説明

活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物及びコーティング剤組成物

【課題】 金属基材や金属入り塗料が塗工された基材との密着性に優れた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物、及びそれを用いたコーティング剤組成物を提供すること。
【解決手段】 ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物に関し、更に詳しくは、金属基材や金属入り塗料が塗工された基材との密着性に優れた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物、およびそれを用いたコーティング剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ジオール化合物、ジイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られるウレタンアクリレートオリゴマーは、有機溶剤や反応性希釈剤により希釈した組成物としたり、界面活性剤の存在下、環境や人体への負荷が少ない水分散型の組成物とした後に、塗工し、紫外線硬化して塗膜を形成させる方法により、活性エネルギー線硬化型樹脂として木工塗料やプラスチックコーティング剤等の用途に使用されて使用されてきた。
【0003】
ところが、ウレタンアクリレートオリゴマーのみならず、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリルオリゴマー、ポリエーテルアクリレートオリゴマー等のオリゴマー化合物や、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等のポリマーから得られるコーティング剤や塗料は、一般的にガラスや金属に対する密着性に劣ることが知られており、金属やガラスに対する密着性を上げるために種々の検討がおこなわれてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、3級アミノ基含有ポリオール由来の構造部位を中和または4級化剤によりカチオン化して得られるカチオン性アミノ基を含有する構造部位が、必須の構成成分として含有されるカチオン性ポリウレタン樹脂を水系媒体中に分散してなるカチオン性ポリウレタン樹脂水分散体が記載されており、かかるポリウレタン樹脂水分散体は、接着性に優れるためガラス集束剤として有用に用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−45509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示の技術は、ポリウレタン樹脂を用いるものであり、基材に塗布後に熱硬化により硬化塗膜を形成させるために長時間の乾燥時間を要し、生産性に劣るものであり、更には、無機基材(金属、ガラス)に対する密着性を評価するために剥離試験を行なっているものの、かかる試験は2mm角の碁盤目によるテープ剥離試験を用いており、JIS規格の1mm角の基盤目試験に比べてマイルドな条件下での試験であるため、実用上充分な金属密着性を示すとはいえないものであった。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、金属基材や金属入り塗料が塗工された基材との密着性に優れた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物、及びそれを用いたコーティング剤組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物と反応性界面活性剤を含有してなる活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物において、更にアミン系のカチオン性ポリマーを含有させることにより、金属基材や金属入り塗料が塗工された基材との密着性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物に関するものである。
【0010】
更に、本発明では、上記活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物からなるコーティング剤組成物も提供するものである。
【0011】
なお、本発明の活性エネルギー線エマルジョン組成物は、硬化成分としてウレタン(メタ)アクリレート系化合物を含有しており、かかるウレタン(メタ)アクリレート系化合物の有する重合性の不飽和基を活性エネルギー線照射により重合させ、硬化塗膜を形成させるものであるため、ポリウレタン樹脂と比較し、塗膜硬度等の硬化塗膜の物性に優れ、基材に塗布後の塗膜硬化性に優れるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、金属基材や金属入り塗料が塗工された基材との密着性に優れた効果を有するものであり、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材など、各種の被膜形成材料として非常に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリロイルとはアクリロイルあるいはメタクロイルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)を含有してなるものである。
【0015】
本発明で用いられるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)としては、下記一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)及び下記一般式(2)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、樹脂の粘度や硬化後の樹脂塗膜の強度や耐擦傷性の点で下記一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)が好ましく、密着性、柔軟性の点で下記一般式(2)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)が好ましい。
中でも、塗膜強度の点で下記一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)が特に好ましい。
【0016】
【化1】

[式中、R1は多価イソシアネート系化合物(a1)のウレタン結合残基、R2は水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)のウレタン結合残基、aは1〜5の整数である。]
【0017】
【化2】

[式中、R1は多価イソシアネート系化合物(a1)のウレタン結合残基、R2は水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)のウレタン結合残基、R3はポリオール系化合物(a3)のウレタン結合残基、aは1〜5の整数、bは2〜5の整数である。]
【0018】
上記一般式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)は、多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させてなるものである。
【0019】
多価イソシアネート系化合物(a1)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネート、或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物又は多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)等が挙げられる。
これらの中でも、硬化塗膜の黄変が少ない点や、硬化収縮が小さい点で脂環式多価イソシアネート化合物が好ましく用いられ、特にはイソホロンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネートが更に好ましく用いられる。
【0020】
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の1級水酸基含有(メタ)アクリレート;、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリレート;2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリレート等の単官能の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の水酸基含有2官能(メタ)アクリレート系化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0021】
