説明

活性エネルギー線硬化型高屈折率樹脂組成物

【課題】 1.580〜1.650の高屈折率を維持した上で透明性を確保し、硬化時の反りが低減された硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 芳香環含有2官能(メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン樹脂(B1)および/または分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B2)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、および分子量100〜800の硫黄原子含有芳香族化合物(D)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化樹脂組成物に関する。更に詳しくは、高屈折率にもかかわらず、透明性に優れ、反りの少ない硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より液晶ディスプレイに使用されるプリズムシートや、プロジェクションTVに使用されるフレネルレンズ、レンチキュラーレンズといった光学レンズは、熱可塑性樹脂の射出成形や熱プレス成形により製造されるのが一般的であった。
しかし、これらの製造方法では、製造時の加熱および冷却に長時間を必要とするため生産性が低く、また、光学レンズの熱収縮により、微細構造の再現性が悪く、反るという問題点があった。
そこで、これらの問題点を解決するため、金型内面に透明樹脂基材がセットされた型内に紫外線硬化型樹脂組成物を流し込み、紫外線を照射して硬化させる方法が実施されている。
【0003】
近年、ディスプレイの光学レンズに反射防止性能を付与するという試みがなされており、高屈折率のレンズを成型する技術が検討されている。
しかし、高屈折率タイプの紫外線硬化型樹脂組成物は、一般に芳香環の含有量が高いため、硬化後は剛直な物性となり、硬化時に応力ひずみが発生するため、反りが大きくなるといった問題点があった。
このような問題点を解決する手法として無機粒子を混ぜることによりUV硬化時の硬化収縮を低減させる方法(例えば特許文献1)等が提案されている。
しかし、この方法では高屈折率ではあるが、反りの低減が未だ不十分であり、またヘイズ、全光線透過率等の光学特性が悪くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−213844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、1.580〜1.650の高屈折率を維持した上で透明性を確保し、硬化時の反りが低減され、傷回復性に優れる硬化物を与える活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、芳香環含有2官能(メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン樹脂(B1)および/または分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B2)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、および分子量100〜800の硫黄原子含有芳香族化合物(D)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物;およびその硬化物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の樹脂硬化物は、屈折率1.580〜1.650の高い屈折率を有するにもかかわらず、透明性に優れ、反りが少ない
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、芳香環含有2官能(メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能のウレタン系化合物(B)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、および分子量100〜800の硫黄原子含有芳香族化合物(D)を必須成分とする。そしてこのウレタン系化合物(B)は、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン樹脂(B1)および/または分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B2)である。
【0009】
本発明における第1成分の芳香環含有2官能(メタ)アクリレート(A)は、分子内に、芳香環を有し、かつ(メタ)アクリロイル基を2つ含有していれば、特にその化学構造は限定されない。好ましい構造としては下記一般式(1)で表されるモノマーである。
【0010】
【化1】

【0011】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基で表され、好ましくは水素原子である。
【0012】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基で表される。
が水素原子の場合はエチレンオキサイドの付加に相当し、メチル基の場合はプロピレンオキサイドの付加に相当する。エチレンオキサイド単独付加、プロピレンオキサイド単独付加でもよいし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック付加もしくはランダム付加でもよい。
【0013】
mおよびnはエチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドの付加モル数を表し、通常1〜15の数であり、好ましくは2〜4である。(m+n)は2〜20の数であり、好ましくは4〜8である。
【0014】
式(1)中、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基で表され、好ましくは水素原子である。
【0015】
