説明

洗濯機

【課題】本発明は、回転ドラムの振れ回りによる振動や騒音の発生を抑制しつつ、回転ドラムの高速回転への移行を精度よく行うことができる洗濯機を提供する。
【解決手段】本発明は、外槽10の内側に配置されて洗濯物の洗濯及び脱水を行う回転ドラム8を有する洗濯機において、前記外槽10と前記回転ドラム8との間のクリアランスBを検知するクリアランス検知手段100と、前記クリアランス検知手段100により検知した前記クリアランスBに基づいて、前記回転ドラム8の高速回転域への移行可否を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯及び脱水を行う洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗濯機は、収容された衣類等(洗濯物)の洗濯及び脱水を行う回転ドラムと、水を溜める外槽と、ばねや減衰器を介して外槽を保持する筺体との3つの要素で主に構成されている。洗濯後には回転ドラムが回転することで遠心力が作用して洗濯物の脱水が行われる。
洗濯物を効率的に乾燥させるためには遠心脱水を十分に行う必要があり、回転ドラムはより高速で回転させることが望ましい。一方、昨今では回転ドラムを駆動するモータの高出力化によって、回転ドラムやその回転シャフト等がそれに加わる荷重で弾性変形する場合がある。この際、回転ドラム内での洗濯物の分布に偏りがあると、回転軸がぶれて回転ドラムが振れ回る場合がある。そして、回転ドラムが振れ回ると、回転ドラムと外槽とが接触して騒音や振動を発生する。また、回転シャフトを介して回転ドラムの振れが外槽に伝達されると、外槽が筺体と接触して更に騒音や振動が大きくなる場合もある。
また、昨今の洗濯機においては、筺体の小型化や回転ドラムの大型化によって、外槽と回転ドラムとの隙間(クリアランス)がますます小さくなってきている。そのため、回転ドラムの振れ回りによる振動及び騒音が、従来よりも更に大きくなる傾向にある。
【0003】
従来、回転ドラムの振れ回りを防止する技術としては、回転ドラムの回転軸が水平又は傾斜する洗濯機において、回転ドラム内で洗濯物がその回転軸に沿う方向に偏った場合、具体的には、回転ドラムのモータ側(洗濯機の後部)から離れて回転ドラムの開口側(洗濯機の前部寄り)に洗濯物が偏った場合のアンバランス量を検出することで、回転ドラムの高速回転への移行を禁止するように制御する洗濯機が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような洗濯機によれば、回転ドラム内の洗濯物のアンバランス量が所定の閾値を超えた際に回転ドラムの高速回転への移行を禁止するので、回転ドラムの振れ回りによる振動及び騒音の発生を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−311885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、洗濯機の外槽は、前記したように、ばねや減衰器を介して筺体内に支持されている。したがって、回転ドラムが回転している際の外槽は、回転ドラムと異なる挙動を示すこととなる。
しかしながら、従来の洗濯機(例えば、特許文献1参照)においては、この外槽と回転ドラムとのクリアランスとは無関係に、回転ドラム内の洗濯物のアンバランス量が所定の閾値を超えた際に回転ドラムの振れ回りが生じると推定して回転ドラムの高速回転への移行禁止判定を行う。その結果、従来の洗濯機では、外槽の挙動によっては、喩え回転ドラム内で洗濯物のアンバランス量が生じていても外槽と回転ドラムとが接触しない場合があるし、またこれとは逆に、所定の閾値を超えるまでにはアンバランス量が生じていなくても外槽と回転ドラムとが接触する場合もある。
したがって、従来の洗濯機においては、回転ドラムの高速回転への移行を精度よく行うことができない虞がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、回転ドラムの振れ回りによる振動や騒音の発生を抑制しつつ、回転ドラムの高速回転への移行を精度よく行うことができる洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明は、外槽の内側に配置されて洗濯物の洗濯及び脱水を行う回転ドラムを有する洗濯機において、前記外槽と前記回転ドラムとの間のクリアランスを検知するクリアランス検知手段と、前記クリアランス検知手段により検知した前記クリアランスに基づいて、前記回転ドラムの高速回転域への移行可否を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転ドラムの振れ回りによる振動や騒音の発生を抑制しつつ、回転ドラムの高速回転への移行を精度よく行うことができる洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る洗濯機の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る洗濯機における筐体の一部の記載を省略してその内部の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る洗濯機における内部の構造を側面から見た様子を示す側面内部構造図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る洗濯機における背面カバーを取り外してその内部の構造を示す背面図である。
【図5】図2のA−A線における部分拡大断面図である。
【図6】(a)は、図5のD部の部分拡大図であり、クリアランス検知手段で検知するクリアランスを形成する外槽と回転ドラムとの位置関係を示す部分拡大図、(b)は、外槽との間にクリアランスを形成する回転ドラムの変形例を説明するための部分拡大図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る洗濯機における制御装置が回転ドラムの回転速度を制御する際に実行する手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のE部に対応する部分拡大図である。
【図9】本発明の第2実施形態での外槽と回転ドラムの開口部との隙間に洗濯物が入り込んだときの様子を示す図5のE部に対応する部分拡大図である。
【図10】本発明の第2実施形態におけるクリアランス検知手段を構成する反射部の第1変形例を示す部分拡大図であり、図5のE部に対応する部分拡大図である。
【図11】本発明の第2実施形態におけるクリアランス検知手段を構成する反射部の第2変形例を示す部分拡大図であり、図5のE部に対応する部分拡大図である。
【図12】本発明の第2実施形態での流体バランサに対して反射部を設ける態様を模式的に示す斜視図である。
【図13】本発明の第2実施形態での流体バランサに対して反射部を設ける他の態様を模式的に示す斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態でのクリアランス検知手段を洗浄する自動洗浄機構を説明するための部分拡大図であり、図5のE部に対応する部分拡大図である。
【図15】本発明の第3実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。
【図16】本発明の第3実施形態での流体バランサに対して永久磁石を設ける態様を模式的に示す斜視図である。
【図17】本発明の第4実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。
【図18】本発明の第5実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。
【図19】本発明の第5実施形態でのクリアランス検知手段の変形例を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の洗濯機は、回転ドラムと外槽のクリアランスを検知するクリアランス検知手段を備え、クリアランス検知手段により検知したクリアランスに基づいて、回転ドラムの高速回転域への移行可否を制御する制御装置を備えていることを主な特徴とする。
以下に、本発明の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。本発明の実施形態に係る洗濯機としては、洗濯の対象となる衣類等(以下、単に「洗濯物」と称することがある)を洗濯し、脱水し、及び乾燥する洗濯乾燥機について説明するが、洗濯及び脱水のみを行うものについても適用することができる。
