説明

活性窒素測定用試薬

【課題】細胞内活性窒素種を測定する試薬。
【解決手段】一般式(I):


〔R1及びR2はベンゼン環上の隣接した位置に置換するアミノ基;R3及びR4はハロゲン原子;R5及びR6は水素原子、アシル基、又はアシルオキシC1-6アルキル基;R7及びR8は-(CH2)p-N(R9)(R10)(式中、pは1ないし4の整数、R9及びR10は-(CH2)n-COOH(式中、nは1ないし4の整数)で表される基)〕で表される化合物、その塩、又はそのエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞内に存在する一酸化窒素やパーオキシナイトライトのような活性窒素種を長時間にわたり高感度に測定することができる化合物及び該化合物を含む測定用試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
一酸化窒素(NO)は短寿命の不安定ラジカル種であり、生体内生理活性物質として重要な機能を有していることが明らかにされてきた(現代化学, 1994年 4月号特集)。一酸化窒素の測定方法は、一酸化窒素の酸化分解物であるNO2-やNO3-を測定する間接的な方法と、一酸化窒素を直接測定する方法に大別される。一酸化窒素を生理的条件下で検出・定量するという観点からは直接法が注目されているものの、現時点ではイン・ビトロ系に適用できる特異的かつ高感度な検出方法は開発されていない。
【0003】
例えば、NO ラジカルをオゾン酸化したときに発生する発光を利用する化学発光法(Palmer, R.M., et al., Nature, 327, pp.524-526, 1987) 、オキシヘモグロビン(O2Hb)が酸化されて生じるmetHb の吸収スペクトルを測定する方法 (Kelm, M., et al., Circ. Res. 66, pp.1561-1575, 1990)、電極を組織に差し込んで酸化されるときに流れる電流で定量する方法(Shibuki, K., Neurosci. Res. 9, pp.69-76, 1990; Malinski, T., Nature, 356, pp.676-678, 1992)、及びグリース反応法(Green, L.C., et al., Anal. Biochem., 126, pp.131-138, 1992)などが代表的な方法として知られている(総説として、戸田 昇編集「最新医学からのアプローチ12, NO」,pp.42-52, 3.NOの測定法, 長野哲雄著, メジカルビュー社発行;Archer, S., FASEB J., 7, pp.349-360, 1993)。
【0004】
グリース反応法は、一酸化窒素ラジカルが酸化されて生じるNO2-によるジアゾニウム塩化合物とナフチルエチレンジアミンのアゾカップリングを利用して検出する方法である。この方法は、一酸化窒素ラジカルを直接測定するものではないが、特別な装置や技術を必要としないという利点を有している。またカドミウム(Stainton, M.P., Anal. Chem., 46, p.1616, 1974; Green, L.C., et al., Anal. Biochem., 126, pp.131-138, 1982) やヒドラジン(Sawicki, C.R. and Scaringelli, F.P., Microchem. J., 16, pp.657-672, 1971)でNO3-をNO2-に還元して測定できることから、一酸化窒素関連代謝物を定量できるという特徴もある。
【0005】
グリース反応法と同様にNO2-を検出することにより一酸化窒素を測定するための試薬として2,3-ジアミノナフタレン(2,3-diaminonaphthalene)が知られている。この試薬は、酸性条件下で NO2- と反応して蛍光性付加体であるナフタレントリアゾール(化学名: 1-[H]-naphtho[2,3-d]triazole) を形成する(Wiersma, J.H., Anal. Lett., 3, pp.123-132, 1970) 。2,3-ジアミノナフタレンと NO2- の反応条件については詳細に検討されており、反応は pH=2 以下で最も速く進行し、室温下では約5分程度で完了する(Wiersma, J.H., Anal. Lett., 3, pp.123-132, 1970; Sawicki, C.R., Anal. Lett., 4, pp.761-775, 1971)。また、生成した付加体は pH=10以上で最も効率よく蛍光を発する(Damiani, P. and Burini,G., Talanta, 8, pp.649-652, 1986)。
【0006】
