説明

活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の変異体及び使用方法

本発明は、野生型AIDタンパク質と比較して増大された活性を有する活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質の機能的な変異体を提供する。本発明はまた、機能的なAID変異体をコードする核酸、並びに該核酸を含むベクター及び細胞も提供する。本発明はさらに、機能的な変異体AIDタンパク質を用いる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、参照により組み込まれる、2009年4月3日に出願の米国仮特許出願第61/166,349号の利益を主張する。
【0002】
電子的に提出された資料の参照による組み込み
本明細書と同時に提出され、2010年4月1日に作成された「SequenceListing.TXT」と名づけられた一つの140,103バイトのASCII(Text)ファイルとして識別される、コンピューターで読み取り可能なヌクレオチド/アミノ酸配列リストは、本明細書においてその全体が参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
抗体多様性を生み出す自然のメカニズムは、体細胞超変異(somatic hypermutation;SHM)のプロセスを利用して免疫グロブリン可変領域の進化を引き起こし、それによって液性応答に関連する第二の抗体レパートリーを迅速に生み出している。in vivoにおいて、SHMは効率の高いプロセスを示し、抗体最適化のための自然のプロセスを示す様式で、生産的な折り畳み構造を迅速に探索し、且つ高い親和性の抗体を進化させることができる。従って、in vitroでSHMを複製して、哺乳動物細胞の状況における親和性成熟の自然のプロセスを直接的に模倣することができる簡単でロバストな方法を創造し、免疫原生が許容できるものであり、且つ哺乳動物細胞内で高発現する抗体を選択及び進化させる試みに対して、大きな関心が持たれている(Cumbers et al., Nat Biotechnol., 20(11): 1129-1134 (2002);Wang et al., Prot. Eng.Des. Sel., 17(9): 569-664 (2004);Wang et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 101(48): 16745-16749 (2004);Ruckerl et al., Mol. Immunol., 43 (10): 1645-1652 (2006);Todo et al., J. Biosci. Bioeng., 102(5): 478-81 (2006);Arakawa et al., Nucleic Acids Res., 36(1): e1 (2008))。
【0004】
しかしながら、個々のヒト又は動物より単離された生来の抗体は、最適な親和性の特性を示さないことがしばしばである。免疫システムに本来備わっている内在的な親和性の上限が、約100 pMよりも強い親和性での抗体のin vivoでの識別−そして選択−を妨げるためである(Batista and Neuberger, Immunity, 8(6): 751-91998, (1998)及びEMBO J., 19(4): 513-20 (2000))。
【0005】
ファージディスプレイライブラリーを用いることにより、これらの問題のいくつかに対処することができ、ファージディスプレイに基づくアプローチは、ルーチンに高親和性抗体を製造可能であることが示されている。しかしながら、理論的な観点からは、このような静的なライブラリーは大きさ及び範囲が本質的に制限されている。最も大きな(1012)ライブラリーでさえ潜在的な生来の免疫レパートリーのごく小さな部分しか探索できないためである。さらには、良好な哺乳動物での発現と高親和性との両方に基づいてファージディスプレイアプローチを介して抗体を同時に共進化させることは不可能であり、さもなければ哺乳動物の宿主細胞内での発現が乏しいことに起因する潜在的な下流の製造問題につながる。また、ファージディスプレイと組み合わせたランダム突然変異誘発の使用は、抗体の親和性成熟の自然なプロセスにおいて見られる本来の選択性の特性を欠如しており、しばしば、ヒト抗ヒト免疫、又は望ましくない交差反応特性の問題を生じる。
【0006】
in vitroで体細胞超変異を用いて特定の標的抗原に対する抗体を進化させるために培養細胞株を使用することは、最初にヒトバーキットリンパ腫細胞株Ramosを用いて実証された(Cumbers et al., Nat. Biotechnol., 20(11): 1129-1134 (2002))。Ramos、及び他のB細胞株はまた、宿主細胞の染色体DNAの中にランダムに組み込まれている非抗体遺伝子(non antibody gene)を進化させるために使用することにも成功している(Wang et al., Prot. Eng.Des. Sel., 17(9): 569-664 (2004)及びProc. Natl. Acad. Sci. USA., 101(48): 16745-16749 (2004))。また、Ig特異的なシス調節エレメントを有する又は有しないエピソームベクターを用いた、B細胞株内の非抗体遺伝子における効率的な体細胞超変異が示されている(Ruckerl et al., Mol. Immunol., 43 (10): 1645-1652 (2006))。いくつかのRamos細胞株は相対的に高い割合の構成的超変異を示すが、B細胞株は一般に、相対的に細胞分裂速度が遅く、高い効率でのトランスフェクトが困難であり、それにより、方向性を持った進化に対してそれらの実用性が制限されている。
【0007】
ニワトリ嚢細胞株DT40は、偽V遺伝子鋳型遺伝子の変換により、その再構成されたIg軽遺伝子を多様化させる。しかしながら、遺伝子変換がRad51パラログXRCC2の欠損(Sale et al., Nature, 412: 921-6 (2001))、又は偽遺伝子変換ドナーの欠損(Arakawa et al., Nucleic Acids Res., 36(1): e1 (2008))により阻害された場合、その細胞株は、培養下において構成的超変異を示す。Ramos細胞と比較して、DT40細胞は、世代時間(12時間)が著しく短く、方向性を持った遺伝子ターゲティングに適しており、内在性抗体(Seo et al., Nat. Biotechnol., 23(6): 731-5 (2005);Nat. Protoc., 1(3): 1502-6 (2006);Biotechnol. Genet. Eng.Rev., 24: 179-93 (2007);Todo et al., J. Biosci. Bioeng., 102(5): 478-81 (2006))、及び非抗体タンパク質(Arakawa et al., Nucleic Acids Res., 36(1): e1 (2008))の両方を方向性を持って進化させるために首尾よく用いられている。
【0008】
Ramos及びDT40等のB細胞由来のものは、方向性を持った進化のための使用に成功してはいるが、方向性を持った進化のためのロバストなプロセスにおいてこれらの細胞を確実に使用することは、(i)高レベルの変異誘発を達成するためには、宿主細胞のIg遺伝子座内の特定の部位に目的の遺伝子を挿入する必要があること(Parsa et al., Mol Immunol., 44(4): 567-75 (2007))、及び(ii)これらの細胞内の内在性免疫グロブリン遺伝子座で作用する体細胞超変異の自然のバイオロジーが複雑であることを含む、多くの要因により複雑化されている。また、このような改変された細胞株は、SHMの割合において著しいクローン不安定性を示し(Zhang et al., Int. Immunol., 13: 1175-1184 (2001)、Martin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 99(19): 12304-12308 (2002)及びNature, 415(6873): 802-806 (2002);Ruckerl et al., Mol. Immunol., 41: 1135-1143 (2004))、超変異を調節又は制御する、即ち、所望の表現型の選択が達成された後で変異誘発のスイッチを切ることについて、如何なる簡易な手段も提供しない。
【0009】
目的の遺伝子における標的化された体細胞超変異を惹起するために、非B細胞の使用が成功していることが数多くのグループにより述べられており(Martin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 99(19): 12304-12308 (2002)及びNature, 415(6873): 802-806 (2002);McBride et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103(23): 8798-803 (2006);Jovanic et al., PLoS ONE, 23;3(1): e1480 (2008);米国特許出願公開公報第09/0075378号;国際特許出願公開公報第WO 08/103474A1号及び第WO 08/103475A1号)、これらの細胞株はまた、効率的な遺伝子導入、高レベルのタンパク質発現、最適な増殖特性を提供することもでき、浮遊培養及びフローサイトメトリーに容易に適用させることができる。
【0010】
活性化誘導シチジンデアミナーゼ(activation-induced cytidine deaminase;AID)は、シチジンデアミナーゼ酵素のAPOBECファミリーに属する。AIDは活性化B細胞の中で発現しており、抗体遺伝子をコードする内在性DNAにおいて点変異を生じさせることによって(Martin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 99(19): 12304-12308 (2002)及びNature, 415(6873): 802-806 (2002);Petersen-Mart et al., Nature, 418(6893): 99-103 (2002))体細胞超変異を惹起するのに必要である(Muramatsu et al., Cell, 102(5): 553-63 (2000);Revy et al., Cell, 102(5): 565-75 (2000);Yoshikawa et al., Science, 296(5575): 2033-6 (2002))。AIDはまた、クラススイッチ組換え及び遺伝子変換のための必要不可欠なタンパク質因子でもある(Muramatsu et al., Cell, 102(5): 553-63 (2000);Revy et al., Cell, 102(5): 565-75 (2000))。
【0011】
AIDが体細胞超変異の惹起に関与するという発見は、体細胞超変異を利用するための、より明確で、安定的で、且つ制御可能なシステムを創造するために、非B細胞株を使用することの可能性を切り開いた。
【0012】
これらの進展にも関わらず、体細胞超変異のための実用的なシステムの開発に関する主要な課題が残っており、それは、(1)構造遺伝子からは離れて、目的の遺伝子に対して体細胞超変異を標的化できること、(2)in vivoでの体細胞超変異と比較して、外因性AIDを用いて達成される変異の割合及び性質が相対的に低いこと、並びに(3)変異誘発のサイクル間で、単一細胞クローンから細胞集団への成長に要求される細胞倍加時間が相対的に長いこと、を含んでいる。
【0013】
従って、体細胞超変異システムの効率を改善するための改良された組成物及び方法に対する必要性が明確に存在している。本発明は、そのような組成物及び方法を提供する。
【発明の概要】
【0014】
発明の要旨
本発明は、単離又は精製された核酸分子であって、該核酸分子は、機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列が、少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる、核酸分子を提供する。
【0015】
一つの実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0016】
別の実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基10での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0017】
さらに別の実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基35での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基145での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0018】
さらなる実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基34での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基160での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0019】
別の実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基43での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基120での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0020】
本発明は、単離又は精製された核酸分子であって、該核酸分子は、機能的な変異体AIDタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列が、少なくとも二つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、少なくとも一つの置換は残基57においてであり、少なくとも一つの置換は残基145又は81においてであり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、核酸分子も提供する。
【0021】
さらに別の実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基82での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0022】
さらなる実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基34での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0023】
さらなる実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基157での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0024】
さらに別の実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列は、残基10、82、及び156での少なくとも一つのアミノ酸置換により、ヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なる。
【0025】
本発明は、単離又は精製された核酸分子であって、該核酸分子は、機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列が、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換により、イヌAIDタンパク質(配列番号:3)、マウスAIDタンパク質(配列番号:4)、ラットAIDタンパク質(配列番号:5)、ウシAIDタンパク質(配列番号:6)、及びニワトリAIDタンパク質(配列番号:7)の群より選択されるアミノ酸配列とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、核酸分子も提供する。
【0026】
さらに、機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)をコードするヌクレオチド配列を含む核酸分子を含有する発現ベクターが提供される。
【0027】
本発明は、機能的な変異体AIDタンパク質をコードする核酸分子を含む、単離された細胞も提供する。
【0028】
さらに、機能的な変異体AIDタンパク質をコードする核酸分子を含むトランスジェニック動物が提供される。
【0029】
本発明は、所望の性質を有する遺伝子産物の調製方法も提供するものであり、その方法は、該遺伝子産物をコードする核酸を細胞集団中で発現することを含み、該細胞集団は機能的な変異体AIDタンパク質を発現し、又は発現するよう誘導されることができ、該機能的な変異体AIDタンパク質の発現は、該遺伝子産物をコードする核酸における変異を引き起こす。
【0030】
さらに、所望の表現系を有するよう生物を変異する方法が提供され、該方法は、該生物において機能的な変異体AIDタンパク質を発現するか、又はその発現を誘導することを含み、該機能的な変異体AIDタンパク質の発現は、該生物の染色体DNA内で変異を引き起こす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図面の簡単な説明
【図1】図1aは、ヒトAIDを発現する、又は発現しない細菌コロニーにおけるパピラの画像を含む。図1bは、ヒトAID、APOBEC1(A1)、又はAPOBEC3G(A3G)を発現する細菌コロニーにおけるパピラを定量化した棒グラフである。図1cは、パピラについてヒト脾臓cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られた二つのAPOBEC3GのcDNAを示す図である。図1dは、表示されているAIDタンパク質を発現する細菌コロニーにおけるパピラの画像を含み、且つベクターと比べての変異の頻度を記載している。図1eは、アラビノース濃度の関数としてのAID Mut1.1によるパピラ形成の画像を含む。図1fは、ヒトAID変異体のコロニー形成率を示すグラフである。
【図2】図2は、パピラ形成スクリーニングにおいて同定された選択ヒトの機能的なAID変異体を示すチャートである。数値は、ベクターと比べての各ヒトAID変異体のRifrへの変異の平均頻度を示す。
【図3】図3aは、ヒト及びフグAIDにおいて同定された機能的な変異の位置及び同定されたものを示すヒトAIDの配列図である。図3bは、GST-AID変異体融合タンパク質の発現レベルをウェスタンブロットにより比較している。図3c、dは、GST-AID変異体融合タンパク質のデアミナーゼ活性及び標的特異性を定量化したグラフである。
【図4】図4aは、パピラ形成スクリーニングにおいて同定された選択フグAID変異体を示すチャートである。図4bは、18℃及び37℃におけるフグAID変異体のRifrへの相対的な変異頻度を比較する棒グラフである。
【図5】図5aは、表示されているAIDタンパク質を発現する個々のDT40クローンにおけるIgM及びGFPの発現のフローサイトメトリーのプロットを含む。図5aは、表示されているタンパク質を発現する12の独立したクローン性トランスフェクタントにおけるIgM喪失のグラフも含む。図5bは、トランスフェクトされたDT40細胞において観察されたIgVλ変異の分布の図を含む。図5bは、IgM喪失について分類した後のIgVλ変異の数を示す円グラフも含む。図5bは、ウェスタンブロットによるAID発現も示す。図5cは、表示されているレトロウイルスで形質導入されたAID欠損B細胞におけるIgG1へのスイッチングのフローサイトメトリーのプロットを含む。図5cの棒グラフは、野生型AIDと比べてのIgG1スイッチングを定量化し、図5cのウェスタンブロットは、ウェスタンブロットによるAIDの発現を示す。
【図6】図6aは、c-myc遺伝子座とIgH遺伝子座との間の相互転座を示す図であり、転座の検出に用いられたプライマー(矢印)及びプローブ(P)を示す。図6bは、表示されているレトロウイルスで形質導入されたAID欠損B細胞からのゲノムDNAをPCRにより増幅させた後の染色体15及び12に由来するc-myc-IgH転座のサザンブロットである。
【図7】図7は、細菌パピラ形成スクリーニングにおいて同定された機能的な変異が、APOBEC3配列に近いAID配列をもたらすことを示すロゴアラインメント(LOGO alignment)である。
【図8】図8は、図7を作成するために用いられた哺乳動物のAID及びAPOBEC3配列のGenBank/Ensemblアクセッション番号を記載している。
【図9】図9は、同定された機能的な変異の位置及び同定されたものを示す、ヒトAID及びフグAIDの配列図である。
【図10a−1】図10aは、実施例14に記載された293-c18細胞実験で用いられたAID配列の核酸配列アラインメントである。枠で囲まれた残基は、wt及び7.3変異体配列間の変化を示す。図10bは、実施例14に記載された293-c18細胞実験で用いられたAID配列のアミノ酸配列アラインメントである。枠で囲まれた残基は、wt及び7.3変異体配列間の変化を示す。MutE及びMut 7.3におけるLからAへの変異は、核外移行シグナルの機能を消失させる。ピリオドはストップコドンを示し、ダッシュは、対応するアミノ酸が存在しない位置を特定する。
【図10a−2】図10aは、実施例14に記載された293-c18細胞実験で用いられたAID配列の核酸配列アラインメントである。枠で囲まれた残基は、wt及び7.3変異体配列間の変化を示す。図10bは、実施例14に記載された293-c18細胞実験で用いられたAID配列のアミノ酸配列アラインメントである。枠で囲まれた残基は、wt及び7.3変異体配列間の変化を示す。MutE及びMut 7.3におけるLからAへの変異は、核外移行シグナルの機能を消失させる。ピリオドはストップコドンを示し、ダッシュは、対応するアミノ酸が存在しない位置を特定する。
【図10b】図10aは、実施例14に記載された293-c18細胞実験で用いられたAID配列の核酸配列アラインメントである。枠で囲まれた残基は、wt及び7.3変異体配列間の変化を示す。図10bは、実施例14に記載された293-c18細胞実験で用いられたAID配列のアミノ酸配列アラインメントである。枠で囲まれた残基は、wt及び7.3変異体配列間の変化を示す。MutE及びMut 7.3におけるLからAへの変異は、核外移行シグナルの機能を消失させる。ピリオドはストップコドンを示し、ダッシュは、対応するアミノ酸が存在しない位置を特定する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本発明は、単離又は精製された核酸分子であって、該核酸分子は、機能的な変異体AIDタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含み、該機能的な変異体AIDタンパク質のアミノ酸配列が、少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、核酸分子を提供する。
【0033】
「核酸分子」は、DNA又はRNAのポリマー、即ち、ポリヌクレオチドを包含することを意図し、それは一本鎖又は二本鎖であり得、また非天然の又は変化されたヌクレオチドを含み得る。本明細書において用いられる場合、用語「核酸」及び「ポリヌクレオチド」は、任意の長さのヌクレオチドの多量体形態で、リボヌクレオチド(RNA)又はデオキシリボヌクレオチド(DNA)のいずれかをいう。これらの用語は、分子の一次構造をいい、そのため、二本鎖及び一本鎖のDNA、並びに二本鎖及び一本鎖のRNAを含む。該用語は、同等物として、ヌクレオチドアナログから作製されたRNA又はDNAのいずれかのアナログ、並びに、限定されないが、メチル化及び/又はキャップ構造が付加されたポリヌクレオチド等の修飾ポリヌクレオチドを含む。
【0034】
本明細書において用いられる場合、用語「ヌクレオチド」は、複素環塩基、糖、及び一以上のリン酸基からなるポリヌクレオチドの単量体単位をいう。天然に存在する塩基(グアニン(G)、アデニン(A)、シトシン(C)、チミン(T)、及びウラシル(U))は、通常プリン又はピリミジンの誘導体であるが、天然に存在する、及び天然に存在しない塩基アナログも含まれると理解されるべきである。天然に存在する糖はペントース(五炭糖)のデオキシリボース(DNAを形成する)又はリボース(RNAを形成する)であるが、天然に存在する、及び天然に存在しない糖アナログも含まれると理解されるべきである。核酸は、通常リン酸結合を介して結合されて核酸又はポリヌクレオチドを形成するが、多くの他の結合が当該技術分野において公知である(例えば、ホスホロチオエート、ボラノリン酸等)。
【0035】
本明細書において用いられる場合、用語「合成ポリヌクレオチド」、「合成遺伝子」又は「合成ポリペプチド」は、対応するポリヌクレオチド配列若しくはその部分、又はアミノ酸配列若しくはその部分が、設計され、又は新規合成され、又は同等の天然に存在する配列と比較して改変された配列に由来することを意味する。合成ポリヌクレオチド又は合成遺伝子は、当該技術分野における公知の方法(限定されないが、核酸又はアミノ酸配列の化学的合成が含まれる)により作製され、又はPCR(若しくは類似の酵素的増幅システム)を介して増幅され得る。合成遺伝子は、通常、アミノ酸レベル又はポリヌクレオチドレベルのいずれか(又は両方)において、未改変の遺伝子又は天然に存在する遺伝子とは異なり、また通常、合成の発現調節配列の状況内に位置する。例えば、合成遺伝子の配列は、例えば、一以上のアミノ酸又はヌクレオチドの置換、欠失、又は付加により変化されたアミノ酸又はポリヌクレオチド配列を含んでいてもよく、それにより、元の配列とは異なるアミノ酸配列又はポリヌクレオチドのコード配列を提供する。合成遺伝子又はポリヌクレオチドの配列は、必ずしも、天然の遺伝子と比較して異なるアミノ酸を有するタンパク質をコードしていなくてもよい。例えば、それらは、異なるコドンを含むが、同一のアミノ酸をコードする、即ち、ヌクレオチド変化がアミノ酸レベルにおいてサイレント変異を表す合成ポリヌクレオチドの配列も包含することができる。一つの実施態様において、合成遺伝子は、天然に存在する、又は未改変の遺伝子と比較して、SHMに対する感受性の変化を示す。合成遺伝子は、本明細書に記載された方法を用いて反復的に改変されることができ、一連の反復のそれぞれにおいて、対応するポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列は、全体的又は部分的に、設計され、又は新規合成され、又は同等の未改変の配列と比較して改変された配列から得られる。
【0036】
本明細書において用いられる場合、「コドン」は、転写及び翻訳されたときに一つのアミノ酸残基をコードし、又はUUA、UGA若しくはUAGの場合は終結シグナルをコードする3つのヌクレオチドをいう。アミノ酸をコードするコドンは、当該技術分野において周知である。
【0037】
最適なコドン用法は、例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8.1、Genetics Computer Group, Madison, Wisc.のプログラム「Human - High.cod」のコドン用法チャートに示されるような、発現遺伝子のコドン用法により示される。コドン用法は、例えば、R. Nussinov, “Eukaryotic Dinucleotide Preference Rules and Their Implications for Degenerate Codon Usage,” J. Mol. Biol., 149: 125-131 (1981)にも記載されている。高発現されるヒト遺伝子において最も使用頻度の高いコドンは、ヒト宿主細胞内での発現に最適なコドンであると推定され、それにより、合成のコード配列を構築するための基礎を形成する。
