説明

洗面陶器およびシンク

【課題】洗面陶器およびキッチンシンク内に、最小のスペースで石けん液供給装置や手乾燥装置を組み込むことができ、さらに石けん液を補充するときに、石けん液が補給口から溢れないようにする。
【解決手段】洗面陶器1と一体成形部材にて構成される機能部品収納部13と石けん液等の液体貯蔵部4によって、水栓21または石けん液供給装置6や手乾燥装置などの機能部品を洗面陶器1の内部に収納しコンパクトな洗面器1やシンクの提供。また、タンクに充填する石けん液を補給する際、供給過剰により溢れた液をタンクの補給口7から溢れさせず、洗面器ボウル面より排出することにより、陶器リム面や床面その他に液体がこぼれることを防止した洗面陶器の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗面器およびキッチンシンク構造の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
洗面器や洗面台、キッチンシンクなどでは、洗剤や石けん液を使うことが多く、これまでは洗剤や石けん液の容器を洗面台の周囲の平らな部分などに置いて使用することが多いが、特許文献1のように、洗剤や石けん液の吐出ノズルを洗面台に設け、洗剤や石けん液のタンクを洗面台やシンクの下部に収納した石けん液供給装置を設けるものが多くなってきた。
【0003】
この洗剤や石けん液の供給装置は、洗剤タンクおよび吐出ポンプ機能部品で構成されているが、洗面陶器またはシンクとは別体であり、洗面陶器などの設置現場では、洗剤タンクや吐出ノズルの組み付け、さらにタンクと吐出ノズル及び吐出ポンプなどのチューブを接続する作業を行っており、さらに石けん液の自動吐出ポンプの場合はポンプやセンサなどの電気配線も接続する作業を行っていた。
【0004】
同様に手の乾燥装置を設けた洗面台などもあるが、この装置でも温風を発生させるためのヒータおよびファンモータや送風のためのダクトは洗面陶器と別体の装置として構成され、洗面台またはシンクの下部に設置されており、設置工事の際に、温風ダクトの接続や送風モータなどの電気配線の接続作業を行っていた。
【特許文献1】特開2002-315683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗面陶器またはキッチンシンクなどに取り付けられた石けん液供給装置は、石けん液のタンクが洗面陶器やシンクとは別構造であり、タンクの収納場所を必要としていた。 同様に、手を乾燥させる装置が組み込まれた洗面台などでも、温風を発生させるためのヒータおよびファンモータは洗面陶器と別体で設置されているため洗面器まわりに別途スペースを必要としていた。
【0006】
また、前記の石けん液供給装置や手乾燥装置は洗面陶器の下部や底部に配置されるが、石けん液吐出部や温風吹き出し口、手の検出センサなどは洗面陶器やシンクの上面に配置されており、これらの機能部と装置本体の間には、制御のための電気配線や石けん液の送出のためのチューブ類や温風のためのダクトが接続される。 このため、洗面陶器やシンクの設置工事の際に前記配線やチューブ・ダクト類の接続工事を必要としていた。
【0007】
さらに従来の石けん液供給装置を備えた洗面陶器やシンクは、石けん液を補充するときに、石けん液の液位が見えないため、供給された量が確認できず、補給口から石けん液が溢れてシンクや床を汚すことがあった。
【0008】
本発明はこのような問題点を解消するもので、洗面陶器やキッチンシンク内に、最小のスペースで石けん液供給装置や手乾燥装置を組み込むことができ、さらに石けん液を補充するときに、石けん液が補給口から溢れないようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の洗面陶器およびシンクは、上記目的を達成するために、洗面器またはキッチンシンクの構成部材である陶器や金属もしくは樹脂部材の一部分を袋状に一体成型し、石けん液の貯蔵部と、手乾燥用の温風発生装置などの機能部品を収納できる収納部を設ける構成とした。
【0010】
さらに詳しくは、
〔1〕洗面器またはキッチンシンクを構成する洗面陶器またはシンクの一部に洗剤または石けん液などの液体を貯めることができる液体貯蔵部を、洗面器またはシンクと一体に設けた洗面陶器およびシンク。
【0011】
〔2〕洗面器またはキッチンシンクを構成する洗面陶器またはシンクの一部に液体供給装置または手乾燥装置などの制御・駆動部を収納することができる機能部品収納部を、洗面器またはシンクと一体に設けたことを特徴とする洗面陶器およびシンク。
【0012】
〔3〕洗面器またはキッチンシンクを構成する洗面陶器またはシンクの一部に温風発生装置を収納する収納部を、洗面器またはシンクと一体に設け、前記洗面器またはキッチンシンクの水受け面に温風吹出し口を設け、前記水受け面に向けて前記温風発生装置で発生した温風を前記温風吹出し口から吹出すことを特徴とする洗面陶器およびシンク。
