説明

洗濯装置

【課題】本発明は、洗濯する対象物の素材などに応じて洗浄方式を切り替えることができる洗濯装置を提案することを目的とする。
【解決手段】洗濯装置は、回転軸が水平方向又は水平傾斜方向となる洗濯槽2を有し、この洗濯槽2の内壁面に、凹凸曲面22が設けられるとともに、回転軸方向に突起させたバッフル25が凸設される。そして、洗濯槽2に供給する洗浄液の液位を回転軸より高い位置にして、洗濯槽2を回転することで、被洗浄物に対する損傷の小さい擬似無重力洗浄方式が採用される。又、洗濯槽2に供給する洗浄液の液位を回転軸より低い位置にして、洗濯槽2を回転することで、節水効果の高いたたき洗い方式が採用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物を洗浄する洗濯装置に関するもので、特に、水、石油溶剤或いは有機系溶剤などを含む洗浄液を充填した洗濯槽内で被洗浄物を洗浄する洗濯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の洗濯装置として、鉛直方向に回転軸を形成する洗濯槽を備えるものだけでなく、水平方向或いは水平方向から傾斜させた方向(以下、単に「水平傾斜方向」と呼ぶ)に回転軸を形成する洗濯槽を備えるものが、広く普及されている。鉛直方向に回転軸を形成する洗濯槽を備えた洗濯装置は、洗濯槽の底部に設置されたパルセータを回転させて、洗濯槽内の洗浄液に回転流(渦巻き水流)を発生させる。そして、発生した洗浄液の回転流の力によって、衣類などの被洗浄物同士が擦り合わさることで、被洗浄物が洗浄される(もみ洗い方式)。一方、水平方向或いは水平傾斜方向に回転軸を形成する洗濯槽(ドラム)を備えた洗濯装置は、洗濯槽を回転させることで、洗濯槽の内壁面に突設されたバッフル(羽根)により被洗浄物を洗濯槽の上側に移動させた後、その被洗浄物を自重で落下させる。この被洗浄物が落下したときに、洗濯槽の内壁面との衝突による衝撃力によって、被洗浄物が洗浄される(たたき洗い方式)。
【0003】
このような洗濯装置による洗濯に利用される洗浄液は、水、或いは水に界面活性剤を混入させた溶剤などの水系の洗浄液と、石油系溶剤、或いは有機系溶剤などの非水系の洗浄液とに分類される。水系の洗浄液を利用した場合、被洗浄物に付着した水溶性の汚れが洗浄されるが、被洗浄物の生地や繊維によっては硬化や損傷を受けるため、洗浄後の被洗浄物の状態を悪くしてしまう。一方、非水系の洗浄液を利用した場合、水系の洗浄液のような被洗浄物の損傷の危険性を回避できるが、水溶性の汚れを確実に洗浄できない。
【0004】
これに対して、本出願人は、中心軸が水平方向となる洗濯槽がその内部に設置されたケーシング(水槽)内を洗浄液で充填させて、洗濯槽(ドラム)を回転させることで、洗濯槽内に収容された被洗浄物を洗浄液中で浮遊させるようにして洗浄する洗濯方法(特許文献1参照)及び洗濯装置(特許文献2、特許文献3参照)を提案した。これらの特許文献における洗濯装置ではそれぞれ、内壁面に周方向に連続した凹凸が設けられた洗濯槽を回転させることで、洗濯槽の内壁面側の洗浄液において、洗濯槽の内壁面の凹凸毎の渦流が発生する。この渦流が洗濯槽の内壁面に沿って連続して形成されることで、洗濯槽内の洗浄液には、洗濯槽の回転に沿った大きな流れが発生する。このようにして発生する渦流と大きな流れとが被洗浄物に影響を与えるため、被洗浄物は、洗濯槽内で漂うように浮遊して広がる。そのため、被洗浄物における洗浄液との接触面が広くなるだけでなく、被洗浄物への洗浄液の浸透力が高まり、結果、被洗浄物の汚れに対する洗浄液による洗浄効果が高まった。
【0005】
即ち、本出願人は、上述の各特許文献における洗濯装置のように、ケーシング内に充填させた洗浄液に対して、洗濯槽の回転に基づく圧力分布を形成して洗浄を行うことで、被洗浄物の損傷を防ぐとともに、その洗浄効果を高めることができた。又、洗浄液に形成される圧力分布が、被洗浄物の洗浄液中での挙動に影響するため、これらの効果を十分に発揮するためには、ケーシング内に充填させた洗浄液に対して、その圧力分布を効果的に形成する必要がある。
【0006】
そして、本出願人は、上述の各特許文献における洗濯装置の構成について更なる検証を行った結果、上述したように、洗濯槽の内壁面に周方向に連続して設けられた凹凸面の回転により、洗浄液内に圧力分布が形成されることが明らかになった。即ち、洗濯槽には、その回転方向に沿って凹凸面が形成される。そのため、洗濯槽が回転したとき、凹部内の洗浄液は凸部によって回転方向に移動しようとするが、洗浄液自身は滞留しようとすることで、その凹部内に渦巻状の旋回流が発生する。
【0007】
この渦巻き状の旋回流が、各凹部に形成されることで、ケーシング内に充填させた洗浄液は、洗濯槽の径方向に略同心円状に異なる流速で流れて、洗濯槽の径方向に圧力分布が形成される。洗濯槽の径方向に対して形成される圧力分布が、洗濯槽内で被洗浄物を浮遊させるため、結果的に、洗浄液中で浮遊して漂う被洗浄物を拡げることとなり、洗浄効果を促進するとともに、被洗浄物の損傷を防止できる。以下、上述の各特許文献における洗濯装置における、洗浄方式について、「擬似無重力洗浄方式」と呼ぶものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許3841822号公報
【特許文献2】特許3863176号公報
