説明

活性エネルギー線硬化型接着剤及びそれを用いた太陽電池用裏面保護シート

【課題】硬化が早く生産性に優れる活性エネルギー線硬化型接着剤、及びその製造方法を提供する。さらに、硬化が早く生産性に優れる活性エネルギー線硬化型接着剤を用いた太陽電池用裏面保護シート又はモジュールを提供する。
【解決手段】本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤は、側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含むことを特徴とする。前記(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位の量は、好ましくは、前記エポキシ化合物(C)100質量部に対して20質量部超100質量部以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池用裏面保護シート用などに用いられる活性エネルギー線硬化型接着剤、その製造方法、及び該接着剤を使用した積層体、太陽電池裏面保護シート及びモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素の増加による温室効果による地球の温暖化や酸性雨などの地球規模の環境問題が深刻化し、現在、火力発電に代わるクリーンなエネルギーの開発が切望されるようになってきた。
【0003】
このようなエネルギー源として現在最も注目・期待されているものの一つとして、クリーンさ、安全性及び取り扱い易さの点から、無限の太陽エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる太陽電池がある。
【0004】
太陽電池は、太陽電池のセル単体を直列または並列に接続した上で、機械的強度や耐候性が得られる構造とするために、通常モジュールという構造を採る。太陽電池モジュールは、太陽光の入射側にガラス面を配置し、次に樹脂層、太陽電池セル、樹脂層そして裏面保護シートの順に積層された構造となっている。裏面保護シートは、太陽電池モジュールの裏面(太陽光の入射側と反対側)を保護するために配置される。太陽電池は、屋外に設置されることが多いため、裏面保護シートには、機械的強度、耐候性および耐光性などの耐久性が要求される。
【0005】
太陽電池用裏面保護シートとしては従来種々のものが開発されてきた。最も汎用されているのは、ポリフッ化ビニルフィルム等のフッ素系樹脂フィルムである。フッ素系樹脂フィルムを用いた裏面保護シートとしては、例えば、フッ素系樹脂フィルムと金属箔との複合フィルム;フッ素系樹脂フィルム、ケイ素酸化物薄膜層、および透明樹脂との積層体(例えば、特許文献1参照)などが挙げられる。
【0006】
しかしながら、フッ素系樹脂フィルムを裏面保護シートとして用いた場合、接着性が弱く、層間剥離の問題があった。また、フッ素系樹脂フィルムは表面硬度が低く、機械的強度の点でも改善の余地がある。さらに、フッ素系樹脂フィルムは、廃棄・処理方法によっては、環境への負担が大きく、環境性が求められる現状において、環境負荷の少ないシートが求められている。
【0007】
上記フッ素系樹脂フィルムの問題点を解決する技術として、特許文献2では、耐加水分解性のポリエステルフィルムと、金属酸化物を被着した樹脂フィルムおよび白色樹脂フィルムとの3層積層体からなる裏面保護シートが開示されている。このような構成を有する裏面保護シートは、耐加水分解性等の耐久性を備え、またフッ素系樹脂フィルムと比較して層間接着性が向上している。
【0008】
また、耐加水分解性に優れたフィルムとして、特許文献3に記載されているようにポリメチルメタクリレート等のアクリル系フィルムを裏面保護シートとして用いることもできる。
【0009】
しかしながら、いずれの場合もフィルムの積層には熱硬化型接着剤が用いられており、硬化に非常に時間を要するため、生産性が非常に低くかつ、熱硬化時に接着剤層が黄変しやすいという問題点がある。したがって、硬化が早く生産性に優れる接着剤及びそれを用いた太陽電池裏面保護シートが求められている。
【0010】
一方、生産性に優れる接着剤としては活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。しかしながら、一般的にはガスバリア性及び水蒸気透過性を低減するため、太陽電池裏面保護シートの1層には無機化合物の蒸着薄膜層が形成されており、これに接着性を示す活性エネルギー線硬化型接着剤はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平4−239634号公報
【特許文献2】特開2002−100788号公報
【特許文献3】特開2007−266382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、硬化が早く生産性に優れ、かつ接着性に優れる活性エネルギー線硬化型接着剤を提供することにある。
また、本発明の他の課題は、硬化が早く生産性に優れ、かつ密着性に優れる活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の他の課題は、硬化が早く生産性に優れ、かつ接着性に優れる活性エネルギー線硬化型接着剤を用いた、層間接着性に優れた積層体、太陽電池用裏面保護シート又はモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることにより、接着性に優れかつ生産性が良好な太陽電池用裏面保護シート及びモジュールが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型接着剤を提供する。
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位の量は、前記エポキシ化合物(C)100質量部に対して20質量部超100質量部以下であることが好ましい。
また、光重合開始剤(B)は、活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する化合物であることが好ましい。
好ましくは、前記エポキシ化合物(C)は、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂からなる群より選択された少なくとも1種のエポキシ化合物である。
また、好ましくは、前記(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)は、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)を少なくとも含む単量体成分を重合して得られるポリマー(A1)である。
また、好ましくは、前記(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)は、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)を少なくとも含む単量体成分を重合して得られるポリマー(A2)と、分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)とを反応させることによって得られるポリマー(A3)である。
また、本発明は、側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含む活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法であって、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)を少なくとも含む単量体成分をラジカル重合開始剤を用いて重合させて(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)を製造する工程(1)、又は、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)を少なくとも含む単量体成分をラジカル重合開始剤を用いて重合させてポリマー(A2)を得、得られたポリマー(A2)と分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)とを反応させて(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)を製造する工程(2)を含む活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法を提供する。
工程(1)及び工程(2)において、重合を、エポキシ化合物(C)の存在下で行うことが好ましい。
さらに、本発明は、2以上のフィルムが、上記記載の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して積層された積層体を提供する。
さらにまた、本発明は、白色樹脂フィルムと無機化合物被着樹脂フィルムとが、上記記載の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して積層された積層体を有する太陽電池用裏面保護シート又はモジュールを提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤によれば、接着性に優れかつ生産性が良好な太陽電池用裏面保護シートが得られる。また、本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法によれば、接着性に優れた活性エネルギー線硬化型接着剤を生産性よく製造することができる。さらに、本発明の積層体は層間接着性に優れている。さらにまた、本発明の太陽電池用裏面保護シート及びモジュールによれば、層間接着性に優れ、環境負荷も少ない太陽電池用裏面保護シート及びモジュールが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<活性エネルギー線硬化型接着剤>
