説明

活性光線硬化型ドットスペーサーインキ及びこれを用いた積層物

【課題】 基材上に高精度のパターンを密着性良く形成でき、透明性が有り、さらに適度な鉛筆硬度を有し(2B〜F)そのため、打鍵耐久性に優れ、印刷されたドットの形状も優れ(エッジがシャープでなくて丸みを帯びている)、かつ、耐熱性、耐湿性等の耐久性を合わせ持つタッチパネル用ドットスペーサーを提供する。
【解決手段】 分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)との混合物(C)100重量部に対し、活性光線重合性オリゴマー(D)5〜40重量部、無機充填剤(E)2〜10重量部を必須成分とする活性光線硬化型ドットスペーサーインキに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATM、カーナビゲーション、自動販売機、複写機、各種端末機等の機器において、液晶ディスプレイ等の表示画面上に配置し、透視した画面の指示に従って使用者が情報の表示画面を指やペンで直接押してデータの入力が行われるタッチパネルに使用されるインキである。より具体的には、タッチパル用ドットスペーサーインキに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術における抵抗膜式タッチパネルは、プラスチックフィルムなどの可とう性を有する透明絶縁基板の下面に透明電極とこの透明電極に接続する引き回し電極を形成した上基板と、同じく上面に透明電極とこの透明電極に接続する引き回し電極を形成し、前記透明電極の上面にドットスペーサーを一定間隔に配設したプラスチックフィルムやガラス板などの下基板とが、所定の隙間を持って透明電極同士が対面するような配置構造を取っている。そして、このタッチパネルを液晶表示装置等の表示装置の上面側に配置して使用される。表示装置の表示部分に位置する所のタッチパネルを指又はペンで押すことによって、タッチパネルの上基板がひずんでその押した所の透明電極が下基板の透明電極に接触し、そして、その接触点の位置が電気抵抗の測定によって検知されて入力情報が読みとられる。
【0003】
また、タッチパネルは、良好な入力特性を得るためには、押圧された個所では良好に電極が接触し、押圧されない個所は十分に2枚の電極が離れた状態を保つ必要がある。さらには、パネル全面で均一な押圧力でON/OFFがなされなければならない。そのために、タッチパネル全面で2つの電極間の空隙を均一に保つ必要があり、具体的には、2つの電極間にドットスペーサー(ドット、スペーサーとも呼ぶ)をタッチパネル全面にできるだけ等間隔に配置すると共に、各ドットスペーサーは均一な形状にすることが必要である。
従って、故意でない押圧や基板の反り等による誤作動がなく、且つパネルを押圧する際に大きな力を必要とせず、ペン入力の際にも書き心地の良い、入力特性及び耐久性に優れたタッチパネル及びタッチパネルを備えた表示装置を提供するためのドットスペーサーインキが求められる。
【0004】
ドットスペーサーの材質としては、従来からアクリル系樹脂やエポキシ系樹脂、その他の透明な樹脂材料を用いていたが、それらには各々に長所と欠点があった。まず、アクリル系樹脂の場合、光の透過率は高いので、タッチパネルのドットスペーサーとしては望ましかった。しかし、大変硬い材質であり、衝撃荷重に対して脆く、この結果、打鍵耐久性に欠け、ドットが潰れて分裂し、上下透明電極の接触の妨げになることもあった。また硬いが故に弾力性に欠け、キー入力時の操作が重くなるのも問題だった。また、基材への密着性も不十分であった(例えば特許文献1参照)。
【0005】
一方、エポキシ系樹脂は、アクリル系樹脂と比較すると柔らかく、ドットスペーサーとして、上ガラスの変形を柔らかく受け止めることができることから、タッチパネルを軽い操作力で入力できるのは長所であった。しかし、硬い上ガラスと接触を繰り返す内に、ドットスペーサーが劣化して、長期使用には問題があった。また、アクリル系樹脂と同様に基材への密着性が不十分であった。さらに、エポキシ系樹脂は光の透過率がアクリル系樹脂よりは悪く、このため、ドットスペーサーが妨げとなって、タッチパネルを載せている液晶ディスプレイ等の表示画面の画像がハッキリ見え難くなり、これを克服するため液晶ディスプレイ等の表示画面のバックライトの輝度を高めることで、対応したが、消費電力が高くなる等の欠点を生じた。
【0006】
ドットスペーサーにポリウレタン系アクリレート樹脂を用いた場合は、光透過率が高いので、タッチパネルのドットスペーサーの影響で、画像がハッキリ見えなかったり、画像を誤認してしまうことがなかった。また、基材に対する密着性も良好であった。
しかしながら、ドットスペーサーがエポキシ樹脂より柔らかすぎて、硬度が低く、長期の打鍵耐久性が得られなかった。
【0007】
上記のように基材に対する密着性が優れており、ある程度の鉛筆硬度(2B〜F)と打鍵耐久性を有し、さらには耐熱性、耐湿性などの耐久性にも優れたドットスペーサーインキが強く求められていた。
【0008】
【特許文献1】特開2004−178283号公報(実施例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、基材上に高精度のパターンを密着性良く形成でき、透明性が有り、さらに適度な鉛筆硬度を有し(2B〜F)そのため、打鍵耐久性に優れ、印刷されたドットの形状も優れ(エッジがシャープでなくて丸みを帯びている)、かつ、耐熱性、耐湿性等の耐久性を合わせ持つタッチパネル用ドットスペーサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は上記の問題を解決するために鋭意検討した結果、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物と分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物との混合物、もしくは部分的あるいは全てを反応させた物と活性光線重合性オリゴマーと無機充填剤を必須成分からなる活性光線硬化型ドットスペーサーインキは、優れた透明導電性基材への密着性と透明性と適度な鉛筆硬度(2B〜F)を有し、かつ、耐熱性、耐湿性等の耐久性を合わせ持つ驚くべき物性を有することを発見し、本発明に到達した。すなわち本発明は以下の特徴を有している。
【0011】
分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)との混合物(C)100重量部に対し、活性光線重合性オリゴマー(D)5〜40重量部、無機充填剤(E)2〜15重量部を必須成分とする活性光線硬化型ドットスペーサーインキである。
【0012】
分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)との混合物からなり、かつ(A)と(B)を部分的あるいは全てを反応させた物(C’)100重量部に対し、活性光線重合性オリゴマー(D)5〜40重量部、無機充填剤(E)2〜15重量部を必須成分とする活性光線硬化型ドットスペーサーインキである。
【0013】