【0038】
「単離された」は、ある核酸をその自然な環境から取り除くことを意味する。「精製された」は、所定の核酸(それが自然から取り除かれたものであれ(ゲノムDNA及びmRNAを含む)、又は合成されたものであれ(cDNAを含む)、及び/又は実験室条件下で増幅されたものであれ)の純度が高められていることを意味し、ここで「純度」は相対的な用語であって、「絶対的な純度」ではない。しかしながら、核酸及びタンパク質は、希釈剤又は補助剤を用いて調製されてもよいこと、及び実用的な目的のためにさらに単離されてもよいことが理解されるべきである。例えば、核酸は、細胞内への導入のために用いられる場合、許容可能な担体又は希釈剤と混合されるであろう。
【0039】
用語「活性化誘導シチジンデアミナーゼ」又は(「AID」)は、DNA配列中でのシトシンのウラシルへの脱アミノ化を媒介することのできるRNA/DNAエディティングシチジンデアミナーゼのAID/APOBECファミリーのメンバーをいう(例えば、Conticello et al., Mol. Biol. Evol., 22: 367-377 (2005)及び米国特許第6,815,194号を参照のこと)。
【0040】
用語「野生型AID」は、AIDタンパク質の自然に存在するアミノ酸配列をいう。好適な野生型AIDタンパク質は、例えば、霊長類、げっ歯類、鳥類、硬骨魚類を含む、全ての脊椎動物のAIDの形態を含む。野生型AIDアミノ酸配列の代表的な例としては、限定されないが、ヒトAID(配列番号:1又は配列番号:2)、イヌAID(配列番号:3)、マウスAID(配列番号:4)、ラットAID(配列番号:5)、ウシAID(配列番号:6)、ニワトリAID(配列番号:7)、ブタAID(配列番号:8)、チンパンジーAID(配列番号:9)、マカクAID(配列番号:10)、ウマAID(配列番号:11)、アフリカツメガエルAID(配列番号:12)、フグAID(配列番号:13)、及びゼブラフィッシュAID(配列番号:14)が挙げられる。
【0041】
用語「AIDホモログ」は、Apobecファミリーの酵素をいい、例えば、Apobec-1、Apobec3C又はApobec3Gが挙げられる(例えば、Jarmuz et al., Genomics, 79: 285-296 (2002)に記載されている)。用語「AID活性」は、AID及びAIDホモログにより媒介される活性を含む。
【0042】
「AID変異体」又は「AIDの変異体」は、本明細書において用いられる場合、少なくとも一つのアミノ酸により野生型AIDアミノ酸配列とは異なるAIDアミノ酸配列をいう。野生型AIDアミノ酸配列は、当該技術分野における公知の任意の好適な方法、例えば、挿入、欠失及び/又は置換等により、AID変異体を作製するために変異導入され得る。例えば、変異は、ランダムに、又は部位特異的な様式で、野生型AIDをコードする核酸配列の中に導入され得る。ランダム変異は、例えば、AID鋳型配列のエラープローンPCRにより生じ得る。ランダム変異の導入のために好ましい手段は、Genemorph II Random Mutagenesis Kit(Stratagene, LaJolla, CA)である。部位特異的変異は、例えば、改変された部位を含む合成ヌクレオチドを発現ベクター中にライゲートすることにより導入することができる。或いは、Walder et al., Gene, 42: 133 (1986);Bauer et al., Gene, 37: 73 (1985);Craik, Biotechniques, 12-19 (January 1995);並びに米国特許第4,518,584号及び第4,737,462号に開示されているもの等のオリゴヌクレオチド指向性部位特異的変異誘発を用いることができる。部位特異的変異の導入のために好ましい手段は、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Stratagene, LaJolla, CA)である。
【0043】
用語「AIDの機能的な変異体」、「機能的なAID変異体」又は「機能的な変異体AIDタンパク質」はそれぞれ、野生型AIDの生物学的活性の全部又は一部を保持する、或いは野生型AIDタンパク質と比較して上昇した生物学的活性を示す変異体AIDタンパク質をいう。野生型AIDの生物学的活性としては、限定されないが、DNA配列中でのシトシンのウラシルへの脱アミノ化、細菌変異誘発アッセイにおけるパピラ形成、標的遺伝子の体細胞超変異、及び免疫グロブリンクラススイッチングが挙げられる。変異体AIDタンパク質は、野生型AIDタンパク質の生物学的活性の任意の部分を保持し得る。望ましくは、変異体AIDタンパク質は、野生型AIDの生物学的活性の少なくとも75%(例えば、75%、80%、90%又はそれより多く)を保持する。好ましくは、変異体AIDタンパク質は、野生型AIDの生物学的活性の少なくとも90%(例えば、90%、95%、100%又はそれより多く)を保持する。
【0044】
好ましい実施態様において、変異体AIDタンパク質は、野生型AIDタンパク質と比較して上昇した生物学的活性を示す。この点において、機能的なAID変異体は、細菌パピラ形成アッセイにより測定した場合、野生型AIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する。細菌パピラ形成アッセイは、DNA修復のある側面において欠陥があるE. Coli変異体のスクリーニングのために有用であることが当該技術分野において公知である(Nghiem et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2709-2713 (1988)及びRuiz et al., J. Bacteriol., 175: 4985-4989 (1993))。細菌パピラ形成アッセイは、lacZ遺伝子中にミスセンス変異を有しているEscherichia coli CC102細胞を用いることができる。E. Coli CC102細胞は、マッコンキー−ラクトースプレート上に白色コロニーを生じさせる。そのような白色コロニー内に、少数の赤い微小コロニー、又は「パピラ」を識別できることがしばしばあり(典型的に、コロニー当り0-2)、これは、自然発生的に生じたLac+復帰変異体を反映している。自然突然変異頻度の上昇を示す細菌クローン(即ち、「ミューテータークローン」)は、パピラの数の増加によって同定できる。細菌パピラ形成アッセイは、野生型AIDと比較して上昇した活性を有する機能的なAID変異体のスクリーニングのために使用することができる。細菌パピラ形成アッセイは、実施例において詳細に記載されている。
【0045】
一つの実施態様において、機能的なAID変異体は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、野生型AIDタンパク質と比較して活性が少なくとも10倍(例えば、10倍、30倍、50倍又はそれより多く)改善されている。好ましくは、機能的なAID変異体は、野生型AIDと比較して活性が少なくとも100倍(例えば、100倍、200倍、300倍又はそれより多く)改善されている。より好ましくは、機能的なAID変異体は、野生型AIDと比較して活性が少なくとも400倍(例えば、400倍、500倍、1000倍又はそれより多く)改善されている。
【0046】
機能的な変異体AIDタンパク質は、少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDタンパク質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。野生型AIDタンパク質は、任意の脊椎動物のAIDタンパク質であり得、本明細書に記載されたものを含む。望ましくは、野生型AIDタンパク質は、ヒトAIDタンパク質であり、少なくとも二つの公知のバリアント(即ち、配列番号:1及び配列番号:2)が存在する。更なる脊椎動物のAIDタンパク質としては、限定されないが、イヌAID(配列番号:3)、マウスAID(配列番号:4)、ラットAID(配列番号:5)、ウシAID(配列番号:6)、ニワトリAID(配列番号:7)、ブタAID(配列番号:8)、チンパンジーAID(配列番号:9)、マカクAID(配列番号:10)、ウマAID(配列番号:11)、アフリカツメガエルAID(配列番号:12)、フグAID(配列番号:13)、又はゼブラフィッシュAID(配列番号:14)が挙げられる。
【0047】
脊椎動物のAIDタンパク質の間には高度の相同性が存在するとはいえ、脊椎動物のAIDタンパク質のそれぞれにおいて、ヒトAID(配列番号:1又は配列番号:2)に対し、様々な個数のアミノ酸の置換、欠失、及び挿入が存在することを当業者は認識するであろう。そのため、本発明は、任意の脊椎動物のAIDタンパク質の類似の位置に組み込まれた場合の、本明細書において記載された変異を包含する。当業者は、当該技術分野において公知の任意のコンピューターベースのアラインメントプログラム(例えば、BLAST又はClustalW2)を用いて、相同的な脊椎動物のAIDタンパク質のヒトAIDの配列(配列番号:1又は配列番号:2)との配列アラインメントを実施することにより、任意の脊椎動物のAIDタンパク質における類似の位置を決定することができる。
【0048】
野生型AIDタンパク質は、通常、タンパク質のC末端付近に核外移行配列を含む。本発明の一つの実施態様において、野生型AIDの核外移行を媒介する一つの残基又は複数の残基が変異され得、また、少なくとも一つの更なるアミノ酸置換により、変異された核外移行配列を有するAIDタンパク質のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む機能的な変異体AIDタンパク質が作製され得る。変異された核外移行配列(それは、機能的なAID変異体を作製するものとして本明細書において同定された変異が挿入され得る参照配列としての役割を果たし得る)を有するイヌAIDタンパク質の例としては、L198A変異体(配列番号:70)及びD187E、D188E、D191E、T195I、及びL198A変異体(配列番号:71)が挙げられる。
【0049】
アミノ酸「置換」とは、ポリペプチド配列中において、所定の位置又は残基における一つのアミノ酸を同一の位置又は残基において別のアミノ酸に置き換えることをいう。
【0050】
アミノ酸は、「芳香族」又は「脂肪族」として大きく分類される。芳香族アミノ酸は、芳香環を含む。「芳香族」アミノ酸の例としては、ヒスチジン(H又はHis)、フェニルアラニン(F又はPhe)、チロシン(Y又はTyr)、及びトリプトファン(W又はTrp)が挙げられる。非芳香族アミノ酸は、「脂肪族」として大きく分類される。「脂肪族」アミノ酸の例としては、グリシン(G又はGly)、アラニン(A又はAla)、バリン(V又はVal)、ロイシン(L又はLeu)、イソロイシン(I又はIle)、メチオニン(M又はMet)、セリン(S又はSer)、スレオニン(T又はThr)、システイン(C又はCys)、プロリン(P又はPro)、グルタミン酸(E又はGlu)、アスパラギン酸(A又はAsp)、アスパラギン(N又はAsn)、グルタミン(Q又はGln)、リジン(K又はLys)、及びアルギニン(R又はArg)が挙げられる。
【0051】
脂肪族アミノ酸は、4つのサブグループに下位分類され得る。「大きな脂肪族非極性サブグループ」はバリン、ロイシン及びイソロイシンからなり、「脂肪族微極性サブグループ」はメチオニン、セリン、スレオニン、及びシステインからなり、「脂肪族極性/荷電サブグループ」はグルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、リジン、及びアルギニンからなり、「小さな残基サブグループ」はグリシン及びアラニンからなる。荷電/極性アミノ酸のグループは、3つのサブグループ:リジン及びアルギニンからなる「正荷電サブグループ」、グルタミン酸及びアスパラギン酸からなる「負荷電サブグループ」、アスパラギン及びグルタミンからなる「極性サブグループ」、に下位分類され得る。
【0052】
芳香族アミノ酸は、2つのサブグループ:ヒスチジン及びトリプトファンからなる「窒素環サブグループ」、フェニルアラニン及びチロシンからなる「フェニルサブグループ」、に下位分類され得る。
【0053】
語句「保存的アミノ酸置換」又は「保存的変異」とは、一つのアミノ酸を、共通の特性を備えた別のアミノ酸により置き換えることをいう。個々のアミノ酸間の共通の特性を定義する機能的な方法は、相同的な生物の対応するタンパク質間のアミノ酸変化の正規化された頻度を分析することである(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer, Principles of Protein Structure, Springer-Verlag, New York(1979))。そのような分析により、グループ内のアミノ酸が優先的に互いに交換し、それ故、タンパク質の全体構造への影響が互いに最も類似するアミノ酸のグループが定義され得る(Schulz, G. E. and R. H. Schirmer、上記)。
【0054】
保存的変異の例としては、上記サブグループ中でのアミノ酸のアミノ酸置換、例えば、リジンをアルギニンにすること及びその逆(正電荷が維持され得る);グルタミン酸をアスパラギン酸にすること及びその逆(負電荷が維持され得る);セリンをスレオニンにすること(遊離-OHが維持され得る);並びにグルタミンをアスパラギンにすること(遊離-NH2が維持され得る)、が挙げられる。
【0055】
「半保存的変異」としては、上記の同一のグループを有し、同一のサブグループは共有しないアミノ酸のアミノ酸置換が挙げられる。例えば、アスパラギン酸をアスパラギンにする、又はアスパラギンをリジンにする変異はそれぞれ、同一のグループ内であるが、サブグループが異なるアミノ酸を伴っている。
【0056】
「非保存的変異」は、異なるグループ間のアミノ酸置換、例えば、リジンをトリプトファンにすること、又はフェニルアラニンをセリンにすること等を含む。
【0057】
好ましい実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。これらの残基は、単独で又は任意の組み合わせにおいて置換され得る。残基34のリジン(K)が置換される実施態様において、好ましくは、それはグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)残基で置換される。残基82のスレオニン(T)が置換される実施態様において、好ましくは、それはイソロイシン(I)又はロイシン(L)残基で置換される。残基156のグルタミン酸(E)が置換される実施態様において、好ましくは、それはグリシン(G)又はアラニン(A)残基で置換される。さらに、アミノ酸残基156が置換される場合は(単独で、又は残基34及び/若しくは残基82での置換との組み合わせのいずれか)、残基9、13、38、42、96、115、132、157、180、181、183、197、198、又はそれらの組み合わせにおけるアミノ酸置換を伴う機能的なAID変異体タンパク質を作製することもまた望ましいものであり得る。特に、(a)残基9でのアミノ酸置換はメチオニン(M)又はリジン(K)であり得る、(b)残基13でのアミノ酸置換はフェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)であり得る、(c)残基38でのアミノ酸置換はグリシン(G)又はアラニン(A)であり得る、(d)残基42でのアミノ酸置換はイソロイシン(I)又はロイシン(L)であり得る、(e)残基96でのアミノ酸置換はグリシン(G)又はアラニン(A)であり得る、(f)残基115でのアミノ酸置換はチロシン(Y)又はトリプトファン(W)であり得る、(g)残基132でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)であり得る、(h)残基180でのアミノ酸置換はイソロイシン(I)又はアラニン(A)であり得る、(i)残基181でのアミノ酸置換はメチオニン(M)又はバリン(V)であり得る、(j)残基183でのアミノ酸置換はイソロイシン(I)又はプロリン(P)であり得る、(k)残基197でのアミノ酸置換はアルギニン(R)又はリジン(K)であり得る、(l)残基198でのアミノ酸置換はバリン(V)又はロイシン(L)であり得る、及び(m)残基157でのアミノ酸置換はスレオニン(T)又はリジン(K)であり得る。
【0058】
別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基10での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。これらの残基は、単独で又は任意の組み合わせにおいて置換され得る。アミノ酸残基10(リジン)が置換される実施態様において、好ましくは、それはグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)残基で置換される。残基156(グルタミン酸)が置換される実施態様において、好ましくは、それはグリシン(G)又はアラニン(A)残基で置換される。残基10及び156のアミノ酸が置換される実施態様においては、残基13、34、82、95、115、120、134、145、又はそれらの組み合わせにおけるアミノ酸置換を含むこともまた望ましいものであり得る。特に、(a)残基13でのアミノ酸置換はフェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)であり得る、(b)残基34でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)であり得る、(c)残基82でのアミノ酸置換はイソロイシン(I)又はロイシン(L)であり得る、(d)残基95でのアミノ酸置換はセリン(S)又はロイシン(L)であり得る、(e)残基115でのアミノ酸置換はチロシン(Y)又はトリプトファン(W)であり得る、(f)残基120でのアミノ酸置換はアルギニン(R)又はアスパラギン(N)であり得る、及び(g)残基145でのアミノ酸置換はロイシン(L)又はイソロイシン(I)であり得る。
【0059】
別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基35での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基145での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。残基35及び145のアミノ酸は、任意の適切なアミノ酸で置換されることができる。残基35のアミノ酸は、好ましくはグリシン(G)又はアラニン(A)で置換される。残基145のアミノ酸は、好ましくはロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換される。
【0060】
別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基34での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基160での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。残基34及び160のアミノ酸は、任意の適切なアミノ酸で置換されることができる。残基34のアミノ酸は、好ましくはグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)で置換される。残基160のアミノ酸は、好ましくはグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)で置換される。
【0061】
別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基43での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基120での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。残基43及び120のアミノ酸は、任意の適切なアミノ酸で置換されることができる。残基43のアミノ酸は、好ましくはプロリン(P)で置換される。残基120のアミノ酸は、好ましくはアルギニン(R)で置換される。
【0062】
さらに別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、少なくとも2つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードし、少なくとも一つの置換は残基57においてであり、少なくとも一つの置換は残基145又は81においてである。これらの残基は、単独で又は任意の組み合わせ(例えば、残基57及び145の置換、又は残基57及び81の置換)において置換され得る。好ましくは、残基57のアミノ酸は、グリシン(G)又はアラニン(A)で置換される。残基145のアミノ酸が置換される場合、好ましくは、それはロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換される。残基81のアミノ酸が置換される場合、好ましくは、それはチロシン(Y)又はトリプトファン(W)で置換される。
【0063】
さらに別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基82での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。残基156及び82のアミノ酸は、任意の適切なアミノ酸で置換されることができる。残基156のアミノ酸は、好ましくはグリシン(G)又はアラニン(A)で置換される。残基82のアミノ酸は、好ましくはロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換される。
【0064】
別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基34での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。残基156及び34のアミノ酸は、任意の適切なアミノ酸で置換されることができる。残基156のアミノ酸は、グリシン(G)又はアラニン(A)で置換される。残基34のアミノ酸は、好ましくはグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)で置換される。
【0065】
別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基157での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。残基156及び157のアミノ酸は、任意の適切なアミノ酸で置換されることができる。残基156のアミノ酸は、好ましくはグリシン(G)又はアラニン(A)で置換される。残基120のアミノ酸は、好ましくはアルギニン(R)又はアスパラギン(N)で置換される。
【0066】
さらに別の実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基10、82、及び156での少なくとも一つのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。これらの残基は、単独で又は任意の組み合わせにおいて置換され得る。好ましい実施態様において、核酸分子は、アミノ酸配列が、残基10、82、及び156でのアミノ酸置換により野生型AIDのアミノ酸配列とは異なる機能的なAID変異体をコードする。残基10、82、及び156のアミノ酸が置換される実施態様においては、残基9、15、18、30、34、35、36、44、53、59、66、74、77、88、93、100、104、115、118、120、142、145、157、160、184、185、188、192又はそれらの組み合わせにおけるアミノ酸置換を含むこともまた望ましいものであり得る。特に、(a)残基9でのアミノ酸置換はセリン(S)、メチオニン(M)又はトリプトファン(W)であり得る、(b)残基10でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)であり得る、(c)残基15でのアミノ酸置換はチロシン(Y)又はロイシン(L)であり得る、(d)残基18でのアミノ酸置換はアラニン(A)又はロイシン(L)であり得る、(e)残基30でのアミノ酸置換はチロシン(Y)又はセリン(S)であり得る、(f)残基34でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)であり得る、(g)残基35でのアミノ酸置換はセリン(S)又はリジン(K)であり得る、(h)残基36でのアミノ酸置換はシステイン(C)であり得る、(i)残基44でのアミノ酸置換はアルギニン(R)又はリジン(K)であり得る、(j)残基53でのアミノ酸置換はチロシン(Y)又はグルタミン(Q)であり得る、(k)残基57でのアミノ酸置換はアラニン(A)又はロイシン(L)であり得る、(l)残基59でのアミノ酸置換はメチオニン(M)又はアラニン(A)であり得る、(m)残基66でのアミノ酸置換はスレオニン(T)又はアラニン(A)であり得る、(n)残基74でのアミノ酸置換はヒスチジン(H)又はリジン(K)であり得る、(o)残基77でのアミノ酸置換はセリン(S)又はリジン(K)であり得る、(p)残基82でのアミノ酸置換はイソロイシン(I)又はロイシン(L)であり得る、(q)残基88でのアミノ酸置換はセリン(S)又はスレオニン(T)であり得る、(r)残基93でのアミノ酸置換はロイシン(L)、アルギニン(R)又はリジン(K)であり得る、(s)残基100でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)、トリプトファン(W)又はフェニルアラニンFであり得る、(t)残基104でのアミノ酸置換はイソロイシン(I)又はアラニン(A)であり得る、(u)残基115でのアミノ酸置換はチロシン(Y)又はロイシン(L)であり得る、(v)残基118でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)又はバリン(V)であり得る、(x)残基120でのアミノ酸置換はアルギニン(R)又はロイシン(L)であり得る、(y)残基142でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)であり得る、(z)残基145でのアミノ酸置換はロイシン(L)又はチロシン(Y)であり得る、(aa)残基156でのアミノ酸置換はグリシン(G)又はアラニン(A)であり得る、(bb)残基157でのアミノ酸置換はグリシン(G)又はリジン(K)であり得る、(cc)残基160でのアミノ酸置換はグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)であり得る、(dd)残基184でのアミノ酸置換はアスパラギン(N)又はグルタミン(Q)であり得る、(ee)残基185でのアミノ酸置換はグリシン(G)又はアスパラギン酸(D)であり得る、(ff)残基188でのアミノ酸置換はグリシン(G)又はグルタミン酸(E)であり得る、及び(gg)残基192でのアミノ酸置換はスレオニン(T)又はセリン(S)であり得る。
【0067】