本発明における芳香環を有する芳香環含有2官能(メタ)アクリレート(A)としては、ビスフェノールAのアルキレンオキシド(以下、AOと略称する。)2〜20モル付加物の(メタ)アクリレート(A1)、ビスフェノールFのAO2〜20モル付加物の(メタ)アクリレート(A2)などが挙げられ、以下具体例を示す。下記化合物を単独で用いても、その混合物でもよい。
【0016】
(A1):ビスフェノールAのAO2〜20モル付加物の(メタ)アクリレート
例えば、ビスフェノールAのEO4モル付加物の(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0017】
(A2):ビスフェノールFのAO2〜20モル付加物の(メタ)アクリレート
例えば、ビスフェノールFのEO4モル付加物の(メタ)アクリレート、ビスフェノールFのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0018】
上記(A1)、(A2)のうち、樹脂強度および硬化物の屈折率の観点から好ましいのは、ビスフェノールFのAO2〜20モル付加物の(メタ)アクリレート(A2)であり、さらに好ましいのはビスフェノールFのEO4モル付加物の(メタ)アクリレートである。
(A1)、(A2)のうち、活性水素原子を有するものはウレタン化反応終了後に加え、活性水素原子を有しないものはウレタン化反応時および/または反応終了後のいずれの段階で加えてもよい。
【0019】
本発明における(A)の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、通常10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%である。
(A)の含有量が10重量%未満であると脆くなり、樹脂硬化物本来の性能を発揮することができない。また60重量%を超えると、樹脂自体非常に硬くなり、反りが大きくなる。さらには金型から離型した際割れが発生する可能性がある。
【0020】
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物はウレタン系化合物(B)を必須成分とし、具体的には、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン樹脂(B1)、または分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B2)、あるいはこれらの併用である。
【0021】
本発明における第2の必須成分である1つである分子内に芳香環を含有する2官能のウレタン樹脂(B1)は、分子内に1個以上の芳香環と2個の水酸基を含有するウレタン化合物であれば特に限定されない。
【0022】
そして、この水酸基を有するウレタン樹脂(B1)は、芳香環含有ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)を反応させることにより得られ、(a)と(b)の反応におけるNCO/OH等量比が、通常0.45〜0.95、好ましくは0.50〜0.85である。該当量比が0.45未満では靭性の高い硬化物が得られない。また、0.95を超えると樹脂粘度が増大し、塗工性に悪影響を及ぼす。
【0023】
このウレタン樹脂(B1)の原料となるポリオール(a)は、芳香環を含有する多価ポリオールであり、芳香環を含有する多価アルコール(a1)には、下記の2価のポリオール(a11)と3価以上のポリオール(a12)が挙げられる。
【0024】
芳香環を有する2価アルコール(a11):
芳香脂肪族2価アルコール[例えば、キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン等]、炭素数6〜18の2価フェノール[単環2価フェノール(例えばハイドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ウルシオール等)、多環2価フェノール{例えばビスフェノール(ビスフェノールA、F、C、B、ADおよびS、ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン等)}、縮合多環2価フェノール{ジヒドロキシナフタレン(例えば1,5−ジヒドロキシナフタレン)、ビナフトール等}]、ポリエーテルジオール[上記2価アルコールまたは上記2価フェノールのAO付加物(数平均分子量(以下Mnと略称する)が150〜20,000)、ポリエステルジオール[(Mn200〜20,000)、例えば上記2価アルコールまたは上記ポリエーテルジオールとジカルボン酸{脂肪族ジカルボン酸(炭素数4〜30、例えばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸)、芳香(脂肪)族ジカルボン酸(炭素数8〜30、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸無水物、キシリレンジカルボン酸)}からなる縮合物]、ポリカーボネート(Mn500〜10,000)、並びにポリエステルジオール、ポリカーボネートのAO1〜300モル付加物等が挙げられる。
【0025】
芳香環を有する3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール(a12):
3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロール、フロログルシノール等)、および1価もしくは2価フェノール(フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、グルタールアルデヒド、グリオキザール、アセトン等)低縮合物(例えばフェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂、レゾールの中間体、フェノールとグリオキザールもしくはグルタールアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノール、およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)、ポリエーテルポリオール[上記3価〜8価またはそれ以上の多価フェノールのAO付加物(Mn200〜20,000)、等]、ポリエステルポリオール[(Mn370〜20,000)、例えば上記ポリエーテルポリオールとジカルボン酸{脂肪族ジカルボン酸(炭素数4〜30、例えばコハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸)、芳香(脂肪)族ジカルボン酸(炭素数8〜30、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸無水物、キシリレンジカルボン酸)}からなる縮合物]、並びにこれらのポリエステルポリオールのAO1〜300モル付加物等が含まれる。
