説明

洪水、沿岸又は水たまりの保護装置及び方法

本発明は、洪水防護、護岸又は洗掘防護装置(1)及び方法に関する。安価で長持ちしかつ効果的な防護を行うため、装置(1)が1つ又は複数の弾性板(2,75)及び板を防護すべき個所(12)に固定する取付け手段(3)を持っている。取付け手段(3)により1つ又は複数の弾性板(2,75)を防護すべき個所(12)に固定する方法が同様に開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洪水防護、護岸又は洗掘防護装置及び方法に関する。このような装置及び方法は例えば沿岸、島、建造物の防護のために、海、水路、港及び海洋地下において使用される。その重要な目的は、海面状態、高潮、波、流れ及び潮の干満の作用に対する永続的な防護を保証することである。従来技術により公知の装置は、砂丘、堤防、覆い機構、防波堤、防破堤、岸堤防、阻止機構及び案内機構である。これらの装置の欠点は、それらが作用する流れ及び力により絶え間ない破壊にさらされ、費用がかかる修理作業を必要とすることである。
【背景技術】
【0002】
別の欠点は、公知の防護手段は費用がかかるけれども、その防護作用に関してしばしば不十分なことである。例えば防砂堤は陸地の喪失を阻止することができず、流れに対するその作用により生態系に不利な影響を及ぼすことである。防波堤として役立ついわゆるテトラポット、重いコンクリート部材も著しい欠点を持っている。これらの建造物は、砂の堆積を阻止して陸地の消失を加速する有害な流れを生じる。沖合い範囲例えば風力設備の単一パイルでは、洗掘防護装置として約500〜1000tの石を積み重ねることが公知技術である。約20年で設備の再構築後、この石の堆積は漁業にとって危険な障害物となる。
【0003】
沿岸防護の分野において、波ができるだけ平らな角で陸地面へ乗上げるようにするため、砂沖積方法が使用される。しかしこの方法は高い費用を伴う。なぜならば、砂が常に再び波により運び去られ、従って常に再び沖積せねばならないからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、長持ちし安価で効果的な防護を行う洪水防護、護岸又は洗掘防護装置及び方法を提案することである。
【課第を解決するための手段】
【0005】
この課題は、洪水防護、護岸又は洗掘防護装置が1つ又は複数の弾性板及び板を防護すべき個所に固定する取付け手段を持っていることによって解決される。板の裏側または下側は大地又は基礎への載置面として用いられ、表側又は上側は水又は波の乗上げ面として役立ち、沖合の範囲では運び去られる砂及び水の渦に対する防護装置として役立つ。板の可撓性は複数の利点を持っている。一方で板は沿岸線の推移又は大地の凹凸に合わされ、他方で板はその可撓性又は弾性により波及び渦のエネルギを吸収することができ、それにより公知の剛性装置より抵抗力があり、かつ長持ちする。装置は、更にその上を人間が通ることができ、車両が走行することができる。別の利点は、装置が泳ぐ人間に対して危険でないか、又は船舶との衝突の際危険でないことである。弾性板は一層であるか又は複数層から成っていてもよい。弾性板は、直接地表面上へたとえば洪水の危険のある沿岸範囲で敷設することができる。板は、それがまず敷設され、それから砂沖積が行われることによって、表面の下に位置することができるので、板を砂面又は地表面の下に見えないように位置する。その際砂表面又は陸地又は水面下にあってもよい。装置は、岸又は河川に近い建造物を保護するため、又は沖合いの建造物に対する洗掘防護装置としても使用することができる。洗掘とは、水で覆われる大地の流れによる浸食現象を意味する。沖合いの範囲では、提案された洗掘防護装置は、それが簡単に再建できかつ障害物のない海底に残されることである。
【0006】
好ましい実施形態では、弾性板がゴムから成っている。ゴムは特に軽く、抵抗力があり、長持ちし、再使用できる材料である。コムの著しい利点は塩水に対する安定性であり、即ち腐食が起こらない。材料の長い安定性及び抵抗力により、防護装置は実際上保守の必要がない。ゴムは更に天然ゴムから環境にやさしく製造される。板が約2cmの厚さを持っていると、特に良い防護が行われることがわかった。適した弾性板はほぼ1mの面積を持つか、又は2〜3mの幅と数100mまでの長さを持つ巻き物として手に入る。これらは巻き物として1つのやり方で防護すべき場所へ搬送し、そこで繰り広げて取付けることができる。
【0007】
弾性板が加硫により水密に又は結合手段により機械的に互いに結合されることができる。これにより危険のある範囲の一層大きい部分すなわち2〜3km2又はそれ以上を防護することができる。加硫による結合の際生じるような板の最適な水密結合は、地中の湿り又は浸食を防止する。
【0008】
弾性板が、特に繊維織物から成る1つ又は複数の挿入物、あるいは鋼棒、鋼線又は鋼網から成る補強体を持っていることによって、板の可撓性又は剛性が必要に応じて改善される。板は更に一層大きい圧縮力及び引張り力を吸収することができ、その上を歩いたり走行することができる。
【0009】
流出する水の吸引力により弾性板の過度の変形を回避するため弾性板のために、上記の補強織物又は鋼から成る挿入物のほかに、付加的な外部の補強素子が設けられている。別の可能性は、コンクリート梁により弾性板を補強することである。この場合、1つの方向には内部の鋼補強体により、他の方向には更に表面に設けられるコンクリート梁により、板を補強することができる。コンクリート梁は、その重量により取付け手段としても役立つ。
【0010】
弾性板は、取付け手段により防護すべき個所に固定される。これは、堤防、砂丘の水に面した側又は沿岸の浸食縁であってもよい。取付け手段として土ねじ、土槍又はセメント注入アンカが適しており、それにより板が地中に確実に係留される。このため弾性板が開口を持ち、この開口に取付け手段が通される。その場合開口は、土ねじ、土槍又はセメント注入アンカの頭部により覆われる。しかし取付け手段は、例えばコンクリート梁又は沖積される砂のように、弾性板の上へも載ることができる。
【0011】
特に安定な係留はセメント注入アンカによって可能である。このアンカは、上端に設けられて管開口用穴を持つ管板、及び頂板を持つ閉鎖ねじ用の上部雌ねじを有する管を含んでいる。管の下端にはドリルビットがある。管を通して液状のセメント懸濁液又は他の結合剤が圧入され、セメント注入アンカが大地中へ動かされる。下部管開口から流出するセメントは管を包囲し、硬化後この管をはまり合いで大地に係留する。それから穴を持つ弾性板がセメント注入アンカの管板上へ置かれ、閉鎖ねじが穴を通って管の雌ねじへねじ込まれる。弾性板又は互いに結合される弾性板は、こうして管板と頂板との間に水密に締付けられて、大地に確実に係留される。
