説明

洗濯機

【課題】長期にわたり、汚れ粒子を除去することができる洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯水に接触する位置である循環水路25の入口26に、汚れ粒子除去フィルタ45を設ける。汚れ粒子除去フィルタ45は、洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる繊維(繊維Aと繊維B)を混在して構成する。繊維Aと繊維Bは、繊維Aと繊維Bのゼータ電位の差が汚れ粒子除去フィルタ45をpH9以上の洗濯水に浸されたときよりもpH9未満の洗濯水に浸されたときの方が小さくなる繊維で構成する。これにより、汚れ粒子は、洗い時に汚れ粒子除去フィルタ45の繊維Dに吸着し、すすぎ時に汚れ粒子除去フィルタ45の繊維Dから脱離し、洗濯水(すすぎ水)と共に排水される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯槽内の洗濯水から汚れ粒子を除去する機能を備えた洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の洗濯機は、節水指向の要望に応えるために、使用水量が少なくなってきている。しかし、洗濯物に対する使用水量が少なくなると、すすぎ性能が低下すると共に、洗濯物から脱離した汚れ粒子(油滴等)が洗濯物に再付着する可能性が高くなってしまう。
【0003】
そのため、例えば特許文献1には、洗濯物から脱離した汚れ粒子を除去する機能を備えた洗濯機が提案されている。この特許文献1には、洗濯水中に存在するカーボン等の疎水性微小粒子等の汚れ粒子が正に帯電しやすいことを利用して、正に帯電する汚れ粒子を静電気により吸着体に吸着させることが開示されている。即ち、負に帯電しやすい吸着体を洗濯水に接触する位置に設け、汚れ粒子を吸着体に吸着させ、汚れ粒子が洗濯物に再付着してしまうことを低減する構成が開示されている。尚、この特許文献1の吸着体は、水に接触しただけでも負に帯電しやすいポリプロピレンを主材とする繊維(不織布)で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−311085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、吸着体は水に接触しただけでも負に帯電するため、吸着体はすすぎ時でも汚れ粒子を吸着する。そのため、吸着体に吸着された汚れ粒子は、すすぎ時における洗濯水の排水が行われているときでも吸着体に残存してしまい、洗濯を行う毎に吸着体に汚れ粒子が溜まってしまう。そのため、そのまま使用を続けると、吸着体の汚れ粒子吸着機能が低下し、吸着体を頻繁に清掃する必要があり、面倒である。
【0006】
本発明は上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、長期にわたり、汚れ粒子を除去することができる洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明の請求項1に係る洗濯機は、水槽と、前記水槽内に設けられ、洗濯物及び洗濯水が収容される洗濯槽と、前記洗濯水に接触する位置に設けられた汚れ粒子除去フィルタとを備え、前記汚れ粒子除去フィルタは、洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる複数の繊維を混在して構成され、前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のゼータ電位の差は、当該汚れ粒子除去フィルタがpH9以上の洗濯水に浸されたときよりも、pH9未満の洗濯水に浸されたときの方が小さいことを特徴とする。
【0008】
洗濯に用いられる洗剤にはアルカリ成分が含まれている。従って、洗い時では洗剤の濃度が高いので洗濯水のpHは高くなり(アルカリ性になり)、すすぎ時では洗剤の濃度は低いのでpHは低くなる(ほぼ中性になる)。
ここで、洗い時の洗濯水には、洗濯物から脱離した油汚れ、泥汚れ、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるカーボンブラック、水道管中に含まれる鉄さび等の汚れ粒子が存在していることがある。これらの汚れ粒子は、図16に示すように、一般に洗濯水のpHが高くなるほど、洗濯水中の水酸基が汚れ粒子に吸着されることにより、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。又、一般的な洗濯物(衣類)の繊維も、洗濯水のpHが高くなるほど、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。従って、洗い時においては、汚れ粒子と洗濯物の繊維とは反発し合い、洗濯水中に汚れ粒子が存在しやすくなっている。そのため、洗いが終わった後に、汚れ粒子が洗濯物に再付着するおそれがある。
【0009】
本発明の請求項1に係る発明では、ゼータ電位の異なる2つの繊維を混在して構成された汚れ粒子除去フィルタを洗濯水に接触する位置に設けている。この汚れ粒子除去フィルタを構成する2つの繊維のゼータ電位の差は、当該汚れ粒子除去フィルタがpH9以上の洗濯水に浸されたときよりもpH9未満の洗濯水に浸されたときの方が小さくなるものである。即ち、汚れ粒子除去フィルタを構成する2つの繊維のうち、一方の繊維のゼータ電位は、洗濯水のpHが高くなるほど、低くなり負側に大きな値となっていく。又、他方の繊維のゼータ電位は、洗濯水のpHが高くなっても、洗濯水が中性のときのゼータ電位の値とほぼ同じであり、一方の繊維のゼータ電位よりも高い。
【0010】
この構成により、洗い時に洗濯水のpHが高くなり、例えば洗濯水のpHが9以上に高くなると、汚れ粒子は、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となり、汚れ粒子除去フィルタの繊維のうちゼータ電位の高い繊維に吸着され易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタは洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる繊維を混在して構成されるため、ゼータ電位の異なる繊維同士は極近傍に存在する。そのため、pHが高い洗濯水に浸された汚れ粒子除去フィルタの2つの繊維間は電界強度が極めて高くなっており、汚れ粒子は、ゼータ電位の高い繊維側により引っ張られ易く、吸着され易くなる。
【0011】
そして、すすぎ時に、洗濯水のpHが低くなり、例えば洗濯水のpHが9よりも低くなると、汚れ粒子のゼータ電位は高くなると共に、2つの繊維のゼータ電位の差は小さくなる。これにより、汚れ粒子が吸着していた繊維と汚れ粒子とのゼータ電位の差が小さくなって、汚れ粒子の吸着力は弱くなり、汚れ粒子除去フィルタから汚れ粒子が脱離し易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタを構成する2つの繊維においてゼータ電位の差が小さくなることにより、2つの繊維間の電界強度は弱くなり、汚れ粒子は、ゼータ電位の高い繊維側に引っ張られ難くなる。
これにより、洗い時に汚れ除去フィルタに吸着した汚れ粒子は、すすぎ時に汚れ粒子除去フィルタから脱離し、洗濯水の排水と共に機外に排出され、汚れ粒子除去フィルタの吸着力は再生される。
【0012】
同様の目的を達成するために、本発明の請求項2に係る発明は、水槽と、前記水槽内に設けられ、洗濯物及び洗濯水が収容される洗濯槽と、前記洗濯水に接触する位置に設けられた汚れ粒子除去フィルタとを備え、前記汚れ粒子除去フィルタは、洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる複数の繊維を混在して構成され、前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のゼータ電位の差は、陰イオン界面活性剤の濃度が低いほど小さくなることを特徴とする。
【0013】
洗濯に用いられる洗剤には一般に陰イオン界面活性剤が含まれている。従って、洗い時では洗剤の濃度が高いので洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度は高くなり、すすぎ時では陰イオン界面活性剤の濃度は低くなる。
