説明

洗車機および洗車方法

【課題】ブロワから噴出す空気をエアーカーテンとして用いる際に、エアーカーテン効果を十分発揮すると共に騒音は発生しないで洗車可能な洗車機および洗車方法を提供する。
【解決手段】乾燥用空気を噴出す左右一対のブロワ20のうち、いずれか一方のブロワを通常の第一の速度で駆動する通常エアーカーテン工程と、一方のブロワを第一の速度とこの第一の速度より低速の第二の低速との中間の第三の速度で駆動する低騒音エアーカーテン工程を備える洗車機WAおよび洗車方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば給油所に設置され洗車に使用される洗車機に関し、特に、騒音対策のために低騒音モードを備える洗車機および洗車方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給油所などに設置されている洗車機は、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両に貯液タンクに貯留された液剤や洗浄水を噴射して洗車を行う構成とされている。また、液剤や洗浄水を噴射しながらブラッシングして洗浄することや、洗浄後に風を吹き付けて乾燥することが行われている。
【0003】
洗浄工程においては、先ず、洗浄水を用いて汚れを落とし、次いでシャンプーなどの液剤を用いて洗浄し、さらに洗浄水を用いて水洗いする。この洗浄工程の後で、各送風ノズルから送風して乾燥する乾燥工程が行われる。また、必要に応じてワックスや撥水コートなどの液剤塗布工程を適宜組み合わせて洗車を行う。このように、洗車の際に用いる液剤としては、各種のシャンプーやワックスやコート類が用いられており、それぞれ専用の貯液タンクに貯留され、タンク内に挿入されたチューブを介して、洗車工程の処理に応じて噴射され消費される。また、複数の洗車コースから所望のコースを選択し、使用する液剤の種類を選択して所定の駆動モードに設定する操作パネルやリモートパネルを備えている。操作パネルは洗車機本体に配設しているが、リモートパネルは洗車機本体から離れた位置に設置して、このリモートパネルと操作パネルとを電気的に接続して、リモートパネルに設定された洗車コースにより、洗車機を駆動可能にしている。
【0004】
操作パネルやリモートパネルを備える洗車機の一例について図4を用いて説明する。この洗車機WAは、複数のブラシを備える洗浄部材と、ブロワと複数の送風ノズルを備える乾燥部材とを一体に装着し、被洗浄車両CAを跨ぐように門型とされる洗車機本体1を備えた構成であり、被洗浄車両CAと洗車機本体1を前後方向に相対移動させながら、複数の貯液タンクに貯留された液剤をそれぞれ水により希釈して前記被洗浄車両へ噴射して、前記被洗浄車両の洗車を行う。
【0005】
例えば、洗車機本体1が、車輪3を介してレール2上に沿って走行移動する構成とし、被洗浄車両CAを、該被洗浄車両CAを跨ぐ門型とされる洗車機の左右一対のレール間の所定の位置に停車して、洗車機本体1に設置する操作パネル7もしくは洗車機本体1から離れた位置に設置するリモートパネル7Aに、所望の洗車コースを設定し、スタートボタンを操作して、洗車操作を開始する。
【0006】
門型の洗車機本体1は、被洗浄車両CAを洗浄するブラシとして、例えば、被洗浄車両CAの上面を洗浄するトップブラシ4と、被洗浄車両CAの両側面と前後面を洗浄する左右一対のサイドブラシ5と、被洗浄車両CAの両側面下部を洗浄する左右一対のロッカーブラシ6を備えている。
【0007】
また、ブラッシングの際に使用する洗浄水や各種液剤を噴射する各種ノズルや各種液剤を貯液する貯液タンクを備えている。各種液剤を貯液する複数の貯液タンクは、洗車機本体1に設けられるタンク収納部60に収納されており、電磁式の開閉弁と副給水ホースを備える分配配管部61を介して各ノズルに分配している。液剤を噴射するノズルとしては、例えば、第一浄水ノズル11、第一洗剤ノズル12、第二浄水ノズル13、撥水コートノズル14、第二洗剤ノズル15、ワックスノズル16などが配設されている。
【0008】
