説明

洗濯機

【課題】洗濯及び脱水時に本体に伝播する振動を低減しつつ、乾燥効率を維持するようにした洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯機100は、衣類取出口11を有する本体10と、本体10内に配置され、衣類取出口11に対向する位置に開口部25を有する水槽20と、水槽20内に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽21と、衣類取出口11の外周部と開口部25の外周部との間隙と、水槽20内に温風を吹き込むための乾燥循環風路70の一部に形成された間隙とを、それぞれ気密にシール及び開放するシール機構80とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯物の洗浄、脱水及び乾燥を行う洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、洗濯物の洗浄、脱水及び乾燥を自動的に行う全自動洗濯乾燥機(以下、単に洗濯機と称する)がある。そのようなものとして、例えば「外槽の後側と後枠板の間に上下方向に折り返して伸びる循環風路を前記外槽に取り付けて配置して該循環風路において冷却除湿し、この循環風路の吹き込み口を洗濯兼脱水槽の上部開口に臨んで設置することにより該吹き込み口の手前で循環空気を加熱した温風を洗濯兼脱水槽内に吹き込むように構成したことを特徴とする洗濯乾燥機」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、「本体と、本体内部に複数のサスペンションで支持された受け筒と、この受け筒内部に脱水軸によって回転自在に支持された洗濯兼脱水槽と、前記洗濯兼脱水槽の上部に設けた流体バランサーと、前記洗濯兼脱水槽底部に設けたナベ型の形状を有する回転翼と、前記回転翼を取り付けた洗濯軸と、前記洗濯軸に連結し、前記受け筒に固定されたモータと、前記洗濯兼脱水槽内に温風を吹き込む温風送風手段と、その温風手段を設けた固定側と温風送風口を設けた振動側を接続する伸縮性チューブとを備え、前記固定側と振動側を接続する伸縮性チューブは、衣類投入口の外周を覆うように設けた全自動洗濯乾燥機」が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−292190号公報(第1図)
【特許文献2】特開平11−347280号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の洗濯乾燥機は、吹き込み口部を洗濯兼脱水槽の上部開口に臨んで設置して循環空気を加熱した温風を洗濯兼脱水槽内に吹き込むように構成されている。このような構成にして乾燥効率を向上させている。つまり、洗濯兼脱水槽に内蓋を設けて温風を逃さないようにして乾燥効率を向上させていた。しかしながら、この内蓋は、乾燥時に洗濯兼脱水槽の密閉度を高めるために設けられているだけであり、洗濯工程や脱水工程に必要なものではないという課題があった。また、この内蓋を外枠(本体)内に設けると、洗濯兼脱水槽内の容積が制限されてしまうという課題もあった。
【0006】
特許文献2に記載の洗濯機は、本体の固定側と水槽の振動側とを伸縮性チューブで接続するように構成されている。この洗濯機では、伸縮性チューブを設けることで、内蓋を設けなくて済むようにしたものである。しかしながら、洗濯時や脱水時に発生する水槽(振動側)の振動が伸縮性チューブを介して本体に
+伝播してしまう。そうすると、大きな振動が本体外部に漏洩してしまうとともに、その振動に伴って振動音(騒音)も発生してしまうという新たな課題が生じた。
【0007】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、洗濯及び脱水時に本体に伝播する振動を低減しつつ、乾燥効率を維持することを可能にした洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る洗濯機は、衣類取出口を有する本体と、前記本体内に配置され、前記衣類取出口に対向する位置に開口部を有する水槽と、前記水槽内に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、前記衣類取出口の外周部と前記開口部の外周部との間隙と、前記水槽内に温風を吹き込むための乾燥循環風路の一部に形成された間隙とを、それぞれ気密にシール及び開放するシール機構とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る洗濯機においては、衣類取出口の外周部と開口部の外周部との間隙と、水槽内に温風を吹き込むための乾燥循環風路の一部に形成された間隙とを、それぞれ気密にシール及び開放するシール機構を備えており、上記の隙間を乾燥工程時に気密性よくシールすることができる。