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤は、側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含むことを特徴とする。
【0017】
<(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)>
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤に含まれる(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)は、側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有している。(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)としては、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)を少なくとも含む単量体成分を重合して得られるポリマー(A1)を用いることができる。また、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)としては、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)を少なくとも含む単量体成分を重合して得られるポリマー(A2)と、分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)とを反応させることによって得られるポリマー(A3)を用いることもできる。(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)は、ポリマー(A1)とポリマー(A3)との混合物でもよく、また、他の成分を含んでいても良い。
【0018】
ポリマー(A1)は、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)を少なくとも含む単量体成分を、(メタ)アクリル系モノマーと共重合させて得ることができる。また、ポリマー(A2)は、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)を少なくとも含む単量体成分を(メタ)アクリル系モノマーと共重合させて得ることができる。上記共重合に付すモノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマー以外の他のモノマーを含んでいても良い。
【0019】
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位の量は、前記エポキシ化合物(C)100質量部に対して20質量部超100質量部以下であることが好ましく、さらに好ましくは、40質量部以上80質量部以下である。(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位の量が、前記エポキシ化合物(C)100質量部に対して20質量部以下であると、相対的に(メタ)アクリル共重合系樹脂比率が下がることになり、接着剤組成物の粘度が低くなり、接着厚みなどのコントロールがしにくくなる。また、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位の量が、前記エポキシ化合物(C)100質量部に対して100質量部を超えた場合には、初期接着性(例えば、UV照射後、室温下24hr保存後の接着性)が低くなりやすい。
【0020】
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位としては、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)由来のモノマー単位、及び、分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)由来のモノマー単位などが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位の含有量は、例えば、全モノマー単位の20〜90質量%、好ましくは40〜80質量%とすることができる。90質量%を超えると初期接着性が弱くなりやすく、20質量%を下回ると高温高湿下で長期間保存後の接着性(例えば、UV照射後、85℃×85%RHで2,000時間保存した後の接着性)が弱くなり、経時的に、塗膜の硬化・乾燥の際、あわ状の小さな膨れや穴を生じる現象、いわゆるワキ(Foaming)が生じやすくなる。
【0022】
<3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)>
3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)としては、例えば、オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物、オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物、オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物が含まれる。
【0023】
オキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキシラニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−オキシラニルエチル(メタ)アクリレート、2−グリシジルオキシエチル(メタ)アクリレート、3−グリシジルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジルオキシフェニル(メタ)アクリレート等のオキシラン環(単環)を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など);3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチルオキシ)プロピル(メタ)アクリレートなどの3,4−エポキシシクロヘキサン環等のエポキシ基含有脂環式炭素環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など);5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチル(メタ)アクリレート等の5,6−エポキシ−2−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など);エポキシ化ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート[3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル(メタ)アクリレート]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート[2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−9−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシ)エチル(メタ)アクリレート]、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシブチル(メタ)アクリレート、エポキシ化ジシクロペンテニルオキシヘキシル(メタ)アクリレートなどの3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環を含む重合性不飽和化合物((メタ)アクリル酸エステル誘導体など)などが挙げられる。他のオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物として、エポキシ基を含むビニルエーテル化合物、エポキシ基を含むアリルエーテル化合物等を用いることもできる。
【0024】
オキセタン環(オキセタニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、オキセタニル(メタ)アクリレート、3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、3−エチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、2−(3−メチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−(3−エチル−3−オキセタニル)エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]エチル(メタ)アクリレート、3−[(3−メチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(3−エチル−3−オキセタニル)メチルオキシ]プロピル(メタ)アクリレートや、オキセタニル基を含むビニルエーテル化合物、オキセタニル基を含むアリルエーテル化合物などが挙げられる。