【特許文献3】特開2010−22645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の各特許文献における洗濯装置は、ケーシングに充填された洗浄液中に洗濯槽を完全に浸漬させた状態などのように、洗濯槽内を洗浄液で一杯の状態とするため、一般の家庭用洗濯装置に比べると、洗浄液を多量に使用する。このため、上述の各特許文献による洗濯装置は、その節水効果が低いため、特に家庭洗濯装置のように、高い節水効果が要求される洗濯装置として適用することが難しい。更に、近年では、家庭洗濯機でも洗浄できる様々な衣料品が開発されており、このような衣料品まで、上述の特許文献における洗濯装置で洗浄する必要はなく、一般的な家庭洗濯機による洗浄で十分である。一方、たたき洗い方式による洗浄を行うドラム式洗濯機においては、洗浄によって衣類の生地を傷めるだけではなく、濯ぎにおいても、十分な水量で濯ぐことがないため、衣類に洗剤が残留してしまうという問題がある。
【0010】
このような問題を鑑みて、本発明は、洗濯する対象物の素材などに応じて洗浄方式を切り替えることができる洗濯装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の洗濯装置は、鉛直方向より水平方向に傾いた方向或いは水平方向となる回転軸により回転するとともに被洗浄物が内部に収容される洗濯槽と、該洗濯槽を覆うとともに洗浄液が供給されるケーシングと、前記洗濯槽の内壁面上に設けられるとともに前記洗濯槽の径方向に凹凸させた凹凸曲面と、を備える洗濯装置において、前記洗濯槽の径方向に向かって前記洗濯槽の内壁面より凸設されるとともに、前記洗濯槽の径方向に沿った高さが前記凹凸曲面の凸部の高さよりも高い、少なくとも1つのバッフルを備え、被洗浄物の洗浄方式として、前記洗濯槽に供給される洗浄液中で被洗浄物を浮遊させて洗浄する第1洗浄方式と、前記バッフルにより被洗浄物を攪拌して洗浄する第2洗浄方式とのいずれかを選択可能としたことを特徴とする。
【0012】
このような洗濯装置において、前記第1洗浄方式を採用する場合は、前記洗濯槽に供給される洗浄液の液位を前記洗濯槽の回転軸より高い位置として、前記洗濯槽を回転させ、前記第2洗浄方式を採用する場合は、前記洗濯槽に供給される洗浄液の液位を前記洗濯槽の回転軸以下の低い位置として、前記洗濯槽を回転させる。このとき、前記洗濯槽に供給される洗浄液の液位を測定する液位センサが設けられ、前記第1及び第2洗浄方式に対する洗浄液の液位が確認されるものとしてもよい。該液位センサが設けられる場合、更に、被洗浄物の種類、容積や重量などによって、洗浄液の液位が自動的に設定されるものとしてもよい。
【0013】
これらの洗濯装置において、前記バッフルが前記洗濯槽の内壁面に対して着脱できるものとしても構わない。又、前記バッフルが前記洗濯槽に固設されるものであっても構わない。
【0014】
更に、前記洗濯槽が、その内壁面から外壁面に向かって貫通したスリットを備えるものとしても構わない。このように構成したとき、前記第1及び第2洗浄方式のいずれかで洗浄を実行する際、前記洗濯槽に供給される洗浄液が循環するようにしても構わない。又、洗浄動作が完了した後、洗浄液を前記洗濯槽から全て排出した状態で、前記洗濯槽を回転する被洗浄物の脱水処理を実行するものとしてもよい。
【0015】
上述のいずれかの洗濯装置において、前記バッフルの前記洗濯槽の中心軸に対して垂直となる断面形状を、前記凹凸曲面の凸部の断面形状と略相似した形状としてもよい。又、前記バッフルの前記洗濯槽の中心軸に対して垂直となる断面形状を、略T字形状としてもよい。更に、前記バッフルの表面に、前記凹凸曲面と略同形状の凹凸曲面が構成されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、凹凸曲面を有する洗濯槽にバッフルを設けることで、擬似無重力洗浄方式による第1洗浄方式と、たたき洗い方式による第2洗浄方式とを、その洗浄する対象によって切り換えることができる。これにより、たたき洗い方式による洗浄可能な衣類に対しては、第2洗浄方式を選択することで、洗浄時の使用する洗浄液の量を低減することができ、節水効果があがる。一方、たたき洗い方式による洗浄で損傷を受けやすい衣類に対しては、第1洗浄方式を選択することで、洗浄時における衣類への損傷を抑制することができる。又、濯ぎにおいて、第1洗浄方式を利用した場合、濯ぎの効果を高めることができる。更に、スリットを設けた洗濯槽により脱水を行ったときには、洗濯槽に凹凸曲面が設けられているため、脱水時に衣類に与える損傷を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は、本発明の実施形態の洗濯装置の構成を示す概略斜視図である。
【図2】は、図1の洗濯装置のケーシング内に設けられる洗濯槽の構成を示す概略斜視図である。
【図3】は、図2に示す洗濯槽の回転軸に垂直な方向における洗濯槽の概略断面図である。
【図4】は、本発明の実施形態の洗濯装置における配管システム及び制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図5】は、図2に示す洗濯槽に設けられるバッフルの第1例の構成を示す概略断面図である。
【図6】は、図2に示す洗濯槽に設けられるバッフルの第2例の構成を示す概略断面図である。