この2,3-ジアミノナフタレンを用いる一酸化窒素の測定方法は、検出限界が数十nM程度であり、グリース反応法に比べて50〜100 倍も高感度であるという特徴がある(Misko, T.P., Anal. Biochem. 214, pp.11-16, 1993) 。また、この方法は特別な装置や技術を必要とせず、簡便に行えるという点でも非常に優れた方法である(以上について、総説として DOJIN News, No. 74, Information .NOの測定試薬:2,3-Diaminonaphthalene, 株式会社同仁化学研究所発行、1995) 。しかしながら、一酸化窒素自体ではなくその酸化物である NO2- を反応種としていることから、一酸化窒素を直接測定する方法に比べて間接的な方法であり、また、2,3-ジアミノナフタレンと NO2- の反応を強酸性下(pH=2 以下)で行うために、一酸化窒素を生理的条件下で検出・定量する方法としては採用できないという問題があった。
【0007】
本発明者は、生理的条件下で一酸化窒素を直接的かつ高感度に測定する手段を提供すべく研究を進めた結果、溶存酸素やオキシド化合物(例えばPTIOやその誘導体であるカルボキシPTIOなど)の酸素源の存在下では、2,3-ジアミノナフタレン又はその誘導体に対して中性条件下においても一酸化窒素が効率よく反応し、蛍光性のナフタレントリアゾール又はその誘導体を与えることを見出した。また、この反応を応用した一酸化窒素の測定方法が極めて検出感度に優れており、微量の一酸化窒素を正確に定量できることを見出した(特願平7-189978号明細書参照)。
【0008】
しかしながら、2,3-ジアミノナフタレンを用いる上記の方法では、蛍光の検出において 370〜390 nm程度の低波長の励起光を照射する必要があり、測定系内の細胞や組織がダメージを受ける可能性があった。また、細胞自身の強い自家蛍光が測定に影響を与えることがあり、通常の蛍光顕微鏡に備えられている蛍光フィルターでは蛍光測定時に励起光を十分にカットできないという問題もあった。さらに、2,3-ジアミノナフタレンから生成する蛍光性のトリアゾール化合物は蛍光強度が必ずしも十分ではないことから、汎用の蛍光顕微鏡では個々の細胞内の蛍光を正確に測定することが困難であった。一方、2,3-ジアミノナフタレン自体は単純な化学構造を有しており、例えば、試薬が細胞内部に局在化するように種々の化学的修飾を加える基本骨格としては好適ではないという問題もあった。
【0009】
本発明者は、これらの問題を解決した一酸化窒素の定量方法として、ジアミノフルオレセイン誘導体を用いる方法を提案した(米国特許第5,874,590号)。この誘導体を用いると、生体組織や細胞に対してダメージを与えないような長波長の励起光により一酸化窒素を測定することができ、細胞の内部に存在する一酸化窒素を個々の細胞ごとに正確に測定することができる。もっとも、このジアミノフルオレセイン誘導体は細胞内滞留性の観点からは必ずしも満足すべきものではなく、細胞内からの漏出が早く、長時間にわたって一酸化窒素を測定することが困難であった。
【特許文献1】米国特許第5,874,590号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、細胞内に存在する一酸化窒素やパーオキシナイトライトのような活性窒素種を長時間にわたり高感度に測定するための試薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ジアミノフルオレセイン誘導体のキサンテン骨格に2個のカルボキシアルキル基で置換されたアミノを有するアルキル基を2個導入した化合物が極めて優れた細胞内滞留性を有しており、かつ活性窒素種に対して高い反応性を保持していることを見出した。また、この化合物を一酸化窒素測定用試薬として用いることにより、個々の細胞内に存在する活性窒素種を長時間にわたり正確かつ簡便に測定できることを見いだした。本発明はこれらの知見を基にして完成されたものである。
【0012】
すなわち、本発明により、下記の一般式(I):
【化1】

〔式中、R1及びR2はそれぞれベンゼン環上の隣接した位置に置換するアミノ基を示し、ただしいずれか一方はモノC1-6アルキル置換アミノ基又は無置換アミノ基を示し、他方は無置換アミノ基を示し;R3及びR4はそれぞれ独立にハロゲン原子を示し;R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、アシル基、又はアシルオキシC1-6アルキル基を示し;R7及びR8はそれぞれ独立に-(CH2)p-N(R9)(R10)(式中、pは1ないし4の整数を示し、R9及びR10はそれぞれ独立に-(CH2)n-COOH(式中、nは1ないし4の整数を示す)で表される基を示す)を示す〕で表される化合物、その塩、又はそのエステルを提供するものである。
【0013】
