説明

洗濯機

【課題】回転ドラムの内部の洗濯物に水蒸気を集中して噴射し、少量の水蒸気の使用により所望の効果を実現可能として、電力消費量を低減し、運転コストの低下を図り得る洗濯機を提供する。
【解決手段】洗濯水槽2の前部の開口20の周縁の固定フランジ2aに蒸気噴射ノズル8を固定し、蒸気管51を介して蒸気発生器7に接続する。蒸気噴射ノズル8は、蒸気発生器7が発生する水蒸気を、回転ドラム3の底面の中心よりも下側で、回転ドラム3の下部周面の長さ方向中央位置よりも底部側の範囲に向けて集中噴射する。このように噴射される水蒸気は、回転ドラム3の内部の洗濯物Aの全体に均等に降り掛かり、少量の水蒸気の使用により所望の効果が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯水槽内で回転する回転ドラムの内部に水蒸気を噴射する蒸気噴射ノズルを備える洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、斜めドラム式の洗濯機が広く普及している。この洗濯機は、有底円筒形の洗濯水槽を、開口の側を上向きとし、水平面に対して軸心が傾斜した姿勢で弾性支持し、この洗濯水槽の内部に有底円筒形の回転ドラムを、一側の開口を洗濯水槽の開口と同側に向け、同軸上での回転可能に配した構成となっている。洗濯物は、回転ドラムの内部に投入され、洗濯水槽の底部に溜まる洗濯水に浸されて、回転ドラムの回転による持ち上げ及び落下を繰り返して洗濯される。
【0003】
この種の洗濯機において、洗濯性能を高め、また種々の付加機能を実現する提案がなされている。この種の提案の一つとして、蒸気噴射ノズルを備え、該蒸気噴射ノズルが噴射する水蒸気を回転ドラムの内部に供給するように構成された洗濯機がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1、2の洗濯機において、回転ドラムの内部へ噴射される水蒸気は、洗濯運転中には、洗濯水槽内の洗濯水の温度を高め、洗濯物の汚れ落ちを促進する作用をなし、また洗濯物に高温の水蒸気を当てることで殺菌作用をなすとされている。
【0005】
更に特許文献1の洗濯機においては、乾燥運転中にも水蒸気を噴射供給し、乾燥途中の洗濯物に水蒸気を当てて、該洗濯物のしわを取り除くようにしている。このように、回転ドラムの内部に水蒸気を噴射供給することにより、洗濯性能を高めることができ、また洗濯物の殺菌、乾燥時のしわ取り等の付加機能を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−141985号公報
【特許文献2】特表2008−534049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上の如き特許文献1、2に開示された洗濯機において、水蒸気は、洗濯水槽及び回転ドラムの内部に溜まる洗濯水の加熱を主たる目的とし、洗濯水槽の開口部周縁に設けた蒸気噴射ノズルから回転ドラム内部の全体に拡散噴射されており、このためには、大量の水蒸気が必要であり、所要量の水蒸気を発生するために多大の電力を消費し、洗濯機の運転コストを押し上げるという問題がある。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、回転ドラムの内部の洗濯物に水蒸気を集中して噴射し、少量の水蒸気の使用により所望の効果を実現可能とし、電力消費量を低減し、運転コストの低下を図り得る洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る洗濯機は、有底円筒形の洗濯水槽と該洗濯水槽内で回転する有底円筒形の回転ドラムとが、夫々の開口の側を上向きとし、水平面に対して軸心を傾けて支持してあり、前記洗濯水槽の開口の周縁部に、前記回転ドラムの内部に向けて水蒸気を噴射する蒸気噴射ノズルを備える洗濯機において、前記蒸気噴射ノズルは、前記水蒸気を、前記回転ドラムの底面の中心よりも下側で、前記回転ドラムの下部周面の長さ方向中央位置よりも底部側の範囲に向けて集中噴射すべく設けてあることを特徴とする。
【0010】