さらに、乾燥のために、ブロワ20と該ブロワ20からの送風を吹き付ける昇降自在なトップ送風ノズル21と左右一対のサイド送風ノズル22を備えている。また、洗車機本体1に配設する操作パネル7、もしくは、洗車機本体1から離れた位置に設置するリモートパネル7Aを介して、洗車機WAの駆動条件を設定し、設定された条件に基づいて洗車機WAを駆動する構成としている。8は、被洗浄車両CAの有無および車高を検知するセンサであって、例えば、光電センサや超音波を利用したソニックセンサが好適に用いられる。
【0009】
操作パネル7やリモートパネル7Aには、水洗いコースや、洗剤を用いた洗浄コースや、ワックスを塗布するワックスコースや、撥水剤をコートする撥水コースなどの各種洗車コースを選択する選択ボタンや、ブラシの回転数を制御するブラシ回転スイッチや、スタート・ストップボタンなどが設けられている。
【0010】
また、洗車機本体1を、洗浄部材を備えた洗浄機本体と乾燥部材を備えた乾燥機本体との別体として、それぞれが、被洗浄車両CAを跨ぐように門型とされ、被洗浄車両CAと洗浄機本体と乾燥機本体とを前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両CAの洗車を行う構成の洗車機も知られている。この構成であっても、各種ブラシと各種ノズルを備え、操作パネル7もしくはリモートパネル7Aを備えていることは同じである。
【0011】
上記した従来の洗車機WAにおいて、洗車機の設置条件によっては、洗車の際の騒音を小さくすることや、洗車の際に吹き付ける洗浄水や液剤などを所定領域以外には飛散させないように工夫することが求められている。例えば、各洗車コースに設ける駆動モードに低騒音モードを設け、この低騒音モードが選択されると、洗浄手段や乾燥手段の駆動回転数を低速にして洗車工程を実行することが行われている。また、本出願人からも、低速選択スイッチが選択されると、ブロワを低速駆動する制御手段を設けた洗車機が既に提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
また、洗浄水や液剤の飛散を抑制するために、飛散防止用カーテンやエアーカーテンを使用することが行われており、例えば、乾燥用に設置している送風ノズルからエアーを噴射して飛散防止用のエアーカーテンを形成した車両洗浄装置が既に提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第3008738号公報
【特許文献2】実開昭60−188056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ブラシの回転数を低速にしたり、ブロワの駆動回転数を低速にしたりして、洗車の際の騒音を低く抑えることはできる。また、これらの回転数を低速にしても、洗車機本体と被洗浄車両との相対速度を低速にすることで、所定の洗車効果を発揮する。
【0015】
しかし、ブロワから噴出す空気をエアーカーテンとして利用する場合に、このブロワの駆動回転数を低速にすると、噴出されるエアー流速が低下して所定のエアーカーテン効果を発揮しなくなって問題となる。
【0016】
噴出されるエアー流速が低下すると、洗車機本体と被洗浄車両との相対速度を低速にしても、エアーカーテンによる遮蔽効果(エアーカーテン効果)が不十分となって、洗浄水や液剤の飛散を抑制することが困難となる。
【0017】
そのために、低騒音モードが選択されても、ブロワから噴出す空気をエアーカーテンとして用いる場合には、この噴出すエアー流速は所定の速度以下には落とさないことが好ましい。
【0018】
また、洗車効果とエアーカーテン効果を十分発揮することが求められるので、所定の洗車効果とエアーカーテン効果と低騒音効果を発揮して洗車を行うことが好ましい。