ここで、上述の汚れ粒子は、請求項1に記載したpHの場合のゼータ電位の変化と同様に、一般に洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなるほど、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。又、一般的な洗濯物(衣類)の繊維も、洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなるほど、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。従って、洗い時においては、汚れ粒子と洗濯物の繊維とは反発し合い、洗濯水中に汚れ粒子が存在しやすくなっている。そのため、洗いが終わった後に、汚れ粒子が洗濯物に再付着するおそれがある。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明では、ゼータ電位の異なる2つの繊維を混在して構成された汚れ粒子除去フィルタを洗濯水に接触する位置に設けている。この汚れ粒子除去フィルタを構成する2つの繊維は、ゼータ電位の差が、陰イオン界面活性剤の濃度が低いほど小さくなるものである。即ち、汚れ粒子除去フィルタを構成する2つの繊維のうち、一方の繊維のゼータ電位は、洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなるほど、低くなり負側に大きな値となっていく。又、他方の繊維のゼータ電位は、洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなっても、洗濯水中に陰イオン界面活性剤がほとんど存在していないときのゼータ電位の値とほぼ同じであり、一方の繊維のゼータ電位よりも高い。
【0015】
この構成により、洗い時に洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなると、汚れ粒子は、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となり、汚れ粒子除去フィルタの繊維のうちゼータ電位の高い繊維に吸着され易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタは洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる繊維を混在して構成されるため、ゼータ電位の異なる繊維同士は極近傍に存在する。そのため、陰イオン界面活性剤の濃度が高い洗濯水に浸された汚れ粒子除去フィルタの2つの繊維間は電界強度が極めて高くなっており、汚れ粒子は、ゼータ電位の高い繊維側により引っ張られ易く、吸着され易くなる。
【0016】
そして、すすぎ時に、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が低くなると、汚れ粒子のゼータ電位は高くなると共に、2つの繊維のゼータ電位の差は小さくなる。これにより、汚れ粒子が吸着していた繊維と汚れ粒子とのゼータ電位の差が小さくなって、汚れ粒子の吸着力は弱くなり、汚れ粒子除去フィルタから汚れ粒子が脱離し易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタを構成する2つの繊維においてゼータ電位の差が小さくなることにより、2つの繊維間の電界強度は弱くなり、汚れ粒子は、ゼータ電位の高い繊維側に引っ張られ難くなる。
これにより、洗い時に汚れ除去フィルタに吸着した汚れ粒子は、すすぎ時に汚れ粒子除去フィルタから脱離し、洗濯水の排水と共に機外に排出され、汚れ粒子除去フィルタの吸着力は再生される。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、洗い時に、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となった汚れ粒子を、ゼータ電位の異なる2つの繊維を混在して構成された汚れ粒子除去フィルタのうちゼータ電位の高い方の繊維に吸着させている。これにより、洗濯水中から汚れ粒子を除去することができる。そして、汚れ粒子除去フィルタを構成する2つの繊維においてゼータ電位の差を生じさせる構成であるので、この2つの繊維間に極めて高い電界強度が発生し、汚れ粒子をゼータ電位の高い繊維側に引っ張り易くでき、吸着させ易くすることができる。
【0018】
そして、すすぎ時に、汚れ粒子のゼータ電位は高くなると共に、2つの繊維のゼータ電位の差は小さくなることにより、汚れ粒子が吸着していた繊維と汚れ粒子とのゼータ電位の差が小さくなって、汚れ粒子の吸着力は弱くなり、汚れ粒子除去フィルタから汚れ粒子が脱離し易くなる。これにより、汚れ粒子をすすぎ時の洗濯水の排水と共に機外に排出させることができ、汚れ粒子除去フィルタの吸着力を再生させることができる。
従って、汚れ粒子除去フィルタにより、長期間にわたって、洗濯水中から汚れ粒子を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す洗濯機の循環水路の下部近傍部分を拡大して示す縦断側面図
【図2】外蓋を閉じた状態の洗濯機の斜視図
【図3】外蓋及び内蓋を開けた状態の洗濯機の斜視図
【図4】洗濯機の縦断側面図
【図5】フィルタ部材の正面図
【図6】洗濯水のpHと各種の繊維のゼータ電位の関係を示す図
【図7】汚れ粒子除去フィルタを構成する繊維の種類と汚れ粒子の付着率の関係を示す図
【図8】汚れ粒子除去フィルタの平均繊維径と汚れ粒子の付着率の関係を示す図
【図9】本発明の第2の実施形態を示すもので、陰イオン界面活性剤の濃度と汚れ粒子除去フィルタのゼータ電位の関係を示す図
【図10】本発明の第3の実施形態を示すもので、陽イオン界面活性剤の濃度と汚れ粒子除去フィルタのゼータ電位の関係を示す図
【図11】本発明の第4の実施形態を示す洗濯機の斜視図
【図12】洗濯機の破断斜視図
【図13】洗濯機の縦断側面図
【図14】リントフィルタの近傍部分を拡大して示す縦断側面図
【図15】リントフィルタを取り出した状態を洗濯機の正面側から見た図
【図16】洗濯水のpHと汚れ粒子のゼータ電位の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図1から図8を参照して説明する。
第1の実施形態では、本発明を縦型の洗濯機に適用して説明する。まず図2から図4に示すように、洗濯機の外箱1は矩形箱状をなしていて、この外箱1の上部にトップカバー2が設けられている。トップカバー2のほぼ中央部には、図4に示すように、洗濯物を出し入れする洗濯物出入口3が設けられていると共に、この洗濯物出入口3を開閉する外蓋4が設けられている。外箱1の内部には、有底円筒状をなす水槽5が弾性吊持機構6により弾性支持されていると共に、その水槽5の内部には、洗濯物及び洗濯水を収容するための有底円筒状の洗濯槽7が垂直な縦軸周りに回転可能に設けられている。洗濯槽7の周壁部には、脱水孔8が多数個形成されている。
【0021】
水槽5の上部には、水槽カバー10が設けられている。この水槽カバー10には、洗濯物出入口3の下方に位置させて開口部11が形成され、開口部11を開閉する内蓋12が設けられている。濯槽7の上端部には、バランスリング13が設けられている。洗濯槽7内の底部には、撹拌体14が回転可能に設けられている。水槽5の外底部には、駆動手段を構成する駆動装置15が設けられている。この駆動装置15は、正逆回転が可能なモータと、クラッチ機構(図示せず)を備えていて、前記撹拌体14と洗濯槽7とを選択的に回転駆動させる構成となっている。
【0022】
トップカバー2には、洗濯物出入口3の後方に位置させて給水弁18及び注水ケース19が設けられている。給水弁18にはホース接続口20が設けられていて、このホース接続口20には、図示しない水道(給水源)の蛇口に接続された接続ホースが接続されるようになっている。注水ケース19の出口には、蛇腹状の給水ホース21が接続されている。この給水ホース21の下端部は給水口22とされていて、この給水口22が水槽カバー10に接続されている。給水口22は、洗濯槽7に上方から臨んでいる。ここで、ホース接続口20に接続ホースが接続された状態で、給水弁18が開放されると、水道水が接続ホース、給水弁18、注水ケース19及び給水ホース21を介して給水口22から洗濯槽7内、ひいては水槽5内に供給される。尚、この水道水は、洗剤と混ざることにより、洗濯水となる。
【0023】
洗濯槽7内には、周壁部に沿って上下方向に延びる循環水路形成用カバー24が装着されている。これにより、循環水路形成用カバー24と洗濯槽7の内面との間に、上下方向に延びる循環水路25が形成される。循環水路25の下端部の入口26は、図1に示すように、撹拌体14の裏側に位置するポンプ室27に連通している。ポンプ室27は、撹拌体14の裏側に設けられた複数のポンプ羽根28を有する部屋である。循環水路25の入口26には、入口26を覆うようにしてフィルタ部材29が設けられている。フィルタ部材29については、後述する。
【0024】