【図7】は、図2に示す洗濯槽に設けられるバッフルの第3例の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態となる洗濯装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の洗濯装置の構成を示す概略斜視図であり、図2は、図1の洗濯装置における洗濯槽の構成を示す概略斜視図である。又、図3は、図2に示す洗濯槽の回転軸に垂直な方向における洗濯槽の概略断面図である。更に、図4は、本実施形態の洗濯装置の配管システムの概略と制御システムの概略とを示すブロック図である。
【0019】
(1)洗濯装置の構成
図1に示す洗濯装置は、洗浄液が内部に供給されるケーシング1と、このケーシング1内部に設けられる円筒形状の洗濯槽2と、ケーシング1の前面側を開口して設けられた被洗浄物の投入口11を覆う扉部3と、ケーシング1を貫通して洗濯槽2に接続された回転軸4と、回転軸4を通じて回転力を伝達させて洗濯槽2を回転させる駆動機構5と、を備える。図1に示すケーシング1及び洗濯槽2のそれぞれは、その中心軸が鉛直方向から水平方向に傾斜した円筒形状で構成されている。即ち、洗濯装置2は、水平方向又は水平傾斜方向となる中心軸を回転軸として、ケーシング1内で回転する。尚、ケーシング1は、洗濯槽2と同心円状の断面を備える円筒形状に限られるものではなく、その内部で洗濯槽2が自由に回転できる形状であればよい。
【0020】
扉部3は、図1に示すように、その一部が投入口11よりケーシング1内に挿入される突起部を有し、扉部3により投入口11を閉じたときに、扉部3の突起部が投入口11に嵌入することで、外部に洗浄液が漏れないように、ケーシング1が扉部3により密封される。又、扉部3は、ケーシング1を閉じたときに、作業者がケーシング1内部を確認できるように、ガラスやアクリル板などの透明部材で構成された窓部を備えるものとしてもよい。これにより、作業者は、ケーシング1内に供給される洗浄液の量や、洗浄中の被洗浄物の様子などを視認できる。駆動機構5は、回転軸4を備えた電動モータで構成するものとしてもよいし、回転軸4を間接的に回転させる電動モータと、電動モータの回転を回転軸4に伝達させるプーリ及びベルトとによって構成するものとしてもよい。又、この駆動機構5は、ケーシング1の外部に設けられるため、回転軸4は、ケーシング1に挿入されて洗濯槽2と接続される。よって、ケーシング1は、この回転軸4が挿入される軸受部が設けられる。この軸受部は、ケーシング1内の洗浄液が外部に漏れないようにするシール構造を備える。
【0021】
このように構成される洗濯装置における洗濯槽2の構成について、図2〜4を参照して以下に説明する。図2に示すように、その回転軸が水平方向又は水平傾斜方向となる洗濯槽2は、一方の底面に開口された開口部21を備えた籠形状である。洗濯槽2の内壁面には、洗濯槽2の回転軸に対して垂直な断面が円周方向に連続した凹凸形状となる凹凸曲面22と、洗濯槽2の回転軸の方向を長手方向として開口したスリット23と、一部の凹凸曲面22上に設けられたバッフル25と、を備える。そして、図3に示すように、洗濯槽2の回転軸に対して垂直な洗濯槽2の内壁面の断面における円周方向に沿って、凹凸曲面22とスリット23とが交互に形成される。尚、図2及び図4では、凹凸曲面22とスリット23とが等間隔で設けられるものとしているが、図3では、凹凸曲面22とスリット23とが異なる間隔で設けられる例を示す。
【0022】
洗濯槽2の内壁面に構成される凹凸曲面22は、図2及び図3に示すように、洗濯槽2の回転軸に対して垂直となる凹凸形状による断面を洗濯槽2の回転軸方向に沿って連続させた曲面によって形成される。即ち、洗濯槽2の回転軸方向をそれぞれの長手方向とする凹部22a及び凸部22bが、洗濯槽2の回転軸に垂直な円周方向に沿って交互に連続して形成されることで、洗濯槽2の内壁面に凹凸曲面22が構成される。又、スリット23は、洗濯槽2の内壁から外壁に向かって貫通するため、このスリット23によって、洗濯槽2内の洗浄液がケーシング1と洗濯槽2との間の領域に排出されるとともに、ケーシング1と洗濯槽2との間の領域内の洗浄液が洗濯槽2内に流入される。
【0023】
尚、図2の構成では、スリット23を、洗濯槽2の回転軸方向を長手方向として開口させたものとしたが、洗濯槽2の回転軸方向に対して配列させた複数の孔によって形成されるものとしてもよい。又、このスリット23は、洗濯槽2の周面となる内壁面だけでなく、開口面21に対抗した底面24にも設けられるものとしてもよいし、ケーシング1(図1参照)と開口面21との間に間隙を設けて構成してもよい。そして、ケーシング1と開口面21との間又は底面24だけにスリット23を設けるものとしてもよい。更に、洗濯槽2の構成についても、その内壁面に凹凸曲面22とスリット23とが交互に形成されるものに限らず、洗濯槽2の内壁面の全周面にわたって、凹凸曲面22が形成されるとともに、凹部22aの一部にスリット23が設けられる構成としてもよい。
【0024】
更に、バッフル25は、一部の凹凸曲面22上において、2つの凹部22aに挟まれて設置されるとともに、洗濯槽2の径方向の高さが凸部22bよりも高くなるように突起された構成を備える。そして、バッフル25は、凸部22bと同様、洗濯槽2の内壁から回転軸に向かって突起させた断面形状を洗濯槽2の回転軸に沿って連続させた形状となる。又、バッフル25は、洗濯槽2の内壁面上に複数設けられるものであってもよいし、1つだけ設けられるものであってもよい。更に、洗濯槽2の内壁面上にバッフル25が複数設けられる場合、バッフル25は、洗濯槽2の周方向に沿って等間隔で設置されることが好ましい。尚、図2及び図3において、3個のバッフル25が洗濯槽2の内壁面上に凸設されるものとしたが、バッフル25は、1個以上設置されていればよく、その個数が3個に限定されるものではない。