このため、例えば乾燥工程時等において洗濯兼脱水槽内に漏れなく温風を送り込むことが可能になり、乾燥効率を低下させなくて済む。また、洗濯及び脱水の運転時には時には上記の間隙を開放しておくことにより、水槽の振動が本体に直接伝わらず、本体振動の小さい、騒音の小さい静かな洗濯機を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る洗濯機100の概略構成を示す縦断面模式図である。ここでは、この洗濯機100が、水槽20に収容された洗濯物の洗浄工程や脱水工程、乾燥工程等を自動で行うことが可能な全自動洗濯乾燥機である場合を例に説明するものとする。なお、図1を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものとは異なる場合がある。また、図の左側を洗濯機前方(手前側)とし、右側を洗濯機後方として説明するものとする。
【0011】
洗濯機100は、図1に示されるように、水槽20が本体10内に吊り棒30で吊り下げられ、傾斜配置された構成となっている。水槽20内部には、衣類等の洗濯物を収容し、その洗濯物の洗浄や脱水、乾燥等を行うための洗濯兼脱水槽21が回転自在に配置されている。この水槽20は、脱水時に洗濯兼脱水槽21から飛散する水を受ける役目を果たすようになっている。この水は、水槽20の前方下部に設けられている排水口23から外部に排水される。なお、水槽20の上部には、開口部25が形成されており、洗濯物が開口部25を介して洗濯兼脱水槽21に収容される。
【0012】
洗濯兼脱水槽21の底部には、攪拌翼22が回転自在に配設されている。そして、水槽20の外側下部には、洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22を回転駆動するための駆動部40が設けられている。駆動部40は、DCモータ、ギア、クラッチ等(何れも図示せず)から構成されている。この駆動部40は、駆動軸41に設けられているフランジを介して水槽20に連結されている。この駆動軸41は、洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22の回転軸に締結され、洗濯兼脱水槽21及び攪拌翼22を回転自在に支持している。
【0013】
なお、本体10内には、駆動部40内のモータの回転数を制御するための制御装置(図示せず)が設けられている。この制御装置は、例えばマイクロプロセッサ等から構成され、ユーザからの指示に基づいて洗濯機100全体の動作(洗浄工程、脱水工程、乾燥工程)を統括制御する。また、本体10の上部には、洗濯物を出し入れする衣類取出口11が形成されており、そして、この衣類取出口11は蓋12によって開閉される。つまり、この衣類取出口11に水槽20の開口部25が対向するように、水槽20が本体10内に配置されている。
【0014】
水槽20を吊り下げる吊り棒30は、本体10の四隅に1本ずつ設けるようにしている。しかし、吊り棒30は本体1の前後方向に少なくとも1本ずつ設けられていればよい。また、前後方向で吊り棒30の本数を変化させてもよいし、吊り棒30の長さを前後方向で異なるようにしてもよい。
【0015】
各吊り棒30の上部には、吊り棒30を上下方向に移動可能な水槽上下駆動機構31が配置されている。つまり、吊り棒30の本数に応じた水槽上下駆動機構31が、吊り棒30の上部に配置されている。この水槽上下駆動機構31は、本体10内に固定されており、吊り棒30を貫通支持している。この水槽上下駆動機構31が吊り棒30を上下方向に移動させることによって、水槽20を任意の角度に傾斜させることが可能になっている。つまり、水槽上下駆動機構31は、制御装置からの制御指示に基づいて吊り棒30をその長さ方向に移動させて水槽20を任意の角度に傾斜させる。例えば、制御装置は、洗濯機100の運転工程に応じて水槽上下駆動機構31を制御し、水槽20の傾斜角度を調整する。なお、水槽上下駆動機構31は、吊り棒30を支持でき、且つ、上下方向に駆動できるものであればよく、上記の例に限定されるものではない。
【0016】