循環水路形成用カバー24の上部(循環水路25の上部)には、図4に示すように、循環口30が形成され、循環口30には、洗濯水中の糸屑等を捕獲するリントフィルタ31が設けられている。ここで、水槽5内、ひいては洗濯槽7内に水が貯留された状態で、撹拌体14が回転されると、ポンプ羽根28も回転される。すると、ポンプ羽根28のポンプ作用により、ポンプ室27内の洗濯水は、循環水路25の入口26のフィルタ部材29を通って循環水路25内に流入する。この循環水路25内に流入した洗濯水は、循環水路25内を上方向に流れた後、循環口30からリントフィルタ31を介して洗濯槽7内に吐出されるというように循環する。
【0025】
水槽5の底部には、排水口35が形成され、排水口35には排水管36が接続されている。又、排水管36の途中には排水弁37が接続されている。これにより、排水弁37が開放されると、水槽5内の洗濯水は排水口35及び排水管36を介して機外へ排出される。
【0026】
トップカバー2の前部には、操作パネル38が設けられている。操作パネル38には、図3に示すように、操作スイッチからなる複数の入力部39及び運転状態等を表示する表示部40が設けられている。又、操作パネル38の裏側には、図1に示すように、マイクロコンピュータを有する制御手段たる制御回路41が設けられている。
【0027】
制御回路41には、入力部39、モータ16に設けられた回転センサ(図示せず)、水位センサ(図示せず)からの信号等が入力される。このうち、回転センサは、駆動装置15のモータ(図示せず)の回転速度を検出するものであり、水位センサは、水槽5内ひいては洗濯槽7内の水位を検出するものである。制御回路41は、これらの入力信号と、予め有する制御プログラムに基づき洗濯機負荷である、表示部40、駆動装置15、給水弁18、排水弁37等を制御する機能を有している。制御回路41は、後述するように、洗い、すすぎ、脱水の各行程を実行するように洗濯機負荷を制御するものである。
【0028】
さて、上述のフィルタ部材29は、洗濯水に接触する位置に設けられるものであり、例えば上述したように循環水路25の入口26に設けられている。このフィルタ部材29は、図1及び図5に示すように、汚れ粒子除去フィルタ45と、この汚れ粒子除去フィルタ45を挟んで保持する枠部材46とから形成されている。枠部材46は、樹脂製からなり、矩形状に形成された汚れ粒子除去フィルタ45の外周部を囲う枠部46Aと、この枠部46Aの内周側に設けられた格子状の支持部46Bとからなっている。枠部材46の支持部46Bは、汚れ粒子除去フィルタ45の面のうち少なくとも一方の面に設けられている。本実施形態では、汚れ粒子除去フィルタ45の面のうち洗濯物が位置する側(ポンプ室27側)の面に支持部46Bが位置している。これにより、洗濯水は、フィルタ部材29の汚れ粒子除去フィルタ45のうち枠部46A及び支持部46Bに支持されていない部分に接触可能になる。
【0029】
汚れ粒子除去フィルタ45は、複数の繊維、この場合2つの繊維A及び繊維Bを混在(混紡)して構成されている。この繊維A及び繊維Bは、合成繊維又は天然繊維のどちらでも良いが、洗濯水に浸したときに互いにゼータ電位が異なる繊維で構成されている。この繊維Aと繊維Bのゼータ電位の差は、汚れ粒子除去フィルタ45がpH9以上の洗濯水に浸されたときよりも、pH9未満の洗濯水に浸されたときの方が小さくなるものである。
ここで、汚れ粒子除去フィルタ45が2つの繊維からなり、これらの繊維をpHが9以上(アルカリ性)の洗濯水に浸した場合、ゼータ電位の低い方の繊維を繊維Aとし、繊維Aよりもゼータ電位が高い方の繊維を繊維Bとして説明する。
【0030】
繊維Aは、図6に示すように、洗濯水のpHが高くなる(アルカリ性になる)ほどゼータ電位が低くなり負側に大きな値となる繊維であり、この場合、「ポリエステル繊維」及び「綿表面酸化処理(カルボキシル基処理)」である。繊維Aは、「綿表面酸化処理(カルボキシル基処理)」のように、ある繊維に表面処理、例えば、ある繊維の表面に表面処理としてカルボキシル基による酸性基処理を施すことによって得ることができる。例えば、この「綿表面酸化処理(カルボキシル基処理)」は、ある繊維(例えば綿)の表面を酸化させてカルボキシル基を強制的に付与させて繊維Aを構成している。ある繊維を繊維Aにする表面処理としては、他に、ある繊維の表面に表面処理として酸化剤を付与して、繊維の表面のメチル基等の基を強制的に酸化させて繊維Aを得る方法がある。
【0031】
このように、ある繊維に上記の表面処理を施すと、ある繊維(繊維A)はより親水性が増し、pHが高くなるほどゼータ電位は低くなると考えられる。
尚、表面処理を施さない場合の「ある繊維」とは、pHが9以上(アルカリ性)の洗濯水に浸した場合のゼータ電位が、pHが9未満の洗濯水に浸した場合のゼータ電位よりも低い繊維である。又、繊維に表面処理(繊維Aにする表面処理)を施す場合の「ある繊維」とは、いずれの繊維でも良い。
【0032】
繊維Bは、図6に示すように、洗濯水のpHが高くなっても、洗濯水が中性のときのゼータ電位の値とほぼ同じであり(pHの変化による変動幅が小さく)、少なくともpHが9以上になっても繊維Aよりもゼータ電位の高い繊維であり、この場合、「綿」、「ガラス繊維」、「ガラス繊維シランカップリング処理」、「ナイロン」、「綿ポリアクリルアミド処理」及び「綿銀イオン処理」である。繊維Bは、ある繊維に表面処理を施すことによって得ることができる。例えば、ある繊維(例えば綿)の表面をポリアクリルアミド又はヒドロキシプロピルセルロースでコーティングし、繊維の表面を不活性にする表面処理を施すことによって得ることができる。
【0033】
ある繊維(例えば綿)にポリアクリルアミド処理(表面処理)を施してなる繊維B(「綿ポリアクリルアミド処理」)は、分子量10000〜50000程度のポリアクリルアミド水溶液中に、綿を浸漬し、高温乾燥し、キュアリング(curing:一定の温度湿度で保つ)することにより得られる。綿に表面処理としてアミド基による塩基性基処理(ポリアクリルアミド処理)を施すことにより、繊維Bのゼータ電位は、pHが高くなっても低下し難くなる。
【0034】
ガラス繊維シランカップリング処理は、ガラス繊維にシランカップリング剤(例えばγ−アミノプロピルトリエトキシシラン)処理によって、ある繊維の表面にアミノ基を設ける処理である。
ある繊維を繊維Bにする表面処理としては、他に、ある繊維の表面に表面処理としてポリエチレングリコール、アミノアルキルメタアクリレートアクリルアミド共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアクリル酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合体物、ポリジメチルアミノメタクリレートを施して繊維Bを得る方法もある。
【0035】
その他、ある繊維(例えば綿)に銀イオンを付着させる表面処理で、繊維Bを得ることができる。この銀イオンを付着して構成される繊維Bは、前述のように綿の表面に銀イオンの表面処理を施したものでも良いが、特開2007−22255に開示されている銀イオン供給装置を洗濯槽7内に設けて、洗濯槽7内に設けた綿に銀イオンを吸着させて得たものでも良い。
【0036】
尚、表面処理を施さない場合の「ある繊維」とは、洗濯水が中性及びアルカリ性の場合においてゼータ電位の値がほぼ同じである繊維である。又、繊維に表面処理(繊維Bにする表面処理)を施す場合の「ある繊維」とは、いずれの繊維でも良い。
【0037】
汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維A及び繊維Bは、平均直径、言い換えると平均繊維径ができるだけ小さい極細繊維からなっている。例えば平均繊維径は、10μm以下であることが好ましい。この平均繊維径については、後述する。
【0038】
次に上記構成の作用を説明する。
使用者が、洗濯槽7内に洗濯物(図示せず)を収容した状態で、入力部39を操作し、洗濯運転を開始させると、制御回路41は、洗濯槽7内に収容された洗濯物の布量検知を行う。尚、この場合、洗濯運転としては標準コースが設定されているとする。
布量検知は、駆動装置15のモータ(図示せず)により撹拌体14のみを回転させ、そのときの回転センサ(図示せず)の回転速度の大きさと、制御回路41が予め有したテーブルに基づき、布量を判断する。布量が多く重い場合には、回転センサ(図示せず)が検出する回転速度が低く、布量が少なく軽い場合には、この回転センサが検出する回転速度が高くなる。制御回路41は、この布量の判断に基づき給水水位を決定し、この給水水位を、表示部40に表示する。これにより、使用者は、適量の洗剤を洗濯槽7内に供給する。
【0039】
制御回路41は、布量検知後に、洗い行程を実行する。洗い行程では、制御回路41は、排水弁37を閉鎖させた状態で給水弁18を開放させて給水をする。給水弁18が開放されると、水道水が、注水ケース19、給水ホース21を介して給水口22から洗濯槽7内、ひいては水槽5内に供給されて貯留される。給水口22から洗濯槽7内に供給された水道水は、洗剤と混ざって洗濯水となり、給水口22の下方に存する洗濯物は、その洗濯水に濡らされる。又、水槽5内に貯留された洗濯水の水位は、水位センサ(図示せず)にて検出される。