【0025】
オキソラン環(オキソラニル基)含有重合性不飽和化合物としては、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートや、オキソラニル基を含むビニルエーテル化合物、オキソラニル基を含むアリルエーテル化合物などが挙げられる。
【0026】
3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)としては、(メタ)アクリル酸エステル誘導体などの、オキシラン環(単環)を含む重合性不飽和化合物、エポキシ基含有脂環式炭素環を含む重合性不飽和化合物などのオキシラン環(エポキシ基)含有重合性不飽和化合物が好ましい。
【0027】
<(メタ)アクリル系モノマー>
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)の合成に用いることのできる(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルの代表的な例として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のC1-20アルキル(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート等のC6-20アリール(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート等の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェニルエチル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0028】
なかでも、C1-20アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中のC1-20アルキル(メタ)アクリレートに対応するモノマー単位の含有量は、例えば、10〜80質量%、好ましくは20〜60質量%とすることができる。80質量%を超えると高温高湿下で長期間保存後の接着性が弱くなりやすく、10質量%を下回ると初期接着性が弱くなりやすい。
【0029】
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)の合成においては、上記に加えて、さらに他のモノマーを用いることができる。他のモノマーとしては、芳香族ビニル化合物、不飽和基含有カルボン酸又は酸無水物、ヒドロキシル基含有単量体、ピロリドン骨格又はオキサゾリドン骨格を有する(メタ)アクリレート、アミノ基又はアミド基含有(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシシリル基含有ビニル単量体、ブロックイソシアネート基含有重合性不飽和化合物などを用いることができる。
【0030】
<芳香族ビニル化合物>
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルビフェニル、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジンなどが挙げられる。
【0031】
<不飽和基含有カルボン酸又は無水物>
不飽和基含有カルボン酸又は無水物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;4−ビニルフェニル酢酸等のビニルフェニルカルボン酸およびこれらの酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)が例示される。
【0032】
<ヒドロキシル基含有単量体>
ヒドロキシル基含有単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の、多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物、上記多価アルコールとアクリル酸またはメタクリル酸とのモノエステル化物にε−カプロラクトンを開環重合した化合物(ダイセル化学工業株式会社製、プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ等)やエチレンオキサイド、若しくはプロピレンオキサイドを開環重合したヒドロキシル基含有化合物などが挙げられる。
【0033】
<ピロリドン骨格又はオキサゾリドン骨格を有する(メタ)アクリレート>
ピロリドン骨格又はオキサゾリドン骨格を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、アクリル酸1−メチル2−ピロリドン、アクリル酸1−エチル2−ピロリドン、メタクリル酸1−メチル2−ピロリドン、メタクリル酸1−エチル2−ピロリドン、などの(メタ)アクリル酸のピロ−ル環含有のC1-24のアルキルエステル;アクリル酸1−メチル2−オキサゾリドン、アクリル酸1−エチル2−オキサゾリドン、メタクリル酸1−メチル2−オキサゾリドン、メタクリル酸1−エチル2−オキサゾリドン、などの(メタ)アクリル酸のオキサゾ−ル環含有のC1-24のアルキルエステルが挙げられる。
【0034】
<アミノ基又はアミド基含有(メタ)アクリル酸エステル>
アミノ基又はアミド基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド;ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0035】
<アルコキシシリル基含有ビニル単量体>
アルコキシシリル基含有ビニル単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシブチルフェニルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシブチルフェニルジエトキシシラン等のアルコキシシリル基含有重合性不飽和化合物等が挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
<ブロックイソシアネート基含有重合性不飽和化合物>
ブロックイソシアネート基含有重合性不飽和化合物としては、例えば、メタクリル酸2−[O−(1’−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル [= 2−(1−メチルプロピリデンアミノオキシカルボニルアミノエチル)メタクリレート、商品名「カレンズMOI−BM」、昭和電工株式会社製]、メタクリル酸2−(3,5−ジメチルピラゾール−1−イル)カルボニルアミノエチル[商品名「カレンズMOI−BP」、昭和電工株式会社製]などが挙げられる。
【0037】
<反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)>
反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)における反応性官能基Z1としては、例えば、−COOH、−OH、−NH2、−NCO、アルコキシシリル基、酸無水物基などが挙げられる。反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)としては、上記例示の不飽和基含有カルボン酸又は酸無水物、ヒドロキシル基含有単量体、アミノ基又はアミド基含有(メタ)アクリル酸エステル、アルコキシシリル基含有ビニル単量体、ブロックイソシアネート基含有重合性不飽和化合物などが使用できる。
【0038】
<分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)>
分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)における前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2としては、例えば、Z1が−COOHの場合にはエポキシ基、−OHの場合には−NCO又はアルコキシシリル基、アルコキシシリル基の場合にはアルコキシシリル基又は−OH、酸無水物基の場合には−OH又は−NH2、−NCOの場合には−OH、−NH2の場合には酸無水物基などが挙げられる。
【0039】
上記化合物(a3)における3〜5員の環状エーテル基としては、例えば、オキシラン環(エポキシ基)、オキセタン環(オキセタニル基)、又はオキソラン環(オキソラニル基)などが挙げられる。化合物(a3)としては、上記例示の反応性官能基Z2と、3〜5員の環状エーテル基とを有する化合物を使用できる。3〜5員の環状エーテル基としてはエポキシ基が好ましい。
【0040】
活性エネルギー線硬化型接着剤中の(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)の含有量は、例えば、20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%の範囲であることが望ましい。70質量%を超えると接着性が弱くなり、20質量%を下回るとアクリル樹脂分が少ないことで接着剤混合液の粘度が低く、接着厚みなどのコントロールしにくくなる。