【0013】
〔4〕前記洗面器またはキッチンシンクにおいて、水受け部のリム面直下に前記液体貯蔵部を配置し、前記液体供給装置及び液体補給口を前記液体貯蔵部の真上に配置したことを特徴とする〔1〕から〔3〕に記載の洗面陶器およびシンク。
[5]前記洗面器およびキッチンシンクにおいて、水受け面と前記液体貯蔵部を貫通する液体排出孔を設け、前記液体貯蔵部に液体を補充する際に液体の水位が一定以上になると前記液体排出孔から水受け面に液体を排出することを特徴とする〔1〕から〔4〕に記載の洗面陶器およびシンク。
[6]前記洗面器およびキッチンシンクにおいて、水受け面に水のオーバーフロー穴を設け、このオーバーフロー穴より高い位置に前記液体排出孔を配置したことを特徴とする〔5〕に記載の洗面陶器およびシンク。
【0014】
[7]前記洗面器およびキッチンシンクにおいて、前記液体排出孔より高い位置に、前記機能部品収納部との連結穴を設けたことを特徴とする〔1〕から〔6〕に記載の洗面陶器およびシンク。
【0015】
[8]前記洗面器およびシンクにおいて、水受け面に水のオーバーフロー穴を設け、このオーバーフロー穴より高い位置に前記温風吹出し口を配置したことを特徴とする〔3〕に記載の洗面陶器およびシンク。
【発明の効果】
【0016】
以上の発明の請求項1、2および3によれば、洗面器またはシンクのスペースを有効活用することにより、コンパクトな洗面器またはキッチンシンクを実現することができる。また、タンクや機能部の収納部材を減らし、安価な洗面器またはキッチンシンクを提供することができる。
【0017】
また請求項2および3によれば、自動水栓や水石けん液供給装置のチューブやポンプおよび電気配線、または、手の乾燥のための温風発生装置の電線やダクト、などを一つの洗面器またはキッチンシンク内に納め、さらにこれらの配線・接続作業を工場内で完了することができ、設置現場での施工性が向上する。同時に外部に電線、チューブ類が洗面陶器やシンクから露出することが無くなり、意匠性も向上させることができる。
【0018】
請求項4では、液体貯蔵部の真上に水石けん液供給装置を配置することで、ポンプを手動で操作するような水石けん液供給装置を使用することができ、構成部品点数が大幅に削減され、より安価な洗面陶器が供給できる。
【0019】
請求項5、6または8では、液体貯蔵部への石けん液供給時に、液体貯蔵部が満杯となった時点でボウル面に排出する構造としたことにより、供給過剰となった時の石けん液などで床面や洗面器リム面、シンクまわりを汚すことを防止できる。

また水受け部に水を溜めて使用する場合に、水受け部が満水時にオーバーフロー水が液体貯蔵部へ流入することを防止でき、同様に乾燥吹き出しノズルにおいても、オーバーフロー水が乾燥室に流入することを防止できる。
【0020】
また請求項7では、液体貯蔵部と機能部品収納部間のシール部材を必要とせず、機能部品収納部への石けん液の流入を防止でき、安価に信頼性の高い構造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の一実施例である洗面器の正面図であり、1は洗面陶器で、石けん液の自動吐出装置6と水栓21を備えた例を示す。 水栓21は自動で水道水を吐出するもので、手検出センサ21aの検出信号によって駆動する。
【0022】
図2は、図1に示した洗面器の平面図であり、5は水受け部のオーバーフロー穴、7は石けん液補給口、8は石けん液排出穴であり、石けん液の補給時に補給口7から石けん液が溢れないようにするために設けたものである。
【0023】
ここで水のオーバーフロー穴と石けん液の排出穴の関係を図3で説明すると、洗面器1の水受け部2に溜まった水はオーバーフロー穴5より水位が上がることは無いので、石けん液の排出穴の位置を、水のオーバーフロー穴5より高く設けることにより、石けん液は水受け部2に流れるが、水が石けん液の排出穴8を超えて石けん液貯蔵部4に流れ込むことは無い。
【0024】
さらに図3は洗面陶器1と一体に成形した石けん液貯蔵部4の真上に石けん液供給装置6を設けた例を示す物であり、石けん液供給装置6は石けん液の吸い込み口6cを石けん液貯蔵部4に直に挿入する構造になっている。
【0025】
図4は、洗面陶器1に機能部品収納部13を一体成形した構造を示すもので、機能部品収納部13には石けん液供給装置6の機能部品であるポンプ10aと、コントローラ10bが組み込まれており、石けん液供給装置6とコントローラ10bとは、チューブ11で接続されており、ポンプ10aとコントローラ10bとはポンプ配線12bとで接続されている。
【0026】
さらに石けん液供給装置6には手の検出センサ6bが組み込まれており、石けん液吐出ノズル6aの下に手をかざすと、コントローラ10bに手の検出信号を送信し、コントローラ10bはこの検出信号によりポンプ10aを駆動する。