これらの中でも、硬度の点で、多官能の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、特に好ましくは3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、更に好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートである。
【0022】
上記一般式(1)中のaの値は1〜5であり、好ましくは1〜3、特に好ましくは1または2である。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)の製造法は、通常、上記多価イソシアネート系化合物(a1)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応器に一括又は別々に仕込み反応させればよい。
【0024】
なお、多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との反応モル比は、例えば、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が2個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、多価イソシアネート系化合物(a1):水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:2(モル比)程度であり、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が3個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、多価イソシアネート系化合物(a1):水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:3(モル比)程度である。
この多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5重量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)が得られる。
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)の製造に際しては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、例えば、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ−n−ブチル錫等の有機金属化合物、オクトエ酸亜鉛、オクトエ酸錫、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫等の金属塩、トリエチルアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N−エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2−エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩、酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。
【0026】
また、反応温度は、通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は、通常2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0027】
上記で得られるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)の重量平均分子量は、700〜40,000であることが好ましく、更には800〜10,000、特には900〜6,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると、塗膜硬度及び耐収縮性のバランスを保持させることが困難となったり、基材への濡れ性も低下したりする傾向があり、重量平均分子量が大きすぎると、2〜3官能の多官能性オリゴマーを用いた際に耐擦傷性や硬度を保持することが困難となる傾向がある。
【0028】
尚、上記の重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(昭和電工社製、「Shodex GPC system−11型」)に、カラム:Shodex GPC KF−806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100〜2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定される。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)の60℃における粘度は、200〜15万mPa・sであることが好ましく、特には500〜12万mPa・s、更には500〜10万mPa・sであることが好ましい。かかる粘度が上記範囲外では塗工性が悪くなる傾向がある。
尚、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)は、樹脂の粘度や硬化後の樹脂塗膜の強度や耐擦傷性の点でラジカル重合性不飽和基を2個以上有する多官能性のウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましく、特に好ましくは2〜30個、更に好ましくは3〜15個のラジカル重合性不飽和基を有するものである。
【0031】
上記一般式(2)で示されるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)は、多価イソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)とポリオール系化合物(a3)を反応させてなるものである。
【0032】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)を構成するポリイソシアネート系化合物(a1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)の説明中で記載したものと同様のものを用いることができる。
【0033】
ポリオール系化合物(a3)としては、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、ポリブタジエン系ポリオール、(メタ)アクリル系ポリオール、ポリシロキサン系ポリオール等が挙げられる。
【0034】
ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール等のアルキレン構造含有ポリエーテル系ポリオールや、これらポリアルキレングリコールのランダム或いはブロック共重合体が挙げられる。
【0035】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物などが挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−テトラメチレンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)などが挙げられる。
前記多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
前記環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0036】
ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネートなど)の開環重合物などが挙げられる。
上記多価アルコールとしては、前記ポリエステル系ポリオールの説明中で例示の多価アルコール等が挙げられ、上記アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネートなどが挙げられる。
なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0037】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、飽和炭化水素骨格としてエチレン、プロピレン、ブテン等のホモポリマーまたはコポリマーを有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
【0038】
ポリブタジエン系ポリオールとしては、炭化水素骨格としてブタジエンの共重合体を有し、その分子末端に水酸基を有するものが挙げられる。
ポリブタジエン系ポリオールは、その構造中に含まれるエチレン性不飽和基の全部または一部が水素化された水添化ポリブタジエンポリオールであってもよい。
【0039】
(メタ)アクリル系ポリオールとしては、(メタ)アクリル酸エステルを重合体又は共重合体の分子内にヒドロキシル基を少なくとも2つ有しているものが挙げられ、かかる(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0040】