水槽20の外側下部には、吊り棒30と水槽20とを連結し、水槽20を弾性支持するための吊り下げ支持部50が設けられている。この吊り下げ支持部50は、継ぎ手部51及び防振部52から構成され、吊り棒30の下側に設けられている。継ぎ手部51は、内部に吊り棒30を貫通させて水槽20と吊り棒30とを連結する役目を果たしている。つまり、この継ぎ手部51は、吊り棒30を受け入れて吊り棒30と水槽20とを連動可能に連結している。そして、継ぎ手部51の下側には、吊り棒30が抜けてしまうのを防止するとともに、継ぎ手部51を下側から支持するための防振部52が設けられている。この防振部52は、防振バネ等で構成されており、吊り棒30を貫通支持するようになっており、継ぎ手部51を介して水槽20を下側から弾性支持するとともに、継ぎ手部51を介して伝播する振動を吸収する役目を果たしている。
【0017】
吊り棒30は、このように、上側が水槽上下駆動機構31により支持され、下側が防振部52で支持されており、継ぎ手部51を貫通することで水槽20と連結されている。なお、防振部52は、水槽20で発生した振動を吸収できるものであればよく、特に限定されるものではなく、例えばダンパーやサスペンション、コイルバネ、防振用バネ、空気バネ等により構成してもよい。
【0018】
また、本実施の形態においては、水槽20の開口部25と本体10の衣類取出口11との間の隙間を気密にシールするためのシール部材81を備えている。このシール部材81は、その上端面(上部取付面)81aが本体10の衣類取出口11側に取り付けられており、下端部は定常的には水槽20の開口部25から離れた位置にある。このシール部材81は、その下端部が乾燥工程時等に下降して水槽20の開口部25の外周部と密着することにより、衣類取出口11の外周部と開口部25の外周部との間の隙間を気密にシールする(この機構の詳細は後述する。)。
【0019】
また、水槽20の後方内部には乾燥循環風路70が形成されている。この乾燥循環風路70は、その一方が洗濯兼脱水槽21の開口部25近傍に設けられた給気口71に開口し、他方が洗濯兼脱水槽21の側面に設けられた排気口72側に開口している。この乾燥循環風路70内には、洗濯物を乾燥する温風を作り出す温風送風手段73が本体10内部の後方上部に配置されている。この温風送風手段73は、ファン74、ヒータ75及び除湿機76から構成されており、ファン74及びヒータ75は本体10側に固定され、除湿機76は水槽2側に固定されている。この除湿機76はシール部材83を介してファン74側と連通し、下端側は排気口72と連通している。
【0020】
ファン74及びヒータ75は、例えば本体10の上部に形成されたケース77に収納されている。このケース77には、その開口部77aと、上記の乾燥循環風路70の一部を水槽10の外周壁とともに形成するダクト78の開口部78aとを気密にシールした状態で連通させるためのシール部材82が取り付けられている。このシール部材82は、その上端部がケース77の開口部77aに取り付けられており、下端部は定常的にはダクト78の開口部78aと離れた位置にある。このシール部材82は、その下端部が乾燥工程等に下降してダクト78の開口部78aの外周部に密着させることにより、乾燥循環風路70の風路の一部を構成しているケース77の開口部77aとダクト78の開口部78aの外周部との間の隙間を気密にシールする(この機構の詳細についても後述する。)。なお、このダクト78の開口部78aの周辺及び水槽20の開口部25の周辺部には金属リング(例えばSUSからなる)26,79がそれぞれ取り付けられている。
【0021】
次に、上記のシール部材81及び83を含む本実施の形態に係るシール機構80の詳細を図2〜図5に基づいて説明する。
【0022】
図2は、本体10の衣類取出口11を斜め上方から見た斜視図であり、図3は、水槽内から本体10の衣類取出口11を斜めに見た斜視図である。また、図4は、図2及び図3からシール機構80を抽出した斜視図である。
【0023】
本実施の形態におけるシール機構80は、シール部材(第1のシール部材)81、シール部材81の下端面に取り付けられたフレーム(第1のフレーム)82、シール部材(第2のシール部材)83、シール部材83の下端面に取り付けられたフレーム(第2のフレーム)84、フレーム82,84を引き上げるためのワイヤ85、アクチュエータ86等から構成されている。
【0024】