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑み、ブロワから噴出す空気をエアーカーテンとして用いる際に、エアーカーテン効果を十分発揮すると共に騒音は発生しないで洗車可能な洗車機および洗車方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明は、洗浄手段と乾燥手段を備え、前記乾燥手段を通常の第一の速度で駆動する通常乾燥モードと、前記乾燥手段を前記第一の速度より低速の第二の速度で駆動する低騒音乾燥モードを選択可能で、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、前記乾燥手段は左右一対のブロワと送風ノズルを備え、洗浄中における水滴の飛散を防止するためのエアーカーテンを形成するエアーカーテン工程を有し、当該エアーカーテン工程は、前記通常乾燥モードにおいては、前記左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、前記第一の速度で駆動し、前記低騒音乾燥モードにおいては、前記左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、前記第一の速度と前記第二の速度との中間の第三の速度で駆動することを特徴としている。
【0021】
この構成によると、低騒音乾燥モードにおいてエアーカーテン工程が選択されると、片方のブロワのみを、第一の速度と第二の速度の中間の第三の速度で駆動してエアーカーテンを形成するので、低騒音化を実現しつつエアーカーテンの遮蔽効果を弱くし過ぎず、所定のエアーカーテン効果を発揮して洗車可能な洗車機を得ることができる。
【0022】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記第三の速度で行うエアーカーテン工程は、騒音が発生しない程度に低く、且つ、所定の遮蔽効果を発揮する程度に高い駆動速度に設定されることを特徴としている。この構成によると、低騒音乾燥モードにおけるエアーカーテン工程は、左右一対のブロワを同時に第一の速度で駆動する通常モードよりも低速であるので、所定の低騒音効果を発揮する。また、左右一対のブロワを同時に第二の速度で駆動するよりも高速であるので、所定のエアーカーテン効果を発揮することができる。
【0023】
また本発明は、上記構成の洗車機において、前記左右一対のブロワを同時に前記第二の速度で駆動する際の騒音レベルと、いずれか一方のブロワを前記第三の速度で駆動する際の騒音レベルとが略等しいことを特徴としている。この構成によると、一対二個のブロワを駆動した際に生じる騒音レベルと同等の騒音レベルまで、一個のブロワの駆動回転数を上げることができるので、所定のエアーカーテン効果を発揮可能となる。
【0024】
また本発明は、洗浄手段と乾燥手段を備え、前記乾燥手段を通常の第一の速度で駆動する通常乾燥モードと、前記乾燥手段を前記第一の速度より低速の第二の速度で駆動する低騒音乾燥モードを選択可能で、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機の洗車方法であって、前記乾燥手段は左右一対のブロワと送風ノズルを備え、洗浄中における水滴の飛散を防止するためのエアーカーテンを形成するエアーカーテン工程を有し、当該エアーカーテン工程は、前記低騒音乾燥モードにおいては、前記左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、前記第一の速度と前記第二の速度との中間の第三の速度で駆動することを特徴としている。
【0025】
この構成によると、低騒音乾燥モードにおいてエアーカーテン工程が選択されると、片方のブロワのみを、第一の速度と第二の速度の中間の第三の速度で駆動してエアーカーテンを形成するので、低騒音化を実現しつつエアーカーテンの遮蔽効果を弱くし過ぎず、所定のエアーカーテン効果を発揮して洗車可能な洗車方法を得ることができる。
【0026】
また本発明は、上記構成の洗車方法において、前記左右一対のブロワを同時に前記第二の速度で駆動する際の騒音レベルと、いずれか一方のブロワを前記第三の速度で駆動する際の騒音レベルとが略等しいことを特徴としている。この構成によると、一対二個のブロワを駆動した際に生じる騒音レベルと同等の騒音レベルまで、一個のブロワの駆動回転数を上げることができるので、所定のエアーカーテン効果を発揮可能な洗車方法となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、いずれか一方のブロワを通常の第一の速度で駆動する通常エアーカーテン工程と、一方のブロワを第一の速度と、この第一の速度より低速の第二の速度と、の中間の第三の速度で駆動する低騒音エアーカーテン工程を備えているので、低騒音化を実現しつつエアーカーテンの遮蔽効果を弱くし過ぎず、所定のエアーカーテン効果を発揮して洗車可能となる。そのために、ブロワから噴出す空気をエアーカーテンとして用いる際に、エアーカーテン効果を十分発揮すると共に騒音は発生しないで洗車可能な洗車機および洗車方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る洗車機のエアーカーテンモードを示す概略正面図である。