ポリシロキサン系ポリオールとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンポリオールやメチルフェニルポリシロキサンポリオール等が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオールが好ましく、硬化時に柔軟性等の機械的物性に優れる点で、ポリエーテル系ポリオールが特に好ましい。
【0042】
かかるポリオール系化合物(a3)の重量平均分子量としては、300〜3000が好ましく、特に好ましくは400〜2500、更に好ましくは500〜2000である。ポリオール(a3)の重量平均分子量が大きすぎると、塗膜の硬度が低下し、保護性能が低下する傾向があり、小さすぎると塗膜がもろくなり、強靭性、柔軟性が低下する傾向がある。
【0043】
上記一般式(2)中のaの値は1〜5であり、好ましくは1〜3、特に好ましくは1または2である。
【0044】
上記一般式(2)中のbの値は2〜5であり、好ましくは2〜3、特に好ましくは2である。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)の製造法は、通常、上記多価イソシアネート系化合物(a1)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)、ポリオール系化合物(a3)を、反応器に一括又は別々に仕込み反応させればよいが、ポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a1)とを予め反応させて得られる反応生成物に、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させるのが、反応の安定性や副生成物の低減等の点で有用である。
【0046】
ポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a1)との反応には、公知の反応手段を用いることができる。その際、例えば、多価イソシアネート系化合物(a1)中のイソシアネート基:ポリオール系化合物(a3)中の水酸基とのモル比を通常2n:(2n−2)(nは2以上の整数)程度にすることにより、イソシアネート基を残存させた末端イソシアネート基含有ウレタン化合物を得た後、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応を可能にする。
【0047】
上記ポリオール系化合物(a3)と多価イソシアネート系化合物(a1)とを予め反応させて得られる反応生成物と、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応にも、公知の反応手段を用いることができる。
【0048】
反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との反応モル比は、例えば、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が2個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:2程度であり、多価イソシアネート系化合物(a1)のイソシアネート基が3個で、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)の水酸基が1個である場合は、反応生成物:水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)が1:3程度である。
この反応生成物と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)との付加反応においては、反応系の残存イソシアネート基含有率が0.5重量%以下になる時点で反応を終了させることにより、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)が得られる。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)の製造に際しては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、上記と同様のものが用いられ、例えば、ジブチル錫ジラウレート、トリメチル錫ヒドロキシド、テトラ−n−ブチル錫等の有機金属化合物、オクトエ酸亜鉛、オクトエ酸錫、ナフテン酸コバルト、塩化第1錫、塩化第2錫等の金属塩、トリエチルアミン、ベンジルジエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ブタンジアミン、N−エチルモルホリン等のアミン系触媒、硝酸ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、硫化ビスマス等の他、ジブチルビスマスジラウレート、ジオクチルビスマスジラウレート等の有機ビスマス化合物や、2−エチルヘキサン酸ビスマス塩、ナフテン酸ビスマス塩、イソデカン酸ビスマス塩、ネオデカン酸ビスマス塩、ラウリル酸ビスマス塩、マレイン酸ビスマス塩、ステアリン酸ビスマス塩、オレイン酸ビスマス塩、リノール酸ビスマス塩、酢酸ビスマス塩、ビスマスリビスネオデカノエート、ジサリチル酸ビスマス塩等の有機酸ビスマス塩等のビスマス系触媒等が挙げられ、中でも、ジブチル錫ジラウレート、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセンが好適である。
【0050】
また、反応温度は、通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は、通常2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0051】
上記で得られるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)の重量平均分子量は、700〜40,000であることが好ましく、更には900〜20,000、特には1,000〜10,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると、塗膜硬度及び耐収縮性のバランスを保持させることが困難となったり、基材への濡れ性も低下したりする傾向があり、重量平均分子量が大きすぎると、2〜3官能の多官能性オリゴマーを用いた際に耐擦傷性や硬度を保持することが困難となる傾向がある。
なお、上記の重量平均分子量とは、上記と同様にして測定される。
【0052】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−2)の60℃における粘度は、500〜15万mPa・sであることが好ましく、特には500〜12万mPa・s、更には1000〜10万mPa・sであることが好ましい。かかる粘度が上記範囲外では塗工性が悪くなり好ましくない。
尚、粘度の測定法はE型粘度計による。
【0053】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物系(A−2)は、ラジカル重合性不飽和基を2個以上有する多官能性のウレタン(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましく、特に好ましくは2〜30個、更に好ましくは3〜15個のラジカル重合性不飽和基を有するものであることが、樹脂の粘度や硬化後の樹脂塗膜の強度や耐擦傷性の点で好ましい。
【0054】
反応性界面活性剤(B)としては、ラジカル重合可能な基を有する界面活性剤であればよく、アニオン型の反応性界面活性剤、ノニオン型の界面活性剤のどちらを用いてもよい。また、これら反応性界面活性剤(B)は、一種類を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記アニオン型反応性界面活性剤としては、アニオン型であって、かつ反応性を有する界面活性剤であればよく、例えば、下記一般式(3)〜(13)のような構造をもつものが挙げられる。
【0056】
【化3】

【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
【化6】

【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
【化9】

【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
〔ここで、一般式(3)〜(13)において、R1はアルキル基、R2は水素又はメチル基、R3はアルキレン基、nは1以上の整数、m、lは1以上の整数(m+l=3)、XはSO3NH4、SO3Naのいずれかである。〕
【0068】
上記アニオン型反応性界面活性剤として具体的には、「アデカリアソープSE−20N」、「アデカリアソープSE−10N」、「アデカリアソープPP−70」、「アデカリアソープPP−710」、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」〔以上、旭電化工業社製〕、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」〔以上、三洋化成工業社製〕、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」〔以上、花王社製〕、「アクアロンBC−05」、「アクアロンBC−10」、「アクアロンBC−20」、「アクアロンHS−05」、「アクアロンHS−10」、「アクアロンHS−20」、「ニューフロンティアS−510」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」〔以上、第一工業製薬社製〕、「フォスフィノ−ルTX」〔東邦化学工業社製〕)等の市販品が挙げられる。
