説明

活性化されたT細胞の表面上のレセプタ:ACT−4

【課題】新規なACT-4レセプターポリペプチドの提供。
【解決手段】下記のアミノ酸配列:(a)特定のアミノ酸配列;又は(b)該アミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、該アミノ酸配列に関する変異体;を含んでなるか又はから成る、ACT-4レセプターポリペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、 ACT−4と呼ばれる細胞表面レセプタとそれに対する抗体の分離及び特徴づけ、並びに免疫応答を監視し及び/又は調節するための抗原及び抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫応答は、白血球と呼ばれる末梢血細胞のさまざまな収集によって主として媒介される。白血球には、リンパ球、果粒球及び単球が含まれる。果粒球はさらに、好中球、好酸球及び好塩基球に細分される。リンパ球はさらにTリンパ球とBリンパ球に細分される。Tリンパ球は、胎芽のリンパ球関与基幹細胞に由来している。分化は胸腺内で起こり、前胸腺細胞、皮質胸腺細胞及び延髄胸腺細胞を通って進行しさまざまなタイプの成熟T細胞を産生する。これらの亜型には、活性化された時点で標的細胞を溶解させることのできる CD8+T 細胞(細胞障害性/サプレッサーT細胞とも呼ばれる)及び活性化された時点でその他の免疫系細胞型を刺激する能力をもつ CD4+T 細胞(Tヘルパー及びTインデューサ細胞とも呼ばれる)が含まれる。
【0003】
免疫系応答は、いくつかの異なる状況の下で惹起される。最も頻繁な応答は、感染性微生物に対する望ましい防御としてである。しかしながら、外来の組織の移植の後で、又は体自身の抗原の1つが免疫応答の標的である自己免疫疾患においては、望ましくない免疫応答が起こり得る。免疫応答は同様に或る種のレセプタに対する抗体又はマイトジェンによってインビトロ内で開始され得る。これらの状況の各々において、免疫応答は、白血球細胞型の複雑な相互作用を介して刺激事象から形質導入される。しかしながら、参与する細胞型及び細胞型間の相互作用の性質は、異なる刺激事象について変動する。例えば、侵入する細菌に対する免疫応答は、往々にして、MHC クラスIIレセプターと細胞抗原の間の複合体の形成によって形質導入され、これが次に CD4+T 細胞を活性化する。これとは対照的に、ウイルス感染に対する免疫応答は主として、MHC クラスI/ウイルス抗原複合体の形成及びそれに続く CD8+ 細胞の活性化によって形質導入される。
【0004】
最近になって、数多くの白血球細胞表面抗原が同定されてきており、そのうちのいくつかは、シグナル形質導入において或る役割を果たしていることが示された。シグナルは、細胞表面レセプタと可溶性リガンド又は細胞表面結合リガンドのいずれかの間で形質導入され得ることが発見された。白血球細胞表面分子のアミノ酸配列は、数多くの特徴的なくり返し発生する配列又はモチーフを含んでいる。これらのモチーフは、進化において関わりをもち、類似の折りたたみパターンをもち、類似のタイプの相互作用を媒介するものと予測されている。免疫グロブリン及び神経成長因子レセプタスーパーファミリーを含む数多くのスーパーファミリーについて記述されてきた。
【0005】
神経成長因子レセプタファミリーのメンバーとしては、神経細胞上に見られるNGFR;B細胞抗原CD40;活性化された CD4+ 細胞上に見られるOX−40抗原(Mallet et al., EMBO J. 9 : 1063-1068 (1990) (あらゆる目的で本書に参考として内含される);さまざまな細胞型の上に見られる腫瘍壊死因子(TNF)に対する2つのレセプタ、 LTNFR−1及びTNFR−II;T細胞上に見られる4−1BB;ショープ繊維腫ウイルス内の読取り枠である SFV−T2;そして場合によってはfas, CD27 及びCD30が含まれる。一般に Mallet & Barclay, Immunology Today 12 : 220-222 (1990)(あらゆる目的で本書に参考として内含されている)を参照のこと。
【0006】
細胞表面レセプタの同定は、移植体拒絶、自己免疫疾患及び炎症といった望ましくない免疫応答を抑制するための新しい作用物質を示唆してきた。免疫細胞のレセプタが可溶性分子又は細胞結合レセプタに結合しないよう遮断する作用物質、特に抗体は、免疫応答を損なう可能性がある。理想的には、作用物質は、望ましい応答(例えば病原体に対する応答)を発揮させる残留能力を残しながら、望ましくない免疫応答(例えば移植体拒絶)のみを遮断しなければならない。例えばCD3レセプタ及びIL−2レセプタに対する抗原といったいくつかの作用物質の免疫抑制作用がすでに臨床試験でテストされてきた。
【0007】
いくつかの試験は、励みになる結果を示したものの、多大な問題がまだ残っている。まず第1に、患者は、異なる作用物質が利用できるのでないかぎり連続した免疫抑制効果を妨げる遮断薬に対する免疫応答を発達させる可能性がある。第2に、標的抗原を発現する細胞は、免疫機能を保持しながら、抗原を発現するのを停止することによって遮断薬の存在に適応し得る可能性がある。この状況の下では、単一の免疫抑制物質での連続的な処置は有効でない。第3に、治療薬の多くの標的が複数の白血球亜型の上にあり、その結果、唯一の特異的細胞亜型の応答を選択的に遮断するか削除し、かくして感染性微生物と戦うための残留免疫能力を損なわずに残すことが一般に不可能となる。
【0008】
上述のことに基づき、免疫応答を抑制することのできる付加的な及び改良された作用物質、特に選択的抑制の能力をもつ作用物質に対するニーズが存在することは明らかである。本発明は、部分的には、活性化されたヒト CD4+ T−リンパ球の上に局在化された細胞レセプタを提供することによって、これらのニーズ及びその他のニーズを満たすものである。
【発明の概要】
【0009】
本発明の一実施態様においては、精製された ACT−4レセプタポリペプチドが提供されている。 ACT-4-h-1と呼ばれるこのような1つのポリペプチドのアミノ酸配列は、図5に示されている。 ACT−4レセプタポリペプチドは標準的には、 ACT-4-h-1アミノ酸配列に対する少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を示す。ポリペプチドは、以下のドメインのうち通常は少なくとも1つ、時として全てを含んでいる:シグナル配列、細胞内ドメイン、膜内外ドメイン及び細胞外ドメイン。数多くのポリペプチドは、それが活性化された CD4+T 細胞上に存在すること及び、休止T細胞上には実質的に不在であることを特徴とする。いくつかの全長ポリペプチドは、脱グリコシル化の前に約50KDa 、そしてその後には約27KDaの分子量をもつ。
【0010】
本発明は同様に、 ACT−4レセプタポリペプチドの細胞外ドメインも提供する。この細胞外ドメインは標準的には、少なくとも1つのジスルフィド結合ループを含み、時としてこのようなループを3つ含んでいる。細胞外ドメインは通常可溶性で、 ACT−4リガンドに対し特異的に結合することができる。時として細胞外ドメインは第2のポリペプチド例えば免疫グロブリン重鎖の定常領域に融合される。いくつかの細胞外ドメインは基本的に、L106と呼称される抗体によって特異的に結合されたエピトープから成る。
【0011】
本発明のもう1つの態様においては、 ACT-4-h-1レセプタポリペプチドに特異的に結合する抗体が提供されている。抗体は通常モノクローナル抗体である。このような抗体の1つの例が、L106と呼称されている。いくつかの抗体は CD4+T 細胞の活性化を阻害し、一方、その他の抗体はこれらの細胞の活性化を刺激する。本発明のいくつかの抗体は、 ACT−4−h−1レセプタポリペプチドに対する特異的結合のためL106抗体と競合し、これらの抗体のうちの大部分が同様に、活性化された CD4+ T細胞に対する特異的結合のためL106と競合する。本発明のその他の抗体は、L106抗体によって結合されるものとは異なるエピトープに対し特異的に結合する。同様に提供されているのは、 ACT-4-h-1レセプタポリペプチドに特異的に結合するL106抗体のフラグメントである。
【0012】
同様に提供されているのは、ヒト化された重鎖とヒト化された軽鎖を含む、ヒト化された抗体である。ヒト化軽鎖は、L106抗体軽鎖の対応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有し、かつヒト軽鎖可変領域枠組構造配列と実質的に同一の可変領域枠組構造配列をもつ、3つの相補性決定領域(CDR1,CDR2及びCDR3)を含む。ヒト化重鎖は、L106抗体重鎖の対応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有しかつヒト重鎖可変領域枠組構造配列と実質的に同一の可変領域枠組構造配列をもつ3つの相補性決定領域(CDR1,CDR2及びCDR3)を含む。ヒト化抗体は、L106抗体の結合親和力の3倍以内である結合親和力で、 ACT-4-h-1レセプターポリペプチドに対し特異的に結合する。
【0013】
もう1つの態様においては、本発明は、以上で論述されている ACT−4レセプタポリペプチドをコードする核酸フラグメントを提供する。このような核酸フラグメントの一例には、図5に示されている ACT-4-h-1レセプタをコードするヌクレオチド配列が含まれている。核酸フラグメントは、標準的には、図5の核酸配列に対する少なくとも80パーセントの配列同一性を示す。
【0014】
本発明は同様に、以上で論述した核酸フラグメントを含む分離された細胞系統をも提供する。細胞系統は通常は、その細胞表面上で ACT−4レセプタポリペプチドを発現する。核酸フラグメントが細胞系統のゲノム内に取り込まれた時のように、細胞系統のいくつかは安定している。
本発明は同様に、免疫抑制物質のスクリーニング方法をも提供する。 ACT-4-h-1レセプタポリペプチドが、潜在的免疫抑制物質と接触させられる。 ACT-4-h-1レセプタポリペプチド又はフラグメントと作用物質の間の特異的結合が次に検出される。特異的結合の存在は、免疫抑制活性を表示するものである。
【0015】
本発明は同様に、 ACT−4リガンドについてのスクリーニング方法も提供している。 ACT−4リガンドを含む生物標本が ACT-4-h-1レセプタポリペプチドと接触させられる。リガンドと ACT-4-h-1レセプタポリペプチドの間に1つの複合体が形成される。その後、複合体は解離され、リガンドが得られる。
もう1つの態様においては、本発明は、免疫疾患又は状態を患う患者の体内の免疫応答を抑制する方法を提供する。薬学組成物が治療上有効な用量だけ患者に投与される。薬学組成物は、 ACT-4-h-1レセプタポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体及び薬学的に活性な担体を含む。
【0016】
同様に提供されているのは、活性化された CD4+T 細胞を検出する方法である。患者からの組織標本が、 ACT-4-h-1レセプタポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体と接触させられる。モノクローナル抗体と組織標本の間の特異的結合が検出される。特異的結合の存在は、活性化された CD4+T 細胞の存在を明らかにする。活性化された CD4+T 細胞の存在は、往々にして免疫系の疾病又は状態の診断となる。
【0017】
同様に提供されているのは、選択された抗原に対する免疫応答を誘発する方法である。 ACT-4-h-1レセプタポリペプチドに特異的に結合し、 CD4+T 細胞の活性化を刺激するモノクローナル抗体が患者に投与される。患者は、選択された抗原に露呈される。
本発明に同様に、 ACT-4-h-1レセプタポリペプチドに特異的に結合する ACT−4リガンドをも提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、異なる細胞型に対する ACT-4-h-1の発現を分析するための末梢血リンパ球の2色染色を示す。
【図2】図2は、アロ抗原で活性化されたCD4+T 細胞上での ACT-4-h-1発現の動態を示す。 MCF=平均チャンネル螢光。
【図3】図3は、破傷風トキソイドで活性化された CD4+T 細胞上の ACT-4-h-1発現の動態を示す。
【図4】図4は、PHA で活性化された CD4+T 細胞上の ACT-4-h-1発現の動態を示す。
【0019】
【図5−1】図5−1は、ACT-4-h-1のcDNA(上部)及び演繹されたアミノ酸配列(下部)を示す。N末端シグナル配列、2つの考えられるシグナル分割部位(垂直矢印)および2つのグリコシル化部位(gly)の場所を示している。
【図5−2】図5−2は、ACT-4-h-1のcDNA(上部)及び演繹されたアミノ酸配列(下部)を示す。膜内外ドメイン(TM)および停止コドン及びポリ-A-シグナル配列の場所を示している。
【図5−3】図5−3は、ACT-4-h-1のcDNA(上部)及び演繹されたアミノ酸配列(下部)を示す。N末端シグナル配列、2つの考えられるシグナル分割部位(垂直矢印)および2つのグリコシル化部位(gly)の場所を示している。
【図5−4】図5−4は、ACT-4-h-1のcDNA(上部)及び演繹されたアミノ酸配列(下部)を示す。膜内外ドメイン(TM)および停止コドン及びポリ-A-シグナル配列の場所を示している。
【0020】
【図6】図6は、ACT-4-h-1を発現する安定したトランスフェクタントの産生のための発現ベクターの構築を示す。
【図7】図7は、COS−7、ジャーカット及びSP2/0細胞系統の安定したトランスフェクタント上の ACT-4-h-1の発現を示すFACSTM分析を示す。
【図8】図8は、組換え型グロブリンを形成するための免疫グロブリン重鎖定常領域と ACT-4-h-1細胞外ドメインの融合部を示す。
【図9】図9は、組換え型グロブリンを形成するための免疫グロブリン重鎖定常領域と ACT-4-h-1細胞外ドメインの融合から形成された組換えグロブリンの概略的トポグラフィ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定 義
天然に発生する20のアミノ酸についての略号は、従来の慣用法に従う(Immunology-ASynthesis(E. S. Golub & D. R. Gren. eds., Sinauer Associates, Sunderland, MA 、第2版、1991年)(あらゆる目的のため本書に参考として内含されている)。20の慣習的アミノ酸、α,α−2置換アミノ酸などの天然でないアミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸及びその他の非慣習的アミノ酸の立体異性体(例えばD−アミノ酸)も、本発明のポリペプチドに適切な成分でありうる。非慣習的アミノ酸の例としては、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリジン、ε−N−アセチルリジン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリジン、ω−N−メチルアルギニン及びその他の類似のアミノ酸及びイミノ酸(例:4−ヒドロキシプロリン)が含まれる。
【0022】
本書で使用されているポリペプチド表記法において、標準的慣用及び慣習に従って、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。同様に、相反する規定のないかぎり、1本鎖ポリヌクレオチド配列の左側端部は5′末端である;2本鎖ポリヌクレオチド配列の左手方向は5′方向として記されている。発生期のRNA 写しの5′→3′付加方向は、転写方向と呼ばれる。RNA と同じ配列をもちRNA 写しの5′末端まで5′である配列領域は「上流配列」と呼ばれる;RNA と同じ配列をもちRNA 写しの3′末端まで3′であるDNA ストランド上の配列領域は「下流配列」と呼ばれる。