【0026】
上記のウレタン樹脂(B1)の原料となるポリオール(a)のうち、後述する本発明の屈折率の観点から好ましいのは(a11)である。
【0027】
本発明におけるウレタン樹脂(B1)で芳香族含有ポリオール(a)と反応における相手のポリイソシアネート(b)としては、下記の(b1)〜(b4)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0028】
(b1):炭素数6〜20(但しNCO基中の炭素原子の数を除く。以下同じ。)の芳香族ポリイソシアネートジイソシアネート(以下、ジイソシアネートをDIと略記する。)、1,3−および/または1,4−フェニレンDI、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、4,4’−および/または2,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンDI、およびm−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば粗製TDI、粗製MDI(ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート)および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート
【0029】
(b2):炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート
DI、例えばエチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ヘプタメチレンDI、オクタメチレンDI、ノナメチレンDI、デカメチレンDI、ドデカメチレンDI、2,2,4−および/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、2,6−ジイソシアナトエチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートおよびトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えば1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−ジイソシアネート−4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートおよびリジンエステルトリイソシアネート(リジンとアルカノールアミンの反応生成物のホスゲン化物、例えば2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート、2−および/または3−イソシアナトプロピル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート)
【0030】
(b3):炭素数4〜45の脂環式ポリイソシアネート
DI、例えばイソホロンDI(IPDI)、2,4−および/または2,6−メチルシクロヘキサンDI(水添TDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、メチルシクロヘキシレンDI、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキシレン−1,2−ジカルボキシレートおよび2,5−および/または2,6−ノルボルナンDI、ダイマー酸DI(DDI);および3官能以上のPI(トリイソシアネート等)、例えばビシクロヘプタントリイソシアネート
【0031】
(b4):炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート
m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、ジエチルベンゼンDIおよびα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)
【0032】
これらのポリイソシアネート(b)のうち屈折率の観点から好ましいのは(b1)である。
【0033】
本発明におけるもう1つの第2の必須成分である分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B2)は、分子内に芳香環と2個の(メタ)アクリロイル基を含有するウレタン化合物であれば特に限定されないが、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(c)と水酸基含有(メタ)アクリレート(d)とのウレタン化反応から形成される芳香環含有ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0034】
そして、このイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(c)は、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)を反応させることにより得られ、(a)と(b)の反応におけるOH/NCO当量比が0.45〜0.95、好ましくは0.50〜0.75、さらに好ましくは0.55〜0.70である。該当量比が0.45未満では硬化時の収縮率が大きくなり、基材との密着性が悪くなり、0.95を超えると樹脂粘度が増大し、塗工性に悪影響を及ぼす。