【0040】
制御回路41は、水槽5内の水位が前記布量検知に基づき設定された給水水位に達すると、給水弁18を閉鎖して給水を停止させ、駆動装置15のモータにより撹拌体14を正逆回転させる。すると、撹拌体14により洗濯槽7内の洗濯物が撹拌されると共に、撹拌体14の裏側に設けられたポンプ羽根28のポンプ作用により、洗濯槽7内の洗濯水が循環水路25の入口26に設けたフィルタ部材29の汚れ粒子除去フィルタ45を通って、循環水路25内に入り、循環口30からリントフィルタ31を通って、洗濯槽7内に吐出される。
そして、予め設定された時間が経過すると、制御回路41は、撹拌体14の回転を停止させ、排水弁37を開放させて洗濯水の排水を行う。
【0041】
次に、制御回路41は、すすぎ行程を実行する。すすぎ行程では、制御回路41は、排水弁37を閉鎖し、給水弁18を開放させて洗濯槽7内へ、所定水位まで給水する(すすぎ用の水(水道水)を供給する)。そして、撹拌体14を低速で正逆回転させることにより、洗濯槽7内の洗濯物はすすがれる。又、すすぎ時に生成された比較的きれいな水(洗濯水が水道水で薄まった水(ほぼ中性の水)。以下、すすぎ水と称する)は、汚れ粒子除去フィルタ45に接触する。そして、所定時間後、排水弁37が開放され、水槽5内ひいては洗濯槽7内のすすぎ水は機外へ順次排出される。すすぎ行程では、給水、すすぎ、排水が複数回行われる。
【0042】
次に、制御回路41は、脱水行程を実行する。脱水行程では、制御回路41は、排水弁37を開放した状態で洗濯槽7を一方向に高速回転をさせ、洗濯物に対して遠心脱水を行う。
脱水行程が終了することにより、通常の運転コースが終了する。
【0043】
次に、汚れ粒子除去フィルタ45の作用について説明する。
ここで、洗濯に用いられる洗剤にはアルカリ成分が含まれている。従って、洗い時には洗剤の濃度が高いので洗濯水のpHは高くなり(アルカリ性になり)、すすぎ時では洗剤の濃度は低いのでpHは低くなる(ほぼ中性になる)。そのため、本実施形態では、洗い時の洗濯水のpHを10とし、すすぎ時の洗濯水のpHを8として説明する。
【0044】
洗い時の洗濯水には、洗濯物から脱離した油汚れ(油滴)、泥汚れ(本実施形態では例えば関東ローム土)、ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるカーボンブラック、水道管中に含まれる鉄さびの汚れ粒子が存在していることがある。これらの汚れ粒子は、図16に示すように、一般に洗濯水のpHが高くなるほど、洗濯水中の水酸基が汚れ粒子に吸着されることにより、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。例えば、汚れ粒子がカーボンブラックである場合、洗濯水のpHが10(洗い)のときゼータ電位は約−48mVであり、洗濯水のpHが8(すすぎ)のときゼータ電位は約−40mVである。
【0045】
又、一般的な洗濯物(衣類)の繊維(例えばポリエステルが主材の衣類)も、洗濯水のpHが高くなるほど、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。従って、洗い時においては、汚れ粒子と洗濯物の繊維とは反発し合い、洗濯水中に汚れ粒子が存在し易くなっている。そのため、洗いが終わった後に、汚れ粒子が洗濯物に再付着するおそれがある。
【0046】
本実施形態では、ゼータ電位の異なる繊維Aと繊維Bとを混在して構成された汚れ粒子除去フィルタ45を洗濯水に接触する位置、この場合循環水路25の入口26に設けている。この汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維Aと繊維Bのゼータ電位の差は、汚れ粒子除去フィルタ45がpH9以上の洗濯水に浸されたときよりもpH9未満の洗濯水に浸されたときの方が小さくなるものである。例えば、図6に示すように、繊維Aがポリエステルである場合、洗濯水のpHが10(洗い)のときゼータ電位は約−100mVであり、洗濯水のpHが8(すすぎ)のときゼータ電位は約−80mVである。一方、繊維Bが綿である場合、洗濯水のpHが10(洗い)のときゼータ電位は約−25mVであり、洗濯水のpHが8(すすぎ)のときのゼータ電位は約−22mVである。よって、繊維Aと繊維Bのゼータ電位の差は、pHが10のとき約75mVであり、pHが8のとき約58mVである。
【0047】
この構成により、洗い時に洗濯水のpHが高くなり、例えば洗濯水のpHが9以上に高くなる(本実施形態ではpH10になる)と、汚れ粒子(カーボンブラック)は、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となり、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維のうち、反発され難いゼータ電位の高い繊維Bに吸着され易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタ45は洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる繊維(繊維A及び繊維B)を混在して構成されるため、ゼータ電位の異なる繊維A及び繊維Bは極近傍に存在する。そのため、pHが高い洗濯水に浸された汚れ粒子除去フィルタ45の繊維Aと繊維Bとの間は電界強度が極めて高くなっており、汚れ粒子は、ゼータ電位の高い繊維B側により引っ張られ易く、吸着され易くなる。
【0048】
そして、すすぎ時に、洗濯水のpHが低くなり、例えば洗濯水のpHが9よりも低くなる(本実施形態ではpH8になる)と、汚れ粒子のゼータ電位は高くなると共に、2つの繊維Aと繊維Bのゼータ電位の差は小さくなる。これにより、汚れ粒子が吸着していた繊維Bと汚れ粒子とのゼータ電位の差が小さくなって、汚れ粒子の吸着力は弱くなり、汚れ粒子除去フィルタ45から汚れ粒子が脱離し易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタを構成する繊維A及び繊維Bにおいてゼータ電位の差が小さくなることにより、2つの繊維Aと繊維Bとの間の電界強度は弱くなり、汚れ粒子は、繊維B側に引っ張られ難くなる。
【0049】
これにより、洗い時に汚れ粒子除去フィルタ45に吸着した汚れ粒子は、すすぎ時に汚れ粒子除去フィルタ45から脱離し、すすぎ水中に放出される。この場合、すすぎ時に、汚れ粒子除去フィルタ45から洗濯槽7に汚れ粒子が放出されることになるが、すすぎ時には、洗濯槽7中の洗濯水(すすぎ水)は適宜(複数回)排水され、新しい水(すすぎ用の水(水道水))が供給されるため、汚れ粒子除去フィルタ45から洗濯槽7に放出された汚れ粒子は、このすすぎ水によって希釈され、このすすぎ水と共に排水される。従って、洗濯水(すすぎ水)中には、汚れ粒子はほとんど存在しない。
【0050】
上記した実施形態によれば、次のような作用効果を得ることができる。
本実施形態では、洗い時に、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となった汚れ粒子を、ゼータ電位の異なる繊維A及び繊維Bを混在して構成された汚れ粒子除去フィルタ45のうちゼータ電位の高い方の繊維Bに吸着させている。これにより、洗濯水中から汚れ粒子を除去することができる。
【0051】
そして、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維A及び繊維Bにおいてゼータ電位の差を生じさせる構成であるので、繊維Aと繊維Bとの間に極めて高い電界強度が発生し、汚れ粒子をゼータ電位の高い繊維B側に引っ張り易くでき、吸着させ易くすることができる。この汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維Aのゼータ電位と繊維Bのゼータ電位とで差を設けた場合について、本発明者は効果の確認を行った。
【0052】
図7に、汚れ粒子除去フィルタを構成する繊維の種類を変えた場合の汚れ粒子の付着率の確認試験の結果を示す。