【0012】
装置の裏後方押し流しを防止するため、装置の両横端部に、板に対して曲げられた矢板壁が設けられている。矢板壁は、板に付加される別個の部分であってもよい。矢板壁は、始端に湾曲部を持ちかつ水から離れるように陸地側の方へ延びる弾性板自体の終端部分として構成することができる。
【0013】
別の取付け手段として、水平に設けられて装置に結合される1つ又は複数の底板が設けられている。底板は装置用の大面積の支えとして用いられ、こうして地中への沈下を防止する。底板は地表面に直接載るか、又は地中に設けることができる。弾性板は、水平又は斜めに延びる支持部材により底板に結合されている。支持部材は、自立枠を形成することによって、底板に対して垂直又は傾斜した位置で、弾性板を固定する。従ってこの実施形態では、取付けの際板の裏側が地面に載らなくてもよい。支持部材は砂の沖積装置のために準備し、その後の付加的な二重作業を回避する目的を持っている。別の利点は、底板及び支持部材が、弾性板へ作用する押圧力及び吸引力を吸収することである。縦方向に延びる支持部材は、この方向に作用する力も吸収する。装置は全体として底板及び支持部材により安定にされる。
【0014】
底板が大地に取付けるためのアンカ素子を持っていることにより、装置のそれ以上の固定及び安定化が行われる。
【0015】
弾性板がその下縁に沿って延びる載置素子を持ち、この載置素子が垂直断面においてほぼT字状の異形材として形成されている。載置素子は装置の固定及び安定化に役立つ。
【0016】
砂又は他の大地材料をしっかり保つため、弾性板がその上側に凹所及び/又は隆起を持っている。これにより風による搬送のため砂の運び去りが防止されるか又は減少される。凹所又は隆起は、接着又は加硫により設けられる付加的な層により形成することができる。その代りに、弾性板は1片であってもよく、その際凹所及び隆起は弾性板の材料から切断されている。
【0017】
弾性板は相互接続される水流出開口を持つことができる。これにより洪水の際弾性板上に水が集まらず、板を通って大地へ流出する。これにより、水が砂と共に懸濁液を形成し、この懸濁液が容易に押し流されるのを回避することができる。それにより砂は弾性板の上に留まり、付加的な防護のために役立つ。更に水を通しかつ砂を通さない濾過層特に不織布層が、なるべく弾性板の下側に設けられている。これにより、水が水流出開口を通る際、砂が一緒に押し流されるのを回避される。材料として例えばPETまたはPTFEのようなポリエステルが問題になる。
【0018】
別の有利な実施形態では、装置が、互いに結合される弾性板の端部範囲に、端部範囲において弾性板を下方へ引張るか又は押すために、なるべくコンクリートから成るおもり素子を持っている。おもり素子は、水側に近い方の端部範囲または側方端部範囲に取付けることができる。それにより結合される板によって形成される面が湾曲され、波の乗上げ面として役立つ特に有利な流体力学的形状が形成される。こうして波の力が吸収され、上方へ導かれる。おもり素子の下の大地が沈下又は下方で押し流されると、おもり素子が板と共に下方へ動き、それにより防護作用が再び行われる。
【0019】
別の実施形態では、互いに結合される板が、砂及び/又は他の材料を満たすため上方へ開く少なくとも1つの桶状の凹所として形成されている。砂は砂沖積におけるように桶状凹所へ導入され、その際入れられる砂の表面は正常な水面より上にある。これにより平らな水平面が生じるので、高波又は洪水の際水は、砂を運び出すための作用点を持たない。桶状凹所の壁が弾性板のしわとして形成されていることによって、安価な構造が生じる。
【0020】
桶状凹所がその底に、水に面する壁から陸地側の方へ延びる隆起を持っている。これにより、砂防堤により得られる効果即ち横流れによる砂運び出しを防止する効果が生じる。しかし本発明による隆起の方が一層効果的である。なぜならば、それが完全に桶内及び砂内にあり、従って直接水により押し流されないからである。隆起も弾性板のしわとして安価に形成される。水を通すが砂を通さないようにするため、桶状凹所を形成する弾性板は、水流出開口及び濾過層特に不織布層を持っている。これにより桶状凹所にたまる水は、水流出開口を通って流出するが、砂は一緒に押し流されることがない。なぜならば、フィルタとして作用する不織布層により砂が引止められるからである。
【0021】
別の好ましい実施形態では、互いに結合される弾性板の端部範囲に、水を通しかつ砂を通さない濾過層特に不織布が設けられ、その上になるべく補強体が設けられている。これにより濾過層の範囲において、水の透水線を中断することなしに、大地を固めて保護することが可能である。補強体は濾過層の安定化に役立ち、それにより通行可能になる。
【0022】
本発明は更に洪水防護、護岸又は洗掘防護のための方法を含んでいる。方法では、1つ又は複数の弾性板を持つ請求項1に記載の装置が、取付け手段により防護すべき個所に固定される。この方法を実施するために装置は、請求項2〜17にそれぞれ記載されている特徴を更に持つことができる。
【0023】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して説明され、それ以上の詳細が図面の図からわかる。機能的に同じ部分は同じ符号を付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 沿岸部分12を持つ装置1の垂直断面図を示す。
【図2】 図1の装置の詳細図を垂直断面図で示す。
【図3】 砂沖積19と共に装置1の垂直断面図を示す。
【図4】 装置1の正面図を示す。
【図5】 沿岸部分12と共に装置1の第2実施例の垂直断面図を示す。
【図6】 陸水において使用するための装置1の第3実施例の垂直断面図を示す。
【図7】 矢板壁21,23を持つ装置の第4実施例の平面図を示す。
【図8】 コイルばね32を持つ装置1の第5実施例の詳細を垂直断面図で示す。
【図9】 引張りばね33を持つ装置1の第6実施例の詳細を垂直断面図で示す。
【図10】 管48を持つ装置1の第7実施例の詳細を垂直断面図で示す。
【図11a】 不織布63及びその上に設けられる補強体60を持つ装置1の第8実施例の全体を垂直断面図で示す。
【図11b】 上に設けられる図11aの補強体を持つ不織布の詳細を垂直断面図で示す。
【図12】 3層弾性板75の斜視図を示す。
【図13a】 図1による3層弾性板75を持つ装置1の全体を垂直断面図で示す。
【図13b】 図13aの詳細を垂直断面図で示す。
【図14】 コンクリート素子73を持つ装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。
【図15】 桶状中空体100を持つ装置1の別の実施例の概略的な全体を垂直断面図で示す。