上記発明の好ましい態様によれば、R1及びR2がそれぞれベンゼン環上の隣接した位置に置換する無置換アミノ基であり、R3及びR4が塩素原子であり、R5及びR6がそれぞれ独立に水素原子又はアセトキシメチル基であり、R7及びR8が-CH2-N(CH2-COOH)2で表される基である上記の化合物、その塩、又はそのエステルが提供される。
【0014】
別の観点からは、上記の一般式(I)で表される化合物、その塩、又はそのエステルを含む活性窒素種、好ましくは一酸化窒素の測定用試薬が本発明により提供される。
【0015】
さらに別の観点からは、下記の一般式(II):
【化2】

〔式中、R11 及びR12 は互いに結合してベンゼン環上の隣接した位置に環を形成する-N=N-N(R19)- (式中、R19 は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)で表される基を示し;R13及びR14はそれぞれ独立にハロゲン原子を示し;R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子、アシル基、又はアシルオキシC1-6アルキル基を示し;R17及びR18はそれぞれ独立に-(CH2)s-N(R19)(R20)(式中、sは1ないし4の整数を示し、R19及びR20はそれぞれ独立に-(CH2)t-COOH(式中、tは1ないし4の整数を示す)で表される基を示す)を示す〕で表される化合物、その塩、又はそのエステルが提供される。
【0016】
また、本発明により、活性窒素種、好ましくは一酸化窒素の測定方法であって、
(1) 上記一般式(I)で表される化合物、その塩、又はそのエステルを活性窒素種、好ましくは一酸化窒素と反応させる工程;及び
(2) 上記工程(1) において生成する上記一般式(II)で表される化合物、その塩、又はそのエステルを検出する工程
を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記一般式(I) において、R1及びR2はそれぞれベンゼン環上の隣接した位置に置換するアミノ基を示すが、いずれか一方はモノC1-6アルキル置換アミノ基又は無置換アミノ基を示し、他方は無置換アミノ基を示す。モノC1-6アルキル置換アミノ基を構成するC1-6アルキル基は直鎖又は分枝鎖のいずれでもよく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert- ブチル基などを用いることができる。本明細書において言及する他のC1-6アルキル基又はC1-6アルキル部分を含む置換基のC1-6アルキル部分についても同様である。R1及びR2の両者が無置換アミノ基であることが好ましい。R1及びR2の置換位置としては、ラクトン環を構成するカルボニル基のオルト位及びメタ位が好ましい。
【0018】
R3及びR4はそれぞれ独立にハロゲン原子を示す。ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子を用いることができるが、フッ素原子又は塩素原子が好ましい。R3及びR4が共に塩素原子であることが特に好ましい。
【0019】
R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、アシル基、又はアシルオキシC1-6アルキル基を示す。アシル基としては、例えば、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、パラクロロベンゾイル基、若しくはナフチルカルボニル基などのアリールカルボニル基;又はアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基などのC1-6アルキルカルボニル基などを用いることができる。アシルオキシC1-6アルキル基のアシル部分としては上記のアシル基を用いることができる。アシルオキシC1-6アルキル基としては、例えば、アセトキシC1-6アルキル基などが好ましく、より好ましくはアセトキシメチル基などを用いることができる。R5及びR6が独立に水素原子又はアシルオキシC1-6アルキル基であることが好ましく、R5及びR6が共に水素原子であるか、又は共にメトキシメチル基である場合が特に好ましい。
【0020】
R7及びR8は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に-(CH2)p-N(R9)(R10)を示す。pは1ないし4の整数を示し、R9及びR10はそれぞれ独立に-(CH2)n-COOHを示し、nは1ないし4の整数を示す。R7及びR8が異なる場合には、p及び/又はnは異なる整数の場合がある。好ましくはR7及びR8は同一であり、pは1ないし3の整数、より好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。R9及びR10において、好ましくはnは1ないし3の整数、より好ましくは1又は2、特に好ましくは1である。R7及びR8が共に-CH2-N(CH2-COOH)2である場合が特に好ましい。
