説明

活性化剤を保護するためのワックス粒子、および多機能性自律的修復複合材料

(i) ポリマー、(ii) 重合剤、(iii) 該重合剤に対する、保護された対応する活性化剤、および(iv) 複数のカプセルを含む、複合材料。該重合剤は、該カプセル内にあり、かつ該対応する活性化剤は、該ポリマーおよび該重合剤用の、対応するカプセル化剤で保護されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(合衆国政府の支援による研究または開発)
本件特許出願の課題は、部分的に空軍(Air Force; AFOSR承認番号F49620-03-1-0179)による、資金提供の基に開発されたものでる。従って、政府は、本件発明に関する幾分かの権利を有する。
【0002】
(技術分野)
ポリマー複合体内に生成される亀裂は、その検出が困難であり、しかもその修復は殆ど不可能である。該材料の寿命を大幅に延長する可能性を持つ、亀裂を自律的に修復する首尾よい方法が、米国特許第6,518,330号並びに刊行物(文献1-5)に記載されている。この自己修復系は、例えばグラッブズ(Grubbs')触媒の固体粒子と、エポキシマトリックス中に包埋された液状ジシクロペンタジエン(DCPD)を含有するカプセルとを含む材料(図1A)を包含する。亀裂が該材料を通して伝播した場合には、該亀裂は該マイクロカプセルを破壊して、該亀裂のある面にDCPDを遊離する。この遊離DCPDは、次いで該グラッブズ触媒と混合し、開環メタセーシス重合(Ring Opening Metathesis Polymerization; ROMP)を引起し、該亀裂の存在していた部分に構造的な連続性を与えるように修復を行う。
【0003】
この系は、比較的多量の触媒の添加(2.5質量%)によって、良好に作用するが、多数の因子が、より少量での触媒の添加を、効果の低いものとしている。第一に、この触媒は、エポキシ中に良好に分散せず、従って低い触媒濃度を使用した場合には、極めて少数の(かつ比較的大きな)触媒粒子のみが、該亀裂面に存在することになる。第二に、該エポキシ樹脂の硬化剤であるジエチレントリアミン(DETA)は、破滅的にグラッブズ触媒を攻撃する(文献2)。該触媒を良好に分散させ、かつ該触媒をDETAに暴露することのない系は、該触媒の使用をより一層効率的なものとするであろう。
【0004】
(発明の開示)
第一の局面において、本発明は複合材料を提供し、該材料は、(i)ポリマー、(ii)重合剤、(iii)該重合剤に対する、保護された対応する活性化剤、および(iv)複数のカプセルを含む。ここで、該重合剤は、該カプセル内にあり、かつ該対応する活性化剤は、該ポリマーおよび該重合剤用の、対応するカプセル化剤で保護されている。
第二の局面において、本発明は複合材料を提供し、該材料は、(i)ポリマー、(ii)重合剤、(iii)該重合剤に対する、保護された対応する触媒の微粒子、および(iv)複数のカプセルを含む。ここで、該重合剤は、該カプセル内にあり、また該対応する触媒は、該ポリマーおよび該重合剤用の、対応するカプセル化剤で保護されており、かつ該カプセル化剤は、ワックスを含む。
第三の局面において、本発明は粒子を提供し、該粒子は、(a)化合物、および(b)該化合物を取巻いているワックスを含む。該粒子は、微粒子である。
【0005】
定義
重合剤は、この重合剤の対応する活性化剤と接触した場合に、ポリマーを生成する組成物である。重合剤の例は、ポリマーのモノマー、例えばスチレン、エチレン、(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタジエン(DCPD);多官能性モノマー型ポリマー系のモノマー、例えばジオール、ジアミン、およびエポキシド;およびプレポリマー、例えば依然として更に重合することのできる、部分的に重合されたモノマーを包含する。
活性化剤は、重合剤と接触または混合した場合に、ポリマーを生成する任意の物質である。活性化剤の例は、触媒、開始剤、および本来的活性化部分である。重合剤の、対応する活性化剤は、特定の重合剤と接触または混合した場合に、ポリマーを生成する活性化剤である。
触媒は、重合性組成物の重合を引起す化合物または部分であり、また重合を生じた時点において常に消費されるものではない。これは、開始剤および本来的活性化部分とは、対照的なものである。触媒の例は、開環重合(ROMP)触媒、例えばグラッブズ触媒を包含する。重合剤の、対応する触媒は、該当する特定の重合剤と接触または混合した場合に、ポリマーを生成する触媒である。
【0006】
開始剤は、重合性組成物の重合を引起す化合物であり、また重合を生じた時点において、常に消費されるものではない。開始剤の例は、パーオキシド(これらは、不飽和モノマーの重合を引起すラジカルを生成する);多官能性モノマー型ポリマー系のモノマー、例えばジオール、ジアミン、およびエポキシド;およびアミン(これらは、エポキシドと共にポリマーを形成する)である。重合剤の、対応する開始剤は、該当する特定の重合剤と接触または混合した場合に、ポリマーを生成する開始剤である。
本来的活性化部分とは、重合剤と混合または接触した場合に、ポリマーを生成する、あるポリマーの部分であり、また重合を生じた時点において、常に消費されてしまうものではない。本来的活性化部分の例は、アミン部分(これは、エポキシドと共にポリマーを形成するであろう)を含む。
【0007】
水-奪活性の活性化剤、水-奪活性触媒、水-奪活性開始剤、および水-奪活性の本来的活性化部分は、各々水分または水に暴露した後に、重合剤からポリマーを生成する能力が低下した型の、夫々活性化剤、触媒、開始剤および本来的活性化部分である。同様に、水-奪活性の対応する活性化剤、水-奪活性の対応する触媒、水-奪活性の対応する開始剤、および水-奪活性の対応する本来的活性化部分は、各々水分または水に暴露した後に、重合剤からポリマーを生成する能力が低下した型の、夫々対応する活性化剤、対応する触媒、対応する開始剤、および対応する本来的活性化部分である。水-奪活性の活性化剤の例は、WCl6、MoCl5、およびEt2AlClを包含する。