本発明においては、洗濯水槽の開口の周縁部に設けた蒸気噴射ノズルが、回転ドラムの底面の中心位置から、回転ドラムの下部周面の長さ方向中央位置までの範囲に集中するように水蒸気を噴射する。このように噴射される水蒸気は、回転ドラムの底部近傍に堆積する洗濯開始前の洗濯物の全体に降り注ぎ、該洗濯物の汚れ成分を有効に除去する。また乾燥運転中に十分に乾燥した洗濯物に当てることで、該洗濯物Aの「しわ」を除去する作用をなす。前記範囲に集中して噴射される水蒸気は、回転ドラムの回転により持ち上げられて落下する洗濯物に確実に当たり、洗濯効果及び乾燥効果の向上に寄与できる。また回転ドラムの底面又は内周面に張り付いた洗濯物に対しても水蒸気を確実に当てることができる。
【0011】
また本発明に係る洗濯機は、前記蒸気噴射ノズルが、前記洗濯水槽の周縁部の外側に径方向外向きに立ち上がるように一体形成されたノズル管と、該ノズル管の内面の前記洗濯水槽の内側に開口する噴出口近傍に、前記洗濯水槽の開口の側から前記ノズル管の中心に向けて張り出すように設けられた当て板とを備える。
【0012】
この発明においては、洗濯水槽の周縁部の外側に径方向外向きにノズル管を立設し、このノズル管の内側の噴出口の近傍に当て板を設けることで蒸気噴射ノズルを形成する。ノズル管の噴出口から噴出する水蒸気の方向は、その一部が当て板に当たることで変化し、前述した方向への噴射が可能となる。ノズル管は、径方向に2つ割りされる金型を使用する洗濯水槽の成型の過程で、当て板を含めて一体成型することができ、簡素な構成にて目的を達成することができる。
【0013】
更に本発明に係る洗濯機は、前記当て板の前記噴出口と逆側の面が、張り出し端部に向けて前記噴出口に近付く向きに傾斜する傾斜面としてあることを特徴とする。
【0014】
この発明においては、水蒸気が当て板の傾斜面に当たり、該水蒸気の方向転換が滑らかに生じて、所望の噴射方向を確実に実現する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る洗濯機においては、蒸気噴射ノズルから回転ドラムの内部への水蒸気の噴射が所定の方向に集中して生じ、回転ドラムの内部の洗濯物に直接的に降り掛かるから、少量の水蒸気の使用により所望の効果を実現することができ、蒸気発生のための電力消費量を低減し、運転コストの低下を達成することが可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る洗濯機の外観を略示する斜視図である。
【図2】本発明に係る洗濯機の内部構成を略示する縦断面図である。
【図3】蒸気供給手段の構成を示す模式図である。
【図4】蒸気噴射ノズルの拡大断面図である。
【図5】蒸気噴射ノズルを構成するノズル管を縦割りして示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係る洗濯機の外観を略示する斜視図、図2は、本発明に係る洗濯機の内部構成を略示する縦断面図である。
【0018】
図2に示すように本発明に係る洗濯機は、外装を構成する外箱1の内部に洗濯水槽2及び回転ドラム3を備えている。洗濯水槽2は、一側に開口20を備える大径の有底円筒体であり、外箱1の底面に立設された複数本の支持脚21(1本のみ図示)により、前記開口20の側を上とし、水平面に対して軸心を傾けた傾斜姿勢を保って弾性支持されている。洗濯水槽2の傾き角度は、水平面に対して数°〜十数°程度である。
【0019】
外箱1の前面(図2の左側面)には、洗濯水槽2の前記開口20を臨む位置に、蓋体10により開閉自在に洗濯物Aの投入口11が開設されており、この投入口11と前記開口20との間は、ベローズ12により液密に封止されている。なお本願出願人は、洗濯水槽2の開口20にも蓋板(内蓋)を備え、該蓋板が、外箱1の投入口11の蓋体10(外蓋)と連動して開閉される蓋構造を先に提案しており、本発明の洗濯機においても同様の蓋構造を採用し得ることは言うまでもない。
【0020】
洗濯水槽2の内部には、回転ドラム3が同軸をなして支持されている。該回転ドラム3は、洗濯水槽2よりもやや小径の有底円筒体であり、一側には洗濯物Aの投入のための開口30が開設されている。このような回転ドラム3は、洗濯水槽2の開口20の内側に前記開口30を臨ませ、洗濯水槽2の底部中央に固設された駆動モータ4の出力軸40の端部に同軸をなして連結され、該駆動モータ4からの伝動により、洗濯水槽2の内部にて回転する。