【0011】
(第1実施形態)
次に参照する図1は、本発明の第1実施形態に係る洗濯機の外観を示す斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る洗濯機における筐体の一部の記載を省略してその内部の構造を示す斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る洗濯機における内部の構造を側面から見た様子を示す側面内部構造図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る洗濯機における背面カバーを取り外してその内部の構造を示す背面図である。図5は、図2のA−A線における部分拡大断面図である。図6は、図5のD部の部分拡大図である。なお、以下の説明における前後左右上下の方向は、本発明の洗濯機を水平面に設置した際の前後左右上下の方向に一致させた図1に示す各方向を基準とする。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る洗濯機Lは、その外郭を構成する筐体1を備えている。筐体1は、左右の側板1a,1a、前面カバー1c、背面カバー1d、上面カバー1e、及び下部前面カバー1fで主に構成されている。この筐体1は、ベース1g上に取り付けられることで箱形状を呈しているので十分な強度を有することができる。
【0013】
前面カバー1cの略中央には、洗濯物を出し入れするための投入口が形成されており、この投入口には主に透明樹脂で形成されて洗濯機L内の視認可能なドア2が設けられている。ちなみに、ドア2は、後記する前部補強部材10h(図5参照)に図示しないヒンジを介して開閉自在に取り付けられている。このドア2は、前面カバー1cに設けられたドア開放ボタン2aを押すことで、ロックアンロック機構(図示省略)によるロック状態が解かれて(アンロック状態となって)開くようになっている。また、このドア2は、ユーザによって前面カバー1c側に向けて押し付けられることで、前記投入口を閉じた状態で前記したロックアンロック機構(図示省略)によりロック状態となる。
【0014】
筐体1の上部中央には、操作パネル3が設けられている。この操作パネル3は、電源スイッチ4、操作スイッチ5及び表示器6を備えている。これらの電源スイッチ4、操作スイッチ5及び表示器6は、筐体1内の下部に配置された制御装置7(図2参照)に電気的に接続されている。ちなみに、制御装置7は、洗濯機Lの動作を全体的に制御すると共に、後記するように、回転ドラム8(図2参照)の高速回転域への移行可否を制御するように構成されている。
なお、図1中、符号12は排水ホースであり、符号14は洗剤容器であり、符号16aは水道栓からの水を供給するための給水ホース接続口であり、符号17aは風呂の残り湯を供給するための吸水ホース接続口であり、符号20は、後記する引き出し式の乾燥フィルタである。
【0015】
図2及び図3に示すように、筐体1の内部には、円筒状の外槽10が配置されている。この外槽10は、後記する回転ドラム8を同軸上に内包し、その前側には洗濯物を出し入れするための開口部10aを有している。また、外槽10の後側にはモータ9(図4参照)が取り付けられている。なお、このモータ9の回転軸(図示省略)は、外槽10を貫通すると共に回転ドラム8と結合し、回転ドラム8をその回転中心軸Ax(図3参照)回りに回転させることとなる。ちなみに、本実施形態での回転中心軸Axは、洗濯機Lの前後方向に傾斜しており、具体的には、洗濯機Lの前側に配置される開口部10a(又は後記する回転ドラム8の開口部8a)側が、水平面に対してその後側よりもやや高くなるように傾斜している。しかしながら、本発明は、この回転中心軸Axが傾斜するように配置される外槽10及び回転ドラム8を有する洗濯機Lに限定されずに、前後方向に回転中心軸Axが水平となるように外槽10及び回転ドラム8を筐体1内に配置することもできる。
【0016】
外槽10は、図3に示すように、この外槽10の本体部である水槽10cと、この水槽10cの前側に配置されて円形の開口部10aをその中央部に形成する略リング状の槽カバー10bとで主に構成されている。ちなみに、外槽10には、洗濯物を洗濯し、又はすすぎを行う際に水が溜められるが、槽カバー10bは、水槽10cの前側に取り付けられることで、水槽10cの前側から溜めた水がこぼれるのを防止する機能を有する。また、本実施形態での槽カバー10bは、水槽10cに対して分離可能に取り付けられており、回転ドラム8の外側及び内側、並びに水槽10cの内側を清掃する際には水槽10cから取り外すことができるようになっている。
また、前記したように、ドア2(図1及び図2参照)が閉じられた際には、外槽10の開口部10aはこのドア2によって水密に閉じられる。
【0017】
また、図3に示すように、外槽10の最下部には排水口10dが設けられている。この排水口10dには図1で示した前記排水ホース12の一端が接続されている。この排水ホース12の途中には排水弁(図示省略)が設けられている。この排水弁が閉じられている状態で外槽10内に水が溜められる。また、この排水弁が開かれると、外槽10内の水が排水ホース12を介して洗濯機L外に排出される。
【0018】
このような外槽10は、図2及び図3に示すように、その下側がサスペンション13を介してベース1gで支持されており、このサスペンション13は、洗濯機Lの防振構造を構成している。なお、サスペンション13としては、例えばコイルばね、ダンパ等で構成されるものを使用することができる。
また、外槽10は、その上側が補助ばね(図示省略)を介して上部補強部材(図示省略)に弾性的に支持されている。ちなみに、この上部補強部材は、筐体1内の適所に固定されている。
【0019】
図3に示すように、外槽10によって同軸上(回転中心軸Ax上)に位置するように内包される回転ドラム8(図3中、隠れ線(破線)で示す)は、有底の略円筒体で形成されており、前記したように、モータ9(図4参照)で回転中心軸Ax回りに回転するようになっている。ちなみに、本実施形態での回転ドラム8は、洗濯槽と脱水槽とを兼ねている。そして、回転ドラム8の外周部8d及び底部8eには、洗濯時及び脱水時において通水及び通風を行うための多数の貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0020】
また、本実施形態での回転ドラム8は、前記したように、外槽10によって同軸上に位置するように内包されることで、円形の開口部8aが形成される前側が、その後側よりもやや高くなるように傾斜している。なお、前記したように、回転ドラム8は、その回転中心軸Axが前後方向に水平となるように配置することもできる。
ちなみに、洗濯物は、前記外槽10の開口部10a、及び回転ドラム8の開口部8aを介して回転ドラム8の内部に対して出し入れされることとなる。
【0021】
回転ドラム8は、回転ドラム8の偏心回転を抑制する流体バランサ8cを、一体となるように有している。この流体バランサ8cは、中空で略リング状を有しており、回転ドラム8の前側に位置している。この流体バランサ8cの中空部には液体が封入されている。なお、回転ドラム8の一部である流体バランサ8cは、その外径が回転ドラム8の胴部の内側に収まる寸法に設定されている。また、流体バランサ8cの内周の内側に、前記開口部8aが形成されている。
この流体バランサ8cによれば、洗濯物を収容した回転ドラム8が回転する際に、回転ドラム8内で質量アンバランスを形成するように偏っている洗濯物に対して、封入された液体が質量アンバランスを打ち消すように中空部内を移動することで回転ドラム8の偏心回転を防止することができる。
【0022】
また、回転ドラム8の内周面には、回転中心軸Axに沿うように延設されるリブで構成され、周方向に複数設けられるリフタ8bが形成されている。
そして、洗濯時又は乾燥時に回転ドラム8が回転する際に、このリフタ8bによって、洗濯物は回転ドラム8の内周面から持ち上げられ、次いで回転ドラム8内で重力で落下する動きを繰り返す。その結果、洗濯及び乾燥の効率を向上させることができる。
【0023】
本実施形態に係る洗濯機Lは、図3に示すように、筐体1内に乾燥ダクト18を備えている。この乾燥ダクト18は、外槽10の後方で上下方向に延設されている。この乾燥ダクト18は、回転ドラム8内で洗濯が終了した洗濯物を乾燥させる際に主に使用される。