【0035】
ポリオール(a)およびその反応における相手のポリイソシアネート(b)としては、本発明におけるウレタン樹脂(B1)で既に例示した芳香族含有ポリオール(a1)、ポリイソシアネート(b1)〜(b4)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0036】
上記(a1)および(b)の反応で得られたイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(c)に、さらに水酸基含有(メタ)アクリレート(d)を反応させて、本発明の必須成分の芳香環を有する2官能のウレタン(メタ)アクリレート(B2)を得ることができる。
【0037】
この水酸基含有(メタ)アクリレート(d)としては、下記の(d1)〜(d6)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
(d1):(メタ)アクリル酸のAO付加物〔Mn116〜5,000〕
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、−2−ヒドロキシプロピル、−2−ヒドロキシブチルおよびこれらのAO付加物(Mn160〜5,000)等
【0038】
(d2):(a11)のε−カプロラクトン付加物(Mn230〜5,000)
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル−ε−カプロラクトン2モル付加物等
(d3):ジオール(Mn300〜5,000)のモノ(メタ)アクリレート
ジオール[Mn300〜5,000で、例えばポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール]のモノ(メタ)アクリレート
(d4):エポキシドとヒドロキシ(メタ)アクリル酸の反応生成物
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ビフェノキシ−2−ヒドロキシプロプル(メタ)アクリレート等
【0039】
(d5):(メタ)アクリル酸と3官能以上のポリオール(Mn92〜5,000)の反応生成物およびそのAO1〜100モル付加物
グリセリンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ−およびジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンモノ−、ジ−およびトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−およびペンタ(メタ)アクリレートおよびそれらのAO付加物(付加モル数1〜100)等
【0040】
(d6):(メタ)アクリル酸とブタジエンポリオール、イソプレンポリオール、水添ブタジエンポリオールおよび水添イソプレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール(Mn300〜5,000)との反応生成物
【0041】
これらの水酸基含有(メタ)アクリレート(d)のうち、前述のポリイソシアネート成分(b)との反応性の観点から好ましいのは(d1)および(d2)であり、さらに好ましいのは(d1)である。
【0042】
分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン樹脂(B1)、および分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B2)の製造においては、ウレタン化触媒を用いてもよい。ウレタン化触媒には、金属化合物(有機ビスマス化合物、有機スズ化合物、有機チタン化合物等)および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0043】
ウレタン化触媒の使用量は、(B)の重量に基づいて通常1重量%以下、反応性、透明性の観点から好ましくは0.001〜0.5重量%、さらに好ましくは、0.05〜0.2重量%である。
【0044】
(a)と(b)のウレタン化反応の条件は、特に限定されず、例えば、(a)および(b)を混合し、通常40〜100℃、反応性および該混合物の安定性の観点から好ましくは60〜95℃で、2〜20時間反応させて(B)を製造することができる。また、必要により溶剤(酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等)で希釈して反応させてもよい。 溶剤の使用量は、(a)と(b)および(d)の合計重量に基づいて通常5,000重量%以下、下限は混合物の取り扱い性の観点から、上限は反応速度の観点から、好ましくは10〜1,000重量%である。
【0045】
ウレタン化反応は、常圧、減圧または加圧のいずれでも行うことができる。ウレタン化反応の進行状況は、例えば反応系のNCO%および水酸基価を測定することにより判断することができる。
【0046】
本発明における(B)の含有量は、(A)、(B)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、通常5〜60重量%、好ましくは15〜45重量%である。(B)の含有量が5重量%未満であると、更に樹脂自体非常にもろくなってしまい、強度が悪化することがある。また60重量%を超えると、基材との密着性が悪化し、簡単に剥がれてしまうことがある。
【0047】
本発明における第3の必須成分である芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート(C)は、分子内に芳香環を有していれば、特にその化学構造は限定されない。
好ましい構造としては下記一般式(2)で表されるモノマーである。
【0048】
【化2】

【0049】
[式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、−COOHまたは−COOCH2CH2OHを表す。Yは2価の芳香環を表す。Zは炭素数1〜20のアルキレン基、(ポリ)オキシエチレン基または(ポリ)オキシプロピレン基を表す。]