【0025】
このように構成される洗濯槽2において、洗濯槽2の周方向に対して、凹凸曲面22において、凹部22aと凸部22bとが交互に形成され、バッフル25が凸部22bの代わりに設置される。このとき、凹部22aの底部、凸部22bの頂部、及び凹部22aと凸部22bとの接続部それぞれにおける形状の変化を緩やかなものとすることで、凹凸曲面22の周方向の断面による曲線を滑らかなものとする。これにより、凹凸曲面22が洗濯槽2の周方向に沿って回転したとき、凹部22aの内側の流体に対して、凸部22bが流れを形成する際、その流れに与える乱れを抑制できる。この凹凸曲面22は、洗濯槽2の周方向に対して同じ幅に形成されるものとしてもよいし、図3に示すように、洗濯槽2の周方向に沿った幅が異なるものとしてもよい。尚、この凹凸曲面22は、湾曲させた薄肉の金属板で形成し、スリット23を設けられた円筒籠状の洗濯槽2の内壁面に取り付けられるものとしてもよい。
【0026】
又、本実施形態の洗濯装置は、図4に示すように、ケーシング1の上部に、ケーシング1に洗浄液を供給する給液流路12と、ケーシング1内の空気の排気と吸気とを行う空気流路13とを備えるとともに、ケーシング1の下部に、ケーシング1から洗浄液を排出する排液流路14を備え、更に、ケーシング1内に供給された洗浄液の液位を計測するための液位計測用配管15及び圧力センサ16を備える。そして、この洗濯装置は、給液流路12から供給される洗浄液の流量を制御する流量制御弁17と、排液流路14から排出される洗浄液の流量を制御する流量制御弁18と、作業者による操作を受け付ける操作部19と、弁開度を指定して流量制御弁17,18それぞれの開閉制御を行う制御部20と、を備える。
【0027】
このとき、液位計測用配管15は、ケーシング1に対して、洗濯槽2の中心軸よりも低い位置に接続されるとともに、鉛直方向に屈曲された構成となる。この液位計測用配管15は、ケーシング1の接続側と逆側の端部に、液位計測用配管15内の圧力を測定する圧力センサ16が、鉛直方向において洗濯槽2の最上位よりも高い位置に設置される。このように圧力センサ16が設置された液位計測用配管15は、ケーシング1内に供給された洗浄液の一部が流入し、その洗浄液の鉛直方向における液位が、ケーシング1内の洗浄液の液位と同一の高さ位置となる。そして、圧力センサ16が、液位計測用配管15内の空圧を測定することで、液位計測用配管15内の洗浄液の液位を測定するため、液位計測用配管15の液位と同一高さとなるケーシング1内の液位が測定されることとなる。
【0028】
このように構成される洗濯装置において、制御部20は、操作部19で受け付けられた操作内容に基づく信号を受けるとともに、操作部19での操作内容に応じて、圧力センサ16からの信号に基づいて、流量制御弁17,18それぞれの弁開度を設定する。即ち、作業者により操作部19が操作されて、洗濯される被洗浄物の内容が入力されると、制御部20は、洗濯槽2に投入された被洗浄物の内容より、ケーシング1内に供給される洗浄液の液位を算出する。そして、制御部20は、算出した洗浄液の液位が保持されるように、圧力センサ16からの信号による液位に基づいて、流量制御弁17,18の弁開度を最適な開度となるように制御する。
【0029】
尚、上記構成の洗濯装置において、給液流路12は、ケーシング1の上部における、洗濯槽2と重なる領域に設置されるものとしてもよいし、洗濯槽2と重ならない位置に設置されるものであってもよい。又、給液流路12は、洗濯槽2の中心軸に並行な方向に沿って、複数の流路が構成されるものでとしてもよいし、1つの流路が形成されるものとしてもよい。更に、ケーシング1内の洗浄液の液位を測定する液位センサとして、液位計測用配管15と圧力センサ16を用いた構成としたが、静電容量や電気抵抗を測定して液位を測定する構成のもののように、別の構成であってもよい。
【0030】
又、不図示であるが、特許文献3と同様、排液流路14から排出される洗浄液を再生処理する廃液処理部が設けられるとともに、廃液処理部で再生処理された洗浄液を給液流路12に流入させてケーシング1の洗浄液を循環させるポンプが設けられるものとしてもよい。そして、特許文献3と同様、ケーシング1内に供給する洗浄液を一時的に貯水するタンクが設けられるものとしてもよい。更に、特許文献3と同様、空気流路13に、ケーシング1内の洗浄液が外部に漏れることを防ぐ空気弁が設置されるものとしてもよいし、上記タンクが設けられる場合は、空気流路13がタンクと接続されるようにしてもよい。
【0031】
(2)擬似無重力洗浄方式による洗浄動作
このような構成の洗濯装置は、洗濯槽2に供給する洗浄液の量を調節することにより、擬似無重力洗浄方式による洗浄動作と、たたき洗い方式による洗浄動作とを実行することが出来る。以下では、まず、擬似無重力洗浄方式による洗浄動作について、簡単に説明する。上述のような構成の洗濯装置が、擬似無重力洗浄方式による洗浄動作を実行するとき、まず、制御部20が制御信号を流量制御弁17,18に与えて、流量制御弁17を開くとともに、流量制御弁18を閉じる。これによって、ケーシング1には、被洗浄物が投入された洗濯槽2が洗浄液中に浸漬するまで、給液流路12より洗浄液が供給される。そして、制御部20が、圧力センサ16から電気信号を受けて、洗濯槽2に対する洗浄液の液位を確認し、操作部19によって入力された被洗浄物の内容に応じて設定された液位となったか否かを判定する。
【0032】