乾燥ダクト18の下端は、外槽10の背面に設けられた吸気口10fにゴム製の蛇腹管18aを介して接続されている。そして、乾燥ダクト18の上端は、図2及び図4に示すように、筐体1内の上部右側寄りに設置したフィルタダクト19に接続されている。
【0024】
このような乾燥ダクト18内には、図示しない除湿機構が設けられている。この除湿機構は、外槽10からの空気を冷却することでこれに含まれる水蒸気を結露させて除去するようになっている。本実施形態での除湿機構は、乾燥ダクト18内に設けられる図示しない冷却配管に水道水を通流することで外槽10からの空気を冷却するように構成されている。そして、乾燥ダクト18内で結露した水は、乾燥ダクト18の壁面を伝わって流下して外槽10内に入り込むと共に、排水口10d(図3参照)から排出される。なお、冷却配管に通流させる水道水は、外槽10に水道水を溜める際に使用される図4に示す給水ホース接続口16a及び給水電磁弁16、並びに前記冷却配管に接続される所定の配管を介して送り込まれる。
図4中、符号9はモータであり、符号10fは外槽10の背面に設けられた吸気口であり、符号17aは風呂の残り湯を外槽10に供給するための吸水ホース接続口であり、符号17は風呂の残り湯を外槽10に供給するためのポンプであり、符号22は後記する送風ユニットであり、符号2のは後記するファンケース22b内に収容される図示しない羽根車を駆動するモータである。
【0025】
再び図2に戻って、フィルタダクト19の前面には、前記乾燥フィルタ20(図1参照)の挿入部20aが形成されている。そして、この挿入部20aの下部は、図2に示すように、吸気ダクト21を介して送風ユニット22のファンケース22b内と連通している。
【0026】
送風ユニット22は、図2及び図3に示すように、駆動用のモータ22aと、このモータ22aによって回転駆動される羽根車(図示省略)を収容するファンケース22bとで構成されている。
つまり、図3に示す送風ユニット22のモータ22aで羽根車(図示省略)が回転駆動すると、図3に示す吸気口10fを介して吸入された外槽10内の空気は、図2に示す乾燥ダクト18及びフィルタダクト19、並びに図1に示す乾燥フィルタ20を介して図3に示すファンケース22b内に流れ込むようになっている。
なお、外槽10内の洗濯物から出た糸くず等は、外槽10から乾燥ダクト18を介して流れ出る空気の流れに同伴する場合があるが、この糸くず等は、乾燥フィルタ20(図1参照)を通過することで分離される。そして、分離された糸くず等は、引き出された乾燥フィルタ20から回収することで廃棄される。
【0027】
また、図3に示すように、ファンケース22bには、温風ダクト24の一端が接続されている。そして、温風ダクト24の他端は、ゴム製の蛇腹管24aを介して外槽10に設けられた温風吹き出し口25に接続されている。
つまり、前記したように、図3に示す送風ユニット22のモータ22aで羽根車(図示省略)が回転駆動することで、ファンケース22b内に流れ込んだ外槽10からの空気は、この温風ダクト24を介して再び外槽10内に戻される。この際、外槽10内に戻される乾燥した空気は、ファンケース22b内に設けられたヒータ23で予め加熱され、温風吹き出し口25から外槽10内に吹き出されることとなる。この吹き出された温風によって、外槽10内の洗濯物は乾燥されることとなる。
【0028】
また、本実施形態に係る洗濯機Lは、図3に示すように、振動センサ10eを備えている。この振動センサ10eは、外槽10が振動により変位する際の加速度を検出するものであり、外槽10の下側の前方寄りに配置されている。この振動センサ10eの出力信号が、外槽10の振動状態を制御装置7(図2参照)に入力されることで、洗濯機Lは、外槽10の振動状態に合せてその運転状態が制御されるようになっている。なお、この振動センサ10eとしては、外槽10が振動により変位する際の速度や変位幅を検出するように構成されるものを使用することができる。
【0029】
本実施形態に係る洗濯機Lは、後記するように、外槽10と回転ドラム8との間のクリアランスB,C(図5参照)を検知するクリアランス検知手段100(図6及び図8参照)を備えている。本実施形態でのクリアランス検知手段100は、回転ドラム8と外槽10との間に形成される隙間の距離を検知するように、具体的には、クリアランスの距離の代替としての、後記する光学センサ26a(図6参照)の受光量で出力するように構成されているが、このクリアランス検知手段100はこれに限定されずに、後記するように、回転ドラム8の高速回転域への移行を許容できる前記隙間(クリアランス)が確保されているか否かの二値を検知するものであってもよい(第5実施形態参照)。
【0030】
本実施形態では、まずクリアランス検知手段100で距離を検知するクリアランスの位置について説明する。
次に参照する図5は、図2のA−A線における部分拡大断面図である。図6(a)は、図5のD部の部分拡大図であり、クリアランス検知手段で検知するクリアランスを形成する外槽と回転ドラムとの位置関係を示す部分拡大図、図6(b)は、クリアランスを形成する回転ドラムの変形例を説明するための部分拡大図である。
【0031】
図5中、符号10は外槽であり、符号8は回転ドラムであり、符号8cは流体バランサであり、符号8aは回転ドラム8の開口部であり、符号10hは筐体1を構成する前面カバー1cの内側に取り付けられる前部補強部材であり、符号2は前部補強部材1hに図示しないヒンジを介して取り付けられるドアであり、符号11は外槽10の開口部10aをドア2で水密に閉じるためのベローズであり、符号B及びCのそれぞれは次に説明するクリアランス検知手段100(図6参照)で検知されるクリアランスである。
なお、図5の矢印zは、回転ドラム8の軸方向(前記回転中心軸Ax(図3参照)に平行な方向)を示し、矢印rは回転ドラム8の半径方向を示している。
【0032】
図5に示すように、本実施形態では、後記するクリアランス検知手段100(図6等参照)で検出するクリアランスB及びクリアランスCが挙げられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明にいう「クリアランス」としては外槽10と回転ドラム8との間に形成される隙間であればよい。具体的には、前記したように、回転ドラム8(図2参照)を内包する外槽10(図2参照)の当該外槽10の内面と、当該回転ドラム8の内面との間に形成される隙間であれば、いずれの隙間であってもよい。中でも、本発明にいう「クリアランス」としては、回転ドラム8(外槽10)の前後方向の中央よりも前側寄りで規定される前記隙間が望ましい。つまり、モータ9(図4参照)の回転軸が接続される回転ドラム8(図2参照)の後側よりも、振れ回りが大きくなると考えられる回転ドラム8の前側寄りで規定される前記隙間が本発明にいう「クリアランス」として望ましい。そして、この「クリアランス」は、回転ドラム8の前端又は前端に近接した位置での回転ドラム8と外槽10との隙間で規定されるものが、より望ましい。
【0033】
本実施形態では、図5に示すように、流体バランサ8cが取り付けられる回転ドラム8の前側部分に近接した位置での回転ドラム8と外槽10との距離で規定されるクリアランスBをクリアランス検知手段100(図6参照)で検知するものについて説明する。そして、図5に示すように、回転ドラム8の前端での回転ドラム8と外槽10との距離で規定されるクリアランスCをクリアランス検知手段100(図8等参照)で検知するものについては、後記する第2実施形態で説明する。
【0034】
図6(a)に示すように、本実施形態でのクリアランス検知手段100は、フォトトランジスタ(図示省略)と発光素子(図示省略)とを一体にパッケージしたフォトカプラである光学センサ26aと、反射部27aとを備えている。このクリアランス検知手段100は、光学センサ26aから照射されたレーザ光等の光が反射部27aで反射し、その反射光が再び光学センサ26aに入ることで、光学センサ26aと反射部27aとの相対距離、つまり外槽10の内周面と回転ドラム8の外周面との距離で示されるクリアランスBを測定するようになっている。
【0035】
反射部27aは、光学センサ26aから照射される光を反射する際に、この反射光が光学センサ26aで受光可能な程度の光反射率を有していればよく、光学センサ26aの受光感度が良好な場合には回転ドラム8の外周面の表面性状そのもので反射部27aを形成することもできる。なお、本実施形態での反射部27aは、回転ドラム8の外周面上に形成された鏡面で形成されている。