【0041】
<エポキシ化合物(C)>
エポキシ化合物(C)としては、例えば、分子内に水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、分子内にアミノ基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、分子内にカルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンから得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、分子内に二重結合を有する化合物を酸化することから得られる脂環式エポキシ樹脂、あるいはこれらから選ばれる2種類以上のタイプの基が分子内に混在するエポキシ樹脂などを用いることができる。エポキシ化合物(C)としては、分子内にエポキシ基を2以上含むエポキシ化合物が好ましい。
【0042】
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンの反応により得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるレゾルシノール型エポキシ樹脂、フェノールとエピクロロヒドリンの反応により得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、その他ポリエチレングリコール型エポキシ樹脂、ポリプロピレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、およびこれらの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体が挙げられる。
【0043】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂の市販品としては、EPON825、jER826、jER827、jER828(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン850(大目本インキ化学工業(株)製)、エポトートYD−128(東都化成(株)製)、DER−331,DER−332(ダウケミカル社製)、Bake1ite EPR154、Bake1ite EPR162、BakeIite EPR172、Bake1ite EPR173、およびBake1ite EPR174(以上、BakeliteAG社製)などが挙げられる。また、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の市販品としては、jER806、jER807、jER1750(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン830(大目本インキ化学工業(株)製)、エポトートYD−170、エポトートYD−175(東都化成(株)製)、Bake1ite EPR169(BakeliteAG社製)、GY281,GY282、およびGY285(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などが挙げられる。
【0044】
レゾルシノール型エポキシ樹脂の市販品としては、デナコールEX−201(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。また、フェノールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、jER152、jER154(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、エピクロン740(大目本インキ化学工業(株)製)、およびEPN179、EPN189(以上、ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)などが挙げられる。
【0045】
グリシジルアミン型エポキシ樹脂の具体例としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類、アミノフェノールのグリシジル化合物類、グリシジルアニリン類、およびキシレンジアミンのグリシジル化合物などが挙げられる。
【0046】
テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン類の市販品としては、スミエポキシELM434(住友化学(株)製)、アラルダイトMY720、アラルダイトMY721、アラルダイトMY9512、アラルダイトMY9612、アラルダイトMY9634、アラルダイトMY9663(以上ハンツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、jER604(ジャパンエポキシレジン社製)、Bake1ite EPR494、Bake1ite EPR495、Bake1ite EPR496、およびBake1ite EPR497(以上、Bakelite AG社製)などが挙げられる
【0047】
アミノフェノールのグリシジル化合物類の市販品としては、jER630(ジャパンエポキシレジン(株)製)、“アラルダイトMY0500、アラルダイトMY0510(以上ハジツマン・アドバンスト・マテリアル社製)、スミエポキシELM120、およびスミエポキシELM100(以上、住友化学(株)製)などが挙げられる。
【0048】
グリシジルアニリン類の市販品としては、GAN,GOT(以上、日本化薬(株)製)やBakelite EPR493(Bakelite AG社製)などが挙げられる。キシレンジアミンのグリシジル化合物としては、TETRAD−X(三菱瓦斯化学(株)製)が挙げられる。
【0049】
グリシジルエステル型エポキシ樹脂の具体例としては、フタル酸ジグリシジルエステルや、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステルやそれぞれの各種異性体が挙げられる。
【0050】
フタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、エポミックR508(三井化学(株)製)やデナコールEX−721(ナガセケムテックス(株)製)などが挙げられる。また、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステルの市販品としては、エポミックR540(三井化学(株)製)やAK−601(日本化薬(株)製)などが挙げられる。また、ダイマー酸ジグリシジルエステルの市販品としては、jER871(ジャパンエポキシレジン(株)製)や“エポトートYD−171(東都化成(株)製)などが挙げられる。また、脂環式エポキシ樹脂の市販品としては、“セロキサイド2021P(ダイセル化学工業(株)製)、CY179(ハンツマン・アドバンスド・マテリアル社製)、セロキサイド2081(ダイセル化学工業(株)製)、およびセロキサイド3000(ダイセル化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0051】
上記例示のなかでも、エポキシ化合物(C)としては、脂環式エポキシ樹脂が好ましい。
【0052】
<脂環式エポキシ樹脂>
エポキシ化合物(C)として好ましく使用される脂環式エポキシ樹脂としては、例えば、分子内に環状脂肪族骨格および2以上のエポキシ基を有するもの、脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を3以上有する化合物などが挙げられる。エポキシ基は、特に限定されないが、環状脂肪族骨格を構成する2つの炭素原子を含んでオキシラン環が形成されている脂環エポキシ基が好ましい。このような脂環式エポキシ樹脂としては、下記式(I)
【化1】

[式(I)中、Xは単結合又は連結基を示し、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド結合、及びこれらが複数個連結した基]で表される化合物が挙げられる。
【0053】
上記式(I)で表される化合物において、連結基Xとして示される2価の炭化水素基としては、炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基、2価の脂環式炭化水素基(特に2価のシクロアルキレン基)などが好ましく例示される。炭素数が1〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン、メチルメチレン、ジメチルメチレン、エチレン、プロピレン、トリメチレン基等が挙げられる。2価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2−シクロペンチレン、1,3−シクロペンチレン、シクロペンチリデン、1,2−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキシレン、シクロヘキシリデン基等の2価のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)などが挙げられる。
【0054】
上記式(I)で表される脂環式エポキシ化合物の代表的な例としては、下記式(I−1)〜(I−7)で表される化合物などが挙げられる。なお、下記式中、mは、1〜30の整数を表す。
【0055】
【化2】