【0021】
回転ドラム3は、開口30の外側に周設された流体バランサ31を備えており、回転ドラム3の回転に伴う振動を吸収するようになしてある。回転ドラム3の駆動モータ4は、洗濯水槽2の底板の外側に連設されたモータ室41の内部に固設してある。駆動モータ4の出力軸40は、洗濯水槽2の内部に、該洗濯水槽2の底板を液密に貫通して突出しており、回転ドラム3は、この突出端部に連結してある。
【0022】
図2に示すように回転ドラム3の周壁には、多数の小孔32が全面に亘って貫通形成されており、また回転ドラム3の内面には、軸長方向に延びるバッフル33が周方向に等配をなして複数突設されている。なお図2中には、小孔32の一部と一つのバッフル33のみが図示されている。
【0023】
以上の如く構成された洗濯機の洗濯運転は、外箱1前面の蓋体10により投入口11を開放して洗濯物Aを投入し、該蓋体10を閉止した後、後述するように、洗濯水槽2の内部に適量の洗濯水を給水する一方、回転ドラム3の内部に後述するように水蒸気を噴射、供給した後、駆動モータ4を駆動し、回転ドラム3を回転せしめて実施される。
【0024】
図1に示すように、蓋体10は、開閉のために把持される把持部13を備え、また外箱1の前面には、蓋体10の近傍にドア開ボタン14が設けてあり、該蓋体10は、把持部13又はドア開ボタン14の操作により開閉される。外箱1の前面に設けた投入口11は、洗濯水槽2及び回転ドラム3の開口20,30に臨ませてあり、投入口11から投入された洗濯物Aは、前記開口20,30を経て回転ドラム3の内部に導入され、図2中に2点鎖線により示すように、傾斜支持された回転ドラム3の底部近傍に堆積された状態で位置する。
【0025】
前述のように回転ドラム3の周壁には、多数の小孔32が貫通形成され、また回転ドラム3の内面には、複数のバッフル33が突設されているため、回転ドラム3の内部の洗濯物Aは、前記小孔32を経て回転ドラム3内に流入する洗濯水中に浸され、前記バッフル33の作用による持ち上げ及び落下を含めて洗濯水と共に攪拌されて洗濯される。
【0026】
図1に示すように外箱1の前面上部には、各種の操作のための操作キー及び各種の表示のための表示部を備える操作パネル15が設けてある。該操作パネル15は、これの内側に位置して外箱1の内部に設けた運転制御部16(図2参照)に接続してあり、洗濯運転、脱水運転及び乾燥運転を含む洗濯機の運転は、操作パネル15の操作に応じた運転制御部16の動作により実行される。これらの洗濯運転、脱水運転及び乾燥運転は、夫々公知の手順で実施されるものであり、詳細な説明は省略する。
【0027】
外箱1の後部上面には、水道への接続端となる給水口17が設けてあり、該給水口17は、図2に示すように、外箱1の内側に設けた給水弁18(図2参照)に接続されている。給水弁18は、複数の切り換え位置を有する多位置切り換え形の電磁弁である。給水弁18の一つの出口は、給水管19を介して洗濯水槽2の底板近傍の上部周面に接続されており、給水弁18が第1位置に切り換えられた場合、給水口17への給水は、給水弁18及び給水管19を経て洗濯水槽2の内部に供給される。なお給水管19の中途には、公知のように洗剤ケースを配置し、給水と共に適量の洗剤が導入されるように構成することができる。
【0028】
また洗濯水槽2には、最下位置となる底板近傍の周面に導水管22が接続されており、この導水管22は、外箱1内側の前下部に固定支持された筒形のフィルタケース23に接続されている。フィルタケース23の内部には、繊維屑等の異物を捕捉するリントフィルタ24が収容されている。フィルタケース23の下部は、排水弁25を介して外箱1の底面に沿って敷設された排水管26に接続されている。またフィルタケース23の後端部には、循環ポンプ27を介して戻し管28が接続されており、該戻し管28は、洗濯水槽2の前部に沿って上方に延長され、該洗濯水槽2の前部に、開口20の外側を囲繞するように周設された固定フランジ2aの上部に差し込み接続されている。
【0029】