そして、図6(a)に示すクリアランス検知手段100は、反射部27aが回転ドラム8の前端に近接した位置における回転ドラム8の外周面に設けられると共に、光学センサ26aは、この反射部27aに対向するように外槽10に設けられている。
【0036】
図6(a)に示す光学センサ26aは、ハーネス29が接続される本体部が外槽10の外周面に設けられたブラケット10gで支持されていると共に、光を照射する先端部が外槽10に設けられた貫通孔10jに挿入されることで外槽10に取り付けられている。また、貫通孔10jに挿入された先端部は、例えば先端部の周面に形成されたネジ山に螺合するナットで外槽10に固定されていてもよいし、接着剤等で外槽10に固定されていてもよい。
なお、この貫通孔10jが形成される位置としては、反射部27aに対して光が垂直に照射できる位置であればよいが、光を照射する先端部が外槽10内に水が溜められた際の最大水位よりも上方となる位置に設定されるのが望ましい。このような位置に形成された貫通孔10jを介して光学センサ26aが外槽10に取り付けられることによって、クリアランスBを検知する際の外乱(例えば、汚れを含む洗濯水による外乱)が小さくなって良好なクリアランスBの検知精度を達成することができる。
【0037】
また、光学センサ26aは、外槽10を構成する水槽10c(図3参照)及び槽カバー10b(図3参照)のうち、水槽10cに取り付けられるのが望ましい。つまり、水槽10cに光学センサ26aが取り付けられたものは、前記したように、外槽10や回転ドラム8を清掃する際に、ハーネス29が邪魔にならずに水槽10cから槽カバー10bを容易に取り外すことができる。ちなみに、光学センサ26aを槽カバー10b(図3参照)に取り付ける場合には、前記した光学センサ26aの本体部から延出するハーネス29の途中に着脱自在なコネクタを介在させることが望ましい。
【0038】
図6(a)中、符号28は、光学センサ26aの先端部に挿通されるリング状のシール材である。このシール材28は、光学センサ26aの先端部が挿通された貫通孔10jを介して外槽10内の水が外側に漏れ出るのを防止している。また、ハーネス29は、制御装置7(図2参照)と電気的に接続されている。そして、制御装置7は光学センサ26aに対する通電のタイミングの制御を行うと共に、光学センサ26aから出力されるクリアランスBの検知信号に基づいて後記する手順により回転ドラム8の高速回転域への移行が可能かを判断することで回転ドラム8の回転速度を制御する。
【0039】
次に、図6(a)での回転ドラム8の変形例について説明する。次に参照する図6(b)は、外槽との間にクリアランスを形成する回転ドラムの変形例を説明するための部分拡大図である。
図6(a)に示す回転ドラム8は、軸方向zに同じ径となる円筒体であるが、図6(b)に示す回転ドラム8は、前側(図6(b)の紙面左側)が縮径した略円筒体となっている。この回転ドラム8は、図6(a)の回転ドラム8よりも大容量のもの(大径のもの)の前側に絞り加工を施して作製したものである。
このような絞り加工が施された回転ドラム8は、反射部27aが設けられる回転ドラム8の前端寄りで真円度が高められているので、クリアランスBの検知精度を高めることができる。また、回転ドラム8の前端寄りで真円度が高められているので、流体バランサ8cを取り付ける際の同軸度を高めることができる。
【0040】
また、クリアランス検知手段100は、図示しないが、クリアランス検知手段100の汚れ検出機構を備えることができる。
前記したように、クリアランス検知手段100を外槽10及び回転ドラム8に設けると、クリアランス検知手段100を長期に亘って使用する際に、洗濯物に付着していた汚れや洗濯時に使用する洗剤、柔軟剤等によって、光学センサ26a及び反射部27a等が汚れて感度が低下することが考えられる。この際、クリアランス検知手段100は、光学センサ26a及び反射部27aの汚れに伴う光の損失量(光学センサ26aの受光量の低下分)を検知する汚れ検出機構を更に備えることができる。
【0041】
この汚れ検出機構としては、例えば、クリアランス検知を確実に行うことのできる最小の受光量と対応付けた所定のパラメータ(例えば、光学センサ26aから出力される電流値、電圧値、周波数等)を閾値として記憶するメモリと、このメモリを参照して前記閾値と光学センサ26aから出力される信号の前記パラメータを比較すると共にその差分に応じてクリアランス検知手段100の汚れ量を判定する判定部(CPU等)とを含めて構成することができる。ちなみに、前記閾値は2以上設定することもできる。このような汚れ検出機構の構成は、後記する制御装置7に含めることができる。
そして、この汚れ検出機構においては、クリアランス検知手段100が汚れていると前記判定部が判定した際に、その旨をユーザに知らせる表示部、LED発光部、音声機能等の報知機能を更に備えることができる。
【0042】
このような汚れ検出機構によれば、光学センサ26a及び反射部27aの汚れ量又は汚れの有無を判定することができると共に、光学センサ26a及び反射部27aの汚れ量に比例して汚れていると考えられる外槽10や回転ドラム8の汚れ量を推定することができる。
したがって、このような汚れ検出機構を有するクリアランス検知手段100によれば、自動的に回転ドラム8や外槽10内の洗浄を行う機能と協働することで、ユーザの手間を増やすことなく回転ドラム8や外槽10内を清潔に保つことができる。
【0043】
次に、本実施形態に係る洗濯機Lの制御装置7がクリアランスBを検知する際に行う手順について説明しながら洗濯機Lの動作について説明する。参照する図7は、本発明の実施形態に係る洗濯機における制御装置が回転ドラムの回転速度を制御する際に実行する手順を説明するためのフローチャートである。
【0044】
従来の洗濯機においては、前記したように、回転ドラムが、例えば洗濯物の脱水時に高速回転する際に、その回転中心軸が偏心することで回転ドラムが外槽内で振れ回りする場合がある。そして、回転ドラムの振れ回り量が大きいと洗濯機の発生する振動や騒音が大きくなる。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る洗濯機Lの制御装置7(図3参照)は、回転ドラム8内での洗濯物の洗濯(洗浄及びすすぎ)並びに外槽10からの排水が所定の手順で完了すると、洗濯物の脱水を開始する(ステップS101)。そして、制御装置7の指令によってモータ9(図4参照)が回転し始めると共にその回転速度を上昇させていく(ステップS102)。
【0046】
その一方で、制御装置7(図3参照)は、図示しないが、クリアランス検知手段100の光学センサ26aが反射部27aに光を照射すると共に、その反射光を光学センサ26aが受光した際のその受光量を、光学センサ26aからの出力信号に基づいて検出する。ちなみに、この出力信号は、光学センサ26aに接続されたハーネス29(図6参照)を介して制御装置7に入力される。
【0047】
次に、制御装置7は、前記した汚れ検出機構を構成するメモリを参照すると共に、受光量に係る第1閾値と、光学センサ26aからの出力信号に基づく反射光の受光量とを比較する。ちなみに、この第1閾値は、後記するクリアランス検知を確実に行うことのできる最小の受光量に係るものであり、予め実施されたシミュレーション試験で求められた所定のパラメータ(電流値、電圧値、周波数等)の関数又はマップで設定されている。
【0048】
そして、制御装置7は、次のステップS103において、前記第1閾値と、光学センサ26aの受光量とを比較する汚れ検知工程を実行する。
次いで、制御装置7は、この汚れ検知工程(ステップS103)で前記第1閾値よりも光学センサ26aの受光量が小さいと判断した場合には、図7に示すように、「汚れ大」と判定して次のステップS201、ステップS202及びステップS203の順番で手順を進める。つまり、制御装置7は、クリアランス検知を確実に行うことのできない程度にクリアランス検知手段100(図6参照)が汚れていると判定すると共に、外槽10及び回転ドラム8も同程度に汚れていると推定することで、予め実施されたシミュレーション試験で求められた、回転ドラム8の振れ回りが起こらない程度の回転速度で回転ドラム8を回転させる(ステップS201)。この「振れ回りが起こらない程度の脱水回転速度」としては、脱水時間との相関関係で設定することができ、本実施形態では30秒間の脱水時間を想定して900r/minに設定しているが、これに限定されるものではなく適宜に設定することができる。