【0069】
上記アニオン型反応性界面活性剤の中でも特に、アクリルとの反応が良好であり、エマルジョンの安定性がよい点で、上記一般式(5)、(6)、(7)、(11)、(12)で示される構造の界面活性剤、即ちアルキルフェノール構造を有さないアニオン型反応性界面活性剤、具体的には、「アデカリアソープSR−10」、「アデカリアソープSR−20」、「エレミノールJS−2」、「エレミノールRS−30」、「ラテムルS−180A」、「ラテムルS−180」、「ラテムルPD−104」、「アクアロンKH−05」、「アクアロンKH−10」等が好適である。中でも、良好な剥離性を有することから「アクアロンKH−10」、「ラテムルPD−104」が更に好適である。
【0070】
ノニオン型反応性界面活性剤としては、例えば上記一般式(3)〜(13)において、Xが水素に変更されたものが挙げられ、具体的には、「アデカリアソープNE−10」、「アデカリアソープNE−20」、「アデカリアソープNE−30」、「アデカリアソープNE−40」、「アデカリアソープER−10」、「アデカリアソープER−20」、「アデカリアソープER−30」、「アデカリアソープER−40」、〔以上、旭電化工業社製〕、「アクアロンRN−10」、「アクアロンRN−20」、「アクアロンRN−30」、「アクアロンRN−50」〔以上、第一工業製薬社製〕、「ラテムルPD−420」、「ラテムルPD−430」、「ラテムルPD−450」〔以上、花王社製〕等の市販品が挙げられる。
【0071】
また、本発明においては反応性界面活性剤(B)としては、下記に示すウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)を用いてもよい。
かかるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)としては、多価イソシアネート系化合物(b1)中のイソシアネート基が、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)の水酸基及び下記一般式(14)で示されるオキシアルキレン基含有化合物(b3)の水酸基と、それぞれウレタン結合を形成してなるものである。
【0072】
多価イソシアネート系化合物(b1)としては、上記(a1)と同様のものが例示でき、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族系ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式系ポリイソシアネート、或いはこれらポリイソシアネートの3量体化合物又は多量体化合物、アロファネート型ポリイソシアネート、ビュレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)製の「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)等が挙げられる。
これらの中でも、硬化塗膜の黄変が少ない点や、硬化収縮が小さい点で脂環式多価イソシアネート化合物が好ましく用いられ、特にはイソホロンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネートが更に好ましく用いられる。
【0073】
水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)としては、上記(b2)と同様のものが例示でき、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート等のアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等の1級水酸基含有(メタ)アクリレート;、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の2級水酸基含有(メタ)アクリレート;2,2−ジメチル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の3級水酸基含有(メタ)アクリレート等の単官能の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の水酸基含有2官能(メタ)アクリレート系化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0074】
これらの中でも、硬度や耐水性の点で多官能の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、特に好ましくは3官能以上の水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物、更に好ましくはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートである。
【0075】
オキシアルキレン基含有化合物(b3)は、下記一般式(14)で示されるものである。
【0076】
【化14】

[式中、Xはアルキレン基、Yは水素原子、アルキル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アシル基のいずれかであり、nは1以上の整数である。]
【0077】
上記一般式(14)中のXはアルキレン基であり、中でも、親水性に優れる点で、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましく、特には、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基等の炭素数1〜4のアルキレン基が好ましい。また、nが2以上のポリオキシアルキレン鎖部位の場合は、同一オキシアルキレン鎖のホモ重合体でもよいし、相異なるオキシアルキレン鎖がランダム或いはブロック状に共重合したものでもよい。
【0078】
上記、一般式(14)中のnは1以上の整数であり、好ましくは5〜40、特に好ましくは10〜30である。nの値が大きすぎると塗膜の硬度や耐水性が低下する傾向がある。
【0079】
上記一般式(14)中のYは、水素原子、アルキル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、アシル基のいずれかであるが、これらの中でも、親水性と反応性のバランスに優れる点で水素原子、アルキル基、アクリロイル基が好ましく、特には水素原子が好ましい。
上記、アルキル基としては、通常、炭素数1〜20、好ましくは1〜10のものが用いられる。これらの中でも、特にメチル基、エチル基であることが好ましい。
上記アシル基としては、アセチル基、アセトイミドイル基、チオアセチル基、ベンゼンスルホニル基、ホスホノニトリドイル基、ホスホノイル基等が挙げられるが、これらの中でもアセチル基が好ましい。
【0080】
オキシアルキレン基含有化合物(b3)の具体例としては、以下のものが挙げられる。
【0081】
Yが水素原子の場合、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド/ブチレンオキサイドのブロック又はランダム共重合の少なくとも1種の構造を有するポリエーテルポリオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール(ブロックコポリマー)、ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(ブロックコポリマー)、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(ランダムコポリマー)、ポリオキシテトラメチレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリオキシテトラメチレングリコール(ブロックコポリマー)、ポリオキシテトラメチレングリコール−ポリエチレングリコール−ポリオキシテトラメチレングリコール(ブロックコポリマー)、ポリエチレングリコール−ポリオキシテトラメチレングリコール(ランダムコポリマー)、ポリプロピレングリコール−ポリオキシテトラメチレングリコール−ポリプロピレングリコール(ブロックコポリマー)、ポリオキシテトラメチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリオキシテトラメチレングリコール(ブロックコポリマー)、ポリプロピレングリコール−ポリオキシテトラメチレングリコール(ランダムコポリマー)等が挙げられる。
【0082】