機能的なAID変異体タンパク質は、本明細書に開示される任意のアミノ酸置換の単独又は任意の組み合わせにより、野生型AIDタンパク質とは異なり得る。或いは、機能的なAID変異体タンパク質は、野生型AIDタンパク質の配列(例えば、配列番号:1又は配列番号:2のヒトAIDアミノ酸配列)と比較して、更なるアミノ酸置換を有し得る。例えば、機能的なAID変異体タンパク質は、配列番号:1又は配列番号:2に関して、以下のアミノ酸置換の任意の一つ又は組み合わせを有し得る:N7K、R8Q、Q14H、R25H、Y48H、N52S、H156R、R158K、L198A、R9K、G100W、A138G、S173T、T195I、F42C、A138G、H156R、L198F、M6K、K10Q、A39P、N52A、E118D、K10L、Q14N、N52M、D67A、G100A、V135A、Y145F、R171H、Q175K、R194K、残基118の後にKの挿入、及びD119E。
【0068】
本発明は、C末端切断変異体を含む機能的なAID変異体をコードする核酸分子も提供する。C末端切断変異体は、当該技術分野における通常の技能の中で作製され、例えば、AID変異体を作製するための上記方法によって実施することができる。例えば、C末端切断変異体は、AIDアミノ酸配列の残基181又はその遠位へのストップコドンの挿入によって作製することができる。
【0069】
本発明に関する機能的なAID変異体タンパク質を作製する好ましいアミノ酸置換の例は、図2に示される。
【0070】
本発明に関して、機能的なAID変異体は、核酸配列の一部が欠失し、AIDホモログ(例えば、Apobec-1、Apobec3C又はApobec3G)の核酸配列で置換されている野生型AIDタンパク質をコードする核酸配列も含む。この点において、ヒトAIDと同様に、ヒトAPOBEC3タンパク質は、DNA中のシトシン(C)を脱アミノ化することができるが、AIDは5'隣接プリンにより隣接されたC残基を標的とすることを選択する一方で、APOBEC3は5'-ピリミジン隣接を選択する。個々のAPOBEC3は具体的な5'-隣接ヌクレオチド選択性に関して異なっている。ヒトAPOBEC3遺伝子配列の比較は、タンパク質ドメインのカルボキシ末端から約60残基に位置する一連の約8アミノ酸が、この隣接ヌクレオチド選択性の決定において重要な役割を果たしていることを示唆する。オリゴヌクレオチド基質との複合体におけるAPOBEC2の結晶構造及びTadA tRNA-アデノシンデアミナーゼの結晶構造を考慮すると、AID及びAPOBEC3の両方にあるこの60-アミノ酸配列は、おそらくDNA基質との接触を形成している。従って、本発明の一つの実施態様において、機能的なAID変異体は、ヒトAIDのアミノ酸残基115-223が除去され、APOBEC3タンパク質(例えば、APOBEC3C、APOBec3F、及びAPOBEC3G)の対応する配列で置換されている野生型AIDタンパク質をコードする核酸配列を含み得る。
【0071】
本発明はさらに、機能的なAID変異体と、インフレームで共に融合された第二のポリペプチドとを含む融合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。例えば、融合タンパク質は当該技術分野における通常の技能の中で作製され、その作製は制限酵素又は組換えクローニング技術の利用を伴い得る。
【0072】
一つの実施態様において、融合タンパク質の第二のポリペプチドは、「核局在シグナル」又は「NLS」を含み得る。用語「核局在シグナル」及び「NLS」とは、タンパク質又はポリヌクレオチドの核内移行、又は細胞の核内でのその保持を媒介することができるドメイン(単数又は複数)をいう。「強力な核内移行シグナル」は、行動可能なように目的のタンパク質に連結された場合に、核内における90%よりも多くの細胞内局在を媒介することができるドメイン(単数又は複数)を表す。NLSの代表的な例としては、限定されないが、モノパータイト核局在シグナル、バイパータイト核局在シグナル並びにN及びC末端モチーフが挙げられる。N末端の塩基性ドメインは、通常、SV40ラージT抗原において最初に発見され、モノパータイトNLSを表すコンセンサス配列K-K/R-X-K/Rと一致する。N末端の塩基性ドメインNLSの一つの非限定的な例は、PKKKRKV(配列番号:76)である。また、ヌクレオプラスミンのNLS:KR[PAATKKAGQA]KKKK(配列番号:77)に例示されるように、約10アミノ酸のスペーサーにより分離されている2つの塩基性アミノ酸クラスターを含むバイパータイト核局在シグナルも公知である。N及びC末端モチーフは、例えば、hnRNP A1の酸性M9ドメイン、酵母転写リプレッサーMatα2における配列KIPIK(配列番号:78)及びU snRNPの複合シグナルを含む。これらのNLSの多くは、インポーチンβファミリーの特異的な受容体により直接的に認識されるようである。
【0073】
別の実施態様において、第二のポリペプチドは、融合されているポリペプチドの精製を促進し、且つその溶解性を改善させることが当該技術分野において公知の融合パートナーであり得、例えば、ポリヒスチジンタグ、NusA、バクテリオフェリチン(BFR)、GrpE、チオレドキシン(TRX)又はグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)である。融合タンパク質は、当該技術分野における通常の技能の中で精製される。
【0074】
さらに別の実施態様において、第二のポリペプチドは、自己蛍光性タンパク質(例えば、GFP、EGFP)等のレポーターポリペプチドであり得る。自己蛍光性タンパク質は、目的のポリヌクレオチド(及びそのポリペプチド産物)の発現を同定するための迅速なアッセイを提供する。レポーターポリペプチドの活性(及び推測によりその発現レベル)はフローソーターを用いて定量的にモニタリングできるため、多くの独立したトランスフェクタントを順次に又はバルク集団においてアッセイすることができる。それから、最良の発現を伴う細胞を、集団についてスクリーニングすること又は集団から選択することができる。これは、本発明の機能的なAID変異体を含む組換え細胞を選択する場合に有用である。
【0075】
本発明の更なる実施態様において、本発明の機能的なAID変異体をコードする核酸分子は、体細胞超変異(SHM)モチーフの数の低減又は増加に最適化されたコドンであり得る。本明細書において用いられる場合、「体細胞超変異」又は「SHM」とは、ポリヌクレオチド配列の変異であって、AID、機能的なAID変異体、ウラシルグリコシラーゼ及び/又はエラープローンポリメラーゼのそのポリヌクレオチド配列に対する作用により惹起されるか、又はその作用に関連しているものをいう。該用語は、初期障害のエラープローン修復の結果として生じる変異生成を含むことが意図され、ミスマッチ修復機構及び関連酵素により媒介される変異誘発が含まれる。
【0076】
用語「SHMの基質」とは、合成又は半合成のポリヌクレオチド配列であって、AID及び/又はエラープローンDNAポリメラーゼにより作用されて、その合成又は半合成のポリヌクレオチド配列の核酸配列に変化がもたらされるものをいう。
【0077】
本明細書において用いられる場合、用語「SHMホットスポット」又は「ホットスポット」とは、抗体遺伝子におけるSHM変異の統計学的解析により決定された体細胞超変異を受ける傾向が高いことを示す3〜6ヌクレオチドのポリヌクレオチド配列又はモチーフをいう。同様に、本明細書において用いられる場合、「SHMコールドスポット」又は「コールドスポット」とは、抗体遺伝子におけるSHM変異の統計学的解析により決定された体細胞超変異を受ける傾向が低いことを示す3〜6ヌクレオチドのポリヌクレオチド又はモチーフをいう。SHMの種々のモチーフの相対的な順位付け、並びに抗体遺伝子における標準的なホットスポット及びコールドスポットは、米国特許出願公開公報第09/0075378号及び国際特許出願公開公報第WO 08/103475号に記載されており、該統計学的解析は、本明細書に記載されるような非抗体遺伝子(例えば、AID遺伝子)におけるSHM変異の解析に当てはめることができる。
【0078】
用語「体細胞超変異モチーフ」又は「SHMモチーフ」とは、ポリヌクレオチド配列であって、一以上のホットスポット又はコールドスポットを含むか、又は含むように改変することができ、且つ定められた一連のアミノ酸をコードするものをいう。SHMモチーフは任意の大きさであり得るが、約2から約20ヌクレオチドの大きさ、又は約3から約9ヌクレオチドの大きさのポリヌクレオチドに基づくのが好都合である。SHMモチーフは、ホットスポット及びコールドスポットの任意の組み合わせを含むことができ、又はホットスポット及びコールドスポットの両方を欠いていてもよい。
【0079】
用語「好ましいホットスポットSHMコドン」、「好ましいホットスポットSHMモチーフ」、「好ましいSHMホットスポットコドン」及び「好ましいSHMホットスポットモチーフ」とは全て、限定されないが、コドンAAC、TAC、TAT、AGT、又はAGCを含むコドンをいう。このような配列は、より大きなSHMモチーフの中に潜在的に埋め込まれていてもよく、SHM媒介性の変異を誘発し、そのコドンにおける標的化されたアミノ酸多様性を生じさせる。
【0080】
本明細書で使用される場合、核酸配列は、核酸配列中でホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度及び/又は位置を増加又は低減するように核酸配列又はその部分が改変されている場合、「SHMのために最適化され」ている。核酸配列は、核酸配列中でホットスポットの頻度及び/又は位置を増加するように、又は核酸配列中でコールドスポットの頻度(密度)及び/又は位置を低減するように核酸配列又はその部分が改変されている場合、「SHMに感受性」とされている。逆に、核酸配列は、核酸配列のオープンリーディングフレーム中でホットスポットの頻度(密度)及び/又は位置を低減するように核酸配列又はその部分が改変されている場合、「SHMに耐性」とされている。一般に、コドン用法及び/又は核酸配列によりコードされるアミノ酸を変更することにより、SHM媒介性の変異誘発を受ける傾向がより大きい又はより小さい配列を作製できる。
【0081】
核酸配列の最適化とは、核酸配列中の約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、約25%、約50%、約75%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%又はこれらに入る任意の範囲のヌクレオチドを変更することをいう。ポリヌクレオチド配列の最適化とはまた、核酸配列中の約1個、約2個、約3個、約4個、約5個、約10個、約20個、約25個、約50個、約75個、約90個、約95個、約96個、約97個、約98個、約99個、約100個、約200個、約300個、約400個、約500個、約750個、約1000個、約1500個、約2000個、約2500個、約3000個又はそれより多く、又はこれらに入る任意の範囲のヌクレオチドを、ヌクレオチドのいくつか又は全てがSHM媒介性の変異誘発のために最適化されるように変更することをいう。ホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度(密度)の低減とは、核酸配列中のホットスポット又はコールドスポットを、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、約25%、約50%、約75%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%又はこれらに入る任意の範囲だけ低減させることをいう。ホットスポット及び/又はコールドスポットの頻度(密度)の増加とは、核酸配列中のホットスポット又はコールドスポットを、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約10%、約20%、約25%、約50%、約75%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、約100%又はこれらに入る任意の範囲だけ増加させることをいう。
【0082】
ホットスポット又はコールドスポットの位置又はリーディングフレームもまた、SHM媒介性の変異誘発が、結果として生じるアミノ酸配列に関してサイレントな変異をもたらし得るのか、或いはアミノ酸レベルでの保存的、半保存的又は非保存的な変化を生じるのかを支配する因子である。設計パラメーターは、SHMに対するヌクレオチド配列の相対的な感受性又は耐性をさらに向上させるために操作され得る。従って、SHM誘発の程度及びモチーフのリーディングフレームのいずれもが、SHM感受性及びSHM耐性の核酸配列の設計において考慮される。
【0083】
本発明はまた、機能的なAID変異体をコードする核酸分子を含むベクターも提供する。「ベクター」又は「クローニングベクター」は、プラスミド、ファージ又はコスミド等のレプリコンであり、その中に別のポリヌクレオチド部分が、挿入された部分の複製を引き起こすように導入され得る。ベクターは、通常、環状の二本鎖DNAとして存在し、その大きさは数キロベース(kb)から数百kbのものまである。好ましいクローニングベクターは、クローニング及びポリヌクレオチド配列の組換え操作を促進するために、天然に存在するプラスミドから改変されている。多くのそのようなベクターは当該技術分野において周知である;例えば、Sambrook et al, “Molecular Cloning: A Laboratory Manual,” second edition, Cold Spring Harbor Laboratory, (1989)、及びManiatis et al., Cell Biology: A Comprehensive Treatise, Vol. 3, Gene Sequence Expression, Academic Press, NY, pp. 563-608(1980)を参照のこと。
【0084】
本明細書において用いられる場合、用語「発現ベクター」とは、宿主細胞内又はin vitro発現系で特定のポリヌクレオチドを発現するために用いられるベクターをいう。該用語は、プラスミド、エピソーム、コスミド、レトロウイルス又はファージを含む。発現ベクターは、所望のタンパク質をコードするDNA配列を発現するために使用され得、一態様において、発現制御配列の集合体を含む転写ユニットを含む。プロモーター及び他の制御エレメントの選択は、一般に、意図された宿主細胞又はin vitro発現系によって異なる。
【0085】
本明細書において用いられる場合、「in vitro発現系」とは、DNA鋳型の転写、又は転写及び翻訳の結合を可能とする無細胞の系をいう。このような系は、例えば、ウサギ網状赤血球系、並びに新規の無細胞合成系(J. Biotechnol., 110: 257-63 (2004);Biotechnol. Annu. Rev., 10: 1-30 (2004))を含む。
【0086】
「発現制御配列」は、宿主細胞内でコード配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、転写ターミネーター、内部リボソーム進入部位(IRES)等のDNA制御配列である。例示的な発現制御配列は当該技術分野において公知であり、Goeddel;Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)に記載されている。
【0087】
「プロモーター」は、細胞内でRNAポリメラーゼに結合し、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することのできるDNA配列である。本明細書において用いられる場合、プロモーター配列は、その3'末端において転写開始部位に結合され、バックグラウンドより高い検出可能なレベルでの転写の開始に必要な最小数の塩基又はエレメントを含むために上流(5'方向)に伸長する。プロモーター配列の中には、転写開始部位(好都合にはヌクレアーゼS1でのマッピングにより定められる)、並びにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見られるであろう。真核プロモーターは、常にではないが、多くの場合、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含む。原核プロモーターは、-10及び-35コンセンサス配列に加えてシャイン−ダルガーノ配列を含む。
【0088】
種々の異なる由来からの構成的、誘導性及び抑制性プロモーターを含む多数のプロモーターが、当該技術分野において周知である。代表的な由来としては、例えば、ウイルス、哺乳類、昆虫、植物、酵母、及び細菌の細胞種が挙げられ、これらの由来の適切なプロモーターは容易に入手可能であり、或いは、オンラインで、又は例えば、ATCC等の寄託機関及び他の商業的又は個人の供給元から公的に入手可能な配列に基づき、合成により製造することができる。プロモーターは、一方向性(即ち、一方向において転写を開始する)又は双方向性(即ち、3'又は5'方向のいずれかにおいて転写を開始する)であり得る。プロモーターの非限定的な例としては、例えば、T7細菌発現系、pBAD(araA)細菌発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターとしては、Tet系(米国特許第5,464,758号及び第5,814,618号)、エクジソン誘導系(No et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 93: 3346-3351 (1996);T-RExTM系(Invitrogen, Carlsbad, CA)、LacSwitch(登録商標)(Stratagene, San Diego, CA)及びCre-ERTタモキシフェン誘導性リコンビナーゼ系(Indra et al., Nuc. Acid. Res., 27: 4324-4327 (1999);Nuc. Acid. Res., 28: e99 (2000);米国特許第7,112,715号)が挙げられる。一般には、Kramer & Fussenegger, Methods Mol. Biol., 308: 123-144 (2005))又は所望の細胞内での発現に適切な当該技術分野における公知の任意のプロモーターを参照のこと。
【0089】
Tet制御系等の誘導系が使用される場合、適切なアッセイによる分析前のある期間(例えば、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、10時間、15時間、20時間、24時間又は任意の他の時間)機能的なAID変異体をコードする核酸の発現を引き起こすため、ドキシサイクリンが培地に添加され得る。細胞は、多様化の進行を提供するため、所定の期間、例えば、1〜3細胞世代、又は特定の場合では3〜6世代、又はいくつかの場合では6〜10世代、又はそれよりも長く、増殖させておくことができる。
【0090】
本明細書において用いられる場合、「最小プロモーター」とは、転写開始部位を規定するが、それ自体は、仮にできたとしても、効率的には転写を開始することができない部分的なプロモーター配列をいう。そのような最小プロモーターの活性は、テトラサイクリン制御性トランス活性化因子等のアクティベーターの、行動可能に連結された結合部位への結合に依存している。
【0091】
用語「IRES」又は「内部リボソーム進入部位」とは、ポリシストロニックメッセンジャーRNAでコードされたコドン配列の翻訳を促進するように作用するポリヌクレオチドエレメントをいう。IRESエレメントは、典型的なリボソームスキャニングに関与する7-メチルグアノシン-キャップをバイパスして、直接的にリボソームをメッセンジャーRNA(mRNA)分子に誘導し、且つ結合させることにより翻訳の開始を媒介する。IRES配列の存在は、所望のタンパク質のキャップ非依存的な翻訳レベルを向上させることができる。初期の刊行物は、IRES配列を「翻訳エンハンサー」と記述している。例えば、カルジオウイルスRNAの「翻訳エンハンサー」が、米国特許第4,937,190号及び第5,770,428号に記載されている。
【0092】
本明細書において用いられる場合、用語「エンハンサー」は、例えば、遺伝子又はそれが行動可能に連結されたコード配列の転写を増加させるDNA配列をいう。エンハンサーは、コード配列から多くのキロベースだけ離れて位置していてもよく、調節因子の結合、DNAメチル化のパターン又はDNA構造の変化を媒介し得る。種々の異なる由来の多くのエンハンサーが当該技術分野において周知であり、(例えば、ATCC等の寄託機関及び他の商業的又は個人的な供給元より)クローン化されたポリヌクレオチドとして又はその中で入手可能である。プロモーター(一般に使用されているCMVプロモーター等)を含む多くのポリヌクレオチドは、エンハンサー配列も含む。行動可能に連結されたエンハンサーは、コード配列の上流、内部、又は下流に位置し得る。用語「Igエンハンサー」とは、Ig遺伝子座内にマッピングされたエンハンサー領域に由来するエンハンサーエレメントをいう(このようなエンハンサーは、例えば、重鎖(ミュー)5'エンハンサー、軽鎖(カッパー)5'エンハンサー、カッパー及びミューイントロンエンハンサー、並びに3'エンハンサーを含む(一般に、Paul WE (ed) Fundamental Immunology, 3rd Edition, Raven Press, New York (1993) pages 353-363;米国特許第5,885,827号を参照のこと)。
【0093】
「ターミネーター配列」は、転写の終結をもたらす配列である。ターミネーター配列は当該技術分野において公知であり、限定されないが、ポリA(例えば、BghポリA及びSV40ポリA)ターミネーターが挙げられる。転写終結シグナルは、典型的に、3'非翻訳領域(又は「3'ut」)、オプショナルイントロン(optional intron)(介在配列又は「IVS」とも称される)及び一以上のポリアデニル化シグナル(「p(A)」又は「pA」)の領域を含む。ターミネーター配列は「IVS-pA」、「IVS+p(A)」、「3'ut+p(A)」又は「3'ut/p(A)」とも称される。天然又は合成のターミネーターが、ターミネーター領域として使用され得る。
【0094】
用語「ポリアデニル化」、「ポリアデニル化配列」及び「ポリアデニル化シグナル」、「ポリA」、「p(A)」又は「pA」とは、RNA転写産物中に存在する核酸配列であって、ポリアデニル化トランスフェラーゼ酵素が存在するときに、該転写産物がポリアデニル化されることを可能にするものをいう。多くのポリアデニル化シグナルが当該技術分野において公知である。非限定的な例としては、ヒト変異型成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40後期ポリアデニル化シグナル及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが挙げられる。
【0095】
「エピソーム発現ベクター」は宿主細胞内で複製可能であり、適切な選択圧の存在下で宿主細胞の中でDNAの染色体外セグメントとして存続する(例えば、Conese et al., Gene Therapy 11: 1735-1742 (2004)を参照のこと)。商業的に入手可能な代表的なエピソーム発現ベクターとしては、限定されないが、エプスタイン・バール核内抗原1(EBNA1)及びエプスタイン・バールウイルス(EBV)複製起点(oriP)を利用するエピソームプラスミドが挙げられる。ベクターpREP4、pCEP4、pREP7(Invitrogenより)、pcDNA3.1(Invitrogenより)、及びpBK-CMV(Stratageneより)は、EBNA1及びoriPの代わりにT抗原及びSV40複製起点を用いるエピソームベクターの非限定的な例を表す。
【0096】
「組込み発現ベクター」は、宿主細胞のDNA中にランダムに組み込まれ得るか、又は発現ベクターと宿主細胞染色体との間の特異的な組換えを可能とするため複製部位を含み得る。このような組込み発現ベクターは、所望のタンパク質の発現をもたらすために、宿主細胞の染色体の内在性発現制御配列を利用し得る。部位特異的な様式で組み込まれるベクターの例としては、例えば、Invitrogenのflp-inシステムの構成要素(例えば、pcDNATM5/FRT)、又はStratageneのpExchange-6 Core Vectorsにおいて見ることができるcre-lox系が挙げられる。ランダムな様式で宿主細胞染色体内に組み込まれるベクターの例としては、例えば、InvitrogenのpcDNA3.1(T抗原の非存在下で導入する場合)、PromegaのpCI又はpFN10A (ACT) Flexi(登録商標)が挙げられる。
【0097】
商業的に入手可能な代表的なウイルス発現ベクターとしては、限定されないが、Crucell, Inc.から入手可能なアデノウイルスベースのPer.C6系、InvitrogenのレンチウイルスベースのpLP1、StratageneのレトロウイルスベクターpFB-ERV及びpCFB-EGSHが挙げられる。
【0098】
或いは、発現ベクターは、目的の内在性遺伝子の発現を調節するために、細胞中の遺伝子座に強力なプロモーター又はエンハンサー配列を導入し及び組み込むために使用され得る(Capecchi MR. Nat Rev Genet., 6(6): 507-12 (2005);Schindehutte et al., Stem Cells, 23(1): 10-5 (2005))。このアプローチは、目的の内在性遺伝子の誘導性発現を提供するために、Tet-Onプロモーター(米国特許第5,464,758号及び第5,814,618号)等の誘導性プロモーターを細胞のゲノムDNA中に挿入するためにも使用され得る。活性化コンストラクトは、目的の遺伝子に特異的な所望の遺伝子座への活性化配列の相同組換え又は非相同組換えを可能にするための標的配列も含むことができる(例えば、Garcia-Otin and Guillou, Front. Biosci., 11: 1108-36 (2006)を参照のこと)。或いは、Cre-ER系等の誘導性リコンビナーゼ系が、4-ヒドロキシタモキシフェンの存在下で導入遺伝子を活性化するために使用され得る(Indra et al., Nuc. Acid. Res., 27(22): 4324-4327 (1999);Nuc. Acid. Res., 28(23): e99 (2000);米国特許第7,112,715号)。
【0099】
本発明のベクターは、「選択マーカー遺伝子」を含み得る。本明細書において用いられる場合、用語「選択マーカー遺伝子」とは、ポリヌクレオチドであって、該ポリヌクレオチドを保有する細胞が、対応する選択試薬の存在下で、特異的に選択されるように又はされないようにすることを可能にするものをいう。選択マーカーは、陽性、陰性又は二機能性であり得る。陽性選択マーカーは、該マーカーを保有する細胞の選択を可能とし、陰性選択マーカーは、該マーカーを保有する細胞が選択的に除かれることを可能とする。選択マーカーのポリヌクレオチドは、発現されるポリヌクレオチドに直接連結されていてもよく、又は、共トランスフェクションにより同一細胞に導入されていてもよい。種々のそのようなマーカーポリヌクレオチドが記載されており、例えば、二機能性(即ち、陽性/陰性)マーカー(例えば、国際特許出願公開公報WO 92/08796、及びWO 94/28143を参照のこと)、薬剤耐性遺伝子(例えば、アンピシリン)、及び細胞増殖抑制剤又は細胞破壊剤に対する耐性を付与するタンパク質(例えば、DHFRタンパク質)(例えば、Wigler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77: 3567 (1980) 、O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78: 1527 (1981) 、Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 78: 2072 (1981)、Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol., 150: 1 (1981)、Santerre et al., Gene, 30: 147 (1984)、Kent et al., Science, 237: 901-903 (1987)、Wigler et al., Cell, 11: 223 (1977)、Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 48:2026 (1962)、Lowy et al., Cell, 22:817 (1980)、並びに米国特許第5,122,464号及び第5,770,359号を参照のこと)が挙げられる。