【0027】
ポンプ10aに石けん液4を送出する吸入チューブ11は、図4の部分拡大図である図6に示すように、石けん液4の排出穴8より高い位置にある連結穴14を通して配置されている。これにより、石けん液貯蔵部に補給した石けん液4が溢れて機能部品収納部13に入ることも防止できる。
【0028】
図5は本発明の他の実施例の一つで、手を乾燥させるための乾燥空気を発生させるヒータ16およびファンモータ15を機能部品収納部13に組み込んだ例である。
【0029】
ここで、洗面陶器底部に設けた吸気口(図示しない)よりファンモータ15によって吸い込んだ外気をヒータ16で加熱乾燥して、吹出しノズル18より水受け部2に位置する手に向けて温風を送出する構成となっており、機能部品収納部13は温風発生のための風洞としても機能している。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】洗面陶器正面図
【図2】洗面陶器正面図
【図3】石けん貯蔵部を一体成型した洗面陶器の実施例の略中央部の断面構造説明図
【図4】石けん貯蔵部と機能部品収納部を一体成形した洗面陶器の実施例の構造説明図で、図2のA−A線位置の断面図である。
【図5】洗面陶器内へ手乾燥機能部を収納した他の実施例の構造図
【図6】図4の排出穴8と吸入チューブ11と連結穴14の位置関係を示す部分拡大説明図
【符号の説明】
【0031】
1 洗面陶器
2 水受け部
4 石けん液貯蔵部
5 オーバーフロー穴
6 石けん液供給装置
6a 石けん液吐出ノズル
6b 手検出センサ
6c 吸い込み口
7 石けん液補給口
8 石けん液排出穴
10 機能部
10a ポンプ
10b コントローラ
11 吸入チューブ
12 配線
12a センサ配線
12b ポンプ配線
13 機能部品収納部
14 連結穴
15 ファンモータ
16 ヒータ
17 吸い込み口
18 吹出しノズル
19 乾燥室
21 水栓
21a 手検出センサ
20 温風発生器配線
20a 温風発生器コントローラ
22 石けん液
23 水受け部オーバーフロー水位
24 石けん水オーバーフロー水位
25 連結穴位置
26 ノズル位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗面器またはキッチンシンクを構成する洗面陶器またはシンクの一部に洗剤または石けん液などの液体を貯めることができる液体貯蔵部を、
洗面器またはシンクと一体に設けたことを特徴とする洗面陶器およびシンク。
【請求項2】
洗面器またはキッチンシンクを構成する洗面陶器またはシンクの一部に液体供給装置または手乾燥装置などの制御・駆動部を収納することができる機能部品収納部を、
洗面器またはシンクと一体に設けたことを特徴とする洗面陶器およびシンク。
【請求項3】
洗面器またはキッチンシンクを構成する洗面陶器またはシンクの一部に温風発生装置を収納する収納部を洗面器またはシンクと一体に設け、
前記洗面器またはキッチンシンクの水受け面に温風吹出し口を設け、
前記水受け面に向けて前記温風発生装置で発生した温風を前記温風吹出し口から吹出すようにしたことを特徴とする洗面陶器およびシンク。
【請求項4】
前記洗面器またはキッチンシンクにおいて、前記液体供給装置及び液体補給口を前記液体貯蔵部の真上に配置したことを特徴とする請求項1から3に記載の洗面陶器およびシンク。
【請求項5】
前記洗面器およびキッチンシンクにおいて、水受け面と前記液体貯蔵部を貫通する液体排出孔を設け、前記液体貯蔵部に液体を補充する際に液体の水位が一定以上になると前記液体排出孔から水受け面に液体を流すことを特徴とする請求項1から4に記載の洗面陶器およびシンク。
【請求項6】
前記洗面器およびキッチンシンクにおいて、水受け面に水のオーバーフロー穴を設け、このオーバーフロー穴より高い位置に前記液体排出孔を配置したことを特徴とする請求項5に記載の洗面陶器およびシンク。
【請求項7】
前記洗面器およびキッチンシンクにおいて、前記液体排出孔より高い位置に、前記機能部品収納部との連結穴を設けたことを特徴とする請求項1から6に記載の洗面陶器およびシンク。
【請求項8】
前記洗面器およびシンクにおいて、水受け面に水のオーバーフロー穴を設け、このオーバーフロー穴より高い位置に前記温風吹出口を配置したことを特徴とする請求項3に記載の洗面陶器およびシンク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−296147(P2007−296147A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127119(P2006−127119)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(390010054)小糸工業株式会社 (136)
【Fターム(参考)】