シール部材81はその上端面(上部取付面)81aが本体10の衣類取出口11の裏面側の周辺部に取り付けられており、また、シール部材83はその上端部が乾燥循環風路70の途中にある上記のケース77の開口部77aの周辺に取り付けられている。シール部材81及びシール部材83は、何れも筒状のゴム等の弾性体から構成されており、本実施の形態においては蛇腹状に形成されている。これらのシール部材81の下端面及びシール部材83の下端面にはフレーム82及びフレーム84がそれぞれ取り付けられており、そして、これらのフレーム82及び84は連結されて一体化されており、そして、図示の例においては、3カ所にワイヤ85の一方の端部が取り付けられている(詳細は後述の図5参照)。このワイヤ85はパイプ87内を通って中継片88に接続されており、更に、その中継片88はワイヤ85を介してアクチュエータ86に接続されている。このアクチュエータ86が駆動されると、ワイヤ85が引っ張られてフレーム82,84が引き上げられることにより、シール部材81,83が引き上げられる。シール部材81,83が引き上げられた状態が定常状態であり、この状態において例えばアクチュエータ86内で適当な手段によりラッチをかけておいて、電源遮断状態においてもその状態が維持できるようしておく。
【0025】
ところで、本実施の形態において、シール部材81の上端面81aは、例えば図4に示されるように、その面幅が洗濯機手前側の部位81a-1と奥側の部位81a−2(図4の例ではシール部材83側)とでは異なったものとなっており、シール部材81の上面側の開口部が洗濯機手前側になるように形成されている。これは、衣類取出口11(図1参照)の傾斜(例えば20度)とシール部材81の取付状態の傾斜(例えば15度であり、水槽20の傾斜時の角度に合わせている。)とが相違しており、そして、衣類取出口11をできるだけ洗濯機手前側に設けたいという要請に応えたものであり、シール部材81の上面側開口部を洗濯機側にもってくると、本体10の衣類取出口11を構成する例えば筒状部材(詳細は図示せず)との間に隙間ができることになるので、そのような隙間ができないようにするために(図2参照)、上端面81aの洗濯機奥側の部位81a−2の面幅を洗濯機手前側の部位81a−1の面幅よりも幅広にして構成している。
【0026】
図5はフレーム82,84を抽出して斜め上方から見た状態の斜視図であり、図6はその反対側から見た状態の斜視図である。図7はフレーム82,84の分解図であり、図8は図5のA−A拡大断面図である。このフレーム82,84は、シール部材81,83の下端面にそれぞれ対応した平面形状を有し、シール部材82,84の下端面に接合して固定される断面L状の金具(例えばSUS)82a,84aを備えており、そして、この金具82a,84aは、複数の金属片から構成されている。勿論、その個数は任意であり、1個の金具から構成してもよい。この金具82aは、ワイヤ85の端部を係止するために係止片82a1〜82a3が取り付けられている。断面L状の金具82a,84aの下にはC型チャンネル82b,84bが取り付けられる。そして、このC型チャンネル82b,84bには、例えば図8(a)、図8(b)に示されるように、マグネット82c(84c)が嵌め込まれて固着されている。このようにフレーム82,84の下部にマグネット82c,84cが取り付けられており、また、それに対応する水槽20側及びダクト78側に金属リング(例えばSUS)26,79が取り付けられているので、シール部材81,83を降下させると、マグネット82c,84cと金属リング26,79とが吸着する。
なお、金属リング26と金属リング79は、それぞれ分割して形成されていても、一体成形されていても良く、また、そのリング形状は一輪状であっても分割されたリング状であっても良い。したがって、マグネット82c(84c)の形状は、図8(a)や図8(b)のように、金属リング26,79に合わせて形成すると良い。
【0027】
次に、本実施の形態に係る洗濯機100の動作を説明する。ここでは、洗濯機100が全自動運転する場合を例に説明するものとする。まず、ユーザが洗濯物を洗濯兼脱水槽21内に挿入する。そして、図示省略の操作パネルに設けられているスタートボタンを操作することによって洗濯機100が運転を開始する。初めに洗濯工程が始まると、洗濯物の片寄りによるアンバランスによって洗濯兼脱水槽21及び水槽20に大きな振動が発生する場合があるが、その振動は吊り棒30の下方に設けた防振部52によって吸収される。また、洗濯工程では、図1に示されるように、シール部材81,83が下降していない状態になっており、開口部25の外周部と衣類取出口11の外周部との間の隙間がシールされておらず開放されており、また、ケース77とダクト78との間の隙間も開放されているので、洗濯兼脱水槽21で発生した振動が本体10に直接伝播することなく、本体10の振動及びその振動に伴って発生する騒音を著しく低減することができる。