【0050】
式(2)中のRは水素原子またはメチル基を表し、好ましくは水素原子である。
Xは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、−COOH、または−COOCH2CH2OHを表し、好ましくは水素原子である。
【0051】
Yは2価の芳香環を表し、例えば、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基などが挙げられる。
【0052】
Zは炭素数1〜20のアルキレン基、(ポリ)オキシエチレン基または(ポリ)オキシプロピレン基を表し、好ましくは−CH2CH2O−である。
【0053】
本発明における芳香環を有する単官能(メタ)アクリレート(C)としては、フェノールのAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート(C1)、アルキル化フェノール類のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート(C2)、フェニルフェノ−ル類のAO1〜10モル付加物の(メタ)アクリレート(C3)、これら以外の芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C4)などが挙げられ、単独で用いても、その混合物でもよい。以下に具体例を示す。
【0054】
フェノール類のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート(C1)
例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノールのEO2モル付加物の(メタ)アクリレート、フェノールのPO3モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0055】
アルキル化フェノール類のAO1〜30モル付加物の(メタ)アクリレート(C2)
例えば、ノニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0056】
フェニルフェノールのAO1〜10モル付加物の(メタ)アクリレート(C3)
例えば、o−フェニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレート等。
【0057】
その他の芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C4)
例えば、ベンジル(メタ)アクリレート等。
【0058】
上記(C1)〜(C4)のうち、樹脂への密着性および硬化物の屈折率の観点から好ましいのは、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、さらに好ましいのはo−フェニルフェノールのEO1モル付加物の(メタ)アクリレートである。
(C1)〜(C4)のうち、活性水素原子を有するものはウレタン化反応終了後に加え、活性水素原子を有しないものはウレタン化反応時および/または反応終了後のいずれの段階で加えてもよい。
【0059】
本発明における(A)、(B)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)の含有量は通常10〜80重量%、好ましくは20〜60重量%、より好ましくは30〜50重量%である。
(C)の含有量が10重量%未満であると、基材との密着性が悪化し、簡単に剥がれてしまうことがある。また80重量%を超えると、樹脂自体非常にもろくなってしまい、強度が悪化することがある。
【0060】
本発明における第4の必須成分である硫黄原子含有化合物(D)は通常分子量が100〜800、好ましくは200〜700の硫黄原子を含有した化合物である。
分子量が100未満では、高温時に硬化物からブリードアウトし、屈折率が低下する原因となる。また分子量が800を超えると樹脂粘度が増大し、塗工性に悪影響を及ぼす。
【0061】
また、硫黄原子含有化合物(D)は硫黄原子含量が通常10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%である。硫黄原子含量が10重量%未満では、所望の屈折率を得ることはできない。また60重量%を超えると耐光性が悪化する可能性がある。
【0062】
本発明における硫黄原子含有化合物(D)としては、スルフィド化合物(D1)、スルフォニル化合物(D2)などが挙げられ、以下具体例を示す。下記化合物を単独で用いても、その混合物でもよい。
【0063】
スルフィド化合物(D1)
例えば、ジフェニルスルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ジフェニレンスルフィド等。
【0064】
スルフォニル化合物(D2)
例えば、ジフェニルスルフォン、メチルフェニルスルフォン、ビスフェノールS等。
【0065】
上記(D1)、(D2)のうち、屈折率および樹脂への溶解性から好ましいのはスルフィド化合物(D1)であり、さらに好ましいのはジフェニルスルフィドである。
【0066】
本発明における(A)、(B)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、硫黄原子含有化合物(D)の含有量は通常0.5〜10重量%、好ましくは1〜9重量%、より好ましくは3〜8重量%である。
(D)の含有量が0.5重量%未満であると、屈折率を高める効果がほとんど発揮できない。また10重量%を超えると、高温時に硬化物からブリードアウトし、屈折率が低下する原因となる。
【0067】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、離型剤(E)を含有させてもよい。
【0068】
本発明における離型剤(E)は、リン酸エステル(E1)と3級アミン(E2)からなり、その重量比率(E1)/(E2)は通常0.75〜1.75であり、好ましくは1.00〜1.500である。重量比率(E1)/(E2)が0.75未満であると樹脂に非相溶となり、硬化物の透明性が損なわれる。また1.75を超えると高温環境時に硬化物が酸により分解する可能性がある。
