説明

活性エネルギー線硬化型白インク組成物

【課題】カチオン重合系物質とラジカル重合系物質(アクリル系モノマー)を併用して、活性エネルギー線照射時における硬化速度を速くすると共に硬化時のシワの発生を防止し、かつ光カチオン重合開始剤とアクリル系モノマーとの相溶性が良好な活性エネルギー線硬化型白インク組成物を提供する。
【解決手段】カチオン重合性物質およびラジカル重合性物質と、白色顔料とを含む活性エネルギー線硬化型白インク組成物において、ラジカル重合性物質として、一般式:
【化1】


(式中、fは1〜15の整数)で表されるモノマーを含有し、光重合開始剤として、アニオンがSbF6-である芳香族スルホニウム塩を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型白インク組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型白インク組成物に関する。さらに詳しくは、特にインクジェット記録方式に好適に使用される活性エネルギー線硬化型白インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のインクジェット記録方式では、インク受容層を設けた専用紙に水系インクを用いて画像を形成している。
【0003】
これに対して、インク吸収性のないフィルムや金属などの基材に画像を形成しうるインクとして、光カチオン重合開始剤と、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物またはオキセタン化合物とを含有し、溶剤を含まないインクジェット記録方式用活性エネルギー線硬化型インク組成物が提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、通常のインクジェット記録用のインクはほとんどが白色系の記録媒体への画像形成を目的とした透明性の高いインクであり、そのため、例えば軟包装で用いられているような透明な基材や明度の低い基材を記録媒体として画像を形成した場合、コントラストが得られず、鮮明なカラー発色性が得られなかったり、視認性のある表示が難しくなることがあった。
【0005】
画像の視認性が劣る場合、隠蔽性の高い白インクを用いて下地印刷を行い、その上にカラー画像を形成することによってカラー画像の良好な視認性を得る手法が知られており、これに用いるインクジェット記録用の白色インク組成物として、例えば、白色顔料と、オキセタン化合物、エポキシ化合物およびビニルエーテル化合物よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物とからなる光硬化型白インク組成物が提案されている(特許文献2)。
【0006】
しかしながら、白色顔料を含有するカチオン重合系のインク組成物の場合、紫外線照射による硬化速度が遅い、紫外線照射時に表面にシワが発生するなどの問題がある。
【0007】
これらの問題を解決するために、カチオン重合系物質とラジカル重合系物質を併用することが公知である(特許文献1、2においても、カチオン重合系物質とラジカル重合系物質を併用することが記載されている)。
【0008】
また、光カチオン重合開始剤としては、比較的長波長域にまで吸収を有し、溶解性が良好でモノマーに溶解したときの保存安定性が良好であるなどの点から、芳香族スルホニウム塩が広く用いられているが、このものは一般にラジカル重合系材料であるアクリル系モノマーとの相溶性が良くなく、硬化不良、インク貯蔵安定性が劣るなどの問題を生じていた(非特許文献1)。
【0009】
なお、光カチオン重合開始剤のカウンタアニオンとしては、重合の停止反応を避けるために、求核性の低いものを選択する必要があり、この点からはSbF6-(ヘキサフルオロアンチモネート)が好ましく使用されている(非特許文献1)。
【0010】
【特許文献1】特開2001−220526号公報
【特許文献2】特開2004−59627号公報
【非特許文献1】「UV硬化における硬化不良・阻害要因とその対策 モノマー・オリゴマー、開始剤・樹脂の選定・配合技術」、技術情報協会、2003年12月11日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みて、カチオン重合系物質とラジカル重合系物質(アクリル系モノマー)を併用して、活性エネルギー線照射時における硬化速度を速くすると共に硬化時のシワの発生を防止し、かつ光カチオン重合開始剤とアクリル系モノマーとの相溶性が良好な活性エネルギー線硬化型白インク組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は下記の活性エネルギー線硬化型白インク組成物を提供する。
(1)カチオン重合性物質およびラジカル重合性物質と、白色顔料とを含む活性エネルギー線硬化型白インク組成物において、ラジカル重合性物質として、一般式:
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、fは1〜15の整数を示す)で表されるモノマーを含有し、光カチオン重合開始剤として、カウンタアニオンがSbF6-である芳香族スルホニウム塩を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型白インク組成物。
(2)カチオン重合性物質が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種からなる前記(1)項記載の活性エネルギー線硬化型白インク組成物。
(3)インクジェット記録方式に用いられる前記(1)または(2)項記載の活性エネルギー線硬化型白インク組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の活性エネルギー線硬化型白インク組成物においては、カチオン重合性物質とラジカル重合性物質とを併用することにより、活性エネルギー線照射時における硬化速度を速くし、かつ硬化時におけるシワの発生を防止し、しかも熱によってカチオン重合性物質の硬化がさらに促進されることにより硬化物の硬度が向上される。さらに本発明においては、光カチオン重合開始剤として、比較的長波長域にまで吸収を有し、溶解性が良好でモノマーに溶解したときの保存安定性が良好であるなどの点から、芳香族スルホニウム塩を用い、かつ、該芳香族スルホニウム塩におけるカウンタアニオンとして、重合の停止反応を避けるために、求核性の低いSbF6-を使用するが、かかる光カチオン重合開始剤と相溶性の良好なアクリル系モノマーを使用するため、硬化不良、インク貯蔵安定性などの問題が解消されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の活性エネルギー線硬化型白インク組成物は、カチオン重合性物質と、ラジカル重合性物質と、光カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩と、白色顔料とを含むものである。
【0017】
本発明においては、光カチオン重合開始剤として、比較的長波長域にまで吸収を有し、溶解性が良好でモノマーに溶解したときの保存安定性が良好であるなどの点から、芳香族スルホニウム塩を用い、かつ、該光カチオン重合開始剤におけるカウンタアニオンとして、重合の停止反応を避けるために、求核性の低いSbF6-を使用する。
【0018】
芳香族スルホニウム塩としては、一般式(2):
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、3つのRは独立に水素原子または置換基を示す)で表される化合物、式(3):
【0021】
【化3】