この付着率の確認試験では、汚れ粒子として、平均粒径が500nmのカーボンブラックを用い、まず、この汚れ粒子を洗濯槽7に収容された洗濯水に入れて撹拌する。又、汚れ粒子除去フィルタとして、綿(繊維B相当)、ポリエステル(繊維A相当)、ポリエステルと綿の混在(繊維Aと繊維Bの混在に相当)、ナイロン(繊維B相当)、ポリエステルとウール(繊維Aと繊維Bの混在に相当)、レーヨン(繊維B相当)を用い、これらの繊維からなる各汚れ粒子除去フィルタを一定の大きさに調整して上記洗濯水に入れて撹拌する。そして、所定時間後にこれらの汚れ粒子除去フィルタを取り出し、各汚れ粒子除去フィルタについて反射率の変化から汚れの付着(吸着)割合を測定した。反射率の変化は、各汚れ粒子除去フィルタに所定の強さの光を当てた場合、どれだけの光が反射されたかを測定したものであり、反射率(%)=(汚れ粒子除去フィルタから反射された光の強さ÷汚れ粒子除去フィルタに当てる光の強さ)×100(%)で求められる。又、図7中の「初期反射率」は、試験前(汚れ粒子が付着する前)の各汚れ粒子除去フィルタの反射率である。「洗い後の反射率」は、各汚れ粒子除去フィルタを用いて洗い行程を行った後の当該各汚れ粒子除去フィルタの反射率である。「付着率」は、付着率(%)={初期反射率(%)÷洗い後の反射率(%)−1}×100(%)で求められ、この付着率の値が小さいほど、即ち洗い後の反射率が高いほど、汚れ粒子除去フィルタに汚れ粒子が付着していないことを示している。
【0053】
この試験結果から、汚れ粒子除去フィルタがポリエステルと綿の混在(繊維Aと繊維Bの混在)、或いはポリエステルとウールの混在(繊維Aと繊維Bの混在)からなるものが、綿のみ、ポリエステルのみ、ナイロンのみ、レーヨンのみ(繊維Aのみ或いは繊維Bのみ)からなるものよりも付着率が大きいことが理解される。よって、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維を、ゼータ電位の差を生じさせるように繊維Aと繊維Bとを混在させて構成させることにより、より多くの汚れ粒子を汚れ粒子除去フィルタに吸着させることができる。
【0054】
そして、すすぎ時に、すすぎ水が汚れ粒子除去フィルタ45に接触することにより、汚れ粒子のゼータ電位は高くなると共に、繊維Aと繊維Bのゼータ電位の差は小さくなる。これにより、汚れ粒子が吸着していた繊維Bと汚れ粒子とのゼータ電位の差が小さくなって、汚れ粒子の吸着力は弱くなり、汚れ粒子除去フィルタ45から汚れ粒子が脱離し易くなる。よって、汚れ粒子をすすぎ水の排水と共に機外に排出させることができ、汚れ粒子除去フィルタ45の吸着力を再生させることができる。
【0055】
従って、汚れ粒子除去フィルタ45により、長期間にわたって、洗濯水中から汚れ粒子を除去することができ、汚れ粒子除去フィルタ45の清掃をできるだけ少なくすることが可能となる。
【0056】
又、本実施形態では、汚れ粒子除去フィルタ45の繊維A及び繊維Bを、平均繊維径ができるだけ小さい極細繊維から構成している。これにより、汚れ粒子除去フィルタ45の表面積が増して、繊維A及び繊維Bの電荷密度が高くなって電界強度が多くなり、洗い時に汚れ粒子を汚れ粒子除去フィルタ45に吸着させ易くすることができる。この汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維A及び繊維Bの繊維径の違いによる汚れ粒子の付着のし易さについて、本発明者は確認試験を行った。
【0057】
図8に、汚れ粒子除去フィルタを構成する繊維の平均繊維径を変更した場合の汚れ粒子の付着率の確認試験の結果を示す。
この確認試験では、汚れ粒子としては、平均粒径が500nmのカーボンブラックを用いている。又、汚れ粒子除去フィルタとして、ポリエステルと綿の混在(繊維Aと繊維Bの混在)を用いている。この試験では、ポリエステルの平均繊維径を、30μm、15μm、10μm、5μm、1μm、0.5μmにした各繊維と、平均繊維径が数十μmの綿の繊維とを混在して各汚れ粒子除去フィルタを形成した。そして、上述の図7の確認試験と同様に、各汚れ粒子除去フィルタの反射率の変化から汚れ吸着割合を測定した。尚、図8中の「初期反射率」、「洗い後の反射率」、「付着率」の求め方は、上述の図7の確認試験と同じである。図8中の「繊維径」は、ポリエステルの平均繊維径のことである。
【0058】
この結果から、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維(この場合、ポリエステル)の平均繊維径が小さいほど、付着率は高くなることがわかる。又、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維(ポリエステル)の平均繊維径が10μm以下の繊維からなる場合に、付着率が20%以上となった。尚、付着率が20%以上である場合、目視において汚れ粒子除去フィルタ45に汚れ粒子が付着していることが確認できた。又、図示はしないが、その他の繊維A及び繊維Bにおいても、平均繊維径が小さいほど、表面積が増すため、付着率は高くなった。
【0059】
汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維のうち繊維Bを、ある繊維に、ポリアクリルアミド又はヒドロキシプロピルセルロースによる表面処理が施して形成した場合、又はアミド基による塩基性基処理を施して形成した場合、又は銀イオンを付着させて形成した場合、洗濯水のpHが変化しても繊維Bのゼータ電位の変動を小さくでき、これにより、洗濯水がアルカリ性になってもゼータ電位の低下を抑制することができる。
【0060】
更に、繊維Bを、ある繊維に銀イオンを付着させる表面処理を施して形成した場合には、繊維Bに付着させた銀イオンの作用により、汚れ粒子除去フィルタ45に抗菌性を付与させることができ、汚れ粒子除去フィルタ45に菌が繁殖してしまうことを極力防止できる。
汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維のうち繊維Aを、ある繊維にカルボキシル基による酸性基処理を施すことにより、洗濯水のpHが高くなるほどゼータ電位を低くさせることができる。
【0061】
汚れ粒子除去フィルタ45は、枠部材46によって挟んで保持され、汚れ粒子除去フィルタ45の面のうち洗濯物が位置する側(ポンプ室27側)の面に格子状の支持部46Bが位置している。これによりの洗濯物が直接汚れ粒子除去フィルタ45に接触する可能性は少なくなり、汚れ粒子除去フィルタ45に洗濯物が接触して当該汚れ粒子除去フィルタ45に吸着された汚れ粒子が洗濯物に再付着してしまうことを極力防止することができる。
【0062】
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態について図9を参照して説明する。
第2の実施形態は、汚れ粒子除去フィルタ45は、複数の繊維、この場合2つの繊維C及び繊維Dを混在して構成されている。この繊維C及び繊維Dは、合成繊維又は天然繊維のどちらでも良いが、洗濯水に浸したときに互いにゼータ電位が異なる繊維で構成されている。この繊維Cと繊維Dのゼータ電位の差は、陰イオン界面活性剤の濃度が低いほど小さくなるものである。
【0063】
汚れ粒子除去フィルタ45が繊維C及び繊維Dで構成された場合の作用について図9を参照して説明する。
洗濯に用いられる洗剤には一般に陰イオン界面活性剤が含まれている。従って、洗い時では洗剤の濃度が高いので洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度は高くなり、すすぎ時では洗剤の濃度が低いので洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度は低くなる。
【0064】
ここで、汚れ粒子は、図示はしないが、第1の実施形態に記載したpHの場合のゼータ電位の変化と同様に、一般に洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなるほど、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。又、一般的な洗濯物(衣類)の繊維も、洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなるほど、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となっていく。従って、洗い時においては、汚れ粒子と洗濯物の繊維とは反発し合い、洗濯水中に汚れ粒子が存在しやすくなっている。そのため、洗いが終わった後に、汚れ粒子が洗濯物に再付着するおそれがある。
【0065】