【0021】
上記一般式(I)で表される化合物において、R1及びR2がそれぞれベンゼン環上の隣接した位置に置換する無置換アミノ基であり、R3及びR4が塩素原子であり、R5及びR6がそれぞれ独立に水素原子又はアセトキシメチル基であり、R7及びR8が-CH2-N(CH2-COOH)2で表される基である化合物が好ましく、R1及びR2がそれぞれベンゼン環上の隣接した位置に置換する無置換アミノ基であり、R3及びR4が塩素原子であり、R5及びR6がそれぞれ独立に水素原子であり、R7及びR8が-CH2-N(CH2-COOH)2で表される基である化合物が特に好ましい。
【0022】
上記の一般式(II)において、R11 及びR12 は互いに結合してベンゼン環上の隣接した位置に環を形成する-N=N-N(R19)-基を示し、R19 は水素原子又はC1-6アルキル基を示す。
上記の一般式(II)において、R13及びR14はそれぞれ上記の一般式(I)におけるR3及びR4に対応しており、R15及びR16はそれぞれ上記の一般式(I)におけるR5及びR6に対応しており、R17及びR18はそれぞれ上記の一般式(I)におけるR7及びR8に対応している。それぞれの基についての具体例及び好ましい範囲は上記の一般式(I)において説明されているものと同様である。
【0023】
上記一般式(I)及び(II)で表される化合物は塩として存在する場合がある。塩としては、塩基付加塩、酸付加塩、アミノ酸塩などを挙げることができる。塩基付加塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などの金属塩、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩、ピペリジン塩、モルホリン塩などの有機アミン塩を挙げることができ、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの鉱酸塩、メタンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。アミノ酸塩としてはグリシン塩などを例示することができる。もっとも、本発明の化合物の塩はこれらに限定されることはない。これらのうち、生理学的に許容される水溶性の塩は、本発明の試薬及び測定方法に好適に使用できる。
【0024】
上記一般式(I)及び(II)で表される化合物のエステルとしては生理学的に許容されるエステルが好ましい。好適なエステル残基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ベンジル基、アセトキシメチル基、1-(アセトキシ)エチル基、プロピオニルオキシメチル基、1-(プロピオニルオキシ)エチル基、ブチリルオキシメチル基、1-(ブチリルオキシ)エチル基、イソブチリルオキシメチル基、1-(イソブチリルオキシ)エチル基、バレリルオキシメチル基、1-(バレリルオキシ)エチル基、イソバレリルオキシメチル基、1-(イソバレリルオキシ)エチル基、ピバロイルオキシメチル基、1-(ピバロイルオキシ)エチル基、メトキシカルボニルオキシメチル基、1-(メトキシカルボニルオキシ)エチル基、エトキシカルボニルオキシメチル基、1-(エトキシカルボニルオキシ)エチル基、プロポキシカルボニルオキシメチル基、1-(プロポキシカルボニルオキシ)エチル基、イソプロポキシカルボニルオキシメチル基、1-(イソプロポキシカルボニルオキシ)エチル基、ブトキシカルボニルオキシメチル基、1-(ブトキシカルボニルオキシ)エチル基、イソブトキシカルボニルオキシメチル基、1-(イソブトキシカルボニルオキシ)エチル基、t-ブトキシカルボニルオキシメチル基、1-(t-ブトキシカルボニルオキシ)エチル基、シクロペンタンカルボニルオキシメチル基、1-(シクロペンタンカルボニルオキシ)エチル基、シクロヘキサンカルボニルオキシメチル基、1-(シクロヘキサンカルボニルオキシ)エチル基、シクロペンチルオキシカルボニルオキシメチル基、1-(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル基、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル基、1-(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル基、ベンゾイルオキシメチル基、1-(ベンゾイルオキシ)エチル基、フェノキシカルボニルオキシメチル基、1-(フェノキシカルボニルオキシ)エチル基、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチル基、又は2-トリメチルシリルエチル基などを挙げることができるが、これらに限定されることはない。エステルとしては、R7及びR8の4個のカルボキシル基がエステルを形成することが好ましく、これらのエステルは同一のエステルであることがさらに好ましい。場合によりフルオレセイン骨格におけるカルボキシフェニル基のカルボキシル基がエステルを形成していてもよい。