【0023】
「ポリヌクレオチド配列」というのは5′から3′末端へ読みとられたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドのことである。これには、自己複製プラスミド、DNA 又はRNA の感染性重合体及び非機能的DNA 又はRNA が含まれる。
以下の用語は、2つ以上のポリヌクレオチドの間の配列関係を記述するのに使用される:「基準配列」、「比較ウインドウ」、「配列同一性」、「配列同一性の百分率」及び「実質的同一性」。「基準配列」は、配列比較のための基準として用いられる定義された配列である;基準配列は、例えば図5に示されているポリヌクレオチド配列といった配列リスト内に与えられた全長cDNA又は遺伝子配列の1セグメントとしての、より大きい配列のサブセットであってもよいし、或いは完全cDNA又は遺伝子配列を含んでいてもよい。
【0024】
一般に、基準配列は、長さが少なくとも20ヌクレオチドであり、頻繁に少なくとも25ヌクレオチドそして往々にして少なくとも50ヌクレオチドである。2つのポリヌクレオチドは各々、(1)2つのポリヌクレオチド間で類似している1つの配列(すなわち完全なポリヌクレオチド配列の一部分)を含み、かつ(2)2つのヌクレオチド間で相違する1つの配列をさらに含みうることから、2つ(又はそれ以上)のポリヌクレオチド間の配列比較は、標準的には、配列類似性の局所的領域を同定し比較するべく「比較ウインドウ」全体にわたり2つのポリヌクレオチドの配列を比較することによって行なわれる。
【0025】
ここで用いられている「比較ウインドウ」というのは、1つのポリヌクレオチド配列を少なくとも20の隣接するヌクレオチドの基準配列に比較することができかつ比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の部分には2つの配列の最適なアラインメントのため基準配列(付加や欠失を含まない)に比較した場合に20パーセント以下の付加又は欠失(すなわちギャップ)が含まれうる、少なくとも20の隣接するヌクレオチド位置の概念的セグメントのことである。
【0026】
比較ウインドウを整列させるための配列の最適なアラインメントは、Smith & Waterman, Appl. Math, 2 : 482 (1981) の局所的相同性アルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol. 48 : 443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズム、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85 : 2444 (1988)の類似性探索方法、これらのアルゴリズムのコンピュータ化された実現(FASTDB (Intelligenetics), BLAST (National Center for Biomedical Information)又はGAP, BESTFIT, FASTA 及びTFASTA (Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575, Science Dr., Madison, WI)) 、又は検査によって行なうことができ、さまざまな方法によって生成された最良のアラインメント(すなわち比較ウインドウ全体にわたり最高の配列類似性百分率を結果としてもたらすもの)が選択される。
【0027】
「配列同一性」という語は、2つのポリペプチド配列が比較ウインドウ全体にわたり同一である(すなわちヌクレオチド毎のベースで)ことを意味する。「配列同一性百分率」という語は、比較ウインドウ全体にわたり2つの最適に整列された配列を比較し、符合した位置の数を生成するべく両方の配列内で同一の核酸塩基(例えばA.T.C.G.U又はI)が発生する位置の数を決定し、比較ウインドウ内の合計位置数(すなわちウインドウサイズ)により符合した位置の数を除し、結果に100 を乗じて配列同一性の百分率を生成することによって計算される。
【0028】
ここで使用される「実質的同一性」という語は、少なくとも20のヌクレオチド位置、頻繁には少なくとも25〜50のヌクレオチドの比較ウインドウ全体にわたり基準配列に比較して少なくとも70, 80又は85パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90〜95パーセントの配列同一性、より普通には99パーセントの配列同一性をもつ1つの配列がポリヌクレオチドに含まれており、ここで比較ウインドウ全体にわたり合計で基準配列の20パーセント以下となる欠失又は付加を含みうるポリヌクレオチド配列に対し基準配列を比較することによって配列同一性の百分率が計算されている、ポリヌクレオチド配列の1つの特徴を表わしている。基準配列は、例えば、図5に示されている全長 ACT−4−h−1配列のセグメントとしての、より大きな配列のサブセットであってよい。
【0029】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な同一性」という語は、例えば省略時ギャップ重量を用いたプログラムBLAZE (Intelligenetics) GAP 又はBESTFIT によって最適に整列された時点で2つのペプチド配列が少なくとも70パーセント又は80パーセントの配列同一性、好ましくは少なくとも90パーセントの配列同一性、より好ましくは少なくとも95パーセント以上の配列同一性(例えば99パーセントの配列同一性)を共有していることを意味している。好ましくは、同一でない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。保存的アミノ酸置換というのは、類似の側鎖をもつ残基の互換性のことを言う。
【0030】
例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸のグループは、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシンである;脂肪族−ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループはセリン及びトレオニンである;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループはアスパラギン及びグルタミンである;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループは、フェニルアラニン、チロンシ及びトリプトファンである;塩基性側鎖をもつアミノ酸のグループは、リジン、アルギリン及びヒスチジンである;又、硫黄含有側鎖をもつアミノ酸のグループはシステイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換グループは;バリン−ロイシン・イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン及びアスパラギン−グルタミン、である。
【0031】
「実質的に純粋な」という語は、対象の種が、存在する優勢種である(すなわちモルベースでそれが組成物中のその他のどの個別種よりも豊富である)ことを意味し、好ましくは、実質的に精製された分画は、対象の種が、存在する全ての巨大分子種の少なくとも約50パーセント(モルベースで)を構成している組成物である。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全ての巨大分子種の約80〜90パーセント以上を構成することになる。最も好ましくは、対象の種は、完全な均質性にまで精製され(従来の検出方法で組成物内に汚染種を検出することはできない)、ここで組成物は本質的に単一の巨大分子株から成る。
【0032】
ここで対象物に適用して用いられている「自然に発生する」という語は、その対象物が自然の中に発見できるという事実を言う。例えば、自然の中の供給源から分離でき、実験室で人が意図的に修飾しておらず、1つの生体(ウイルスを含む)の中に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチドは、「自然に発生する」ものである。
【0033】
「エピトープ」という語は、免疫グロブリン又はT細胞レセプタに対し特異的に結合することのできるあらゆるタンパク質決定因子を内含する。特異的結合は、抗原に対する抗体結合のための解離定数が1μM以下、好ましくは100nM 以下、最も好ましくは1nM以下であるときに存在する。エピトープ決定因子は通常、アミノ酸又は糖側鎖といった分子の化学的に活性な表面の群化から成り、通常特異的な3つの寸法上の構造特性ならびに特異的負荷特性を有する。
【0034】
ここで使用する「高等同起源変異体」という語は、霊長類、ブタ及びウシといった高等哺乳動物種とヒトの間で進化上及び機能上関連性がある遺伝子配列のことを言う。この語には、ラットといったげっ歯類からの遺伝子配列は含まれていない。従って、 ACT-4-h-1遺伝子に対する同起源の霊長類遺伝子は、 ACT-4-h-1レセプタタンパク質に対する最大の配列同一性度をもち ACT-4-h-1タンパク質のものに類似した発現パターン(すなちわ活性化された CD4+ 細胞上で発現されたもの)を示す発現されたタンパク質をコードする霊長類遺伝子である。
「患者」という語には、ヒト及び獣医の対象も含まれる。
【0035】
詳細な説明
I. ACT−4レセプタポリペプチド
本発明の1実施態様に従うと、活性化された CD4+ T細胞の表面上のレセプタ( ACT−4レセプタと呼ぶ)及びそのフラグメントが提供される。 ACT−4レセプタポリペプチドという語は、包括的に全長レセプタ及びそのフラグメントを包含するものとして使用されている、特徴づけすべき最初の ACT−4レセプタ(以下 ACT−4−h−1と呼ぶ)のアミノ酸配列は、図5に示されている。
【0036】
接尾辞−hは、ヒト由来を表わし、接尾辞−1は ACT-4-h-1が特徴づけすべき最初の ACT−4レセプタであることを表わしている。 ACT−4レセプタという語は、図5に示されている配列をもつタンパク質のことを指すだけではなく、 ACT-4-h-1の対立、非対立及び高等同起源の変異体を表わすその他のタンパク質及びそのいずれかの天然の又は誘発された突然変異体のことも意味する。通常、 ACT−4レセプタポリペプチドは、同様に、 ACT−4−h−1配列と実質的な配列同一性を示すことになる。標準的には、 ACT−4レセプタポリペプチドは、 ACT-4-h-1配列からの少なくとも4つ、より一般的には5,6,7,10又は20,50以上の隣接アミノ酸を含むことになる。当該技術分野においては、結合ドメイン又はエピトープといった機能的ドメインが4つという少ないアミノ酸残基から形成され得る、ということは周知のことである。
【0037】
ACT−4レセプタポリペプチドは標準的には、 ACT-4-h-1のアミノ酸配列と実質的アミノ酸配列同一性を示し、図5に示されている ACT-4-h-1をコードするヌクレオチド配列と実質的な配列同一性を示すヌクレオチド配列によってコードされることになる。 ACT−4レセプタタンパク質をコードするヌクレオチドは同様に、標準的には緊縮条件下で ACT-4-h-1配列にハイブリッド形成する。しかしながら、これらのヌクレオチドは、Mallet et al., EMBO. J. 9 : 1063-68 (1990)(あらゆる目的で本書に参考として内含されている)により記述されている通り、OX−40レセプタをコードする核酸に対し緊縮条件下でハイブリッド形成しない。(特にMallet et al. の参考文献の表2Aを参照のこと)。緊縮条件は配列依存性で、異なる状況下で異なるものとなる。
【0038】
一般に、緊縮条件は、規定のイオン強度及びpHで特定の配列について熱融点(Tm)よりも約5℃低く選択される。Tmは、標的配列の50%が完全に符合したプローブに対しハイブリッド形成する温度(規定のイオン強度及びPh下で)である。標準的には、緊縮条件は、塩濃度がPh7で少なくとも約0.02モルであり温度が少なくとも約60℃である条件となる。なかでも相補的ストランドの塩基組成及びサイズ、有機溶剤の存在及び塩基ミス対合の程度を含むその他の要因がハイブリダイゼーションの緊縮性に大きく影響することから、パラメータの組合せは、いずれか1つのパラメータの絶対的測定よりも重要である。
【0039】
通常、 ACT−4レセプタポリペプチドは ACT-4-h-1と少なくとも1つの抗原決定因子を共有するが、ラットOX−40ポリペプチドに対する抗体とは特異的に反応しない。共通の抗原決定因子の存在は、 ACT-4-h-1に対して調製されたあらゆる抗体との変異体タンパク質の交叉反応性によって証明される(第IV節参照)。交叉反応性は往々にして ACT-4-h-1に対するポリクローナル血清を用いてテストされるが、L106と呼称される抗体のような ACT-4-h-1に対する単数又は複数のモノクローナル抗体を用いてテストできる。
【0040】
往々にしてATC−4レセプタポリペプチドは、修飾されたポリペプチドバックボーンを含むことになる。修飾には、アセチル化、カルボキシル化などといったポリペプチドの化学的誘導体化が含まれる。これらには同様にグリコシル化修飾(N及びO連鎖)及び標準的ポリペプチドの変異体の処理も含まれる。これらの処理段階は、特定的にはユビキチン化及びリン酸化といった酵素的修飾を含む。例えばHershko & Chiechanover, Ann. Rev. Bioch. 51 : 335-364 (1982) を参照のこと。例えば ACT-4-h-1タンパク質は、アミノ酸配列に基づいて予想された分子量がわずか27KDa であるのに対して観察された分子量が約50KDa であるという点で大幅に修飾されている。2つの推定上のグリコシル化部位がその細胞外ドメイン内で同定された。
【0041】
ACT−4レセプタは、 ACT-4-h-1について見られたトポロジー上の特長の一部又は全てを共有している可能性がある。 ACT-4-h-1のためのアミノ酸配列には、22又は24個のアミノ酸推定N末端シグナル配列が含まれている。24のアミノ酸配列は、von Heijne, Nucleic Acids Res. 14 : 4683-4690 (1986)の基準に基づいている確率の方が高いと思われる(これはあらゆる目的で本書に参考として内含されている)。ACT-4-h-1レセプタは、残基 213〜240 にわたる27個のアミノ酸の単一の付加的な疎水性の広がりを内含している。この疎水性の広がりは、恐らく膜内外ドメインに対応し、その存在は、 ACT-4-h-1がI型の細胞膜内タンパク質である(すなわち、細胞外領域を含むN末端ドメインと細胞内領域を含むC末端を伴う単一の膜内外ドメインを有する)ことと一貫性をもつものである。
【0042】
膜内外セグメントに対しアミノ近位にある ACT-4-h-1の 189個又は 191個のアミノ酸(シグナル分割部位の正確な場所に応じて異なる)は細胞外ドメインと呼ばれ、一方膜内外セグメントに対してカルボキシ近位の37個のアミノ酸は、細胞内ドメインと呼ばれる。アミノ末端から、細胞外ドメインは、NH2 末端疎水性推定シグナル配列を1つと、対合したシステイン残基の間のジスルフィド結合によって形成された3つの鎖内ループを有している。
【0043】
ACT−4レセプタポリペプチドのトポロジー配置は、神経成長因子レセプタファミリーのその他のメンバーのもの、特にラットOX−40レセプタと類似している。しかしながらその他のメンバーは、細胞外ジスルフィドループ及びグリコシル化部位の数及び細胞内ドメインのサイズにおいて幾分かの相違を示している。 Mallet & Barclay、前掲書、を参照のこと。