インジウムチンオキシド層を形成したフィルム、インジウムチンオキシド層を形成したプラスチック板およびインジウムチンオキシド層を形成したガラスから成る群のうちいずれか1種の基材に上記のインキを塗布した積層物である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性光線硬化型ドットスペーサーインキは、透明導電性基材に優れた印刷性(エッジがシャープでなくて丸みを帯びている)と密着性と透明性を有し、さらに、適度な鉛筆硬度(2B〜F)を有し、そのため、打鍵耐久性に優れ、従来技術では得られなかった優れた耐熱性、耐湿性等の耐久性を併せ持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で使用する分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)とは、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物である。そのエポキシ当量の好ましい下限は100以上、より好ましくは400以上、又好ましい上限は4000以下、より好ましくは2200以下である。
【0016】
代表的な化合物としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ハロゲン化ビスフェノールAなどのジグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂やフェノールノボラック、クレゾールノボラックなどのポリグリシジルエーテルであるノボラック型エポキシ樹脂を代表とする2価以上の多価フェノール類のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなどの2価以上の多価アルコール類のポリグリシジルエーテル類などがある。これらのエポキシ化合物は単独にまたは2種以上併用して使用することができる。
【0017】
これらの少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物の中でも、特にビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型ポリエポキシ化合物、クレゾールノボラック型ポリエポキシ化合物などが(密着性と耐久性の点から)好ましい。
【0018】
また、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどの分子内にエポキシ基を1個有するエポキシ化合物を併用して使用することもできる。
【0019】
本発明で使用するカルボキシル基を有する光重合性化合物(B)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸系化合物類や次の一般式(I)で表される化合物がある。
一般式(I);(H2C=CR1−COO−)m−R2−OCO−R3−(−COOH)n
(式中、R1は水素またはメチル基を示し、R2およびR3は各々脂肪族、芳香族、脂環族の残基を示し、mおよびnは各々1〜3の正の整数を示す。)
【0020】
一般式(I)において、R2は炭素原子数2〜10である2〜4価の炭化水素基またはヒドロキシル基含有炭化水素基であることが好ましく、R3は炭素原子数2〜10である2〜4価の脂肪族多塩基酸残基、炭素原子数6〜15である2〜4価の芳香族多塩基酸残基または炭素原子数6〜10である2〜4価の脂環族多塩基酸残基であることが好ましい。
【0021】
一般式(I)で表される化合物としては、例えば次のような化合物がある。
m=1、n=1の化合物としては、例えば、コハク酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、(アクリロイルオキシエチルエステルおよびメタクリロイルオキシエチルエステルを示す。以下同様に略記する。)フタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、マレイン酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、テトラハイドロフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、ヘキサハイドロフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチルエステル、エンド−ビシクロ(2・2・1)−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸モノ(メタ)アクリロイルオキエチルエステル、テトラハイドロフタル酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−(フェノキシメチル)エチルエステル、フタル酸モノ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルエステル、コハク酸モノ−2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルエステルなどがある。
【0022】
m=1、n=2の化合物としては、例えば、トリメリット酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルなどがある。m=1、n=3の化合物としては、例えば、ピロメリット酸モノ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルエステルなどがある。
【0023】
m=2、n=1の化合物としては、例えば、フタル酸モノ−〔2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル〕エステル、メチルテトラハイドロフタル酸モノ−〔2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル〕エステル、テトラハイドロフタル酸モノ−〔2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル〕エステル、コハク酸モノ−〔2,3−ビス(メタ)アクリロイルオキシイソプロピル〕エステルなどがある。
【0024】
m=2、n=2の化合物としては、例えば、トリメリット酸モノ−〔4,5−ビス(メタ)アクリロイルオキシネオペンチル〕エステル、トリメリット酸モノ−フタル酸モノ−〔3,4−ビス(メタ)アクリロイルオキシイソブチル〕エステルなどがある。
【0025】
m=3、n=2の化合物としては、例えば、トリメリット酸モノ−〔3,4,5−トリス(メタ)アクリロイルオキシネオペンチル〕エステルなどがある。
【0026】
m=3、n=3の化合物としては、例えば、ピロメリット酸モノ−〔3,4,5−トリス(メタ)アクリロイルオキシネオペンチル〕エステルなどがある。
【0027】
カルボキシル基を有する光重合性化合物(B)としては、前述の化合物の中で、特に一般式(I)で表される化合物のものが好ましく、さらにはコハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステルが最も好ましい。