Yがアルキル基の場合、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールトリデシルエーテル、ポリエチレングリコールオレイルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルセチルエーテル等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のポリプロピレングリコール誘導体等が挙げられる。
【0083】
Yが(メタ)アクリロイル基の場合、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0084】
Yがアリル基の場合、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル等のポリエチレングリコール誘導体、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のポリプロピレングリコール誘導体、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−モノアリルエーテル等が挙げられる。
【0085】
Yがアシル基の場合、例えば、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリエチレングリコール誘導体等が挙げられる。
【0086】
上記の中でもポリエチレングリコール誘導体が好ましく、エチレンオキサイド付加モル数nが5〜200、特には5〜100、更には6〜50であることが親水基と疎水基のバランスの点で好ましい。エチレンオキサイド付加モル数nが小さすぎると安定した乳化分散液が得難い傾向があり、大きすぎると硬化塗膜の耐温水性が低下する傾向がある。更には、硬化性への影響の点で、Yが水素原子、アルキル基、(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、特に好ましくは水素原子である。
【0087】
また、上記一般式(14)で示されるオキシアルキレン基含有化合物(b3)の重量平均分子量としては、通常100〜10000が好ましく、特には200〜6000、更には400〜2000が好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると安定した乳化分散液が得難い傾向があり、大きすぎると硬化塗膜の耐温水性が低下する傾向がある。
【0088】
更に、上記一般式(14)で示されるオキシアルキレン基含有化合物(b3)の水酸基価としては、通常2〜560mgKOH/gが好ましく、特には10〜280mgKOH/g、更には25〜200mgKOH/gが好ましい。かかる水酸基価が小さすぎると硬化塗膜の耐水性が劣る傾向があり、大きすぎると乳化安定性が低下する傾向がある。
【0089】
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)は、多価イソシアネート系化合物(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)、オキシアルキレン基含有化合物(b3)を反応させて、多価イソシアネート系化合物(b1)中のイソシアネート基が、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)の水酸基及びオキシアルキレン基含有化合物(b3)の水酸基と、それぞれウレタン結合を形成することにより得られる。
【0090】
例えば、多価イソシアネート系化合物(b1)が2個のイソシアネート基を有する場合では、1個のイソシアネート基がオキシアルキレン基含有化合物(b3)の水酸基とウレタン結合を形成し、残りの1個のイソシアネート基が水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)の水酸基とウレタン結合を形成したウレタン(メタ)アクリレート系化合物となり、多価イソシアネート系化合物(b1)が3個のイソシアネート基を有する場合では、1個のイソシアネート基がオキシアルキレン基含有化合物(b3)(または水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2))の水酸基とウレタン結合を形成し、残りの2個のイソシアネート基が水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)(またはオキシアルキレン基含有化合物(b3))の水酸基とウレタン結合を形成したウレタン(メタ)アクリレート系化合物となる。
【0091】
上記ウレタン結合を形成する反応を行うに当たっては、例えば、
(イ)多価イソシアネート系化合物(b1)、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2、)オキシアルキレン基含有化合物(b3)を一括に仕込み反応させる方法、
(ロ)多価イソシアネート系化合物(b1)と水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)を反応させた後、オキシアルキレン基含有化合物(b3)を反応させる方法、
(ハ)多価イソシアネート系化合物(b1)とオキシアルキレン基含有化合物(b3)を反応させた後、水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(b2)を反応させる方法、
が挙げられるが、反応制御の安定性と製造時間の短縮の観点から、(ロ)の方法が好ましい。
【0092】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)の製造に際しては、反応を促進する目的で触媒を用いることも好ましく、かかる触媒としては、上記と同様のものが例示できる。
【0093】
また、反応温度は、通常30〜90℃、好ましくは40〜80℃であり、反応時間は、通常2〜10時間、好ましくは3〜8時間である。
【0094】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(B1)の重量平均分子量としては、通常500〜50,000であることが好ましく、更には1,000〜20,000であることが好ましい。かかる重量平均分子量が小さすぎると硬化塗膜が脆くなる傾向があり、大きすぎると高粘度となり取り扱いにくく、また硬化塗膜の硬度が低下する傾向がある。
尚、上記の重量平均分子量とは、上記と同様にして測定される。
【0095】
かかる反応性界面活性剤(B)の含有量としては、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)100重量部に対して、通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部、更に好ましくは3〜20重量部である。かかる含有量が多すぎると、エマルジョンの粘度が高くなりすぎる傾向があり、少なすぎると水への分散性能が低下する傾向がある。
【0096】
更に、本発明においては、界面活性剤として上記反応性界面活性剤(B)以外の従来公知の非反応性界面活性剤を併用することも、重合をさらに安定に行うことができる点で好ましい。
【0097】
かかる非反応性界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル等の非反応性界面活性剤が挙げられる。中でも、アルキレンオキサイド鎖を持たない界面活性剤であることが好ましく、更にはアルキレンオキサイド鎖を持たず、かつ2個以上のベンゼン環骨格構造を有するものであることがフィルム系基材への密着性が良好な点で好ましく、具体的にはアルキルベンゼンスルホン酸塩やアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。
【0098】
反応性界面活性剤(B)と非反応性界面活性剤を併用する場合においては、反応性界面活性剤(B)と非反応性界面活性剤との配合割合が、反応性界面活性剤/非反応性界面活性剤が0.2〜5(重量比)であることが好ましく、特には0.3〜3(重量比)であることが好ましい。
【0099】
アミン系カチオン性ポリマー(C)としては、例えば、アリルアミン系化合物のホモポリマー或いはアリルアミン系化合物とその他エチレン性不飽和モノマーとのコポリマー、ジアリルアミン系化合物のホモポリマー或いはジアリルアミン系化合物とその他エチレン性不飽和モノマーとのコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、基材への濡れ性の点で、ジアリルアミン系化合物のホモポリマーを用いることが好ましい。
【0100】
かかるジアリルアミン系化合物としては、下記一般式(15)、(16)で示される化合物を用いることが金属分散アクリルラッカーが塗工された基材への密着性の点で好ましい。
【0101】
【化15】

[式中、R1、R4は水素原子またはアルキル基であり、R2、R3は水素原子またはメチル基であり、HXは酸(Xは酸のアニオン部分)である]
【0102】
上記一般式(15)および(16)中のR1、R4は、水素原子またはアルキル基であり、アルキル基の炭素数としては、通常1〜5、好ましくは1または2である。なお、一般式(15)においては、R1は水素原子であることが好ましく、一般式(16)においては、R1とR4がメチル基であることが好ましい。