【0100】
ベクターは「レポーター遺伝子」を含み得る。「レポーター遺伝子」とは、典型的に目的の細胞で発現させた場合に、特異的に検出(又は、検出及び選択)される能力を付与するポリヌクレオチドをいう。多くのレポーター遺伝子系が当該技術分野において公知であり、例えば、アルカリホスファターゼ(Berger, J., et al., Gene, 66: 1-10 (1988);Kain, SR., Methods Mol. Biol., 63: 49-60 (1997))、ベータ−ガラクトシダーゼ(米国特許第5,070,012号)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(Gorman et al., Mol. Cell. Biol., 2: 1044-51 (1982))、ベータグルクロニダーゼ、ペルオキシダーゼ、ベータラクタマーゼ(米国特許第5,741,657号及び第5,955,604号)、触媒抗体、ルシフェラーゼ(米国特許第5,221,623号;第5,683,888号;第5,674,713号;第5,650,289号;及び第5,843,746号)、及び天然の蛍光タンパク質(Tsien, RY, Annu. Rev. Biochem., 67: 509-544 (1998))が挙げられる。用語「レポーター遺伝子」は、検出可能なシグナルを創出するために目的のペプチドと相互作用し得る、又はそれが望まれる(若しくは望まれない)1以上の抗体、エピトープ、結合パートナー、基質、修飾酵素、受容体、又はリガンドの使用に基づいて特異的に検出され得る任意のペプチドも含む。レポーター遺伝子は、細胞表現型を改変し得る遺伝子も含む。レポータータンパク質は、このような検出目的のために提供される場合、変異体AIDタンパク質と融合される必要はない。それは、変異体AIDタンパク質もコードする同一のポリヌクレオチド(例えば、ベクター)によりコードされ得、標的細胞内で共導入及び共発現され得る。
【0101】
発現ベクターは、標的配列の発現を低減させるため、アンチセンス、リボザイム又はsiRNAのポリヌクレオチドも含み得る(例えば、Sioud M, & Iversen, Curr. Drug Targets, 6: 647-53 (2005);Sandy et al., Biotechniques, 39:215-24 (2005)を参照のこと)。
【0102】
本発明はまた、機能的なAID変異体をコードする核酸分子、又は機能的なAID変異体をコードする核酸分子を含むベクターを含む細胞も提供する。用語「細胞」、「細胞培養物」、「細胞株」、「組換え宿主細胞」、「レシピエント細胞」及び「宿主細胞」は多くの場合交換可能に用いられ、トランスファーの回数に関わらず、初代対象細胞及びその任意の子孫を含む。全ての子孫が、(意図的若しくは意図的でない変異又は環境の相違に起因して)親細胞と正確に同一であるわけではないことを理解すべきである。しかしながら、そのような変化した子孫は、元々の形質転換された細胞と同じ機能を保持している限り、これらの用語に含まれる。例えば、限定されないが、そのような特徴は、特定の組換えタンパク質を産生する能力であるかもしれない。「ミューテーター陽性細胞株」は、他のベクターエレメントとの組み合わせで作用して超変異をもたらすのに十分な細胞因子を含む細胞株である。該細胞株は、当該技術分野において公知のもの、又は本明細書に記載されるもののいずれであってもよい。「クローン」は、単一の細胞から又は有糸分裂により共通の祖先から得られた細胞集団である。
【0103】
細胞ベースの発現及び超変異系は、任意の適切な原核生物又は真核生物の発現系を含む。好ましい系は、容易且つ確実に増殖でき、合理的に速い増殖速度を有し、十分に特徴付けられた発現系を有し、容易且つ効率的に形質転換又はトランスフェクトできるものである。
【0104】
有用な微生物細胞としては、限定されないが、Bacillus、Escherichia(E. coli等)、Pseudomonas、Streptomyces、Salmonella、Erwiniaの属由来の細胞、Bacillus subtilis、Bacillus brevisが挙げられる。特に有用な原核細胞としては、種々の株のEscherichia coli(例えば、K12、HB101、(ATCC NO. 33694)DH5α、DH10、MC1061(ATCC NO. 53338)、及びCC102)が挙げられる。
【0105】
当業者に公知の多くの酵母細胞株もまた、ポリペプチドの発現のための宿主細胞として利用可能であり、Hansenula、Kluyveromyces、Pichia、Rhino-sporidium、Saccharomyces及びSchizosaccharomycesの属並びに他の真菌由来のものが挙げられる。好ましい酵母細胞としては、例えば、Saccharomyces cerivisae及びPichia pastorisが挙げられる。
【0106】
また、所望の場合、昆虫細胞系が本発明の方法において利用可能である。このような系は、例えば、Kitts et al., Biotechniques, 14: 810-817 (1993);Lucklow, Curr. Opin. Biotechnol., 4: 564-572 (1993);及びLucklow et al., J. Virol., 67: 4566-4579 (1993)に記載されている。好ましい昆虫細胞としては、Sf-9及びHI5(Invitrogen, Carlsbad, Calif.)が挙げられる。
【0107】
機能的なAID変異体をコードする核酸を含む細胞は、好ましくは哺乳動物細胞である。多くの好適な哺乳動物の宿主細胞もまた当該技術分野で公知であり、多くがAmerican Type Culture Collection(ATCC, Manassas, VA)から入手可能である。好適な哺乳動物細胞の例としては、限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(ATCC No. CCL61)CHO DHFR細胞(Urlaub et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97: 4216-4220 (1980))、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞293又は293T細胞(ATCC No. CRL1573)、及び3T3細胞(ATCC No. CCL92)が挙げられる。好適な哺乳動物の宿主細胞の選択と、形質転換、培養、増幅、スクリーニング並びに産物の産生及び精製の方法とは当該技術分野において公知である。その他の好適な哺乳動物細胞株は、サルCOS-1(ATCC No. CRL1650)及びCOS-7細胞株(ATCC No. CRL1651)、並びにCV-1細胞株(ATCC No. CCL70)である。更なる例示的な哺乳動物の宿主細胞としては、形質転換された細胞株を含む、霊長類細胞株及びげっ歯類細胞株が挙げられる。通常の二倍体細胞、初代組織のin vitro培養物由来の細胞株、並びに初代外植片もまた好適である。候補細胞は、選択遺伝子において遺伝子型欠損であり得、又は優性に作用する選択遺伝子を含み得る。他の好適な哺乳動物の細胞株としては、限定されないが、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL-929細胞、Swiss、Balb-c若しくはNIHマウス由来の3T3株、BHK若しくはHaKハムスター細胞株が挙げられ、これらはATCCより入手可能である。
【0108】
また、リンパ系、又はリンパ系由来細胞株(プレBリンパ球起源の細胞株等)も、本発明の範囲内である。具体的な例としては、限定されないが、RAMOS(CRL-1596)、Daudi(CCL-213)、EB-3(CCL-85)、DT40(CRL-2111)、18-81(Jack et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 1581-1585 (1988))、Raji細胞、(CCL-86)及びそれらに由来するものが挙げられる。
【0109】
本発明の機能的なAID変異体は、「トランスフェクション」、「トランスフォーメーション(形質転換)」又は「トランスダクション(形質導入)」によって細胞内に導入され得る。本明細書において用いられる場合、「トランスフェクション」、「トランスフォーメーション」又は「トランスダクション」とは、1つの又は物理的若しくは化学的な方法を使用することにより、宿主細胞に1以上の外因性のポリヌクレオチドを導入することをいう。多くのトランスフェクション技術が当業者に公知であり、限定されないが、リン酸カルシウムDNA共沈殿(Methods in Molecular Biology, Vol. 7, Gene Transfer and Expression Protocols, Ed. E. J. Murray, Humana Press (1991)を参照のこと);DEAE−デキストラン;エレクトロポレーション;カチオン性リポソーム介在トランスフェクション;タングステン粒子促進性の微粒子照射(Johnston, S. A., Nature, 346: 776-777 (1990));並びにリン酸ストロンチウムDNA共沈殿(Brash D. E. et al. Molec. Cell. Biol., 7: 2031-2034 (1987))が挙げられる。ファージ又はレトロウイルスベクターは、商業的に入手可能なパッケージ細胞内での感染粒子の成長後に、宿主細胞に導入することができる。
【0110】
本発明はまた、所望の性質を有する遺伝子産物の調製方法も提供するものであり、その方法は、該遺伝子産物をコードする核酸を細胞集団中で発現することを含み、該細胞集団は本発明の機能的なAID変異体タンパク質を発現し、又は発現するよう誘導されることができ、該機能的なAID変異体タンパク質の発現は、該遺伝子産物をコードする核酸内に変異を引き起こす。本発明の他の実施態様との関連で上記に説明した機能的なAID変異体、細胞、並びに核酸分子を細胞内にトランスフェクト及び発現する方法の記載はまた、上述した方法における同一のものに適用することができる。
【0111】
望ましくは、機能的なAID変異体タンパク質は、体細胞超変異(SHM)により、遺伝子産物をコードする核酸内に変異を引き起こす。SHM系におけるAIDの使用は、米国特許出願公開公報第09/0075378号並びに国際特許出願公開公報第WO/08103474号及び第WO 08/103475号に詳細に記載されている。本明細書で使用される場合、用語「目的の遺伝子産物」又は「目的のタンパク質」は、その遺伝子産物の改善されたバリアントを迅速に生成、選択及び同定するために、該遺伝子産物をコードする核酸を機能的なAID変異体によるSHMのために最適化することが望まれるタンパク質又はその部分に関する。このような最適化された核酸配列は、(本明細書に記載されているように)コドン用法の結果としてSHMに対してより感受性にすることができ、それにより、該ポリヌクレオチドが機能的なAID変異体に供された場合にアミノ酸変化を誘導し、改善された機能についてスクリーニングされ得る。逆に、このような最適化された核酸配列は、(本明細書に記載されているように)SHMに対してより耐性にすることができ、それにより、コドン用法の結果として、該ポリヌクレオチドが機能的なAID変異体に供された場合のアミノ酸変化を低減し、改善された機能についてスクリーニングされ得る。
【0112】
アミノ酸又は対応するヌクレオチド配列が公知又は利用可能であり(例えば、本明細書に記載されているようなベクター中にクローニングできる)、表現型又は機能が改善され得る任意のタンパク質は、本発明の方法において使用するための候補である。好適なタンパク質の例としては、例えば、任意の未改変又は合成の供給源由来の、表面タンパク質、細胞内タンパク質、膜タンパク質及び分泌タンパク質が挙げられる。遺伝子産物は、好ましくは、抗体重鎖又はその部分、抗体軽鎖又はその部分、酵素、受容体、構造タンパク質、補因子、ポリペプチド、ペプチド、細胞内抗体、選択マーカー、毒素、増殖因子、ペプチドホルモン、又は最適化できる任意の他のタンパク質である。
【0113】
遺伝子産物は任意の適切な酵素であり得、微生物発酵、代謝経路工学、タンパク質製造、バイオレメディエーション、並びに植物の成長及び発生に関連する酵素が挙げられる(例えば、Olsen et al., Methods Mol. Biol., 230: 329-349 (2003);Turner, Trends Biotechnol., 21(11): 474-478 (2003);Zhao et al., Curr. Opin. Biotechnol., 13(2): 104-110 (2002);及びMastrobattista et al., Chem. Biol., 12(12): 1291-300 (2005)を参照のこと)。
【0114】
本発明の方法に使用される好適な受容体としては、限定されないが、細胞結合受容体(例えば、抗体(B細胞受容体)、T細胞受容体、Fc受容体、G共役タンパク質受容体、サイトカイン受容体、糖鎖受容体、及びAvimerTMベースの受容体)が挙げられる。このような受容体は、以下の特徴:親和性、結合活性、選択性、熱安定性、タンパク分解安定性、溶解性、二量体化、折り畳み、免疫毒性、シグナルトランスダクションカスケードへの結合及び発現のうちの1つ以上を改善させるために、SHMを通じて変化され得る。
【0115】
本発明の方法に使用される好適な遺伝子産物は、他の生物学的に活性なタンパク質の薬物動態及び/又は薬力学を調節可能な分子も含み、例えば、脂質及びポリマー(ポリアミン、ポリアミド、ポリエチレングリコール及び他のポリエーテル等)が挙げられる。本発明の方法に使用される好適な遺伝子産物の他の例としては、VEGF、VEGF受容体、ジフテリア(Diptheria)毒素サブユニットA、B. pertussis毒素、CCケモカイン(例えば、CCL1〜CCL28)、CXCケモカイン(例えば、CXCL1〜CXCL16)、Cケモカイン(例えば、XCL1及びXCL2)及びCX3Cケモカイン(例えば、CX3CL1)、IFN-γ、IFN-α、IFN-β、TNF-α、TNF-β、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、TGF-β、TGF-α、GM-CSF、G-CSF、M-CSF、TPO、EPO、ヒト成長因子、線維芽細胞成長因子、核補因子、Jak及びStatファミリーメンバー、Gタンパク質シグナル伝達分子(例えば、ケモカイン受容体、JNK、Fos-Jun、NF-κB、I-κB、CD40、CD4、CD8、B7、CD28及びCTLA-4)等のポリペプチドが挙げられる。さらに、SHMを介した変異及び最適化のための好適な候補として目的の遺伝子産物(例えば、タンパク質)を選択する方法、並びに関連するスクリーニングアッセイは、米国特許出願公開公報第09/0075378号並びに国際特許出願公開公報第WO/08103474号及び第WO 08/103475号に開示されている。
【0116】
本発明の好ましい実施態様において、機能的なAID変異体タンパク質による変異誘発に供される核酸配列は、抗体又はその部分をコードする。全ての天然に存在する生殖系列の、親和性成熟した、合成又は半合成の抗体並びにそれらのフラグメントをコードする核酸配列が、本発明において使用され得る。一般に、このような抗体コード配列は、以下の機能的特徴:親和性、結合活性、選択性、熱安定性、タンパク分解安定性、溶解性、折り畳み、免疫毒性及び発現のうちの1つ以上を改善するために、SHMを通じて変化され得る。抗体形式に依存して、宿主細胞において共発現され得る、別個の重鎖ライブラリー及び軽鎖ライブラリーを含むライブラリーが作成され得る。特定の実施形態において、全長抗体が分泌(又は放出)され得、及び/又は宿主細胞の細胞膜で表面ディスプレイされ得る。さらに他の実施形態において、重鎖ライブラリー及び軽鎖ライブラリーは、同一の発現ベクター又は異なる発現ベクター中に挿入でき、両方の抗体鎖の同時共進化を可能にする。
【0117】
従って、本発明の方法は、標的タンパク質の機能に関する最も強力な生物学的効果を生じることと結びついた重要な表面エピトープに結合する抗体を選択するためのin vivoの免疫の必要性を回避する能力を提供する。また、哺乳動物抗体は、標的化されたSHMのための最適なコドン用法パターンを本来的に処理し、テンプレート設計ストラテジーを大いに単純化する。特定の抗原について、in vivoの免疫は、標的の機能に影響を与えないエピトープ選択を導き、それにより、強力かつ有効な抗体候補の選択を妨害する。さらに他の実施形態において、本発明の方法は、標的タンパク質の機能の決定におけるそのエピトープの役割の性質により、強力な活性を有する部位を方向付けられた抗体の迅速な進化を提供できる。これは、最適なエピトープ位置について標的タンパク質をスキャンし、臨床で使用するためのクラス最高の抗体薬物を産生する能力を提供する。
【0118】
本発明の方法は、抗体又はそのフラグメント(例えば、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、scFv、dsFv、dAb又は単鎖結合ポリペプチド)の特定のサブドメイン中のホットスポット密度を増加させるために使用され得、それらは、特徴(例えば、結合親和性の増大、結合活性の増大、及び/又は非特異的結合の減少)における改善をもたらし得る。本発明の方法はまた、定常ドメイン(例えば、Fc)中のホットスポットが増加した合成抗体を作成するために使用されることができ、それは、Fc受容体(FcR)に対する結合親和性の増大をもたらし得、それにより、シグナルカスケードが調節される。重鎖及び軽鎖又はそれらの一部は、本明細書において記載されている方法を用いて同時に改変され得る。
【0119】
細胞内抗体は、細胞質の還元環境における重鎖及び/又は軽鎖のフォールディングを改善又は増強するために、本発明の方法を用いて改変され得る。或いは、又はさらに、sFv細胞内抗体は、ドメイン内ジスルフィド結合の非存在下で適切に折り畳まれ得るフレームワークを安定化するために改変され得る。細胞内抗体は、例えば、以下の特徴:結合親和性、結合活性、エピトープ接近可能性、標的エピトープについての内在性タンパク質との競合、半減期、標的隔絶、標的タンパク質の翻訳後修飾等のうちの1つ以上を増大させるためにも改変され得る。細胞内抗体は細胞内で作用するため、それらの活性は、酵素活性アッセイのためのアッセイ方法論により類似している。
【0120】
抗体ライブラリーを設計及び作成するための方法、並びに優れた選択性、種間反応性及びブロッキング活性を有する抗体の選択を提供する最適なエピトープを同定するための方法は、当該技術分野で公知である(例えば、米国特許出願公開公報第09/0075378号並びに国際特許出願公開公報第WO 08/103474号及び第WO 08/103475号を参照のこと)。改善された特徴を有する表面露出又は分泌された抗体を検出又は選択する具体的なスクリーニングは、当該技術分野において周知である。このようなスクリーニングは、全体に及んで最良の抗体を進化させるために、例えば、親和性、結合活性、選択性及び熱安定性といった多様なパラメーターの同時選択に基づく、いくつかの選択ラウンドを含み得る。
【0121】
さらに、全体にわたる系の完全性を維持するため、機能的な変異体AIDタンパク質により変異されないことを当業者が好む、コード配列及び遺伝エレメント等の種々の他の成分ヌクレオチド配列が存在することが理解されるであろう。これらの成分ヌクレオチド配列は本明細書に記載されており、限定されないが、(i)選択マーカー、(ii)レポーター遺伝子、(iii)遺伝子調節シグナル、(iv)高レベルに増強されたSHM又はその調節若しくは測定のために使用される酵素又は補助因子(例えば、AID又は機能的なAID変異体、polイータ、転写因子、及びMSH2)、(v)シグナル伝達成分(例えば、キナーゼ、受容体、転写因子)、及び(vi)タンパク質のドメイン又はサブドメイン(例えば、核局在化シグナル、膜貫通ドメイン、触媒ドメイン、タンパク質−タンパク質相互作用ドメイン、並びに他のタンパク質ファミリーの保存されたモチーフ、ドメイン及びサブドメイン)が挙げられる。
【0122】
目的の遺伝子産物の性質、及び目的の遺伝子産物に関して利用可能な情報の量に応じて、当業者は、本発明の方法の実施前又はそれと組み合わせての以下のストラテジーの任意の組み合わせに従って、所望の性質を有する目的の遺伝子産物を調製することができる。
【0123】
1. SHM最適化なし:目的の遺伝子産物をコードする核酸配列内でホットスポットの数を増加させることは望ましいことであり得るが、あらゆる未改変の核酸配列は一定量のSHMを受けることが見込まれ、最適化されることなく、又は実際の配列の何らの具体的な知識なしに本発明の方法において使用され得ることに注意すべきである。さらに、特定のタンパク質(例えば、抗体)は、適切なコドン用法を進化させた核酸配列を天然に含み、コドン修飾は必要としない。或いは、目的の遺伝子産物をコードする核酸配列(例えば、抗体のフレームワーク領域又はそのフラグメント)内でコールドスポットの数を増加させることが望ましいものであり得る。
【0124】
2. 全体的なSHMホットスポットの最適化:いくつかの点において、米国特許出願公開公報第09/0075378号及び国際特許出願公開公報第WO 08/103475号に詳細に記載されているように、遺伝子産物をコードする核酸配列内のホットスポットの数を増加させることができる。このアプローチは核酸配列のコード領域全体に適用することができ、それにより、核酸配列全体をSHMに対してより感受性にする。このアプローチは、遺伝子産物又は関連するアイソタイプ間の構造活性の関係について比較的あまり知られていない場合に好適であり得る。
【0125】
3. 選択的なSHMホットスポット修飾:或いは、目的のタンパク質をコードする核酸配列は、米国特許出願公開公報第09/0075378号及び国際特許出願公開公報第WO 08/103475号に記載されているように、合成可変領域(それは、高密度のホットスポットを提供し、特定の遺伝子座でSHMを介した最大の多様性の種となる)での目的の領域の標的化された置換を通じて選択的及び/又は体系的に改変され得る。
【0126】
当業者は、前述に基づいて、上記のアプローチのいずれか又は全てが本発明の方法と合わせて行なわれ得ることを理解するであろう。しかし、全体的なSHMホットスポット最適化及び選択的SHMホットスポット改変に関する方法は、タンパク質機能のより迅速且つより効率的な最適化に繋がる可能性がある。
【0127】
目的の遺伝子産物をコードするSHMに最適化された核酸配列の設計後、標準的方法論を使用してそれを合成することができ、正しく合成されたかを確認するために配列決定することができる。核酸配列の配列が確認されたら、該核酸配列は本明細書に記載のベクター中に挿入され得、次いでこのベクターは本明細書中に記載したように宿主細胞中に導入され得る。発現、及び/又は機能的なAID変異体タンパク質により惹起されるSHMの目的の遺伝子産物をコードする核酸配列への標的化を増大させるために、エンハンサー(例えば、Igエンハンサー)がベクター中に挿入され得る。
【0128】
本発明の方法によれば、本明細書に記載のベクターはいずれも、宿主細胞に、本明細書に記載の機能的なAID変異体をコードする核酸配列を含む別個のベクターと共に共トランスフェクトすることができる。一つの態様において、本明細書に記載のベクターは、内在性のAIDタンパク質を含む(及び発現する)宿主細胞にトランスフェクトされ得る。別の態様において、本明細書に記載のベクターは、内在性のAIDタンパク質を含む宿主細胞に、機能的なAID変異体が細胞内で過剰発現されるように、機能的なAID変異体の核酸配列を含む別個のベクターと共に共トランスフェクトされ得る。さらに別の態様において、本明細書に記載のベクターは、内在性のAIDタンパク質を含む、又は含まない宿主細胞へのトランスフェクションのために機能的なAID変異体をコードする核酸配列を含むように改変され得る。好ましい実施態様において、機能的なAID変異体は、SHMに耐性である核酸配列によりコードされる合成的なAIDである。
【0129】
1以上の核酸の発現ベクター内への導入後、ベクターは、増幅され、精製され、標準的なトランスフェクション技術を用いて宿主細胞に導入され、及び標準的な分子生物学的技術を用いて特徴づけられることができる。精製されたプラスミドDNAは、標準的なトランスフェクション/トランスフォーメーション技術を使用して宿主細胞に導入でき、得られたトランスフォーマント/トランスフェクタントは、抗生物質、選択試薬、及び/又は目的の遺伝子産物をコードする核酸配列の発現を誘導するための活性化/トランスアクチベーターシグナル(例えば、ドキシサイクリン等の誘導可能な試薬)を含む適切な培地で増殖できる。
【0130】
さらに、本発明の方法は、細胞又は細胞集団の中に以下の1以上を導入することを含み得る。(i)少なくとも1つの核酸配列であって、その核酸配列が被るSHMの率に正の影響を与えるために、対応する野生型核酸配列から全体的又は部分的に改変された核酸配列か、或いは、何らの改変前に、天然に高いパーセンテージのホットスポットを有する核酸配列、及び/又は、(ii)SHMの率に対して負の影響を与えるために、全体的又は部分的に改変された核酸配列。
【0131】
1つの態様において、本発明の方法はさらに、SHMの率に負の影響を与えるために、対応する野生型の核酸配列から改変された1以上の核酸配列を細胞又は細胞集団の中に導入することを含み得る。該核酸配列は、例えば、SHMのための1以上の因子(例えば、AID、Polイータ、UDG)、1以上の選択マーカー遺伝子、又は1以上のレポーター遺伝子をコードし得る。
【0132】
別の態様において、本発明の方法はさらに、SHMの率に正の影響を与えるために、対応する野生型の核酸配列から全体的又は部分的に改変された1以上の核酸配列を細胞又は細胞集団の中に導入することを含み得る。該核酸配列は、例えば、酵素、受容体、転写因子、構造タンパク質、毒素、補因子、目的の特異的結合タンパク質をコードし得る。
【0133】
さらに別の態様において、本発明の方法はさらに、本来的に高いSHMの率を有する核酸配列(例えば、免疫グロブリン重鎖若しくは免疫グロブリン軽鎖、又は抗体遺伝子の超可変領域をコードする核酸配列等)を細胞又は細胞集団の中に導入することを含み得る。
【0134】
本発明の方法の細胞又は細胞集団はさらに、以下のさらなるエレメントの1以上を含み得る。(i)AID、AIDホモログ、又は本発明の機能的なAID変異体の発現を調節するための誘導性の系、(ii)1以上のIgエンハンサー、(iii)1以上のE-ボックス、(iv)SHMのための1以上の補助因子、(v)安定なエピソーム発現のための1以上の因子(例えば、EBNA1、EBP2又はori-P)、(vi)1以上の選択マーカー遺伝子、(vii)AID、AIDホモログ、又は本発明の機能的なAID変異体の遺伝子を含む1以上の第2のベクター、又は(viii)それらの組み合わせ。
【0135】
本発明の別の態様において、該方法は、2つの核酸配列を発現することを含み、それぞれは、プロモーターの近位に位置し、同じ細胞中で同時に発現され及び共進化される目的の遺伝子産物をコードする。プロモーターは、二方向性CMVプロモーター等の二方向性プロモーターであり得る。別の実施形態において、目的の2つの核酸配列は、2つの一方向プロモーターの前に配置される。2つのプロモーターは、同じプロモーターでも異なるプロモーターでもよい。目的の2つの核酸配列は、同一ベクター内にあっても、異なるベクター上にあってもよい。
【0136】