【0069】
本発明における離型剤(E)を構成する第1成分であるリン酸エステル(E1)としては、1級もしくは2級のアルキル(炭素数1〜20)のリン酸エステル、または1級もしくは2級のアルコール(炭素数1〜20)のAO1〜30モル付加物のリン酸エステル類が挙げられる。
【0070】
本リン酸エステル(E1)はモノエステルとジエステルから構成され、そのモル比は通常0.8/1〜1.2/1であり、好ましくは0.9/1〜1.1/1である。モル比が0.8/1未満であると樹脂からブリードアウトしにくく、金型からの離型性が悪化する可能性がある。また1.2/1を超えると樹脂からのブリードアウトする量が多くなりすぎて基材樹脂との密着性が悪化する可能性がある。
【0071】
本発明における離型剤(E)を構成する第2成分である3級アミン(E2)としては、炭素数4〜30の3級脂肪族アミン、1級もしくは2級の脂肪族(炭素数4〜30)アミンのAO(炭素数2〜4)1〜30モル付加物等の3級アミン類等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、炭素数4〜30の3級脂肪族アミンであり、さらに好ましくは炭素数15〜20の3級脂肪族アミンである。
【0072】
本発明における離型剤(E)の構成成分であるリン酸エステル(E1)および3級アミン(E2)は、塩構造を形成していてもよいし、フリーの状態で樹脂中に存在していてもよい。混合方法については、予めこの2成分を混合してから樹脂に加えても、別々に加えても差し支えはない。また混合時は50〜70℃程度の熱を加えることが好ましい。
【0073】
本発明における離型剤(E)の使用量は本発明の組成物の全重量に基づいて、通常300ppm〜2,000ppm、好ましくは500ppm〜1,500ppm、より好ましくは700ppm〜1,200ppmである。使用量が300ppm以下であると金型からの離型性が悪くなり、また2,000ppmを超えると高温高湿下での基材密着性が悪くなる影響がある。
【0074】
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要により、光重合開始剤(F)を含有させることができる。光重合開始剤を加えたものは、電子線以外に熱および/または紫外線でも硬化させることができる。紫外線により硬化する場合の紫外線の照射量は、通常10〜10,000mJ/cm2である。
【0075】
光重合開始剤(F)としては、ヒドロキシベンゾイル化合物(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインアルキルエーテル等)、ベンゾイルホルメート化合物(メチルベンゾイルホルメート等)、チオキサントン化合物(イソプロピルチオキサントン等)、ベンゾフェノン(ベンゾフェノン等)、リン酸エステル化合物(1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等)、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。これらのうち硬化物の着色防止の観点から好ましいのは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンおよび1,3,5−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0076】
光重合開始剤(F)の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、それぞれ通常20重量%以下、好ましくは0.1〜10重量%である。さらに好ましくは1〜5重量%である。
【0077】
本発明の組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに塗料、インキに使用される種々の添加剤(G)を含有させてもよい。
添加剤(G)には、酸化防止剤(G1)および紫外線吸収剤(G2)が含まれる。
添加剤(G)の合計の使用量は、本発明の組成物の全重量に基づいて、通常60重量%以下、好ましくは0.005〜50重量%である。
【0078】
本発明の組成物は、塗工の際に、塗工に適した粘度に調整するために、必要に応じて溶剤で希釈した塗料とすることができる。
【0079】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要により溶剤で希釈して、基材の少なくとも片面の少なくとも一部に塗布し、必要により乾燥させた後、後述する活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、基材の表面および/または裏面の少なくとも一部に硬化物を有する被覆物を得ることができる。
塗工に際しては、通常用いられる装置、例えば塗工機[バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター(サイズプレスロールコーター、ゲートロールコーター等)、エアナイフコーター、スピンコーター、ブレードコーター等]が使用できる。塗工膜厚は、硬化乾燥後の膜厚として、通常0.5〜300μm、乾燥性、硬化性の観点から好ましい上限は250μm、耐擦傷性、耐溶剤性、耐汚染性の観点から好ましい下限は1μmである。
【0080】
本発明の組成物を溶剤で希釈して使用する場合は、塗工後に乾燥するのが好ましい。
乾燥方法としては、例えば熱風乾燥(ドライヤー等)が挙げられる。
【0081】
本発明における活性エネルギー線には、紫外線、電子線、X線、赤外線および可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のうち硬化性と樹脂劣化の観点から好ましいのは紫外線と電子線である。紫外線を使用する場合、光重合開始剤(F)を必須成分として含有する必要がある。
【0082】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を紫外線照射で硬化させる場合は、種々の紫外線照射装置〔例えば型番「VPS/I600」、フュージョンUVシステムズ(株)製〕、光源としてはキセノンランプ、高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を使用することができる。紫外線の照射量は、通常10〜10,000mJ/cm2、組成物の硬化性および硬化物(硬化膜)の可撓性の観点から好ましくは100〜5,000mJ/cm2である。