次いで、制御装置7は、脱水を完了すると共に(ステップS202)、ユーザに、前記した汚れ結果の報知(ステップS203)を行った後に、洗濯機Lの運転を終了する。
【0049】
一方、ステップS103の汚れ検知工程において、前記第1閾値よりも光学センサ26aの受光量が大きいと判断した場合には、制御装置7は、「汚れ小」と判定して次のステップS104を実行する。
【0050】
このステップS104においては、制御装置7は、第2閾値と、光学センサ26aの受光量とを比較するクリアランス検知工程を実行する。
この第2閾値は、前記した汚れ検知工程(ステップS103)での第1閾値よりも大きい値で設定されている。この第2閾値としては、回転ドラム8の振れ回り量を間接的に示すこととなる外槽10と回転ドラム8とのクリアランスB(図5)の距離を、光学センサ26aからの受光量で代替したものが挙げられる。具体的には、第2閾値は、予め実施したシミュレーション試験によって、許容できる振動又は騒音の下限値を設定すると共に、この下限値の振動又は騒音を発生させる際の光学センサ26aの受光量の最大値として求めることができる。このような第2閾値は、前記第1閾値と同様に、所定のパラメータ(電流値、電圧値、周波数等)の関数又はマップとしてメモリに記憶されている。
【0051】
制御装置7は、ステップS104のクリアランス検知工程において、前記第2閾値と、光学センサ26aの受光量とを比較する。
【0052】
次いで、制御装置7は、このクリアランス検知工程(ステップS104)で光学センサ26aの受光量が前記第2閾値以上と判断した場合には、図7に示すように、「クリアランス小」と判定して次のステップS301及びステップS302の順番で手順を進める。つまり、制御装置7は、ステップS301において、回転ドラム8の回転速度を降下させるか、あるいはステップS104のクリアランス検知工程の判定時における回転ドラム8の回転速度を一定に維持する。望ましくは、振れ回りが発生しない程度の回転速度(例えば、前記した900r/min程度)に降下させるか、あるいはステップS104のクリアランス検知工程の判定時における回転ドラム8の回転速度よりも100r/min程度の下げ幅で降下させる。
そして、制御装置7は、このような回転ドラム8の回転速度で脱水を完了することで(ステップS302)、洗濯機Lの運転を終了する。
【0053】
また、制御装置7は、ステップS104のクリアランス検知工程で、光学センサ26aの受光量が前記第2閾値未満であると判断した場合には、図7に示すように、「クリアランス大」と判定して、更に回転ドラム8の回転速度の上昇を続ける(ステップS105)。
そして、次のステップS106で、回転ドラム8の回転速度が予め設定した最高回転速度(例えば、1700r/min程度)に至っていない場合には(ステップS106のNo)、ステップS103に戻って、前記ステップS201、前記ステップS202及び前記ステップS203を含む工程、前記ステップS104、前記ステップS301及び前記ステップS302を含む工程、並びに前記ステップS104、前記ステップS105及び前記ステップS106を含む工程の少なくとも一つの工程を繰り返す。
【0054】
また、ステップS106で、回転ドラム8の回転速度が予め設定した最高回転速度(例えば、1700r/min程度)になった場合には(ステップS106のYes)、脱水を完了することで(ステップS302)、制御装置7は洗濯機Lの運転を終了する。
なお、図7に示す手順においては、ステップS302で脱水を完了することで運転を終了しているが、本発明はステップS302の後に、回転ドラム8が停止してから再びステップS101に戻って脱水を行う手順を制御装置7が実行するものであってもよい。
【0055】
本実施形態に係る洗濯機Lによれば、次のような作用効果を奏することができる。
従来の洗濯機、特に回転中心軸が傾斜し、又は水平となるように配置された回転ドラムを有するものは、回転ドラムに振れ回りが生じると、回転ドラムの後方に設けられた回転軸受(図示省略)を支点に、回転ドラムの前側が上下左右方向に揺動する。その結果、従来の洗濯機は、回転ドラムと、この回転ドラムの外側に設けられる外槽との間の距離が変動する。そして、回転ドラムの回転速度によっては、回転ドラムと外槽の衝突に起因する騒音や振動を発生する恐れがある。
【0056】
これに対して、本実施形態に係る洗濯機Lは、クリアランス検知手段100によって、回転ドラム8と外槽10とのクリアランスBを直接検知することによって、クリアランスBが所定の大きさよりも小さいと判定した際には、回転ドラム8の高速回転への移行を禁止する。したがって、本実施形態に係る洗濯機Lによれば、ユーザに不快感を与えない程度となるように騒音や振動の発生を抑制しつつ、回転ドラム8の高速回転への移行を精度よく行うことができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る洗濯機Lは、前記したように、図5に示すクリアランスCを検知するように構成されている以外は前記第1実施形態と同様に構成されている。したがって、本実施形態では、クリアランスCを検知する構成について説明すると共に、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
参照する図8は、第2実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のE部に対応する部分拡大図である。
【0058】
図8に示すように、外槽10には、光学センサ26b及びハーネス29を取り付けるための溝Iが設けられている。この溝Iは、外槽10の開口部10aを囲む内縁部10hに設けられている。この溝Iが形成される部分の外槽10の肉厚は、外槽10の強度が十分保たれる程度となっている。
そして、溝Iを塞ぐように、外槽10にはカバー30bがねじ止めや接着剤で固定されている。
【0059】
光学センサ26bは、その周囲に水の侵入を防ぐためにシール材(図示省略)が設けられると共に溝I内で流体バランサ8c側寄りとなるように配置されている。そして、光学センサ26bは、外槽10にねじ止めや接着剤で固定されている。
なお、ハーネス29は、光学センサ26bから延出すると共に溝Iに沿って外槽10の前端面に導かれた後、この前端面から制御装置7(図2参照)に向かって延びると共にこの制御装置7と電気的に接続されている。
また、光学センサ26bは、回転ドラム8や流体バランサ8cとの衝突を防止するために、光学センサ26bの先端が外槽10の端面から流体バランサ8c側に向けて突出しないように設けられている。
なお、本実施形態における反射部27bは、流体バランサ8cの内周部の、光学センサ26bとの対向面に形成されている。
つまり、本実施形態での光学センサ26b及び反射部27bからなるクリアランス検知手段100は、流体バランサ8cの内周部側の前端と、外槽10との間のクリアランスCを検知することとなる。ちなみに、反射部27bは、流体バランサ8cの表面材質そのもので形成されており、鏡面仕上げ等は施していない。
【0060】
このような洗濯機Lにおいては、図2に示すように、ユーザがドア2を開けると外槽10の開口部10aが外部に臨むこととなる。つまり、ユーザは、図8に示すように、光学センサ26c及び反射部27bを手に届く範囲で視認することができる。その結果、光学センサ26bと反射部27bとを直接的に清掃することが可能となって、光学センサ26bの出力を安定して得られるという効果を奏することができる。
また、図8に示すように、光学センサ26bの発光部(図示省略)及び受光部(図示省略)を覆うように透明のカバー面26cを備えると共に、開口部10a側から視認し易いようにカバー面26cに傾斜角を設けたものは、ユーザによる清掃が更に容易になる。
なお、光学センサ26bからの照射光が、反射部27bに対して略垂直となるように照射されるように、カバー面26cは照射光の屈折率の小さいものが望ましい。
【0061】
また、このような洗濯機Lにおいては、回転ドラム8が振れ回りすると、流体バランサ8cの前端は軸方向zの変位が生じるために、光学センサ26bから矢印Hの方向(軸方向z)に光を照射することでクリアランスCを検知する。このとき、流体バランサ8cの前端のz軸方向の変位量の最大値は、外槽10の内縁部10hに衝突するまで変位量で決定される。つまり、外槽10の内縁部10hに光学センサ26bを設けると共に、この光学センサ26bと反射部27bとの間に所定のクリアランスCの距離を維持することで、回転ドラム8と外槽10との衝突を防ぐことができる。また、光学センサ26bを外槽10の内縁部10hの上部(図8の紙面上側)に設けることで、洗濯物を開口部10aから出し入れする際に、洗濯物が光学センサ26bに接触するのを防ぐことができる。