【0022】
で表される化合物などが挙げられる。一般式(2)におけるRで表される置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、イソブチル基などのアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。一般式(2)で示される化合物の典型例としては、トリフェニルスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネートなどが挙げられる。これら光カチオン重合開始剤は単独または2種以上を混合して使用できる。
【0023】
光カチオン重合開始剤の含有量は、光カチオン重合性物質に対して、1〜15重量%が好ましく、より好ましくは2〜10重量%である。光カチオン重合開始剤の含有量が前記範囲未満では活性エネルギー線照射時の硬化性が充分でない傾向があり、一方前記範囲を超えると光透過性が不良となり、均一な硬化ができなかったり、塗膜表面の平滑性が失われることがある。
【0024】
本発明においては、ラジカル重合性物質として、一般式(1)で表されるエチレングリコールジアクリレートを使用する。このジアクリレートは前記光カチオン重合開始剤との相溶性が良好である。特にfが3〜10のものがより好ましい。
【0025】
ジアクリレートの含有量は、カチオン重合性物質の重量に対して、5〜50重量%が好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。ジアクリレートの含有量が前記範囲未満では硬化性向上効果およびシワ防止効果が充分に奏されない傾向があり、一方前記範囲を超えると金属などへの密着力が損なわれる傾向がある。
【0026】
本発明においては、ラジカル重合性物質であるジアクリレートを使用するので、ラジカル重合開始剤を配合する。ラジカル重合開始剤としては、種々のものを用いることができ、好ましいものとしては、ベンゾフェノンおよびその誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アリキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタンノン、アシルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニル−ホスフィンオキサイドなどが挙げられる。これらラジカル重合開始剤は単独または2種以上を併用することができる。前記ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線照射時にラジカル重合性物質の光硬化を生じるとともに、後加工の加熱時に熱重合をも生じるものであり、それにより高い硬度の硬化物が得られる。ラジカル重合開始剤の含有量は、ジアクリレートに対して1〜15重量%であるのが好ましく、より好ましくは2〜10重量%である。
【0027】
本発明におけるカチオン重合性物質としては、特に制限されず通常のものがいずれも使用可能であり、たとえばオキセタン化合物、エポキシ化合物、ビニルエーテル化合物などからなる群より選択される1種または2種以上が使用できる。とくにインクの硬化性、硬化速度、硬化膜の屈曲性などが良好な点から、オキセタン化合物とエポキシ化合物の併用が好ましい。
【0028】
本発明で使用するオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を意味し、例えば特開2001−220526号公報、特開2001−310937号公報などに記載されているようなオキセタン化合物を使用することができる。
【0029】
オキセタン環の個数が多すぎる化合物を使用すると、調製したインクの粘度が高くなり取扱いが困難になったり、またインクのガラス転移温度が高くなるため、得られる硬化物の粘着性が十分でなくなってしまうなどの問題が生じる傾向がある。この点から本発明では、オキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。
【0030】
以下、本発明で使用できるオキセタン化合物の具体例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
1個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(4)で示される化合物などが挙げられる。
【0032】
【化4】