【0083】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を電子線照射で硬化させるに際しては、種々の電子線照射装置[例えばエレクトロンビーム、岩崎電気(株)製]を使用することができる。電子線の照射量は、通常0.5〜20Mrad、組成物の硬化性の観点から好ましい下限は1Mrad、硬化物の可撓性、並びに硬化物(コーティング膜)または基材の損傷を避けるとの観点から、好ましい上限は15Mradである。
【0084】
本発明の組成物は、通常、光重合開始剤(F)を含有し、活性エネルギー線(紫外線、電子線、X線等)により硬化させるが、必要により熱硬化触媒を含有させた場合は熱で硬化させることができる。
【0085】
本発明の硬化物の屈折率は、光学部材への適用および硬化時の収縮の観点から通常、1.580〜1.650、好ましくは1.590〜1.650である。
屈折率は、組成物中の硫黄原子含有芳香族化合物(D)の割合を高くするか、(D)中の硫黄原子含量を増すことにより高めることができる。
【0086】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。以下において、特に指定しない限り「部」は「重量部」、「%」は重量「重量%」を示す。
【実施例】
【0087】
製造例1
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、ビスフェノールAのPO2モル付加物[商品名:ニューポールBP−2P、三洋化成工業(株)製]145部、キシリレンジイソシアネート[商品名:タケネート500、三井武田ケミカル(株)製]70部、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)の2−エチルヘキサン酸50%溶液0.2部を仕込み、さらに酢酸エチルを215部仕込んだ後、80℃で6時間反応させ、本発明のウレタン樹脂(B−1)を得た(NCO含量:0.01%)。
【0088】
製造例2
撹拌機、冷却管および温度計を備えた反応容器に、ビスフェノールAPO2モル付加物116部、キシリレンジイソシアネート73部、およびウレタン化触媒としてビスマストリ(2−エチルヘキサノエート)の2−エチルヘキサン酸50%溶液0.2部を仕込み、酢酸エチルを200部仕込んだ後、80℃で6時間反応させ、その後2−ヒドロキシエチルアクリレート[商品名:ライトエステルHOA、共栄社化学(株)製]12部を加え、80℃で3時間反応させて本発明のウレタンアクリレート(B−2)を得た(NCO含量:0.01%)。
【0089】
実施例1〜4、比較例1〜3
表1の配合組成にしたがってディスパーザーで80℃、常圧で1時間混合撹拌した後、攪拌を続けた状態で、80℃、−0.1MPaの減圧下で、酢酸エチル含量が0.3重量%以下になるまで6時間脱溶剤することにより、実施例1〜4、比較例1〜3の樹脂組成物を得た。実施例、比較例ではいずれも成分を一括配合し、均一混合して組成物を作成した。
なお、表1中の配合成分とその重量部数は下記の通りである。
【0090】
【表1】

【0091】
(A−1):ビスフェノールAのEO4モル付加物のジアクリレート(商品名:ネオマーBA−641、三洋化成工業製)
(A−2):ビスフェノールFのEO4モル付加物のジアクリレート(商品名:アロニックスM−208、東亞合成製)
(C−1):o−フェニルフェノールのEO1モル付加物のアクリレート(商品名:A−LEN−10、新中村化学(株)製)
(C−2):フェノキシエチルアクリレート(商品名:ライトアクリレートPO−A、共栄社化学(株)製)
(E−1):トリデカノールのリン酸エステル[モノエステル:ジエステル=1:2(重量比)]
(E−2):ジメチルアルキル(C14〜C18)アミン(商品名:ファーミンDM8680 花王製)
(F−1):イルガキュアー184(チバ・ジャパン(株)製)
【0092】
上記の樹脂組成物について、屈折率、反り、ヘイズ、および透過率について評価した。結果を表1に示す。
【0093】
(1)屈折率
樹脂組成物 約1gを、PETフィルム[商品名:ルミラーS、東レ(株)製、厚さ80μm]2枚で組成物が約5μmになるように挟み、紫外線照射装置[商品名:VPS/I600、フュージョンUVシステムズ(株)製、以下同じ]を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化フィルムを得た。
この硬化物から片方のPETフィルムだけを剥がし、得られた硬化フィルムの屈折率を25℃の環境下でアッベ式屈折率計を用いて測定した。
【0094】
(2)反り評価法
厚み50μmのセロハンテープを2枚重ねて貼ったガラス板に樹脂組成物を塗布した(樹脂膜厚は約100μm)。
次に、表面を化学処理して密着性を高めたPETフィルム[商品名:コスモシャインA4300、東洋紡(株)製、厚さ100μm]を、上記ガラス板に塗工した樹脂組成物の上から空気が入らないように押さえて、積層圧着した。さらにこの積層物に紫外線照射装置を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させた。PETフィルムに密着した樹脂硬化物をガラス板から剥離後、6cm×6cm正方形にカットし、平らなテーブルに置き、正方形の四端のテーブルからの反りを測定し、それらの平均値を算出した。
【0095】
(3)へイズおよび全光線透過率測定法
厚み50μmのテープを2枚重ねて貼ったガラス板に樹脂組成物を塗布した(樹脂膜厚は約100μm)。次に、別のもう1枚のガラス板を、上記ガラス板に塗工した樹脂の上から空気が入らないように加圧積層した。
2枚のガラス板にはさまれた樹脂塗膜に紫外線照射装置を用いて1000mJ/cm2の紫外線を照射して樹脂組成物を硬化させた。2枚のガラス板から樹脂硬化物を剥離後、ヘイズメーター(BYKgardner社製HAZE−GARD DUAL)を用いてJIS K7136に準拠してヘイズを測定した。また、JIS K7361に準拠して全光線透過率を測定した。