第2の実施形態の汚れ粒子除去フィルタ45は、ゼータ電位の異なる2つの繊維C及び繊維Dを混在して構成されている。この汚れ粒子除去フィルタ45を構成する2つの繊維C及び繊維Dは、ゼータ電位の差が、陰イオン界面活性剤の濃度が低いほど小さくなるものである。即ち、汚れ粒子除去フィルタを構成する繊維C及び繊維Dのうち、一方の繊維(繊維C)のゼータ電位は、洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなるほど、低くなり負側に大きな値となっていく。又、他方の繊維(繊維D)のゼータ電位は、洗濯水中の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなっても、洗濯水中に陰イオン界面活性剤がほとんど存在していないときのゼータ電位の値とほぼ同じであり、繊維Cよりもゼータ電位が高い。例えば、洗い時の洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度を4×10−3(mol/L)とし、すすぎ時の洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度を1×10−3(mol/L)とする。そして、図9に示すように、繊維Cが「ポリエステル」である場合、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が4×10−3(mol/L)(洗い)のときゼータ電位は約−27mVであり、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が1×10−3(mol/L)(すすぎ)のときゼータ電位は約−20mVである。一方、繊維Dが「綿ポリアクリルアミド処理」である場合、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が4×10−3(mol/L)(洗い)のときゼータ電位は約−7mVであり、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が1×10−3(mol/L)(すすぎ)のときゼータ電位は約−6mVである。よって、繊維Cと繊維Dのゼータ電位の差は、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が4×10−3(mol/L)のとき約20mVであり、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が1×10−3(mol/L)のとき約14mVである。
【0066】
この構成により、洗い時に洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が高くなると、汚れ粒子は、ゼータ電位が低くなり負側に大きな値となり、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維のうち、反発され難いゼータ電位の高い繊維Dに吸着され易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタ45は洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる繊維(繊維C及び繊維D)を混在して構成されるため、ゼータ電位の異なる繊維C及び繊維Dは極近傍に存在する。そのため、陰イオン界面活性剤の濃度が高い洗濯水に浸された汚れ粒子除去フィルタの繊維C及び繊維D間は電界強度が極めて高くなっており、汚れ粒子は、ゼータ電位の高い繊維D側により引っ張られ易く、吸着され易くなる。
【0067】
そして、すすぎ時に、洗濯水の陰イオン界面活性剤の濃度が低くなると、汚れ粒子のゼータ電位は高くなると共に、2つの繊維のゼータ電位の差は小さくなる。これにより、汚れ粒子が吸着していた繊維と汚れ粒子とのゼータ電位の差が小さくなって、汚れ粒子の吸着力は弱くなり、汚れ粒子除去フィルタ45から汚れ粒子が脱離し易くなる。更に、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する繊維C及び繊維Dにおいてゼータ電位の差が小さくなることにより、繊維Cと繊維Dとの間の電界強度は弱くなり、汚れ粒子は、繊維D側に引っ張られ難くなる。
【0068】
これにより、洗い時に汚れ粒子除去フィルタ45に吸着した汚れ粒子は、すすぎ時に汚れ粒子除去フィルタ45から脱離し、すすぎ水の排水と共に機外に排出され、汚れ粒子除去フィルタの吸着力は再生される。
【0069】
尚、第2の実施形態では、繊維Cとして「ポリエステル」、繊維Dとして「綿ポリアクリルアミド処理」を用いて説明したが、繊維Cとして「綿表面酸化処理(カルボキシル基処理)」を用い、繊維Dとして「綿」、「ガラス繊維」、「ガラス繊維シランカップリング処理」、「ナイロン」、「綿ポリアクリルアミド処理」及び「綿銀イオン処理」を用いても同様の作用効果が得られた。
【0070】
(第3の実施形態)
次に本発明の第3の実施形態について図10を参照して説明する。
第3の実施形態では、汚れ粒子除去フィルタ45を備えた洗濯機において、すすぎ時に、陽イオン界面活性剤が含まれる液を水槽5(洗濯槽7)に供給する構成である。陽イオン界面活性剤としては、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等の界面活性剤、一般に衣類の柔軟剤として使用される陽イオン界面活性剤がある。
【0071】
まず、汚れ粒子除去フィルタ45と、陽イオン界面活性剤(この場合、陽イオン界面活性剤を含む柔軟剤。以下、柔軟剤と称する)の濃度との関係について図10を参照して説明する。
【0072】
すすぎ時に柔軟剤を洗濯槽7に供給すると、洗濯水中の陽イオン界面活性剤の濃度は高くなる。
ここで、汚れ粒子除去フィルタ45が繊維C及び繊維Dを混在して構成されているとして説明する。汚れ粒子除去フィルタ45を構成する2つの繊維のうち繊維Cは、図10において「ポリエステル」である。陽イオン界面活性剤が含まれた洗濯水に浸された「ポリエステル」のゼータ電位は、洗濯水中の陽イオン界面活性剤が存在することにより、正側に大きな値となっていく。又、汚れ粒子除去フィルタ45を構成する2つの繊維のうち繊維Dは、図10において「綿ポリアクリルアミド処理」である。「綿アクリルアミド処理」は、第1及び第2の実施形態で説明したものと同一であり、陽イオン界面活性剤が含まれた洗濯水に浸された「綿アクリルアミド処理」のゼータ電位は、洗濯水中の陽イオン界面活性剤が存在することにより、正側に大きな値となっていく。
【0073】
従って、洗い時に洗濯水中に陰イオン界面活性剤が含まれた洗濯水に汚れ粒子除去フィルタ45が浸されると、汚れ粒子除去フィルタ45の繊維Dのゼータ電位は負の値となるが、すすぎ時のすすぎ水に柔軟剤を供給することにより、繊維Dのゼータ電位を早く正の値にすることができる。これにより、繊維Dと汚れ粒子とのゼータ電位の差が早く小さくなり、汚れ粒子の吸着力は弱くなる。従って、すすぎ時に汚れ粒子除去フィルタ45から汚れ粒子を早く脱離させることができる。
又、汚れ粒子除去フィルタ45から早く離脱した汚れ粒子を、柔軟剤が含まれるすすぎ水と共に機外に排出させることにより、汚れ粒子除去フィルタ45の吸着力を早く再生させることができる。
【0074】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、本発明をドラム式の洗濯機に適用し、図11から図15を参照して説明する。まず、図11から図13に示すように、洗濯機の外郭をなす外箱51は、合成樹脂製の基台51Aと、これに被着結合した箱本体51Bとからなるものである。箱本体51Bの前面部(図13で左側)のほぼ中央部には、洗濯物出入口53が設けられていると共に、この洗濯物出入口53を開閉する扉54が設けられている。外箱51の内部には、有底円筒状をなす水槽55が設けられている。この水槽55は、軸方向が前後(図13で左右)の横軸円筒状をなし、左右一対(一方のみ図示)の弾性吊持機構56により前上がりの傾斜状に弾性支持されている。
【0075】
水槽55の背面側の外側には、モータ57が設けられている。このモータ57は、例えば直流のブラシレスモータからなるもので、アウターロータ形であり、ステータ57A及びロータ57Bを有している。ステータ57Aは、水槽55の背面側の外側に取付けられ、ロータ57Bの中心部の回転軸57Cは、軸受ブラケット58に軸受59を介して支承されて水槽55の内部に挿通されている。
【0076】
水槽55の内部には、金属製の洗濯槽(ドラム)60が回転可能に設けられている。洗濯槽60は、軸方向が前後の横軸円筒状を成し、後部の中心部が上記モータ57の回転軸57Cの先端部に取付けられ、水槽55と同軸の前上がりの傾斜状に支持されている。又、その結果、洗濯槽60はモータ57により直に回転される。このモータ57は、洗濯槽60を回転させる駆動手段として機能するようになっている。
【0077】
洗濯槽60の周側部(胴部)には、小孔61が全域にわたって多数(図13には一部のみ図示)形成され、又、洗濯物掻き上げ用のバッフル62が複数設けられている(1つのみ図示)。又、洗濯槽60及び水槽55は、ともに前面部に開口部63,64を有しており、そのうちの洗濯槽60の開口部63の周囲部内側には、例えば液体封入形のバランスリング65が設けられている。水槽55の開口部64には、環状のゴム製のベローズ66が設けられている。このベローズ66は洗濯物出入口53と連なっている。この結果、洗濯物出入口53は、ベローズ66、水槽55の開口部64、及び洗濯槽60の開口部63を介して、洗濯槽60の内部に連なっている。
【0078】