化合物とは、多くとも100個の繰返し単位を含む分子である。これは、ポリマーとは対照的であり、後者は100個を越える繰返し単位を含む。
カプセルとは、1:1〜1:10なる範囲内のアスペクト比を持つ、中空の閉じた物体であり、固体、液体、気体またはこれらの組合せを収容することができる。ある物体のアスペクト比は、その最も短い軸対その最長の軸の比であり、これらの軸は直交している必要はない。カプセルは、このアスペクト比の範囲内に入る任意の形状、例えば球状、トロイドまたは不規則なアメボイド(ameboid)形状を持つことができる。カプセルの表面は、任意の組織、例えば粗いまたは滑らかな組織を持つことができる。
【0008】
カプセル化剤とは、重合剤中に溶解し、また活性化剤を、ポリマーを製造するために使用する材料と反応しないように保護する物質である。ポリマーおよび重合剤に対する対応するカプセル化剤は、活性化剤を、該当する特定のポリマーを製造するために使用する材料と反応しないように保護し、かつ該特定の重合剤に溶解する。パラフィンが、カプセル化剤の一例である。化合物またはポリマーをカプセル化剤で被覆する場合、これは「保護」と称される。
微粒子とは、大きくとも500μmなる平均径を持つ粒子である。
【0009】
(詳細な説明)
Taberおよびその共同研究者等は、グラッブズ触媒をパラフィンワックス中に配合して、該触媒を空気から保護できることを示した(文献6)。パラフィンワックスは、DETAに不溶性、かつDCPDに可溶性であり、従ってこのワックスはDETAの有害な作用からグラッブズ触媒を保護し、一方で依然としてDCPDに暴露された際には、該触媒を活性なものとすることが予想される。しかし、該ワックスで保護された触媒を、該エポキシマトリックス中に、小さな粒子として分散する、確立された方法は、文献には見出せなかった。特許文献は、ワックス球を生成するための幾つかの技術を含むが、試薬を含有する小さなワックス粒子の製法は、これまでに報告されていない(文献7、8)。
本発明は、カプセル化剤によって保護されている活性化剤が、保護されている場合には、該活性化剤は奪活され、一方で該ポリマーが形成されることから、保護されていない場合には不可能な、活性化剤としての使用が可能となるという発見を利用する。その上、該活性化剤が保護されている場合、保護されていない場合と同様な自己-修復性の材料を生成する必要は全くない。これらの低い添加レベルは、何等かの自己-修復性が発生する前に、該ポリマーの物性を改善することも可能である。
【0010】
本発明は複合材料を含み、これは、図1Bに示した如く、カプセル4およびポリマー6中の保護された活性化剤2を含む。これらのカプセルは、重合剤を含む。好ましくは、該活性化剤は、該重合剤の、対応する本来的活性化部分ではなく、またより好ましくは該活性化剤は、対応する開始剤であり、あるいは最も好ましくは該重合剤に対する対応する触媒である。該活性化剤は、該ポリマーおよび該重合剤の、対応するカプセル化剤によって保護されており、またより好ましくは、該カプセル化剤は、ワックスである。
本発明の複合体は、米国特許第6,518,330号(ここに参考文献として組み入れる)の複合体と同一または類似するが、その活性化剤は保護された活性化剤である。更に、余り好ましくはないが、活性化剤として、本来的活性化部分を利用することも可能である。
【0011】
該保護された活性化剤は、様々な方法によって製造することができる。例えば、該カプセル化剤を含む液体を製造し、次いで該活性化剤の粉末または小さな粒子を、この液体中に分散させることが可能である。次に、該カプセル化剤を固化させる。該保護された活性化剤の粒子、好ましくは微粒子を生成する。これらの粒子が、該ポリマーに、その生成中に添加される。このようにして、該活性化剤は、該ポリマーを製造するのに使用する物質から保護される。
一例として、該カプセル化剤が、溶融可能である場合には、該活性化剤を添加し、次いでこの系を冷却する。次に、固形の保護された活性化剤を、粉砕して粒子を生成し得る。同様に、該カプセル化剤を溶媒に溶解して、溶液を生成し、該活性化剤と混合し、該溶媒を除去し、再度この固体混合物を粉砕して、粒子を生成し得る。あるいはまた、米国特許第6,669,961号(ここに参考文献として組み入れる)に記載されている方法を利用して、該溶融混合物または溶液を、粒子に成型することができる。
【0012】
別の系において、該液状混合物を、該カプセル化剤および該活性化剤両者が不溶性である溶媒中に流込み、次いで迅速攪拌によって懸濁液を得、迅速に攪拌しつつ冷却して、該カプセル化剤を固化し、該保護された活性化剤の粒子を、より好ましくはその微粒子を形成することができる。好ましくは、界面活性剤を含める。
例えば、ワックスを該カプセル化剤として使用し、かつビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)ジクロリド(第一世代のグラッブズ触媒)(文献9)を、該活性化剤として使用できる。このワックス-保護触媒の微粒子は、高温の迅速に攪拌されたポリ(エチレン-co-無水マレイン酸)(EMA)の水性溶液に、該溶融ワックスの混合物を流込むことによって合成することができる。次に、得られた溶融ワックス液滴の懸濁液を、冷水を添加することによって、急速に冷却して、該ワックスを固化することができる。該ワックスの微粒子を濾過し、乾燥し、かつ篩に掛けて、粗い粉末を得ることができる。これを実施した場合に、顕微鏡観察は、触媒粒子が、斑入りの外観をもつ微粒子を与える、無色ワックスとして懸濁されていることを示すが、この不均質性は肉眼では見ることができない。
【0013】