【0028】
洗濯工程が終了し、脱水工程が始まると、洗濯工程と同様に、洗濯物の片寄りによるアンバランスによって洗濯兼脱水槽21及び水槽20に大きな振動が発生する場合がある。また、脱水工程では、脱水開始の低速回転から高速回転に移行する段階で大きな振動(異常振動)が発生することが多い。このときも、シール部材81,83が下降していない状態になっているので、洗濯兼脱水槽21で発生した振動が本体10に直接伝播することなく、本体10の振動及びその振動に伴って発生する騒音を著しく低減することができる。そして、脱水工程が終了し、乾燥工程が始まると、制御装置によりアクチュエータ86が駆動される。
【0029】
図9は乾燥工程においてシール部材81,83が降下した状態の断面模式図であり、図10はその動作説明図である。アクチュエータ86が駆動されて例えばラッチが解除されることにより、ワイヤ85の牽引が解除されると、シール部材81及びシール部材83は同時に下降し、その下部に取り付けられているマグネット82c,84cが対向配置されている金属リング26,79に吸着する。これにより、開口部25の外周部と衣類取出口11の外周部との間の隙間が気密にシールされるとともに、ケース77の開口部77aとダクト78の開口部78aとの間の隙間も気密にシールされる。これにより、水槽2及び乾燥循環風路70が閉じられた空間を形成することになる。乾燥時に水槽20で発生する振動は、洗濯時や脱水時よりも小さいため、上記のように気密にシールされた状態においても、本体10に伝播する振動及び騒音が大きくなることはない。そして、制御装置は、温風送風手段73を駆動し、ファン74によって送風された空気は、図10に示されるように、ヒータ75によって加熱され、矢印に示すように給気口71を介して水槽2内部に送り込まれることになる。
【0030】
以上の乾燥工程時において、水槽20の開口部25の外周部と本体10の衣類取出口11の外周部との間の隙間はシール部材81によりシールされており、また、ケース77の開口部77aとダクト78の開口部78aとの間の隙間がシール部材83にシールされており、水槽20及び乾燥循環風路70が閉じられた空間を形成することにより、洗濯兼脱水槽21内の洗濯物に無駄なく温風を当てることができ、乾燥効率を低下させないようにすることができる。
【0031】
以上のように、本実施の形態1によれば、シール部材81の下端部を開口部25の外周部側に下降させてシール部材81を開口部25の外周部に密着させるようにしたので、温風が外部に漏れることなく洗濯兼脱水槽21内部に導かれることになり、洗濯兼脱水槽21内の洗濯物に無駄なく温風を当てることができ、乾燥効率を低下させないようにすることができる。また、洗濯工程時及び脱水工程時においては、シール部材81を上昇させるので、水槽20の開口部25の外周部と本体10の衣類取出口11の外周部との間に隙間がある状態になっており、本体10に振動及び騒音が直接伝播せず、振動及び騒音を外部に漏洩させないようにできる。
【0032】
また、シール部材83をダクト78側に下降させてダクト78と温風送風手段73とを気密にシールして連通させるようにしたので、温風が外に漏れることなく洗濯兼脱水槽21内部に導かれるので、洗濯兼脱水槽21内の洗濯物に無駄なく温風を当てることができ、この点からも乾燥効率を低下させないようにすることができる。また、洗濯工程時及び脱水工程時においては、シール部材83を上昇させた状態にしておくので、本体10に振動及び騒音が直接伝播せず、振動及び騒音を外部に漏洩させないようにできる。
【0033】
また、シール部材81,83を蛇腹状にしたので、これらの部材81,83の長さに対して下降させる際の距離を長くとることができるので、シール部材81,83が引き上げられた状態における長さを短くすることができる。また、シール部材81の下端部に取り付けられたフレーム82と、シール部材83の下端部に取り付けられたフレーム84とを連結して一体化したので、シール部材81,83を下降させるための機構が1個で済み、機構が簡単なものになっている。
【0034】