【0033】
一般式(4)において、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基またはチエニル基である。R2は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基などの炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基、フェノキシエチル基などの芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ブチルカルボニル基などの炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などの炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、またはエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基、ペンチルカルバモイル基などの炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基などである。本発明で使用するオキセタン化合物としては、1個のオキセタン環を有する化合物を使用することが、得られる組成物が粘着性に優れ、低粘度で作業性に優れるため、特に好ましい。
【0034】
2個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(5)で示される化合物などが挙げられる。
【0035】
【化5】

【0036】
一般式(5)において、R1は、上記一般式(4)におけるR1と同義である。R3は、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの線状または分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基、ポリ(プロピレンオキシ)基などの線状または分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基などの線状または分枝状不飽和炭化水素基、またはカルボニル基またはカルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、カルバモイル基を含むアルキレン基などである。
【0037】
また、R3としては、下記一般式(6)、(7)および(8)で示される基から選択される多価基も挙げることができる。
【0038】
【化6】

【0039】
一般式(6)において、R4は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などの炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基またはカルバモイル基である。
【0040】
【化7】

【0041】
一般式(7)において、R5は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2、C(CF32、またはC(CH32を表す。
【0042】
【化8】

【0043】
一般式(8)において、R6は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。nは0〜2000の整数である。R7はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。R7としては、さらに、下記一般式(9)で示される基から選択される基も挙げることができる。
【0044】
【化9】

【0045】
一般式(9)において、R8は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4個のアルキル基、またはアリール基である。mは0〜100の整数である。
【0046】
2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、式(10)、式(11)で示される化合物が挙げられる。
【0047】
【化10】

【0048】
式(10)で示される化合物は、前記一般式(5)において、R1がエチル基、R3がカルボニル基である化合物である。また、式(11)で示される化合物は、前記一般式(5)において、R1がエチル基、R3が前記一般式(8)で示される基であって、かつR6およびR7がメチル基、nが1である化合物である。
【0049】
2個のオキセタン環を有する化合物において、上記の化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(12)で示される化合物がある。一般式(12)において、R1は前記一般式(4)におけるR1と同義である。
【0050】
【化11】

【0051】
また、3〜4個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記一般式(13)で示される化合物が挙げられる。
【0052】
【化12】

【0053】
一般式(13)において、R1は前記一般式(4)におけるR1と同義である。R9としては、例えば下記の式(14)〜(16)で示される基などの炭素数5〜12の分枝状アルキレン基、下記の式(17)で示される基などの分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、または下記の式(18)で示される基などの分枝状ポリシロキシ基などが挙げられる。jは、3または4である。
【0054】
【化13】

【0055】
上記式(14)において、R10はメチル基、エチル基、プロピル基などの低級アルキル基である。また、上記式(17)において、pは1〜10の整数である。
【0056】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、式(19)で示される化合物が挙げられる。
【0057】
【化14】

【0058】
さらに、上記した以外の1〜4個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記一般式(20)で示される化合物が挙げられる。
【0059】
【化15】

【0060】
一般式(20)において、R1は前記一般式(4)におけるR1と同義であり、R8は前記一般式(9)におけるR8と同義である。R11はメチル基、エチル基、プロピル基またはブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基、もしくはトリアルキルシリル基であり、rは1〜4の整数である。
【0061】
本発明で使用するオキセタン化合物の好ましい具体例としては、以下に示す化合物が挙げられる。
【0062】
【化16】

【0063】
上述したオキセタン環を有する各化合物の製造は、従来より知られている方法にしたがって行なうことができ、例えば、パティソン(D.B.Pattison,J.Am.Chem.Soc.,3455,79(1957))によって開示されている、ジオールからのオキセタン環合成法などがある。また、上記のオキセタン化合物以外にも、分子量1000〜5000程度の高分子量を有する1〜4個のオキセタン環を有する化合物も挙げられる。これらの具体例としては、以下の化合物が挙げられる。
【0064】
【化17】