グラッブズ触媒を含まない、ワックスのモデル系は、該微粒子の平均粒径が、攪拌速度によって容易に調節できることを示している。例えば、450、900、および1500rpmなる攪拌速度を用いた場合、回収されるワックス微粒子の平均径は、夫々150、90、および50μmであった。その粒度分布は大きいが、篩の使用によって、狭い粒度範囲のものを取り出すことができる。EMAは、懸濁液の生成を容易にするための界面活性剤として含められる。EMAが存在しない場合には、該平均粒径は、ファクタ3以上増大し、過剰量の非-球形ワックス崩壊物が形成される。
該カプセル化剤が、2種またはそれ以上の化合物の反応によって製造できる、例えばポリマーである場合には、次に化合物を含有する溶液または液体を生成し、これと該活性化剤とを混合し、次いで該化合物の反応により、該保護された活性化剤を生成する。再度、得られる固体を粉砕して、粒子を生成することができる。
【0014】
該カプセル化剤は、該重合剤に対して可溶性であり、室温において固体である。カプセル化剤の例は、ポリマーおよびワックス類である。ワックス類は、ワックス状ポリマーを含む。ワックス類は水に対して不溶性であり、室温にて固体または半固体の、通常水よりも低い密度を持つ有機物質であり、また典型的には、室温以上の温度にて溶融して、液体を生成する。好ましいワックス類は、あらゆる天然産のおよび合成のワックス類、ワックスエステル類、および一般的に、融点範囲10℃未満の、30℃またはそれ以上の融点を持ち、また通常これらが暴露されることになる試薬類または溶媒とは非-反応性である。ワックス類の例は、様々な長鎖(脂肪)アルコールと、長鎖を持つ酸とのエステルであり、好ましくはここで、該エステルの少なくとも一つの構成員は、様々な不飽和および分岐鎖型を含む、10以上の炭素原子を含み、また該ワックスの例は、グリセロールおよびステロールのエステルをも包含する。また、幾つかの遊離酸またはアルコールは、融点および不活性な特性において、ワックス-様の特性を持つ。使用可能な飽和脂肪酸の例は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、テトラコサン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、およびメリシン酸である。使用可能な不飽和脂肪酸の幾つかの例は、チグリン酸、ヒポガエン酸、ガイジン(gaidic)酸、フィセトレイン(physetoleic)酸、エライジン酸、オレイン酸、イソオレイン酸、エルジン(erudic)酸、ブラシジン酸、およびイソエルジン(isoerudic)酸である。使用可能な脂肪アルコールの幾つかの例は、オクタデシル、カルナウビル、セリル、メリシル、およびフィトールである。同様に含まれるものは、これらおよびその他の脂肪酸と、任意の適当な脂肪アルコール、またはステロール、例えばコレステロール、またはグリセロールとの様々なエステルである。他の例は、天然のまたは適当に変性された、もしくは誘導体化されたワックス、例えば様々な植物由来のワックス、グリースおよびオイルであり、カルナウバワックス、クランベリーワックス、オウリキュリ(ouricuri)ワックス、カンデリラワックス、ラフィアワックス、アップル、コットン、およびカクタスワックス;バクテリアによって生成されたワックス類(グリースを含む)(例えば、セチルステアレート);真菌類、原虫類および藻類;様々な無脊椎動物のワックスおよびグリース、例えば蜜蝋等の昆虫ワックス(例えば、トリアコンチルパルミテート、パルマリルパルミテート)、および球菌(Coccus sp.)由来のワックス(例えば、ラック、コチニールおよびイボタ蝋);他の動物脂肪(例えば、トリグリセライド)および鯨蝋を含むワックス類(例えば、セチルパルミテート)、ラノリンおよび羊毛脂である。
【0015】
同様に、様々な誘導体、抽出物、およびこれらの組合せも含まれる。他の適当なワックスは、多くの天然または合成炭化水素、例えば白蝋、パラフィン、セレシン、ワセリン、シリコングリースおよびワックス、ポリ塩素化またはポリフッ素化炭化水素、芳香族炭化水素(例えば、ナフタレンおよびジュレン(1,2,4,5-テトラメチルベンゼン))、ポリエーテルワックスおよびポリエステルワックスである。蝋質ポリマーとは、単独でまたは他のワックスと組合わせた際に、ワックス状の化学的または物理的特性を持つポリマーである。ワックス状ポリマーの例は、ポリエチレン緒ポリプロピレンである。ワックスと組合わせて、蝋質ポリマーを生成することのできるポリマーの例は、ある種のガムおよびゴム、様々な種類のラテックス、ガタパーチャ、バラタ、チクルおよび様々な誘導体である。同様に、合成ゴム、例えばイソプレンポリマー、水素添加ゴム、ブタジエンポリマー、クロロプレンポリマーおよびブチルポリマーである。
以下の表は、カプセル化剤の例を列挙するものである。
【0016】
【表1】

【0017】
本明細書で使用する用語「可溶性」とは、特に蝋質ポリマーの場合において、膨潤性をも包含する。即ち、該ポリマーは該ワックスを実際に溶解する必要はなく、重合剤が活性化剤と接触した際に、その重合を可能とするに十分な程度に、該カプセル化剤に進入することができればよい。
該カプセルは、重合剤を含有する。該重合剤は、重合性の化合物、例えばモノマーまたはプレポリマーを含み、また場合によって他の成分、例えば他のモノマーおよび/またはプレポリマー安定剤、溶媒、粘度調節剤、例えばポリマー、着臭剤、着色剤および染料、発泡剤、酸化防止剤、および助触媒を含むことができる。好ましくは、該重合剤は、室温にて液体である。
好ましくは、該活性化剤は、触媒または開始剤である。重合性化合物の例は、好ましくは4-50個の炭素原子を含み、また場合によりヘテロ原子を含む環状オレフィン、例えばDCPD、置換DCPD、ノルボルネン、置換ノルボルネン、シクロオクタジエン、および置換シクロオクタジエンである。これらに対応する触媒は、開環メタセーシス重合(ROMP)触媒、例えばシュロック(Schrock)触媒(文献14,15)である。
【0018】
重合性化合物の他の例は、重合された場合に夫々ポリエステルおよびナイロンを与える、カプロラクトン等のラクトン、およびラクタムである。これらに対応する触媒は、環状エステル重合触媒および環状アミド重合触媒、例えばスカンジウムトリフラートである。