更に、シール部材81,83を上下動させるための機構は、フレーム82に連結されたワイヤ85と、ワイヤ85を牽引するアクチュエータ86とを備えたものからなり、簡単な機構でシール部材81,83を上下動させることができる。また、フレーム82,84にはマグネット82c,84cが取り付けられているので、シール部材81,83を下降させたときのシールが確実なものとなっている。
【0035】
また、フレーム82,84にはC型チャンネル82b,84bが含まれており、この型チャンネル82b,84bにマグネット82c,84cが取り付けられているので、マグネット82c,84cが確実に固着され脱落するおそれがない。また開口部25の外周部側及びダクト78の上端部側には、マグネット82c,84eと対向するように金属リング26,79が取り付けられているので、マグネット82c,84cと金属リング26,79とが吸着し、シール部材81,83を下降させたときのシールが確実なものとなっている。
【0036】
なお、上記の説明においては、シール部材81及びシール部材83の双方にマグネット82c,84cを取り付けた例について説明したが、何れか一方にだけ取り付けるようにしてもよい。例えばシール部材81にだけ取り付けても、フレーム82,84が一体化しているので、シール部材83にもその吸着力が影響してシールさせることができる。また、フレーム82,84にマグネット82c,84cを取り付けた例について説明したが、逆に、開口部25及びダクト78側にマグネット82c,84cを取り付けるようにしてもよい。
【0037】
実施の形態2.
図11は本発明の実施の形態2に係る洗濯機の制御系を示したブロック図である。本実施の形態2においては、上記の実施の形態1の洗濯機100のシール機構80にリトライの機能を付加したものである。同図に示されるように、温度センサ101〜104を備えており、これらは例えば図1の吊り棒30の上端部を本体10に取り付けている部位(例えば図1の水槽上下駆動機構31が取り付けられている部位の近傍)や、或いは少なくとも、水槽20の上下方向の真ん中よりも上方に設置する。この温度センサ101〜104は、4個に限定されるものではなく、例えば3個の場合には乾燥循環風路70を避けた3カ所、2個の場合には乾燥循環風路70を避けた位置であって、対向した位置に2カ所、1個の場合には乾燥循環風路70を避けた1カ所に設ければ、温風の影響を受けずに漏れ検知を行うことができる。但し、以下の説明においては、温度センサ101〜104を4個用いる例について説明する。温度センサ101〜104の出力はマイコン等から構成される制御装置105に入力する。この制御装置105の入力端子には温度センサ101〜104の他に、操作パネル16等が接続されている。また、制御装置105の出力端子には、上記のアクチュエータ86及び攪拌翼(パルセータ)22を駆動するための駆動部40のモータ40aが接続されている。これらの動作を図11に基づいて説明する。
【0038】
図12は図11の制御系の動作を示すフローチャートである。このフローチャートは乾燥工程が開始し、上記のシール部材81,83が下降し、送風ファン73及びヒータ74が駆動されている状態から開始する。乾燥工程においては、上記のように、水槽20及び乾燥循環風路70が閉じられた空間を形成し、温風が循環して洗濯物を乾燥させる。このような乾燥工程において、制御装置105は温度センサ101〜104の出力を取り込んで(S11)、その温度センサ101〜104の出力に基づいて気密漏れがあるかどうかを判定する(S12)。この判定においては、何れか1個の温度センサでも所定の温度を超えている場合には気密漏れがあると判定する。或いは、時系列に取り込んだ温度の変化が急激に変化したかどうかに基づいて判定する。この判定において気密漏れがないという判定がなされた場合にはそのまま終了することになる。ここで何らかの原因、例えば水槽20が洗濯物のアンバランスにより位置ずれを起こして、シール部材81,83が下降したときに、シール部材81と水槽20の外周部との間に隙間ができて、そこから温風が漏れたような場合には、温度センサ101〜104は通常の場合よりも高い温度を検出することになる。制御装置105は、このような場合には、モータ40aを駆動させて攪拌翼22を回動させる(S13)。そして、そのモータ40aの駆動を所定時間継続させる(S14)。このように攪拌翼22を回動させることにより、例えば洗濯物のアンバランスを是正させる。そして、アクチュエータ86を駆動させてシール部材81,83を下降させて一連の処理を終了する(S15)。
【0039】
