040】
本実施の形態2は、実施の形態1に比べると、洗剤ケース9と柔軟剤供給手段10とをほぼ同じ高さに配置可能であるので、使用者は洗剤と柔軟剤を洗濯機に供給することがよ
り容易である。
【0041】
(実施の形態3)
本実施の形態3は、上記実施の形態1と共通の部分が多いため、異なる部分のみを説明する。図5(a)は、本実施の形態2の洗濯機の洗浄工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図、図5(b)は、同洗濯機のすすぎ工程の前の給水時の水道水の供給の状況を示す図である。
【0042】
本実施の形態3の洗濯機は、図5(a)に示すように、流路切り替え弁8a、8b、8cを有し、洗浄工程では矢印ホの方向に水が供給されるように制御される。
【0043】
一方、すすぎ工程においては、図5(b)に示すように、流路切り替え弁8a、8b、8cは、矢印ヘの方向に水が供給されるように制御される。導入された水は柔軟剤供給手段10を通って柔軟剤を溶かした後、軟水化手段5に洗浄時とは逆向きに導入される。このようにして軟水化手段5を再生した後に、柔軟剤を含む溶液は洗浄槽1に供給される。
【0044】
実施の形態1、2に比べると、本実施の形態3は、再生時に軟水化手段5を逆向きに再生するために再生の効率がよく、比較的少量の柔軟剤で再生可能であるという特長がある。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように、本発明にかかる洗濯機の軟水化手段は、家庭用洗濯機に限らず産業用の洗濯機、食器洗い機、アルカリ洗剤をもちいた洗浄機器等の用途にも適用できる。特に、硬水地域において水道水や地表水を産業用に利用する場合においては、利用範囲が広いものである。
【符号の説明】
【0046】
1 洗濯槽
2 洗浄手段
3 給水手段
4 排水手段
5 軟水化手段
9 洗剤ケース
10 柔軟剤供給手段
11 制御手段
12 イジェクター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電結合作用を有する陽イオン交換材を充填した軟水化手段を有し、洗浄に用いる水を前記軟水化手段によって軟水化して洗濯物を収容する洗濯槽に供給し、その後、キレート結合作用のある柔軟剤を前記軟水化手段に供給することによって、前記軟水化手段から硬水成分をキレート作用によって脱離させて再生してから前記柔軟剤を含む水をすすぎに用いるようにした洗濯方法。
【請求項2】
洗濯物を収納する洗濯槽と、前記洗濯槽内に収容された前記洗濯物を洗浄する洗浄手段と、前記洗濯槽に給水する給水手段と、前記洗濯槽内の水を排水する排水手段と、前記給水手段と前記洗濯槽との間に静電結合作用を有する陽イオン交換材を充填した軟水化手段と、衣類用柔軟剤を前記軟水化手段および前記洗濯槽に供給する柔剤軟供給手段と、前記給水手段、前記洗浄手段、前記排水手段を制御して洗浄、すすぎ、脱水等の一連の洗濯工程を逐次制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、洗浄時において、給水した水を前記軟水化手段に導入することによって水の硬度を低下させて前記洗濯槽に導入して洗濯槽に供給し、すすぎ時において、前記柔軟剤供給手段を作動させてキレート作用のある衣類用柔軟剤を前記軟水化手段に導入することによって前記陽イオン交換材から硬水成分を脱離して再生するようにした洗濯機。
【請求項3】
給水手段と軟水化手段との間に設けられ、洗浄に用いる水を給水する洗浄給水流路と、すすぎに用いる水を給水するすすぎ給水流路とに切り替える流路切り替え手段を有し、柔軟剤供給手段は前記すすぎ給水流路の一部に設けられて、前記柔軟剤供給手段に収容された柔軟剤がすすぎに用いる水に混ぜられて前記軟水化手段に供給されて前記軟水化手段を再生するようにした請求項2記載の洗濯機。
【請求項4】
給水手段と軟水化手段との間にイジェクターを設け、前記イジェクターの吸入部は柔軟剤供給手段に接続され、前記吸入部は吸入経路を開閉する吸入制御弁を有し、すすぎ水の給水の水流によって前記イジェクターを作動させて負圧を発生させることによって柔軟剤供給手段からキレート作用のある衣類用柔軟剤を吸入して前記軟水化手段に前記柔軟剤を供給するようにした請求項2または3に記載の洗濯機。
【請求項5】
柔軟剤供給手段は、洗浄に用いる水を軟水化手段に供給した後、すぐにキレート作用のある液体の衣類用柔軟剤を軟水化手段に供給するようにした請求項2〜4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
洗浄給水流路と前記すすぎ給水流路とは、前記軟水化手段に異なる向きに給水をおこなうようにした請求項3記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−30975(P2011−30975A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183014(P2009−183014)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】