【0044】
上述のドメインの全てが必ずしも全ての ACT−4レセプタポリペプチドの中に存在するわけではないが、大部分のものの中に1つの細胞外ドメインが存在するものと予想される。実際、いくつかの ACT−4レセプタポリペプチドにおいては、細胞外ドメインのみが存在する可能性があり、このようなタンパク質の自然の状態は、細胞表面結合タンパク質としてではなく、例えば細胞外体液内に分散した可溶性タンパク質としてである。可溶性変異体形態の存在は、神経成長因子レセプタファミリー SFV−T2の1つのメンバーを含むその他の細胞表面レセプタについて観察されてきた。 Mallet & Barclayの前掲書を参照のこと。
【0045】
実質的に全長のポリペプチドの他に、本発明はポリペプチドの生物学的に活性なフラグメントを提供する。有意な生物活性としては、レセプタ結合、抗体結合(例えば、フラグメントが抗体への特異的結合について無傷の ACT−4レセプタと競合する)、免疫原性(すなわち、フラグメントに対するB又はT細胞応答を刺激するエピトープの所有)及び ACT−4レセプタポリペプチドのそのリガンドに対する結合のアゴニズム又はアンタゴニズム(拮抗作用)が含まれる。 ACT−4レセプタタンパク質のセグメント又はそのドメインは通常、約5,7,9,11,13,16,20,40又は100 個の隣接アミノ酸を含むことになる。
【0046】
ACT−4レセプタポリペプチドのセグメントは往々にして、機能的又は構造的ドメインの境界の近くで終結されている。構造的及び機能的ドメインは、図5に示されているようなヌクレオチド及び/又はアミノ酸配列データを公共の又は所有権を主張できる配列データベースと比較することによって、同定される。好ましくは、既知の構造及び/又は機能をもつその他のタンパク質の中で起こる配列モチーフ又は予測されたタンパク質コンホーメーションドメインを同定するためには、コンピュータ化された比較方法が使用される。構造的ドメインには、それ自体3つのジスルフィド結合ループを含む細胞外ドメイン、膜内外ドメイン及び細胞内ドメインが含まれている。機能的ドメインは、 ACT−4レセプタポリペプチドがそれを通して外部可溶性分子又はその他の細胞結合リガンド及び細胞内シグナル形質導入ドメインと相互作用する細胞外結合ドメインを含んでいる。
【0047】
いくつかのフラグメントは、単数又は複数のジスルフィド結合ループといった細胞外ドメインのみを含むことになる。このようなフラグメントは往々にして無傷の ACT−4レセプタポリペプチドの結合特異性を保持することになるが、膜結合されるのではなくむしろ可溶性となる。かかるフラグメントは、 ACT−4レセプタ結合の競合的阻害物質として役立つ。
【0048】
ACT−4レセプタはさらに、神経成長因子レセプタファミリのメンバーとしてのその状態によって識別される。 ACT-4-h-1のアミノ酸配列は、少なくとも20% NGF−R, TNF−R,CD40,4−1BB及び fas/AP01と同一である。ACT-4-h-1は、同様に活性化CD4+ 細胞上の選択的発現によって特徴づけられるラットOX−40遺伝子との62%のアミノ酸配列同一性を示す。
【0049】
ACT−4レセプタは同様に特徴的細胞分布によっても同定される。最も特記すべきことに、 ACT−4レセプタは通常、活性化された CD4+T 細胞上で容易に検出される(発現する細胞百分率は通常約25%又は50%以上、往々にして約80%以上;平均チャンネル螢光は通常、免疫螢光染色後Coulter プロフィールフローサイトメーター上で約10以上、往々にして約20〜25)。ACT−4レセプタは通常、休止T細胞、B−細胞(PMAで活性化されたのでないかぎり)、NK細胞及び単球(PMAで活性化されたのでないかぎり)上では実質的に不在である。実質的に不在というのは、ACT−4を発現する細胞の百分率が一般的に約5%未満、更に一般的に約2%未満であり、平均チャンネルが、細胞の免疫螢光染色の後Coulter プロフィールフローサイトメータで測定した場合、一般的に4未満、さらに一般的には約2未満であることを意味している(例2を参照のこと)。
【0050】
ACT−4レセプタは通常、活性化されたCD8+ 細胞上で低レベルで発現される(発現細胞百分率は約4〜10%;免疫螢光染色後Coulterプロフィールフローサイトメータ上での平均チャンネル螢光は約2〜4)。CD8+ 細胞上に見られる低い発現レベルは、発現が CD8+ 細胞の亜集団に制限されていることを示唆している。活性化された CD4+ 細胞の表面上のACT4レセプタの発現は、アロ抗原、破傷風トキソイド又はマイトジュン(例えばPHA)刺激を含むいくつかのさまざまな活性化メカニズムについて観察されてきた。発現は、アロ抗原又は破傷風トキソイド刺激から約7日後に、又PHA 刺激から約3日後にピークになる。
【0051】
これらのデータは、休止細胞上では実質的に不在である早期活性化抗原として ACT−4レセプタを分類すべきであるということを示している。 ACT−4レセプタが活性化された CD4+ 細胞上で優先的に発現され、活性化された CD8+ 細胞上でははるかに低い程度でしか発現されないが、(PMAなどのきわめて非生理的な刺激に応答しての場合を除いて)リンパ球様細胞の大部分又は全てのその他の亜型上では実質的に不在であるという観察事実は、ヒト白血球上で見られるその他の活性化抗原の細胞型特異性と対照的である。
【0052】
活性化された CD4+T 細胞の表面上の ACT−4レセプタの発現は、レセプタがこれらの細胞の活性化において1つの役割を果たしていることを示唆している。このような役割は、神経成長因子レセプタファミリーのその他のいくつかのメンバーの役割と一貫性あるものである。例えば、CD40は、Bリンパ球内のG1−S相転移を刺激し、神経成長因子レセプタは、サイトカイン神経成長因子からのシグナルを形質導入し、その結果、神経細胞の分化及び存続がもたらされる(Barde, Y-A。Neuron 2:1525〜1534 (1989))。(あらゆる目的のため本書に参考として内含されている)。しかしながら、例えばその他のリンパ球様細胞型との相互作用といった ACT−4レセプタに対するその他の役割も考慮することができる。かかる役割の存在は、腫瘍壊死因子レセプタと相互作用して炎症又は腫瘍細胞死滅という結果をもたらし得る腫瘍壊死因子といったその他の神経成長因子レセプタのさまざまな機能と一貫したものである。
【0053】
ACT−4レセプタの実質的に1つ以上の機能的ドメイン(例えば細胞外ドメイン)を含むフラグメント又は類似体を、非相同ポリペプチド配列に融合させ、かくして結果として得られた融合タンパク質が ACT−4レセプタフラグメント及び/又は融合パートナーによって付与される機能的特性(単数又は複数)を示すようにすることが可能である。融合パートナーに対する ACT−4レセプタフラグメントの配向は、構築の容易さ、タンパク質分解に対する安定性、熱安定性、免疫学的反応性、アミノ−又はカルボキシル末端残基の修飾、などといった実験上の考慮事項によって左右されることになる。潜在的融合パートナーには、β−ガラクトシダーゼといった色素産生酵素、タンパク質A又はG, Blanar & Rutter, Science 256 : 1014-1018 (1992) によって記述されているようなFLAGタンパク質、毒素(例えばジフテリア毒素、シュードモナスエクトトキシンA、リシン毒素又はホスホリパーゼC)及び免疫グロブリン成分が含まれる。
【0054】
ACT−4レセプタフラグメントと免疫グロブリン成分の融合によって形成される組換え型グロブリン(Rg)は、往々にして、使用される特定の免疫グロブリンのクラスの定常領域と結びつけられる生理的特性の大部分又は全てを有する。例えば、組換え型グロブリンは、補体を固定し、抗体依存性細胞毒性を媒介し、B細胞を刺激し、又は血管壁を横断し、かつ間質空間に進入することができる。組換え型グロブリンは通常、重鎖免疫グロブリンの定常領域ドメインのN末端に対して ACT−4レセプタ細胞外ドメインのC末端を融合し、かくして真正の免疫グロブリン鎖のコンホーメーションを刺激することによって形成される。
【0055】
免疫グロブリン鎖は、好ましくは、特に組換え型グロブリンが治療目的で使用される場合に、ヒト由来のものである。組換え型グロブリンは通常可溶性であり、未修飾 ACT−4レセプタに比べ数多くの有利な特性をもつ。これらの特性としては、血清半減期の延長;エフェクタ機能による。 ACT−4レセプタが親和力をもっている標的細胞を溶解させる能力;そして結合分析において組換え型グロブリンを固定化するのに使用できるプロテインA及びGといった分子を結合する能力、が含まれる。
【0056】
II.ポリペプチド産生方法
A.組換え技術
図5に示されている ACT-4-h-1のヌクレオチド及びアミノ酸配列及び上述の第III 節で記述されている通りに得られたその他の ACT−4レセプタについての対応する配列は、全長 ACT−4レセプタポリペプチド配列のポリペプチド及びそのフラグメントの産生を可能にする。かかるポリペプチドは、 ACT−4レセプタをコードするポリヌクレオチド又はそのフラグメント及び類似体の発現により、原核生物又は真核生物宿主の細胞の中で産生されうる。
【0057】
クローニングされたDNA 配列は、発現ベクター内で発現抑制配列に対して配列が作動的に連鎖された(すなわちこの配列の機能を確保するよう位置づけされた)後、宿主内で発現される。発現ベクターは、標準的にはエピソームとしてか又は宿主染色体DNA の一部として宿主生体の中で複製可能である。一般に、発現ベクターは、望ましいDNA配列で形質転換された細胞の検出及び/又は選択を可能にするべく、例えばテトラサイクリン耐性又はハイグロマイシン耐性といった選択マーカーを内含している(例えば米国特許 4,704,362号参照)。
【0058】
大腸菌(E. coli)は、本発明のDNA 配列をクローニングするために有用な1つの原核生物宿主である。使用に適したその他の微生物宿主としては、バシルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)といったバシラス属及びサルモネラ(Salmonella)、セラチア(Serratia)及びさまざまなシュードモナス(Pseudomonas)の種などのその他の腸内細菌科が含まれる。これらの原核生物宿主においては、標準的に宿主細胞と相容性ある発現抑制配列(例えば複製起点)を含む発現ベクターを作ることもできる。さらに、ラクトースプロモータ系、トリプトファン(trp)プロモータ系、ベーターラクタマーゼプロモータ系又はファージラムダからのプロモータ系といった、任意の数のさまざまな周知のプロモータが存在することになる。プロモータは標準的に、任意にはオペレータ配列と共に発現を制御し、転写及び翻訳を開始及び完了するためリボソーム結合部位配列などを有する。
【0059】
酵母といったその他の微生物も、発現のために使用することができる。サッカロミセス(Saccharomyces)が好ましい宿主であり、適切なベクターは、3−ホスフォグリセレートキナーゼ又はその他の解糖酵素を含むプロモータ及び望まれる通りに複製起点、終結配列などといった発現抑制配列を有している。 ACT−4レセプタ又はリガンドポリペプチドを発現するためには、通常バキュロウイルスから誘導される適切なベクターを伴う昆虫細胞(例、SF9)も同様に適している。 Luckow et al. Bio/Technology 6 : 47-55 (1988) (あらゆる目的のため参考として内含されている)を参照のこと。
【0060】
同様に、本発明のポリペプチドを発現し産生するのに、高等真核哺乳動物組織細胞培養も使用することができる(Winnacker 「遺伝子からクローンへ」(VCH Publishers, NY, NY, 1987) を参照のこと)(あらゆる目的のため参考として内含されている)。当該技術分野においてヒトタンパク質を分泌し真正に修飾することのできる数多くの適当な宿主細胞系統が開発されてきたため、現在のところ真核生物細胞が好まれており、これには、CHO 細胞系統、さまざまなCOS 細胞系統、HeLa細胞、骨髄腫細胞系統、ジャーカット細胞などが含まれる。
【0061】
これらの細胞の発現ベクターは、複製起点、プロモータ(例えばHsv tkプロモータ又はpgk(ホスホグリセレートキナーゼ)プロモータ)、エンハンサー(Queen et al., Immunol. Rev.89 : 49 (1986)) 及び、リボソーム結合部位、RNA スプライス部位、ポリアデニル化部位(例えばSV40大TAg poly A付加部位)などの必要な処理情報部位といった発現抑制配列、及び転写ターミネーター配列を含んでいる可能性がある。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルスなどから誘導されたプロモータである。
【0062】
問題のDNA セグメントを含むベクター(例えば ACT−4レセプタをコードするポリペプチド)は、細胞宿主のタイプによって変わる周知の方法によって宿主の中に移入することができる。例えば、原核生物細胞のためには一般にCaCl2 トランスフェクションが利用され、一方その他の細胞宿主については、CaPO4 処理又は電気穿孔法を使用することができる。ベクターはエピソームとして存在してもよいし又は、宿主染色体の中に組込まれてもよい。
【0063】
B.自然に発生する ACT−4レセプタタンパク質
天然の ACT−4レセプタポリペプチドは、アフィニティクロマトグラフィといった従来の技術により分離される。例えば、予め精製された ACT-4-h-1に対してポリクローナル又はモノクローナル抗体が発生させられ、周知の技術によって適切なアフィニティカラムに付着される。例えば Hudson & Hay, Praetical Immunology(実践免疫学)(Blackwell Scientific Publications, Oxford, UK, 1980)、第8章(あらゆる目的のため参考として内含されている)を参照のこと。
【0064】
例えば、ジメチルピメリミデートといったホモ2機能性架橋剤でのFcドメインの架橋を介してプロテインAセファロースカラムに抗−ACT-4-h-1を固定化することができる。次に細胞抽出物をカラム内で通過させ、 ACT−4レセプタタンパク質をカラムによって特異的に結合させ、例えばpH2.5 の 0.5Mの発熱性酸で溶出させる。通常、このような分離技術によって、無傷の形のACT レセプタが得られる。無傷の分子の化学的(例えば臭化シアン)又は酵素的分割(例えばV8プロテアーゼ又はトリプシン)により、無傷の ACT−4レセプタからペプチドフラグメントが生成される。
【0065】
C.その他の方法
代替的には、 ACT−4レセプタポリペプチドを、化学的方法によって合成することもできるし、或いは、翻訳を導くべくポリヌクレオチド鋳型を用いてインビトロ翻訳システムによって産生することもできる。ポリペプチドの化学的合成及びインビトロ翻訳の方法は当該技術分野において周知のものであり、 Berger & Kimmel, Methods in Eugymology(酵素学方法)、第 152巻、Gruide to Molecular Cloning Techniques(分子クローニング技術の指針)Academic Press Inc., San Diego, CA, 1987) によってさらに記述されている。
【0066】
III .核酸
A.ACT−4レセプタ核酸のクローニング