細胞又は細胞集団は、本明細書において記載されているような機能的な変異体AIDタンパク質を恒常的に発現し、又は発現するよう誘導され得る。機能的な変異体AIDタンパク質の発現は、遺伝子産物をコードする核酸配列に変異を引き起こす。細胞又は細胞集団はまた、AIDが介する核酸配列の変異を増大する他の因子も発現し得る。本発明の方法の結果として、目的の遺伝子産物をコードする核酸配列の進行性の配列多様性が得られる。適切な期間(例えば、2〜10細胞分裂)後、目的の遺伝子産物のバリアントを含む、結果として生じる宿主細胞をスクリーニングすることができ、改善された変異体が該細胞集団から同定及び分離され得る。細胞は、本明細書に記載のとおり繰り返し増殖、アッセイ、及び選択されて、所望の特性を示す目的の遺伝子産物をコードする核酸配列を発現する細胞を選択的に増幅させることができる。適切なアッセイ及び増幅のストラテジー(例えば、蛍光活性化セルソーティング(FACS);アフィニティ分離、酵素活性、毒性、受容体結合、増殖刺激等)は当該技術分野において公知であり、例えば、米国特許出願公開公報第09/0075378号並びに国際特許出願公開公報第WO 08/103475号及び第WO 08/103474号に記載されている。
【0137】
本発明の一つの実施態様において、目的の遺伝子産物をコードする核酸配列は、該目的の遺伝子産物が細胞表面で提示されるように設計され得る。この点において、細胞表面に提示されるタンパク質は、適切な膜貫通ドメインにインフレームで連結された目的のタンパク質のキメラ分子の生成を通じて生成され得る。哺乳動物細胞発現の場合、例えば、MHCタイプ1膜貫通ドメイン(H2kk由来のもの(ペリ膜貫通ドメイン、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含む;NCBI遺伝子アクセッション番号AK153419)等)が使用できる。同様に、原核生物細胞(E. coli及びStaphylococcus等)、昆虫細胞及び酵母におけるタンパク質の表面発現は、当該技術分野で十分に確立されている(例えば、Winter et al., Annu. Rev. Immunol., 12: 433-55 (1994);Pluckthun A. Bio/Technology, 9: 545-551 (1991);Gunneriusson et al., J. Bacteriol., 78: 1341-1346 (1996);Ghiasi et al., Virology, 185: 187-194 (1991);Boder and Wittrup, Nat. Biotechnol., 15: 553-557 (1997);及びMazor et al., Nat. Biotechnol., 25(5): 563-565 (2007)を参照のこと)。
【0138】
表面提示される抗体又はタンパク質は、分泌タンパク質の分泌及びその後の細胞表面上での結合(又は会合)を通じて生成され得る。抗体又はタンパク質の細胞膜へのコンジュゲート化は、タンパク質合成の間又はタンパク質が細胞から分泌された後のいずれかに生じ得る。コンジュゲート化は、共有結合を介して、結合相互作用(例えば、特異的結合メンバーにより介在される)又は共有結合と非共有結合との組合せによって生じ得る。タンパク質はまた、細胞表面上での提示に特有の第二の結合メンバーに融合された目的の標的に特異的に結合する第一の特異的結合メンバーを含む、抗体又は結合タンパク質融合タンパク質の生成を介して、細胞にカップリングされることも可能である(例えば、プロテインAとFcドメインとの結合を利用する場合:プロテインAは、細胞表面上に発現されてそこに結合し、分泌された抗体(又はFc融合タンパク質として発現された目的のタンパク質)に結合し、それを局在化させる)。
【0139】
いくつかの場合には、さらなる特徴付けのために、表面提示されたタンパク質を、細胞から放出又はシェディングされるタンパク質に変換することが望まれ得る。変換は、選択的プロテアーゼ(因子X、トロンビン又は任意の他の選択的タンパク分解剤等)とのインキュベーションによって切断され得る特異的リンカーの使用によって行われ得る。ベクター中のコードされたタンパク質の遺伝子操作を可能にする(即ち、タンパク質のリーディングフレームからの表面結合シグナルの切り出しを可能にする)核酸配列を含むことも可能である。このような遺伝子操作は、組換え系を用いて行われ得る。「組換え系」は、本明細書において使用される場合、目的の遺伝子を組み込むためのベクターと染色体との間の組換えを可能とする系をいう。組換え系は当該技術分野で公知であり、例えば、Cre/Lox系及びFLP-IN系が挙げられる(例えば、Abremski et al., Cell, 32: 1301-1311 (1983)、並びに米国特許第4,959,317号、第5,654,182号、及び第5,677,177号を参照のこと)。例えば、結合シグナルの選択的除去、及び続いて行われる目的のタンパク質の細胞内蓄積(又は分泌)を随意に可能にする、1以上の独自の制限部位、又はcre/loxエレメント、又は他の組換えエレメントの挿入。さらなる例としては、目的のタンパク質の効率的な細胞表面発現を可能にする、結合シグナル(膜貫通ドメイン等)の周囲の隣接するloxP部位の挿入が挙げられる。しかし、細胞におけるcreリコンビナーゼの発現においては、結合シグナルの喪失をもたらすLoxP部位間での組換えが発生し、それにより目的のタンパク質の放出又はシェディングを導く。
【0140】
本発明の方法により生成される目的の遺伝子産物は、種々の標準的な生理学的、薬理学的及び生化学的手順を用いて、所望の性質(例えば、選択可能な、又は改善された表現型)についてスクリーニングされ得る。このようなアッセイとしては、例えば、結合アッセイ、蛍光偏光アッセイ、溶解度アッセイ、折り畳みアッセイ、熱安定性アッセイ、タンパク分解安定性アッセイ、及び酵素活性アッセイ等の生化学的アッセイ(一般には、Glickman et al., J. Biomolecular Screening, 7(1): 3-10 (2002);Salazar et al., Methods. Mol. Biol., 230: 85-97 (2003)を参照のこと))、並びに、シグナル伝達、遊走性、全細胞結合、フローサイトメトリー及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)ベースのアッセイを含む、様々な細胞ベースのアッセイが挙げられる。遺伝子産物が抗体又はそのフラグメントである場合、該抗体又はそのフラグメントの表現型/機能は、当該技術分野で認識されているアッセイ(例えば、結合親和性、結合活性等を決定できる、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、酵素結合免疫吸着スポット(ELISPOTアッセイ)、変異したIgH鎖のゲル検出及び蛍光検出、スキャッチャード分析、BIACOR分析、ウェスタンブロット、ポリアクリルアミドゲル(PAGE)分析、ラジオイムノアッセイ等)を使用してさらに分析することができる。
【0141】
本明細書に記載の合成又は半合成のライブラリーによりコードされている目的のタンパク質を発現する細胞は、当該技術分野で認識されている任意のアッセイにより増幅され得、該アッセイとしては、限定されないが、ペプチドを微粒子に結合させる方法が挙げられる。
【0142】
ハイスループットの様式でこれらのアッセイを実施することを可能にする多くのFACS及びハイスループットのスクリーニング系が商業的に入手可能である(例えば、Zymark Corp., Hopkinton, Mass.;Air Technical Industries, Mentor, Ohio;Beckman Instruments Inc., Fullerton, Calif.;Precision Systems, Inc., Natick, Mass.を参照のこと)。これらの系は、典型的に、全てのサンプル及び試薬のピペッティング、液体分配時限式インキュベーション、及びアッセイに適した検出器におけるマイクロプレートの最終的な読み取りを含む、手順全体を自動化している。これらの設定可能な系は、ハイスループット及び迅速なスタートアップ、並びに高度な柔軟性及びカスタマイズ性を提供する。このような系の製造者は、種々のハイスループット系についての詳細なプロトコルを提供している。即ち、例えば、Zymark Corp.は、遺伝子転写、リガンド結合等の調節を検出するためのスクリーニング系を記載する技術告示を提供している。本発明の方法の中で使用され得る例示的なスクリーニングアッセイは、米国特許出願公開公報第09/0075378号並びに国際特許出願公開公報第WO 08/103475号及び第WO 08/103474号に記載されている。
【0143】
一旦目的の細胞集団が得られると、目的の核酸配列がレスキューされ得、対応する変異が配列決定及び同定され得る。例えば、全mRNA又は染色体外プラスミドDNAは、SV40 T抗原の共発現によって増幅され(J. Virol., 62(10): 3738-3746 (1988))、及び/又は細胞から抽出され、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)若しくは逆転写酵素(RT)-PCRのテンプレートとして使用されて、改変された核酸配列を適切なプライマーを用いてクローニングすることができる。変異体核酸配列は、ベクター中にサブクローニングされ得、E. coli中で発現され得る。タグ(例えば、His-6タグ)が、クロマトグラフィーを使用したタンパク質精製を促進するために、カルボキシ末端に付加され得る。結果として得られるデータは、1以上の所望の特性における変化と特定のアミノ酸置換とを繋げるデータベースに投入するために使用され得る。このようなデータベースは、その後、都合の良い変異を再結合するため、又は新たに同定された目的の領域(例えば、タンパク質の機能的な部分をコードする核酸配列)内に標的化された多様性を有する次世代のポリヌクレオチドライブラリーを設計するために、使用され得る。
【0144】
目的の遺伝子産物が抗体又はそのフラグメントである場合、DNAは、可変重鎖(VH)リーダー領域及び/又は可変軽鎖(VL)リーダー領域特異的なセンスプライマー並びにアイソタイプ特異的なアンチセンスプライマーを使用するPCRにより抽出され得る。或いは、選択され、ソートされた細胞集団から全RNAが単離され、可変重鎖(VH)リーダー領域及び/又は可変軽鎖(VL)リーダー領域特異的なセンスプライマー並びにアイソタイプ特異的なアンチセンスプライマーを使用するRT-PCRに供され得る。クローンは標準的な方法論を用いて配列決定され得、結果として得られる配列は、ヌクレオチドの挿入及び欠失の頻度、受容体の改変、並びにV遺伝子選択について分析され得る。
【0145】
次いで、細胞は多数のサイクルにわたって再増殖され、SHM再誘導され、再スクリーニングされて、所望の機能における反復的な改善をもたらし得る。任意の時点で、目的の遺伝子産物をコードする核酸配列は、進行性の変異誘発をモニタリングするために、レスキュー及び/又は配列決定され得る。
【0146】
本発明はさらに、生物の中で機能的なAID変異体タンパク質を発現すること、又はその発現を引き起こすことを含む、所望の表現型を有するよう生物を変異する方法を提供し、該機能的な変異体AIDタンパク質の発現は、生物の染色体DNAの中で変異を引き起こす。生物は、望ましくは原核生物(例えば、細菌)又は真核生物である。真核生物は無脊椎動物又は脊椎動物であり得るが、好ましくは脊椎動物である。より好ましくは、生物は哺乳動物である。最も好ましくは、生物はマウスである。
【0147】
機能的な変異体AIDタンパク質をコードする核酸配列を含む本明細書に記載のベクターは、上記の生物を変異する方法において使用され得る。実際、そのようなベクターは、当該技術分野で公知の通例の方法(例えば、Methods Mol. Med., 99: 255-67 (2004)を参照のこと)を用いて機能的な変異体AIDタンパク質がトランスジェニックされたマウスを作製するために使用され得る。一つの実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質をコードしている核酸を含むベクターは、内在性のAID遺伝子が破壊されていないトランスジェニックマウスを作製するために使用され得る。別の実施態様において、機能的な変異体AIDタンパク質をコードしている核酸を含むベクターは、機能的なAID変異体をコードしている核酸配列が内在性の(即ち、染色体の)AID遺伝子座に挿入されているトランスジェニックマウスを作製するために使用されて「ノックイン」マウスを作製することができ、それにより内在性AIDの発現が抑制される。特定の実施態様において、トランスジェニックマウスは、例えば、組織特異的プロモーター又は他の誘導性プロモーター(例えば、ドキシサイクリン又はテトラサイクリン(例えば、Curr. Opin. Biotechnol., 13(5): 448-52 (2002)を参照のこと)により発現が制御され得る機能的な変異体AIDタンパク質を含む。別の実施態様において、生物は、上記の方法に従ってSHMモチーフの数を増加させるようSHMのためにコドン最適化された少なくとも一つの核酸配列を含む。
【0148】
トランスジェニックマウスを作製するために如何なる方法が使用されたとしても、機能的な変異体AIDタンパク質の発現は、マウスの染色体DNA内で変異を引き起こす。本発明の方法に従って一旦生物の中で変異誘発が生じたら、生物内の細胞(単数又は複数)は、好ましくは、当該技術分野において公知であり、本明細書に記載されている方法を用いて、所望の表現型について選択及び/又はスクリーニングされる。
【0149】
本明細書に記載の本発明の方法はまた、目的の抗原又はそのエピトープに対する抗体を産生するトランスジェニック動物を作製するためにも使用され得る。一つの態様において、本発明の方法は、好ましくは、モノクローナル抗体を産生するトランスジェニックマウスを作製するために使用され得る。モノクローナル抗体を作製する方法は当該技術分野において公知であり、例えば、Kohler and Milstein, Eur. J. Immunol., 5: 511-519 (1976)、Harlow and Lane (eds.), Antibodies: A Laboratory Manual, CSH Press (1988)、及びC.A. Janeway et al. (eds.), Immunobiology, 5th Ed., Garland Publishing, New York, NY (2001)等に記載され、参照される。
【0150】
望ましい抗体は、本明細書に記載されているような任意の天然又は合成由来の抗体、又は任意のその抗原結合フラグメントであり得る。また、抗体は、非ヒト抗体、ヒト化抗体、又は完全ヒト抗体であり得る。好ましくは、抗体は、ヒト化抗体である。「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒトの免疫グロブリンに由来する最少配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、ヒトの免疫グロブリン(レシピエント抗体)であって、該レシピエントの超可変領域の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有する非ヒト種(マウス、ラット、ウサギ若しくは非ヒト霊長類等)由来(ドナー抗体)の超可変領域の残基で置換されたものである。場合によっては、ヒトの免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)の残基は、対応する非ヒトの残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体には見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体の性能をさらに洗練させるために行われる。ヒト化抗体は、超可変領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものと一致し、且つFRの全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものと一致している、少なくとも1つ(場合によっては2つ)の可変ドメインのうちの実質的に全てを含み得る。ヒト化抗体は、任意で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部(典型的に、ヒト免疫グロブリンのもの)も含む。更なる詳細については、Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986)、Reichmann et al., Nature, 332: 323-329 (1988)、及びPresta, Curr. Op. Struct. Biol., 2: 593-596 (1992)を参照のこと。別の実施態様において、モノクローナル抗体は、抗原に結合する抗体の能力を実質的に阻害することなく、マウスCDRをヒト抗体フレームワークの中に組み込むことによりヒト化され得る。ヒト化抗体の調製方法は、一般に当該技術分野で周知であり、本明細書に記載の方法により作製された抗体に容易に適用され得る。
【0151】
本発明の好ましい実施態様において、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体は、内在性のマウス抗体遺伝子の発現が抑制され、ヒト抗体遺伝子の発現と効率的に置き換えられているトランスジェニックのマウス株と交配された、機能的なAID変異体タンパク質を含むトランスジェニックマウスを用いて産生される。内在性の抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子で効率的に置き換えられるトランスジェニックマウスの例としては、以下に限定されないが、HuMAb-Mouse(登録商標)、Kirin TC MouseTM、及びKM-Mouse(登録商標)が挙げられる(例えば、Lonberg N. Nat. Biotechnol., 23(9): 1117-25 (2005)及びLonberg N. Handb. Exp. Pharmacol., 181: 69-97 (2008)を参照のこと)。
【実施例】
【0152】
以下の実施例はさらに本発明を説明するが、何らその範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0153】
実施例1
本実施例は、パピラ形成アッセイを用いたDNAの活性ミューテーターをスクリーニングする方法を実証する。
【0154】
パピラ形成アッセイは、DNA修復の何らかの点において欠損しているE. coli変異体についてスクリーニングするために使用されている(Nghiem et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85: 2709-17 (1988)及びRuiz et al., J. Bacteriol., 175: 4985-89 (1993))。
【0155】
パピラ形成アッセイのために、プラスミドpTrc9944内のAID/APOBEC cDNAを、lacZ遺伝子がコドン461でGAG->GGGミスセンス変異を有するF'lacI-Z- proAB+エピソームを保持するEscherichia coli K12 CC102株araΔ(lacproB)XIII(Cupples et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 5345-49 (1989))にトランスフォームし、アンピシリン(100μg/ml)及びイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG、1 mM)が添加されたマッコンキー−ラクトース寒天(BD Biosciences)上に播種した。プレートは、37℃で4日間インキュベートした。パピラは3日後に目視可能となった。
【0156】
CC102 [pTrc99-AID/APOBEC]トランスフォーマントのLac+への復帰頻度は、アンピシリン(100μg/ml)及びIPTG(1 mM)が添加されたLB培地内で飽和状態になるまで一晩成育させた培養物をM9+0.2%ラクトース寒天上に播種することにより求めた。変異頻度は、播種された107の生存細胞当りの選択で生き残ったコロニー形成細胞数の中央値を求めることにより測定した。各中央値は、12個の独立した培養物から決定した。変異の同定は、PCR増幅したlacZの関連部分(5'-AGAATTCCTGAAGTTCAGATGT(配列番号:79)及び5'-GGAATTCGAAACCGCCAAGAC(配列番号:80))を配列決定することにより調べた。
【0157】
lacZ内にミスセンス変異を有するE. Coli細胞は、マッコンキー−ラクトースプレート上に白色のコロニーを生じる:そのような白色のコロニーの中に、自然発生したLac+復帰変異体を反映する少数の赤色の微小コロニーが多くの場合識別され得る(パピラ、典型的にコロニー当り0〜2)。自然変異の頻度が上昇されていることを示す細菌ミューテータークローンは、パピラの数の増加に基づいて同定することができる。
【0158】
E. Coli CC102株は、lacZのコドン461においてミスセンス変異を有しており、A:TからG:Cへの転換変異のためにグルタミン酸がグリシンに置換されている(Cupples et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 5345-49 (1989))。CC102でのAIDの発現がコドン461でのシトシンの脱アミノ化の率を増加させるとすれば、これは、Lac+復帰変異体の頻度を上昇させることが予期され得る。CC102のAID発現トランスフォーマントは、マッコンキー−ラクトースプレート上でのパピラ形成の頻度を上昇させた(図1a、b)。6日間のインキュベーション後のアッセイでのコロニー当りのパピラの数は、コロニー当り0〜2から8〜10に増加しており、それは、最小ラクトースプレート上での判定での一晩培養物におけるLac+復帰変異体の頻度における3倍より大きな増加という相互関係を示していた。6個のこのようなLac+復帰変異体の配列解析により、それらは、実際にコドン461での復帰を介して生じたことが確認された。AID関連デアミナーゼAPOBEC1(A1)及びAPOBEC3G(A3G)もまた、CC102細胞内で発現された場合、パピラ形成の増加を引き起こした(図1b)。
【0159】
本アッセイはまた、活性ミューテーターを全脾臓cDNAライブラリーから単離できたかどうかを調べるためにも使用した。ヒト脾臓cDNAライブラリーをCC102細胞内に導入し、増進されたパピラ形成について50000コロニーをスクリーニングした。36個の可能性のある候補が同定され、それらをマッコンキーラクトースプレート上にストリークすることにより再テストを行った。二つのコロニーのみが、パピラ形成の増加を与えるとして確認された。配列解析により、それらはAPOBEC3G由来の異なるcDNAを有することが判明した。図1cは、野生型の全長APOBEC3G mRNAと、ヒト脾臓cDNAライブラリースクリーニングで得られた二つのAPOBEC3G cDNAを表し、そのヌクレオチド残基は、オープンリーディングフレームの開始(+1)に関連して番号付けられている。
【0160】
本実施例は、E. Coliパピラ形成アッセイが、活性ミューテーターのためのハイスループットのスクリーニングとして使用可能であることを実証する。
【0161】
実施例2
本実施例は、AID変異体を同定するためのアッセイを実証する。
【0162】
第1及び第2世代のヒトAID変異体ライブラリーを、1 ngの鋳型DNAに対し、Taqバッファー中で1μMのフォワード及びリバースプライマー(5'-ATGGAATTCATGGACAGCCTCTTG(配列番号:81);5'-CTGAAGCTTTCAAAGTCCCAAAGTA(配列番号:82))、250μM-dNTP、10 mM-MgCl2と共に、Taqポリメラーゼ(2.5 U;Bioline)を用い、94℃(2分間)、続いて94℃(30秒間)、65℃(30秒間)及び72℃(1分間)の30サイクルでエラープローンPCRにより作製した。第3世代のヒトAID変異体ライブラリーは、製造者の指示書に従い、0.1 ng DNA鋳型についてGenemorph II Random Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いて作製した。
【0163】
パピラ形成アッセイは、プレートを37℃で3〜6日間インキュベートすること(3日後にパピラが目視可能となり、それらの数は7日目まで増加する)を除き、実施例1に記載の通り行った。アラビノース誘導発現の分析のために、AIDをプラスミドpBAD30(Guzman et al., J. Bacteriol, 177: 4121-30 (1995))内で発現させた。
【0164】
CC102 [pTrc99-AID]トランスフォーマントのLac+への復帰頻度は実施例1に記載の通り調べたが、リファンピシン耐性(Rifr)への変異は、E. Coli KL16株(Hfr (PO-45) relA1 spoT1 thi-1)へのトランスフォーメーション並びにリファンピシン(50μg/ml)及びアラビノース(0%〜0.5%)存在下でのコロニー成長に従い評価した。変異頻度は実施例1に記載の通り測定し、変異の同定は、実施例1に記載の通りのPCR増幅したlacZの関連部分、又はPCR増幅したrpoBの関連部分(5'-TTGGCGAAATGGCGGAAAACC-3'(配列番号:83)及び5'-CACCGACGGATACCACCTGCTG-3'(配列番号:84))を配列決定することにより調べた。
【0165】
図1d及び図2に表された結果は、このアッセイがAID上方変異体を同定できることを示している。4回の独立したPCR変異誘発実験からの計60000コロニーから、マッコンキー−ラクトースプレート上でのパピラ形成の増加を示す13クローンが得られた。その後、これらの変異体のうち9個については、リファンピシン耐性コロニーを形成する頻度についてE. Coli KL16株に再トランスフェクトしてテストを行い、9個全てについて、rpoB遺伝子座での変異の頻度が上昇することが示された。
【0166】
その後、第1世代の上方変異体のうちの2つ、即ち、Mut1及びMut7由来のAID cDNA自体をPCR変異誘発に供し、パピラ形成の増進を示す第2世代の変異体が得られた(図2)。これらの第2世代の変異体により示される高いパピラ形成のための、パピラ形成における如何なる更なる増加を目視で識別することは困難であった。第3ラウンドの変異/選択においてミューテーター活性の更なる増大についてスクリーニングするため、AID Mut1.1及びMut7.3をコードするcDNAをアラビノース誘導発現ベクターにクローニングし、それにより、培地中のアラビノース濃度を変化させることによりCC102トランスフォーマントにおいて得られるパピラの数が制御され得るようにした(図1e)。第3世代のAID上方変異体は、低(0.02%)アラビノース下でパピラ形成についてスクリーニングすることにより得られ、そのうちのいくつかは、リファンピシン耐性への変異の頻度により判定した場合、野生型AIDよりも400倍近く高い変異頻度を与えた(図2)。
【0167】
図2は、パピラ形成スクリーニングにより選択されたAID上方変異体の系譜を表している。上方変異体が変異誘発の3連続したラウンドにおいて得られ、個々のPCR変異誘発実験より得られた変異体を、同胞のファミリーとしてグループ化している。変異誘発の各ラウンドにおいて導入された更なるアミノ酸置換を、ベクターに対するRifrへの変異の平均頻度を与える、表示されている置換の下の数字と共に示す。*は、表示されているコドンにおける成熟前ストップコドンの導入により生じたC末端の切断を示す。個々の変異体は、それらの系譜の起源に従って番号付けされている:即ち、例えば、Mut7(K10E/E156G)はMut7.1(K10E/E156G/F115Y)の親である。
【0168】