【図16a】 桶状凹所100の概略平面図を示す。
【図16b】 図16aの桶状凹所100の概略を垂直断面図で示す。
【図17】 セメント注入アンカ207を持つ装置1の別の実施例の詳細を垂直断面図で示す。
【図18】 沿岸防壁300を持つ装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。
【図19】 単一杭01を持つ洗掘防護装置としての装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。
【図20】 砂被覆なしの装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。
【図21】 コンクリート梁を持つ装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明による洪水防護、護岸及び洗掘防護装置1の垂直断面図を示す。更に装置1が設けられている沿岸部分10,12,13の水と陸地との間の移行範囲が概略的に示されている。
【0026】
装置1は、図示しないが互いに水密に結合されている弾性ゴム又は硬質ゴムから成る複数の弾性板2を持っている。板2は約2cmの厚さを持っている。これは特に軽く、抵抗力があり、長持ちし、再使用可能である。装置1に適したゴム板は、種々の厚さで、繊維挿入物と一体に数mから数100mの長さを持つ巻き物として、市場で入手可能である。
【0027】
図1にはこのような板2が断面図で示されている。板2はその裏側17で砂面上に載り、表側16は水に面している。符号10で水面が示され、砂から成る地表面は12で示されている。地表面12は一部水面10の下にあり、一部その上にある。水の後方には砂丘地形が示され、その斜面は急峻に上昇し、最後に浸食稜13達している。洪水又は高潮の際、水面10は上昇することがある。このように上昇する水面の表面は符号11で示され、破線で表されている防護装置1がないと、高潮の際波が常に砂丘へ当たり、それにより長い間には稜13のそれ以上の浸食が起こり、最後に陸地の消失が起こることになる。板2の表側16が水11又は波の乗上げ面として役立つことにより、装置1がこの消失を防止する。それによりゴムから成る板2は、その弾性により波11のエネルギを吸収し、こうしてその後ろにある地表面12が水により流し去られるのを防護することができる。板2は、その材料特性のため、1t/m以上の圧力に抵抗することができる。更に板2は、その可撓性により、公知の剛性覆い機構より著しく長持ちし、修理も必要としない。板2は、その弾性により地表面12の凹凸及び沿岸線の推移に合わされる。
【0028】
板2は土ねじ3により地中12に確実に係留される。土ねじ3の代わりに、土槍、砂アンカ又は他の取付け手段も使用することができる。
【0029】
図1に示すように、板2は水平面に対して傾斜角をなしている。これにより突当る波に対して傾斜した乗上げ面16が形成され、従って現れる水のエネルギが上方へ導かれて減少される。傾斜角は異なる大地状態または斜面の角に合わせることができる。しかし砂丘の傾斜角が非常に小さいと、水を通すが砂を通さない図12の3層の板75が有利である。
【0030】
板2は砂から成る地中へ約1.50m入れられており、他の範囲は露出しており、従って見える。この状態も異なる大地条件又は沿岸条件に合わせることができる。全体として板は約3〜6mの高さを持っている。板はもっと高くてもよく、従って異なる干満行程に合わせることができる。
【0031】
装置1が環境へ美的に合うようにするため、弾性板2の前側の表面は砂から成る被覆を持っている。これにより板2は視覚的に目立たず、砂丘から区別されない。砂から成る被覆は例えばゴム表面16へ接着剤を塗布され、それから砂を振りかけられる。砂からなる被覆の代わりに、周囲に応じて表面が色層例えば砂色、大地の色又は緑の色を持つことができる。装置1も同様に注入される砂で覆われ、従って見えないようにしてもよい。
【0032】
図1には、護岸の範囲で装置1の使用が示されている。強調すべきことは、本発明がこれに限定されず、多数の他の使用可能性があることである。
【0033】
装置1は陸地用の洪水防護装置としても使用できる。河川の近くにある洪水の危険がある範囲は、一般に堤防により防護される。しかしこれらの堤防は長く続く洪水にしはしば耐えることができない。その理由は堤防が時と共に水で完全に湿らされ、こうしてその安定性を失うからである。板2が堤防の水に面する側に設けられていることによって、装置1により堤防が完全に湿るのを防止される。水は装置1を透過することができない。なぜならば、板2がゴムから成り、例えば加硫により水密に互いに結合されているからである。板2の傾斜角は堤防の斜面の傾斜にほぼ一致している。
【0034】
天然の草が望まれる場合、水を通すように、板2に穴を設けることができる。板2上に約5〜8cmのさびない網布が設けられて、粘度で満たされ、草の種を蒔かれるので、草の根が網布及び水を通す板を通って成長する。その場合この層は耐裂性の堤防表面を形成する。
【0035】
別の使用は、漏れによる水消失を回避するために、船舶航行運河の河床を密封するため図1に示す装置1を使用することである。
【0036】
装置1は更に河川の岸範囲の保護に使用することができる。しかし河川の範囲における自然生物圏の回復のため、洪水防護の理由からも、河水が一層再び自然にされる。その場合河川はもはや直線的ではなく、区間毎に湾曲される。これらの湾曲範囲では、岸の下部押し流しを生じることがあり、従って石から成る覆い機構により保護されねばならない流れが現れる。危険のある下部範囲は、本発明により一層よく防護することができる。なぜならば、装置1は簡単に構築可能であり、更に長持ちしかつ一層安価だからである。
【0037】
図2は図1の装置1の詳細を垂直断面図で示す。ゴムから成る弾性板2の範囲が示され、その裏側17は基盤に載り、その表側16は水に面している。板2の安定性及び可撓性を改善するため、板2は約2cmの厚さを持ち、例えば複数の繊維挿入物14を持っている。それにより板2を1t/m以上の荷重にさらすことができる。
【0038】
板2は図2に示す範囲に開口8を持ち、ねじ山15を持つ土ねじ3がこの開口8に通されている。土ねじ3の芯直径は約25mmである。土ねじ3により板2が基盤に確実に固着される。板内の開口8は、土ねじ3の頭部9により水密に密封されるので、基盤は湿らされない。土ねじ3の頭部9と板2の前側16との間には更に座板4が設けられて、頭部9により固定される。例えば織物挿入物から成る補強体は、流出する水による強い吸引力の際板2の補強に役立つ。これにより弾性板2の過度の変形及び裏側17における空所形成が回避される。