水槽55の底部には、排水口71が形成され、この排水口71は機内排水ホース72の基端部に接続され、機内排水ホース72の先端部は、前記外箱51の基台51Aの前部に配設したフィルタケース73の機内排水ホース接続口74に接続されている。
フィルタケース73は、上部に前記機内排水ホース接続口74を有しており、前端部にキャップ75が装着されている。このキャップ75には、図14及び図15に示すように、フィルタケース73内に収容されるフィルタ部材76が取付けられている。このフィルタ部材76は、後で詳述する。
【0079】
外箱51の前下部のキャップ75に対応した位置には、小扉77が設けられている。この構成により、小扉77を開けて、フィルタ部材76と一体にキャップ75をフィルタケース73から取り出すことができるようになっている。
フィルタケース73の後側の下部側方には排水弁81が接続されており、この排水弁81の出口部に排水パイプ82が接続されている。排水パイプ82の先端部は、外箱51の基台1Aから機外に臨み、図示しない機外排水ホースに接続されるようになっている。
【0080】
一方、フィルタケース73の後端部には循環ポンプ83が設けられている。この循環ポンプ83は、フィルタケース73、機内排水ホース72、及び排水口71を介して水槽55内の水を吸引するもので、周側部(図で上部)に吐出口84を有している。循環ポンプ83の吐出口84には、送水ホース85の基端部が接続されている。送水ホース85は、中間部を前記ベローズ66の周側方から上方へと配管しており、先端部を、ベローズ66の上部に設けた噴水ノズル86に接続して、前記洗濯槽60の内部に臨ませている。
【0081】
この結果、循環ポンプ83は、図13に矢印で示すように、前記排水口71から機内排水ホース72−フィルタケース73(フィルタ部材76)−循環ポンプ83の経路で吸入した水槽55内の水を、送水ホース85を通じて圧送し、噴水ノズル86から洗濯槽60の内部にシャワー状に供給するものである。又、水槽55(排水口71)と、機内排水ホース72と、フィルタケース73(フィルタ部材76)と、循環ポンプ83と、送水ホース85と、噴水ノズル86と、洗濯槽60とによって、循環ポンプ83が駆動して洗濯水が循環される循環水路87が構成される。又、この場合、フィルタ部材76は、水槽55の排水口71と排水弁81との間に配置される。
【0082】
フィルタケース73の前部の上部には、エアトラップ88が設けられており、このエアトラップ88と、外箱1内の最上部に配設した水位センサ89との間は、エアチューブ90によって接続されている。従って、水位センサ89は、水槽55内の水位を、機内排水ホース72、フィルタケース73、エアトラップ88、及びエアチューブ90を介して検知するようになっており、水位検知手段として機能するようになっている。
【0083】
その他、外箱51内の最上部には、給水弁91と、給水ケース92とが設けられている。このうち、給水弁91は、入口部が図示しない水道の蛇口に接続した機外給水ホース(図示せず)に接続され、出口部が接続パイプ93に接続されている。接続パイプ93の他端部は、給水ケース92に接続されている。給水ケース92は、内部に洗剤貯留部(図示せず)を有している。給水ケース92の底部には、機内給水ホース94の基端部が接続され、機内給水ホース94の他端部は、水槽55の上部に接続されている。従って、水道水は、給水弁91、給水ケース92を介して水槽55内に供給される。
【0084】
又、箱本体51Bの前面部の上部には、操作パネル95が設けられている。操作パネル95には、図11に示すように、操作スイッチからなる複数の入力部96及び運転状態等を表示する表示部97が設けられている。又、操作パネル95の裏側には、図13に示すように、マイクロコンピュータを有する制御回路98が設けられている。
【0085】
制御回路98には、水位センサ89からの水位検知信号と、振動センサ(図示せず)からの振動検知信号と、モータ57の回転を検知する回転センサ(図示せず)からの回転検知信号と、モータ57に流れる電流を検知する電流センサ(図示せず)からの電流検知信号と、温度を検知する温度センサ(図示せず)からの温度検知信号とが入力されるようになっている。この制御回路98は、回転センサからの回転検知信号に基づき、モータ57の回転数ひいては洗濯槽60の回転数を検知所要時間で除する演算をするようになっている。又、制御回路98は、これらの入力信号と、予め有する制御プログラムに基づき洗濯機負荷である、表示部97、モータ57、給水弁91、排水弁81等を制御する機能を有している。制御回路98は、後述するように、洗い、すすぎ、脱水の各行程を実行するように洗濯機負荷を制御するもので、本発明の制御手段を構成する。
【0086】
さて、上述のフィルタ部材76は、上述したように水槽55と排水弁81との間、即ち、洗濯水に接触する位置に設けられるものである。フィルタ部材76は、図14及び図15に示すように、リントフィルタ100と、このリントフィルタ100を支持する枠部材101とから形成されている。枠部材101は、リントフィルタ100を下側から受ける部材であり、樹脂製からなり、キャップ75に一体に形成されている。
リントフィルタ100は、洗濯機の前後方向に対して前後方向に延び、断面が凹状をなし、全体がメッシュ状で形成されている。このリントフィルタ100には、メッシュ部分を上側から覆うようにして汚れ粒子除去フィルタ102が固定されている。
【0087】
汚れ粒子除去フィルタ102は、複数の繊維、この場合2つの繊維E及び繊維Fを混在して構成さている。この繊維E及び繊維Fは、合成繊維又は天然繊維のどちらでも良いが、洗濯水に浸したときに互いにゼータ電位が異なる繊維で構成されている。即ち、繊維Eは、前述の繊維A又は繊維Cと同一の材料であり、繊維Fは、繊維B(繊維Eが繊維Aである場合)又は繊維D(繊維Eが繊維Cである場合)と同一の材料である。
汚れ粒子除去フィルタ102の繊維Eを、繊維Cで構成し、繊維Fを繊維Dで構成した場合、すすぎ時に第3の実施形態で説明した陽イオン界面活性剤が含まれる液を水槽55(洗濯槽60)に供給させても良い。
【0088】
次に、上記構成の作用について説明する。尚、洗濯槽60の中には洗濯物(図示せず)が予め収容されている。
本実施形態では、例えば、使用者が操作パネル95の入力部96を操作して通常の運転コース(洗い行程、すすぎ行程、脱水行程を行うコース)を選択すると、制御回路98は、入力部96から出力される信号に基づいて、まず洗濯物重量の検出を行う。洗濯物重量の検出は、洗濯槽60を所定の回転速度まで回転させ、それに要した時間と、その後、モータ57による洗濯槽60の駆動を停止させて洗濯槽60を惰性回転させ、それによって洗濯槽60の回転速度が所定の回転速度まで下降するのに要した時間とから演算するもので、洗濯物の重量をモータ57の回転負荷でもって検出するものである。この後、上記洗濯物重量の検出結果から、洗濯物重量を判定し、それに応じた、洗剤量の決定と、洗い行程及びすすぎ行程における水位の決定をする。この場合、モータ57の回転速度を検出する速度検出手段が、洗濯槽60内の洗濯物の重量を検出する重量検出手段となる。
又、制御回路98は、重量検出手段である速度検出手段から出力される信号に基づいて、洗濯物の量(負荷量)に対応して洗い行程時及びすすぎ行程時の洗濯槽60の正逆回転の制御を行っている。
【0089】
制御回路98は、重量検出後、給水弁91を開放して、洗い行程用に決定した水位(洗濯物が浸される水位)まで水道水を供給する。この場合、給水ケース92の洗剤貯留部には、制御回路98による洗剤量の判定に応じた量の洗剤、及び必要に応じて柔軟剤(陽イオン界面活性剤が含まれる液)が予め供給されている。尚、水道水は、洗剤と混ざって洗濯水となる。
【0090】
次に、制御回路98は、洗い行程を実行する。この洗い行程は、洗濯槽60を低速で正逆両方向に交互に回転させることにより行うものであり、これにより、洗濯槽60内に予め収容された洗濯物がバッフル62により掻き上げられて落とされる叩き洗いが繰り返し行われる。又、制御回路98は、洗い行程中、適宜循環ポンプ83を駆動して、水槽55(洗濯槽60)内の洗濯水を、水槽55の排水口71から排水し、循環水路87、即ち、水槽55(排水口71)と、機内排水ホース72と、フィルタケース73(フィルタ部材76)と、循環ポンプ83と、送水ホース85とを通るように送り、水槽55の開口部64の上部の噴水ノズル86から洗濯槽60内に向かってシャワー状に供給させる。これにより、洗濯槽60内の洗濯水は、洗濯槽60に戻される循環が行われると共に、循環水路87を流れる際にフィルタ部材76の汚れ粒子除去フィルタ102に接触するようになる。このとき、洗濯水中の汚れ粒子は、汚れ粒子除去フィルタ102を構成する繊維のうちゼータ電位の高い方の繊維B(又は繊維D)に吸着される。従って、汚れ粒子が除去された洗濯水が、噴水ノズル86から洗濯槽60内に向かって供給される。
【0091】