なお、図12の処理は適宜繰り返されるが、同様な処理が何回か繰り返されると、例えば操作パネル106に異常である旨の表示をしたり、或いはブザー音を発生して、利用者に伝えるようにする。また、手動による洗濯物のアンバランスの是正を期待して、攪拌翼22を回動させずに、所定時間経過後にシール部材81,83を自動的に下降させるようにしてもよい。
【0040】
以上のように本実施の形態2においては、制御装置105が気密漏れを検出をした場合には、アクチュエータ86を駆動させてシール部材81,83を自動的に上昇させるようにしたので、気密状態が維持出来なくなった原因を取り除くことができる。また、気密漏れが起きてシール部材81,83を上昇されている状態で、攪拌翼22を所定時間回動させるようにしたので、例えば洗濯物のアンバランスを自動的に取り除くことが可能になっており、使い勝手の良いものとなっている。そして、その後、シール部材81,83を自動的に下降させるようにしており、一連の動作が自動的になされるので、この点からも使い勝手のよいものとなっている。また、気密漏れを検出するための気密漏れ検出手段として温度センサ101〜104を使用するようにしたので、高精度に気密漏れを検出することが可能になっている。
【0041】
なお、上記の説明では一連の動作が全て自動的に行われる例について説明したが、制御装置105は、シール部材81,83を上昇させることまでは自動的に行うが、その下降については操作パネル106の操作に基づいて行うようにしてもよい。例えば洗濯物がシール部材と水槽との間に挟まったような場合には、シール部材81,83が上昇した状態で、その洗濯物を水槽に入れ直したり、或いは、上記の例では洗濯物のアンバランスを直したりした後に、操作パネル106の操作によりシール部材81,83を下降させる。
【0042】
また、上記の説明では、温度センサにより気密漏れを検出する例について説明したが、例えば圧力センサによって検出してもよい。圧力センサの取り付け部位としては、例えば水槽20の内周壁や底面に取り付ける。その場合には、温風の圧力を検出してそれが所定の圧力よりも低下したときに温風が漏洩しているものとして判定する。或いは、ファン74の回転数に基づいて温風の漏洩を検出するようにしてもよい。これらについても温度センサの場合と同様にして高精度に気密漏れを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態1に係る洗濯機の概略構成を示す縦断模式図である。
【図2】本体の衣類取出口を斜め状態から見た斜視図である。
【図3】水槽内から本体の衣類取出口を斜め状態から見た斜視図である。
【図4】シール機構を抽出した斜視図である。
【図5】フレームを抽出して斜め上方から見た状態の斜視図である。
【図6】図6とは反対側から見た状態の斜視図である。
【図7】フレームの分解図である。
【図8】フレームの断面図である。
【図9】乾燥工程においてシール部材が降下した状態の断面模式図である。
【図10】動作説明図である。
【図11】実施の形態2に係る洗濯機の制御系を示すブロック図である。
【図12】図11の制御系の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10 本体、11 衣類取出口、12 蓋、20 水槽、21 洗濯兼脱水槽、22 撹拌翼、23 排水口、25 開口部、30 吊り棒、31 水槽上下駆動機構、40 駆動部、41 駆動軸、50 吊り下げ支持部、51 継ぎ手部、52 防振部、70 乾燥循環風路、71 給気口、72 排気口、73 温風送風手段、74 ファン、75 ヒータ、76 除湿機、77 ケース、78 ダクト、80 シール機構、81,83 シール部材、82,84 フレーム、 82a,84a L型の金具、82b,84b C型チャンネル、82c,84c マグネット、85 ワイヤ、86 アクチュエータ、87 パイプ、88 中継片、100 洗濯機、101〜104 温度センサ、105 制御装置、106 操作パネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣類取出口を有する本体と、
前記本体内に配置され、前記衣類取出口に対向する位置に開口部を有する水槽と、
前記水槽内に回転自在に設けられた洗濯兼脱水槽と、
前記衣類取出口の外周部と前記開口部の外周部との間隙と、前記水槽内に温風を吹き込むための乾燥循環風路の一部に形成された間隙とを、それぞれ気密にシール及び開放するシール機構と