洗濯水槽2内に給水される洗濯水は、導水管22を経てフィルタケース23に導入され、該フィルタケース23の内部に充満する。フィルタケース23に付設された循環ポンプ27は、前述した洗濯運転中に、連続又は間欠的に駆動される。この駆動によりフィルタケース23の内部の洗濯水は、循環ポンプ27に吸い込まれて昇圧され、戻し管28を経て洗濯水槽2の前上部に送水されて、該戻し管28の先端から回転ドラム3内部の洗濯物Aに降り注がれる。この間フィルタケース23の内部には、導水管22を経て洗濯水槽2内部の洗濯水が連続的に通水し、洗濯水槽2からフィルタケース23の内部を通って回転ドラム3内に戻る洗濯水の循環が生じる。フィルタケース23内に設けたリントフィルタ24は、循環する洗濯水中に含まれる繊維屑等の異物を捕捉する作用をなす。
【0030】
フィルタケース23の下部に設けられた排水弁25は、洗濯運転の完了後に開放される。この開放により洗濯水槽2内部の洗濯水は、導水管22及びフィルタケース23を経て排水管26に排出され、該排水管26が接続される下水管に排水される。この排水に際しても、洗濯水中に含まれる異物は、フィルタケース23内部のリントフィルタ24に捕捉されるから、排水管26を経て下水管に排出される虞れがなく環境負荷の軽減を図ることができる。
【0031】
給水弁18の他の出口は、給水管50を介して水タンク5に接続してあり、給水口17への給水は、給水弁18が第2位置に切り換えられることで水タンク5に供給され、該水タンク5内に一旦貯留される。水タンク5は、洗濯水槽2の上側の外箱1の内部空間内に配してあり、これの前側に配した定量ポンプ6及び蒸気発生器7に接続されている。
【0032】
図3は、水タンク5、定量ポンプ6及び蒸気発生器7を備える蒸気供給手段の構成を示す模式図である。
【0033】
水タンク5は、上部に接続された給水管50からの給水を内部に貯留する。該水タンク5は、一定水位を超えた水を排水するオーバフロー管52が接続されている。オーバフロー管52に送り出される排水は、乾燥風が循環する循環風路の内部に供給し、循環風路内を流れる乾燥風を接触冷却し、除湿するための冷却水として再利用される。また導水管63に送り出される水は、洗濯水槽2の内部に供給し、洗濯水の一部として再利用される。
【0034】
図2中には、乾燥風の循環風路の図示を省略してある。この循環風路は、洗濯水槽2の内部に開口する導入口と導出口とを、洗濯水槽2の外側を巡るダクトにより連絡し、その途中に、塵埃捕捉用のフィルタ、乾燥風を起風する送風ファン、及び乾燥風を加熱するヒータを配設した公知の構成を有するものである。
【0035】
乾燥風は、ヒータにより加熱された状態で導入口を経て回転ドラム3内に導入され、該回転ドラム3内で回転する洗濯物Aに当たり、該洗濯物Aから水分を奪って導出口を経て循環風路内に戻る。前記冷却水は、ダクト内部の導出口の近傍に流水、滞留させてあり、戻り風を冷却し、含有水分を液化させて乾燥風を除湿するために使用される。冷却された戻り風は、フィルタを通過して塵埃を捕捉された後、ヒータにより再加熱されて回転ドラム3の内部に導入される。回転ドラム3内の洗濯物Aは、以上のような乾燥風の循環により乾燥せしめられる。
【0036】
定量ポンプ6は、弾性チューブ60と押圧体61とを備えるチューブポンプとして構成されている。押圧体61は、周方向の複数か所に径方向外向きに突出する押圧片を備える円板であり、モータ62の出力端に固定され、該モータ62の駆動により回転する。弾性チューブ60は、押圧体61の外側を囲繞するように円形に曲げて配してある。弾性チューブ60の一端は水タンク5の下部に接続され、弾性チューブ60の内部には、水タンク5の貯留水が導入されるようになしてある。弾性チューブ60の他端は、蒸気発生器7に接続されている。
【0037】
押圧体61に設けた押圧片は、図示のように、夫々の先端で弾性チューブ60の対応部位を押し潰し、押圧体61の回転に応じて移動する。この移動により弾性チューブ60内の水は、他端に向けて押し出され、蒸気発生器7に送り出される。押圧体61の押圧片は、複数(図においては3つ)設けてあり、夫々が弾性チューブ60を押し潰した状態で移動することから、蒸気発生器7には、押圧体61の回転に応じて定量の水が連続して送り出される。
【0038】