なお、光学センサ26bから照射した光が反射部27bで反射すると共に、外槽10の開口部10a及び透明なドア2を介して筺体1外へ漏れ出ることがないように、光学センサ26bからの光の照射角度を軸方向zと平行となる角度から、ややr軸の正方向(図8の紙面上方向)に向く角度に設定するのが望ましい。そして、発光部と受光部とが一体にパッケージされたフォトカプラは、筺体1外へ光が漏れ出ることを、より確実に防止できる光学センサ26bとして望ましい。
【0062】
本実施形態に係る洗濯機Lによれば、回転ドラム8の開口部8a(図5参照)の近傍で外槽10との間に洗濯物が入り込んだ状態(かみこみ)を検知することができる。
次に参照する図9は、第2実施形態での外槽と回転ドラムの開口部の隙間に洗濯物が入り込んだときの様子を示す図5のE部に対応する部分拡大図である。
回転ドラム8(図5参照)内で洗濯物の撹拌を生じる程度に回転ドラム8が遅い回転速度(例えば、50r/min以下)で回転する場合に、図9に示すように、洗濯物31が外槽10の開口部10aと回転ドラム8(図5参照)の開口部8a(図5参照)の隙間に入り込んでこの洗濯物31をかみこむことがある。
【0063】
このかみこみ状態のままで回転ドラム8(図5参照)の回転速度が上昇すると、回転ドラム8と共に回転する洗濯物31は、外槽10との摩擦で痛む可能性がある。このとき、洗濯物31のかみこみ部分は、光学センサ26bから照射される光を回転ドラム8の回転と同じ周期で遮断するために、光学センサ26bの出力に基づいて洗濯物31のかみこみ検知を行うことができる。つまり、洗濯物31のかみこみの検知により回転ドラム8の回転を停止することで、洗濯物31の痛みを未然に防止することができる。
なお、図9中、符号27bは反射部であり、符号10hは外槽10の内縁部であり、符号10aは外槽10の開口部であり、符号Iはハーネス29が配置される溝であり、符号30bは溝Iを覆うカバーであり、符号11はベローズであり、符号100はクリアランス検知手段である。
【0064】
次に、流体バランサ8cの前端に設けた反射部27b(図8参照)の変形例について説明する。
参照する図10は、第2実施形態におけるクリアランス検知手段を構成する反射部の第1変形例を示す部分断面図であり、図5のE部に対応する部分拡大図である。
図10に示すように、第1変形例に係る反射部27cは、光学センサ26bに対向する面が、階段状に形成されており、具体的には、流体バランサ8cの外周側から内周側に向かって光学センサ26bからの距離が段階的に長くなるようになっている。なお、図10中、符号10hは外槽10の内縁部であり、符号10aは外槽10の開口部であり、符号Iはハーネス29が配置される溝であり、符号30bは溝Iを覆うカバーであり、符号11はベローズであり、符号100はクリアランス検知手段である。
【0065】
このような反射部27cによれば、回転ドラム8の振れ回りによって、外槽10に対して回転ドラム8が半径方向rに変位した際に、光学センサ26bから各反射面までの距離が段階的に大きく変わるので、回転ドラム8の半径方向rへの変位に応じた光学センサ26bの出力の変化量を増加させることができる。その結果、回転ドラム8の振れ回りの検知精度を一段と向上させることができる。
【0066】
次に参照する図11は、第2実施形態におけるクリアランス検知手段を構成する反射部の第2変形例を示す部分断面図であり、図5のE部に対応する部分拡大図である。
図11に示すように、第2変形例に係る反射部27dは、流体バランサ8cの外周側から内周側に向かって3段階で反射率の異なる反射面で形成されている。なお、図11中、符号10hは外槽10の内縁部であり、符号10aは外槽10の開口部であり、符号Iはハーネス29が配置される溝であり、符号30bは溝Iを覆うカバーであり、符号11はベローズであり、符号100はクリアランス検知手段である。
【0067】
このような反射部27dによれば、回転ドラム8の振れ回りによって、外槽10に対して、回転ドラム8が半径方向rに変位した際に、各反射面での反射率の違いにより、光学センサ26bでの受光量が大きく変わるので、回転ドラム8の半径方向rへの変位に応じた光学センサ26bの出力の変化量を増加させることができる。その結果、回転ドラム8の振れ回りの検知精度を一段と向上させることができる。
【0068】
次に参照する図12は、第2実施形態での流体バランサに対して反射部を設ける態様を模式的に示す斜視図である。図13は、第2実施形態での流体バランサに対して反射部を設ける他の態様を模式的に示す斜視図である。
図12に示すように、前記した反射部27b,27c,27d(図8から図11参照)は、流体バランサ8cの前端の内周の全体に亘って連続して配置することができる。
また、図13に示すように、前記した反射部27b,27c,27d(図8から図11参照)は、流体バランサ8cの前端の内周側で断続的に配置することができる。
なお、図12及び図13中、符号8aは回転ドラム8の開口部であり、符号10は外槽であり、符号13はベース1g上で外槽10を支持するサスペンションである。
【0069】
次に参照する図14は、第2実施形態でのクリアランス検知手段を洗浄する自動洗浄機構を説明するための部分拡大図であり、図5のE部に対応する部分拡大図である。
図14に示すように、第2実施形態に係るクリアランス検知手段100は、自動洗浄機構50を備えることができる。
【0070】
この自動洗浄機構50は、洗濯運転時に、給水ホース接続口16a(図1参照)を介して供給される水道水を光学センサ26b及び反射部27bまで導いて、この水道水によって光学センサ26b及び反射部27bを洗浄するように構成されている。つまり、外槽10の内側に沿うように延設された洗浄配管16bに水道水Wを流通させて、洗浄配管16bの出口から噴出する水道水Wで光学センサ26b及び反射部27bを洗浄する。そして、この自動洗浄機構50による光学センサ26b及び反射部27bの洗浄は、図7のステップ103の汚れ検知工程で「汚れ大」の判定に基づいて開始されることとなる。
なお、図14中、符号10hは外槽10の内縁部であり、符号10aは外槽10の開口部であり、符号Iはハーネス29が配置される溝であり、符号30bは溝Iを覆うカバーであり、符号11はベローズである。
【0071】
このような自動洗浄機構50によれば、光学センサ26b及び反射部27bの洗浄が自動的に行われるので、メンテナンスの手間を省くことができる。
ちなみに、本実施形態では、光学センサ26b及び反射部27bの洗浄に水道水Wを使用することを想定しているが、外槽10内に溜められた洗濯水を使用することもでき、この場合、例えば、すすぎ工程が終了した後の比較的清澄な洗濯水が望ましい。
【0072】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る洗濯機Lは、電磁誘導を利用したクリアランス検知手段100を備える以外は、前記第1実施形態と同様に構成されている。したがって、本実施形態では、クリアランス検知手段100の構成について説明すると共に、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
参照する図15は、第3実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。図16は、流体バランサに対して永久磁石を設ける態様を模式的に示す斜視図である。
【0073】
図15に示すように、本実施形態に係るクリアランス検知手段100は、電磁誘導コイル32bと、永久磁石32aと、永久磁石32aの磁界が横切る際に電磁誘導コイル32bに発生する誘導起電力を測定する電圧計51と、を備えている。
【0074】
電磁誘導コイル32bは、外槽10に設けられ、回転ドラム8が回転して永久磁石32aと電磁誘導コイル32bが最も接近した際に、永久磁石32aの極中心軸と電磁誘導コイル32bの中心軸とが同軸J上で並ぶように外槽10に配置される。なお、符号Kは、永久磁石32aの磁力線を示している。