【0039】
図3は、水表面2と砂丘形成部の地表面2との間の移行範囲における図1ような装置の垂直断面図を示す。しかし本発明の別の使用が示されている。図1とは異なり、装置1の構築後の、砂沖積19が行われる。それにより水側の地表面12は、一層平らな角度で砂丘へ通じている。装置1は沖積された砂19により覆われているので、完全に地中にある。
【0040】
これにより砂が水側の方へ滑り落ちることができないので、砂丘形成部は安定化される。洪水又は高潮の際、破線で示す水面11が上昇する場合、引続く防護効果が生じる。まず沖積された砂19によっても防護が行われる。高潮の進行中に、沖積された水19が運び去られてしまうと、装置1は図1に示すように完全に防護機能を引受ける。それにより陸地の消失は起こらない。
【0041】
図4は装置1の正面図を示す。ゴムから成る細長い板2が示され、土ねじ3により等間隔で基板に取付けられている板2の長さ又は高さが十分でないと、複数の板2を側辺又は上辺及び下辺で互いに結合することができる(図示せず)。その場合これらの板は加硫又は機械的結合手段により互いに水密に結合されている。こうして任意の長さ及び高さの沿岸区間又は堤防区間を防護することができる。
【0042】
装置1の両方の外端にあるは湾曲部を持ち、水から離れて陸側の方へ延びている。こうして板は装置1の後方押し流しを防止する矢板壁21を形成する。
【0043】
図5は沿岸区間を持つ装置1の別の実施例の垂直断面図を示す。この実施例では、取付け手段として更に水平に設けられる底板6が設けられ、その一方の縁を弾性板2の裏側に結合されている。弾性板2は、更に斜め及び水平に延びる支持部材5により底板6に結合されている。支持部材5は、弾性板2を、底板6に対して傾斜した位置に固定している。更に別の底板6が垂直に設けられている。支持部材5と底板6はこうして安定な枠を形成している。装置1は枠により自立しており、即ち板の取付けの際、弾性板2の裏側は地表面12上に載っていなくてもよい。水平な底板6は、その位置を基盤に固定するアンカ素子7を持っている。
【0044】
弾性板2は、載置素子としてその下縁に沿って延びるほぼT字状の異形材18を持っている。異形材18は板2を下方に終らせ、それを地中に係留する。
【0045】
底板6及び異形材18は更に、沈下を防止する装置1用の大面積の支えとして役立つ。別の利点は、底板6、支持部材5及びアンカ素子7が、弾性板2に作用する圧縮力及び引張り力を吸収し、従って全体として装置1の安定性を高める。
【0046】
図5には、高潮後砂丘形成部の地表面12の推移が示されている。これにより陸地が失われ、急峻な浸食稜13が生じている。このような場合装置1は、砂の次の沖積用の取付け補助手段として使用可能である。このため装置1は、図5に示されているように、浸食稜13の前の範囲に構築することができる。これは速やかに安価に可能である。なぜならば、装置1のすべての構成部分は完成部品だからである。この実施例では、板2の水密結合は加硫によるのではなく、機械的結合(図示せず)によって行われる。
【0047】
装置1の構築後に砂沖積が行われる。このような砂沖積後の表面の推移は破線20で示されている。その後装置1は砂19により完全に覆われ、もはや見えない。その場合装置1は、砂沖積19の取付け及び確保に役立つ。引続く砂沖積19は更に全く反覆しないか又はまれに反覆すればよく、それによりわずかな費用しか生じない。
【0048】
装置1の図示した実施例は、洪水防護及び護岸のほかに、他の使用も可能にする。それは移動砂丘を防止するために、例えば支えとして使用可能である。
【0049】
図6は、特に陸水における使用に適している装置1の第3実施例の垂直断面図を示す。この場合水平、垂直及び斜めに延びる支持部材5が安定な枠を形成し、それにより装置1は自立的である。板2は傾斜せず、支持部材5から形成される枠に垂直な配置で取付けられている。更にコンクリートから成る固定基礎22が設けられている。基礎22上に支持部材5がねじ3により取外し可能に取付けられている。
【0050】
装置1の構成部分2,3,5は、有利なように速やかに構築されかつ再び分解可能な完成部品として構成されている。陸水の通常の水面10では、大地12へ入れられる基礎のみが存在する。それにより自然環境は、防護装置により視覚的及び生態学的に悪影響を受けない。水面の上昇により洪水のおそれがあると、装置1を非常に速やかに、準備されている固定基礎22上に構築し、洪水から効果的に防護することができる。
【0051】
洪水のおそれがあり、適当な基礎22が準備されていないと、大地12への装置1の係留は、図5に示されているように土ねじ等によっても行うことができる。
【0052】
図7は2つの矢印壁21,23を持つ装置1の第4実施例の平面図を示す。装置1に一方の側には、弾性板2の終端部分として矢板壁21が形成され、この矢板壁は湾曲部を持ち、水10から離れて陸側12の方へ延びている。他方の側で矢板壁は、板2に継ぎ足される別個の部分23である。
【0053】
洪水又は高潮の際水11は、装置1の板2によって防護される陸地面12へ向かって動く。洪水が押し進む範囲は、図7では破線により示されている。その際矢板壁21,23は装置1の後方押し流しを防止する。
【0054】
図8は装置の第5実施例の詳細を垂直断面図で示す。詳細図において複数の弾性ゴム板2の1つの部分が示され、その裏側17は斜めに延びる地表面12に載っている。図示したゴム板2は開口8を持ち、弾性ゴム板2から切抜きにより形成される内側板52が開口8に設けられている。内側板52は開口58を持ち、取付け手段3として用いられる土槍3が開口58を通って大地37へ導かれ、そこで固定的に係留されている。大地37は例えば砂底又は砂丘である。
【0055】
ゴム板2及び内側板52の前側16に基板40が設けられ、その直径は開口8の直径より大きい。これにより開口8は基板40により完全に閉鎖される。基板40と弾性ゴム板2は互いに接着38され、こうして固定的に結合されている。基板40も同様に土槍3用開口41を持ち、この開口41の直径は土槍3の外形にほぼ等しい。これにより土槍3は開口41に沿って滑り、この開口を密封する。
【0056】
装置の構築の際まず土槍3が基板開口41へ挿入され、それから基板40が内側板52上へ載せられる。その場合土槍3の万一の中心ずれを相殺することができる。なぜならば、開口58は士槍3の外形より著しく大きいからである。それから基板40が内側板52に接着され、弾性板2が大地37に固定される。
【0057】