【0056】
また、脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば下記式(I−8),(I−9)で表される化合物が挙げられる。また、脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基を3以上有する化合物としては、例えば下記式(I−10),(I−11)で表される化合物が挙げられる。
【0057】
【化3】

上記式(I−8)中、Rはq価のアルコールからqの−OHを除した基であり、炭素数2〜18程度のアルキル基を表し、直鎖でも分岐鎖でもよく、また環状骨格が含まれていてもよい。;q、nは自然数を表す。q価のアルコール[R−(OH)q]としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノール等の多価アルコールなど(炭素数1〜15のアルコール等)が挙げられる。qは1〜6が好ましく、pは1〜30が好ましい。qが2以上の場合、それぞれの( )内の基におけるpは同一でもよく異なっていてもよい。上記化合物(I−8)としては、具体的には、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物、EHPE3150(ダイセル化学工業製)などが挙げられる。また、上記式(I−10),(I−11)中、a,b,c,d,e,fは0〜30の整数である。
【0058】
エポキシ化合物(C)として使用される化合物は単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、EHPE3150、EHPE3150CE(ダイセル化学工業製)等の市販品を使用できる。
【0059】
エポキシ化合物(C)の使用量は特に限定される訳ではないが、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)100質量部に対して、例えば、50〜200質量部、好ましくは75〜150質量部の範囲であることが望ましい。200質量部を超えるとアクリル樹脂分が少なく粘度が低く、接着厚みなどのコントロールしにくくなり、50質量部を下回ると初期接着性が弱くなる。
【0060】
<光重合開始剤(B)>
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤に含まれる光重合開始剤(B)は、例えば紫外線等の活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する化合物が好ましい。前記光重合開始剤(B)としては、例えば、カチオン部分が、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム、芳香族アンモニウム、チアンスレニウム、チオキサントニウム、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Feカチオンであり、アニオン部分が、BF4-、PF6-、SbF6-、[BX4-(但し、Xは少なくとも2つ以上のフッ素またはトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基)で構成されるオニウム塩を単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0061】
前記芳香族スルホニウム塩としては、例えばビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジフェニル−4−(フェニルチオ)フェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド ビスヘキサフルオロホスフェート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドビステトラフルオロボレート、ビス[4−(ジ(4−(2−ヒドロキシエトキシ))フェニルスルホニオ)フェニル]スルフィドテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0062】
また、前記芳香族ヨードニウム塩としては、例えばジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0063】
また、前記芳香族ジアゾニウム塩としては、例えばフェニルジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、フェニルジアゾニウムヘキサフルオロアンチモネート、フェニルジアゾニウムテトラフルオロボレート、フェニルジアゾニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0064】
また、前記芳香族アンモニウム塩としては、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−ベンジル−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラフルオロボレート、1−(ナフチルメチル)−2−シアノピリジニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0065】
また、前記チオキサントニウム塩としては、S−ビフェニル2−イソプロピルチオキサントニウムヘキサフルオロホスフェート等を使用することができる。
【0066】
また、前記(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe塩としては、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)ヘキサフルオロアンチモネート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)テトラフルオロボレート、2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−Fe(II)テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することができる。
【0067】
前記光重合開始剤(B)としては、例えば、CPI−100P、CPI−101A、CPI−200K(以上、サンアプロ(株)製)、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6990、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6992、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6976(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、アデカオプトマーSP−300(以上、(株)ADEKA製)、CI−5102、CI−2855(以上、日本曹達(株)製)、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L、サンエイドSI−110L、サンエイドSI−180L、サンエイドSI−110、サンエイドSI−180(以上、三新化学工業(株)製)、エサキュア1064、エサキュア1187(以上、ランベルティ社製)、オムニキャット550(アイジーエム レジン社製)、イルガキュア250(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製)、ロードシル フォトイニシエーター2074(RHODORSIL PHOTOINITIATOR 2074(ローディア・ジャパン(株)製)等が市販されている。
【0068】
前記光重合開始剤(B)の使用量は特に限定される訳ではないが、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)及び前記エポキシ化合物(C)の全量に対して、好ましくは1〜10質量%の範囲であることが望ましい。
【0069】
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤の粘度は、塗工性と塗膜厚制御の点で例えば、25℃で1000〜10,000mPa・sが好ましい。
【0070】
<活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法>
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法は、側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含む活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法であって、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)を少なくとも含む単量体成分をラジカル重合開始剤を用いて重合させて(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)を製造する工程(1)、又は、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)を少なくとも含む単量体成分をラジカル重合開始剤を用いて重合させてポリマー(A2)を得、得られたポリマー(A2)と分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)とを反応させて(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)を製造する工程(2)を含んでいる。