尚、擬似無重力洗浄方式による洗浄動作を実行する場合、洗濯槽2の中心軸以上となる高さから洗濯槽2の最上位よりも高い高さ(洗濯槽2を完全に洗浄液で満たした状態とする高さ)までの間で、洗浄液の液位が設定されるものとしてもよい。このとき、擬似無重力洗浄方式による洗浄動作の実行が指定されると、基本的に、洗濯槽2を完全に洗浄液で満たすように、洗浄液の液位が設定されるものとしてもよい。そして、比重の小さいダウンコートなどのように、浮力が大きく働く被洗浄物の場合に、例外的に、洗濯槽2の上部に空気の層を形成させるように、洗浄液の液位を低く設定して、洗濯槽2が洗浄液で完全に満たされない状態としてもよい。
【0033】
このように、洗濯槽2における洗浄液の液位が被洗浄物を浮遊させるのに十分な液位となったことを、制御部20が確認すると、制御部20が、駆動機構5を駆動させることによって、洗濯槽2の回転が開始する。これにより、洗濯槽2がケーシング1内の洗浄液中を回転することで、洗濯槽2内の被洗浄物が洗浄液中で浮遊しながら拡がり、洗浄液による洗浄又は濯ぎが行われる。尚、濯ぎを実行する場合は、洗浄液の代わりに濯ぎ用の水が供給される。このとき、制御部20は、不図示のポンプを駆動させると同時に、流量制御弁17,18それぞれの開度を調節することにより、洗濯槽2に対して洗浄液を循環させる。尚、制御部20が、ケーシング1内に洗浄液が充填されたことを確認したとき、流量制御弁17,18それぞれを閉じ、洗浄液を循環させることなく、洗濯槽2を回転させて、擬似無重力洗浄方式による洗浄動作を実行するものとしてもよい。
【0034】
このとき、洗濯槽2に充填された洗浄液に対して、凹凸曲面22の回転に基づく、洗濯槽22内壁面側からの流れが形成される。そして、洗濯槽22内壁面側から発生する洗浄液の流れが、洗濯槽2の回転軸に向かって伝播して、洗濯槽2内の洗浄液に圧力分布が発生する。この洗浄液における圧力分布や浮力が被洗浄物に働くことで、被洗浄物は、洗濯槽2内の洗浄液中で、自身も拡がりながら、無重力状態で遊泳しているような挙動を示し、洗浄又は濯ぎがなされる。又、洗濯槽2内の洗浄液に流速の異なる層が形成されて圧力分布ができるため、洗浄液中の被洗浄物は、洗濯槽2の内壁面側に移動した場合、洗浄液の速い流れに影響された挙動を示す。
【0035】
即ち、洗濯槽2内の洗浄液中では、回転方向の大きな流れに加えて、凹凸曲面22によって形成される渦流が存在することとなる。そのため、この洗浄液の流れによって、被洗浄物の洗濯槽2の内壁面に対する衝突が防がれるだけでなく、回転軸側に強制的に移動させられる。更に、洗浄液の流速が異なることで洗浄液中に圧力分布が形成されるため、各層の流速の影響を受ける被洗浄物は、洗浄液中を漂うとともに拡がる。これにより、被洗浄物は、洗浄液の液体分子と接触する面が拡がるため、洗浄液による洗浄及び濯ぎの効果が高くなるだけでなく、被洗浄物に対して、洗浄液の流れに基づく捻りや洗濯槽への衝突などの負担が軽減されるため、洗浄による損傷が低減される。
【0036】
(3)たたき洗い方式による洗浄動作
次に、たたき洗い方式による洗浄動作について、以下で簡単に説明する。擬似無重力洗浄方式による洗浄動作の場合と同様、制御部20が制御信号を与えて、流量制御弁17を開くとともに、流量制御弁18を閉じて、給液流路12よりケーシング1内へ洗浄液が供給される。その後、制御部20が、圧力センサ16から電気信号を受けて、洗濯槽2内の洗浄液の液位が、操作部19によって入力された被洗浄物の内容に応じて設定された液位に到達したことを確認すると、制御部20が制御信号を与えて、流量制御弁17,18を閉じる。そして、制御部20が、駆動機構5を駆動させることによって、洗濯槽2の回転が開始する。
【0037】
たたき洗い方式による洗浄動作では、洗濯槽2の回転を開始するための液位は、洗濯槽2の回転軸よりも低くなるように設定されるなどのように、擬似無重力洗浄方式による洗浄動作の場合に比べて低く設定される。そして、たたき洗い方式による洗浄効果を十分に得られるようにする場合には、洗濯槽2における洗浄液の液位が低くなるように設定される。一方、たたき洗いに不向きな洗浄物を洗浄する場合は、洗濯槽2における洗浄液の液位を高くなるように設定し、もみ洗いによる効果に基づいて洗浄を行うようにしてもよい。更に、たたき洗い方式による洗浄動作では、洗濯槽2における洗浄液の液位が、洗濯槽2に投入された被洗浄物の量(容積或いは重量)に応じた値で設定される。即ち、洗濯槽2に投入された被洗浄物が多い場合は、洗濯槽2における洗浄液の液位が高くなるように設定され、洗濯槽2に投入された被洗浄物が少ない場合は、その液位が低くなるように設定される。
【0038】
そして、上述のように洗濯槽2が回転することによって、被洗浄物に対する洗浄又は濯ぎが開始される。このとき、洗濯槽2の回転により、洗濯槽2の内壁面から突起しているバッフル25が回転するため、洗濯槽2中の下部における被洗浄物が、バッフル25によって、高い位置にかき上げられる。そして、バッフル25により洗濯槽2の上部にかき上げられた被洗浄物は、その自重によって、洗濯槽2の下部に落下する。このように、バッフル25が回転することで、洗濯槽2内の被洗浄物が攪拌される。このとき、洗濯槽2における洗浄液の液位が低く設定される場合は、攪拌される被洗浄物が、落下により洗濯槽2の内壁面と衝突することで、たたき洗いによる洗浄がなされる。一方、洗濯槽2における洗浄液の液位が低く設定される場合は、被洗浄物が、洗濯槽2内の内壁面に沿って転がるように、洗浄液中で攪拌されるため、もみ洗いによる洗浄がなされることとなる。
【0039】