【0103】
上記一般式(15)および(16)中のR2、R3は、水素原子またはメチル基であり、水素原子であることが好ましい。
【0104】
上記一般式(15)中のHXで表される酸は、無機酸、有機酸のいずれでもよく、無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が、有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられる。これらの酸のうちでも、塩形成能の点で、塩酸、酢酸が好ましい。
【0105】
一般式(15)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーとしては、例えば、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリジアリルアミン硫酸塩、ポリジアリルアミンのリン酸塩、ポリジアリルアミンの酢酸塩、ポリジアリルアミンのプロピオン酸塩、ポリジアリルアミンのメタンスルホン酸塩、ポリジアリルメチルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン硫酸塩、ポリジアリルエチルアミン塩酸塩、ポリジアリルエチルアミン硫酸塩、ポリジアリル−n−プロピルアミン塩酸塩、ポリジアリル−n−ブチルアミン塩酸塩等が挙げられ、一般式(16)で表されるジアリルアミン系化合物のホモポリマーとしては、例えば、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ポリジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、ポリジアリルジメチルアンモニウムエチルサルフェート等が挙げられる。
【0106】
上記ジアリルアミン系化合物のホモポリマーの中でも、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドが、入手のしやすさの点で好ましい。
【0107】
アミン系カチオン性ポリマー(C)の重量平均分子量としては、通常3000〜400000、好ましくは4000〜300000、特に好ましくは5000〜200000である。かかる重量平均分子量が低すぎると基材への密着性に十分な効果が得られない傾向があり、高すぎるとエマルジョンの粘度が増大する傾向がある。
【0108】
かかるアミン系カチオン性ポリマー(C)の含有量としては、通常0.1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは1〜10重量部である。かかる含有量が多すぎると塗膜強度が低下する傾向があり、少なすぎると基材への密着性が低下する傾向がある。
【0109】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物には、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)の他に、エチレン性不飽和モノマー(D)を含有してなることも硬化塗膜の硬度の調整や基材への密着性の点で好ましく、光重合開始剤(E)を含有してなることが活性エネルギー線を照射させる際に硬化を促進させる点で好ましい。
【0110】
かかるエチレン性不飽和モノマー(D)としては、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和基を有するものであればよく、単官能モノマー、2官能モノマー、3官能以上のモノマーが挙げられる。
【0111】
単官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を1つ含有するモノマーであればよく、例えば、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、α−メチルスチレン、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート等のフタル酸誘導体のハーフエステル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、カルビトール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、2−ビニルピリジン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートモノエステル等が挙げられる。
【0112】
また、上記の他にアクリル酸のミカエル付加物あるいは2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルも挙げられ、アクリル酸のミカエル付加物としては、アクリル酸ダイマー、メタクリル酸ダイマー、アクリル酸トリマー、メタクリル酸トリマー、アクリル酸テトラマー、メタクリル酸テトラマー等が挙げられる。また、特定の置換基をもつカルボン酸である2−アクリロイルオキシエチルジカルボン酸モノエステルとしては、例えば2−アクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸モノエステル、2−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル、2−メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。更に、オリゴエステルアクリレートも挙げられる。
【0113】
2官能モノマーとしては、エチレン性不飽和基を2つ含有するモノマーであればよく、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェートジエステル等が挙げられる。
【0114】
3官能以上のモノマーとしては、エチレン性不飽和基を3個以上含有するモノマーであればよく、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパン、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0115】
本発明においては、更に乳化安定性や樹脂との相溶性の点で水溶性または水分散性をもつエチレン性不飽和モノマーの使用が望ましく、例えば、アクリロイルモルフォリン、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート、エチレンオキサイド変性エポキシアクリレート、ポリエチレングリコールを主成分とするポリエステルアクリレート等の水溶性または水分散性のエチレン性不飽和モノマーを用いることが好ましい。中でもアクリロイルモルフォリン、ポリエチレングリコールジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリアクリレート等の水溶性または水分散性のエチレン性不飽和モノマーが好適である。
これら上記のエチレン性不飽和モノマー(D)は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0116】
エチレン性不飽和モノマー(D)の使用量は、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して500重量部以下であることが好ましく、より好ましくは300重量部以下、特に好ましくは200重量部以下である。かかる使用量が多すぎると硬化塗膜が脆くなり、また乳化分散性が難しくなる傾向がある。
【0117】
光重合開始剤(E)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノンオリゴマー等のアセトフェノン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチル−ジフェニルサルファイド、3,3′,4,4′−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−[2−(1−オキソ−2−プロペニルオキシ)エチル]ベンゼンメタナミニウムブロミド、(4−ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロリド等のベンゾフェノン類;2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメソクロリド等のチオキサントン類;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフォンオキサイド類;等があげられる。なお、これら光重合開始剤(E)は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0118】
これらの中でも、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類を用いることが好ましく、特には、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロピルエーテル、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