【図2】乾燥手段の駆動モードを説明するブロック図である。
【図3】洗車コースを設定するリモートパネルを示す概略正面図である。
【図4】洗車機の全体構成を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。また、同一構成部材については同一の符号を用い、詳細な説明は適宜省略する。
【0030】
本実施形態の洗車機WAは、洗車機本体と被洗浄車両とを前後方向に相対移動させながら、被洗浄車両の洗車を行う洗車機であって、先に図4を用いて説明したように、車輪3を介してレール2上に沿って走行移動する門型の洗車機本体1に、被洗浄車両CAの上面を洗浄するトップブラシ4と、被洗浄車両CAの両側面と前後面を洗浄する左右一対のサイドブラシ5と、被洗浄車両CAの両側面下部の足回りを洗浄する左右一対のロッカーブラシ6を備え、乾燥のために、ブロワ20と該ブロワ20からの送風を吹き付ける昇降自在なトップ送風ノズル21と左右一対のサイド送風ノズル22を備えた構成である。
【0031】
ブロワ20は図1に示すように、右ブロワ20Aと左ブロワ20Bの左右一対設けられており、右ブロワ20Aにより、右トップ送風ノズル21Aと右サイド送風ノズル22Aへ乾燥用エアーを供給し、左ブロワ20Bにより、左トップ送風ノズル21Bと左サイド送風ノズル22Bへ乾燥用エアーを供給している。
【0032】
また、洗車の際に、洗浄水や液剤の飛散を抑制するために、送風ノズル(トップ送風ノズル21とサイド送風ノズル22)からエアーを噴出してエアーカーテンを形成するエアーカーテン工程を有する構成としている。
【0033】
例えば、図1に示すように、右ブロワ20Aを駆動して、右トップ送風ノズル21Aと右サイド送風ノズル22Aから乾燥用エアーを噴出して、エアーカーテン100を形成する。このエアーカーテン100は、左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して駆動すればよく、左ブロワ20Bを駆動して、左トップ送風ノズル21Bと左サイド送風ノズル22Bから乾燥用エアーを噴出して、エアーカーテン100を形成してもよい。
【0034】
また、洗車の際の騒音が問題とならない地域や洗車時間帯に洗車する通常駆動モードに加えて、洗車の際に騒音が問題となる地域環境や時間帯において、騒音を抑制するために、低騒音駆動モードを設けることがある。
【0035】
この低騒音駆動モードが選択されると、通常駆動モードにおける通常の第一の速度よりも低速の第二の速度により洗浄手段と乾燥手段がそれぞれ駆動される。洗浄手段は回転ブラシと駆動モータを備え、乾燥手段は左右一対のブロワと送風ノズルを備えているので、通常駆動モードでは、回転ブラシの駆動モータとブロワを所定の通常の第一の速度でそれぞれ駆動する通常乾燥モードである。また、低騒音駆動モードでは、回転ブラシの駆動モータとブロワを第一の速度より低速の所定の第二の速度でそれぞれ駆動する低騒音乾燥モードである。
【0036】
すなわち、本実施形態に係る洗車機WAは、洗浄手段と乾燥手段を備え、これらを駆動するためのモードとして通常駆動モードと低騒音駆動モードを有し、選択された各種モードに基づいて被洗浄車両CAと洗車機本体1を前後方向に相対移動させながら洗車を行う。
【0037】
上記したように、通常駆動モードにおいては、トップブラシ4やサイドブラシ5などの洗浄手段を通常の第一の速度で回転駆動し、乾燥手段としてのブロワ20(右ブロワ20Aと左ブロワ20B)を通常の第一の速度で駆動する。また、低騒音駆動モードにおいては、トップブラシ4やサイドブラシ5などの洗浄手段を第一の速度より低速の第二の速度で回転駆動し、乾燥手段としてのブロワ20(右ブロワ20Aと左ブロワ20B)を第一の速度より低速の第二の速度で駆動する。この際に、より低速な第二の速度で駆動しても所定の洗車効果(洗浄効果と乾燥効果)を発揮するために、洗車機本体1と被洗浄車両CAとの相対速度を低速にすることもある。