【0065】
つぎに、本発明で使用するエポキシ化合物について説明する。
【0066】
本発明で使用するエポキシ化合物は、とくに制限されず、例えば、特開2001−55507号公報、特開2001−31892号公報、特開2001−40068号公報、特開2001−310938号公報などに示されているエポキシ化合物が使用できる。
【0067】
芳香族エポキシ化合物として好ましいものは、少なくとも1個の芳香環を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造される、ジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAまたはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテル、およびノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどが挙げられる。
【0068】
脂環式エポキシ化合物としては、少なくとも1個のシクロへキセンまたはシクロペンテン環などのシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸化物などの適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましい。好ましい脂環式エポキシ化合物としては式(27)〜(29)で示されるものが挙げられる。
【0069】
【化18】

【0070】
脂肪族エポキシ化合物の好ましいものとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルまたはポリグリシジルエーテルなどが挙げられ、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテルなどのアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテルなどのポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテルなどが挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドなどが挙げられる。
【0071】
上記エポキシ化合物のうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシ化合物および脂環式エポキシ化合物が好ましく、特に脂環式エポキシ化合物が好ましい。
【0072】
本発明の活性エネルギー線硬化型白色インク組成物において、カチオン重合性物質の含有量はインク組成物全量に対して、40〜80重量%が好ましく、より好ましくは50〜70重量%である。カチオン重合性物質の含有量が前記範囲未満では光硬化性が充分でなく、一方前記範囲を超えると光照射による硬化速度の低下や、塗工面にシワが発生する傾向がある。
【0073】
本発明の活性エネルギー線硬化型白色インク組成物において、カチオン重合性物質におけるオキセタン化合物とエポキシ化合物の比率は、オキセタン化合物とエポキシ化合物の合計量に対してオキセタン化合物の含有量が5〜95重量%であるのが好ましく、より好ましくは10〜90重量%である。オキセタン化合物の含有量が前記範囲未満ではエポキシ樹脂の硬化速度向上効果が乏しい傾向があり、一方前記範囲を超えるとインク硬化膜の屈曲性が低下する傾向がある。
【0074】
本発明で使用する白色顔料はインク組成物を白色にするものであればよく、この分野で通常用いられる白色顔料を用いることができる。このような白色顔料としては、例えば無機白色顔料や有機白色顔料、白色の中空ポリマー微粒子などを用いることができる。
【0075】
無機白色顔料としては、硫酸バリウムなどのアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩などのシリケート類、ケイ酸カルシウム、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイなどがあげられる。特に酸化チタンは隠蔽性および着色性、分散粒径が好ましい白色顔料である。有機白色顔料としては、特開平11−129613号公報に示される有機化合物塩や特開平11−140365号公報、特開2001−234093号公報に示されるアルキレンビスメラミン誘導体などが挙げられる。白色の中空ポリマー微粒子としては、米国特許第4,089,800号明細書に開示されている、実質的に有機重合体で作らた熱可塑性を示す微粒子などが挙げられる。これら白色顔料は単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0076】
顔料の分散には、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカーなどを用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤としては高分子分散剤を用いることが好ましい。
【0077】
高分子分散剤としてはゼネカ社のソルスパースシリーズが挙げられる。また、分散助剤として、各種顔料に応じたシナージストを用いることも可能である。これらの分散剤および分散助剤は、白色顔料100重量部に対し、1〜50重量部添加することが好ましい。本発明の活性エネルギー線照射による硬化型インクは、インク着弾直後に反応・硬化させるため、実質的に無溶剤であることが好ましい。溶剤が硬化画像に残ってしまうと、耐溶剤性の劣化、残留する溶剤のVOCの問題が生じる。よって、分散媒体としては溶剤では無く重合性化合物を使用するのが好ましく、その中でも粘度の低いモノマーを選択することが分散適性上好ましい。
【0078】
白色顔料の含有量は、インク組成物全体の5〜30重量%が好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。白色顔料の含有量が前記範囲未満では充分な隠蔽性が得られず、一方前記範囲を超えるとインクジェット記録ヘッドからの吐出性が悪くなり、目詰まりなどの原因になる。
【0079】
本発明のインク組成物には、光カチオン重合開始剤、光ラジカル重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、紫外領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J. V. Crivello, Adv. in Polymer Sci., 62, 1(1984) 〕が開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、9,10−ジブトキシアントラセンなどが挙げられる。