【0071】
前記工程(1)及び工程(2)において、重合を、エポキシ化合物(C)の存在下で行うことが好ましい。重合を、エポキシ化合物(C)の存在下で行うことにより高不揮発分化(低VOC化)できる。
【0072】
前記エポキシ化合物(C)の前記工程(1)及び工程(2)における使用量は特に限定される訳ではないが、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)100質量部に対して、例えば、50〜200質量部、好ましくは75〜150質量部の範囲であることが望ましい。200質量部を超えるとアクリル樹脂分が少なく粘度が低く、接着厚みなどのコントロールしやすくなり、50質量部を下回ると初期接着性が弱くなる。
【0073】
3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)、及び、分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)は、前記例示のものを使用できる。
【0074】
<ラジカル重合開始剤>
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)の重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、通常のラジカル開始剤が使用できる。例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、ジエチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ジブチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ化合物、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t−ブチルペルオキシピバレート、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物、過酸化水素などが挙げられる。過酸化物をラジカル重合開始剤として使用する場合、還元剤を組み合わせてレドックス型の開始剤としてもよい。上記のなかでもアゾ化合物が好ましく、特に、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(イソ酪酸)ジメチルが好ましい。
【0075】
ラジカル重合開始剤の使用量は、円滑な重合を損なわない範囲で適宜選択できるが、通常、全単量体成分及び重合開始剤の総量に対して、1〜30質量%程度であり、好ましくは5〜25質量%程度である。
【0076】
<連鎖移動剤>
(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)の共重合においては、ラジカル重合において一般的に使用されている連鎖移動剤を併用してもよい。具体例としては、チオール類(n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、tert−ブチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、トリエチレングリコールジメルカプタン等)、チオール酸類(メルカプトプロピオン酸、チオ安息香酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等)、アルコール類(イソプロピルアルコール等)、アミン類(ジブチルアミン等)、次亜燐酸塩類(次亜燐酸ナトリウム等)、α−メチルスチレンダイマー、タービノーレン、ミルセン、リモネン、α−ピネン、β−ピネン等を挙げることができる。連鎖移動剤の量は全ラジカル重合性単量体の量に対して、好ましくは0.001〜3質量%である。連鎖移動剤を使用する場合は、予めラジカル重合性単量体に混合させておくことが好ましい。
【0077】
<重合>
重合は、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、塊状−懸濁重合、乳化重合など、スチレン系ポリマーやアクリル系ポリマーを製造する際に用いる慣用の方法により行うことができる。これらのなかでも溶液重合が好ましい。モノマー、重合開始剤は、それぞれ、反応系に一括供給してもよく、その一部又は全部を反応系に滴下してもよい。例えば、一定温度に保持したモノマーと重合溶媒の混合液中に、重合開始剤を重合溶媒に溶解した溶液を滴下して重合する方法や、予め単量体、重合開始剤を重合溶媒に溶解させた溶液を、一定温度に保持した重合溶媒中に滴下して重合する方法(滴下重合法)などを採用できる。
【0078】
<重合溶媒>
重合溶媒は単量体組成等に応じて適宜選択できる。重合溶媒として、例えば、エーテル(ジエチルエーテル;エチレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノ又はジアリールエーテル、ジプロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、トリプロピレングリコールモノ又はジアルキルエーテル、1,3−プロパンジオールモノ又はジアルキルエーテル、1,3−ブタンジオールモノ又はジアルキルエーテル、1,4−ブタンジオールモノ又はジアルキルエーテル、グリセリンモノ,ジ又はトリアルキルエーテル等のグリコールエーテル類などの鎖状エーテル;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテルなど)、エステル(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、C5-6シクロアルカンジオールモノ又はジアセテート、C5-6シクロアルカンジメタノールモノ又はジアセテート等のカルボン酸エステル類;エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ又はジアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ又はジアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ又はジアセテート、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノ又はジアセテート、1,3−プロパンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3−プロパンジオールモノ又はジアセテート、1,3−ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,3−ブタンジオールモノ又はジアセテート、1,4−ブタンジオールモノアルキルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールモノ又はジアセテート、グリセリンモノ,ジ又はトリアセテート、グリセリンモノ又はジC1-4アルキルエーテルジ又はモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノ又はジアセテート等のグリコールアセテート類又はグリコールエーテルアセテート類など)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、3,5,5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オンなど)、アミド(N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなど)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドなど)、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、C5-6シクロアルカンジオール、C5-6シクロアルカンジメタノールなど)、炭化水素(ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素など)、これらの混合溶媒などが挙げられる。重合温度は、例えば30〜150℃程度の範囲で適宜選択できる。
【0079】
上記方法により本発明の重合体[(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)]が生成する。重合体[(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)]の重量平均分子量は、例えば500〜1000000、好ましくは5000〜500000、さらに好ましくは10000〜200000程度である。重合体[(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)]の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は1〜3程度である。
【0080】