蒸気発生器7は、ハウジング70の平坦な底面をヒータ線71が埋設された熱板72により被覆した構成となっている。前記定量ポンプ6からの給水は、ハウジング70の内部に上部に開口する給水口から供給され、該給水口の下方に対向する熱板72の上に流下する。熱板72は、ヒータ線71の通電により発熱し、流下する水は、熱板72との接触加熱により蒸発し、ハウジング70の内部に水蒸気が発生する。
【0039】
蒸気発生器7の熱板72には、該熱板72の温度を検出する温度検出器73が付設してある。また熱板72は、ハウジング70の天面にも延長されており、この延長部には、異常温度検出器74が設けてある。温度検出器73の検出温度は、ヒータ71の通電のオンオフ制御のために使用されている。異常温度検出器74は、例えば、温度検出器73の異常によりヒータ71のオンオフ制御が正常に実行されず、熱板72が過熱状態となったことを検出し、ヒータ71への通電を強制遮断するために設けてある。このような制御により、定量ポンプ6の異常、給水路の詰まり等に起因する給水不足時の蒸気発生器7の異常過熱を防止し、安全性を高めることができる。この場合、表示パネル15に所定の表示を行わせ、使用者に異常発生を報知するのが好ましい。
【0040】
ハウジング70の内部には、底面の一側の段上げ部に開口する送出口が開設してある。この送出口は、蒸気管51を介して後述する構成を有する蒸気噴射ノズル8に接続してあり、ハウジング70の内部に発生する水蒸気は、蒸気管51を経て蒸気噴射ノズル8に送給され、該蒸気噴射ノズル8から噴射される。送出口は、段上げ部に設けてあるから、熱板72上に流下し、水蒸気となる前の熱水が蒸気噴射ノズル8に送給されることがなく、蒸気噴射ノズル8から水蒸気のみを噴射させることができる。
【0041】
蒸気噴射ノズル8は、図2に示すように、洗濯水槽2の前部に前述の如く設けた固定フランジ2aの上部に前記戻し管28と並べて配してあり、該蒸気噴射ノズル8が噴射する水蒸気は、回転ドラム3の内部に前部の開口30を経て供給されるようになしてある。本発明の洗濯機の特徴は、蒸気噴射ノズル8の構成にあり、該蒸気噴射ノズル8は、図2中に矢符により示す範囲、即ち、回転ドラム3の底面においては中心よりも下側の範囲(図中にRとして示す範囲)であり、回転ドラム3の下部周面においては、長さ方向の中央位置よりも底部側の範囲(図中にH/2として示す範囲:Hは回転ドラム3の長さ)に水蒸気を集中噴射すべく構成してある。
【0042】
図4は、蒸気噴射ノズルの拡大断面図、図5は、蒸気噴射ノズルを構成するノズル管を縦割りして示す斜視図である。これらの図に示すように、蒸気噴射ノズル8は、前記固定フランジ2aの外側に、該固定フランジ2aに対して垂直な方向、即ち、洗濯水槽2の径方向外向きに立ち上がるように一体形成されたノズル管80を備えている。
【0043】
ノズル管80は、洗濯水槽2の内側(図4及び図5の下側)に開口する噴出口8aを有しており、該噴出口8aの近傍の内面には、ノズル管80の中心に向けて張り出すように当て板81が設けてある。図4の下半部には、ノズル管80の横断面が併せて示してあり、この横断面及び図5に示すように当て板80は、洗濯水槽2の開口20の側(図4及び図5の左側)から噴射口8aの略半分を占める半月形状を有し、その上面82(前記開口端のと逆側の面)は、張り出し端部が下となるように、即ち、噴出口8aに近付く向きに傾斜する傾斜面としてある。
【0044】
以上の如く構成されたノズル管80の上端部には、図4中に2点鎖線により示すように前記蒸気管51が、嵌め込み固定してあり、該蒸気管51から送給される水蒸気は、上部の開口からノズル管80に導入され、該ノズル管80の内部を下向きに流れ、下部に開口する噴出口8aから噴出する。この水蒸気の一部は、図4中に実線の矢符により示すように、噴出口8aから下方に直接噴出しようとするが、残りの水蒸気は、破線の矢符により示すように、前述の如く設けられた当て板81の上面82に当たり、該上面82の傾斜に沿って方向を転換して下方に向かう水蒸気の流れに当たる。
【0045】
従って、ノズル管80の噴出口8aから実際に噴出する水蒸気の方向は、図中に白抜矢符にて示すように、ノズル管80の軸心線に対して一側に傾いた方向となる。この傾きの方向は、当て板81の張り出し位置と逆の方向、即ち、洗濯水槽2及び回転ドラム3の底面に向かう方向であり、図2中に矢符により示すような水蒸気の噴射が実現される。