これらのカルボキシル基を有する光重合性化合物(B)は単独にまたは2種以上併用して、または必要に応じて他の光重合性化合物(F)の1種または2種以上と併用して使用される。
【0028】
本発明で使用する分子内にカルボキシル基を含有する光重合性化合物(B)の配合量は、エポキシ化合物(A)100重量%に対して、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、最も好ましくは20重量%以上、また、好ましくは100重量%以下、より好ましくは90重量%以下、最も好ましくは80重量%以下である。その配合量が10重量%未満の場合は、得られる樹脂組成物の基材に対する密着性が低下する傾向にある。一方100重量%を越えると耐熱性、耐湿性などの耐久性が低下する傾向にある。
【0029】
本発明の活性光線硬化型ドットスペーサーインキは分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)を必須成分とするが、この両成分は単なる混合物(C)であっても、部分的あるいは全てを反応させたもの(C’)であっても良い。
【0030】
エポキシ基(グリシジル基)とカルボキシル基を反応させることにより、活性光線による硬化性が向上し、また基材に対する密着性も良好なものとなることがある。エポキシ基とカルボキシル基の当量比は、どちらが過剰でも良いが、エポキシ基を過剰にする方が好ましい。その反応率は(B)のカルボキシル基の当量を基準として、全く反応していない場合を0%、全てが反応した場合を100%とすると、好ましくは5%以上、次に好ましくは10%以上、さらに好ましくは15%以上、もっとも好ましくは20%以上である。上限は特に限定されないが、98%以下が好ましく、さらに好ましくは90%以下、最も好ましくは80%以下である。反応率が10%未満であれば、硬化性や基材との密着性に劣る場合があり、一方98%を越える反応率に制御しようとすると、反応に長時間を要するために経済的でない。カルボキシル基の反応率を測定する方法としては特に限定されないが、例えば中和滴定が簡便で好ましい。分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する光重合性化合物(B)の混合物の試料0.2gを精秤し、20mlのクロロホルムに溶解した後、0.01Nの水酸化カリウムエタノール溶液で、滴定して求めることができる。指示薬はフェノールフタレイン溶液が好適である。
【0031】
本発明で使用する活性光線重合性オリゴマー(D)としては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの化合物はドットスペーサーインキに適切な粘性を与えると共に、基材への密着性を付与するものである。これらの内、密着性の面よりウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレートとは、ポリオールとポリイソシアネートとの反応物と水酸基を含有する(メタ)アクリレートとの付加反応により得られる。本発明では、ドットスペーサーインキとしての透明性が必要であることから、イソシアネートとして使用する原料としては、IPDI(イソホロンジイソシアネート)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)、H12MDI(水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート)などの無黄変型原料が好ましい。黄変型のTDI(トリレンジイソシアネート)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)などの芳香族イソシアネートは原則として使用しないことが好ましい。
【0032】
本発明で使用する活性光線重合性オリゴマー(D)の配合量は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)との混合物(C)あるいは反応物の混合物(C’)100重量部に対しては、活性光線重合性オリゴマー(D)5重量%以上が好ましく、また、上限は45重量%以下、好ましくは40重量%以下である。その配合量が5重量%未満の場合は、得られるドットスペーサーインキの基材に対する密着性が低下する傾向にある。一方45重量%を越えると鉛筆硬度が低下し、さらに、耐熱性、耐湿性などの耐久性が低下する傾向にある。
【0033】
本発明で使用する無機充填剤(E)としては、シリカ、ヒュームドシリカ、けい藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ベリウムなどの酸化物や水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、カルシウム、アルミネート水和物などの水酸化物やタルク(ケイ酸マグネシウム)、クレー(ケイ酸アルミニウム)、マイカ、含水ケイ酸、無水ケイ酸、アスベスト、ベンナイト、セピオライト、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイトなどのケイ酸塩や炭化カルシウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウムなどの(亜)硫酸塩や二硫化モリブデンやチタン酸カリウムや炭化ケイ素やスレート粉末、カオリン、シリカゲルなどがある。
【0034】
無機充填剤(E)としては、前述の化合物の中で、特にシリカ、タルク、マイカ、硫酸バリウムが好ましい。これらの無機充填剤(E)は単独にまたは2種以上併用して使用しても良い。
【0035】
本発明で使用する無機充填剤(E)の配合量は、分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)との混合物(C)100重量部、活性光線重合性オリゴマー(D)5〜40重量部に対し、2重量%以上、好ましくは3重量%以上、また、15量重%以下、好ましくは14%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。その配合量が2重量%未満の場合は、得られるドットスペーサーインキの形状が悪く、具体的には、ドットスペーサーインキの高さが低く、ややニジミ気味になる。一方15重量%を越えると得られるドットスペーサーインキの粘度が高くなり、版離れ性が悪くなり、印刷物の形状も悪化する傾向にある。低下する傾向にある。
【0036】
本発明で必要に応じて使用する活性光線重合性化合物(F)とは分子内に1個以上の光重合性二重結合を有する光重合可能な化合物である。(F)を併用することによりドットスペーサーインキの粘度が調節しやすく、スクリーン印刷等の作業性が良くなる傾向にあり好ましい。
【0037】