永久磁石32aは、流体バランサ8cの後方寄りでその外周側に設けられている。本実施形態での永久磁石32aは、そのN極が回転ドラム8の半径方向rの外側を向くように配置されているが、そのS極が半径方向rの外側を向くように配置されていてもよい。
そして、本実施形態での永久磁石32aは、図16に示すように、流体バランサ8cの周方向に沿って等間隔に複数(本実施形態では4つ)設けられている。
図16中、符号100は本実施形態でのクリアランス検知手段であり、符号8は回転ドラムであり、符号10は外槽であり、符号51は電圧計であり、符号13はベース1g上で外槽10を支持するサスペンションである。
【0075】
本実施形態でのクリアランス検知手段100によれば、所定の回転速度で回転ドラム8が一回転する際に、4つの磁石32aが次々と電磁誘導コイル32bの前を横切るように通過する。この際、電磁誘導コイル32bで発生する誘導起電力は、電圧計51により4つの極大電圧値をもつ波形として検出される。そして、極大電圧値のそれぞれは、4つの永久磁石32aとコイル32bの距離が等しい場合、つまり回転ドラム8と外槽10の隙間の距離であるクリアランスB(図15)が回転ドラム8の周方向に等しい場合(振れ回りがない場合)には略同じ値となって出力される。
一方、回転ドラム8に振れ回りが発生すると、永久磁石32aと電磁誘導コイル32bとの距離は、回転ドラム8の周方向の位置によって変化するために、4つの極大電圧値に差が生じる。
そして、制御装置7(図2参照)は、極大電圧値の差(振れ回り量)と、予め設定した閾値と比較することで、回転ドラム8の高速回転への移行の可否を判定する。
【0076】
なお、本実施形態での永久磁石32aの数は多いほど望ましく、流体バランサ8cの同心円上で等間隔に配置するのがより望ましい。また、永久磁石32aは、磁力の強いものが望ましく、電磁誘導コイル32bは抵抗が少なく巻き数が多いものが望ましい。このような永久磁石32a及び電磁誘導コイル32bを備えるクリアランス検知手段100は、出力するクリアランス検知信号の出力を安定させることができる。
また、本実施形態でのクリアランス検知手段100においては、永久磁石32aの代わりに、外部から励磁した鉄心を使用することもできる。
また、本実施形態でのクリアランス検知手段100においては、永久磁石32a及び電磁誘導コイル32bを樹脂等で被覆することもできる。また、永久磁石32aを流体バランサ8cに埋め込むと共に、電磁誘導コイル32bを外槽10に埋め込んだクリアランス検知手段100が望ましい。
【0077】
(第4実施形態)
次に本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態に係る洗濯機Lは、気体を噴出させる際の圧力変化を利用したクリアランス検知手段100を備える以外は、前記第1実施形態と同様に構成されている。したがって、本実施形態では、クリアランス検知手段100の構成について説明すると共に、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
参照する図17は、第4実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。
【0078】
図17に示すように、本実施形態に係るクリアランス検知手段100は、エアポンプ33a(圧縮空気供給手段)と、回転ドラム8の外周面に対向するように設けられた貫通孔の開口33b(ノズル)と、エアポンプ33aと開口33bとを接続するエア流路33dと、このエア流路33dの途中に設けられてエア流路33d内の圧力を検出する圧力検出手段33cと、を備えている。
【0079】
このようなクリアランス検知手段100によれば、エアポンプ33aにより一定流量に保たれた圧縮空気(破線矢印AIR)が開口33bから回転ドラム8の外周面に向けて噴き付けられると、開口33bと回転ドラム8の外周面との相対距離の変化、つまりクリアランスBの変化に伴って(回転ドラム8の振れ回りによって)、開口33aの出口近傍での圧縮空気の流量(流速)が変化する。そして、この変化に伴ってエア流路33d内の圧力が変化する。
そして、制御装置7(図2参照)は、圧力検出手段33cで検出した圧力変化量、つまり、最大圧力と最小圧力の差で間接的に表される振れ回り量と、予め設定した閾値と比較することで、回転ドラム8の高速回転への移行の可否を判定する。
【0080】
また、制御装置7(図2参照)は、予めシミュレーション試験等で求めた次に説明する初期変動と、圧力検出手段33cで検出した圧力変化量との差に基づいて回転ドラム8の高速回転への移行の可否を判定することもできる。更に詳しく説明すると、制御装置7が参照するメモリに記憶される前記初期変動は、例えば、振れ回りが起こらないような回転ドラム8の回転速度(例えば、900r/min以下)において、圧力検出手段33cで検出した圧力変化量(最大圧力と最小圧力の差)と回転ドラム8の位置情報(一回転する間の回転角度情報)との関係として求められる。
【0081】
このような初期変動を考慮することで回転ドラム8の高速回転への移行の可否を判定する方法によれば、例えば、洗濯機Lの運転状態が、ベローズ11(図5参照)が変形するような外槽10の振動状態を伴うものであって、外槽10の振動による圧力変化が加わったとしても、回転ドラム8の振れ回りによる圧力変化と外槽10の振動による圧力変化とを分離することができる。そのため、より正確に回転ドラム8の高速回転への移行の可否を判定することができる。
【0082】
また、本実施形態に係るクリアランス検知手段100においては、開口33bが、外槽10内の洗濯水に水没しないように、最大水位より高い位置に取り付けることが望ましい。
また、本実施形態に係るクリアランス検知手段100においては、エアを噴き付ける回転ドラム8の表面粗さを小さくするか、又は表面粗さを一定にすることが望ましい。このような表面粗さを制御した回転ドラム8を使用すると、クリアランス検知手段100は、高速回転する回転ドラム8に対しても、振れ回り量に対応した圧力変化量を、より正確に検出することができる。
また、本実施形態でのクリアランス検知手段100は、圧縮空気を回転ドラム8に噴出することでクリアランスBを検知するので、その検知位置の水滴やほこりを吹き飛ばすことができる。そのため、このクリアランス検知手段100によれば、検知精度をより向上させる効果も奏することができる。
【0083】
(第5実施形態)
次に本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態に係る洗濯機Lは、電気的な接触を利用したクリアランス検知手段100を備える以外は、前記第1実施形態と同様に構成されている。したがって、本実施形態では、クリアランス検知手段100の構成について説明すると共に、前記第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
参照する図18は、第5実施形態でのクリアランス検知手段を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。
【0084】
図18に示すように、本実施形態でのクリアランス検知手段100は、外槽10と回転ドラム8との間に配置される一対の電極端子34,34と、これらの電極端子34,34同士に回転ドラム8が接触した際に、電極端子34,34間に流れる電流を検知する検知回路53と、を備えている。
【0085】
本実施形態での電極端子34,34は、外槽10の外側から内側に向かって貫通するように差し込まれると共に隙間が形成されるように並設されている。
本実施形態での検知回路53としては、両電極端子34,34との間で形成される閉回路内に電池54と抵抗55とが直接に配されたものが挙げられる。また、この検知回路53内には、図示しないが、抵抗55に流れる電流を検出して制御装置7(図2参照)に出力する電流検出部が設けられている。
【0086】
このようなクリアランス検知手段100によれば、回転ドラム8の振れ回り量が所定の量に達して導電性の回転ドラム8が電極端子34,34と接触した際に、制御装置7(図2参照)は、検知回路53内を流れる電流の検出信号を前記した電流検出部(図示省略)を介して入力する。そして、制御装置7は、この検出信号の入力を、図7のステップS104の「クリアランス小」と同様に判定することで、高速回転への移行を行わない。その結果、このクリアランス検知手段100を備える洗濯機Lによれば、外槽10と回転ドラム8との衝突を防ぐことができる。