【0025】
遊離形態の一般式(I)及び(II)で表される化合物、その塩、又はそのエステルは、水和物又は溶媒和物として存在する場合もあるが、これらの物質はいずれも本発明の範囲に包含される。溶媒和物を形成する溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、エタノール、アセトン、イソプロパノールなどの溶媒を例示することができる。
【0026】
一般式(I)及び(II)で表される化合物は、置換基の種類に応じて1個または2個以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などはいずれも本発明の範囲に包含される。ラクトン形成に基づく光学活性体も本発明の範囲に包含される。
【0027】
フルオレセイン誘導体は、ラクトン環を形成していない形態の化合物[9-(o-カルボキシフェニル)-6-ヒドロキシ-3H-キサンテン-3- オン] としても存在することが知られている。本発明の一般式(I)及び(II)で表される化合物についても、ラクトン環が開裂して2-カルボキシフェニル基を形成した形態で存在することが可能であり、ラクトン環が開裂した化合物がラクトン環を有する上記一般式(I)及び(II)で表される化合物の互変異性体であることは当業者に容易に理解されることである。従って、ラクトン環が開裂した化合物も本発明の範囲に包含されることは言うまでもない。なお、上記一般式(I)及び一般式(II)においては、便宜上、ラクトン環を形成した化合物のみが記載されており、本明細書に記載された合成スキームにおいては、便宜上、いずれか一方の互変異性体のみが記載されている場合がある。
【0028】
上記の一般式(I)で表される化合物は、例えば、ベンゼン環上に隣接するアミノ基及びニトロ基を有するフルオレセイン誘導体を原料化合物として用いて、R7及びR8に相当する基(これらは保護されていてもよい)を導入した後、ニトロ基を還元することにより容易に製造することができる。上記のニトロ化合物は、例えば、米国特許第5,874,590号明細書に記載された方法により製造可能である。本発明の一般式(I)で表される化合物の代表的化合物の製造方法が本明細書の実施例に具体的に示されているので、当業者は実施例の具体的説明を基にして、出発原料及び反応試薬を適宜選択し、必要に応じて反応条件や工程を適宜変更ないし修飾することにより、本発明の化合物を容易に製造することが可能である。一般式(II)で表される化合物は、例えば、一般式(I)で表される化合物に一酸化窒素を反応させることにより容易に製造することができる。
【0029】
反応工程において特定の官能基を必要に応じて保護して反応を行うことにより、目的物を効率的に製造することができる場合があるが、保護基については、プロテクティブ・グループス・イン・オーガニック・シンセシス (Protective Groups in Organic Synthesis, T.W.Greene, John Wiley & Sons, Inc., 1981)などに詳しく説明されており、当業者は適宜の保護基を選択することが可能である。
【0030】
また、製造法における生成物の単離、精製は通常の有機合成で用いられる方法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、結晶化、各種クロマトグラフィー等を適宜組み合わせ行うことができる。また、上記工程における製造中間体は、特に精製することなく次の反応に供することも可能である。本発明の化合物の塩を製造する場合には、上記製造法においてそれぞれの化合物の塩が得られる場合はそのまま精製すればよればよく、遊離形態の化合物が得られる場合には、遊離形態の化合物を適当な溶媒に溶解又は懸濁した後、塩基を加えて塩を形成させ、必要に応じて精製を行えばよい。
【0031】
上記一般式(I)で表される化合物は、活性窒素種(RNS)と効率的に反応して収率よく一般式(II)の化合物を生成する性質を有している。一般式(I)で表される化合物自体は、中性条件下において500 nm程度の励起光を照射した場合にはほとんど蛍光を発しないが、上記式(II)の化合物は同じ条件下において極めて強い蛍光 (emission: 520 nm) を発する性質を有している。従って、一般式(I)で表される化合物を生体組織中や細胞内に取り込ませて活性窒素種と反応させ、蛍光性の上記一般式(II)で表される化合物を生成させてこの化合物の蛍光を測定することにより、生体組織中や細胞内の活性窒素種を測定することができる。