基板40上には保護蓋31が取付けられて、コイルばねとして形成される予荷重素子30用の機械的保護装置を形成している。コイルばね32は一部ばねスリーブ39内にあり、このスリーブ壁外面は保護蓋31により包囲されている。ばねスリーブ39の壁45には、下部に取付けられる環状基礎46があり、この基礎上にコイルばね32のばね下端43が載っている。ばね上端44は、保護蓋31の壁厚の増厚により形成される載置面34上に載っている。コイルばね32は、保護蓋31の載置面34と基礎46の面とにより常に圧縮され、こうして予荷重をかけられている。保護蓋31、ばねスリーブ39及び基板40により形成される空所47へ水が浸入すると、この水は流出開口42を通って出ることができる。
【0058】
保護蓋31は閉鎖ねじ35により土槍3に取付けられているので、基板40に載っている。このためは、閉鎖ねじ35がねじ込まれる雌ねじ(図示せず)を持っている。
【0059】
さて大地37が弾性板2の下で凝縮すると、予荷重をかけられるコイルばね32の力の作用により弾性板2が大地3の方へ押され、土槍3の軸線に沿って、再び地表面12に載るまで動く。これによりゴム板2が確実に固定される。
【0060】
図9は本発明による装置の第6実施例の詳細を垂直断面図で示す。この場合予荷重素子30は予荷重を受ける引張りばね33として形成され、土槍3の内部に設けられている。これにより保護蓋31は図8の実施例におけるより扁平でこじんまりしている。地表面12が傾斜を持たず、装置の弾性板2がほぼ水平に設けられている場合、この実施例が特に適している。それにより扁平でこじんまりした保護蓋31は、視覚的に目立ったりじゃまになることはない。
【0061】
弾性板2の前側16には、保護蓋31の下に基板40が設けられ、接着38により内側板52に結合されている。内側板52は、土槍3の中間部分用貫通部としての開口58を持っている。土槍3は上部を保護スリーブ36により包囲されている。
【0062】
この実施例でも弾性板2は、予荷重素子30として作用する引張りばね33により大地37の方へ押付けられ、大地37の圧縮又は沈下の際土槍3の軸線に沿って、地表面12に載るまで動かされる。引張りばね33の万一の破断の際保護蓋が保持されるようにするため、(図示しない)安全網が設けられている。
【0063】
図1に示す実施例におけるように、弾性ゴム板2からの切抜きにより内側板52が形成され、それから基板40に接着38される。基板40にある開口41は、引張りばね33及び安全網を通すのに用いられる。
【0064】
図示した水平配置の場合、弾性板2のために、ゴムの代わりに水を通さないPTFEから成る繊維材料又は補強手段として地格子60を持つ不織布63を使用することができる(図11a,図11b参照)。
【0065】
図10は装置の第6実施例の詳細図を示す。この実施例は図8及び9に示す実施例より簡単に構築される。地表面12に、開口8を持つ弾性板2が載っている。開口8に土槍3が通されている。土槍は開口8を覆う頭部9を持っている。頭部9の上側には六角形の板50が形成され、またその下側には管48が形成されて、下方へ先細になっている。開口8の直径は管48の外径より少し大きいので、開口8は管48により密閉されるけれども、管48と弾性板2との相互運動は可能である。
【0066】
管48の外面は弾性板2に対して密封案内面を形成している。大地37が圧縮されると、弾性板2が圧縮された地表面12に再び載るまで、弾性板2は管48に沿って動くことができる。その場合頭部9は、六角形の板50により回される。この回転により、土槍3はその(図示しない)ねじ山により大地37の中へ動き、こうして弾性板2を固定する。六角形の板50は頭部9の中へずらすこともできるので、つまずかせる稜は生じない。
【0067】
図11aは、不織布63及び補強体60を持つ洪水防護装置又は護岸装置1の第8実施例の全体を垂直断面図で示す。装置1は沖積される砂19により完全に覆われている。装置は弾性ゴム又は硬質ゴムから成る1つ又は複数の弾性板2を持ち、これらの弾性板2は互いに結合され(図示せず)、土ねじ3により地中37に係留されている。地表面12は一部水表面10の下にあり、一部その上にある。水の後方には砂丘状の形成部が示され、その土手12は急峻に上昇し、最後に稜13に達している。洪水又は高潮の際水面10が上昇して、符号11で示すレベルまで達することがある。弾性板2はその下側に格子結合部61を持ち、この格子結合部により弾性板が不織布63及びその上に設けられる補強体60に結合されている。これにより不織布63及び補強体60の範囲において、水のしみ込み線(図示せず)を中断することなく、大地37を固定して保護することが可能である。不織布は、例えば水を通すが砂を通さないPET又はPTFEから成っている。不織布63は高い負荷能力特に引張り強度を持ち、速やかにかつ安価に敷設することができる。
【0068】
補強体60を持つ不織布を複合板(図示せず)として敷設することも可能である。
【0069】
図11bは、図111の不織布63とその上に設けられる補強体60の詳細を垂直断面図で示す。洪水又は高潮の過程において、沖積されている砂19が水により運び去られることがあるので、不織布63及び補強体60が直接地表面12上に載る。このような場合流し去りを回避するため、不織布63及び補強体60は取付け手段3を持ち、この取付け手段により地表面12又は大地37に取付けられている。取付け手段3として、装置1の弾性板2用の取付け手段3としても用いられる同じ土ねじ又は土槍が設けられている。
【0070】
不織布63及び地格子60の別の利点は、これら63,60の上を人間が歩行可能なことである。
【0071】
図12は、特に洪水防護及び護岸のために使用される3層複合板としての上述した弾性板2の別の構成を示す。縁で互いに結合されるこのような複数の板75は、取付けのため沿岸範囲にあって洪水の危険にさらされる砂床上に置かれ、それから砂で覆われる。
【0072】
弾性板75は、3つの層から成る複合板として構成されている。一番上の保持層70はゴムから成り、黄色又は砂の色に着色されている。それにより保持層は色に関して環境に合わされている。板75多数の小さい円形凹所71を持っている。これらの凹所71は砂又は他の大地材料(図示せず)を収容し、こうして保持することができる。これにより風の運搬による砂の運び去りが防止又は減少される。中間層74として、鋼線(図示せず)を挿入されるか又は織物挿入物を持つ弾性ゴム板が設けられている。これにより板75は大きい圧縮力又は引張り力を受け止めることができる。保持層70及び中間層74は貫通する水流出開口72を持っている。中間層74の下側17に、更にポリエステルから成る不織布層63が設けられている、この不織布層は水を通すフィルタとして作用する。水は水流出開口72を通って妨げられることなく流れることができるが、一緒に流される砂は不織布層63によって引止められる。
【0073】