【0096】
表1の結果から、本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を硬化させてなる硬化物(膜)は1.580〜1.650の高い屈折率を保持した上で、透明性に優れ、反りが極めて少ないことがわかる。
必須成分の硫黄原子含有芳香族化合物(D)を含まない比較例1は、所望とする高屈折率を得ることができない。(D)の代わりに硫黄原子が含まれていない化合物を用いた比較例2も、所望とする高屈折率を得ることができない。(D)の代わりに高屈折率である酸化ジルコニア粒子を用いた比較例3では、所望の屈折率は得られるものの、反りが大きく、また硬化物の透明性は損なわれ、ヘイズや全光線透過率が悪化することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の組成物を硬化させてなる硬化物は、屈折率が高く、反りが非常に少ないことから、光学部材(プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー等)、電気・電子部材(フレキシブルプリント配線板用ソルダーレジスト、メッキレジスト 、多層プリント配線板用層間絶縁膜、感光性光導波路等)、紙やプラスチック等のコーティング剤として幅広く用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香環含有2官能(メタ)アクリレート(A)、分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン樹脂(B1)および/または分子内に芳香環を含有する2官能ウレタン(メタ)アクリレート(B2)、芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)、および分子量100〜800の硫黄原子含有芳香族化合物(D)を必須成分として含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項2】
該硫黄原子含有化合物(D)の硫黄原子含量が10〜70重量%であり芳香環含量が30〜90重量%である請求項1記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
【請求項3】
該硫黄原子含有化合物(D)の含有量が、(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、0.5〜10重量%である請求項1または2いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
該ウレタン樹脂(B1)が、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)を反応させて得られる水酸基を有するウレタン樹脂である請求項1〜3いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
該ウレタン(メタ)アクリレート(B2)が、ポリオール(a)とポリイソシアネート(b)を反応させて得られるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(c)と、水酸基含有(メタ)アクリレート(d)とのウレタン化反応から形成される芳香環含有ウレタン(メタ)アクリレートである請求項1〜4いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
該芳香環含有2官能(メタ)アクリレート(A)が、下記式(1)で表される請求項1〜5いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化1】

[式(1)中、R〜Rは水素原子またはメチル基を表す。mおよびnはそれぞれ1〜15の数であり、(m+n)は2〜20の数である。]
【請求項7】
該芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)が、下記式(2)で表される請求項1〜6いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【化2】

[式(2)中、R4は水素原子またはCH3を表す。Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、−COOHまたは−COOCH2CH2OHを表す。Yは2価の芳香環を表す。Zは炭素数1〜20のアルキレン基、(ポリ)オキシエチレン基または(ポリ)オキシプロピレン基を表す。]
【請求項8】
該芳香環含有単官能(メタ)アクリレート(C)の含有量が、(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、10〜80重量%である請求項1〜7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、リン酸エステル(E1)と3級アミン(E2)からなる金型離型性付与剤(E)を、(A)、(B1)、(B2)、(C)および(D)の合計重量に基づいて、300ppm〜2000ppm含有し、かつその重量比率(E1)/(E2)が0.75〜1.75である請求項1〜8いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項10】
さらに、光重合開始剤(F)を含有する請求項1〜9いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を基材に塗布し、活性エネルギー線を照射して硬化させてなり、その屈折率が1.580〜1.650であることを特徴とする樹脂硬化物。

【公開番号】特開2011−94129(P2011−94129A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218197(P2010−218197)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】