分子内に1個の光重合性二重結合を有する光重合可能な化合物としては、例えば、(i)メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−およびi−プロピル(メタ)アクリレート、i−,n−ブチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチルメタアクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、あるいはポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリンやイソボニルアクリレートやシクロヘキシルメタクリレートやジシクロペンテニルアクリレートやジシクロペンタニルアクリレートやジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートやテトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステルなどの複素環含有(メタ)アクリレート類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノアルキル(メタ)アクリレート類、(ii)ビスフェノールAのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物などのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のモノ(メタ)アクリレート類、(iii)ジイソシアネート化合物と1個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、さらにアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート類を反応させて得られる分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン変性モノ(メタ)アクリレート類、(iv)分子内に1個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られるエポキシモノ(メタ)アクリレート類、および(v)カルボン酸成分としてアクリル酸またはメタクリル酸および多価カルボン酸とアルコール成分として2価以上の多価アルコールとを反応させて得られるオリゴエステルモノ(メタ)アクリレート類などがある。
【0038】
分子内に2個の光重合性二重結合を有する光重合可能な化合物としては、例えば、(i)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、(ii)ビスフェノールAのエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物などのビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート類、(iii)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、さらにアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート類を反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン変性ジ(メタ)アクリレート類、(iv)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸または/およびメタクリル酸を反応させて得られるエポキシジ(メタ)アクリレート類、(v)カルボン酸成分としてアクリル酸またはメタクリル酸および多価カルボン酸とアルコール成分として2価以上の多価アルコールとを反応させて得られるオリゴエステルジ(メタ)アクリレート類などがある。
【0039】
分子内に3個以上の光重合性二重結合を有する光重合可能な化合物としては、例えば、(i)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3価以上の脂肪族多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類、(ii)ジイソシアネート化合物と3個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、さらにアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン変性ポリ(メタ)アクリレート類、(iii)分子内に3個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸または/およびメタクリル酸を反応させて得られるエポキシポリ(メタ)アクリレート類などがある。
【0040】
他の活性光線重合性化合物(F)としては、前述の化合物の中で、分子内に1個の光重合性二重結合を有するものが溶解しやすいなどの作業性の点で好ましい。
【0041】
本発明で使用するエポキシ化合物(A)とカルボキシル基を有する光重合性化合物(B)と他の活性光線重合性化合物(F)とを併用する場合の配合比は、エポキシ化合物100重量%に対して、(B)+(F)の合計重量%が、下限は10重量%以上が好ましく、より好ましくは15重量%以上、最も好ましくは25重量%以上である。一方上限は900重量%以下が好ましく、より好ましくは700重量%以下、最も好ましくは400重量%以下である。カルボキシル基を有する光重合性化合物(B)と他の活性光線重合性化合物(F)の合計配合量が900重量%を越える場合、とくに基材に対する密着性が難しく、又、耐熱性や耐湿性などが低下する傾向である。また、10重量%未満では、ドットスペーサーインキとしての粘度が高くなり、取扱い性に欠けるとともに印刷性も不良となりやすい傾向にある。
【0042】
本発明のドットスペーサーインキにおいては、UV硬化後に着色しない光開始剤(G)を配合することが好ましい。本発明で使用する光開始剤(G)としては、例えば、クロロアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチルトリクロロアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル(4−ドデシル)プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、フェニル2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン、ヒドロキシアセトフェノン、α−アミノアセトフェノンなどのアセトフェノン類、ベンジルジメチルケタール(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)などのケタール類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインアルキルエーテル、α−メチルベンゾインなどのベンゾイン類、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類、2−ヒドロシ−2−メチルプロピオフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンなどのプロピオフェノン類、ジベンゾスベロンなどのスベロン類などが挙げられる。
【0043】