更に、重合剤は、重合性化合物と、二液性触媒の一方を含むことができ、対応する開始剤は、該二液性触媒の他方である。例えば、該重合性化合物は、環状オレフィンであり得、二液性触媒の一方は、タングステン化合物、例えば有機アンモニウムタングステン酸塩、有機アルソニウムタングステン酸塩、または有機ホスホニウムタングステン酸塩;あるいはモリブデン化合物、例えば有機アンモニウムモリブデン酸塩、有機アルソニウムモリブデン酸塩、または有機ホスホニウムモリブデン酸塩であり得る。該二液性触媒の他方は、アルキルアルミニウム化合物、例えばアルコキシアルキルアルミニウムハライド、アリールオキシアルキルアルミニウムハライド、または化合物中の金属がスズ、鉛、またはアルミニウムである、金属オキシアルキルアルミニウムハライド;または有機スズ化合物、例えばテトラアルキルスズ、トリアルキルスズハライド、またはトリアリールスズハライドである。
【0019】
別のこのような系において、該重合性化合物は、不飽和化合物、例えばアクリレート;アクリル酸;アルキルアクリレート;アルキルアクリル酸;スチレン;イソプレン;およびブタジエンであり得る。この場合、原子移動(atom transfer)ラジカル重合(ATRP)を利用することができ、その2つの成分の一方は、該重合性化合物と混合され、かつ他方は該開始剤として機能し、一方の成分は、1-クロロ-1-フェニルエタン等の有機ハライドであり、かつ他方の成分は、銅(I)ビピリジル錯体等の銅(I)源であり得る。あるいはまた、一方の成分は、ベンゾイルパーオキシド等のパーオキシドであり得、また他方の成分は、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシ(TEMPO)等のニトロオキソプリカーサであり得る。これらの系は、Malcolm P. Stevens: ポリマー化学:概論(Polymer Chemistry: An Introduction)、第3版、N.Y., オックスフォードユニバーシティープレス刊, 1999, pp. 184-186に記載されている。
【0020】
もう一つのこのような系において、該重合性化合物は、ヒドロキシル官能基(-OH)を持つイソシアネート官能基(-N=C=O)を含むことができる。この系に関連して、該重合性材料は、例えばヒドロキシル基およびイソシアネート基両者を含む化合物、あるいは少なくとも2つのイソシアネート基を含む一方の化合物と、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む他方の化合物とを含む2種の異なる化合物であり得る。イソシアネート基とヒドロキシル基との反応は、二酸化炭素を放出する可能性のある、該化合物間にウレタン結合(-N-C(=O)-O-)を生成することができる。この二酸化炭素は、発泡ポリウレタンフォームの生成をもたらし、場合により該重合剤は、ジクロロメタン等といった、揮発性液体等の発泡剤を含むことができる。この場合において、縮合重合を利用することができ、その2つの成分の一方は、該重合性の化合物と混合され、かつ他方はその開始剤として機能する。例えば、一つの成分は、2-エチルヘキサン酸第一錫等の、アルキルスズ化合物であり得、また他方の成分はジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)等の第三のアミンであり得る。これらの系は、Malcolm P. Stevens: ポリマー化学:概論(Polymer Chemistry: An Introduction)、第3版、N.Y., オックスフォードユニバーシティープレス刊, 1999, pp. 184-186に記載されている。
保護された活性化剤を使用することによって、極めて広範な重合剤および対応する活性化剤、特に触媒を使用することが可能となる。以下の表は、追加の重合剤および対応する活性化剤を含む:

















【0021】
【表2】

【0022】
該ポリマーは、カプセルおよび該重合剤に対する対応する活性化剤を含む。場合により、一群のカプセルが、存在してもよく該カプセルは、1種またはそれ以上の追加の成分、例えば安定化剤、溶媒、ポリマー等の粘度改良剤、着臭剤、着色剤および染料、発泡剤、酸化防止剤および助触媒を含む。
好ましくは、該カプセルは、10nm〜1mmなる範囲、より好ましくは30-500μmなる範囲、最も好ましくは50〜300μmなる範囲内の平均径を持つ。該カプセルは、1:1〜1:10なる範囲、好ましくは1:1〜1:5なる範囲、より好ましくは1:1〜1:3なる範囲、およびより一層好ましくは1:1〜1:2なる範囲、および最も好ましくは1:1〜1:1.5なる範囲内のアスペクト比を持つ。
これらカプセルの壁の厚みは、好ましくは100nm〜3μmなる範囲にある。該カプセル壁の厚みの選択は、該複合体における該ポリマーに依存する。例えば、厚過ぎるカプセル壁は、亀裂が接近してきた場合に破壊することはなく、一方極めて薄い厚みを持つカプセルは、加工中に破壊してしまうであろう。
【0023】
該複合体の該カプセルと該ポリマーとの間の接着性は、該カプセルが接近する、亀裂の存在下で、破壊または剥離するかに影響を与える。該ポリマーと該カプセルとの間の接着を促進するために、様々なシランカップリング剤を使用することができる。典型的には、これらは、式:R-SiX3の化合物である。ここで、Rは、好ましくは珪素原子からプロピレン基によって分離された、反応性の基R1であり、またXは、アルコキシ基(好ましくは、メトキシ基)、例えばR1CH2CH2CH2Si(OCH3)3である。その例は、ダウコーニング(DOW CORNING)社から入手できるシランカップ剤(各名称の背後のカッコ内の反応性基を含む)を含む:Z6020(ジアミノ);Z6030(メタクリレート);Z6032(カチオン性スチリルアミン);Z6040(エポキシ);およびZ6075(ビニル)。