砂が僅かな水と混合されると、まず非常に粘りかつ剛性の混合物が形成される。水の割合が高まると、相の急変が起こり、低い粘度を持つ液状の懸濁液が形成される。その場合懸濁液は容易に流し去られ、危険にさらされる岸における保護機能を果たすことができない。3層板75のフィルタ機能により、水は層70,74を通って大地へ流入し、砂らか分離される。低粘度懸濁液の形成はこうして回避される。これにより砂の運び去りが少なくなることによって装置1のそれ以上の保護機能が行われる。
【0074】
上述した弾性板75は、装置1の構成部分として、加硫、接着又は結合素子(図示せず)により互いに結合されることができる。1層の板2を多層の板75と組合わせるか、又は他の保護装置のために板75を使用することも可能である。
【0075】
図13aは、1層の弾性板2と図12による3層の弾性板75とを持つ装置1の全体を垂直断面図で示す。板2,75は、図示しない結合素子により互いに水密に結合されている。装置1は、沖積される砂19により完全に覆われている。装置は弾性ゴム又は硬質ゴムから成る1つ又は複数の板2,75を持ち、これらの板は互いに結合され、土ねじ3により大地37に係留されている。地表面12は一部水表面10の下に、一部その上にある。水の後方には砂丘状形成物が示され、その土手の傾斜12は急峻に上昇し、最後に稜13に達している。洪水又は高潮の際、水面10が上昇し、符号11で示すレベルへ達することがある。
【0076】
土手の範囲で、弾性板2は水平面に対して大きい傾斜を持っている。この範囲で弾性板は1層に形成され、即ちこの範囲では砂も水も通さない。沖積される砂19の範囲には。3層の弾性板75がある。これらの板はわずかな傾斜しか持たず、砂の沖積19中にほぼ水平に設けられている。板75は、貫通する水流出開口72により水を通すが、砂は不織布63から成る下層により引止められる。従ってこの範囲で装置1は、水を通すが砂を通さない。
【0077】
不織布63も同様に高い機械的負荷能力特に引張り強度を持っている。弾性板75の他の両方の層70,74も非常に高い機械的負荷能力を持っているので、装置1上を歩行及び走行可能である。
【0078】
図13bは図13aによる弾性板75の細部Aを垂直断面図で示す。
【0079】
図14は、コンクリート素子73を持つ装置1の実施例の全体を垂直断面図で示す。高潮後における地表面12及び水表面10の推移が示されている。地表面12は一部水表面10の下にあり、一部その上にある。弾性板2,75を持つ装置1は、一部地表面12上に直接載っている。装置1の水側10に面する端部範囲及び側方端部範囲(図示せず)において、適当な弾性板75におもりとしてコンクリート素子73が取付けられている。コンクリート素子73は弾性板75を下方へ引張り、それにより弾性板は陸側の板より大地37中の深い所にある。これにより垂直断面図において下方へ湾曲する板75の推移が生じ、板が特に有利な流体力学的形状を形成して、波の乗り上げ面として役立つ。波の力はこうして吸収され、上方へ導かれる。それにより装置1の下の浸食が少なくなる。
【0080】
しかし高潮の作用により、地表面12がコンクリート素子73の下縁に達し、その下を浸食することがあると、コンクリート素子73は下方へ移動し、その際弾性板75も一緒に、大地37の方へ引張る。それにより、一層深い所にある海底12の所まで防護が復元される。コンクリート素子73は、図13aに示す装置1と組合わせることもできる。
【0081】
図15は、一層の弾性板2と多層の弾性板75とを持つ装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。弾性板2,75は弾性ゴム又は硬質ゴムから成り、互いに結合されている。取付けのため、弾性板は土ねじ3により大地37に係留されている。砂表面12は一部水表面10の下にあり、一部その上にある。水103の後方には砂丘状形成部106が示されている。砂丘状形成部106の土手の範囲では、弾性板2は水表面に対して大きい傾斜を持っている。この範囲で弾性板は1層に形成され、即ちこの範囲で装置1は砂も水も通さない。その際板2は砂表面12のすぐ下にある。土手の範囲の水側では、板75と砂表面12との間隔が増大している。これにより板75は凹所又は上方へ開く桶状凹所100を形成している。こうして生じる空所は、沖積される砂19で満たされる。砂は沖積の際におけるように導入され、入れられる砂の表面12は、通常の水面10より上にある。これによりほぼ水平な平らな面12が生じる。高潮又は洪水の際、水103は砂を運び去るため作用点を持たない。こうして砂19が洗い流されるのを確実に防止される。更に桶状凹所100の壁101,104により砂19が留められる。壁101,104は弾性板のしわにより形成され、付加的な構造素子は必要とされない。
【0082】
桶状凹所100の範囲に、図12に示すように3層の複合板75が設けられている。穴あき板75は、貫通する水流出開口(図12参照)により、水を通すが、砂は不織布から成る層(図12参照)により留められ、それにより装置1は水を通すが、砂を通さない。これにより水は流出開口を通って直ちに流出し、低い粘度を持ち従って容易に洗い流されるか又は運びだされる水−砂懸濁液は形成されない。
【0083】
板2,75は多数の土ねじ3により地37に係留される。桶状凹所100の範囲には、土ねじ3は必ずしも必要でない。なぜならば、板75は沖積される砂19により固定されるからである。
【0084】
水側103に面する装置1の端部範囲には、弾性板2,75に連続間隔でおもりとしてのコンクリート素子73が取付けられている。同様に側方の端部範囲にコンクリート素子73が取付けられている(図14参照)。これらのコンクリート素子73の機能は上述されている。
【0085】
図16aは、互いに結合される多数の板を持つ桶状凹所100の概略平面図を示す。水線105即ち水103と砂37との間の移行範囲が示されている。桶状凹所100は、板75のしわ付けにより形成される4つの側壁101,104を持つほぼ長方形の形状を持っている。桶状凹所100は、それが水線105及び砂丘形成部106から十分な間隔を持つように設けられ、それにより洪水又は高潮の際乗上げるか又は流れ去る水が、できるだけわずかな垂直流速しか持たない。
【0086】
桶状凹所100は、その底に同様に板75のしわ付けにより形成される隆起102を持っている。隆起102は、水103に面する壁104から陸側の方へ延びている。これにより原理的に防波堤によっても得られるような付加的な効果、即ち横流れにより砂の運び出しを防止する効果が生じる。しかし本発明による隆起102は一層効果的である。なぜならば、それらが完全に凹所100内にあり、かつ砂の中にあり、従って水により直接周囲を洗われないからである。
【0087】