例5は、 ACT-4-h-1と呼ばれる ACT−4レセプタのcDNAクローンについての核酸配列データを示す。配列には、翻訳された領域及び3′及び5′フランキング領域の両方が含まれる。この配列データは、その他の ACT−4レセプタ遺伝子を分離するために用いられるプローブを設計するのに使用することができる。これらの遺伝子には、 ACT-4-h-1をコードするヒトゲノミック遺伝子及び高等哺乳動物種からのcDNA及びゲノミッククローン、及び対立及び非対立変異体、そしてこれらの遺伝子全ての天然の及び誘発された突然変異体が含まれる。
【0067】
特定的には、本出願で開示されている全ての ACT−4レセプタポリペプチドをコードする全ての核酸フラグメントが提供される。数多くの種のゲノミックライブラリが市販されており(例えばClontech, Palo Alto, CA)、又従来の手順によってこれを改めて分離することも可能である。cDNAライブラリは、大量に ACT-4-h-1を発現する活性化された CD4+ 細胞から最もうまく調製される。
【0068】
クローンを分離するために使用されるプローブは、標準的には、図5に示されているcDNA配列の少なくとも約24の隣接するヌクレオチド(又はその補体)の配列を含んでいる。例えば、図5に示されている配列に対応する全長ポリヌクレオチドを標識付けし、例えばλEMBL4又はλGEM11 内のヒトゲノミッククローンライブラリ(Promega Corporation, Madison, WI) からゲノミッククローンを分離するためのハイブリダイゼーションプローブとしてこれを使用することができる;プラークリフトをスクリーニングするための標準的なハイブリダイゼーション条件(Benton & Davis, Science 196 :180 (1978)) は、50%のホルムアミド、5×SSC 又はSSPE,1〜5×のDenhardt溶液、 0.1〜1%のSDS, 100〜200 μgのせん断された非相同DNA 又はtRNA,0〜10%の硫酸デキストラン、約1〜108cpm/μgの比活性をもつ1×105〜1×107cpm/mlの変性プローブ及び約6〜36時間42℃でのインキュベーションである。
【0069】
予備ハイブリダイゼーション条件は、プローブが内含されておらずインキュベーション時間が標準的に短縮されているという点を除いて、基本的に同一である。洗浄条件は、標準的に1〜3×のSSC, 0.1〜1%のSDS,50〜70℃で、約5〜30分毎に洗浄溶液を交換する。ハイブリダイゼーション及び洗浄の条件は、例えば ACT-4-h-1のヒトゲノミッククローンについてよりも、高等同起源又は非対立変異体の分離についての方が、標準的に緊縮性が低い。
【0070】
代替的には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を利用する方法によって ACT−4レセプタ遺伝子をクローニングするのにプローブを使用することができる。PCR 増幅のための方法は、例えば、PCR 技術:DNA 増幅のための原理と応用(H. A. Erlich編、Freeman Press, NY, NY, 1992);PCR プロトコル;方法及び応用の指針(eds. Innis, et al., Academic Press, San Diego, CA, 1990) ; Mattila etal., Nucleic Acids Res. 19 : 4967 (1991) ; Eckert, K. A.及びKunkel, T. A., PCRの方法と応用1:17(1991) ; PCR (Mc Pherson et al 編、IRL Press, Oxford);及び米国特許 4683202号(その各々が、あらゆる目的のため本書に参考として内含されている)の中で記述されている。
【0071】
あるいは、図5に示されている配列の全部又は一部分に対応する合成ポリヌクレオチド配列を、オリゴヌクレオチドの化学的合成によって構築することができる。
【0072】
本発明のポリヌクレオチド内に、ヌクレオチドの置換、欠失及び付加を取り込むことができる。ヌクレオチド配列の変動は、遺伝子コードの縮重、さまざまな ACT−4レセプタ対立遺伝子の配列多形、わずかな配列決定ミスの結果としてもたらされることもあれば、EMS に対する露呈又は照射を用いたコーディング核酸の無作為突然変異誘発又は部位特異的突然変異又はその他の近代分子生物学技術によって工学処理された変化によって導入されることもある。
【0073】
Sambrook et al.,分子クローニング;実験室マニュアル(C. S. H. P.Press, NY 、第2版、1989) (あらゆる目的のため本書に参考として内含されている)を参照のこと。機能的ポリペプチドを産生するため転写及び翻訳され得るヌクレオチド配列については、遺伝子コードの縮重は、同じポリペプチドをコードする数多くのヌクレオチド配列を結果としてもたらす。本発明はこのような配列を全て含んでいる。一般に、ヌクレオチドの置換、欠失及び付加によって、緊縮性条件の下で図5に示されている ACT-4-h-1の配列をハイブリッド形成する ACT−4レセプタポリヌクレオチドの能力が実質的に分断されてはならない。
【0074】
標準的には、 ACT−4レセプタポリヌクレオチドは、自然に発生する ACT−4レセプタ配列(例えば図5)と実質的に同一のものである少なくとも25個の連続的ヌクレオチドを含み、より通常には、 ACT−4レセプタポリヌクレオチドは、自然に発生する ACT−4レセプタ配列と実質的に同一のものである少なくとも50〜100 の連続的ヌクレオチドを含んでいる。
【0075】
ACT−4レセプタヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションプローブ及びPCR(又はLCR)プライマとして使用するためのものといった短かいオリゴヌクレオチド(例えば、図5に示されている ACT-h-1配列からの約10, 15, 25, 50又は 100個の隣接する塩基)であり得る。 ACT−4レセプタポリヌクレオチド配列は同様に、コードされたポリペプチド産物が産生されるように、コーディング配列の転写(発現配列)及び翻訳を容易にする配列を含むより大きなポリヌクレオチドの一部分をも含む可能性がある。
【0076】
かかるポリヌクレオチドの構築は、当該技術分野において周知のことであり、Sambrook et al.,前掲書中(C. S. H. P. Press. NY 、第2版、1989)でさらに詳しく説明されている。 ACT−4レセプタポリヌクレオチドは、融合タンパク質の発現をコードするため異なるタンパク質(例えばグルタチオンS−トランスフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ又は免疫グロブリンFcドメイン)をコードするもう1つのポリヌクレオチド配列と同一枠で融合され得る。(例えばByrn et al., Nature, 344 : 667-670 (1990) を参照のこと)(あらゆる目的のための本書中に参考として内含されている)。
【0077】
IV.抗体とハイブリドーマ
本発明のもう1つの実施態様においては、 ACT−4レセプタ及びそのリガンドに対する抗体(第V節参照)が提供されている。
【0078】
A.抗体の一般的特性
抗体及び免疫グロブリンは標準的に4つの共有結合したペプチド鎖で構成されている。各々の軽鎖は、重鎖に共有結合されている。又、各重鎖の方は、もう一つのものに共有結合されて、免疫グロブリンコンホーメーションとしても知られている「Y」字形構造を形成する。これらの分子のフラグメント、さらには重鎖又は軽鎖単独でも、抗原を結合させることができる。抗体、抗体フラグメント及び個々の鎖は、本書で免疫グロブリンとも呼ばれている。
【0079】
正常な抗体重鎖又は軽鎖は、N末端(NH2)可変(V)領域及びC末端(−COOH)定常(C)領域を有する。重鎖可変領域は、VH (例えばVγを含む)と呼ばれ、軽鎖可変領域はVL(VK 又はVλを含む)と呼ばれる。可変領域は、抗体の同起源抗原に結合する分子の一部であり、一方Fc領域(C領域の第2及び第3のドメイン)は抗体のエフェクタ機能(例えば補体固定、オプソニン化作用)を決定する。全長免疫グロブリン又は抗体「軽鎖」(一般に約25KDa、約214 のアミノ酸)は、N末端にある可変領域遺伝子(一般に約110 のアミノ酸)及びCOOH末端にあるκ(カッパ)又はλ(ラムダ)定常領域遺伝子によりコードされる。
【0080】
全長免疫グロブリン又は抗体「重鎖」(一般に約50Kd、約446 のアミノ酸)は、同様にして、可変領域遺伝子(一般に約116 のアミノ酸をコードする)及び例えばガンマといった定常領域遺伝子の1つ(約330 のアミノ酸をコードする)によってコードされる。標準的には、「VL」は、VL 及び/又はJL (J又はジョイニング領域)遺伝子セグメントによってコードされる軽鎖の一部分を含むことになり、「VH」は、VH 及び/又はDH (D又はダイバーシチ領域)及びJH 遺伝子セグメントによりコードされる重鎖の一部を含むことになる。一般にRoitt et al., Immunolog(免疫学)(第2版、1989)、第6章及びPaul, Fundamental Immunology(基礎免疫学)(Raven Press 、第2版、1989)(各々、あらゆる目的のため本書に参考として内含されている)を参照のこと。
【0081】
免疫グロブリン軽鎖又は重鎖可変領域は、相補性決定領域又はCDR とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断された「枠組み構造」領域で構成されている。枠組み構造領域及びCDR の範囲は、定義づけされている(Kabat et al, (1987) 、「免疫学的に有利なタンパク質の配列」米国保健社会福祉省;Clothia et al., J. Mol. Biol. 196 : 901-917 (1987)(その各々が本書にあらゆる目的のため参考として内含されている)を参照のこと。異なる軽鎖又は重鎖の枠組み構造領域の配列は、1つの種の中で比較的保存されている。構成要素の軽鎖及び重鎖の組合わさった枠組み構造領域である抗体の枠組み構造領域は、3次元空間内にCDR を位置づけ整列させるのに役立つ。CDR は、まず第1に抗原のエピトープに対する結合を担っている。CDR は標準的に、N末端から始め順に番号づけされたCDR1,CDR2及びCDR3と呼ばれている。
【0082】
CH としても知られている重鎖分子の定常領域は、抗体のイソタイプを決定する。抗体は、重鎖イソタイプに応じてIgM, IgD, IgG, IgA及びIgE と呼ばれている。イソタイプは、それぞれ重鎖定常領域のミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε)セグメントの中でコードされる。さらに、γ亜型がいくつか存在する。軽鎖としてはκとλの2つの型がある。これらの亜型の決定因子は標準的に、一般にCL とも呼ばれている、特にCκ又はCλという軽鎖の定常領域の中にある。
【0083】
重鎖イソタイプは、オプソニン化作用又は補体固定といった抗体の異なるエフェクター機能を決定する。さらに、重鎖イソタイプは抗体の分泌された形態を決定する。分泌されたIgG, IgD及びIgE イソタイプは標準的に、単一ユニット又は単量体形態で発見される。分泌されたIgM イソタイプは、五量体形態で見い出される。分泌されたIgA は、単量体及び2量体の両方の形で見い出される。
【0084】
B.抗体の産生
ACT−4レセプタ、それに対するリガンド又はそのいずれかの結合フラグメントのいずれかを結合させる抗体は、さまざまな手段で産生できる。マウス、ラットなどのヒト以外のモノクローナル抗体の産生は、周知のことであり、例えば、 ACT−4レセプタ又はそのリガンド又はこれらのいずれかの免疫原性フラグメントを含む調製物で動物を免疫することによって達成できる。特に免疫原として有用なのは、 ACT−4レセプタ遺伝子で安定した形でトランスフェクションを受けその細胞表面上で ACT−4レセプタを発現する細胞である。免疫された動物から得られる抗体産生細胞は、不死化され、 ACT−4レセプタ又はそのリガンドに結合する抗体の産生についてスクリーニングされる。 Harlow & Lave 、「抗体、実験室マニュアル」(C. S. H. P NY, 1988)(あらゆる目的のため本書に参考として内含)を参照のこと。
【0085】
ヒトモノクローナル抗体の生成のためのいくつかの技術も同様に記述されてきたが、一般にマウス技術よりもわずらわしく、全ての抗原に適用できるものではない。再考のためには、例えばLarricket al.米国特許第 5,001,065号を参照のこと(あらゆる目的のため本書に参考として内含)。さまざまな抗原に対するヒトモノクローナル抗体を生成するのに使用され成功をおさめてきた1つの技術は、(あらゆる目的のため本書に参考として内含されている)Ostberg et al のトリオーマ方法(1983)、ハイブリドーマ2:361-367, Ostberg、米国特許第 4,634,664号及びEngleman et al.,米国特許第 4,634,666号である。この方法によって得られた抗体産生細胞系統は、ヒトのもの2つとマウスのもの1つの計3個の細胞の子孫であることからトリオーマと呼ばれる。トリオーマは、ヒト細胞から作られた普通のハイブリドーマよりも安定した形で抗体を産生するものであることがわかっている。
【0086】
1つの代替的アプローチは、組換え型DNA 技術によりヒト以外の抗体のCDR 領域をヒトの定常領域に連鎖させることによるヒト化された免疫グロブリンの生成である。Queen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86 : 10029-10033 (1989)及びWO90/07861(あらゆる目的のため参考として内含)を参照のこと。ヒト化された免疫グロブリンは、実質的にヒト免疫グロブリン(受容体免疫グロブリンと呼ばれる)からの可変領域枠組み構造残基、及び実質的に例えばL106抗体といったマウス免疫グロブリン(供与体免疫グロブリンと呼ばれる)からの相補性決定領域を有する。定常領域が存在する場合、これも同様に実質的にヒト免疫グロブリンからのものである。
【0087】
ヒト可変領域は通常、CDR が誘導されたマウス可変領域ドメインと高度の配列同一性を示す枠組み構造配列をもつヒト抗体から選ばれる。重鎖及び軽鎖可変領域枠組残基は、同じヒト抗体配列から誘導されてもよいし異なるヒト抗体配列から誘導される可能性もある。ヒト抗体配列は、自然に発生するヒト抗体の配列でもあり得るし、又はいくつかのヒト抗体のコンセンサス配列でもあり得る。Carter et al.,WO92/22653 を参照のこと。ヒト可変領域枠組み構造残基からのいくつかのアミノ酸は、CDR コンホーメーション及び/又は抗原への結合に対するそれらの考えられる影響に基づいて、置換のために選択される。このような考えられる影響の調査は、モデリング、特定の場所におけるアミノ酸の特性の検査、又は特定のアミノ酸の置換又は突然変異誘発の効果の経験的観察によるものである。
【0088】
例えば、アミノ酸がマウスL106可変領域枠組み構造残基と選択されたヒト可変領域枠組み構造残基の間で異なっている場合、ヒト枠組み構造アミノ酸は通常、そのアミノ酸が、
(1)抗原を直接非共有結合する、
(2)CDR 領域に隣接している、
(3)CDR 領域とその他の形で相互作用する(例えばCDR 領域の約
3A以内にある)又は、
(3)VL−VH界面に参与する。
【0089】
ということが合理的に予想される場合、マウス抗体からの等価の枠組み構造アミノ酸によって置換されるべきである。
その他の置換候補は、その位置におけるヒト免疫グロブリンにとって尋常でない受容体ヒト枠組み構造アミノ酸である。これらのアミノ酸は、L106抗体の同等の位置から又はより標準的なヒト免疫グロブリンの同等の位置からのアミノ酸と置換され得る。
【0090】