該複合体の該カプセルとポリマーとの間の接着性を高めるために、該カプセルを、該カップリング剤の溶液中で洗浄することによって処理ができる。例えば、ウレア-ホルムアルデヒドカプセルは、シラン(Silane) Z6020およびヘキサン(1:20質量比)の溶液で洗浄し、次いで該ポリマーにシランZ6032(1質量%)を添加することにより、洗浄することができる。
【0024】
カプセルは、様々な技術を用いて、かつ様々な材料、例えば「マイクロカプセル化:方法および工業的応用(Microencapsulation: Methods and Industrial Applications)」、Benita編、サイモンマルセルデッカー(Simon Marcel Dekker)、N.Y. 1996; および「マイクロカプセル化:方法および応用(Microencapsulation: Processes and Applications)」、Vandegaer編、J.プレナム(Plenum)プレス、N.Y. 1974; および「マイクロカプセル化:処理および技術(Microcapsule Processing and Technology)」、Kondo, A. マルセルデッカー、N.Y. 1979に記載されているものから製造できる。これらカプセルを製造できる材料の例、およびこれらを製造する技術は、現場重合により製造した、ウレア-ホルムアルデヒド;錯体コアセルベーションにより製造した、ゼラチン;所定の架橋度に応じて(架橋の程度も該カプセルの脆弱さを決定する)、イソシアネートとジアミンまたはトリアミンとの反応によって製造した、ポリウレア;および適当な酸クロリドおよび水溶性トリアミンの使用により製造した、ポリアミドを包含する。
該ポリマーは、該カプセルを分散することのできる任意のポリマー材料であり得る。その例は、ナイロン等のポリアミド;ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリカプロラクトン等のポリエステル;ポリカーボネート;エポキシド等のポリエーテル;ポリピロメリットイミド(例えば、カプタン(KAPTAN))等のポリイミド;フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(例えば、バケライト(BAKELITE));メラミン樹脂等のアミン-ホルムアルデヒド樹脂;ポリスルホン;ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS);ポリウレタン;ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ(DCPD)およびポリ(メチルメタクリレート);ポリシラン、例えばポリ(カーボネート-シロキサン);およびポリホスファゼンを含む。
【0025】
該カプセルおよび保護された活性化剤(例えば、触媒または開始剤)は、該カプセルおよび活性化剤を包囲するポリマーを生成することにより、例えばモノマーを重合して、該モノマーに混合された、該カプセルおよび活性化剤を含むポリマーを生成することにより、該ポリマー中に分散することができる。あるいはまた、該ポリマーを、まず形成し、次いで該カプセルおよび活性化剤をそこに混入させることが可能である。例えば、該ポリマーを溶媒に溶解し、該カプセルおよび保護された活性化剤を、該溶液中に混合し、その後該溶媒を除去する。更に、他の成分、例えば繊維、フィラー、接着性改良剤、発泡剤、酸化防止剤、着色剤および染料、および芳香剤を、該ポリマーに添加することができる。
【実施例】
【0026】
グラッブズ触媒を含むワックス微粒子の合成
N2-で満たされたグローブボックス(globebox)中で、パラフィンワックス(アルドリッチ(Aldrich)社、10.0g、mp=58-62℃)およびグラッブズ触媒(ストレム(Strem)社、525mg)を、バイアル中に封止した。このバイアルを該グローブボックスから取出した。水(225mL)、ポリ(エチレン-co-無水マレイン酸)(0.63g、0.28質量%)およびオクタノール(1滴)を含む溶液を、82℃の水浴中で、1000mLのビーカーに入れ、機械的な攪拌機で、900RPMにて攪拌した。該ワックスおよび触媒を含む該バイアルを、同一の82℃の水浴に浸漬した。10分後、該ワックスは溶融し、また該水性溶液は65-70℃に達した。該溶融ワックスを含む該バイアルを、振とうして、該触媒を分散させた。次いで、該バイアルを開放(空気中で)し、また該ワックスを、該水性溶液に流し込んだ。2分後に、冷水(600mL、0℃)を迅速に添加し、攪拌を停止した。得られた微粒子を、濾過により集め、減圧下で乾燥した。
【0027】
ワックスで保護したグラッブズ触媒により触媒したROMPの速度論
N2-で満たされたグローブボックス中で、PCy3(4.1mM)のd-8トルエンに溶解した原液を調製した。次いで、5質量%のグラッブズ触媒(0.0085mM)を含有するワックス微粒子(140mg)を含む、NMRチューブに、この原液を添加した。未保護のグラッブズ触媒(7.0mg、0.0085mM)および触媒を含まないワックス微粒子(133mg)を含有する、コントロールサンプルを、上記と同一のd-8トルエンに溶解したPCy3の原液を用いて調製した。各溶液の全質量は、0.70gであった。これらのサンプルを隔膜によって密閉し、かつ該グローブボックスから取出した。メシチレン(10μL)を、内部標準として、注射器で添加した。エンド-DCPDによる該ROMPの速度論を、前に記載したように、現場1H NMRによって得た(文献10)。
破面テスト:
確立された方法(文献1、2、11)を利用して、テーパーを掛けた、ダブル-カンチレバービーム(tapered double-cantilever beam; TDCB)幾何形状を持つ破壊サンプルを、10質量%の180μm径を持つDCPDを満たしたマイクロカプセルを含むように製造した(文献1、2、11)。Mostovoy等により開発されたこのTDCB幾何形状(文献12)は、歪エネルギーの、亀裂長さに独立した尺度を与える:
Jc = β(αPc)2/E (1)
【0028】
このように、幾何学的な項α、臨界破壊負荷Pc、および該項βのみが、必要とされる測定値である。Brown等によって議論されているように、該TDCBサンプルの幾何学的形状に対して、α=11.2×103 m-3/2であることを、経験的に決定できる(文献2、4)。非-直線性の項βは、亀裂の成長に先立つ、修復された界面の非線形性弾性挙動を説明するために導入された。バージン(線形弾性)材料の破壊に対して、βは、固有の単位値(1)をとり、修復された材料の破壊に関連して、βは、測定された負荷-変位曲線下方の、亀裂成長点までの面積を、同一の初期コンプライアンスおよびピーク負荷を持つ、線形弾性負荷-変位曲線下部の面積で割ることにより計算できる。バージン破壊は、あらゆる場合において脆弱であり、かつ微粒子のサイズ、濃度、または触媒濃度に対して、統計的に独立であった(Jc = Gc = 250±50 J/m2, KIC = 0.84±0.07MPam1/2)。
修復効率は、White等(文献1)により確立されたプロトコールを変更することにより、評価した。TDCB破壊検体は、5μm/秒なる変位速度にて、変位を制御しつつ、負荷を掛け、かつテストしたピンであった。サンプルは、初期コンプライアンスおよびピーク負荷を測定して、破壊するまでテストして、初期(バージン)歪エネルギー放出率を確立した。次いで、負荷を取除き、クラックの面を接触させた。サンプルを24時間後に再テストし、修復、非線形歪エネルギー放出率を測定した。亀裂修復効率、ηを、歪エネルギー回復能力として定義した(文献13):
【0029】
η = Jchealed/Jcvirginhealed(Pchealed/Pcvirgin)2 (2)
上記ワックスに包埋させた触媒の反応性を、該微粒子の存在下で、現場1H NMRを利用して定量することによって、エンド-DCPDのROMP速度を測定した(文献10)。該ワックス粒子から得たグラッブズ触媒を用いて調製したサンプルに対して測定された、DCPDのROMPに関する速度定数は、0.0162s-1であった。保護されていないグラッブズ触媒を用いて調製した、類似するコントロールサンプルは、0.0179s-1なる速度定数を有していた。このことは、該触媒をワックス微粒子中に埋設する工程が、反応性を僅かに9%減じたに過ぎないことを示している。この速度における僅かな減少は、該触媒の短時間に渡る、熱または空気への暴露が、その反応性に対してほんの僅かな穏やかな影響を及ぼすに過ぎないことを示している。更に、該ワックスで保護した触媒が、溶融して、新たな微粒子に流入させた場合、その測定される速度定数は、元の微粒子の値から大幅に変化することはない。このリサイクル工程を、反応性の喪失無しに行うことができるので、所定のサイズ範囲を外れる微粒子は、有用な径を持つように再生され、結果として経費的に不利な触媒の棄却を回避することができる。
【0030】
該ワックスは、エチレンジアミン(EDA)に対する該触媒の、滞留を大幅に増大する。コントロールとして、保護されていないグラッブズ触媒を含むサンプルを、純粋なEDAに暴露し、即座に真空下に置いた。10分以内に、該EDAは、完全に蒸発した。同一の手順を、ワックスで保護した触媒の微粒子を用いて行った。NMR測定用サンプルを、不揮発性の触媒およびワックス残留物を用いて調製し、また該暴露した触媒を用いて、DCPDのROMPの関する速度を測定した。該ワックスは、該触媒の反応性の69%を保存し、一方該未保護の触媒は、反応性を示さなかった。その低い反応性のために、DETAは、同様な実験において使用できなかったが、該ワックスは、同様にDETAから該触媒を保護するものと思われる。該ワックスは、自己-修復サンプルを製造するのに使用する該DETAから、該触媒を保護できるので、より少量の触媒が、サンプルの調製中に崩壊し、低い触媒使用量で、修復が可能となるはずである。
【0031】
該ワックスの微粒子は、またエポキシマトリックス全体に渡り、グラッブズ触媒を均一に分散させる上で有用であると思われる。図2Aは、未保護の触媒を含む(2.5質量%)エポキシマトリックスのサンプルを示し、またこの顕微鏡写真は、該触媒が、比較的大きな間隔で、寧ろ大きな粒子を生成する傾向があることを示している。図2Bは、5質量%のワックス微粒子を含む同様なサンプルを示す。しかし、これら微粒子は、僅かに5質量%のグラッブズ触媒を含むに過ぎないので、該サンプルは、グラッブズ触媒を、0.25質量%という全体としての使用量で含むに過ぎず、この量は、図2Aにおけるサンプルよりも低濃度である。図2Bが示すように、該ワックス微粒子は、該サンプル全体に渡り十分に分配されて、より低い全体的な触媒の使用量においてさえ、触媒粒子のより高い断面内の密度を与える。このように、該触媒は、破壊されたサンプルの亀裂面を横切って、より均一に分布し、そのために、少数の触媒粒子近傍における局在化された領域に対してのみではなく、寧ろ多量の触媒を、全亀裂面上の該DCPDに該触媒を分配することによって、容易に均一な修復を行う。
【0032】
以前に報告された技術(文献1、2、4)を利用して、破壊されたサンプルを調製し、10質量%DCPDマイクロカプセルおよび触媒微粒子の様々な使用量についてテストした。バージンの、修復された検体に関連する代表的な負荷-変位曲線を、図3Aおよび3Bに示す。未保護の触媒を用いて調製した自己-修復型サンプルに関して以前に報告された挙動とは異なり、触媒微粒子を用いて達成された自己-修復は、亀裂伝播の開始前に、非線形の挙動を示す。この非線形性は、該ワックスにより柔軟化されているポリジシクロペンタジエンに起因するものと思われ、該ワックスは、硬化前に該DCPD中に溶解し、また該柔軟化作用については、別の研究においてより詳細に検討する。この非-線形性のために、亀裂伝播における歪エネルギー(Jc)は、破断時の応力強さ(KIC)(これは、本出願人の以前の報告において使用した)よりも、良好な修復能力を表す尺度であり、また該修復の臨界歪エネルギーは、該亀裂の伝播する臨界的な負荷(Pc)および上記パラメータβのとる非-線形性の程度の両者に依存し、これら項目の何れかにおける増加が、修復性を高める。更に、修復効率は、亀裂伝播前の、該歪エネルギー復元の尺度であるが、該伝播の開始後の該修復材料における亀裂の成長に対する、より大きな抵抗が、該バージン材料の脆性破損よりも大きな、サンプル破壊のための大きな全エネルギーを発生する。従って、臨界歪エネルギーを用いて算出した修復効率は、自己-修復の完全な復元効果を過小評価する恐れがある。