その他に1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,4,6−トリメチロールベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロシ−2−メチル−1−〔4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン、2,2−ジクロロ−p−フェノキシアセトフェノン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2(o−エトキシカルボニル)オキシム、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノンなどもある。これらは、単独にまたは2種以上併用して使用される。
【0044】
光開始剤(G)としては、前述の光開始剤の中で、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシル−フェニルケトン)、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)などが硬化性や密着性や透明性の点で好ましい。
【0045】
この光開始剤の配合量はエポキシ化合物(A)と光重合性化合物(B+F)との総量100重量%に対して好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、又は好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。0.05重量%未満だと硬化性が不足して密着性が悪くなる傾向にある。一方20重量%を越えると、硬化性が飽和し経済的でなく、さらにはインキの保存安定性が悪くなったり、厚膜硬化の場合には密着性が悪くなる場合がある。
【0046】
本発明においてはエポキシ基とカルボキシル基との反応を促進させる必要がある場合はさらに反応促進剤の添加が効果的である。反応促進剤としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダソール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、N,N−ジメチルアミノエタノール、N,N−ジエチルアミノエタノール、N,N−ジプロピルアミノエタノールなどの第3級アミン類、トリジメチルアミノメチルフェノールのトリアセテートおよびトリベンゾエートなどの第3級アミン塩類、アリルチオ尿素、o−トリルチオ尿素などの尿素類、s−ベンジル−イソチウロニム−p−トルエンスルフィネートなどのイオウ化合物、トリ−n−ブチルホスフィン、ナトリウムジエチルジチオホスフェートなどのリン化合物などがあり、単独にまたは2種以上併用して使用することができる。
【0047】
これら反応促進剤の添加量はエポキシ化合物(A)と光重合性化合物(B+F)と活性光線重合性オリゴマー(D)と無機充填剤(E)との総量100重量%に対して好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、又は好ましくは5重量%以下、より好ましくは3.5重量%以下である。0.05重量%未満だと反応促進の効果が得られないことがあり、3.5重量%を越えると保存安定性が悪くなる場合がある。
【0048】
本発明のドットスペーサーインキは室温または必要により加温下で攪拌混合することにより容易に製造が可能である。製造時の熱重合や貯蔵中の暗反応を防止するために、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−ブチル−カテコール、p−ベンゾキノン、2,5−t−ブチル−ハイドロキノン、フェノチアジンなどの公知の熱重合防止剤を添加するのが望ましい。その添加量は本発明に使用する光重合性化合物(B+F)100重量%に対して好ましくは0.001重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下である。0.001重量%未満では効果が得られないことがあり、0.1重量%を越えて配合しても効果が飽和し、経済的でない。
【0049】
本発明のドットスペーサーインキにおいては、透明性を有する範囲内で、レベリング剤(H)及び/又は消泡剤(I)を配合してもよい。
レベリング剤(H)としては、例えば次のようなものが挙げられる。ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アラルキル変性ポリメチルアルキルシロキサン、ポリエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、アクリル系共重合物、メタクリル系共重合物、ポリエーテル変性ポリメチルアルキルシロキサン、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、アクリル酸、アクリル酸アルキル共重合物、ポリオキシアルキレンモノアルキルまたはアルケニルエーテルのグラフト化共重合物、レシチンなどの公知のものを添加することができる。
【0050】
レベリング剤としては、前述のレベリング剤の中で、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、アクリル酸、アクリル酸アルキル共重合物、ポリオキシアルキレンモノアルキルまたはアルケニルエーテルのグラフト化共重合物、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが表面平滑性の点で好ましい。
【0051】
これらのレベリング剤を配合する場合は、次の添加量にすると良い。レベリング剤(H)の添加量はエポキシ化合物(A)と光重合性化合物(B+F)とウレタンアクリレート(D)と光開始剤(G)と無機充填剤(E)の総量100重量%に対して好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.07重量%以上、又は好ましくは4.0重量%以下、より好ましくは2.0重量%以下である。0.05重量%未満では効果が得られないことがあり、4重量%を越えて配合しても効果が飽和し、経済的でない。
【0052】
消泡剤(I)としては、例えば次のようなものが挙げられる。シリコーン樹脂、シリコーン溶液、シリコンを含まない特殊破泡剤、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、アルキルビニルエーテル、アクリル系共重合物、破泡性ポリマー、ポリシロキサン、破泡性ポリシロキサン、ポリメチルアルキルシロキサン、ポレエーテル変性ポリシロキサン、パラフィン系ミネラルオイルなどの公知のものを添加することができる。
【0053】
消泡剤としては、前述の消泡剤の中で、シリコーン樹脂、シリコーン溶液、アクリル酸アルキルエステル共重合物、メタクリル酸アルキルエステル共重合物、アルキルビニルエーテルが好ましい。
【0054】
これらのレベリング剤を配合する場合は、次の添加量にすると良い。消泡剤(I)の添加量はエポキシ化合物(A)と活性光線重合性化合物(B+F)と活性光線重合性オリゴマー(D)と光開始剤(G)と無機充填剤(E)の総量100重量%に対して好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.06重量%以上、又は好ましくは4.0重量%以下、より好ましくは2.0重量%以下である。0.05重量%未満では効果が得られないことがあり、4.0重量%を越えて配合しても効果が飽和し、経済的でない。