いくつかの第3世代の変異体は、誘導条件下で成育させた場合のより小さなコロニーサイズで判定されるように、E. Coliにおいて毒性を示すようであった。これには、飽和状態まで成育された細胞培養物における生存細胞数の減少が付随していた。この結果は、図1fに示されており、図1fは、IPTG誘導条件下のLB/Amp中で飽和状態まで成育された異なるAID上方変異体を発現するCC102トランスフォーマントにおける細菌力価を、誘導非存在下で成育された培養物より得られた力価に対して表している。この毒性により、高度にパピラ形成しているいくつかの変異体は、一晩の培養の間ダウンレギュレートされた可能性のあるAID発現と共に、Rifrへの異常に低い変異頻度(例えば、Mut7.3.4;図2)を与えたかもしれない。
【0169】
本実施例は、E. Coliパピラ形成アッセイが、野生型AIDタンパク質と比較して、活性における少なくとも10倍の改善を示す機能的なAID変異体タンパク質を同定できることを実証する。
【0170】
実施例3
本実施例は、細菌パピラ形成アッセイにより、増大した活性を有するAID変異体のためのホットスポットを同定できることを実証する。
【0171】
図3aは、活性増大を付与する特定の変異を含むヒトAIDの一次配列(配列番号:2)とフグAID配列における上方変異とを比較している。アステリスクの付いた残基での変異は、rpoBでの変異頻度において>2倍の差を示す、少なくとも一対のAID配列の間の唯一の相違を構成しているため、ミューテーター活性の増大を付与することが推測される。二重下線が引かれている残基は、1以上の他の置換が存在するが、複数の独立した上方変異体において置換が同定された部位を示す。アステリスクの付いた残基又は二重下線が引かれた残基の上又は下のボックスは、置換変異が同定されたもの、及び計9つの独立したライブラリーにおいて検出された各置換の頻度を示す。フグ上方変異体において同定された唯一の変異であるか、或いはその置換が複数のフグ上方変異体で同定されたか(他のものと共にであったとしても)のいずれかの事実による判断で、フグAIDにおいて対応する位置もまた、選択された上方変異の部位であると思われる残基は、太い一重下線で示されている。亜鉛配位モチーフ(HVE及びPCYDC(配列番号:86))、及びポリヌクレオチドの接触が示唆される領域(FCEDRKA(配列番号:87)(Cupples et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 5345-49 (1989);Conticello et al., Nat. Struct. Mol. Biol., 14: 7-9 (2007);及びChen et al., Nature, 452: 116-119 (2008))は、ボックスによりハイライトされている。
【0172】
3個のAID上方変異体(Mut5, Mut1.3及びMut1.5)において同定された成熟前のストップコドンの変異を除き、種々のAID上方変異体の配列解析により、特定のアミノ酸置換が著しく優先的であることが判明した。例えば、K34E、T82I及びE156Gの置換(それぞれは、AID活性を増大させるのにそれ自体で十分である)が、独立の実験において選択された。これらの変異は、PCRにより作成されたライブラリーからの48個のランダム(即ち、選択されなかった)クローン(変異誘発手順それ自体の主要なホットスポットを何ら示すことなく広範な変異が観察された)の配列の中には見られなかった。従って、少数のアミノ酸置換が繰り返し同定されたことは、パピラ形成を増加する、AIDにおける限られた数の単一のアミノ酸置換が存在することを示唆している。
【0173】
場合によっては(特に第3世代において)、単一のラウンドにおいて導入される変異が多数であることにより、パピラ形成の増加に関与する変異の明白な同定が妨げられるが、多くの場合、関連する上方変異は、異なったパピラ形成を伴う一対のAID配列の間での唯一の相違を構成するため、又は(若干明確性が少なくなるが)複数のPCRにおいて独立して得られたため、明らかに同定することができる。このような上方変異の位置は図3aに示されており、触媒部位の可能性があるところの近位にある亜鉛配位モチーフの周囲に位置するもの(V57A;T82I)もあれば、ポリヌクレオチド結合に関与することが以前に示唆されていたAPOBEC3の部分と同等の領域(F115Y;K120R)(Conticello et al., Nat. Struct. Mol. Biol., 14: 7-9 (2007);Chen et al., Nature, 452: 116-119 (2008);及びHolden et al., Nature, 456: 121-124 (2008))に位置するものもあるが、いくつかは機能が不明な領域に密集していることが見られる。
【0174】
本実施例は、増大された活性を有するAID変異体の同定方法を実証する。
【0175】
実施例4
本実施例は、細菌パピラ形成スクリーニングにおいて同定された上方変異がAIDの特異的活性を増大することを実証する。
【0176】
GST-AID融合タンパク質を、E. coli Rosetta株(DE3)pLysSのpOPTG-AIDトランスフォーマントから精製した(pOPTGベクターはO. Perisic, Cambridge, UKより供与)。細胞を、培養物を1 mM IPTGにより18℃で16時間誘導したときの吸光度が600 nmで0.8になるまで、100μg/mlアンピシリン及び100 nM ZnCl2を含む2XTY中で37℃で成育し、その後、ペレット状の細胞を、溶解バッファー(20 mM-Tris pH 7.4、100 mM-NaCl、0.1 % Triton X-100、5 mM-DTT、4μg/ml RNase A及びcomplete EDTA-free protease inhibitor cocktail(Roche))中、氷上で30分間インキュベートし、続いて超音波処理して溶解させた。細胞溶解物を遠心分離(95,000 g;1時間)により清澄化し、これらの溶解物から、GST-AIDを、グルタチオン−セファロース(Amersham Pharmacia)上に4℃で5時間吸着させ、溶解バッファー(50 mM還元グルタチオンが添加されており、Triton X100を含まない)での広範な洗浄後に溶出することにより精製した。溶出した試料は、4℃で最長1週間保存した。
【0177】
GST-AID融合タンパク質の存在量はウェスタンブロットによりモニタリングした(図3b)。多数の上方変異体の超音波抽出物の初期のスクリーニングからは、ウェスタンブロット解析による判定で、可溶性タンパク質の分画収量において有意な増大を示すものは何も見られなかった。
【0178】
半精製したGST-AID(100〜400 ng)のデアミナーゼ活性は、0.5 pmolオリゴデオキシリボヌクレオチド(フルオレセイン-5'-ATATGAATAGAATAGAGGGGTGAGCTGGGGTGAGCTGGGGTGAG-3'-ビオチン(配列番号:85))を用いて、10μlの反応バッファー(8 mM-Tris, pH 8.0、8 mM-KCl、10 mM-NaCl、2.5 mM EDTA、0.2 mM-ジチオスレイトール、5μg RNase A及び0.4 units ウラシル−DNAグリコシラーゼ(NEB))中、37℃でアッセイした。反応は、等量のローディングダイ(ホルムアミド、0.5 mM EDTA)を添加し、98℃で3分間加熱することにより、示された時点において終了させた。結果として生じた切断されたオリゴヌクレオチドは、10% PAGE−尿素ゲルの電気泳動に供し、Typhoon Phosphoimager(Molecular Dynamics)で蛍光を検出した。脱アミノ化の程度は、スキャンされたイメージから求め、切断された産物のバンドのピクセル量(バックグラウンドの除去後)を、産物及び残余基質のバンドを合わせたピクセル量のパーセンテージとして表した。
【0179】
GST融合タンパク質をヒト上方変異体Mut1.1及びMut7.3.6から作製した場合、オリゴヌクレオチド基質について実施したin vitro脱アミノ化アッセイによる判定で、特異的活性において明らかに増大することが示された(図3b、c)。初速度の解析から、これらの上方変異体の特異的脱アミノ化活性は野生型に対して約5倍増大していた。
【0180】
rpoB内の11個のC:G対のいずれか1つでの転換変異はRifrを生じさせることができる。Rifrコロニーの中でのそのような変異の分布は、図3dにおいて、AID上方変異体Mut8、1.1、1.2、7.3.5及び7.3.6について示されている。いくつかのヒトAID変異体を用いて得られたrpoB変異の解析から、変異スペクトルにおいて何ら大きな差は見られなかったため、特異的活性の増大には、標的特異性における何らの大きな変化は伴わなかったと思われる(図3d)。
【0181】
本実施例は、細菌パピラ形成スクリーニングにおいて同定された変異がAIDの特異的活性を増大させることを実証する。
【0182】
実施例5
本実施例は、AID活性の増大をもたらすフグAIDにおける変異の生成を説明する。
【0183】
フグAIDの変異体を含むライブラリーは、製造者の指示書に従い、0.1 ng DNA鋳型についてGenemorph II Random Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いて作製した。フグ変異体のライブラリーの細菌パピラ形成スクリーニングは、実施例1に記載の通り実施した。18℃又は37℃のいずれかでの、ベクターのみのトランスフォーマントに対するRifrの変異の頻度が、野生型又は表示された変異のフグAIDをコードするプラスミドでトランスフォームされたE. coli K16について図4bに示されている。190でのナンセンス変異が復帰されていることにより、野生型のC末端を生じるMut4.3及び4.10の誘導体を構築した。
【0184】
フグ(約26℃で生息する)由来のAIDは、37℃でアッセイした場合、わずかしか細菌ミューテーター活性を示さないが、18℃ではミューテーター活性を検出することができる(Conticello et al., Mol. Biol. Evol., 22: 367-377 (2005))。37℃で強力なパピラ形成を与えるフグAIDの変異体を、細菌パピラ形成アッセイにおいて同定した。図4aに示されるように、単離された第1世代の変異体は全て、C末端切断変異(「*」により示され、「*a」及び「*b」は、成熟前のストップコドンを生じるコドン190での異なる単一ヌクレオチド置換を示す)を有しており、得られた6個の変異体は、5個の異なる切断変異を有していた。フレーム外と読み取られるC末端領域を生じる変異も同定され、これらは、コドン200での異なる単一ヌクレオチドの挿入変異を示すべく、図4aにおいて「Ins200a」及び「Ins200b」と表されている。
【0185】
しかしながら、その後、種々のアミノ酸置換が、第2世代変異体においてパピラ形成の増進を引き起こすことができ(図4a)、それらのうちのいくつかは、ヒトAIDで同定された上方変異に類似する位置で生じていた(図3a及び4a)。即ち、フグAIDMut1.3の活性増大に関連する変異(C88L)は、ヒトAIDにおけるT82I変異と同等な位置で発生する。同様に、フグAIDにおける残基F121、L124及びL128(それぞれは、2つ又は3つのフグ上方変異体における変異の標的である)は全て、ヒトAID内の115〜121(そこでもまた上方変異体が得られる)に対応するフグAIDの範囲に位置している。
【0186】
C末端切断はヒトAID上方変異体集団の中で見られ、このような切断はE. coliにおいてより高いミューテーター活性を与えることが以前に示されていたが(Barreto et al., Mol. Cell, 12: 501-508 (2003);Ta et al, Nat. Immunol., 4: 843-848 (2003))、37℃で選択されたフグAIDの第1世代の変異体は全てC末端での切断を有していた。この所見についての一つのもっともらしい説明としては、示されたC末端変異は熱安定性を増大させること、及び、第2世代のフグ上方変異体においてパピラ形成の増加を生じるアミノ酸置換は、C末端切断変異が存在しない場合は、37℃では識別できなかったかもしれないことが挙げられる。しかし、これは実際に可能性の高い説明である。C88L及びL128Pの置換はいずれも、C末端切断の存在下又は不存在下で、18℃でのアッセイでRifrへの変異頻度の増大を付与した。しかし、37℃でアッセイした場合は、これらのアミノ酸置換は、C末端切断の不存在下での変異頻度には何ら識別可能な増大は付与しなかった(図4b)。
【0187】
本実施例は、その活性を増大するフグAIDにおける変異は、ヒトAIDで同定された特定の変異に類似することを実証する。
【0188】
実施例6
本実施例は、本発明の機能的なAID変異体タンパク質を用いて、細胞内での抗体多様化を増進させる方法を実証する。
【0189】
IgVの体細胞変異を、pExpressPuro2に基づくAIDコードベクターが安定的にトランスフェクトされたAID-/-φV-/-sIgM+ DT40細胞(Teng et al., Immunity, 28: 621-629 (2008))における表面IgM喪失をフローサイトメトリーでモニタリングすることによりアッセイした。各コンストラクトについて、フローサイトメトリー前の3週間の選択下(0.25μg/mlピューロマイシン)で増幅された12〜24の独立のトランスフェクタントにおいて、sIgM-細胞のパーセンテージをモニタリングした。
【0190】
IgVλ領域内の変異は、100,000個の非選別又は(GFP+;sIgM-)で選別された細胞の同等物よりPCR増幅されたゲノムDNAを配列決定することにより特徴付けた(Sale et al., Nature, 412: 921-926 (2001))。
【0191】
クラススイッチングをアッセイするため、AID-/-マウスより精製され、以前に記載の通り、AIDをコードするレトロウイルス(Di Noia, J. Exp. Med., 204: 3209-3219 (2007))での24時間の感染後にLPS+IL4存在下で(48時間)培養されたB細胞において、フローサイトメトリーにより表面IgG1発現を解析した。形質導入されたB細胞内でのAID過剰発現の程度の減少を促進するため、変異したコザック配列を有するレトロウイルスベクターを記載の通り使用した(McBride et al., J. Exp. Med., 205: 2199-2206 (2008))。50μlの還元SDSサンプルバッファー中で細胞(106)を加熱することにより調製した抽出物におけるAID存在量は、SDS/PAGE後に、ウサギ抗AID抗血清(Abcam)を用いたウェスタンブロット解析によりモニタリングした;GFPは、HRPコンジュゲートヤギ抗GFP抗血清(Abcam)を用いて検出した。
【0192】
変異体3(T82I)、8(K34E、K160E)及び7.3(K10E、E156G、T82I)を、IgVの体細胞変異がsIgM喪失バリアントの生成頻度から推測できる、AID欠損ニワトリB細胞株DT40内で発現させた(Arakawa et al., PLoS Biol., 2: E179 (2004))。Mut3及びMut7.3は、このsIgM喪失アッセイによる判断で、いずれも体細胞変異の有意な増進を与えるようであった(図5a)。さらに、配列解析により、1ヵ月のクローン性増殖の後は、これらの変異体AIDを発現する細胞は、野生型酵素を発現するコントロール細胞よりも高い突然変異負荷をIgGλ遺伝子において実際に有していることが判明した(図5b)。より高い割合の配列が変異を有していたのみならず、変異を有していたものは、より高い突然変異負荷も有していた。この効果は、変異体AIDが、これらのトランスフェクタントにおいて、その野生型カウンターパートよりも少ない存在量で発現するという事実を考慮すると、特に特徴的である。対照的に、変異体8には体細胞変異の促進を与えず、K34E及び/又はK160Eの置換は、B細胞におけるAIDの機能の面を低減する可能性があることが示された。興味深いことに、Mut8ポリペプチドは、DT40トランスフェクタントにおいて、Mut3又は7.3ポリペプチドよりもはるかに多い存在量で見出された。これは、DT40内の抗体多様化/ゲノム変異において低下した活性を示すAID変異体は、細胞内局在化で何ら明確な変化をすることなく、より多い存在量で発現する傾向があるという他の研究(例えば、Conticello et al., Mol. Cell, 31: 474-484 (2008))における観察と一致している。発現レベルにおけるこれらの相違についての一つの可能性のある説明としては、細胞トランスフェクタントにおいては、染色体変異に活性を有するAIDタンパク質を高レベルに発現する細胞に反する選択が存在するということである。
【0193】
変異体酵素のAID欠損マウスB細胞へのレトロウイルストランスダクションに基づくアッセイを用いて、クラススイッチ組換えにおける変異体AIDの活性を分析した。スイッチングアッセイを飽和してしまう可能性のあるAIDの過剰発現の程度を制限するために、従来のpMX-Igウイルス、並びに形質導入されたAIDがコザック配列の変異を通じてより低レベルで発現されるバリアントの両方を用いてアッセイを実施した(McBride et al., J. Exp. Med., 2005: 2585-2594 (2008))。図5c(IgG1へのスイッチングの代表的なフローサイトメトリーのプロットを表し、「mK」は、変異されたコザック配列を有するベクターを用いてトランスダクションが行われたものを示す)に示されているように、Mut7.3は、より低レベルでの発現にもかかわらず、クラススイッチ組換えの促進において野生型カウンターパートよりも効率的であった。
【0194】
本実施例は、本発明の方法に従って抗体多様化を促進するための機能的な変異体AIDタンパク質の使用を実証する。
【0195】
実施例7
本実施例は、AID変異体が染色体の転座を増加することを実証する。
【0196】
PCRベースのアッセイ(Janz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 90: 7361-7365 (1993))を用いて、B細胞内でのc-myc/IgH転座を検出した。AID欠損マウス由来のB細胞は、AID発現レトロウイルスを形質導入し、実施例6のクラススイッチアッセイについて記載したとおり、LPS(20μg/ml)及びIL4(50 ng/ml)を含有する培地で、6ウェルプレートに8x105cell/mlで播種して培養した。トランスダクションの36時間後に選別されたGFP+細胞からDirectPCR(Viatech)を用いて調製した2x105細胞のゲノムDNAは、Expand Long Template PCR system (Roche)を用いたネステッドPCRの2ラウンド、その後に続くサザンブロッティングに供して、der12 c-myc/Igμ及びder15 c-myc/Igμの両方の転座、記載の通り(Ramiro et al., Nature, 440: 105-109 (2006))の特定の産物を増幅させ、検出した。図6(上)は、c-myc及びIgH遺伝子座間の相互転座のスキームを表し、PCR増幅のために用いられたプライマー(矢印)、及びサザンブロットハイブリダイゼーションのために用いられたプローブ(P)を示す。
【0197】
AID欠損マウス由来のB細胞は、AID発現のためにレトロウイルスで形質導入し、in vitroで1〜2日間培養した。AID Mut7.3は、c-myc/IgH転座を含む培養物を野生型酵素よりも有意に高い割合で生じさせた(図6(下))。
【0198】
本実施例は、機能的なAID変異体タンパク質を用いた染色体転座の増加方法を実証する。
【0199】
実施例8
本実施例は、活性増大を伴うAID変異体をコードする核酸配列が、野生型AIDよりもAPOBEC3デアミナーゼの核酸配列に近似していることを実証する。
【0200】
AIDの上方変異の主要部位周辺のアミノ酸の転換、及び哺乳動物APOBEC3(ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ペッカリー、ウマ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ヒト及びマカク:配列アクセッション番号は図8に提供される)のZ1、Z2及びZ3ドメインにおける相同領域を示す、ウェブLOGOアラインメント(Crooks et al., Genome Research, 14: 1188-1190 (2004))を実施した(図7)。任意の他の配列に対し90%を上回るアミノ酸同一性を有する任意の配列を、LOGOプロファイルの生成から除外した。AID上方変異は、番号付けされた残基の上のボックス内に示されている。アラインメントの下の矢印は、APOBEC3における相同性残基をハイライトしている。
【0201】
図7は、APOBEC3ファミリータンパク質が高等動物において急速に進化しており、複数のコピーで存在していることを示している:それらの亜鉛配位ドメインは、配列相同性により3つのサブグループ(Z1、Z2及びZ3)の1つに分類することができる(Conticello et al., Mol. Biol. Evol., 22: 367-377 (2005))。AID配列とAPOBEC3配列とのアラインメントから、ヒトAIDにおいて頻繁に選択される上方変異の大部分は、AIDの配列をそのAPOBEC3類縁体の配列に近似させる働きを持つことが明らかとなった(図7)。実際、F115でのAID上方変異は、APOBEC3 Z2ドメイン(Y)内の対応する位置でアミノ酸を好ましく置換するが、K34、T82及びE156での上方変異は全て、APOBEC3 Z1ドメイン内の対応する位置で好ましいアミノ酸に置換する。興味深いことに、APOBEC3ドメインの最も触媒作用的に活性があることが明らかになったのは、これらのZ1ドメインである(LaRue et al., J. Virol., 83: 494-497 (2009))。従って、AIDの脱アミノ化活性は人工的に特定の上方変異により増大されるが、このような上方変異は、APOBEC3の進化の間ではなく、AIDの進化の間に対抗選択されたようである。
【0202】
本実施例は、活性増大を伴うAID変異体をコードする核酸配列が、野生型AIDよりもAPOBEC3デアミナーゼの核酸配列に近似していることを実証する。
【0203】
実施例9
本実施例は、ヒト(配列番号:2)及びフグ(配列番号:13)のAIDの上方変異を比較する。
【0204】
ヒト及びフグのAIDの一次配列は、ClustalW2(例えば、Larkin et al., Bioinformatics, 23: 2947-2948 (2007))を用いてアラインされている(図9)。ヒトAIDの上方変異は、実施例3(図3a)に記載の通りアステリスク又は二重下線により示されている。フグAIDの上方変異はキャレット(carrot)(「^」)により示されており、それらはフグ上方変異体における唯一の変異を構成するため、又はその残基が複数のフグ上方変異体において変異されていたために同定された。置換の特性は、図3aのように、ハイライトされた残基の上又は下のボックス内に示されている。亜鉛配位モチーフ(HVE、PCYDC)、及び示唆されたポリヌクレオチドの接触領域(FCEDRKA)はボックスで表される。
【0205】
本実施例は、ヒト及びフグのAIDの上方変異を比較した。
【0206】
実施例10
本実施例は、野生型AIDタンパク質のアミノ酸配列をAIDホモログ由来の対応するアミノ酸配列で置換することを含む、機能的なAID変異体の作製方法を説明する。
【0207】
アミノ酸残基115〜123がAPOBEC3C(AID/3C)、APOBEC3F(AID/3F)及びAPOBEC3G(AID/3G)由来の同等の領域で置換されているヒトAID変異体を、細菌発現プラスミド中にクローニングした。これらの改変されたAID配列のミューテーター活性は、E. coliへのトランスフォーメーション後にリファンピシン耐性を示すコロニーを生じた頻度をモニタリングすることによりアッセイした。具体的には、pTrc99/AIDプラスミドでトランスフォームされたE. coli KL16株[Hfr (PO-45) relA1 spoT1 thi-1]を、アンピシリン(100μg ml-1)及びイソプロピルβ-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG;1 mM)が添加されたLB培地で飽和するまで一晩成育させ、アンピシリン(100μg ml-1)及びリファンピシン(50μg ml-1)を含有するLB低塩寒天上に播種した。変異頻度は、播種された107の生存細胞当りの選択で生き残ったコロニー形成細胞数の中央値を求めることにより測定した。各中央値は、12の独立した培養物から決定し。変異が同定されたものは、オリゴヌクレオチド5'-TTGGCGAAATGGCGGAAAACC(配列番号:88)及び5'-CACCGACGGATACCACCTGCTG-3'(配列番号:89)を用いたPCR増幅後のrpoBの関連部分(典型的に、25〜200個の個々のコロニー由来)を配列決定することにより調べた。AID/3C及びAID/3Fタンパク質は良好なミューテーター活性を保持したが、AID/3Gは、バックグランドを超えて区別することができない頻度でリファンピシン耐性コロニーを生じた。リファンピシン耐性はrpoB内での限られた数の変異の一つにより付与され、得られる変異の性質はデアミナーゼの標的特異性への洞察を与える(Harris et al., Mol. Cell., 10: 1247-1253 (2002))。野生型AIDは、5'-隣接プリン(G)残基を有するrpoBの位置1576(C1576)でC残基を脱アミノ化することを選択する。対照的に、残基115〜123がAPOBEC3C/F/G由来の対応する領域に置換されたAIDバリアントは、(APOBEC3自体のように)-1位置でピリミジンについて選択性を示した。従って、AID/3C及びAID/3Fは、rpoB変異のスペクトルにおける変化を示して5'-T(C1535、C1565及びC1592)を有する標的を好んだが、AID/3Gトランスフォーマントはほとんどが5'-Cを有するC1691を標的とするのみであった。
【0208】
本実施例のこの結果は、ヒトAIDのアミノ酸残基115〜123をAPOBEC3タンパク質由来の対応する配列に置換することが、AIDの特異的活性を変化させることを実証する。
【0209】
実施例11
本実施例は、野生型AIDタンパク質のアミノ酸配列をAIDホモログ由来の対応するアミノ酸配列に置換することを含む、機能的なAID変異体の作製方法を説明する。
【0210】
実施例10は、AID/3Gのミューテーター活性が、リファンピシン耐性E. coliで観察されたrpoB変異の分布における変化を生じさせるのに十分であることを示すが、AID/3G変異体のミューテーター活性は、バックグラウンドを上回るリファンピシン耐性への変異の合計頻度を生じないため、野生型AIDよりも著しく低い。AID/3G変異体のミューテーター活性を改善するため、これらのタンパク質に3個の更なるアミノ酸置換(即ち、AID1:K10E、T82I、E156G;AID2:K34E、E156G、R157T)が導入された2つのAID/3G上方変異体を作製した(AID1/3G及びAID2/3Gと呼称する)。これらのAID/3G上方変異体はいずれも、rpoB変異スペクトルによる決定で、5'-隣接C残基についての親のAID/3Gタンパク質の選択性を保持するようであった。
【0211】
AIDのC末端部分(その核外移行配列を含む)が削除されたAIDバリアント(AID*、AID*/3F、AID1*/3G等と呼称する)もまた作製した。C末端切断は、細菌変異アッセイにおいてAID変異の標的部位選択性に対する検出可能な効果は生じない。
【0212】
上記変異体AIDの生化学的な標的特異性をより詳細に分析するため、種々のAID酵素を組換えGST融合タンパク質としてE. coli 抽出物から部分的に精製し、M13 gapped duplexアッセイとの関連で一本鎖lacZ標的DNAを脱アミノ化するために使用した(Bebenek and Kunkel, Methods Enzymol., 262: 217-232 (1995);Pham et al., Nature, 424: 103-107 (2003))。このアッセイでは、組換えGST-AIDをgapped duplex M13lacZ DNAとインキュベートし、その後E. coliにトランスフォームする。