【0038】
また、洗浄中に乾燥手段を駆動してエアーカーテンを形成するエアーカーテン工程は、洗車機本体1の洗車領域を外れて洗浄水や液剤が飛散しないようにエアーカーテンを形成する空気を噴出す工程であるので、片側の一方のブロワから空気を噴出して洗車領域を区切るエアーカーテンを形成することが可能である。
【0039】
また、エアーカーテン工程におけるブロワ20の駆動速度は、通常駆動モード(通常乾燥モード)においては通常の第一の速度で行うが、低騒音駆動モード(低騒音乾燥モード)が選択されたときに、この第一の速度でブロワ20を駆動すると騒音が大きくなってしまい低騒音とならず好ましくない。また、低騒音乾燥モードが選択されたときに、この第一の速度より低速の第二の速度でブロワ20を駆動すると噴出されるエアー流速が十分速くならず、所定のエアーカーテン効果を得ることができない。
【0040】
そのために、低騒音乾燥モードにおいてエアーカーテン工程を行う場合は、左右一対のブロワを同時に第二の速度で駆動するのではなく、いずれか一方のブロワのみを用いて、所定のエアーカーテン効果と低騒音効果を発揮可能な第三の速度でブロワ20を駆動することが好ましい。すなわち、洗車条件を設定する際に低騒音駆動モードが選択されると、回転ブラシなどの洗浄手段は、より低速な第二の速度に設定して洗車を行い、この低騒音駆動モードにおいてエアーカーテン工程が選択されると、この第二の速度よりも速い速度で所定のエアーカーテン効果を発揮し、且つ、第一の速度よりも遅い速度で所定の低騒音効果を発揮可能な第三の速度でブロワ20を駆動する。
【0041】
すなわち、通常駆動モードは、洗浄手段と乾燥手段とをそれぞれ通常の第一の速度にて駆動するモードであり、低騒音駆動モードは、洗浄手段と乾燥手段をそれぞれ第一の速度より低速の第二の速度にて駆動するモードである。すなわち、乾燥手段は、通常の第一の速度で駆動する通常乾燥モードと、この第一の速度より低速の第二の速度で駆動する低騒音乾燥モードを選択可能に有する。そして、エアーカーテン工程は、左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、第一の速度で駆動する通常エアーカーテン工程と、左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、第一の速度と第二の速度の中間の第三の速度で駆動する低騒音エアーカーテン工程を備える。
【0042】
上記した構成であれば、低騒音乾燥モードにおいてエアーカーテン工程が選択されると、片方のブロワのみを、通常の第一の速度と、この第一の速度より低速の第二の速度と、の中間の第三の速度で駆動するので、低騒音化を実現しつつエアーカーテンの遮蔽効果を弱くし過ぎず、所定のエアーカーテン効果を発揮して洗車可能な洗車機を得ることができる。
【0043】
このように、低騒音乾燥モードにおけるエアーカーテン工程のブロワの駆動条件は、騒音が発生しない程度に低く、且つ、所定の遮蔽効果を発揮する程度に高い駆動速度に設定されることが好ましい。この構成であれば、低騒音乾燥モードにおけるエアーカーテン工程は、左右一対のブロワを同時に通常の第一の速度で駆動する通常乾燥モードよりも低速であるので、所定の低騒音効果を発揮する。また、左右一対のブロワを同時に第二の速度で駆動するよりも高速であるので、所定のエアーカーテン効果を発揮することができる。
【0044】
また、左右一対のブロワ20(右ブロワ20Aと左ブロワ20B)を同時に第二の速度で駆動する際の騒音レベルと、いずれか一方のブロワを第三の速度で駆動する際の騒音レベルとが略等しいことが好ましい。この構成であれば、低騒音乾燥モードにおける一対二個のブロワを駆動した際に生じる騒音レベルと同等の騒音レベルまで、一個のブロワの駆動回転数を上げることができるので、所定のエアーカーテン効果(遮蔽効果)を発揮可能となる。
【0045】