ヒトモノクローナル抗体又はその結合フラグメントをコードするDNA 配列を分離するためのもう1つのアプローチは、Huse et al., Science 246 : 1275-1281 (1989) によって概略的に示されている一般的プロトコルに従ってヒトB細胞からDNA ライブラリをスクリーニングし、その後望ましい特異性をもつ抗体(又は結合フラグメント)をコードする配列をクローニングし増幅させることによるものである。Huseによって記述されているプロトコルは、ファージディスプレイ技術と組合せることによってさらに効果的なものとなる。例えばDower et al., WO91/17271 及びMc Cafferty et al., WO92/01047 を参照のこと。ファージディスプレイ技術は同様に、 ACT−4レセプタ又はそのリガンドに対する親和力をもつものとして以前に示されてきた抗体のCDR 領域を突然変異誘発するのにも使用できる。結合親和力を改善した抗体が選択される。
【0091】
106抗体と同じエピトープに特異的に結合する抗−ACT−4レセプタ抗体は、通常、競合結合検定によって同定される。この検定は、3つの成分つまり ACT−4ポリペプチド(例えば ACT-4-h-1)、通常標識付けされているL106抗体及び試験下の抗体、を有する。往々にして、 ACT−4レセプタポリペプチドは固体支持体に固定化される。テスト抗体は、 ACT−4レセプタポリペプチドに特異的に結合するL106抗体の量を低減する場合にL106抗体と同じエピトープに結合する。このような抗体を得るために必要なスクリーニングの範囲は、免疫原としてL106により結合された特異的エピトープが使用されるプロトコルで抗体を生成することによって、低減することができる。L106と同じエピトープに対し結合する抗体は、完全にではないが実質的にL106抗体と同じアミノ酸配列を示すこともあるし、或いはL106抗体に対する関連性のない一次構造を有することもある。
【0092】
L106と異なる結合特異性をもつ(すなわち異なるエピトープに結合する)抗−ACT−4レセプタ抗体が、相補的アプローチによって同定される。 ACT−4レセプタポリペプチドに対する結合についてL106抗体と競合できなかったことに関して、テスト抗体をスクリーニングする。スクリーニングの範囲は、L106によって結合された特異的エピトープが欠如しているフラグメントが免疫原として用いられるプロトコルを利用して抗体を生成することによって低減することができる。
【0093】
CD4+ 細胞の活性化を刺激するか又は阻害する能力を有する抗体を、下記第VI節で論述したスクリーニング手順により同定することができる。いくつかの抗体は、一部の刺激(例えば分裂促進性をもたないがアロ抗原性をもつか又はその逆)に応答して活性化を阻害するが、その他の刺激には応答しない。いくつかの抗体の阻害能力は、抗体が付加される活性化後の時間数に応じて異なる。抗体の中にはその他の刺激とは独立してCD4+ 細胞を活性化する能力を有する可能性があるものもあれば、PHA により提供されるものといったようなもう1つの刺激の効力を増大させる能力しかもたない抗−ACT−4レセプタ抗体もある。
上述の手順によって分離された抗体は、例えば、一次抗体での動物の免疫によって抗イディオタイプ抗体を生成するために用いることができる。抗−ACT−4レセプタ抗体については、一次抗体に対するその結合が ACT−4レセプタ又はそのフラグメントによって阻害されている抗イディオタイプ抗体が選択される。抗イディオタイプ抗体及び ACT−4レセプタ又はそのフラグメントの両方が一次免疫グロブリンに結合することから、抗イディオタイプ免疫グロブリンは、1つのエピトープの「内部的イメージ」を表わす可能性があり、かくして ACT−4リガンドに置換することができる。
【0094】
C.エピトープマッピング
L106又はその他のあらゆる抗 ACT−4レセプタ抗体によって結合されたエピトープは、 ACT-4-h-1といった ACT−4レセプタポリペプチドからの異なるアミノ酸を含むフラグメントファミリーを提供することによって決定される。各フラグメントは、標準的には、少なくとも4,6,8,10,20,50又は 100個の隣接するアミノ酸を含む。集合的にポリペプチドファミリーは、全長 ACT−4レセプタポリペプチドのアミノ酸配列の多く又は全てを網羅する。このファミリーのメンバーを、例えばL106抗体に対する結合について個別にテストする。テスト中の抗体に特異的に結合できる最小のフラグメントは、抗体により認識されたエピトープのアミノ酸配列を明確に表わす。
【0095】
D.抗体フラグメント及びイムノトキシン
本発明のもう1つの実施態様においては、 ACT−4レセプタ又はそのリガンドに対する抗体のフラグメントが提供されている。標準的には、これらのフラグメントは、少なくとも107 M、より標準的には108 又は109 Mの親和力で ACT−4レセプタに対する特異的結合を示す。抗体フラグメントは、別々の重鎖、軽鎖Fab, Fab'F(ab')2、Fabc及びFvを含む。フラグメントは組換え型DNA 技術、又は無傷免疫グロブリンの酵素又は化学的分離によって産生される。
【0096】
もう1つの実施態様においては、イムノトキシンが提供されている。イムノトキシンというのは、望ましい特異性をもつ抗体に連鎖された毒素から成るキメラ化合物である。抗体は、毒素に対するターゲティング用作用物質として役立つ。一般にPastan et al., Cell 47 : 641-648 (1986) を参照のこと。化学的技術又は組換え型DNA 技術により無傷抗体又はそのフラグメントに対し毒素半分がカップリングされる。好ましくは毒素は、隣接するタンパク質の形で免疫グロブリン鎖に連鎖される。例えば、(あらゆる目的のため参考として内含されている)Chovnich et al., Cancer Res. 51 : 465; Chaudhary et al., Nature 339 : 394 (1989) を参照のこと。適当な毒素成分の例が、上述の第I節にリストアップされており、例えば「動物、細菌及び植物毒素の特異性と作用」(Cuatrecases編、Chapman Hall, London, 1976) (あらゆる目的のため参考として内含)の中で再考されている。
【0097】
E.ハイブリドーマ及びその他の細胞系統
上述の抗体及びそのフラグメントを産生する全てのハイブリドーマ、トリオーマ及びその他の細胞系統が、明示的に本発明に内含されている。これらには、L106マウス抗体を産生するATCC HB 11483として寄託されたハイブリドーマ系統HBL106が含まれる。
【0098】
F.抗体の使用
抗−ACT−4レセプタ抗体及びその結合フラグメントは、好ましくはさまざまな組織に由来するヒト又は霊長類cDNAを含むcDNA発現ライブラリをスクリーニングするため及び構造的に関係ある免疫交叉反応タンパク質をコードするcDNAインサートを含むクローンを同定するために有用である。(あらゆる目的のため参考として内含されている)Aruffo & Seed, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84 : 8573-8577 (1987) を参照のこと。抗体は、抗体を生成するのに使用される未変性 ACT−4レセプタポリペプチド又はそのフラグメントと構造的又は進化的に関係ある免疫交叉反応タンパク質を同定し及び/又は精製するのにも有用である。これに類似して、ACT−4リガンドに対する抗体も、さらなるリガンド及びその変異体を分離する上で有用である。抗体、その結合フラグメント、イムノトキシン及びイディオタイプ抗体の診断及び治療目的の使用については、以下の第VII 節で記述されている。
【0099】
V. ACT−4リガンド
ACT−4リガンドという語は、 ACT−4レセプタポリペプチドに対して特異的に結合し、少なくとも部分的に非共有結合によってかかるポリペプチドと複合体を形成することのできるタンパク質を指すものとして用いられている。リガンドは、自然に発生する分子でも、又合成の分子でもあり得、可溶な形であってもよいし或いは細胞の表面に固定させられていてもよい。数多くの異なるリガンドが同じ ACT−4レセプタに結合できる。換言すると、1つのリガンドが複数の ACT−4レセプタに結合できる。「 ACT−4リガンド」という語は、通常 ACT−4レセプタポリペプチドに対する抗体を含まない。
【0100】
通常、ACT−4レセプタに対するリガンドの結合は、ACT−4レセプタを支持する細胞及び/又は ACT−4リガンドを支持する細胞の物理的及び/又は機能的表現型を変更するシグナルを開始させることになる。ACT−4又はそのリガンドのいずれかに対する抗体は、シグナル形質導入を遮断又は刺激する能力を有する可能性がある。当然のことながら、レセプタとしての ACT−4の、そしてリガンドとしてのその特異的結合パートナーの呼称が幾分か恣意的なものであり、状況によって逆転されるかもしれないということが認識されるだろう。
【0101】
ACT−4リガンドは、神経成長因子レセプタースーパーファミリーのメンバーに結合するその他のリガンドの特性のいくつかを共有することが予想される。これらのリガンドとしては、サイトカイン、TNF−α、 TNF−β、CD40−L、CD−27−L及びCD30−Lがある。TNF−βを除いて、これらのリガンドは、II型の細胞膜内膜細胞表面タンパク質として及び可溶性タンパク質としての両方で存在する。これらのリガンドの細胞外ドメインは、約150 のアミノ酸で構成され、切開かれた円筒形構造(あらゆる目的のため参考として内含されているBazan et al., Current Biology 3 : 603-606 (1993)により「ゼリーロール」と呼ばれるもの)へと組立てられるいくつかのβ−ひだ付きシートを形成する。
【0102】
ACT−4リガンドを供給するためのソース材料は、異なる細胞型、特にリンパ球様細胞及び造血細胞、体液及び組織抽出物を、プローブとして好ましくは可溶性の形の標識づけされた ACT−4レセプタを用いてスクリーニングすることにより同定される。往々にして、 ACT−4レセプタ又はその結合フラグメントは、スクリーニングを目的として第2のタンパク質に融合される。特に適しているのは、免疫グロブリン重鎖の定常領域に対し ACT−4の細胞外部分を融合させることによって形成された組換え型グロブリンである。
【0103】
ACT−4リガンドは、古典的タンパク質化学の技術を用いてこのスクリーニング方法によって同定された細胞又はその他の生物学的材料から精製される。このような技術には、硫酸アンモニウムといった物質を用いた選択的沈降、カラムクロマトグラフィ、免疫精製方法その他が含まれる。例えば(あらゆる目的のため参考として内含されている)R. Scopes 、タンパク質精製:原理と実践(Springtr-Verlag, NY, 1982)を参照のこと。通常、精製手順には、ACT−4ポリペプチド又はその結合フラグメントが固定化された試薬として用いられるアフィニティクロマトグラフィ段階が含まれることになる。 ACT−4−定常領域は、プロテインA又はGへの定常領域半分の結合によって適当に固定化することができる。 ACT−4リガンドは同様に、親和力試薬として ACT−4レセプタに対する抗−イディオタイプ抗体を用いても精製できる。
【0104】
アミノ酸配列を決定するため又はレセプタのポリペプチドフラグメントを得るためには、レセプタをトリプシンで消化することができる。ペプチドフラグメントは、逆相高性能液相クロマトグラフィ(HPLC)により分離でき、気相配列決定により分析できる。当該技術分野において既知のその他の配列決定方法も同じく使用できる。 ACT−4リガンドをコードするcDNA又はゲノミッククローンの分離のための縮重したプローブを設計するのに、この配列データを用いることができる。
【0105】
あるいは、発現クローニングによって ACT−4リガンドをコードするcDNAクローンを得ることができる。このアプローチにおいては、cDNAライブラリが、 ACT−4リガンドを発現する細胞(上述の通り同定されたもの)から調製される。ライブラリは適切な細胞(例えば COS−7)内で発現され、 ACT−4リガンドを支持するクローンは、任意に免疫グロブリン重鎖の定常ドメインに融合された標識づけされた ACT−4又はその結合フラグメントでのスクリーニングにより同定される。
【0106】
ACT−4リガンド又はその結合ドメインは、それぞれの ACT−4レセプタを親和力で精製するのに使用できる。 ACT−4リガンド及びその結合フラグメントは、 ACT−4リガンド結合のアゴニスト又はアンタゴニストとしても有用であり、以下の第VII で論述される治療法において使用可能である。膜結合した ACT−4リガンドについては、結合フラグメントは、 ACT−4レセプタの細胞外ドメインの一部を含むことになる。 ACT−4リガンド及びそのフラグメントは、スクリーニング検定において、 ACT−4及び/又はそのリガンドのアゴニスト及びアンタゴニストを同定するためにも有用である。 ACT−4リガンドは、 ACT−4レセプタについて以上で論述したとおり毒素及び免疫グロブリン定常ドメインといったその他のタンパク質にも融合できる。
【0107】
VI.アゴニスト及びアンタゴニストについてのスクリーニング
ACT−4レセプタ及び ACT−4リガンドフラグメント、その類似体、それに対する抗体及び抗イディオタイプ抗体、ならびにその他の化学的又は生物学的作用物質を、 ACT−4リガンドのそのレセプタに対する結合を遮断又は増強する能力についてスクリーニングする。その上、自らの表面に固定された ACT−4レセプタ又は ACT−4リガンドのいずれかを支持する細胞の中のDNA 合成又はタンパク質リン酸化といった代謝プロセスを刺激又は阻害するその能力についてもこれらをテストする。
【0108】
いくつかの方法においては、テスト中の化合物は、 ACT−4リガンド(又はその融合タンパク質)の精製された結合フラグメントに対する ACT−4レセプタ(又はその融合タンパク質)の精製された結合フラグメントの結合を遮断又は増強するその能力についてスクリーニングされる。かかる実験においては、レセプタ又はリガンドフラグメントのいずれかが通常固定支持体に固定化される。このときテスト化合物は、支持体への結合について ACT−4リガンド又はレセプタフラグメント(そのうち支持体に付着されていない方)と競合する。通常、テスト化合物又は競合するリガンド又はレセプタのいずれかが標識付けされる。
【0109】
その他の方法においては、 ACT−4レセプタとリガンド又はこれらの分子の結合フラグメントのいずれか又は両方が細胞表面上で発現される。例えば、 ACT-4-h-1抗原は例えば COS−7細胞内の組換え型DNA から発現される(例6参照)。これらの方法では、アゴニズム又はアンタゴニズムの存在は、テスト化合物の存在下で起こる ACT−4レセプタとそのリガンドの間の結合の度合から決定される。代替的には、テスト化合物の活性は ACT−4レセプタを支持する細胞及び/又は ACT−4リガンドを支持する細胞の中でのDNA 内への 3Hチミジンの取込み又はタンパク質内への32Pの取込みの測定によって検定される。
【0110】
ACT−4で誘発されたDNA 合成又はタンパク質リン酸化を遮断する化合物はアンタゴニストである。 ACT−4レセプタ又はそのリガンドとの相互作用を介してDNA 合成又はリン酸化を活性化する化合物は、アゴニストである。アゴニスト又はアンタゴニストとしての活性は、白血球活性化のその他の機能的又は物理的終点から、又は細胞溶解活性又は血管から組織内への白血球の血管外遊出といった臨床的に望ましい又は望ましくない結果からも、決定することができる。
【0111】