を備えたことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記シール機構は、
筒状の弾性体から構成され、上端部が前記衣類取出口に取り付けられた第1のシール部材を備え、該第1のシール部材の下端部を前記開口部の外周部側に下降させて前記第1のシール部材を前記開口部の外周部に密着させることを特徴とする請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記衣類取出口側の前記本体に取り付けられ、前記水槽内に温風を吹き込む温風送風手段と、下端部が前記水槽に連通し、上端部が開口し、内部に除湿器が設けられて乾燥循環風路の一部を形成するダクトとを備え、
前記シール機構は、
筒状の弾性体から構成され、上端部が温風送風手段の上流側に接続された第2のシール部材を更に備え、該第2のシール部材の下端部を前記ダクト側に下降させて前記ダクトと前記温風手段とをシールした状態で連通させることを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記第1のシール部材及び前記第2のシール部材の少なくとも一方は、中空のゴム部材を蛇腹形状にしたものであることを特徴とする請求項3記載の洗濯機。
【請求項5】
前記シール機構は、
前記第1のシール部材の下端部に取り付けられた第1のフレームと、前記第2のシール部材の下端部に取り付けられた第2のフレームとを更に備え、前記第1のフレームと前記第2のフレームとを連結してなることを特徴とする請求項3又は4記載の洗濯機。
【請求項6】
前記シール機構は、
前記第1のフレーム及び前記第2のフレームを下降及び上昇させるための駆動手段を更に備えたことを特徴とする請求項5記載の洗濯機。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記第1のフレーム及び前記第2のフレームの少なくとも一方に連結されたワイヤと、該ワイヤを牽引するアクチュエータとから構成されることを特徴とする請求項6記載の洗濯機。
【請求項8】
前記第1のフレーム及び前記第2のフレームの少なくとも一方には、該フレームの形状に沿ってマグネットが取り付けられていることを特徴とする請求項7記載の洗濯機。
【請求項9】
前記フレームにはC型チャンネルのフレームが含まれており、該C型チャンネルのフレームにマグネットが取り付けられていることを特徴とする請求項8記載の洗濯機。
【請求項10】
前記開口部の外周部側及び前記ダクトの上端部側の少なくとも一方には、前記マグネットと対向するように金属リングが取り付けられていることを特徴とする請求項8記載の洗濯機。
【請求項11】
前記シール機構が気密漏れを起こしているかどうかを検出する気密漏れ検出装置と、
前記シール機構の第1のシート部材及び第2のシート部材が下降している状態において、前記気密漏れ検出装置が気密漏れを検出した場合には、前記駆動手段を駆動させて、前記第1のシート部材及び前記第2のシート部材を自動的に上昇させる制御手段と
を備えたことを特徴とする請求項6〜10の何れかに記載の洗濯機。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1のシート部材及び前記第2のシート部材を自動的に上昇させた後に、前記洗濯兼脱水槽の底面に取り付けられている攪拌翼を所定時間回動させることを特徴とする請求項11記載の洗濯機。
【請求項13】
前記制御手段は、前記洗濯兼脱水槽の底面に取り付けられている攪拌翼を所定時間回動させた後に又は所定時間経過後に、前記駆動手段を駆動させて、前記第1のシート部材及び前記第2のシート部材を自動的に下降昇させることを特徴とする請求項12記載の洗濯機。
【請求項14】
前記気密漏れ検出装置は、本体と水槽との間に配置された温度センサ、又は水槽の開口部に対向した本体上部、水槽の内側面若しくは底面に設けられた圧力センサを備えたことを特徴とする請求項11〜13の何れかに記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−178652(P2008−178652A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111602(P2007−111602)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000004422)日本建鐵株式会社 (152)
【Fターム(参考)】