【0213】
各実験における30〜50の変異M13lacZクローンの解析から471〜685の変異のデータベースが得られ、その全てはC:G対での転換であった。AID1の場合、C変異の74%が、5'-プリンに隣接する部位であった。その一方、APOBEC3タンパク質由来の移入部分を有するAID変異体は、隣接ピリミジンを選択する方向に変化することを示し、それは、特にAID/3C及びAID/3Gのタンパク質の場合に顕著であった(それぞれ、85%及び77%のピリミジン)。隣接ヌクレオチドの選択性におけるこの変化には、lacZに沿った変異の分布の変化が付随していた。ほとんどのAIDバリアントについて、変異された配列は、解析した一本鎖基質に広がっている475ヌクレオチドにおいて平均10〜16個の転換変異を有していたことから、観察された変異は、lacZ不活性化の選択に基づいて大きく歪曲することなく、内在する変異プロセスの選択性を大いに反映していた。
【0214】
本実施例の結果は、ヒトAIDのアミノ酸残基115〜123のAPOBEC3タンパク質由来の対応する配列への置換がAIDの特異的活性を変化させることを裏付けている。
【0215】
実施例12
本実施例は、変異体AIDタンパク質が、B細胞にける変異スペクトルの変化を示すことを実証する。
【0216】
AIDの触媒特異性を変化させることが、B細胞内でのSHMの間に導入されるヌクレオチド置換の分布に変化をもたらすかどうかを確認するため、実施例10及び11に記載された変異体AIDを、AID欠損ψV欠損ニワトリB細胞株DT40に発現させた。B細胞株DT40では、変異は、ポリメラーゼη誘発性超変異による寄与はほとんどなく、C:G対でのヌクレオチド置換に大きく制限されており(Arakawa et al., PLoS Biol., 2: E179 (2004);Di Noia and Neuberger, Nature, 419: 43-48 (2002);Sale et al., Nature, 412: 921-926 (2001))、C:Gでの変異は、恐らく変異創出の第2フェーズの結果であるというよりもむしろ、主にAIDの直接的な効果に基づき得ることを意味している。IgVにおけるSHMの頻度は、sIgM喪失バリアントの生成頻度から推測され得る(Buerstedde et al., EMBO J., 9: 921-927 (1990);Sale et al., Nature, 412: 921-926 (2001))。本アッセイは、AID/3C及びAID/3Fの両方がSHMにおいて能力があることを実証する。実際、AID/3Cは、特に、B細胞抽出物においてAID/3Cポリペプチドの存在量がより少ないことを考慮すると、野生型酵素よりも強力でさえある。AID/3Cの存在量が少ないことは、複数の独立のトランスフェクタントにおいて明らかであった。この低発現の理由は、過度のDNAデアミナーゼ活性による細胞傷害性を反映し得る。
【0217】
AID/3C及びAID/3Fの変異体とは対照的に、AID1/3G変異体は、ごくわずかなsIgM喪失バリアントの頻度しか示さなかった。しかし、この頻度は、AIDのC末端部分を削除することにより著しく高められた。
【0218】
種々の改変されたAIDタンパク質を発現するB細胞DT40トランスフェクタントにおけるIgV遺伝子超変異スペクトルを特徴付けるため、8週間のクローン性増殖の後、各発現コンストラクトについての複数の独立のトランスフェクタント由来のIgVλセグメントをPCR増幅させ、配列決定した。その結果、AID活性部位の改変が、IgVλ変異スペクトルに実質的な変化をもたらすことが明らかとなった。即ち、AID/3C及びAID1*/3Gは、5'-隣接ピリミジン残基を伴うC残基を主に標的とし(それぞれ、68%及び75%)、変異のわずか19%が5'-隣接ピリミジン残基を伴うC残基に対して標的化された野生型酵素とは対照的であった。変異スペクトルにおけるこの著名な変化は、複合のデータセットにおいて、並びに独立のクローン由来の各データセットの両方において明確である。対照的に、AID/3Fは、隣接プリン残基についての親の酵素の選択性を維持していたが、gapped duplex lacZ基質でのin vitroアッセイで見られるように(実施例11)、アデニンよりもむしろ隣接グアニンを選択する方向への変化がある。
【0219】
5'-隣接ヌクレオチドの性質により判断されるような変異の標的における変化は、IgVλセグメントに沿ったヌクレオチド置換の分布による決定での変化した変異スペクトルの変化と概して相関していた。即ち、例えば、IgVλ変異ホットスポットは、野生型AIDとAID1*/3Gとを比較した場合、別々の位置で見られた。野生型AIDでは(並びにAID1上方変異体においては)、ホットスポットのクラスターは、CDR1の中に、CDR2の5'-側に向けて、そしてCDR3の中でも明らかであり、これらのホットスポットは、以前に観察されていたWRCコンセンサスにほとんどが一致している(Arakawa et al., PLoS Biol., 2: E179 (2004);Sale et al., Nature, 412: 921-926 (2001);Saribasak et al., J. Immunol., 176: 365-371 (2006);Wang et al., Nat Struct Mol Biol., 16: 769-76 (2009))。対照的に、AID1*/3Gを用いて得られたIgVλ変異は、5'-ピリミジン隣接を伴うホットスポットを中心にして、CDR1及びCDR3内でクラスタリングが減少することを示し、それらは、野生型酵素により比較的使用されていない領域(FR1及びFR3)に位置している。
【0220】
本実施例の結果は、AIDの活性部位の変化が、in vitroのDNA脱アミノ化及びB細胞トランスフェクタント内での抗体超変異の両方により得られる変異スペクトルを変化させることを実証する。
【0221】
実施例13
本実施例は、AID変異体の「ホットスポット」の同定を説明する。
【0222】
AID/3C及びAID1*/3Gにおける活性部位の改変は、in vivo(DT40 IgVλ)及びin vitro(gapped-duplex lacZ)の両方の変異アッセイにおいて、隣接5'-プリンについての選択性から隣接5'-ピリミジンへの変化をもたらしたが、2つのアッセイにおける変化の特性は同等ではなかった。即ち、AID/3Gについては、TがDT40 IgVλ変異スペクトルにおいて選択される隣接ピリミジンであるが、in vitroアッセイでは隣接Cが選択される。この不一致は、実質的に、DT40 IgVλスペクトル内の少数の主要なホットスポットの歪曲効果によるものであり、このことは、B細胞における超変異のいくつかの側面は、in vitroのgapped duplexアッセイでは再現されないドミナントなホットスポットの創出をもたらす可能性があることを示唆している。
【0223】
これを確認するため、(lacZよりもむしろ)IgVλ標的配列についてgapped duplex変異アッセイを実施し、得られたin vitro変異スペクトルを、B細胞DT40内の同等の(非転写の)IgVλ DNA鎖で観察されたものと比較した。変異の標的化において有意な相違が見られた。これらの相違は、in vitroでの変異標的化のパターンを推定するために使用されたデータベースから大きく変異された配列を除いた場合、同様に明らかであった。
【0224】
標的化における相違が、in vivoでの変異が転写二本鎖DNAに生じ得るという事実を反映するかどうかを明らかにするために、gapped duplexアッセイは一本鎖DNA標的を使用するところ、Bransteitter et al., J. Biol. Chem., 279: 51612-21(2004)により記載されたアッセイを用いた変異標的化を採用した。この変異標的化アッセイは、組換えAIDを二本鎖DNAとインキュベートすることを含み、同時に、基質中の標的遺伝子(lacZ)が、結合されたT7ポリメラーゼプロモーターから転写される。本アッセイにおいて、AID1*/3Gは野生型AIDとは明らかに異なり、5'-ピリミジンをなお選択し、特に、B細胞DT40で見られた5'-Tよりもむしろ5'-Cを選択した。in vitro転写共役アッセイにおいてIgVλ基質内の変異標的化を評価するため、T7結合アッセイを改変して、IgVλの短いセグメント内で選択されない変異が、接近して結合されたGFPレポーター遺伝子の変異不活性化を受けたクローンにおいてスコア付けできる基質を作製した。しかし、このようなアッセイでは、gapped duplexアッセイのように、DT40細胞内の超変異の間に見られたIgVλの位置141(野生型)AID又は252(AID1*/3G)での主要なホットスポットの相対的な優位性は再現されないことがわかった。実際、転写結合アッセイにおける変異標的化は、B細胞DT40内に見られた変異標的化のパターンよりも、gapped duplexアッセイで見られたものに類似しているようであった。従って、いずれのin vitroアッセイも、B細胞内に見られたIgVホットスポット優位性のパターンを十分に再現しなかった。
【0225】
本実施例の結果は、改変されたAIDタンパク質を発現するB細胞が、変化されたホットスポットの使用を生じることを実証する。
【0226】
実施例14
本実施例は、イヌAID及びヒトAIDへのMut7.3変異の導入効果を説明する。
【0227】
HEK293-c18細胞におけるAIDの機能を、共発現された抗体鋳型を配列決定することにより測定した。細胞には、特有の選択マーカーを含む3つのエピソーマルベクター(一つはピューロマイシン選択を伴う抗体重鎖を発現し、一つはハイグロマイシン選択を伴う抗体軽鎖を発現し、一つはブラストサイジン選択を伴うAIDを発現する)を共トランスフェクトさせた。トランスフェクション後、細胞は常にピューロマイシン及びハイグロマイシンと共に培養したが、ブラストサイジンは別に処理した。AIDで「パルスされた」細胞については、ブラストサイジンは培養物に添加せず、AIDベクターの一過性のトランスフェクションを毎週の実験で繰り返した。「安定的な」AID細胞については、ブラストサイジンを培地に添加し、「安定的な+パルスされた」細胞については、AIDベクターを毎週トランスフェクトすることに加えて、ブラストサイジンと共に培養した。3つの異なるAID変異体:イヌAID(「MutE」)、Mut7.3を含むイヌAID(「Mut 7.3 E」)、及びMut7.3を含むヒトAID(「Human 7.3」)(配列番号:88〜93並びに図10a及び10b)を、これらの実験で調査し、そして2つの異なるベクターコンストラクト(即ち、IRESベクター及びpEpiベクター)をAID発現について試験した。IRESベクターでは、AID及びブラストサイジンの両方の発現は、遺伝子の間にIRESエレメントを有する同一のプロモーターにより制御した。pEpiベクターにおいては、ブラストサイジン発現は別個のプロモーターにより制御した。
【0228】
培養して約1ヵ月後、重鎖可変領域を配列決定のためにPCRにより回収した。94個の鋳型を、それぞれの別個の細胞トランスフェクション実験について配列決定し、実験当り平均して88個の完全な配列が返された。観察された変異の質を確認するため配列決定クロマトグラムを調べ、変異の数を配列決定されたヌクレオチドの総数で割り、次いで培養日数で割ることにより、変異の頻度を計算した。HEK293-c18細胞の倍加時間は約24時間であるため、培養日数は、世代当りの変異率を正規化させるために用いた。
【0229】
それぞれのAIDベクターについて、パルスされた、安定的な、又は安定的な+パルスされた群の間で変異頻度において有意な差はなかった。また、MutE AIDについて、IRES及びpEpiベクター間に有意な差はなく、Mut 7.3E及びhuman 7.3の間にも何ら有意な差はなかった。しかし、pEpiのMut 7.3Eについての変異頻度における差は、IRESのMut 7.3Eに対して統計学的に有意であった(p=0.0003)。
【0230】
本実施例は、Mut7.3がイヌAID及びヒトAIDに翻訳され得ることを実証する。
【0231】
本明細書で引用した刊行物、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照することにより援用されることが個々に及び具体的に示され、かつ本明細書にその全体が記載されているかのような程度まで、参照することにより本明細書に援用される。
【0232】
本発明の説明の文脈において(特に、以下のクレームの文脈において)、用語「a」及び「an」及び「the」及び同様の指示語の使用は、本明細書で別段示していなければ、又は、文脈に明らかに矛盾しなければ、単数と複数の両方を包含するように解釈されるべきである。用語「含有する(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含む(containing)」は、別段の記載がなければ、オープンエンドの用語(即ち、「・・を含むが、・・に限定されない」ことを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の記載は、本明細書で別段示していなければ、その範囲内の各々の個別の値へ個々に言及することの略記方法として役立つことが単に意図され、各々の個別の値は、それが本明細書に個々に記載されているかのように本明細書に含まれるものである。本明細書で記載される方法の全ては、本明細書で別段示していなければ、又は、文脈に明らかに矛盾しなければ、任意の適切な順序で行うことができる。本明細書で提供される任意の、及び全ての例、又は例示的言葉(例えば、「等の」)の使用は、本発明をより良く明瞭にすることが単に意図され、別段のクレームがなければ、本発明の範囲を制限するものではない。本明細書の如何なる言葉も、本発明の実施に必須なものとして主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0233】
本発明を実施するのに本発明者らが知っている最良の形態を含む、本発明の好適な実施態様を本明細書で記載する。上記説明を読むと、それらの好適な実施態様のバリエーションが当業者に明白となり得る。本発明者らは、当業者が適宜このようなバリエーションを用いることを期待し、本発明者らは、本発明が、本明細書に具体的に記載されたものとは異なるように実施されることを意図する。それ故、本発明は、適用法によって許される、本明細書に添付されたクレームに記載の主題の全ての改変及び均等物を含むものである。更に、本明細書で別段示していないか、または文脈に明らかに矛盾しなければ、その全ての可能なバリエーション中の上記要素の任意の組み合わせが本発明に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項2】
残基34のアミノ酸が置換されている、請求項1に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項3】
残基34でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項2に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項4】
残基34での脂肪族アミノ酸置換がK34E又はK34Dである、請求項3に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項5】
残基82のアミノ酸が置換されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項6】
残基82でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項5に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項7】
残基82での脂肪族アミノ酸置換がT82I又はT82Lである、請求項6に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項8】
残基156のアミノ酸が置換されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項9】
残基156でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項8に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項10】
残基156での脂肪族アミノ酸置換がE156G又はE156Aである、請求項9に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項11】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基34、82、及び157からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項8〜10のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項12】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基34及び157でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項13】
残基34、82、及び157でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項11又は12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項14】
(a)残基34でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(b)残基82でのアミノ酸置換がイソロイシン(I)又はロイシン(L)、及び
(c)残基157でのアミノ酸置換がスレオニン(T)又はリジン(K)である、
請求項11〜13のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項15】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、38、及び180からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項16】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、38、及び180でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12又は15に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項17】
機能的な変異体AIDタンパク質が、42、115、132、183、及び198からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項18】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基42、115、132、183、及び198でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項19】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、96、及び181からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項20】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、96、及び181でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項21】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基13及び/又は残基197での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項22】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基13及び残基197でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項23】
アミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項15〜22のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項24】
(a)残基9でのアミノ酸置換がメチオニン(M)又はリジン(K)、
(b)残基13でのアミノ酸置換がフェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)、
(c)残基38でのアミノ酸置換がグリシン(G)又はアラニン(A)、
(d)残基42でのアミノ酸置換がイソロイシン(I)又はロイシン(L)、
(e)残基96でのアミノ酸置換がグリシン(G)又はアラニン(A)、
(f)残基115でのアミノ酸置換がチロシン(Y)又はトリプトファン(W)、
(g)残基132でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(h)残基180でのアミノ酸置換がイソロイシン(I)又はアラニン(A)、
(i)残基181でのアミノ酸置換がメチオニン(M)又はバリン(V)、
(j)残基183でのアミノ酸置換がイソロイシン(I)又はプロリン(P)、
(k)残基197でのアミノ酸置換がアルギニン(R)又はリジン(K)、及び
(l)残基198でのアミノ酸置換がバリン(V)又はロイシン(L)である、
請求項15〜23のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項25】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基10での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項26】
残基10及び156でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項25に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項27】
残基10のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)で置換されており、残基156のアミノ酸がグリシン(G)又はアラニン(A)で置換されている、請求項26に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項28】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、13、34、82、95、115、120、134及び145からなる群より選択される残基での少なくとも一つの更なるアミノ酸置換を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項29】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基13での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜28のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項30】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基34での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜29のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項31】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基82での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜30のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項32】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基95での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜31のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項33】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基115での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜32のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項34】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基120での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜33のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項35】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基134での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜34のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項36】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基145での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項25〜35のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項37】
アミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項28〜36のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項38】
(a)残基13でのアミノ酸置換がフェニルアラニン(F)又はトリプトファン(W)、
(b)残基34でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(c)残基82でのアミノ酸置換がイソロイシン(I)又はロイシン(L)、
(d)残基95でのアミノ酸置換がセリン(S)又はロイシン(L)、
(e)残基115でのアミノ酸置換がチロシン(Y)又はトリプトファン(W)、
(f)残基120でのアミノ酸置換がアルギニン(R)又はアスパラギン(N)、及び
(g)残基145でのアミノ酸置換がロイシン(L)又はイソロイシン(I)である、
請求項28〜37のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項39】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基35での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基145での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項40】