【0033】
図4Aは、修復効率が、該ワックス微粒子中に含まれる触媒の量に伴って、どのように変動するかを示す。予想されるように、最大量の触媒を含むサンプルは、最良の修復効率(93%)を与えるが、試みられた最小の触媒使用量においてさえ、良好な修復(93%)が観測された。この系列において、該エポキシ中の微粒子の添加量は、5質量%にて一定に維持する。この系における非-線形性が、該ポリDCPD中に配合されたワックスに起因することが予想される場合、この系列におけるβに関する比較的一定の値は、各サンプルにおける、ワックスの殆ど一定の量によるものであると思われる。
図4Aにおけるデータは、0.25質量%という全体としての触媒添加量(即ち、該微粒子中の5質量%なる触媒と、該エポキシ中の5質量%なる微粒子との積)が、良好な修復にとって十分であることを示している。この結果に基いて、追加の系列のサンプルをテストして、この濃度の触媒を用いて、達成することのできる修復を最適化した。この系列において、該ワックス中の触媒の添加量は、0.25質量%という全体としての触媒レベルを維持するために、該エポキシ中の微粒子の添加量に対して、反比例的に変動させた(図4B)。最大の修復効率は、該微粒子における、5質量%なる触媒添加量およびエポキシにおける5質量%なる微粒子添加量により得られ、またこの最適の効率は、主として該非-線形性項βに対する大きな値によるものである。このβの大きな値に関する原因は、該サンプル中のワックスの量が、該エポキシ中の5質量%なる微粒子について、その最大のレベルにあるという事実に由来し、また高いワックス添加量が、非-線形性を高めるものと思われる。
【0034】
図4Aおよび4Bが示すように、59%なる平均の修復効率が、該サンプルにおける0.25質量%という触媒量を用いて得られる。以前に報告されたように(文献4)、未保護の触媒を用いた、自己-修復系は、62%(歪エネルギーJcに基く)という、および2.5質量%なる触媒を含む、10質量%の径180μmをもつ微粒子の場合に関する、僅かに24%という最適化された平均の修復率を与えた。かくして、該ワックスで保護した触媒微粒子を用いることによって、匹敵する、あるいは幾つかの場合には凌駕する修復効率を達成し、一方で全体としての触媒の添加量の大きさを、位数一だけ減じる。
【0035】
ワックスの微粒子中に懸濁するグラッブズ触媒は、その反応性を維持し、一方該触媒は、エポキシ材料の調製および硬化に必要な状態から保護される。この放出法は、以前に達成されたものに匹敵する修復効率を生み出し、しかも僅かに1/10の量の触媒を必要とするに過ぎない。更に、93%なる修復効率(これは、歪エネルギーによって表した場合に、以前に報告された如何なる修復効率をも越える)が、この系を用いて達成でき、しかも以前の系よりも少量の触媒添加量を使用する。この高い効率は、該エポキシマトリックスにおける該ワックスで保護した触媒のより均一な分散性、およびDETAによる有害な相互作用から、該触媒を保護する能力に起因するものであり得る。これらの結果は、他のポリマー、および他の保護された活性化剤にも拡張できる。













【0036】
参考文献

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1A】未保護のグラッブズ触媒を使用した、自己-修復材料を示す図である。
【図1B】カプセル化剤の微粒子中に包埋させた、活性化剤を含む自己-修復材料を示す図である。
【図2A】約300μmの厚みに細断した、2.5質量%の未保護のグラッブズ触媒を含む、エポキシサンプルの断面の写真である。
【図2B】約300μmの厚みに細断した、5質量%のグラッブズ触媒を含有する、5質量%のワックス微粒子を含む、エポキシサンプルの断面の写真である。
【図3】図3Aおよび3Bは、夫々25質量%の触媒を含有する1質量%の微粒子および5質量%の触媒を含有する5質量%の微粒子に関する、修復された亀裂成長の、(A)低い非-線形性および(B)高い非-線形性を持つ場合の、バージンおよび修復負荷-変位曲線を示すものである。
【図4】図4Aおよび4Bは、修復効率の、(A)該微粒子中の触媒の量(該エポキシにおける微粒子添加量5質量%)および(B)該触媒の該ワックス内への添加および該エポキシ中の該微粒子の添加量を、0.25質量%という全体的な触媒濃度を維持するために、釣合わせる方法に対する依存性を示し、各点は、3回の試みの平均であり、また誤差バーは、±1標準偏差を示す。
【符号の説明】
【0038】
2 活性化剤
4 カプセル
6 ポリマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) ポリマー、
(ii) 重合剤、
(iii) 該重合剤に対する、保護された対応する活性化剤、および
(iv) 複数のカプセル、
を含み、該重合剤が、該カプセル内にあり、かつ該対応する活性化剤が、該ポリマーおよび該重合剤用の、対応するカプセル化剤で保護されていることを特徴とする、複合材料。
【請求項2】
該重合剤が、環状オレフィン、ラクトン、ラクタム、アクリレート、アクリル酸、アルキルアクリレート、アルキルアクリル酸、スチレン、イソプレンおよびブタジエンからなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、請求項1記載の複合材料。
【請求項3】