このたたき洗い方式による洗浄が実行されるとき、洗濯槽2の内壁面には、凹凸曲面22が設けられているため、洗濯槽2の内壁面へ落下、又は、洗濯槽2の内壁面を転動する被洗浄物は、凹凸曲面22における凸部22bの頂部に衝突することとなる。この凸部22bの頂部は、上述したように緩やかな曲面で構成されているため、洗濯槽2の内壁面へ落下又は洗濯槽2の内壁面を転動する被洗浄物の損傷を抑制することができる。
【0040】
尚、バッフル25の形状を、被洗浄物を洗濯槽2の低い位置で攪拌させるような形状とし、常にもみ洗いの効果による洗浄又は濯ぎを行うことができるものとしてもよいし、逆に、被洗浄物を洗濯槽2の高い位置で攪拌させるような形状とし、常にたたき洗いの効果による洗浄又は濯ぎを行うことができるものとしてもよい。又、たたき洗い方式による洗浄を行う場合において、上述のように、流量制御弁17,18を閉じて、洗濯槽2に対して洗浄液を循環させないものとしたが、擬似無重力洗浄方式の場合と同様、流量制御弁17,18の開度を調節するとともに、不図示のポンプを駆動させることで、洗濯槽2に対して洗浄液を循環させるものとしてもよい。
【0041】
上述の擬似無重力洗浄方式及びたたき洗い方式のいずれの洗浄動作であっても、被洗浄物の洗浄や濯ぎを行うときの洗濯槽2の回転について、一定方向の回転のみを所定時間連続して行うものとしてもよいし、一定方向の回転を所定時間毎に断続して行うものとしてもよい。即ち、洗濯槽2を正転方向(或いは逆転方向)に一定時間連続して回転させてもよいし、洗濯槽2を正転方向(或いは逆転方向)に回転させる回転期間と洗濯槽2の回転の停止期間とを一定期間が経過するまで繰り返し行うものとしてもよい。
【0042】
又、洗浄や濯ぎのための洗濯槽2の回転を断続的に行う場合において、断続的に開始される回転毎に、その回転方向を逆方向に切り換えるものとしてもよい。即ち、洗濯槽2を回転させ回転させる回転期間と洗濯槽2の回転の停止期間とを一定期間が経過するまで繰り返し行い、且つ、回転期間毎に洗濯槽2の回転方向を正転方向と反転方向とで切り換えるものとしてもよい。このとき、停止期間がなく、回転方向を一定時間毎に逆方向に切り換えるものであってもよい。更に、たたき洗い方式のように液位が低い場合に、回転方向を切り換えるとき、洗濯槽2の内壁面上を被洗浄物が転動するように、洗濯槽2を揺動させることで、もみ洗い効果による洗浄又は濯ぎが実行されるものとしてもよい。
【0043】
尚、このようにして洗浄及び濯ぎが実行される洗濯装置において、洗浄時に供給される洗浄液は、水系又は非水系のいずれであっても構わない。そして、水系の洗浄液としては、水、或いは水に界面活性剤を調合させたものなどが使用される。この水系の洗浄液により、水溶性の汚れを洗浄することができる。又、界面活性剤が調合される場合は、この界面活性剤が化学的に反応することで、油性の汚れをも洗浄できる。一方、非水系の洗浄液としては、石油系(炭化水素系)溶剤、或いは有機系溶剤などが使用される。この非水系の洗浄液は、主に油性の汚れを洗浄でき、又、水系の洗浄液に比べて乾燥性が良いという特性を備える。
【0044】
(4)排水処理
制御部20が、洗浄液の汚れ具合や洗浄時間などを測定することで、上述の擬似無重力洗浄方式又はたたき洗い方式のいずれかによる洗浄動作が終了したことを確認すると、駆動機構5を停止させて、洗濯槽2の回転を停止させるとともに、流量制御弁18を開く。尚、不図示のポンプにより洗浄液が循環されているときは、制御部20は、ポンプの動作も停止させる。これにより、洗濯槽2の回転が停止するとともに、ケーシング1内の洗浄液が、排液流路14から排出されるため、扉部3を開いて、洗浄された被洗浄物を洗濯槽2から取り出すことができる。このように、洗浄動作完了後にケーシング1から排出される洗浄液は、濾過や化学処理などの再生処理が施されて、外部に排出されるものとすることが望ましい。
【0045】
(5)洗浄動作の設定
制御部20は、操作部19が操作されて、被洗浄物の種類や重量などが入力されることによって、擬似無重力洗浄方式及びたたき洗い方式のいずれの洗浄方式を採用するかを決定すると同時に、その液位について自動的に設定するものとしてもよい。このとき、操作部19の一部として、重量センサなどを備えるものとしてもよい。即ち、重量センサにより被洗浄物の重量が測定されることで、例えば、たたき洗い方式における液位を制御部20が自動的に設定することができる。又、被洗浄物の種類については、操作部19のキーなどを作業者が操作することで入力されるものであってもよいし、被洗浄物に付随したICタグやQRコードなどで記憶した情報を操作部19で読み取るものであってもよい。更に、洗浄方式と液位について、制御部20が自動的に設定するものではなく、作業者が操作部19を操作して設定されるようにしても構わない。
【0046】
又、制御部20は、上述のようにして、擬似無重力洗浄方式及びたたき洗い方式のいずれの洗浄方式を採用して、被洗浄物を洗浄液による洗浄動作を制御した後、被洗浄物から洗浄液による洗剤を取り除くための濯ぎを行う。このとき、制御部20は、例えば、操作部19への操作により、濯ぎによる効果の高さが求められているときに、擬似無重力洗浄方式を採用して、被洗浄物の濯ぎを実行させるものとしてもよい。又、例えば、操作部19への操作により、節水効果が求められたときに、たたき洗い方式を採用して、被洗浄物の濯ぎを実行させるものとしてもよい。
【0047】