【0055】
また、シリコーン樹脂やシリコーン溶液などのシリコーン系添加剤の場合は1.0%以下の添加にすることが好ましい。1.0%以下でないとドットスペーサーインキとしての透明性が低下することがあるからである。
【0056】
本発明に使用する活性光線硬化型ドットスペーサーインキには透明性を有する範囲内で、上記添加剤の他に、揺変剤、充填剤などの各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0057】
本発明の活性光線硬化型ドットスペーサーインキは、紫外線などの活性光線を照射して重合反応を誘起させる。紫外線照射に用いる光源としては、太陽光線、ケミカルランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、カーボンアーク灯、キノセンランプ、メタルハライドランプなどが使用される。
【0058】
上述のようなインキを透明なアクリル樹脂、エポキシ樹脂、その他の透明な樹脂材料をスクリーン印刷等の方法でドットマトリックス状に一定間隔に形成し、その後、熱または紫外線で硬化処理を施してドットスペーサーを形成する。このドットスペーサーは目に見えない大きさであることが求められることから、直径20〜60μm、高さは2〜5μm、ドット間隔は1〜8mmの範囲で設計されることが好ましい。
【0059】
タッチパネル用ドットスペーサーは、断面略半球状もしくはドーム状の微小突起物又は頂点及び/又は稜が丸みを帯びたピラミッド状もしくは台形状突起物など、所望の用途に応じて種々の形状とすることができるが、断面略半球状もしくはドーム状の複数の微小突起物からなることが好ましい。ドット形状としては、半球状でもよく、円柱状でも構わず、六角柱状や三角柱状などの形状でもよい。
【0060】
ドットスペーサーの直径は、通常、直径が20μm以上80μm以下であり、より好ましくは30μm以上60μm以下であり、更に好ましくは30μm以上50μm以下である。
【0061】
ドットスペーサーの高さとしては、3μm以上15μm以下程度が工業的に安価なスクリーン印刷法を用いて形成することが可能であり、達成容易である。より好ましくは、5μm以上10μm以下である。
【0062】
ドットスペーサーの高さが3μm未満であると非常に弱い入力荷重や、僅かな可動基板の反りなどによって入力されてしまい、誤動作の原因となることがある。一方、15μmを超える高さであると、ペンでの入力時に、高い入力荷重が必要となり、筆記感が悪くなる場合がある。さらに、ペン入力時にペンが引っかかることによっても筆記感が悪くなる場合がある。
【0063】
ここで透明導電性は、通常、金属酸化物を基材にスパッタリングして付与されるもので、金属酸化物としては酸化インジウムなどが使用されるが、特にITO(インジウムチンオキシド)が好ましい。本発明のタッチパネルに用いられる可とう性を有する基材としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリカーボネート(PC)誘導体(帝人(株):WRF−5、ピュアエース、帝人化成(株):パンライト、バイエル社:Apec、鐘淵化学工業(株):エルメック)、セルロースアシレート系樹脂(セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)、ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン(株):ゼオノア、ゼオネックス)、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン(PES)、変成ノルボルネン系樹脂(JSR(株):アートン)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN))、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂(ユニチカ(株):Uポリマー)、ポリエーテルケトンなどが挙げられ、中でもポリカーボネート誘導体、ノルボルネン系樹脂、変成ノルボルネン系樹脂、セルロースアシレート系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。
本発明のタッチパネルに用いられる可とう性のいらない基板としては、可とう性を有するところで記載したすべての基材のフィルムやシートや、ガラス板などが挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明を限定するものではない。実施例中、単に部とあるものは重量部を示す。また、各測定項目は以下の方法に従った。
【0065】
1.B型粘度および揺変度
合成した樹脂組成物のB型粘度をJIS K6901に準じてブルックフィールド型粘度計を用いて、25℃で20rpmで測定した。
合成した樹脂組成物の揺変度をJIS K6901に準じてブルックフィールド型粘度計を用いて測定した。具体的には、まず、25℃で20rpmでの粘度を測定する。続いて25℃で2rpmでの粘度を測定する。その後、下記式の数値を計算で求めて、本発明におけるドットスペーサーインキの揺変度とした。
揺変度=2rpmでの粘度/20rpmでの粘度
【0066】
2.酸価(mgKOH/g)
試料0.2gを精秤し20mlのクロロホルムに溶解した。ついで、0.01Nの水酸化カリウム(エタノール溶液)で滴定して求めた。指示薬には、フェノールフタレイン溶液を用いた。
【0067】
2.テストピースの作成(密着性と鉛筆硬度測定用)
活性光線硬化型ドットスペーサーインキを厚み188μmのアニール処理(130℃×30分乾燥)済みのインジウムチンオキシドをスパッタしたPETフィルム(220Ω/□)に紫外線照射後の膜厚が7〜12μmになるように25mm幅で長さ50mmのパターンをスクリーン印刷した。これを、紫外線照射装置を用い、積算光量で1,000mJ/cm2の条件で硬化したものをテストピース(初期と耐熱性と耐湿性の密着性と鉛筆硬度測定用)とした。
【0068】
3.テストピースの作成(印刷性と透明性測定用)
活性光線硬化型ドットスペーサーインキを厚み188μmのアニール処理(130℃×30分乾燥)済みのインジウムチンオキシドをスパッタしたPETフィルム(220Ω/□)にスクリーン印刷した。用いたスクリーン版は、4mmピッチで網目状に直径40μmφの孔が形成されている厚さ30μmのポリイミド版を用いた。
印刷後、紫外線照射装置を用い、積算光量で1,000mJ/cm2の条件で硬化したものをテストピース(印刷性と透明性測定用)とした。
【0069】
4.耐熱性
2.で作成したテストピースを70℃×240時間熱風オーブン中にて熱処理した後、テストピースの密着性、鉛筆硬度、絶縁性を評価した。
【0070】
5.耐湿性
2.で作成したテストピースを40℃、相対湿度95%RH×240時間恒温恒湿器中にて熱処理した後、テストピースの密着性、鉛筆硬度、絶縁性を評価した。
【0071】
8.密着性