インビトロでのT細胞増殖に対してアゴニスト又はアンタゴニストとして作用する作用物質の能力は、インビボでの免疫応答に影響を及ぼす能力と相関関係づけすることができる。インビボ活性は、標準的には、マウス又はラットといった適切な動物モデルを用いて検定される。同種異系移植片拒絶に対する作用物質の効果を検定するためには、例えば、同種異系組織の導入の前にさまざまな回数で動物に対し潜在的治療薬を投与し、移植片拒絶について動物を監視することができる。移植を実施し移植片拒絶を監視するための適当な方法が記述されてきた(例えばHislop et al., J. Thorac. Cardiovasc, 100 : 360-370 (1990)(あらゆる目的のため参考として内含)を参照のこと)。
【0112】
VII .治療及び診断用の方法と組成物
A.診断方法
ACT−4レセプタ又はそのmRNA又は ACT−4リガンド又はそのmRNAの発生量の変化又は機能的突然変異と関連づけられる免疫系の疾病及び状態は、本発明のプローブ及び/又は抗体を用いて診断できる。 ACT−4レセプタに対する抗体及びそのmRNAと相補的な核酸プローブを提供することにより、活性化されたCD4+ T細胞をその他の白血球亜型から区別することができる。
【0113】
このような細胞の存在は、例えば侵入する細菌といったものに対するMHC II型により誘発された免疫応答を指示するものである。活性化されたCD4+ 細胞及び CD8+ 細胞の数を比較することにより、これらのそれぞれの活性化された細胞型を優先的に誘発する細菌及びウイルス感染の鑑別診断が可能となり得る。活性化されたCD4+ 細胞の存在は同様に、同種異系移植片拒絶、対宿主性移植片病、自己免疫疾患、アレルギー及び炎症といった免疫系の望ましくない疾病及び状態を表示するものである。このような疾病及び状態を治療する上での治療薬の効力を監視することが可能である。
【0114】
診断は、細胞標本(例えば血液標本、リンパ節生検材料又は組織)を患者からとり出すことで達成できる。次に、この標本を分析して次のものを決定する:(1)標本の個々の細胞内の発現された ACT−4レセプタ又はリガンドの量(例えば抗体を用いた固定した細胞の免疫組織化学的染色又はFACSTM分析による)、(2)個々の細胞中の ACT−4レセプタ又はリガンドmRNAの量(標識付けされた相補的ポリヌクレオチドプローブでのインサイチュハイブリダイゼーションによる)、(3)RNA 抽出とそれに続く標識付けされた相補的ポリポリヌクレオチドプローブに対するハイブリダイゼーションによる細胞標本中の ACT−4レセプタ又はリガンドmRNAの量(例えばノーザンブロット法、ドットブロット法、溶液ハイブリダイゼーション又は定量的PCR による)、又は(4)細胞試料中の ACTレセプタ又はリガンドの量(例えば細胞分断とそれに続く結果として得られた細胞の抽出物の免疫学的検定又はウエスタンブロット法による)。
【0115】
診断は同様に、診断用試薬(例えば活性化された CD4+ T−細胞の診断のための標識付けされた抗 ACT−4レセプタ抗体のインビボ投与及びインビボ画像診断によっても達成できる。投与される診断作用物質の濃度は、標的抗原をもつ細胞に対する結合が背景シグナルと比べて検出可能であるよう充分なものでなくてはならない。さらに、最良の標的対背異シグナル比が得られるように、診断用試薬が循環系から急速に清澄化できることが望ましい。診断用試薬は、カメラ画像診断のため放射性同位元素で、又磁気共鳴又は電子スピン共鳴画像診断のためには常磁性同位元素で標識づけできる。
【0116】
臨床的に立証された正常レベル範囲の外側にある、1つの個体からの細胞標本中の ACT−4レセプタ又はリガンドのタンパク質又はmRNAのレベルの変化(標準的には増大)が、その標本を得た個体の中の望ましくない免疫反応の存在及び/又は、このような反応を発生させる(又はこのような反応を進展させる)その個体の素因を表示する可能性がある。タンパク質又はmRNAレベルは、或る種の系列の細胞(すなわち ACT−4レセプタに対する活性化されたCD4+ 細胞)及び発達上の起源を同定し型別するための分化マーカーとして利用できる。このような細胞型特異的検出は、望ましくない免疫応答の組織病理学的診断のために使用できる。
【0117】
B.診断キット
本発明のもう1つの態様においては、上述の診断方法のための診断キットが提供されている。このキットには、 ACT−4レセプタに対する標識付けされた抗体といった診断用試薬及び標識を検出するための試薬及び/又は器具を封じ込めたコンテナが含まれている。このようなキットの中にきまって見られるその他の構成要素も、テストを実施するための説明書と共に含まれている可能性がある。
【0118】
C.薬学組成物
予防又は治療処置のために用いられる薬学組成物は、有効治療薬、例えば、 ACT−4レセプタ、リガンド、そのフラグメント、及びそれに対する抗体及びイディオタイプで抗体そしてその他のさまざまな成分を含んで成る。好ましい形態は、意図されている投与様式及び治療の利用分野に応じて異なる。組成物は、同様に、望ましい製剤形態に応じて、動物又はヒトに投与するための薬学組成物を調剤するのに一般に用いられるビヒクルとして定義づけられている薬学的に受容可能な非毒性の担体又は希釈剤も含んでいてもよい。希釈剤は、組合せの生物活性に影響しないように選択される。このような希釈剤の例には、精製水、生理食塩水、リンゲル液、右旋糖溶液及びハンクス液がある。さらに薬学組成物又は製剤はその他の担体、アジュバンド、又は非毒性、非治療用、非免疫原性の安定剤なども内含している可能性がある。
【0119】
D.治療方法
治療方法は、ヒト又は動物特に脊椎哺乳動物におけるさまざまな疾病の治療のために上述の治療薬を利用する。治療薬には、 ACT−4レセプタ、その結合フラグメント、 ACT−4リガンド、その結合フラグメント、抗−ACT−4レセプタ及びそれに対する、リガンド抗体及び抗イディオタイプ抗体、これらの抗体の結合フラグメント、これらの抗体のヒト化されたバージョン、イムノトキシン及びその他の上述の作用物質が含まれる。一部の治療薬は ACT−4レセプタとそのリガンドの作用を遮断するか又はその他の形で拮抗することによって機能する。
【0120】
その他の治療薬は、その標的であるポリペプチドを支持する細胞を死滅させることによって機能する。例えば、エフェクター機能をもつか又は毒素、放射性同位元素又は薬物に接合されている抗 ACT−4レセプタ抗体は、活性化された CD4+T 細胞を選択的に死滅させることができる。このような選択的な排除は、患者がその後露呈され得る侵入微生物と闘うため不活性化された CD4+ 細胞及びCD8+ 細胞の形で残留免疫能力を保存する一方で、望ましくない免疫応答を減少又は削除できることから、特に有利である。その他の治療薬は、 ACT−4レセプタとリガンドの間の相互作用のアゴニストとして機能する。
【0121】
1.投与の用量と方法
治療向けの利用分野においては、薬学組成物(例えば、抗− ACT−4レセプタ抗体を含むもの)は、インビボ又は半ビボで、すでに望ましくない免疫応答(例えば移植体拒絶)に苦しむ患者に対して、その状態及びその合併症を治ゆさせ、その進行を部分的に停止させるか検出可能なほどに遅くさせるのに充分な量で投与される。これを達成するのに適切な量を、「治療上有効な用量」又は「効めある用量」と定義づける。
【0122】
この用途のために有効な量は、その状態の重症度、患者の全身状態、及び投与経路そして該当する場合にはその他の免疫抑制薬との組合せに応じて異なるが、一般には、一回の用量あたり約10ng〜約1gの有効作用物質の範囲内にあり、患者一人あたり10mg〜100mg の単一用量単位が一般に用いられる。薬学組成物は、静脈内輸注によって全身的にか又は注射により局所的に投与することができる。後者の方法は、宿主対移植片拒絶といったような局所化された望ましくない免疫応答にとって特に有用である。薬物送達方法の簡単な再考については、(あらゆる目的で参考として内含されている)Langer, Science 249 : 1527-1533 (1990)を参照のこと。
【0123】
予防的利用分野においては、薬学組成物は、望ましくない免疫反応にすでに苦しんでいるわけではないが、その危険性のある患者(例えば、移植手術を受けようとしている患者)に投与される。投与すべき抗体の量は、「予防的に有効な用量」であり、その精確な量は患者の健康状態及び全身的免疫レベルによって異なるが、一般には一回の用量あたり10ng〜1g、特に患者一人あたり10mg〜100mgの範囲内にある。
【0124】
本発明の治療薬は従来の免疫調節作用物質よりもさらに選択的でかつ一般に毒性がより低いものである可能性が高いことから、従来の作用物質で頻繁に見られた副作用をひき起す可能性は低くなる。その上、治療薬のいくつかはヒトタンパク質配列(例えば ACT−4レセプタ又はリガンド又はヒト化抗体の結合フラグメント)であることから、マウス抗CD3抗体で見られたもののような免疫応答をひき起こす可能性は低い。本発明の治療薬は同様に伝統的療法とも組合せることができ、かかる作用物質の用量を副作用と関連するレベルより低いレベルまで低下させるために使用できる。例えば、α3ドメインに対する抗体、T細胞抗原(例えばOKT4及びOKT3) 、抗胸腺細胞グロブリンといったその他の免疫抑制物質ならびにサイクロ(登録商標)スポリン、グルココルチコイド、アザチオプリン、プレドンソンといった化学療法剤を、本発明の治療薬と合わせて使用することが可能である。
【0125】
標的細胞の特定的集団を破壊するためには、本発明の治療薬をもう1つの分子に接合させることが有利でありうる。例えば、作用物質を、特定の免疫抑制物質を含むリボソーム、特異的モノクローナル抗体、又は細胞毒素又はその他の細胞活性調節因子に結びつけることができ、かくして、標的細胞集団に対する接合体の結合は、その集団の変性を結果としてもたらすことになる。以上で、数多くのタンパク質毒素について論述してきた。例えば化学療法剤には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、細胞毒素及びアンチセンスRNA が含まれる。抗生物質も同じく使用できる。さらにイットリウム−90、リン−32、鉛−212 、ヨウ素−131 又はパラジウム−109 といった放射性同位元素も使用できる。発出された放射線は、標的細胞を破壊する。
【0126】
2.治療に敏感に反応する疾病及び状態
上述の薬学組成物は、免疫系のいくつかの疾病及び状態を治療するのに適している。
a.移植体拒絶
最近になって、皮ふ、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓及び骨髄といった組織及び臓器を移植するための外科手術の効率に多大な改善が見られてきた。恐らく、顕著な主要問題点は、移植された同種異系移植片又は臓器に対する被移植者内の免疫寛容を誘発するための満足のいく作用物質が欠如していることであろう。
【0127】
同種異系細胞又は臓器が宿主に移植された時点で(すなわち提供者と被提供者は同一種からの異なる個体である)、宿主の免疫系は、移植体内の外来性抗原に対する免疫応答(対宿主移植片病)を構築して移植された組織の破壊を導く可能性が高い。CD細胞、CD8+ 細胞及び単球が全て、移植体組織の拒絶に関与している。本発明の治療薬は、被提供者の体内のアロ抗原に誘発される免疫応答を遮断し(例えば抗− ACT−4レセプタ抗体による CD4+T 細胞のアロゲン(allogen)活性化の遮断又は排除)、かくしてこのような細胞が移植された組織又は器官の破壊に参加するのを予防するのに有用である。
【0128】
b.対宿主性移植片病
本発明の治療薬にとっての関連する用途は、「対宿主性移植片」病(GVHD)に関与する免疫応答を変調することにある。GVHDは、同種異系の被移植者に対して免疫学的にコンピテントな細胞が移植されたときに起こる潜在的に致命的な病気である。この状況下で、提供者の免疫コンピテント細胞は被移植者の体内で組織を攻撃する可能性がある。皮ふ、消化管、上皮及び肝臓の組織は、頻繁に標的となり、GVHDの経過の中で破壊される可能性がある。この疾病は、骨髄移植におけるように免疫組織が移植される場合に特に重大な問題を提供する。しかし、これより重症度の低いGVHDは、心臓及び肝臓の移植を含むその他の症例においても報告されてきた。本発明の治療薬は、提供者のT細胞(特に ACT−4レセプタに対しターゲティングされた治療薬については、活性化された CD4+T 細胞)の活性化を遮断するか又はこの細胞を排除し、宿主内で標的細胞を溶解させるその能力を阻害するために用いられる。
【0129】
c.自己免疫疾患
免疫抑制が望まれるもう1つの状況は、インシュリン依存性糖尿病、多発性硬化症、スティッフマン症候群、慢性関節リウマチ、重症筋無力症及び紅斑性狠瘡といった自己免疫疾患の治療の場合である。これらの疾病においては、体は、自分自身の抗原の1つの破壊そして潜在的には肢体不自由及び/又は致命的な結果を導くこの抗原に対する細胞及び/又は体液性免疫応答を発達させる。活性化された CD4+ T細胞は、多くの自己免疫疾患において主要な役割を果たすと考えられている。自己免疫疾患は、本発明の治療薬の1つ、特に ACT−4レセプタに対してターゲティングされた治療薬の1つを投与することによって治療される。任意には、自己免疫疾患の標的となっている自己抗原又はフラグメントを、免疫抑制剤の直前、又はそれと同時に又はその直後に投与することができる。このようにして、抑制治療に隠れて自己抗原に対し寛容を誘発することができ、かくして連続した免疫抑制の必要性がなくなる。例えば、Cobfold et al., WO90/15152 (1990)参照。
【0130】
d.炎症
炎症は、流体の蓄積を伴う毛細管膨張及び顆粒球及び単球といった食細胞白血球の移動の結果である。炎症は、宿主をさまざまな感染から防御する上で重要であるが、アナフィラキシーショック、関節炎及び痛風といった炎症性障害において望ましくない結果ももたらし得る。活性化されたT細胞は、炎症において重要な変調の役目をもち、それ自体食細胞白血球を活性化することになるインターフェロンγ及びコロニー刺激因子を放出する。活性化された食細胞白血球は、標的内皮細胞に対し食細胞を付着させるのに役立つホーミング受容体と呼ばれる一定数の特異的細胞表面分子を発現するように誘発される。本発明の治療薬で治療することによって、炎症性応答を低減させるか又は排除することができる。例えば、 ACT−4レセプタに対しターゲティングされた治療薬は、 CD4+ 細胞の活性化を遮断するか又は活性化された CD4+ 細胞を排除し、これらの細胞が食細胞細胞型の活性化に必要とされる分子を放出できないようにすることによって機能する。
【0131】
e.病原菌
本発明は同様に、病原菌の結果をもたらされる疾病及び状態を予防又は治療する上でのワクチンの効力を増大させる方法をも提供している。 CD4+T 細胞を活性化する能力をもつ治療薬(例えば ACT-4-h-1レセプタポリペプチドに対する或る種のモノクローナル抗体)が、選択された抗原を含むワクチンの直前、又はそれと同時に、又はその直後に投与される。治療薬は、選択された抗原に対する免疫応答を増大させるのに役立つ。これらの方法は、免疫不全疾患を患う患者の場合に特に有利であり得る。
以下の例は、本発明を例示するために提供されるものであり、本発明を制限しようとするものではない。
【実施例】
【0132】
例1. ACT-4-h-1に対するモノクローナル抗体
マウスを、PHA で形質転換されたTリンパ系球で免疫化した。免疫化されたマウスからの脾細胞をSP2/0骨髄腫と融合させ、T細胞クローンに特異的な抗体を分泌するハイブリドーマを選択した。これらのハイブリドーマを限界希釈によってクローニングした。結果として得られたハイブリドーマの1つによって産生されたL106と呼称されるモノクローナル抗体をさらなる特徴づけのために選択した。L106抗体はIgG イソタイプを有することがわかった。HBL106と呼称される抗体を産生するハイブリドーマを、1993年11月3日付けでメリーランド州ロックヴィルにあるAmerican Type Culture Collectionに寄託し、ATCC HB 11483 という受入れ番号が割当てられた。