このようにすることで、洗浄で採用する洗浄方式と、濯ぎで採用する洗浄方式とについて個別に設定することができるため、被洗浄物の種類やユーザーの希望に応じて、洗浄及び濯ぎそれぞれで最適となる洗浄方式を組み合わせることができる。又、洗浄や濯ぎをより効果的なものとするために、洗浄及び濯ぎそれぞれについて、擬似無重力洗浄方式による洗浄とたたき洗い方式による洗浄を組み合わせた複数のサイクルで実施するようにしても構わない。
【0048】
そして、被洗浄物の濯ぎが実行された後、被洗浄物に含まれる水分を除去するための脱水が実行されるものとしてもよい。即ち、水による濯ぎが完了して、排液流路14より濯ぎに使用した水をケーシング1から完全に排出すると、制御部20は、駆動機構5を駆動させることによって、洗濯槽2を高速で回転させ、その遠心力により、被洗浄物に含まれる水分をスリット23より、洗濯槽2の外部に排出させる。このような脱水処理が行われているとき、洗濯槽2の内壁面が、緩やかな曲面で形成される凹凸曲面22で覆われているため、被洗浄物の損傷を抑えることができる。
【0049】
(6)バッフルの構成
このように、本実施形態の洗濯装置は、バッフル25を備える構成としたことで、液位を設定して、擬似無重力洗浄方式及びたたき洗い方式のいずれかより、その洗濯又は濯ぎに採用する洗浄方式を選択することができる。以下では、この洗浄方式を選択可能としたバッフル25の構成例について、図面を参照して説明する。尚、以下において、バッフル25の構成例として3例を挙げるが、バッフル25は、たたき洗い方式において被洗浄物を攪拌できると同時に、擬似無重力洗浄方式において障害作用が抑制されるものであればよく、以下の3例による構成に限定されるものではない。
【0050】
1.バッフルの構成の第1例
本実施形態の洗濯装置におけるバッフル25の構成の第1例として、図5の断面図に示すような断面形状を備えたバッフル25aを挙げる。本例におけるバッフル25aの断面形状は、図5に示すように、凹凸曲面22の凹部22aの曲面と連続するような形状とされ、凸部22bと略相似するような形状とする。このように構成することで、上述の擬似無重力洗浄方式による洗浄動作が実行される場合に、バッフル25aを、凹凸曲面22の凸部22bと擬似的にみなすことができるため、凹凸曲面22の一部として作用させることができる。よって、バッフル25aが凹凸曲面22よりも突出した形状であることに基づく、擬似無重力洗浄方式による洗浄時に発生する洗浄液の流れに対する障害作用が、抑制されることとなり、擬似無重力洗浄方式による洗浄効果を発揮できる。
【0051】
2.バッフルの構成の第2例
本実施形態の洗濯装置におけるバッフル25の構成の第2例として、図6の断面図に示すような断面形状を備えたバッフル25bを挙げる。本例におけるバッフル25bの断面形状は、図6に示すように、上述の第1例におけるバッフル25aと異なり、その頂部が左右(洗濯槽2の周方向)に開いた略T字形状となる。このバッフル25bは、その頂部両端が丸みを帯びた曲線を描くように構成されるとともに、凹凸曲面22との接続部分から頂部に向かっては、凹部22aの曲率と連続するような曲線を描くものとすることが好ましい。このようにバッフル25bが構成することで、擬似無重力洗浄方式による洗浄を行う場合においては、バッフル25bの凹凸曲面22との接続部分から頂部の間に構成される凹部で、凹凸曲面22の凹部22aと同様の作用が働くと同時に、バッフル25bの頂部の両端で、凹凸曲面22の凸部22bと同様の作用が働く。
【0052】
これにより、第1例のバッフル25aと同様、洗浄時に発生する洗浄液の流れに対するバッフル25bの障害作用を抑制できる。又、バッフル25bの頂部が、洗濯槽2の周方向に突起した構成を有するため、第1例のバッフル25aと比べて、たたき洗い方式による洗浄を行う際に、被洗浄物をかき上げやすい構造となる。よって、バッフル25bの洗濯槽2の径方向に突起させた高さを、バッフル25aよりも低くすることが可能となる。このように、洗濯槽2の径方向に突起させた高さを低くすることで、擬似無重力洗浄方式におけるバッフル25bによる障害作用を更に抑制できる。尚、本例において、バッフル25bの頂部の中央位置に凹部を設けたような、Y字形状の断面を有するものとしても構わない。
【0053】
3.バッフルの構成の第3例
本実施形態の洗濯装置におけるバッフル25の構成の第3例として、図6の断面図に示すような断面形状を備えたバッフル25cを挙げる。本例におけるバッフル25cの断面形状は、図7に示すように、上述の第1例におけるバッフル25aと異なり、略台形形状となるように凹凸曲面22から突起させるとともに、凹凸曲面22と同様の凹部22aと凸部22bとを連続させた曲面をその表面に有する。即ち、バッフル25cの断面形状が、凹凸曲面22の一部を洗濯槽2の回転軸に向かって略台形形状に突起させた形状とされる。
【0054】
このように、バッフル25cに、凹凸曲面22と同様の凹部22aと凸部22bとが形成されることとなるため、擬似無重力洗浄方式による洗浄を行った場合、バッフル25cの表面には、凹凸曲面22の表面と同様の洗浄液による流れが発生する。即ち、凹部22aに沿った渦流が発生すると同時に、洗濯槽2の周方向に沿った大きな洗浄液の流れが発生する。これにより、洗濯槽2内に圧力分布が発生し、被洗浄物を洗浄液中で拡げると同時に浮遊させる流れが発生される。このように、バッフル25cの表面についても、凹凸曲面22と同様に作用するため、第1例のバッフル25aに比べて、洗濯槽2の径方向に突起させた高さを高くすることができる。この洗濯槽2の径方向の高さを高くすることにより、たたき洗い方式において、バッフル25cが、バッフル25aに比べて、被洗浄物をかき上げやすくなるため、たたき洗いによる洗浄効果を高めることができる。