【0080】
本発明の白色インク組成物には、前記成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて重合禁止剤、界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類、充填剤、消泡剤、酸化防止剤などを添加することができる。
【0081】
本発明の白色インク組成物は、インクジェット記録方式に使用する場合は、粘度がインク吐出温度(たとえば40℃)において50mPa・s以下、好ましくは25mPa・s以下になるように組成を決めるのが好ましい。
【0082】
本発明の白色インク組成物は、紙、フィルムまたはシート、金属などを基材として、インクジェット記録方式で印刷する。印刷の後、活性エネルギー線を照射して硬化させる。活性エネルギー線としては、紫外線、X線、電子線などが挙げられる。紫外線により硬化させる場合に使用できる光源としては、種々のものを使用することができ、例えば加圧あるいは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ、カーボンアーク灯などが挙げられる。電子線により硬化させる場合には、種々の照射装置が使用でき、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型または共振変圧器型などが挙げられ、電子線としては50〜1000eVのエネルギーを持つものが好ましく、より好ましくは100〜300eVである。本発明では、安価な装置を使用できることから、組成物の硬化に紫外線を使用することが好ましい。活性エネルギー線を照射して硬化させたのち、さらに熱処理により硬化させてもよい。熱処理は、たとえば100〜150℃で10分〜1時間程度の条件で行なうことができる。本発明の白色インク組成物を印刷後硬化し、その上に通常のインクジェット記録用カラーインクで画像を形成すると、視認性の良好なカラー画像が得られる。
【0083】
本発明のインク組成物は、その組成を調整することにより、例えばオフセット印刷などの平版印刷、凸版印刷、シルクスクリーン印刷またはグラビア印刷などのインキ組成物として使用することができる。
【実施例】
【0084】
つぎに実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0085】
実施例1〜2および比較例1〜3
表1に示される材料を用いてインクジェット記録用白色インク組成物を調製した。表1における各材料の使用量は重量部である。
【0086】
得られたインク組成物について、粘度、吐出安定性、硬化性、硬化物表面のシワ、鉛筆硬度を調べた。結果を表1に示す。
【0087】
なお、表1に示される材料は次のものである。
エポキシ化合物:脂肪族系カチオン重合性エポキシ樹脂(アデカオプトマーKRM2720、旭電化(株)製)
オキセタン化合物:ビス[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル
アクリルモノマー1:トリエチレングリコールジアクリレート
アクリルモノマー2:PEG200#ジアクリレート(共栄社化学(株)製ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレンオキサイドの付加数:平均4個)
アクリルモノマー3:ネオペンチルグリコールジアクリレート
光カチオン重合開始剤1:アデカオプトマーSP−170(旭電化(株)製、一般式(2)で示される化合物の1種)
光カチオン重合開始剤2:式(3)で示される化合物
光カチオン重合開始剤3:(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスフェート(1−)
増感剤:9,10−ジブトキシアントラセン
ラジカル重合開始剤:2,4,6−トリメチルベンジル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド
【0088】
(1)粘度
回転型粘度計(トキメック(株)製TV−20L)を用いて40℃で測定した。
【0089】
(2)吐出安定性
ピエゾ型印字ヘッドを有するインクジェット記録方式用プリンターを用いて印字し、つぎの評価基準で吐出安定性を調べた。
○:良好に吐出できて印字ムラがない。
△:吐出できたが、印字ムラがある。
×:吐出できない。
【0090】
(3)硬化性
白色インク組成物をレジスト基板上にバーコーターで20μmの厚さに塗工し、120W/cmのメタルハライドAランプにて1パス当り250mJ/cm2の積算光量にて照射し、表面が硬化(指触で粘着性を示さない)するまでのパス回数で評価した。パス回数が少ないほど硬化性が良好である。
【0091】
(4)硬化物表面のシワ
硬化性の評価において、表面が硬化した時のシワの発生を目視にて評価した。
【0092】
(5)鉛筆硬度
白色インク組成物をレジスト基板上にバーコーターで20μmの厚さに塗工し、120W/cmのメタルハライドAランプにて1250mJ/cm2の積算光量にて照射した後、150℃×30分の条件で熱処理を行い、JIS K 5400にしたがって鉛筆硬度を測定した。
【0093】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン重合性物質およびラジカル重合性物質と、白色顔料とを含む活性エネルギー線硬化型白インク組成物において、ラジカル重合性物質として、一般式:
【化1】

(式中、fは1〜15の整数を示す)で表されるモノマーを含有し、光カチオン重合開始剤として、カウンタアニオンがSbF6-である芳香族スルホニウム塩を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型白インク組成物。
【請求項2】
カチオン重合性物質が、エポキシ化合物およびオキセタン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種からなる請求項1記載の活性エネルギー線硬化型白インク組成物。
【請求項3】
インクジェット記録方式に用いられる請求項1または2記載の活性エネルギー線硬化型白インク組成物。

【公開番号】特開2006−233009(P2006−233009A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49596(P2005−49596)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】