【0133】
例2. L106抗体により認識されるポリペプチドの細胞分布
L106抗体に結合する組織及び細胞型を同定する目的で、ヒト白血球分化抗原に関する第4回国際研究集会及び会議(1989年ウィーン)で、幾人かの参加者に対し、抗体L106を含む標本が提供された。
【0134】
研究集会からのデータは、「白血球型別IV」(W. Knapp, Oxpord.U, Press, 1989) (あらゆる目的のため参考として内含)の中で紹介されており、付随するコンピュータデータベースは、Walter R,Gilks.(イギリス、ケンブリッジ大学MRC 生物統計ユニット)から入手できる。この参考文献では、L106抗体が約50KDa のポリペプチドを結合させるということが報告されている。このポリペプチドは、HUT102細胞(形質転換されたT細胞系統)、PHA で活性化された末梢血リンパ球、EBV で形質転換されたBリンパ球様細胞系統、及びHTLV−IIで形質転換されたT細胞系統、PMA で活性化された扁桃腺細胞、ConA−又はPHA で活性化されたPBL 及びPMA で活性化された単球上に存在するものと報告された。又このポリペプチドは、とりわけ、休止好塩基球、内皮細胞、線芽芽細胞、インターフェロンγで活性化された単球、末梢非T細胞、末梢顆粒球、末梢単球、末梢単核細胞、末梢T細胞及び末梢赤血球の上では実質的に存在しないものと報告された。
【0135】
本件発明者は、50KDa のポリペプチド(以下「 ACT-4-h-1レセプタ」と呼ぶ)が活性化されたT細胞のCD4+ 亜種上で優先的に発現されるということを示すデータを得た。1回の一連の実験において、2色染色法により未分画PBL 上で細胞特異的 ACT-4-h-1発現を分析した。(例3の中で記述されている培養条件を用いて)約2日間、PHA でPBL を活性化し、2つの異なる標識付けをされた抗体(FITC及びPE標識)での染色により、異なる細胞亜型上での ACT-4-h-1の細胞表面発現について分析した。基本的にDicker et al, J. Immunol. 150 : 1105-1121 1993) (あらゆる目的のため参考として内含)によって記述されている通りに、FACSTM分析により、標識を検出した。
【0136】
1つの抗体、L106は、 ACT-4-hに特異的であり、もう1つの抗体は特定の白血球亜型に対し特異的であった。図1は、各チャートのY軸上にL106の染色が示され、それぞれのチャートのX軸として抗−CD4、抗−CD8及び抗−CD19の染色が示されている3つのチャートを示している。抗−CD4で染色されたチャートについて、多くの細胞は2重陽性(つまり、CD4及び ACT-4-h-1の両方を発現する)として現われている。抗−CD19(B細胞マーカー)で染色されたチャートについて、2重陽性細胞は実質的に不在である。
【0137】
もう1つの一連の実験においては、分離された細胞型上での単色染色によって ACT-4-h-1の発現を分析した。螢光標識づけされたL106抗体を用いて細胞を染色し、標識をFACSTM分析によって検出した。Engleman et al., J. Immunol. 127 : 2124-2129(1981)(あらゆる目的のため参考として内含されている)を参照のこと。いくつかの実験では、約2日間(ここでも例3に記述されている培養条件を用いて)PHA 刺激によって細胞を活性化した。この実験からの結果ならびに上述の2色染色実験からの結果は、表1にまとめられている。表1は、活性化されたCD4+ 細胞の約80%が、 CD4+ 細胞が分離されている(1色染色)か又は分画化されたPBL 中にある(2色染色)かとは無関係に、20より大きい平均チャンネル螢光で ACT-4-h-1を発現したことを示している。
【0138】
活性化されたCD8+ 細胞上の ACT-4-h-1の発現レベルは、活性化されたCD4+T 細胞上のものに比べ、2色染色実験にははるかに低く、1色染色実験ではさらにはるかに低いものである。従って、活性化されたCD8+ 細胞上の発現の程度は、C8+細胞が活性化前にその他のPBLから分画化されているか否かに応じて異なると思われる。分画化されていないCD8+ 細胞内(2色染色)では、約4の平均チャンネル螢光で、約10%の細胞が ACT-4-h-1を発現している。分画化された細胞内では、約2の平均チャンネル螢光でわずか約4%の細胞しか ACT-4-h-1を発現しない。これらのデータは、 ACT-4-h-1が、活性化されたCD8+ 細胞の小さい亜型上のみで発現され、CD8+ 細胞がその他のPBL の存在下で活性化された時点でこの亜型が幾分かさらに優勢となることを示唆している。
【0139】
表1は同様に、テストされた全ての休止白血球亜型(すなわちCD4+T 細胞、 CD8+T 細胞、CD19+B 細胞、CD14+単球、顆粒球及び血小板)上で ACT-4-h-1が実質的に存在せず、活性化されたB細胞及び単球上でも実質的に存在しなかったということを示している。 ACT-4-h-1は同様に、テストされた大部分の腫瘍細胞系統上で不在であることがわかった。しかしながら、Molt3, Raji 及びNC37細胞系統はまさに低レベルの発現を示した。
【0140】
【表1】

【0141】
例3. CD4+T 細胞の活性化に対して応答する ACT-4-h-1発現の時間的経移
さまざまな活性化刺激に応答しての ACT-4-h-1レセプタの発現について、 CD4+T 細胞をテストした。固相免疫吸着剤により末梢血単球から CD4+T 細胞を精製した(「パニング」)。10%のヒト血清で補足したRPMI培地を含むマイクロタイターウェルの中で、活性化剤と共に5×104 のCD4+T 細胞を培養した。3つの異なる活性化剤を使用した:すなわち(1)5×104 の照射済み(3000ラド)の単球、(2)PHA(1μg/ml)及び(3)破傷風トキソイド(5μg/ml)。収穫の12〜16時間前に 3H−チミジンを付加した。収穫後、Engleman et al., J. Immunol. 127 : 2124-2129 (1981) によって記述される通り、さまざまな標識づけされた抗体(L106、抗−CD4及び抗−CD8)とのインキュベーションによって、細胞表面抗原の発現について細胞をテストした。
【0142】
図2は、アロ抗原活性化に応答しての ACT-4-h-1の出現を示している。活性化以前には、いかなる発現も観察されなかった。 ACT-4-h-1レセプタを発現する細胞の百分率は、時間と共に増大し、アロ抗原活性化から約7日後に約30%でピークに達している。これらの結果は同様に、 ACT-4-h-1を発現する細胞が基本的に全て、CD4レセプタを発現したこと、そして基本的にこのような細胞がいずれもCD8レセプタを発現しなかったことを示している。図3は、破傷風トキソイド活性化に応答しての ACT-4-h-1の出現についての類似のデータを示している。ここでも又、 ACT-4-h-1を発現する細胞の百分率は約7日でピークに達した。しかしながら、この時点で、より高い百分率の細胞(約60%)がレセプタを発現した。図4は、PHA 活性化に応答しての CD4+T 細胞上の ACT-4-h-1の出現について類似のデータを示している。この状況下で、レセプタを発現する CD4+T 細胞の百分率は、3日間の活性化後約65%でピークに達している。
【0143】
結論としては、 ACT-4-h-1が、さまざまな活性化刺激に応答して発現される CD4+T 細胞活性化抗原であるということがいえる。
【0144】
例4. ACT-4-h-1 cDNAのクローニング
ACT-4-h-1レセプタについてのcDNAクローンを、 Aruffo& Seed(上述)によって初めて開発されたわずかに修飾されたCOS細胞発現システムを用いて分離した。72時間PHA で活性化されたヒト末梢血リンパ球から、RNA を分離した。TRI 試薬を用いて全RNAを抽出し(Molecular Research Center)、オリゴdT−磁気ビーズ精製(Promega)によってポリ(A)+RNA を分離した。スーパースクリプト逆転写酵素(Gibco/BRL)及びオリゴdTプライマを用いて、 Gubler & Haffman, Gene 25 : 263-369 (1982)の方法により、cDNAを合成した。平滑化されたcDNAを非自立相補性 Bst×1アダプタに連結させ、セファクリルS−400 スピンカラム上を通過させて、未連結のアダプタ及び小さなフラグメント(300未満の塩基対)を除去した。
【0145】
次に、 pcDNA−I(Invitrogen) のアンピシリン耐性バージョンである Bst×1切断真核生物発現ベクター pcDNA−IRL へと、リンカーcDNAを連結させた。沈降され洗浄された連結反応産物をE. coli 菌株WM1000(Bio Rad)内に電気穿孔した。形質転換された細菌のアリコートの平板培養及び計数は、増幅されていないライブラリ内の合計 200万の独立したクローンの計数値を明らかにした。平均インサートサイズは1.2kb であることが見極められた。ライブラリのバルクを、液体培養すなわち250ml の標準LB培地内で増幅させた。アルカリ性溶解によりプラスミドを回収し、イオン交換カラム(Qiagen) 上で精製した。
【0146】
亜集密的 COS−7細胞を電気穿孔により精製プラスミドDNA でトランスフェクションした。細胞を100mm の皿上に平板培養し、48時間成長させた。細胞を PBS−EDTA溶液で平板から回収し、モノクローナル抗体L106を用いてインキュベートし、標準的手順に従ってパニングした。2回目のパニングにより、平板に吸着された数多くのCOS 細胞としての富化が明らかにされた。Hirtの方法により、免疫選択された細胞からエピソームDNA を回収し、増幅のため細菌内に電気穿孔させた。
【0147】
2回目のHirt調製物からのプラスミドで形質転換された細菌を、約100 コロニーの小さいプールに希釈させた。このプールを増幅させ、そのDNA を精製し、免疫螢光により COS−7細胞上のL106抗原の発現を付与する能力についてテストした。 COS−7細胞の単層を染色するために、フィコエリトリン接合されたL106抗体を使用し、次に手動式免疫螢光顕微鏡によって細胞を検査した。8つのプールのうち4つからのミニプレップDNA が、発現についてのテストの際に陽性であった。最高の発現をもつプール、つまりプールEを最高12のコロニーから成るより小さなプールに分割した。8つのサブプールのうちの3つが陽性であり、サブプールE1を平板固定して単一のコロニーの分析を可能にした。クローンE1−27は、トランスフェクションを受けたCOS 細胞の表面上での ACT-4-h-1レセプタの高レベル発現を付与することがわかった。
【0148】
例5. cDNA配列分析
E1−27と呼称されるクローンからのインサートをpブルースクリプトへサブクローニングし、ALF シークエンサー(Pharmacia)上でT7ポリメラーゼ自動読取り配列決定キット(Pharmacia)を用いて、ジデオキシ鎖終結方法により配列決定した。制限地図作製により、サブクローニングのためのいくつかの適切な部位が明らかになった。pBluescriptで5つのサブクローンを生成し、M13順向万能プライマを用いて両方のストランド上で配列決定した。
【0149】
図5に、 ACT-4-h-1のcDNA及び演繹されたアミノ酸の配列が示されている。1.137 の塩基対の ACT-4-h-1 cDNA配列は、14−bpの5′未翻訳領域及び209bp の3′未翻訳領域を含んでいる。AAT AAA ポリアデニル化シグナルが1041の位置に存在し、その後に1057の位置から開始する80bpのポリAテールが続いている。最も長い読取り枠は、位置15で最初のATG で始まり、位置846 のTGAで終わる。予想されたアミノ酸配列は、標準的な1型細胞膜内タンパク質のものである。疎水性分析は、塩基性残基の短かい広がりとそれに続く疎水性残基のより長い広がりを伴う、開始ATG に続く推定上のシグナル配列を明らかにしている。
【0150】
予想されたシグナルペプチド分割部位が、残基22又は24に存在しており(あらゆる目的のための参考として内含されているvon Heijne, Nucleic Acids Res. 14, 4683-4690 (1986) )の基準によると後者の方がより確率が高いものである)、253 のアミノ酸残基の成熟タンパク質(又はより確率の低い部分で分割が起こった場合、255 のアミノ酸)を残す。疎水性分析は同様に、膜内外ドメインであるものと予測された27の疎水性残基の単一の大きな広がりも明らかにし、これが189(又は191)のアミノ酸の細胞外ドメイン及び37のアミノ酸の細胞内ドメインを予測している。細胞外ドメインはシステインが豊富であり、ここでは、135 のアミノ酸の広がりの中に18のシステインが見い出される。成熟タンパク値についての予測された分子質量(Mr)は27,400であり、アミノ酸残基146 及び160 に2つの潜在的N−グリコシル化部位が存在する。
【0151】
BLAZE プログラムを用いてスイス−プロットデータベース内の既知の配列と ACT-4-h-1のアミノ酸配列を比較すると、神経成長因子レセプタスーパーファミリーのメンバーとの配列類似性が明らかになる。アミノ酸配列は、ギャップ及び欠失を考慮に入れて、 NGF−R, TNF−R,CD40,41−BB及び fas/APO−1について少なくとも20%同一であり、OX−40について62%同一である。
さまざまなタンパク質のアラインメントにより、多数のシステイン富化モチーフの保存が明らかになる。これらのモチーフのうち3つが ACT-4-h-1及びOX−40内に存在し、これに対し、 NGF−R及びCD40内には、このようなモチーフが4つ存在する。
【0152】
プログラムBLAST 及びFASTDBを用いてGenbank 及びEMBLデータベース内の既知の配列と ACT-4-h-1のヌクレオチド配列を比較することにより、神経成長因子レセプタファミリー、OX−40のわずか1つのメンバーとの高度の配列類似性が明らかになった。ギャップと挿入を考慮して、配列同一性は66%である。 ACT-4-h-1とOX−40ヌクレオチド配列を比較すると、その両方が14−bp5′の未翻訳領域を含み、両方が約80bpのポリAテールを含んでいることが明らかとなる。
【0153】
しかしながら、 ACT-4-h-1においては、187bp から209bp へと3′の未翻訳領域がわずかに延びており、コーディング領域は816bp から834bp へと延び、差は18bpつまり6個のアミノ酸の挿入である。2つのアミノ酸配列を整列させると、アミノ酸挿入のうち4つがシグナル配列分割部位の前に起こることがわかる。従って、成熟した ACT-4-h-1レセプタタンパク質は、OX−40よりも1つ多いアミノ酸残基を含む(すなわち、252 に対し253 のアミノ酸)。驚くべきことに、 ACT-4-h-1ヌクレオチド配列は、OX−40配列よりもはるかにGCを豊富に有し(70%対55%)、このことはすなわち、2つの配列が緊縮条件下でハイブリッド形成しないということを表わしている。
【0154】
例6. 安定した ACT-4-h-1トランスフェクタントの産生
例4で記述されている構成体から XbaI−HindIII フラグメントを切除し、 XbaI/HindIII で消化された pcDNA-I-neo (Invitrogen)の中に挿入して、 ACT-4-h-1-neo と呼ばれる発現ベクターを生成した(図6)。このベクターをSf1で直線化し、3つの真核細胞系統内に電気穿孔した。すなわち、これらの細胞系統とは、SP2/0(Balb/c菌株から誘導されたマウス骨髄腫)。ジャーカット(形質転換されたヒトT細胞系統)及び COS−7(粘着性サル細胞系統)であった。
【0155】