上記方法で得られた重合液は、必要に応じて固形分濃度を調整したり、溶媒交換したり、濾過処理を施した後、添加剤(充填剤、消泡剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、低応力化剤、可とう性付与剤、ワックス類、樹脂、架橋剤、ハロゲントラップ剤、レベリング剤、濡れ改良剤など)を配合することにより、樹脂組成物を得ることができる。また、重合により生成したポリマーを沈殿又は再沈殿等により精製し、この精製したポリマーを、前記適宜な添加物とともに用途に応じた溶媒に溶解することにより、樹脂組成物を得ることもできる。
【0081】
上記のようにして得られた重合液は、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、好ましくはエポキシ化合物(C)を含んでいる。この重合液に、光重合開始剤(B)と、重合液にエポキシ化合物(C)が含まれていない場合などに必要に応じてエポキシ化合物(C)を混合することにより、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含む本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤が得られる。
【0082】
<活性エネルギー線硬化型接着剤の硬化>
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線を照射することにより硬化できる。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられる。これらのなかでも、紫外線を用いるのが好ましい。紫外線の発生源としては、低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ケミカルランプ、キセノンランプ、ブラックライトランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤では、活性エネルギー線により活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させて層間接着するため、熱硬化型接着剤を用いた場合に生じる、硬化に非常に時間を要するため、生産性が非常に低くかつ、熱硬化時に接着剤層が黄変しやすいという問題点を克服でき、短時間で硬化でき(例えば、1秒〜2分程度)、生産性が非常に高く、硬化時の接着剤層の黄変が起こりにくい。
【0084】
<積層体>
本発明の積層体は、2以上のフィルムが、本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して積層されている。活性エネルギー線硬化型接着剤を介して2以上のフィルムを積層し、例えば活性エネルギー線で硬化することにより、層間接着性に優れた積層体が得られる。硬化は、上記記載のように行うことができる。本発明の積層体で使用するフィルムとしては、白色樹脂フィルムと、ガスバリア性フィルム等の無機化合物被着樹脂フィルムが用いられる。
【0085】
フィルムの積層には、本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤を厚さ3〜5μmで塗布し、接着剤中の溶剤を揮発させた後、フィルムを重ね合わせ、5〜10g/m2程度加圧して圧着し、活性エネルギー線硬化により少なくとも2層の構造を有する積層体とすることができる。
【0086】
<白色樹脂フィルム>
白色樹脂フィルムとしては、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等の樹脂に酸化チタンなどの白色無機顔料を含有したフィルムが利用できる。特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)はもともと寸法安定性、作業性が良く、安価であるので好んで用いることができる。さらに、耐候性や耐光性を高めるために、これらの樹脂に2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−メトキシ−5−スルフオベンゾフェノン等のベンゾフェノン系、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、フェニルサルシレート、p−t−ブチルフェニルサルシレート等のヒンダートアミン系の紫外線吸収剤を練り混んだものを使用することもできる。この白色樹脂フィルムの厚さは、30〜100μm程度とするのが適当である。
【0087】
<無機化合物被着樹脂フィルム>
無機化合物被着樹脂フィルムとしては、安価なポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル等の樹脂フィルムが利用できる。樹脂フィルムの厚さは、基材とするため10〜20μmは必要である。
【0088】
無機化合物被着樹脂フィルムにおける無機化合物としては、金属酸化物又は金属などが挙げられる。金属酸化物としては、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、もしくは酸化錫のうちから選択された少なくとも1種が利用できる。これらの金属酸化物は単体でも良いし、複合酸化物となっていても良い。樹脂フィルム表面に金属酸化物皮膜を被着させるには、蒸着法やスパッタ法を使用すれば良い。複合酸化物皮膜を形成するには、例えば2元蒸着法でも良いし、あるいはムライト(3Al23・2SiO2)のような複合酸化物ターゲットを使用することもできる。金属酸化物皮膜の厚さは、3〜600Å程度あれば充分防湿効果を発揮する。これら金属酸化物を防湿層として使用すれば、無機質であるから絶縁性で耐電圧も高く、耐湿性にも優れているので屋根材と一体にして使用する場合にも安全に使用することができる。
【0089】
また、金属酸化物以外の金属等の被膜についても、金属酸化物皮膜と同様に作成することができる。使用できる金属等としては、例えば、クロム、金、銀、銅、アルミニウム、TiC、TiN、TiB2、WC、SiC、BNなどが挙げられる。
【0090】
<太陽電池用裏面保護シート又はモジュール>
本発明の太陽電池用裏面保護シート又はモジュールは、白色樹脂フィルムと無機化合物被着樹脂フィルムとが本発明の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して積層された積層体を有している。白色樹脂フィルム、及び無機化合物被着樹脂フィルムとしては、前記例示のものが使用できる。また、本発明のモジュールは、太陽光の入射側にガラス面を配置し、次に樹脂層、太陽電池セル、樹脂層そして太陽電池用裏面保護シートの順に積層された構造とすることができる。本発明の太陽電池用裏面保護シート又はモジュールに含まれる積層体は、例えば活性エネルギー線で硬化することにより、層間接着性に優れた積層体を形成できる。本発明の太陽電池用裏面保護シート又はモジュールにおける積層体の積層及び硬化は、上記積層体における積層及び硬化と同様に行うことができる。
【0091】
本発明の太陽電池用裏面保護シートでは、例えば、無機化合物被着樹脂フィルムが最外側になり、白色樹脂フィルムが最内側(太陽電池素子側)になるようにして積層することができる。白色樹脂フィルムは、上記例示のものが使用できる。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
(実施例1:アクリル樹脂組成物の合成例)
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素導入管、及び二つの滴下ロートを備えた2リットル容量のセパラブルフラスコに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート[ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2021P]200g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製サイクロマーM100]45g、2−エチルヘキシルアクリレート[2EHA]30gを仕込み、75℃に昇温後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.30gを酢酸エチル10gに溶解した液を添加し、30分間初期重合を行った。
その後、予め二つの滴下ロートに仕込んでおいた3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート[ダイセル化学工業(株)製セロキサイド2021P]100g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製サイクロマーM100]135g、2−エチルヘキシルアクリレート[2EHA] 90gの混合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.60gを酢酸エチル100gに溶解した液とを、ともに四時間かけて並行滴下した。
モノマー類や開始剤の滴下終了後30分間75℃での重合を継続し、更に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.40gを酢酸エチル 33.3gに溶解した液を一時間かけて滴下する。その後一時間重合を継続した後、残存モノマーの低減のために2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.40gを酢酸エチル33.3gに溶解した液を一時間毎2回繰返し添加し、モノマーの99%以上が重合していることを確認して、(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)とエポキシ化合物(C)とを含むアクリル樹脂組成物を得た。