【0046】
水蒸気の噴射方向は、当て板81の張り出し位置及び長さ、並びに当て板81の上面82の傾斜角度の設定によって適正に定めることができ、またノズル管80の噴出口8aからの水蒸気の噴出は、当て板81により覆われていない半部に集中して生じるから、前述した範囲への水蒸気の集中噴射を実現することができる。
【0047】
蒸気噴射ノズル8を構成するノズル管80は、前述したように、固定フランジ2aの外側に洗濯水槽2の径方向外向きに立設されている。このようなノズル管80は、径方向に2つ割りされる金型を使用する洗濯水槽2の成型の過程で、噴出口8aの近傍に設けられる当て板81を含めて一体成型することが可能であり、所望の位置への水蒸気の噴射を実現する蒸気噴射ノズル8を簡易に構成することができる。
【0048】
以上のような回転ドラム3の内部への水蒸気の噴射は、例えば、洗濯運転に際し、洗濯水の給水前、又は洗濯水の給水と並行して実施される。このとき回転ドラム3内部の洗濯物Aは、図2中に2点鎖線により示すように、回転ドラム3の底部近傍に堆積された状態で位置しており、前述の範囲に向けて噴射される水蒸気は、熱水の水滴となって洗濯物Aの上部全体に降り注ぎ、該洗濯物Aを加熱すると共に濡らして汚れ成分を柔かくし、該汚れ成分を除去する作用を促進させる。また洗濯物が加熱されることにより、洗剤成分が活性化される。これらの作用により、洗濯水の給水後に実施される洗濯運転における洗濯効果を高めることができる。
【0049】
このような水蒸気の噴射は、洗濯水に浸される前の洗濯物Aに対して直接なされ、洗濯水の加熱することを目的としないから、水蒸気の発生に要する電力消費量を低減し、運転コストの低下を図ることができる。
【0050】
また回転ドラム3の内部への水蒸気の噴射は、例えば、乾燥運転に際し、乾燥完了の直前に実施される。噴射される水蒸気は、十分に乾燥した洗濯物Aに当たり、わずかな湿り気を与えて乾燥により硬くなった繊維をほぐし、該洗濯物Aに生じている「しわ」を除去する作用をなす。従って、乾燥後の洗濯物Aの仕上がりが良好となる。特に、タオル地等の厚物の洗濯物は、起毛されて肌触りも良くなる。
【符号の説明】
【0051】
2 洗濯水槽
3 回転ドラム
8 蒸気噴射ノズル
20 (洗濯水槽の)開口
80 ノズル管
81 当て板
82 上面(傾斜面)
8a 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒形の洗濯水槽と該洗濯水槽内で回転する有底円筒形の回転ドラムとが、夫々の開口の側を上向きとし、水平面に対して軸心を傾けて支持してあり、前記洗濯水槽の開口の周縁部に、前記回転ドラムの内部に向けて水蒸気を噴射する蒸気噴射ノズルを備える洗濯機において、
前記蒸気噴射ノズルは、前記水蒸気を、前記回転ドラムの底面の中心よりも下側で、前記回転ドラムの下部周面の長さ方向中央位置よりも底部側の範囲に向けて集中噴射すべく設けてあることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記蒸気噴射ノズルは、前記洗濯水槽の周縁部の外側に径方向外向きに立ち上がるように一体形成されたノズル管と、該ノズル管の内面の前記洗濯水槽の内側に開口する噴出口近傍に、前記洗濯水槽の開口の側から前記ノズル管の中心に向けて張り出すように設けられた当て板とを備える請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記当て板の前記噴出口と逆側の面は、張り出し端部に向けて前記噴出口に近付く向きに傾斜する傾斜面としてある請求項2に記載の洗濯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−67297(P2011−67297A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−219787(P2009−219787)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】