残基35及び145でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項39に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項41】
残基35のアミノ酸がグリシン(G)又はアラニン(A)で置換されており、残基145のアミノ酸がロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換されている、請求項39に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項42】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基34での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基160での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項43】
残基34及び160でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項42に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項44】
残基34のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)で置換されており、残基160のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)で置換されている、請求項42に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項45】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基43での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基120での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項46】
残基43でのアミノ酸置換が芳香族アミノ酸置換であり、残基120でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換である、請求項45に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項47】
残基43のアミノ酸がプロリン(P)で置換されており、残基120のアミノ酸がアルギニン(R)で置換されている、請求項46に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項48】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、少なくとも二つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、少なくとも一つの置換が残基57においてであり、少なくとも一つの置換が残基81又は145においてであり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項49】
少なくとも二つのアミノ酸置換が残基57及び145においてである、請求項48に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項50】
残基57及び145でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸である、請求項49に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項51】
残基57のアミノ酸がグリシン(G)又はアラニン(A)で置換されており、残基145のアミノ酸がロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換されている、請求項50に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項52】
少なくとも二つのアミノ酸置換が残基57及び81においてである、請求項48に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項53】
残基57でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸置換であり、残基81でのアミノ酸置換が芳香族アミノ酸置換である、請求項52に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項54】
残基57のアミノ酸がグリシン(G)又はアラニン(A)で置換されており、残基81のアミノ酸がチロシン(Y)又はトリプトファン(W)で置換されている、請求項53に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項55】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基82での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項56】
残基156及び82でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸である、請求項55に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項57】
残基156のアミノ酸がグリシン(G)又はアラニン(A)で置換されており、残基82のアミノ酸がロイシン(L)又はイソロイシン(I)で置換されている、請求項56に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項58】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基34での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項59】
残基156及び34でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸である、請求項58に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項60】
残基156のアミノ酸がグリシン(G)又はアラニン(A)で置換されており、残基34のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)で置換されている、請求項59に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項61】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基156での少なくとも一つのアミノ酸置換、及び残基157での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項62】
残基156及び157でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸である、請求項61に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項63】
残基156のアミノ酸がグリシン(G)又はアラニン(A)で置換されており、残基157のアミノ酸がリジン(K)又はアスパラギン(N)で置換されている、請求項62に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項64】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、10、82、及び156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項65】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、36、44、88、93、及び142からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項66】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、36、44、88、93、及び142でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項65に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項67】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基66、104、及び160からなる群より選択される残基での少なくとも一つの更なるアミノ酸置換を含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項68】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質が、残基66、104、及び160でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項67に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項69】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基15、115、及び185からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項70】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基15、115、及び185でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項69に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項71】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、30、34、100、及び184からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項72】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、30、34、100、及び184でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項71に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項73】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基34、35、59、120、及び157からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項74】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基34、35、59、120、及び157でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項73に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項75】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、74、77、118、157、及び188からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項76】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基9、74、77、118、157、及び188でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項75に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項77】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基53及び/又は残基145での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項78】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基53及び145でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項77に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項79】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基18、93、100、160、及び192からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換をさらに含む、請求項64に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項80】
機能的な変異体AIDタンパク質が、残基18、93、100、160、及び192でのアミノ酸置換をさらに含む、請求項79に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項81】
アミノ酸置換が脂肪族又は芳香族アミノ酸置換である、請求項64〜80のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項82】
(a)残基9でのアミノ酸置換がセリン(S)、メチオニン(M)、又はトリプトファン(W)、
(b)残基10でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(c)残基15でのアミノ酸置換がチロシン(Y)又はロイシン(L)、
(d)残基18でのアミノ酸置換がアラニン(A)又はロイシン(L)、
(e)残基30でのアミノ酸置換がチロシン(Y)又はセリン(S)、
(f)残基34でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(g)残基35でのアミノ酸置換がセリン(S)又はリジン(K)、
(h)残基36でのアミノ酸置換がシステイン(C)、
(i)残基44でのアミノ酸置換がアルギニン(R)又はリジン(K)
(j)残基53でのアミノ酸置換がチロシン(Y)又はグルタミン(Q)、
(k)残基57でのアミノ酸置換がアラニン(A)又はロイシン(L)、
(l)残基59でのアミノ酸置換がメチオニン(M)又はアラニン(A)、
(m)残基66でのアミノ酸置換がスレオニン(T)又はアラニン(A)、
(n)残基74でのアミノ酸置換がヒスチジン(H)又はリジン(K)、
(o)残基77でのアミノ酸置換がセリン(S)又はリジン(K)、
(p)残基82でのアミノ酸置換がイソロイシン(I)又はロイシン(L)、
(q)残基88でのアミノ酸置換がセリン(S)又はスレオニン(T)、
(r)残基93でのアミノ酸置換がロイシン(L)、アルギニン(R)、又はリジン(K)、
(s)残基100でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)、トリプトファン(W)、又はフェニルアラニン(F)、
(t)残基104でのアミノ酸置換がイソロイシン(I)又はアラニン(A)、
(u)残基115でのアミノ酸置換がチロシン(Y)又はロイシン(L)、
(v)残基118でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はバリン(V)、
(x)残基120でのアミノ酸置換がアルギニン(R)又はロイシン(L)、
(y)残基142でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(z)残基145でのアミノ酸置換がロイシン(L)又はチロシン(Y)、
(aa)残基156でのアミノ酸置換がグリシン(G)又はアラニン(A)、
(bb)残基157でのアミノ酸置換がグリシン(G)又はリジン(K)、
(cc)残基160でのアミノ酸置換がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)、
(dd)残基184でのアミノ酸置換がアスパラギン(N)又はグルタミン(Q)、
(ee)残基185でのアミノ酸置換がグリシン(G)又はアスパラギン酸(D)、
(ff)残基188でのアミノ酸置換がグリシン(G)又はグルタミン酸(E)、及び
(gg)残基192でのアミノ酸置換がスレオニン(T)又はセリン(S)である、
請求項65〜80のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項83】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基115での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項84】
残基115のアミノ酸が、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、又はロイシン(L)で置換されている、請求項83に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項85】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基120での少なくとも一つのアミノ酸置換によりヒトAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1又は配列番号:2)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項86】
残基120でのアミノ酸置換が脂肪族アミノ酸である、請求項85に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項87】
残基120のアミノ酸が、アルギニン(R)、アスパラギン(N)、又はロイシン(L)で置換されている、請求項86に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項88】
機能的な変異体AIDタンパク質が、C末端切断、融合タンパク質、又は残基181において若しくはその遠位にストップコドンを含む、請求項1〜87のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項89】
機能的な変異体AIDタンパク質が、以下のアミノ酸置換:N7K、R8Q、Q14H、R25H、Y48H、N52S、H156R、R158K、及びL198Aをさらに含む、請求項1〜88のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項90】
機能的な変異体AIDタンパク質が、以下のアミノ酸置換:N7K、R8Q、R9K、Q14H、R25H、Y48H、N52S、G100W、A138G、S173T、及びT195Iをさらに含む、請求項1〜88のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項91】
機能的な変異体AIDタンパク質が、以下のアミノ酸置換:N7K、R8Q、R9K、Q14H、R25H、F42C、Y48H、N52S、G100W、A138G、H156R、S173T、T195I、及びL198Fをさらに含む、請求項1〜88のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項92】
機能的な変異体AIDタンパク質が、以下のアミノ酸置換:M6K、N7K、R8Q、K10Q、R25H、A39P、Y48H、N52A、E118D、118の後にKの挿入、及びD119Eをさらに含む、請求項1〜88のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項93】
機能的な変異体AIDタンパク質が、以下のアミノ酸置換:N7K、R9K、K10L、Q14N、F42C、N52M、D67A、G100A、V135A、Y145F、H156R、R171H、Q175K、及びR194Kをさらに含む、請求項1〜88のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項94】
単離又は精製された核酸の配列が、体細胞超変異(SHM)モチーフの数を低減するために最適化されたコドンを有する、請求項1〜93のいずれか1項に記載の単離又は精製された核酸分子。
【請求項95】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換によりイヌAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:3)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項96】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換によりマウスAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:4)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項97】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換によりラットAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:5)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性において少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項98】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換によりウシAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:6)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性が少なくとも10倍の改善を有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項99】
機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む単離又は精製された核酸分子であって、該タンパク質のアミノ酸配列は、残基34、残基82、及び残基156からなる群より選択される残基での少なくとも一つのアミノ酸置換によりニワトリAIDタンパク質のアミノ酸配列(配列番号:7)とは異なり、該機能的な変異体AIDタンパク質は、細菌パピラ形成アッセイにおいて、ヒトAIDタンパク質と比較して、活性が少なくとも10倍のを有する、単離又は精製された核酸分子。
【請求項100】
請求項1〜99のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、発現ベクター。
【請求項101】
請求項1〜99のいずれか1項に記載の核酸分子又は請求項100に記載のベクターを含む、単離された真核細胞。
【請求項102】
請求項1〜99のいずれか1項に記載の核酸分子又は請求項100に記載のベクターを含む、単離された原核細胞。
【請求項103】
請求項1〜99のいずれか1項に記載の核酸分子を含む、トランスジェニック動物。
【請求項104】
動物がマウスである、請求項103に記載のトランスジェニック動物。
【請求項105】
動物がウサギである、請求項103に記載のトランスジェニック動物。
【請求項106】
動物がラクダである、請求項103に記載のトランスジェニック動物。
【請求項107】
動物がヤギである、請求項103に記載のトランスジェニック動物。
【請求項108】
動物がラットである、請求項103に記載のトランスジェニック動物。
【請求項109】
所望の性質を有する遺伝子産物の調製方法であって、該方法は、該遺伝子産物をコードする核酸を細胞集団中で発現することを含み、該細胞集団は、請求項1〜99のいずれか1項に記載の核酸分子によりコードされる機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質を発現し、又は発現するよう誘導されることができ、該機能的なAID変異体タンパク質の発現は、該遺伝子産物をコードする核酸内に変異を引き起こす、方法。
【請求項110】
該所望の性質を有する遺伝子産物をコードする変異された核酸配列を発現する細胞(単数又は複数)を該集団内で選択する工程をさらに含む、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
細胞が真核細胞又は原核細胞である、請求項109又は110に記載の方法。
【請求項112】
細胞が哺乳動物細胞である、請求項109〜111のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
細胞がB細胞又はB細胞由来のものである、請求項109〜112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
細胞が、SHMモチーフの数を増加させるためにSHMについて最適化されているコドンを有する少なくとも一つの核酸配列を含む、請求項109〜113のいずれか1項に記載の方法。
【請求項115】
所望の表現系を有するよう生物を変異する方法であって、該生物において請求項1〜99のいずれか1項に記載の核酸分子によりコードされる機能的な変異体活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)タンパク質を発現するか、又はその発現を誘導することを含み、該機能的な変異体AIDタンパク質の発現は、該生物の染色体DNA内で変異を引き起こす、方法。
【請求項116】
該所望の表現系を示す細胞(単数又は複数)を該生物内で選択する工程をさらに含む、請求項115に記載の方法。
【請求項117】
生物が真核生物又は原核生物である、請求項115又は116に記載の方法。
【請求項118】
生物が、SHMモチーフの数を増加させるためにSHMについて最適化されているコドンを有する少なくとも一つの核酸配列を含む、請求項115〜117のいずれか1項に記載の方法。

【図2】
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【図8】
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【図9】
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【図10a−1】
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【図10a−2】
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【図10b】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−522501(P2012−522501A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502830(P2012−502830)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【国際出願番号】PCT/IB2010/000958
【国際公開番号】WO2010/113039
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(597166578)メディカル リサーチ カウンシル (60)
【Fターム(参考)】