例えば、各駆動モータの駆動周波数をインバータ装置により可変制御して通常の第一の速度と、この第一の速度より低速の第二の速度とに切り替える構成とし、第一の速度のときにインバータ周波数が55Hzで、第二の速度が40Hzとしたときに、この洗車機から10m離れた地点での騒音レベル(レンジAで10秒間の平均)を実際に測定した。この際に、左右一対のブロワ20を第一の速度(55Hz)で同時に駆動したときの騒音レベルが66.8デシベルで、第二の速度(40Hz)で同時に駆動したときの騒音レベルが61.7デシベルであった。
【0046】
ここで、エアーカーテンを形成するためにいずれか一方のブロワを駆動して、その騒音レベルが61.7デシベルとなるインバータ周波数は48Hzであった。すなわち、低騒音乾燥モードのエアーカーテン工程は、第二の速度(40Hz)よりも速い第三の速度(48Hz)で駆動できることが判った。
【0047】
次に、図2を用いて乾燥手段の駆動モードについて説明する。
【0048】
乾燥手段の駆動モードには、前述したように、通常乾燥モードと低騒音乾燥モードがある。通常乾燥モードが選択される(ステップS1)と通常の第一の速度が設定される(ステップS11)。また、ここで、エアーカーテン工程が選択される(ステップS12)と、通常の第一の速度にてブロワを駆動する通常エアーカーテン工程が設定される(ステップS13)。
【0049】
また、乾燥手段の駆動モードとして低騒音乾燥モードが選択されると、通常の第一の速度より低速の第二の速度が設定される(ステップS21)。また、ここで、エアーカーテン工程が選択される(ステップS22)と、この第一の速度と第二の速度の中間の第三の速度にてブロワを駆動する低騒音エアーカーテン工程が設定される(ステップS23)。
【0050】
これらの各駆動モードは、例えばリモートパネル7Aにてユーザー自らが選択して設定することができる。また、ユーザーに代わり、スタッフや管理者が設定することも可能である。次に、このリモートパネル7Aについて図3を用いて説明する。
【0051】
図3に示すリモートパネル7Aは、洗車機WAの洗車コースを設定する装置であって、図4に示すように、洗車機WAへの進入経路上に設置されている。そのために、該リモートパネル7Aの正面に被洗浄車両CAを停車して、洗車機WAの各種洗車コース、および、駆動モードとしての、通常駆動モードと低騒音駆動モードを設定することができる。
【0052】
リモートパネル7Aは、支柱70にパネル本体71が上下動自在に装着された構成であって、支柱70に昇降装置(不図示)を内蔵し、上昇ボタン85a、もしくは下降ボタン85bを押下して、それぞれ上昇、下降させることが可能とされている。また、パネル本体71の正面側には、返却レバー72、コイン投入口73、紙幣投入口74、カード投入口75が設けられている。78はつり銭の返却口もしくは領収書発行部となる払い出し部である。
【0053】
また、洗車コースを設定する操作の各ステップに対応した表示部と操作部が設けられており、所定のお金を入金して表示する操作と、洗車コース設定ボタン82(82a、82b、82c・・・)が配置されて所望の洗車コースに設定する操作を行う。また、洗車を開始するスタートボタンを操作する操作を行う。
【0054】
そのため、リモートパネル7Aの盤面には、投入された金額を表示する金額表示部81や、各種の洗車コースに対応する設定ボタン82a、82b、82c・・・が配置されている。設定ボタン82aは、例えば、通常駆動モードに設定するボタンであり、設定ボタン82bは、例えば、低騒音駆動モードに設定するボタンであり、設定ボタン82cは、例えば、エアーカーテン工程を選択して設定するボタンである。この他にも、シャンプー洗浄、ワックス掛け、撥水コート塗布などの各種洗車コースを選択する選択ボタンを設ける構成としている。
【0055】
また、洗車の際に、車体表面に装着している各種装備品を損傷しないために、予め装着している装備品を設定しておくことが行われている。例えば、装備品設定ボタン83として、該当装備品なしボタン83a、フロントガードありボタン83b、フェンダーポールありボタン83c、ドアミラーありボタン83d、リヤワイパーありボタン83eなどが設けられている。また、スタート操作ボタン84として、例えば、スタートボタン84a、キャンセルボタン84bが設けられている。