なお、本実施形態は、電極端子34,34には、導電性の回転ドラム8が接触することを想定して構成しているが、絶縁性の回転ドラム8(流体バランサ8cを含む)を使用する場合には、電極端子34,34と接触する部分に導電性の部材を設けるとよい。
【0087】
次に参照する図19は、第5実施形態でのクリアランス検知手段の変形例を説明するための図5のD部に対応する部分拡大図である。
図19に示すように、クリアランス検知手段100は、外槽10の適所に固定されたベース35cと、このベース35に設けられた軸35a回りに回動するようにその中央部が軸支され、その一端が外槽10と回転ドラム8との間に配置されると共に他端に揺動電極端子34aが設けられている棒状のスイッチ部材35aと、前記揺動電極端子34aと接触可能な位置でベース35に設けられる固定電極端子34bと、前記スイッチ部材35aの他端とベース35との間に設けられて、前記固定電極端子34bに前記揺動電極端子34aが接触するように付勢する引っ張りコイルばね35bと、前記固定電極端子34bと前記揺動電極端子34aとの間に流れる電流を検知する検知回路53と、を備えている。なお、検知回路53は、図18に示す検知回路53と同様に構成されているのでその構成説明は省略する。
【0088】
このようなクリアランス検知手段100においては、回転ドラム8が振れ回りしない場合には、引っ張りコイルばね35bの付勢力によって、固定電極端子34bと揺動電極端子34aとは接触し続けているので、制御装置7(図2参照)は、固定電極端子34bと揺動電極端子34aとの間に流れている電流の検出信号を、検知回路53内の電流検出部(図示省略)を介して入力し続ける。
一方、回転ドラム8の振れ回り量が所定の量に達して導電性の回転ドラム8がスイッチ部材35aの一端に接触すると、スイッチ部材35aの他端は、引っ張りコイルばね35bの付勢力に抗して、揺動電極端子34aを固定電極端子34bから離すように回動する。その結果、制御装置7(図2参照)は、検知回路53内の電流検出部(図示省略)からの電流検出信号を入力できなくなる。そのことで、制御装置7は、図7のステップS104の「クリアランス小」と同様に判定することで、高速回転への移行を行わない。その結果、このクリアランス検知手段100を備える洗濯機Lによれば、外槽10と回転ドラム8との衝突を防ぐことができる。
なお、このようなクリアランス検知手段100においては、スイッチ部材35aの一端が丸みを帯びるように加工することで、回転ドラム8に対する接触抵抗を抑えることができる。
【0089】
また、このようなクリアランス検知手段100においては、スイッチ部材35dを、図19に示すように、回転ドラム8の回転方向に対して下り勾配となるように傾けるか、あるいは回転ドラム8の半径方向に延在させるように初期状態を設定することで、スイッチ部材35dに回転ドラム8が接触した際に、スイッチ35dの軸35aにかかる力を抑えることができる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。
前記第1実施形態から第5実施形態では、光、磁力及び電気を利用したクリアランス検知手段100について説明したが、本発明は超音波を利用したクリアランス検知手段100を備えることができる。
また、前記第1実施形態から第5実施形態では、汚れ検知工程(図7のステップS103)及びクリアランス検知工程(図7のステップS104)のそれぞれで一つの閾値(第1閾値及び第2閾値)を設定することを想定しているが、それぞれ2つ以上の閾値を設定することもできる。このことでより詳細なクリアランス検知を行うことができる。
また、クリアランス検知には、回転ドラム8が一回転する間に変動するクリアランス量から振幅を算出し、これに基づいて回転ドラム8の振れ回り量を求めることもできる。これによれば、光学センサ26aと反射部27aの初期位置に関係なく製造誤差の影響を受けにくい効果がある。
また、前記第1実施形態から第5実施形態では、傾斜し又は水平に置かれた回転ドラム8を有する洗濯機Lについて説明したが、本発明は縦置き型の回転ドラム8を有する洗濯機Lにも応用できる。
【符号の説明】
【0091】
7 制御装置
8 回転ドラム
9 モータ
10 外槽
26a 光学センサ
26b 光学センサ
27a 反射部
27b 反射部
27c 反射部
27d 反射部
31 洗濯物
32a 永久磁石
32b 電磁誘導コイル
33a エアポンプ(圧縮空気供給手段)
33b 開口(ノズル)
33c 圧力検出手段
33d エア流路(流路)
51 電圧計
100 クリアランス検知手段
B クリアランス
C クリアランス
L 洗濯機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽の内側に配置されて洗濯物の洗濯及び脱水を行う回転ドラムを有する洗濯機において、
前記外槽と前記回転ドラムとの間のクリアランスを検知するクリアランス検知手段と、
前記クリアランス検知手段により検知した前記クリアランスに基づいて、前記回転ドラムの高速回転域への移行可否を制御する制御装置と、
を備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯機において、
前記制御装置は、前記クリアランス検知手段により検知した前記クリアランスに基づいて、予め設定したクリアランスの閾値よりも、検知した前記クリアランスが小さいと判定したときに、前記回転ドラムの高速回転への移行を行わないように制御することを特徴とする洗濯機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の洗濯機において、
前記回転ドラムを回転させるモータが前記回転ドラムの後側に接続され、
前記クリアランス検知手段は、前記回転ドラムを内側に有する前記外槽の少なくとも半分より前方に設けたことを特徴とする洗濯機。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯機において、
前記クリアランス検知手段は、光学センサを備え、
この光学センサは、外槽に配置され、
この光学センサは、前記回転ドラムに対して光を照射すると共に、前記回転ドラムで反射した光の受光量に基づいて前記クリアランスを検知することを特徴とする洗濯機。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯機において、
前記クリアランス検知手段は、永久磁石と、電磁誘導コイルと、この電磁誘導コイルの誘導起電力を検出する電圧計と、を備え、
前記永久磁石は、前記回転ドラムに配置され、
前記電磁誘導コイルは、前記回転ドラムと共に回転する前記永久磁石の磁界が横切る位置で前記外槽に取り付けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯機において、
前記クリアランス検知手段は、
一定流量の圧縮空気の供給が可能な圧縮空気供給手段と、
前記圧縮空気供給手段から供給される圧縮空気を前記回転ドラムに噴出するノズルと、
前記圧縮空気供給手段と前記ノズルとの間で空気を流通させる流路内の圧力を検出する圧力検出手段と、
を備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項7】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の洗濯機において、
前記クリアランス検知手段は、前記外槽と前記回転ドラムとの間に配置される一対の電極端子と、
この電極端子間に流れる電流を検知する電流検知手段と、
を備えることを特徴とする洗濯機。
【請求項8】
請求項4に記載の洗濯機において、
前記制御装置は、前記光学センサの出力する光の受光量の出力信号に基づいて、
前記外槽内の汚れを推定することを特徴とする洗濯機。
【請求項9】
請求項4に記載の洗濯機において、
前記制御装置は、前記光学センサの出力する光の受光量の出力信号に基づいて、
前記外槽と前記回転ドラムとの間における前記洗濯者のかみこみを検知することを特徴とする洗濯機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2012−245020(P2012−245020A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116532(P2011−116532)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】