2.で作成したテストピースをセロテープ(登録商標)剥離試験により評価した。界面剥離なしを密着性良好とし、界面剥離ありを密着性不良と判断した。
【0072】
9.鉛筆硬度
2.で作成したテストピースを厚さ2mmのSUS304板上に置き、JIS S−6006に規定された高級鉛筆を用い、JIS K−5600に従って測定し、剥離の有無で判断した。
【0073】
10.透明性
3.で作成したテストピースを目視で観察し、透明性が有るかないか判断した。
【0074】
11.印刷性
3.で作成したテストピースで、ドットの形状(径および高さ)は、レーザー式マイク ロスコープ(VK8510型、キーエンス(株)製)にて形状測定を行った。径の大き さと高さおよび全体の形状より良好か不良の判断をした。
【0075】
配合例.1
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1001(ジャパンエポキシレジン(株)製)43.6部、テトラヒドロフルフリルアクリレート19.9部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物を得た。
次に、この樹脂組成物を冷却し、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル9.9部を仕込み、25℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(配合例1)を得た。得られた樹脂組成物の粘度は15dPa・sであった。結果を表1に示す。尚表1の配合に関する数値は重量部を示す。
【0076】
配合例.2
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1004(ジャパンエポキシレジン(株)製)45.4部、テトラヒドロフルフリルアクリレート17.5部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物を得た。
次に、この樹脂組成物を冷却し、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル10.3部を仕込み、25℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(配合例2)を得た。得られた樹脂組成物の粘度は45dPa・sであった。結果を表1に示す。
【0077】
配合例.3
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製)44.2部、フェノキシエチルアクリレート20.2部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物を得た。
次に、この樹脂組成物を冷却し、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル10.1部を仕込み、25℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(配合例3)を得た。得られた樹脂組成物の粘度は20dPa・sであった。結果を表1に示す。
【0078】
配合例.4
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1001(ジャパンエポキシレジン(株)製)44.3部、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル19.8部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物を得た。
次に、この樹脂組成物を冷却し、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル9.4部を仕込み、25℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(配合例4)を得た。得られた樹脂組成物の粘度は195dPa・sであった。結果を表1に示す。
【0079】
比較配合例.1
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1001(ジャパンエポキシレジン(株)製)100部、フェノキシエチルアクリレート70部を四つ口フラスコに仕込み、50℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(比較配合例1)を得た。結果を表2に示す。尚配合における数値は重量部を示す。
【0080】
比較配合例.2
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1004(ジャパンエポキシレジン(株)製)100部、2−ヒドロキシエチルアクリレート70部を四つ口フラスコに仕込み、50℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(比較配合例2)を得た。結果を表2に示す。
【0081】
反応例.1
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1001(ジャパンエポキシレジン(株)製)43.6部、テトラヒドロフルフリルアクリレート19.9部、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル9.9部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(反応例1)を得た。反応前の酸価は96mgKOH/gであり、反応後は37mgKOH/gであった。これより、グリシジル基とカルボキシル基が反応したことがわかる。得られた樹脂組成物の粘度は15dPa・sであった。結果を表3に示す。
【0082】
反応例.2
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1004(ジャパンエポキシレジン(株)製)45.4部、テトラヒドロフルフリルアクリレート17.5部、フタル酸モノアクリロイルオキシエチルエステル10.3部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(反応例2)を得た。反応前の酸価は84mgKOH/gであり、反応後は30mgKOH/gであった。これより、グリシジル基とカルボキシル基が反応したことがわかる。得られた樹脂組成物の粘度は45dPa・sであった。結果を表3に示す。
【0083】
反応例.3
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート828(ジャパンエポキシレジン(株)製)44.2部、フェノキシエチルアクリレート20.2部、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル10.1部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(反応例3)を得た。反応前の酸価は88mgKOH/gであり、反応後は33mgKOH/gであった。これより、グリシジル基とカルボキシル基が反応したことがわかる。得られた樹脂組成物の粘度は20dPa・sであった。結果を表3に示す。