【0056】
このリモートパネル7Aの盤面操作を行って、所望の洗車コースや駆動モードに設定することができる。また、所望の洗車コースに設定した後で、被洗浄車両CAを洗車機WAに移動し、洗車機の左右一対のレール間の所定の位置に停車して、洗車機に設ける車体検知センサもしくはスタートボタンを操作して、洗車操作を開始することができる。
【0057】
これらの洗車コースや駆動モードの設定は、運転者(ユーザー)自身でも、洗車機を所有する管理者やスタッフによっても行うことができる。スタッフが行う場合には、各洗車コースの特徴をユーザーに説明しながら、被洗浄車両CAに適した洗車コースを推奨し設定することができる。
【0058】
また、リモートパネル7Aには、報知手段として音声出力を行うスピーカ80が設けられており、洗車コースの設定操作の内容や手順を案内する音声ガイド、もしくは、注意事項などの音声ガイドを出力可能としている。また、音声ガイドの出力を停止する停止ボタン76と、音声ガイドの音量を調整するボリューム調整ボタン77が設けられている。
【0059】
79は車両検知センサであって、リモートパネル7A部に進入してくる被洗浄車両CAを検知する反射型光電センサからなる。また、リモートパネル7Aに、被洗浄車両CAの車体の色とその濃淡を検知するカラー検知手段86を設けて、車体に適した液剤や洗車コースをユーザーに報知可能な構成としていてもよい。
【0060】
ここで、エアーカーテン工程が選択されると、左右一対のブロワのうちいずれか一方のブロワを駆動すればよいので、予めどのブロワを駆動するかを設定しておく。例えば、洗車機本体の片側に壁がある場合には、この壁に向けて空気を噴出す方向のブロワを駆動するように設定しておくとよい。
【0061】
上記したように、ユーザー(運転者)自ら、また、洗車場のスタッフや管理者により、低騒音で洗車を行う低騒音駆動モードを設定することができる。また、この低騒音駆動モードにおいてエアーカーテン工程が選択されると、所定の低騒音効果を発揮しつつエアーカーテン効果(遮蔽効果)も発揮するような速度で、左右一対のいずれか一方のブロワを駆動して、このブロワから所定エアー流速の空気が噴出される。
【0062】
また、このリモートパネル7Aに設ける制御装置90に、各種の洗車コースや各種駆動モードにおける各モータの駆動回転速度を予め記憶させておく。また、通常の第一の速度や、この第一の速度より低速の第二の速度や、この中間の第三の速度を新たに設定可能な構成としておいてもよい。この構成であれば、洗車機を設置する周囲環境に応じた騒音レベルに調整することが可能となり、地域住民や管理者やユーザーにとって好ましい洗車機となる。
【0063】
上記したように、本発明に係る洗車機の洗車方法は、洗浄手段と乾燥手段を備え、この乾燥手段を通常の第一の速度で駆動する通常乾燥モードと、乾燥手段を第一の速度より低速の第二の速度で駆動する低騒音乾燥モードを選択可能で、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機の洗車方法である。また、乾燥手段は左右一対のブロワと送風ノズルを備え、洗浄中における水滴の飛散を防止するためのエアーカーテンを形成するエアーカーテン工程を有し、当該エアーカーテン工程は、低騒音乾燥モードにおいては、左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、第一の速度と第二の速度との中間の第三の速度で駆動する洗車方法である。
【0064】
そのために、低騒音乾燥モードにおいてエアーカーテン工程が選択されると低騒音エアーカーテン工程が設定され、片方のブロワのみを、通常の第一の速度と、この第一の速度より低速の第二の速度と、の中間の第三の速度で駆動するので、低騒音化を実現しつつエアーカーテンの遮蔽効果を弱くし過ぎず、所定のエアーカーテン効果を発揮して洗車可能な洗車方法を得ることができる。
【0065】
また、左右一対のブロワを同時に第二の速度で駆動する際の騒音レベルと、いずれか一方のブロワを第三の速度で駆動する際の騒音レベルとが略等しくなるようにしている。このような構成であれば、一対二個のブロワを駆動した際に生じる騒音レベルと同等の騒音レベルまで、一個のブロワの駆動回転数を上げることができるので、所定のエアーカーテン効果を発揮可能な洗車方法となって好ましい。