48時間の回収期間の後、形質転換した細胞を1mg/ml G418 (Gibco) 内で選択した。3週間の選択の後、飽和濃度のL106抗体を用いて新生耐性細胞系統をインキュベートし、洗浄して、 ACT-4-h-1を発現する細胞を選択するべくヤギ抗マウスIgG でコーティングされた100mm のペトリ皿の上に層状化させた。結合していない細胞を洗い落とした後、粘着細胞を回収し、組織培養内で膨張させた。細胞系統をさらに2回のパニング及び発現に付した。結果として得られた細胞系統は、直接免疫螢光染色により、豊富なSTAN-4-h-1を発現するものであることが示された(図7)。
【0156】
例7. ACT-4-h-1免疫グロブリン融合タンパク質の産生
ACT-4-h-1の細胞外ドメインがそのC末端を介してヒト免疫グロブリンの定常ドメインのN末端に結合されている可溶性融合タンパク質が構築されてきた。例4に記されている ACT-4-h-1をコードするベクターを SmaI−及び NotIで分割させて、膜内外、細胞質及び3′未翻訳領域を含む SmaI部位の下流の全ての ACT-4-h-1配列を切除した。残りの領域は、 ACT-4-h-1の可溶性細胞外部分をコードする(図8)。 ACT-4-h-1細胞外ドメインに結び合わせるべき免疫グロブリン定常領域の供給源は、5K−41BB−Eg1と呼ばれるプラスミドであった(あらゆる目的のため参考として内含されているProc. Natl. Acad. Sci. (USA) 89: 10360-10364)。このプラスミドは、ヒトIg、イソタイプガンマ1のヒンジ、CH2及び末端CH3ドメインをコードする1.3kb のBamHI/EagIゲノミックフラグメントを含む。
【0157】
このフラグメントは、平滑末端連結によって形成されるべき SmaI接合部を横切ってペプチド読取り枠を保存しながら、 ACT-4-h-1ベクターの SmaI− NotI末端内へ挿入するのに修飾を必要とした。ベクター5K−41BB−Eg1をBamH1で切断し、結果として得られた5′拡張部にクレノウフラグメントを充てんした。次にベクターを EagIで切断し、平滑末端及び NotI適合性末端をもつ1.3kb のフラグメントを放出させた。このフラグメントを、 SmaI/NotIで消化された ACT-4-h-1ベクターと連結させた。連結混合物をE. coli 内に電気穿孔させ、多数の形質転換体クローンを、プライマとして ACT-4-h-1及びIgG1ヌクレオチドを用いたPCR でスクリーニングした。
【0158】
ACT-4-h-1-IgG1コーディングを含むプラスミドをCOS 細胞内に電気穿孔した。細胞を5日間成長させ、その時点でその上清を収穫し、0.2 ミクロンの膜を通して無菌ろ過した。ドットブロット法により ACT-4-h-1-IgG1の発現について上清をテストした。上清をニトロセルロース上にブロッティングし、5%の脱脂粉乳で遮断した。抗体L106又はアルカリ性ホスファターゼで標識づけされたヤギ抗ヒト免疫グロブリンIgG (American Qualex) で、複製ブロットをプローブ探査した。抗体L106を、アルカリ性ホスファターゼで標識づけしたヤギ抗マウスIgG で検出した。比色基質として NBT/BCIP(Pierce) を用いた。適切なベクター構築を確認するべく、高産生力の陽性クローンを配列決定した。結果として得られた融合遺伝子は、図9に記されている。
【0159】
明確化及び理解を目的として、本発明は、これらの例及び上述の開示において、幾分か詳細に記述されてきた。しかしながら、添付のクレームの範囲内で残る種の変更及び修正を実施できるということは明らかであろう。全ての公報及び特許出願は、あらゆる目的のための参考として、あたかも各々が個別に参考として内含されているものとして記された場合と同じ範囲で、本書中に内含されている。
【0160】
本明細書及び添付のクレームにおいて、状況が許す場合、「分離された」材料とは、(a)精製されていること、及び/又は(b)本書で言及されている目的のいずれか1つ又は複数のものの範囲内に入る少なくとも1つの目的のために使用することができるようになるのに充分な程に汚染不純物の無い状態にあること、及び/又は(c)自然の形態において付随するか又は自然に結びつけられた又は配合された主要な天然の成分のうちの少なくとも1つのものが実質的に無い又はすでにそれが除去された状態にある、例えばこのような自然の付随成分の全て又は実質的な全てを含まないか又はそれを除去されてしまっている天然由来の材料又は天然由来の材料と同一の構造をもつ材料であること、及び/又は(d)化学的又は生物学的又は薬学的に規定された賦形剤、希釈剤、ビヒクル又は本書に言及されている目的のうちのいずれか1つ又は複数のものの中に入る少なくとも1つの目的にとって受容可能な特徴をもつその他の材料の性質をもつさらなる材料と共に前記特徴のいずれか1つを有する材料を含んで成る組成物の形をしていること、という特徴のうちのいずれか1つ又は複数のものを有する材料を意味している。
【0161】
この材料の開示には、分離された形でのこのような材料の開示が含まれ、この開示には以上の記述、図面及び添付のクレームの内容及び、当業者にとっては明らかとなる本書に言及されている特長の修正及び変更及び組合せ及び副次的組合せが内含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のアミノ酸配列:
(a)配列番号:2のアミノ酸配列;又は
(b)配列番号:2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、配列番号:2のアミノ酸配列に関する変異体;
を含んでなるか又はから成る、ACT-4レセプターポリペプチド。
【請求項2】
下記アミノ酸配列:
(a)配列番号:2の細胞外ドメインアミノ酸配列;又は
(b)配列番号:2の細胞外ドメインアミノ酸配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、配列番号:2の細胞外ドメインに関する変異体;
を含んでなるか又はから成り、ACT-4リガンドに対して特異的に結合するポリペプチド。
【請求項3】
融合ポリペプチドの部分を構成し、そして免疫グロブリン重鎖定常領域に融合されて組換グロブリン融合生成物の部分を構成する、請求項1又は2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
L106抗体によって結合されるエピトープと同じエピトープに対する特異的結合について抗体をスクリーニングする方法であって、スクリーニングすべき抗体、前記L106抗体及びこのL106抗体に特異的に結合する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドを含む溶液を提供する段階;及び前記ポリペプチドと前記L106抗体の間又は前記ポリペプチドと前記スクリーニングすべき抗体の間の特異的結合を測定して前記スクリーニングすべき抗体が前記L106抗体と同じエピトープと反応するか否かを表示する段階を含んで成る方法における、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用方法;
ここで、前記L106抗体は、ATCC No. HB11483として寄託されているハイブリドーマにより生産されるものである。
【請求項5】
抗−ACT-4レセプターポリペプチド抗体により特異的に結合されるエピトープを局在化させる方法における、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用方法であって、この方法は、前記ポリペプチド配列からの異なるアミノ酸セグメントを含むフラグメントのファミリーを用意し、ここで前記フラグメントのそれぞれは少なくとも4個の連続するアミノ酸を含んでなり、前記フラグメントのファミリーは全体として前記ポリペプチドのアミノ酸配列の多く又は全てをカバーしており、そして次に前記フラグメントと抗体との間の特異的結合を測定して、当該抗体により認識されるエピトープのアミノ酸配列を示す工程を含む、ことを特徴とする前記使用方法。
【請求項6】
前記少なくとも4個の連続するアミノ酸が、少なくとも6個の連続するアミノ酸である、請求項5に記載の使用方法。
【請求項7】
前記少なくとも4個の連続するアミノ酸が、少なくとも10個の連続するアミノ酸である、請求項5に記載の使用方法。
【請求項8】
前記少なくとも4個の連続するアミノ酸が、少なくとも20個の連続するアミノ酸である、請求項5に記載の使用方法。
【請求項9】
免疫抑制物質についてスクリーニングする方法における、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用方法であって、この方法は、潜在的免疫抑制物質と前記ポリペプチドを接触させ、そして免疫抑制活性を表示するものである、前記ポリペプチドと前記作用物質の間の特異的結合を検出する工程を含んで成る、ことを特徴とする前記使用方法。
【請求項10】
前記ポリペプチドが固体表面に固定化されている、請求項9に記載の使用方法。
【請求項11】
ACT−4リガンドについてスクリーニングする方法における、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドの使用方法であって、前記方法が、前記 ACT−4リガンドを含む生物標本を 前記ポリペプチドと接触させ、そして前記リガンドと前記ポリペプチドポリペプチドの間で形成された複合体を分離することによりACT-4リガンドを精製し、そして前記リガンドを得るため前記複合体を解離させる工程を含んでなることを特徴とする、前記使用方法。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドの特異的結合パートナーを検出する目的で標本を試験する方法における、前記ポリペプチドの使用方法であって、この方法が、試験すべき標本と、直接的又は間接的に標識付けされた ACT-4-h-1レセプターポリペプチドとを接触せしめ、そして特異的結合パートナーと前記ポリペプチドとの間の特異的結合を検出することを含んでなり、試験された標本中に特異的結合が存在すれば、標本中にそのような物質が存在するものとすることを特徴とする、前記使用方法。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体又はそのフラグメントであって前記ポリペプチドに特異的に結合するもの(ATCC No. HB11483として寄託されているハイブリドーマにより生産される抗体L106を除く)。
【請求項14】
前記抗体がモノクローナル抗体又はヒト型化抗体である、請求項13に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項15】
トキシン(毒素)に連結されている、請求項13又は14に記載の抗体又はそのフラグメント。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の抗体又はそのフラグメントに由来するヒト型化重鎖及びヒト型化軽鎖を含んで成るヒト型化抗体、又はそのフラグメント。
【請求項17】
(i)前記ヒト型化軽鎖が、L106抗体の対応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する3個の相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含んでなり、そしてヒト軽鎖可変領域フレームワーク配列と実質的に同一の可変領域フレームワーク配列を有し;又は
(ii)前記ヒト型化重鎖が、L106抗体の対応する相補性決定領域からのアミノ酸配列を有する3個の相補性決定領域(CDR1、CDR2及びCDR3)を含んでなり、そしてヒト重鎖可変領域フレームワーク配列と実質的に同一の可変領域フレームワーク配列を有し;そして/又は
(iii )当該ヒト型化抗体は、L106抗体の結合親和性の3倍以内の結合親和性をもって、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドに特異的に結合し;
ここで、前記L106抗体は、ATCC No. HB 11483として寄託されているハイブリドーマにより生産されるものである、
請求項16に記載のヒト型化抗体。
【請求項18】
医薬として許容されるビヒクル、賦形剤及び/又は希釈剤と共に、
(i)請求項1〜3のいずれか1項に記載のACT-4レセプターポリペプチド;又は
(ii)請求項13〜17のいずれか1項に記載の抗体;
を含んで成る診断用組成物。
【請求項19】
請求項13〜17のいずれか1項に記載の抗体又はそのフラグメントを含んでなる、患者から得られる試料中における活性化されたCD4+T−細胞の存在を検出又は定量するための組成物であって、前記試料中に存在するCD4+T−細胞上のACT-4レセプターの存在又は量が当該患者における活性化されたCD4+T−細胞を示すものであり、これが免疫系の疾患又は状態の診断となる、ことを特徴とする組成物。
【請求項20】
CD4+T−細胞の検出又は定量が、患者から得られる細胞性試料に対して、
(i)前記抗体を直接的又は間接的に標識し;
(ii)工程(i)の前記抗体に試料を暴露し;そして
(iii )前記試料中のCD4+T−細胞上に存在するACT-4レセプターポリペプチドへの前記標識された抗体の特異的結合の量を決定する、
工程により行われる、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
医薬として使用するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載のACT-4レセプターポリペプチド。
【請求項22】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードする配列を含んで成るか又はから成る核酸フラグメント。
【請求項23】
前記核酸フラグメントが、
(a)配列番号:1のDNA配列又はそのRNA同等物;
(c)上記(a)の配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列;又は
(3)請求項3に記載のポリペプチドをコードする配列;
である、請求項22に記載の核酸フラグメント。
【請求項24】
請求項1に記載のポリペプチドをコードする核酸。
【請求項25】
全長50kDaのACT-4-h-1レセプターをコードする核酸以外の、請求項22〜24のいずれか1項に記載の核酸又は核酸フラグメントにより安定にトランスフェクトされており、そして表面にACT-4レセプターポリペプチドを発現する、単離された細胞系。
【請求項26】
請求項22〜24のいずれか1項に記載の核酸叉は核酸フラグメントを含んで成る発現ベクター。
【請求項27】
請求項26に記載の発現ベクターにより形質転換叉はトランスフェクトされた細胞系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−240311(P2009−240311A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86700(P2009−86700)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【分割の表示】特願2006−285354(P2006−285354)の分割
【原出願日】平成6年11月3日(1994.11.3)
【出願人】(500429147)ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ リーランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティ (13)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】