【0032】
活性窒素種としては、例えば、一酸化窒素及びパーオキシナイトライトなどを挙げることができるが、一酸化窒素が好ましい測定対象である。本明細書において「測定」という用語は、検出、定量、定性など種々の目的の測定を含めて最も広義に解釈されるべきである。上記反応は好ましくは中性条件下に行うことができ、例えば、pH 6.0〜8.0 の範囲、好ましくはpH 6.5〜7.8 の範囲、より好ましくはpH 6.8〜7.6 の範囲で行うことができる。もっとも、本発明の化合物を用いた一酸化窒素の測定は中性領域ないし弱酸性領域に限定されることはない。
【0033】
本発明の一般式(I)及び(II)で表される化合物は、細胞内に容易に取り込まれ、かつ細胞から漏出せずに長時間にわたり細胞内に滞留できることから、細胞内の活性窒素種を長時間にわたり検出することができるという優れた性質を有している。特に、本発明の一般式(II)で表される化合物は非常に強い蛍光を発する性質を有しており、かつ細胞内滞留性が極めて優れていることから、長時間にわたって細胞内に存在する微量の活性窒素種を高感度に測定できるという特徴がある。一般式(I)で表される化合物のエステルは脂溶性が高く、脂溶性の細胞膜を容易に追加して細胞内に効率的に取り込まれる性質を有しており、かつ取り込み後に細胞内で加水分解を受けて対応のカルボキシル基の化合物を生成することができる。
【0034】
本発明の活性窒素測定用試薬としては、上記式(I)で表される化合物又はその塩をそのまま用いてもよいが、必要に応じて、試薬の調製に通常用いられる添加剤を配合して組成物として用いてもよい。例えば、生理的環境で試薬を用いるための添加剤として、溶解補助剤、pH調節剤、緩衝剤、等張化剤などの添加剤を用いることができ、これらの配合量は当業者に適宜選択可能である。これらの組成物は、粉末形態の混合物、凍結乾燥物、顆粒剤、錠剤、液剤など適宜の形態の組成物として提供される。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1
【化3】

【0036】
3-アミノ-4-ニトロフルオレセイン(化合物1、29 mg) とジエチルイミノジアセテート(37 mg)及びパラホルムアルデヒド(40.7 mg)をアセトニトリル(3.5 ml)と水(1.5 ml) の混合溶液に懸濁して24時間加熱還流した。室温まで放冷後に溶媒を減圧留去して化合物2を得た。
化合物2をジクロルメタン:メタノール(9:1)の混合溶媒10 mlに溶解して10% Pd-Cを36 mg加えて水素雰囲気下で5分間攪拌した。触媒を濾去した後に溶媒を減圧留去して化合物3を得た。
【0037】
化合物3を1N 水酸化カリウム/メタノール溶液に溶解して35℃で3時間攪拌した。2N 希塩酸で反応液を中和した後、溶媒を減圧留去し、残渣をHPLCにより精製して黄色粉末状の化合物4(DCl-DA Cal)を得た(22.8 mg、3工程で収率50%)。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD) δ 3.78 (s, 8H), 4.52 (s, 4H), 6.23 (d, 1H, J=7.32), 6.73 (s, 2H), 7.09 (d, 1H, J=8.07)
13C-NMR (100 MHz, CDCl3) δ 42.3, 49.5, 55.3, 83.0, 110.4, 110.5, 112.2, 113.4, 116.2, 118.5, 119.1, 129.9, 150.3, 156.4, 161.8, 162.1, 171.6, 172.3
HRMS (ESI+) m/z Calcd for [M+H]+ 721.09517, Found, 721.09928 (4.12 mmu)
【0038】
例2
【化4】

【0039】
化合物1(100 mg)、ジエチルイミノジアセテート(130 mg)、及びパラホルムアルデヒド(56.6 mg)をアセトニトリル(3.5 ml)と水(1.5 ml) の混合溶液に懸濁して24時間加熱還流した。室温まで放冷後に溶媒を減圧留去した。残渣を1N 水酸化カリウム/メタノール溶液に溶解し、35℃で3時間攪拌した。2N 希塩酸で反応液を中和した後に溶媒を減圧留去した。残渣をHPLCにより精製して黄色粉末状の化合物5を得た(131.2 mg、2工程で収率81%)。
【0040】
化合物5(51.2 mg)をアセトニトリルに溶解しジイソプロピルエチルアミン(DIEA、352.5 mg)及びブロモメチルアセテート(421.2 mg) を加えてアルゴン雰囲気下で48時間攪拌した。酢酸で中和した後に溶媒を減圧留去し、残渣をHPCLにより精製して淡黄色粉末状の化合物6(15.4 mg)を得た。