【0066】
上記したように本発明に係る洗車機および洗車方法によれば、いずれか一方のブロワを通常の第一の速度で駆動する通常エアーカーテン工程と、一方のブロワを第一の速度と、この第一の速度より低速の第二の速度と、の中間の第三の速度で駆動する低騒音エアーカーテン工程を備えているので、低騒音化を実現しつつエアーカーテンの遮蔽効果を弱くし過ぎず、所定のエアーカーテン効果を発揮して洗車可能となる。そのために、乾燥用ブロワから噴出す空気をエアーカーテンとして用いる際に、エアーカーテン効果を十分発揮すると共に騒音は発生しないで洗車可能な洗車機および洗車方法を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
そのために、本発明に係る洗車機および洗車方法は、洗車の際に、洗浄水や液剤を飛散せず低騒音で洗車することが求められる洗車場に設置する洗車機に好適に適用される。
【符号の説明】
【0068】
1 洗車機本体
2 レール
3 車輪
5 サイドブラシ
20 ブロワ
20A 右ブロワ
20B 左ブロワ
21 トップ送風ノズル
21A 右トップ送風ノズル
21B 左トップ送風ノズル
22 サイド送風ノズル
22A 右サイド送風ノズル
22B 左サイド送風ノズル
100 エアーカーテン
CA 被洗浄車両
WA 洗車機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄手段と乾燥手段を備え、前記乾燥手段を通常の第一の速度で駆動する通常乾燥モードと、前記乾燥手段を前記第一の速度より低速の第二の速度で駆動する低騒音乾燥モードを選択可能で、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機であって、
前記乾燥手段は左右一対のブロワと送風ノズルを備え、洗浄中における水滴の飛散を防止するためのエアーカーテンを形成するエアーカーテン工程を有し、当該エアーカーテン工程は、前記通常乾燥モードにおいては、前記左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、前記第一の速度で駆動し、前記低騒音乾燥モードにおいては、前記左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、前記第一の速度と前記第二の速度との中間の第三の速度で駆動することを特徴とする洗車機。
【請求項2】
前記第三の速度で行うエアーカーテン工程は、騒音が発生しない程度に低く、且つ、所定の遮蔽効果を発揮する程度に高い駆動速度に設定されることを特徴とする請求項1に記載の洗車機。
【請求項3】
前記左右一対のブロワを同時に前記第二の速度で駆動する際の騒音レベルと、いずれか一方のブロワを前記第三の速度で駆動する際の騒音レベルとが略等しいことを特徴とする請求項1または2に記載の洗車機。
【請求項4】
洗浄手段と乾燥手段を備え、前記乾燥手段を通常の第一の速度で駆動する通常乾燥モードと、前記乾燥手段を前記第一の速度より低速の第二の速度で駆動する低騒音乾燥モードを選択可能で、被洗浄車両と洗車機本体を前後方向に相対移動させながら洗車を行う洗車機の洗車方法であって、
前記乾燥手段は左右一対のブロワと送風ノズルを備え、洗浄中における水滴の飛散を防止するためのエアーカーテンを形成するエアーカーテン工程を有し、当該エアーカーテン工程は、前記低騒音乾燥モードにおいては、前記左右一対のブロワのいずれか一方のブロワを選択して、前記第一の速度と前記第二の速度との中間の第三の速度で駆動することを特徴とする洗車方法。
【請求項5】
前記左右一対のブロワを同時に前記第二の速度で駆動する際の騒音レベルと、いずれか一方のブロワを前記第三の速度で駆動する際の騒音レベルとが略等しいことを特徴とする請求項4に記載の洗車方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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