該重合剤が環状オレフィンを含む、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
該ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリイミド、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、アミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリスルホン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリシランからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の複合材料。
【請求項5】
該ポリマーが、ポリエステルおよびポリエーテルからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の複合材料。
【請求項6】
該重合剤に対する、該対応する活性化剤が、ROMP触媒および環状エステル重合触媒からなる群から選択される少なくとも1種のモノマーを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の複合材料。
【請求項7】
該重合剤に対する、該対応する活性化剤がROMP触媒である、請求項1〜6のいずれかに記載の複合材料。
【請求項8】
該カプセル化剤がワックスである、請求項1〜7のいずれかに記載の複合材料。
【請求項9】
該カプセルが、ウレアおよびホルムアルデヒドのポリマー、ゼラチン、ポリウレアおよびポリアミドを含む、請求項1〜8のいずれかに記載の複合材料。
【請求項10】
該重合剤がDCPDであり;
該ポリマーがエポキシを含み;
該重合剤に対する、該保護された対応する活性化剤が、ワックスによって保護されたROMP触媒であり、かつ微粒子として存在し;
該カプセルが1:1〜1:1.5なる範囲のアスペクト比および30〜300μmの平均粒径を有し;および
該カプセルがウレアおよびホルムアルデヒドのポリマーを含む、
請求項1〜9のいずれかに記載の複合材料。
【請求項11】
(i) ポリマー、
(ii) 重合剤、
(iii) 該重合剤に対する、保護された対応する触媒の微粒子、および
(iv) 複数のカプセルを含み、
該重合剤が、該カプセル内にあり、
該対応する触媒が、該ポリマーおよび該重合剤用の、対応するカプセル化剤で保護されており、かつ
該カプセル化剤が、ワックスを含むことを特徴とする、複合材料。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の複合材料。
【請求項13】
該ポリマーが、重合剤が、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリイミド、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、アミン-ホルムアルデヒド樹脂、ポリスルホン、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)、ポリウレタン、ポリオレフィン、およびポリシランからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の複合材料。
【請求項14】
該カプセルが、ウレアおよびホルムアルデヒドのポリマー、ゼラチン、ポリウレアおよびポリアミドを含む、請求項1〜13のいずれかに記載の複合材料。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の複合材料の製造方法であって、
該カプセルおよび該保護された対応する活性化剤を、該ポリマー中に分散させる工程を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の複合材料の製造方法であって、
該カプセルおよび該保護された対応する活性化剤を、該ポリマー中に分散させる工程を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
(a) 化合物、および
(b) 該化合物を取巻くワックス
を含み、微粒子であることを特徴とする、粒子。
【請求項18】
該化合物が、活性化剤である、請求項17のいずれかに記載の粒子。
【請求項19】
該化合物が、触媒である、請求項17又は18に記載の粒子。
【請求項20】
該化合物が、ROMP触媒である、請求項17〜19のいずれかに記載の粒子。
【請求項21】
該ROMP触媒が、金属ハライドである、請求項17〜20のいずれかに記載の粒子。
【請求項22】
該化合物が、WCl6である、請求項17〜21のいずれかに記載の粒子。
【請求項23】
該ワックスがパラフィンである、請求項17〜22のいずれかに記載の粒子。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2007−536410(P2007−536410A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511617(P2007−511617)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2005/015783
【国際公開番号】WO2005/118703
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(500033634)ザ・ボード・オブ・トラスティーズ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・イリノイ (21)
【氏名又は名称原語表記】THE BOARD OF TRUSTEES OF THE UNIVERSITY OF ILLINOIS
【住所又は居所原語表記】506 South Wright Street, Urbana, IL 61801
【Fターム(参考)】