強調すべきことは、図示が明白にするために役立つにすぎないことである。なぜならば、桶状凹所100は沖積された砂19(図16b参照)により完全に覆われ、従って見えないからである。更に桶状凹所100及び隆起102の寸法やその相互間隔は正確な寸法で示されていない。
【0088】
図16bは図16aの桶状凹所100の概略を垂直断面図で示す。これからわかるように、隆起102は弾性板75のしわ付けにより形成され、それにより付加的な構造素子は必要とされず、装置1の安価な構築が可能である。隆起102の間及び隆起102より上の範囲は、沖積された砂19で覆われている。
【0089】
図17は、本発明によるセメント注入アンカ207を持つ装置1の別の実施例の詳細を垂直断面図で示す。セメント注入アンカ207は、下端に王冠状の歯216を持つ高級鋼管208から成っている。上部範囲には、穴210を持つ高級鋼製の管板209が溶接されている。更に管は上部範囲に雌ねじ212を持っている。
【0090】
取付けのため、セメント注入アンカ207は垂直に沿岸表面又は地表面12に載せられる。それからセメント懸濁液が管開口211を通って下方へポンプで送り込まれる。セメント懸濁液の洗い流し作用により、管板209が地表面12に載るまで、セメント注入アンカ207は容易に大地37へ押し込まれる。セメントの硬化後、セメント注入アンカ207と大地37との間にかみ合い結合部が形成される。これによりセメント注入アンカ207を砂の中にも固定的に係留することができる。それから互いに結合される弾性ゴム板2が地表面12に敷設される。ゴム板は開口8を持っている。弾性ゴム板2の開口に閉鎖ねじ213が通され、穴210及び管開口211を通って雌ねじ212へねじ込まれ、それにより弾性ゴム板2がそれぞれ管板209と閉鎖ねじ213の頂板214との間に締付けられる。
【0091】
図18は、沿岸防壁300を持つ装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。岸に近い建造物又は建造物を防護できるように、この図は沿岸防壁300を示している。このため弾性板75は、適当な結合手段(図示せず)により沿岸防壁300に直接結合される。ここでは水を通すが砂を通さない多層の弾性板75が使用される。弾性板75は、砂表面20の下及び部分的に水表面10の下に設けられている。機械的結合により互いに結合される板75の水に面する端部範囲にコンクリート素子73が取付けられて、この範囲で弾性板75を下方へ引張り、こうして海の波により生じる圧力波を一層よく吸収することができる。
【0092】
図18は、単一杭301を持つ洗掘防護装置としての装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。このような単一杭301は海底37へ打込まれるコンクリート杭であり、例えば風力設備又はボーリング塔用支持体として使用されている。水流のため、単一杭301の近く又は他の沖合建造物に洗掘が起こり、即ち建造物301の範囲で砂が洗い流されて、漏斗状洗掘凹所が形成される。図示した実施例では互いに結合される弾性板2と弾性板2の縁又は端部範囲にあるコンクリート素子73から成る装置1によって、単一杭301が洗掘に対して効果的に防護される。符号302により示すように、単一杭301の範囲で砂表面20は洗い流されたけれども、単一杭301に接する弾性板2によりそれ以上の洗い流しは防止された。コンクリート素子73は板2を下方へ引張り、こうして装置1の流体力学的に好都合な形状を生じる。コンクリート素子は更に取付け素子としても役立つので、洗掘防護装置が特定の大きさを越えないと、状況に応じて土ねじ又は他の上述した取付け手段をなくすことができる。弾性板2は1層で水を通さなくてもよく、また水を通すが砂を通さない多層板75(図12参照)であってもよい。
【0093】
図19に示す装置1の実施例は、単一杭301の図示した使用に限定されず、図示したやり方であらゆる種類の沖合建造物又は沖合建造物の基礎又は水中建造物のために使用可能である。
【0094】
図20は砂被覆なしの装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。地表面12は水表面10の下にある。弾性板として、水を通すが砂を通さない多層板75(図12参照)が設けられている。板75は互いに結合され(図示せず)、少し斜めの地表面12上に直接載り、砂で覆われていない。それにもかかわらず、これは同様に可能である。板75の安定性及び可撓性のため、その上を歩行又は走行可能である。板は土槍3により大地37に取付けられている。水側10に面する弾性板75の端部範囲及び側方の端部範囲(図示せず)において、弾性板75におもりとして複数のコンクリート素子73が取付けられて、弾性板75を下方へ引張る。これにより下方へ湾曲する板75の推移が生じ、板はこうして特に有利な流体力学的形状を形成して、波に対する乗上げ面として役立つ。
【0095】
更に砂から成る土手24を持つ砂丘と、それに続く砂表面20を持つ浸食稜13が示されている。土手24の範囲は、水を通さない1層の弾性板2により防護されている。水を通さないこれらの板2は、大地37の深くまで延びている。高潮の際水表面10が上昇すると、水を通す板75の表面を覆う。その場合水は板75を通って有利に大地37へ流出することができる。その場合大地37の中へ延びかつ水を通さない弾性板2の範囲は、板2の後ろの土手の範囲で水が高く上昇し過ぎ、板2の弾性運動の際波の荷重を受けて洗掘が起こるのを防止する。土手13,20,24は、それにより更に防護される。水を通さない弾性板2は加硫により互いに水密に結合されている(図示せず)。水を通す板75を持つ範囲と水を通さない板2を持つ範囲は、ゴム素子76により互いに結合されている。
【0096】
図21はコンクリート梁を持つ装置1の別の実施例の全体を垂直断面図で示す。この場合同時に取付け素子3として役立つ補強素子303が設けられている。コンクリート梁の代わりに、金属異形材も適している。水を通さない弾性板75から成る範囲は、その縁範囲でコンクリート梁3に固定的に結合され、こうして大地37に固定されている。従って土ねじ又は土槍はなくてもよいが、付加的な取付け手段として使用することができる。装置1の図示した実施例では、2つのコンクリート梁3の間の弾性板75の範囲は1つの湾曲部を持っている。この湾曲部により、上方へ向く強い吸引力にも抵抗する静的に特に安定な構造が生じる。従って挿入物又は補強体なしの弾性板も使用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 防護装置
2 弾性板
3 取付け素子
4 座板
5 支持部材
6 底板
7 アンカ素子
8 開口
9 頭部
10 水表面
11 洪水表面
12 地表面