【0084】
反応例.4
ビスフェノールA型エポキシ化合物であるエピコート1001(ジャパンエポキシレジン(株)製)44.3部、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル9.4部、コハク酸モノアクリロイルオキシエチルエステル19.8部を四つ口フラスコに仕込み、80℃で混合攪拌し、透明な樹脂組成物(反応例4)を得た。反応前の酸価は86mgKOH/gであり、反応後は28mgKOH/gであった。これより、グリシジル基とカルボキシル基が反応したことがわかる。得られた樹脂組成物の粘度は195dPa・sであった。結果を表3に示す。
【0085】
実施例1
樹脂組成物(配合例1)53.5部、活性光線重合性化合物としてのテトラヒドロフルフリルアクリレート19.9部に対して活性光線重合性オリゴマー(ダイセル・ユーシービー(株)KRM−7049)を19.9部、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを3.1部、レベリング剤を1.0部、消泡剤を1.5部、無機充填剤としてのタルクAを5.0部配合して、ディゾルバー(分散機)で充分攪拌、混合した。その後、チルド3本ロールで2回通して分散した。得られたドットスペーサーインキを2、3に記述した方法で印刷、硬化(乾燥)し評価した。印刷性や密着性や透明性は良好であった。また、鉛筆硬度も適度の鉛筆硬度である2B〜Fの間であるBであった。結果を表4に示す。
【0086】
実施例1と同様に実施例2〜8の活性光線硬化型ドットスペーサーインキを作成し、評価した。配合と評価結果を表4に示す。表4において消泡剤のシリコーン樹脂とは信越化学工業(株)製KS−66、シリコーン溶液とは信越化学工業(株)製KS−603を示す。
【0087】
比較例1
樹脂組成物(比較配合例1)100部に対し光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを1.5部、レベリング剤を1.0部、消泡剤を1.5部、タルクA(吸油量36ml/100g、平均粒子径8μm)を5.0部配合して、ディゾルバー(分散機)で充分攪拌、混合した。その後、チルド3本ロールで2回通して分散した。得られたドットスペーサーインキを2、3に記述した方法で印刷、硬化(乾燥)し評価した。印刷性と初期密着性が不良であった。結果を表5に示す。
【0088】
比較例1と同様に比較例2〜5の活性光線硬化型ドットスペーサーインキを作成し、評価した。結果を表5に示す。いずれの比較例も密着性が不良であった。
【0089】
実施例9
樹脂組成物(反応例1)53.5部と活性光線重合性化合物であるテトラヒドロフルフリルアクリレート19.9部に対して活性光線重合性オリゴマー(ダイセル・ユーシービー(株)KRM−7049)を19.9部、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを3.1部、レベリング剤を1.0部、消泡剤を1.5部、無機充填剤としてのタルクAを5.0部配合して、ディゾルバー(分散機)で充分攪拌、混合した。その後、チルド3本ロールで2回通して分散した。得られたドットスペーサーインキを2、3に記述した方法で印刷、硬化(乾燥)し評価した。印刷性や密着性や透明性は良好であった。また、鉛筆硬度も適度の鉛筆硬度である2B〜Fの間であるBであった。結果を表6に示す。
【0090】
実施例9と同様に実施例10〜16の活性光線硬化型ドットスペーサーインキを作成し、評価した。結果を表6に示す。表6において消泡剤のシリコーン樹脂とは信越化学工業(株)製KS−66、シリコーン溶液とは信越化学工業(株)製KS−603を示す。これらの実施例は、エポキシ化合物とカルボキシル基を部分反応した例であるが、混合だけの実施例1〜9と比較して、透明性が良好から非常に良好である。また、UV硬化性も改善された。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【0096】
【表6】

【0097】
表4、5、6中の略号は以下の通り。
KRM−7049:ダイセル・ユーシービー(株)製のウレタンアクリレート樹脂
BK−4103:東洋紡績(株)のウレタンアクリレート樹脂
シリカ:日本アエロジル(株)製アエロジル#300
タルクA:吸油量36ml/100g、平均粒子径8μm
タルクB:吸油量220ml/100g、平均粒子径2.5μm
マイカ:脇田鉱業(株)製#5500
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の活性光線硬化型ドットスペーサーインキは、透明導電性基材に優れた印刷性(エッジがシャープでなくて丸みを帯びている)と密着性と透明性を有し、さらに、適度な鉛筆硬度(2B〜F)を有し、そのため、打鍵耐久性に優れ、従来技術では得られなかった優れた耐熱性、耐湿性等の耐久性を併せ持つ。
このことにより、ワープロ、ATM、カーナビゲーション、自動販売機、複写機、各種端末機等の機器において、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等に使用されるタッチパネルの透明電極等の非常に過酷な分野における絶縁物として幅広く利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)との混合物(C)100重量部に対し、活性光線重合性オリゴマー(D)5〜40重量部、無機充填剤(E)2〜15重量部を必須成分とする活性光線硬化型ドットスペーサーインキ。
【請求項2】
分子内に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(A)、分子内にカルボキシル基を有する活性光線重合性化合物(B)との混合物からなり、かつ(A)と(B)を部分的あるいは全てを反応させた物(C’)100重量部に対し、活性光線重合性オリゴマー(D)5〜40重量部、無機充填剤(E)2〜15重量部を必須成分とする活性光線硬化型ドットスペーサーインキ。
【請求項3】
さらに活性光線重合性化合物(F)を配合してなる請求項1または2記載の活性光線硬化型ドットスペーサーインキ。
【請求項4】
さらに光開始剤(G)を配合してなる請求項1〜3のいずれかに記載の活性光線硬化型ドットスペーサーインキ。
【請求項5】
さらにレベリング剤(H)および/または消泡剤(I)を配合してなる請求項1〜4のいずれかに記載の活性光線硬化型ドットスペーサーインキ。
【請求項6】
インジウムチンオキシド層を形成したフィルム、インジウムチンオキシド層を形成したプラスチック板およびインジウムチンオキシド層を形成したガラスから成る群のうちいずれか1種の基材に請求項1〜5のいずれかに記載のインキを塗布した積層物。

【公開番号】特開2006−282679(P2006−282679A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91353(P2005−91353)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】