【0055】
尚、本実施形態において、バッフル25が洗濯槽2の内壁面上に固設されるものとしたが、このバッフル25が洗濯槽2に対して着脱可能な構成であるものとしても構わない。即ち、たたき洗い方式による洗浄を実行する場合は、バッフル25を洗濯槽2の内壁面に取り付けることで、バッフル25による攪拌に基づく洗浄を実行させることができる。一方、擬似無重力洗浄方式による洗浄を実行する場合は、洗濯槽2の内壁面からバッフル25を取りはずすことにより、洗濯槽2の内壁面のほぼ全面を凹凸表面22とすることができ、バッフル25による障害作用を抑制できる。このように、バッフル25を着脱自在な構成とすることで、バッフル25の形状を、たたき洗い方式に最適な形状とすることができるとともに、擬似無重力洗浄方式においてはバッフル25による障害作用がなくなる。
【0056】
このとき、例えば、バッフル25の洗濯槽2の内壁面と当接する部分に突起させた係止部材を設けるとともに、洗濯槽2の内壁面には、この係止部材が挿入される係止用孔が設けられるような構成としてもよい。即ち、たたき洗い方式による洗浄を実行する場合において、洗濯槽2の内壁面に係止用孔に、バッフル25の係止部材を挿入して、バッフル25を洗濯槽2に取り付ける構成としてもよい。又、別の例として、洗濯槽2の内壁面において、バッフル25の洗濯槽2との当接部の両端部分が嵌合されるレールを、洗濯槽2の回転軸に平行な方向に沿って設けるものとしてもよい。即ち、たたき洗い方式による洗浄を実行する場合において、洗濯槽2に対して、バッフル25をレールに嵌合させることによって、バッフル25を取り付ける構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、その回転軸が水平方向又は水平傾斜方向となる洗濯槽を回転させて被洗浄物の洗浄を行う洗濯装置に適用できる。又、この洗濯装置において使用する洗浄液として、水系の洗浄液であっても構わないし、非水系の洗浄液であっても構わない。
【符号の説明】
【0058】
1 ケーシング
2 洗濯槽
3 扉部
4 回転軸
5 駆動機構
11 投入口
12 給液流路
13 空気流路
14 排液流路
15 液位計測用配管
16 圧力センサ
17,18 流量制御弁
19 操作部
20 制御部
21 開口部
22 凹凸曲面
22a 凹部
22b 凸部
23 スリット
24 底面
25 バッフル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向より水平方向に傾いた方向或いは水平方向となる回転軸により回転するとともに被洗浄物が内部に収容される洗濯槽と、該洗濯槽を覆うとともに洗浄液が供給されるケーシングと、前記洗濯槽の内壁面上に設けられるとともに前記洗濯槽の径方向に凹凸させた凹凸曲面と、を備える洗濯装置において、
前記洗濯槽の径方向に向かって前記洗濯槽の内壁面より凸設されるとともに、前記洗濯槽の径方向に沿った高さが前記凹凸曲面の凸部の高さよりも高い、少なくとも1つのバッフルを備え、
被洗浄物の洗浄方式として、前記洗濯槽に供給される洗浄液中で被洗浄物を浮遊させて洗浄する第1洗浄方式と、前記バッフルにより被洗浄物を攪拌して洗浄する第2洗浄方式とのいずれかを選択可能としたことを特徴とする洗濯装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1洗浄方式を採用する場合は、
前記洗濯槽に供給される洗浄液の液位を前記洗濯槽の回転軸より高い位置として、前記洗濯槽を回転させ、
前記第2洗浄方式を採用する場合は、
前記洗濯槽に供給される洗浄液の液位を前記洗濯槽の回転軸以下の低い位置として、前記洗濯槽を回転させることを特徴とする洗濯装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記バッフルが前記洗濯槽の内壁面に対して着脱できることを特徴とする洗濯装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記洗濯槽が、その内壁面から外壁面に向かって貫通したスリットを備えることを特徴とする洗濯装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記バッフルの前記洗濯槽の中心軸に対して垂直となる断面形状が、前記凹凸曲面の凸部の断面形状と略相似した形状であることを特徴とする洗濯装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記バッフルの前記洗濯槽の中心軸に対して垂直となる断面形状が、略T字形状であることを特徴とする洗濯装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記バッフルの表面に、前記凹凸曲面と略同形状の凹凸曲面が構成されることを特徴とする洗濯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−24465(P2012−24465A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168288(P2010−168288)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(306021424)株式会社ハッピー (9)
【Fターム(参考)】