【0119】
また、これらの助剤として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4,4′−ジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸(n−ブトキシ)エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等を併用することも可能である。
【0120】
本発明においては、更に水系の分散液の組成物としての用途面での機能をより多く発揮させるの点で、水溶性または水分散性をもつ光重合開始剤を使用することも望ましく、例えば、2−(3−ジメチルアミノ−2−ヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジメチル−9H−チオキサントン−9−オンメトクロライド(オクテルケミカルズ社製、「Quantacure QTX」)や、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」)等の水溶性または水分散性の光重合開始剤が挙げられる。中でも1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア2959」)の水溶性または水分散性の光重合開始剤が好適である。
【0121】
光重合開始剤(E)の使用量は、(A)〜(C)成分の合計100重量部に対して1〜10重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜8重量部、特に好ましくは1〜5重量部である。かかる使用量が少なすぎると紫外線等の活性エネルギー線照射による硬化の硬化速度が極めて遅くなり目的とする硬化塗膜が得られない傾向があり、多すぎても硬化性は向上せず、また硬化塗膜の黄変の原因となる傾向がある。
【0122】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物には、上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)、好ましくは更にエチレン性不飽和モノマー(D)や光重合開始剤(E)の他に、フィラー、染顔料、油、可塑剤、ワックス類、乾燥剤、分散剤、湿潤剤、ゲル化剤、安定剤、消泡剤、レベリング剤、チクソトロピー性付与剤、粘着付与剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、充填剤、補強剤、艶消し剤、架橋剤、シリカ、水分散されたシリカ、防腐剤等を配合することも可能である。
【0123】
本発明においては、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を得るに際しては、上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)及びアミン系カチオン性ポリマー(C)を水性溶媒中で分散させる、好ましくは更にエチレン性不飽和モノマー(D)や光重合開始剤(E)も配合し分散させる。
【0124】
水性溶媒としては、水は勿論のこと、本発明のエマルジョン形態を損なわない範囲で、水に炭素数1〜3の低級アルコールなどを混合した溶媒であってもよい。
【0125】
水性溶媒の使用量については、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物として5〜95重量%となる量であることが好ましく、特に好ましくは10〜80重量%、更に好ましくは20〜60重量%である。使用量が少なすぎると粘度が高くなりすぎる傾向があり、多すぎると塗工時の乾燥負荷が大きくなる傾向がある。
【0126】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の製造方法について詳しく説明する。
【0127】
例えば、以下の方法などにより、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物が得られる。
(1)ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、アミン系カチオン性ポリマー(C)、反応性界面活性剤(B)、水性溶媒を一括で仕込み、通常30〜70℃、好ましくは50〜65℃で撹拌する。
(2)ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、アミン系カチオン性ポリマー(C)、反応性界面活性剤(B)を通常40〜65℃、好ましくは55〜60℃で混合し、撹拌しながら水性溶媒を滴下する。
(3)ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)を通常40〜65℃、好ましくは55〜60℃で混合し、撹拌しながら水性溶媒を滴下し、さらにアミン系カチオン性ポリマー(C)を添加する。
(4)ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、アミン系カチオン性ポリマー(C)を通常40〜43℃、好ましくは55〜65℃に加温して、水に分散させた反応性界面活性剤(B)を滴下して、撹拌する。
上記の中でも製造効率に優れる点で(2)の方法が好ましい。
【0128】
更に、エチレン性不飽和モノマー(D)や光重合開始剤(E)、その他の添加剤を配合する場合には、エチレン性不飽和モノマー(D)や光重合開始剤(E)、その他添加剤を共存させてから撹拌し乳化分散させる方法や、予めウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)の存在下で乳化分散された後、エチレン性不飽和モノマー(D)や光重合開始剤(E)、その他の添加剤を配合する方法なども挙げられる。但し、これらの方法に限定されるものではない。
【0129】
得られた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の不揮発分濃度は20〜80重量%であることが塗工の作業性の点で好ましく、特には30〜70重量%、更には35〜65重量%が好ましい。かかる不揮発分濃度が低すぎると塗工時に基材に対してハジキが生じる傾向があり、高すぎると流動性が低くなり、塗工が困難となる傾向がある。
【0130】
また、得られた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物中の粒子については、その平均粒子径が1〜1000nmであることが好ましく、特には10〜800nm、更に好ましくは20〜600nmであることが好ましい。かかる平均粒子径が小さすぎると活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の粘度が大きくなり取り扱いにくくなる傾向があり、大きすぎると凝集が起こりやすく、乳化安定性の低下を招く傾向がある。
なお、平均粒子径は、500gの水にエマルジョンを0.1g滴下し、撹拌分散して評価用サンプルを作成し、Particle Sizing Systems社製「NICOMP380」を用い、23℃における平均粒子径をVolume−Wt NICOMP DISTRIBUTIONモードによって求めたものである。
【0131】
更に、活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物の粘度としては、20〜20000mPa・s(20℃)であることが好ましく、特には50〜10000mPa・s(20℃)、更には100〜5000mPa・s(20℃)であることが好ましい。かかる粘度が低すぎると膜厚の制御が困難となる傾向があり、高すぎると取り扱いが困難となり塗工作業性が低下する傾向がある。
【0132】
本発明における活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を、対象物に適用し、その後、活性エネルギー線を照射することにより硬化される。
【0133】
かかる対象物としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ABS樹脂、アクリル系樹脂等やその成形品(フィルム、シート、カップ、等)、金属、金属分散されたアクリルラッカー塗料、ガラス等が挙げられる。中でも本発明においては、金属基材や金属入り塗料が塗工された基材を対象物として、本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を適用するときに特に顕著な効果を発揮する。
【0134】
かかるエネルギー線としては、遠紫外線、紫外線、近紫外線、赤外線等の光線、X線、γ線等の電磁波の他、電子線、プロトン線、中性子線等が利用できるが、硬化速度、照射装置の入手のし易さ、価格等から紫外線照射による硬化が有利である。尚、電子線照射を行う場合は、光重合開始剤(E)を用いなくても硬化し得る。
【0135】
紫外線照射により硬化させる方法としては、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、通常100〜3000mJ/cm2程度照射すればよい。
紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って硬化の完全を図ることもできる。