13 浸食稜
14 繊維挿入物
15 織物
16 前側
17 下側
18 載置素子
19 砂沖積
20 砂表面
21 矢板壁
22 基礎
23 付加される矢板壁
24 土手
30 予荷重素子
31 保護蓋
32 コイルばね
33 引張りばね
34 載置面
35 閉鎖ねじ
36 保護スリーブ
37 大地
38 接着
39 ばねスリーブ
40 基板
41 基板開口
42 流出開口
43 ばね下端
44 ばね上端
45 壁
46 基盤
47 空所
48 管
50 板
52 内部板
58 内部開口
60 補強体
61 格子結合部
63 不織布
70 保持層
71 凹所
72 水流出開口
73 コンクリート素子
74 中間層
75 3層複合板
76 ゴム素子
100 桶
101 側壁
102 隆起
103 水
104 側壁
105 水線
106 砂丘形成部
207 セメント注入アンカ
208 管
209 管板
210 穴
211 管開口
212 雌ねじ
213 閉鎖ねじ
214 頂板
215 セメント
216 穴あけ
300 沿岸防壁
301 単一杭
302 洗掘部
303 補強体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洪水防護、護岸又は洗掘防護装置(1)であって、装置(1)が1つ又は複数の弾性板(2,75)及び板を防護すべき個所(12)に固定する取付け手段(3)を持っていることを特徴とする装置。
【請求項2】
弾性板(2,75)がゴムから成り、なるべく約2cmの厚さを持っていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
弾性板(2,75)が加硫により水密に又は結合手段により機械的に互いに結合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
弾性板(2,75)が、特に繊維織物から成る1つ又は複数の挿入物(14)、あるいは鋼棒、鋼線又は鋼網から成る補強体を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項5】
吸い込み力による板(2,75)の変形を回避するため、弾性板(2,75)のために補強素子(303)が設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項6】
取付け手段として土ねじ(3)、土槍又はセメント注入アンカ(207)が設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項7】
セメント注入アンカ(207)として、上端に設けられて管開口(211)用穴(210)を持つ管板(209)、及び頂板(214)を持つ閉鎖ねじ(213)用の上部雌ねじ(212)を有する管(208)が設けられていることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
装置(1)の両横端部に、水から陸地側の方へ延びて裏後方押し流しを防止するため、板(2,75)に対して曲げられた矢板壁(21)が設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項9】
水平に設けられて装置に結合される1つ又は複数の底板(6)が設けられて、弾性板(2,75)用の保持枠を形成する支持部材(5)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項10】
底板(6)が大地に取付けるためのアンカ素子(7)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項11】
弾性板(2,75)がその下縁に沿って延びる載置素子(18)を持ち、この載置素子が垂直断面においてほぼT字状の異形材として形成されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項12】
砂(19)又は他の大地材料(37)をしっかり保つため、弾性板(2,75)がその上側に凹所(71)及び/又は隆起を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項13】
弾性板(75)が、水流出開口(72)及び/又は水を通しかつ砂を通さない濾過層特に不織布層(63)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項14】
装置(1)が、互いに結合される弾性板(2,75)の端部範囲に、端部範囲において弾性板(2)を下方へ引張るか又は押すために、なるべくコンクリートから成る少なくとも1つのおもり素子(73)を持っていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項15】
互いに結合される板(2,75)が、砂及び/又は他の材料を満たすため上方へ開く少なくとも1つの桶状の凹所(100)を形成し、桶状凹所(100)の壁(101)がなるべく弾性板(2)のしわとして形成されていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項16】
桶状凹所(100)がその底に、横流れによる砂運び去りを防止するため、水に面する壁(103)から陸地側の方へ延びる隆起(102)を持ち、隆起(102)がなるべく弾性板(2,75)のしわとして形成されていることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
互いに結合される弾性板(2)の端部範囲に、水を通しかつ砂を通さない濾過層(63)特に不織布が設けられ、その上になるべく補強体(60)が設けられていることを特徴とする、先行する請求項の1つに記載の装置。
【請求項18】
請求項1〜17の1つに記載の装置(1)を防護すべき個所(12)に固定することを特徴とする、洪水防護、護岸又は洗掘防護方法。
【請求項19】
洪水防護、護岸又は洗掘防護のために、請求項1〜17の1つに記載の装置(1)の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2011−518268(P2011−518268A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−506574(P2011−506574)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/DE2009/075017
【国際公開番号】WO2009/129809
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(510288954)
【Fターム(参考)】