そして、予め設定された時間が経過すると、制御回路98は、洗濯槽60の回転を停止させると共に循環ポンプ83を停止させ、排水弁81を開放させて洗濯水の排水を行う。
次に、制御回路98は、すすぎ行程を実行する。すすぎ行程では、制御回路98は、排水弁81を閉鎖し、給水弁91を開放させて洗濯槽60内へ、所定水位まで給水する。この後、洗濯槽60を低速で正逆回転させることにより、洗濯槽60内の洗濯物はすすがれる。又、すすぎ水は、フィルタ部材76(汚れ粒子除去フィルタ102)に接触する。この場合、洗い時に汚れ粒子除去フィルタ102(繊維B又は繊維D)に吸着した汚れ粒子のゼータ電位及び汚れ粒子除去フィルタ102の繊維Cのゼータ電位は高くなり、汚れ粒子と繊維Dとの吸着力が弱くなる。そのため、汚れ粒子は、汚れ粒子除去フィルタ102から脱離し、洗濯水中に放出する。これにより、汚れ粒子除去フィルタの吸着力は、再生される。
【0092】
又、制御回路98は、所定時間後に、排水弁81を開放させる。これにより、水槽55(洗濯槽60)内の洗濯水(すすぎ水)は、水槽55の排水口71から機内排水ホース72、フィルタケース73(フィルタ部材76)、排水弁81、排水パイプ82及び機外排水ホースを通じて機外へ排出される。
ここで、本実施形態のすすぎ行程時では、循環ポンプ83は停止しているので、汚れ粒子は、洗濯槽60を経由せず(洗濯槽60に戻されず)に、すすぎ水の排水と共に機外に排出される。これにより、汚れ除去フィルタ102から離脱した汚れ粒子は、洗濯物に再付着しない。
【0093】
又、このすすぎ行程において、注水ケース92に柔軟剤(陽イオン界面活性剤が含まれる液)が供給されている場合、この柔軟剤は、すすぎ時に水槽55(洗濯槽60)内に供給される。ここで、汚れ粒子除去フィルタ102の繊維Eが繊維Cで構成され、繊維Fが繊維Dで構成され、すすぎ時に柔軟剤が水槽55(洗濯槽60)を介して汚れ粒子除去フィルタ102に供給された場合、第3の実施形態に示したように、繊維F(繊維D)のゼータ電位は正側の値に早く変わるため、汚れ粒子をすすぎ水の排水と共に早く機外に排出することができ、汚れ粒子除去フィルタ45の吸着力を早く再生させることができる。
【0094】
次に、制御回路98は、脱水行程を実行する。脱水行程では、制御回路98は、排水弁81を開放した状態で洗濯槽60を一方向に高速回転をさせ、洗濯物に対して遠心脱水を行う。
脱水行程が終了することにより、通常の運転コースが終了する。
【0095】
上記構成によれば、洗い時には、洗濯槽60の洗濯水を汚れ粒子除去フィルタ102に接触させた後、洗濯槽60に戻すように循環させているので、洗い時の洗濯水中から汚れ粒子を汚れ粒子除去フィルタ102で除去することができる。更に、すすぎ時には、循環ポンプ83を停止させているので、汚れ粒子除去フィルタ102から脱離した汚れ粒子は、洗濯槽60を経由せずに排水弁81から排出される。これにより、すすぎ時に粒子除去フィルタ102から脱離した汚れ粒子が、洗濯槽60内の洗濯物に再付着してしまうことを防止することができる。
【0096】
その他、洗濯機がドラム式である場合においても、第1から第3の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
尚、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定されず、次のような変形、拡張が可能である。
【0097】
第1の実施形態ではフィルタ部材29(汚れ粒子除去フィルタ45)を、循環水路25の入口26、即ち洗濯槽7の下部に設けて説明したが、それ以外の場所、例えば、循環水路25の循環口30付近、リントフィルタ31の内部に設けても良い。フィルタ部材29(汚れ粒子除去フィルタ45)を洗濯槽7の上部(リントフィルタ31)に設けることにより、洗濯水の上層に浮遊する汚れ粒子を効率良く吸着することができる。
【0098】
第1の実施形態のリントフィルタ31及び第4の実施形態のリントフィルタ100を、汚れ粒子除去フィルタを構成する繊維で構成し、このリントフィルタ31,100を汚れ粒子除去フィルタとしても良い。
第4の実施形態の汚れ粒子除去フィルタ102の繊維を、第1の実施形態に示すように、極細繊維で構成としても良い。又、繊維A、B,C,D,E,Fの表面にシボを設けたり、断面を例えば星形にしたりして、汚れ粒子と接触する表面積を大きくする構成としても良い。
【0099】
繊維A、B,C,D,E,Fとして挙げた材料は、一例に過ぎず、適宜変更し得る。又、汚れ粒子除去フィルタ45,102は、3種類以上の繊維から構成しても良い。この場合、少なくともそのうち2つの繊維が、洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる材料であり、且つ、ゼータ電位の差が、上述した所定の条件(pHとゼータ電位の関係、陰イオン界面活性剤の濃度とゼータ電位の関係)を満たすものである。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。
【符号の説明】
【0100】
図面中、5は水槽、7は洗濯槽、45は汚れ粒子除去フィルタ、37は排水弁、55は水槽、60は洗濯槽、81は排水弁、102は汚れ粒子除去フィルタを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽と、
前記水槽内に設けられ、洗濯物及び洗濯水が収容される洗濯槽と、
前記洗濯水に接触する位置に設けられた汚れ粒子除去フィルタとを備え、
前記汚れ粒子除去フィルタは、洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる複数の繊維を混在して構成され、
前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のゼータ電位の差は、当該汚れ粒子除去フィルタがpH9以上の洗濯水に浸されたときよりも、pH9未満の洗濯水に浸されたときの方が小さいことを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
水槽と、
前記水槽内に設けられ、洗濯物及び洗濯水が収容される洗濯槽と、
前記洗濯水に接触する位置に設けられた汚れ粒子除去フィルタとを備え、
前記汚れ粒子除去フィルタは、洗濯水に浸したときにゼータ電位が異なる複数の繊維を混在して構成され、
前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のゼータ電位の差は、陰イオン界面活性剤の濃度が低いほど小さくなることを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
前記水槽の底部と接続された排水弁を備え、
前記汚れ粒子除去フィルタは、前記水槽と前記排水弁との間に配置され、
洗い時には、前記洗濯槽の洗濯水を前記汚れ粒子除去フィルタに接触させた後、前記洗濯槽に戻すように循環させ、すすぎ時には、前記洗濯槽の水を前記汚れ粒子除去フィルタに接触させた後、前記洗濯槽を経由せずに前記排水弁から排出させることを特徴とする請求項1又は2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記汚れ粒子除去フィルタの繊維は、平均繊維径が10μm以下の極細繊維からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のうちゼータ電位が高い方の繊維に、ポリアクリルアミド又はヒドロキシプロピルセルロースによる表面処理が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のうちゼータ電位が高い方の繊維の表面処理として、アミド基による塩基性基処理が施されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のうちゼータ電位が高い方の繊維の表面処理として、銀イオンを付着させたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記汚れ粒子除去フィルタを構成する複数の繊維のうちの2つの繊維のうちゼータ電位が低い方の繊維の表面処理として、カルボキシル基による酸性基処理が施されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−41643(P2011−41643A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190999(P2009−190999)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(502285664)東芝コンシューマエレクトロニクス・ホールディングス株式会社 (2,480)
【出願人】(503376518)東芝ホームアプライアンス株式会社 (2,436)
【Fターム(参考)】