生成液は、粘度5260mPa・sで、アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)120,000、数平均分子量(Mn)38,900であった。
残存モノマー量として3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレートは0.14%、2−エチルヘキシルアクリレートは不検出であった。
【0094】
(実施例2:アクリル樹脂組成物の合成例)
実施例1の3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製サイクロマーM100]を、同重量のグリシジルメタクリレート[GMA]に変更した以外は実施例1と同じ操作を繰り返し、アクリル樹脂組成物を得た。
生成液は、粘度1260mPa・sであった。
【0095】
(比較例1:アクリル樹脂組成物の合成例)
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素導入管、及び二つの滴下ロートを備えた2リットル容量のセパラブルフラスコに、酢酸エチル100g、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製サイクロマーM100]45g、2−エチルヘキシルアクリレート[2EHA]30gを仕込み、75℃に昇温後、2‘2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.30gを酢酸エチル10gに溶解した液を添加し、30分初期重合を行った。
その後、予め二つの滴下ロートに仕込んでおいた3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製サイクロマーM100]135g、2−エチルヘキシルアクリレート 90gの混合液と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.60gを酢酸エチル100gに溶解した液とを、ともに二時間半かけて並行滴下した。
モノマー類や開始剤の滴下終了後30分間75℃での重合を継続し、更に2‘2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.40gを酢酸エチル 33.3gに溶解した液を一時間かけて滴下する。その後一時間重合を継続した後、残存モノマーの低減のために2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)[和光純薬工業(株)製 V−65]0.40gを酢酸エチル33.3gに溶解した液を一時間毎2回繰返し添加し、二時間の熟成後、冷却しアクリル樹脂組成物を得た。
生成液は、粘度 1030mPa・sであった。
【0096】
(比較例2:アクリル樹脂組成物の合成例)
実施例1の3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート[ダイセル化学工業(株)製サイクロマーM100]をメチルメタクリレート[MMA]に、且つアクリル樹脂分の設計 Tgを実施例1と同じ−3℃とするために、MMAと2EHAの仕込比率を質量比で54%対46%になるように変更し、他の合成条件は実施例1と同じにし、アクリル樹脂組成物を得た。
生成液は、粘度 6400mPa・sであった。
【0097】
(実施例3、4、比較例3、4)
表1に示す組成からなる接着層を形成させるための塗料(活性エネルギー線硬化型接着剤)を調製した。
次に、これらの成分からなる塗料をバーコータ#12で厚さ12μmのシリカ蒸着PETフィルムのシリカ蒸着面上に塗布し、熱風循環型乾燥機中にて80℃で2分間乾燥させた後、厚さ250μmの白PETを貼り合わせ、2kw×5m/min 2パスUVをシリカ蒸着PET面側から照射し、積層体(太陽電池用裏面保護シート)を作製した。
【0098】
(接着性評価)
実施例3、4及び比較例3、4で得られた保護シートについて、次の2種の接着性を以下のように評価した。
1) 初期接着性=保護シート作製後、同保護シートを室温下24時間保存した後の接着性
2) 湿熱試験後の接着性=保護シート作製後、同保護シートを85℃×85%RHで2,000時間保存した後の接着性
実施例3、4及び比較例3、4で得られた保護シートを幅1.5cmにカットし、ORIENTEC社製引っ張り試験機 RTC−1350Aを用いて、T剥離にて剥離強度を測定した。剥離強度が1kgf/1.5cm以上又は保護シートを形成しているシリカ蒸着PETが破断した場合、○とし、剥離強度が1kgf/1.5cm未満の場合、×とした。結果を表1に示す。
なお、表1において、サイラキュア光硬化開始剤UVI−6990の代わりにサンアプロ株式会社製 CPI−100Pを用いた以外同じ実験を繰り返したところ、同様の結果を得た。
【0099】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含むことを特徴とする活性エネルギー線硬化型接着剤。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)中の3〜5員の環状エーテル基を有するモノマー単位の量が、前記エポキシ化合物(C)100質量部に対して20質量部超100質量部以下である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型接着剤。
【請求項3】
前記光重合開始剤(B)が、活性エネルギー線の照射によりカチオン重合を開始することのできる酸を発生する化合物である、請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型接着剤。
【請求項4】
前記エポキシ化合物(C)が、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂からなる群より選択された少なくとも1種のエポキシ化合物である、請求項1〜3の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)が、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)を少なくとも含む単量体成分を重合して得られるポリマー(A1)である、請求項1〜4の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)が、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)を少なくとも含む単量体成分を重合して得られるポリマー(A2)と、分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)とを反応させることによって得られるポリマー(A3)である、請求項1〜4の何れか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤。
【請求項7】
側鎖に3〜5員の環状エーテル基を有する(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、エポキシ化合物(C)とを含む活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法であって、3〜5員の環状エーテル基を有する重合性不飽和化合物(a1)を少なくとも含む単量体成分をラジカル重合開始剤を用いて重合させて(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)を製造する工程(1)、又は、反応性官能基Z1を有する重合性不飽和化合物(a2)を少なくとも含む単量体成分をラジカル重合開始剤を用いて重合させてポリマー(A2)を得、得られたポリマー(A2)と分子内に前記反応性官能基Z1と反応しうる反応性官能基Z2及び3〜5員の環状エーテル基を有する化合物(a3)とを反応させて(メタ)アクリル共重合系樹脂(A)を製造する工程(2)を含む活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法。
【請求項8】
前記工程(1)及び工程(2)において、重合を、エポキシ化合物(C)の存在下で行う、請求項7記載の活性エネルギー線硬化型接着剤の製造方法。
【請求項9】
2以上のフィルムが、請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して積層された積層体。
【請求項10】
白色樹脂フィルムと無機化合物被着樹脂フィルムとが、請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型接着剤を介して積層された積層体を有する太陽電池用裏面保護シート又はモジュール。

【公開番号】特開2011−219510(P2011−219510A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86537(P2010−86537)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(592019589)ダイセル・サイテック株式会社 (16)
【出願人】(595138155)ダイセルファインケム株式会社 (11)
【Fターム(参考)】