かくして得られる本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材など、各種の被膜形成材料として非常に有用であり、中でもコーティング剤組成物として特に大いに期待されるものである。
【実施例】
【0136】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りのない限り重量基準を意味する。
【0137】
<製造例>
下記のようにウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)を用意した。
【0138】
〔ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)の製造〕
温度計、撹拌機、水冷コンデンサー、窒素ガス吹き込み口を備えた4つ口フラスコに、イソホロンジイソシアネート(a1)(イソシアネート基含有量37.8%)165g(0.74モル)と2,6−ジ−tert−ブチルクレゾール0.88g、ジブチルスズジラウリレート0.02gを仕込み、60℃以下でペンタエリスリトールトリアクリレート(a2)(1.95モル)(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(水酸基価116.9mgKOH/g)935gとして仕込む)を添加し、60℃で4時間反応させ、残存イソシアネート基が0.3%となった時点で反応を終了し、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)を含有する組成物を得た(樹脂分濃度100%)。
上記の調製で得られた組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)が48.9%含有され、エチレン性不飽和モノマー(D)(ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物)が51.1%含有されたものであり、また、重量平均分子量は1100であった。
【0139】
反応性界面活性剤(B)として以下のものを用意した。
〔反応性界面活性剤(B−1)〕
・ノニオン系界面活性剤(重量平均分子量1300:花王社製、「ラテムルPD−420」)
〔反応性界面活性剤(B−2)〕
・ノニオン系界面活性剤(重量平均分子量1700:花王社製、「ラテムルPD−450」)
【0140】
アミン系カチオン性ポリマー(C)として以下のものを用意した。
〔アミン系カチオン性ポリマー(C−1)〕
・ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(日東紡社製、「PAS−H−5L」)
〔アミン系カチオン性ポリマー(C−2)〕
・ポリメチルジアリルアミン塩酸塩(日東紡社製、「PAS−H−1L」)
アミン系カチオン性ポリマー(C−3)〕
・ポリメチルジアリルアミン塩酸塩(日東紡社製、「PAS−M−1」)
〔アミン系カチオン性ポリマー(C−4)〕
・ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(日東紡社製、「PAS−M−1L」)
〔アミン系カチオン性ポリマー(C−5)〕
・ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(日東紡社製、「PAS−21CL」)
【0141】
光重合開始剤(E−1)として以下のものを用意した。
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンの混合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、「イルガキュア500」)
【0142】
実施例1〜7、比較例1
表1に示す通り、上記のウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)、エチレン性不飽和モノマー(D)の組成物を調製し、60℃に保ちスターラーにて撹拌しながら、イオン交換水を滴下しエマルジョンを調製し、その後5分間スターラーにて撹拌して乳化分散液[I]を得た。得られた乳化分散液[I]に、光重合開始剤(E)を添加、混合して活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を得た(不揮発分濃度50%)。
【0143】
【表1】

※表中の数字は重量部を、「―――」は添加しなかったことを表す。
【0144】
上記で得られた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物について、以下の評価を行った。
実施例及び比較例の評価結果を表2に示す。
【0145】
上記で得られた活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物を、金属分散されたアクリルラッカーを塗工したABS基板上にバーコーターNo.24を用いて、乾燥後の膜厚が15μmとなるように塗工し、60℃で5分間乾燥した後、高圧水銀灯ランプ80W、1灯を用いて、18cmの高さから5.1m/minのコンベア速度で2パスの紫外線照射(積算照射量500mJ/cm2)を行い、硬化塗膜を形成した。
形成した硬化塗膜の表面状態および密着具合を観察した。
<塗膜外観>
・評価
◎・・・均一な塗膜であり、塗膜中にブツやムラがほとんどない。
○・・・均一な塗膜であるが、塗膜中にブツやムラが数個ある。
×・・・塗膜の一部が基材上ではじき、不均一な塗膜である。
<密着具合>
硬化塗膜について、JIS K 5600に準じて碁盤目テープ法により評価し、100マスのうち、剥がれずに基材上に残ったマス目の数を表2に記した。
【0146】
【表2】

【0147】
上記評価結果より、実施例1〜7の硬化塗膜は金属入り塗料が塗工された基材に対して優れた密着性を示し、更には硬化塗膜の表面状態にも優れるものであるのに対し、アミン系カチオン性ポリマーを配合しなかった比較例1の硬化塗膜は、基材上に塗工された金属入り塗料との密着性に劣るものであり、塗膜の表面状態も不均一であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)を含有するエマルジョン組成物であるため、塗膜の硬度、基材密着性、特に金属入れ塗料が塗工された基材への密着性に優れた硬化塗膜を形成する活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物となり、塗料、粘着剤、接着剤、粘接着剤、インク、保護コーティング剤、アンカーコーティング剤、ハードコート用コーティング剤、磁性粉コーティングバインダー、サンドブラスト用被膜、版材など、各種の被膜形成材料として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)、反応性界面活性剤(B)、アミン系カチオン性ポリマー(C)を含有してなることを特徴とする活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)が、多価イソシアネート系化合物(a1)及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物(a2)を反応させてなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A−1)であることを特徴とする請求項1記載の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。
【請求項3】
反応性界面活性剤(B)が、ポリアルキレンオキシド型ノニオン系反応性界面活性剤であることを特徴とする請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。
【請求項4】
アミン系カチオン性ポリマー(C)が、ジアリルアミン化合物の重合体、ジアリルアミン塩酸塩の重合体から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。
【請求項5】
反応性界面活性剤(B)の含有量が、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)100重量部に対して、1〜30重量部であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。
【請求項6】
アミン系カチオン性ポリマー(C)の含有量が、ウレタン(メタ)アクリレート系化合物(A)100重量部に対して、1〜20重量部であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型エマルジョン組成物からなることを特徴とするコーティング剤組成物。

【公開番号】特開2011−46765(P2011−46765A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194082(P2009−194082)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】