化合物6(15 mg)をジクロルメタン:メタノール(1:1)の混合溶媒3 mlに溶解し10% Pd-Cを220 mg加えて水素雰囲気下で接触還元を行った。反応終了後に触媒を濾去して溶媒を減圧留去した。残渣をHPCLにより精製して淡黄色粉末状の化合物7(DCI-DA Cal-AM、4.9 mg、収率33.4%) を得た。
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ 2.08 (s, 12H), 2.17 (s, 6H), 3.75 (s, 8H), 4.34 (m, 4H), 6.70 (s, 8H), 5.78(s, 4H), 6.49 (d, 2H, J=8.07), 6.94 (s,2H) 8.50 (d, 1H, J=8.79)
HRMS (ESI+) m/z Calcd for [M+Na]+ 1205.17807, Found, 1205.17779 (-0.28 mmu)
【0041】
例3
DCl-DA Calについて活性酸素種(ROS)及び活性窒素種(RNS)との反応性の検討を行った。DCl-DA Calに活性酸素種及び活性窒素種を添加した後の蛍光スペクトルを図1に示す。DCl-DA Calはパーオキシナイトライト及び一酸化窒素などの活性窒素種を添加した場合には濃度依存的に大きな蛍光上昇を与えたが(図中、(a)及び(b))、活性酸素種を加えた場合には顕著な蛍光上昇を与えなかった。この結果から、DCl-DA Calは活性窒素種を特異的に検出可能な蛍光プローブであることが示された。
【0042】
DCl-DA Calはほぼ無蛍光性(Φf=0.013)の物質であり、活性窒素種と特異的に反応してトリアゾール化合物を与えるが、このトリアゾール化合物は生理的pHにおいて非常に大きな蛍光強度を与え(Φf=0.63)、かつ生理的条件下で安定である。また、このトリアゾール化合物は細胞内滞留性に極めて優れている。従って、DCl-DA Calを用いることにより、従来の活性窒素測定用蛍光プローブでは達成できなかった長時間にわたる細胞内活性窒素種の観察が可能になる。
【0043】
活性窒素種を添加した場合に生成する蛍光物質がトリアゾール化合物(DCl-triazole calcein)であることを1H-NMR及びHRMSにより確認した。
1H-NMR (300 MHz, CD3OD) δ 3.76 (s, 8H), 4.53 (s, 4H), 6.78 (s, 2H), 7.19 (d, 1H, J=8.79), 8.31 (d, 1H, J=8.79)
HRMS (ESI+) Calcd for [M-H]- 730.05912, Found, 730.05731 (-1.80 mmu)
【化5】

【0044】
例4
HeLa細胞に用いて細胞外から一酸化窒素を添加し、細胞内の一酸化窒素を測定した。本発明の化合物として細胞膜透過性に優れるDCI-DA Cal-AMを用いた。この化合物は細胞内に取り込まれた後にエステルが加水分解されてDCl-DA Calを与え、このDCl-DA Calが一酸化窒素と反応して上記のトリアゾール化合物を与える。比較化合物として従来の一酸化窒素測定用試薬であるDAF2-DA(Kojima H. et al., J. Biol. Chem., 2003, 278, 3170-3175)を用いた。
【0045】
HeLa細胞にDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AM(10μM; 共溶媒として0.1% DMSO)を30分間ロードした。化合物を含む培地を除き、フレッシュな培地(DMEM)をディッシュに加えて顕微鏡下にセットした。NOC 13を最終濃度100μMになるように添加して5分ごとに撮影した。結果を図2に示す。DAF2-DAを用いた場合には細胞内からの化合物の漏出によるバックグランドの蛍光上昇が認められたが、DCl-DA Cal-AMを添加した場合にはバックグラウンドの蛍光上昇は認められなかった。
【0046】
一酸化窒素と反応して細胞内において生成するトリアゾール化合物の細胞外漏出の様子を観察した。漏出が膜損傷によるものではないことを確かめるためにcalcein-AM(1μM; 共溶媒として0.1% DMSO)を用いた。HeLa細胞にDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AM(10μM; 共溶媒として0.1% DMSO)を30分間ロードした。化合物を含む培地を除き、NOC 13 (最終濃度:100μM) を加えて10分置いた後に2回洗浄した。60分ごとに撮影して蛍光強度を測定した。結果を図3に示す。DCl-DA Cal-AMを添加した場合にはDAF2-DAを添加した場合に比べて明らかに蛍光性物質の細胞外漏出が少なかった。
【0047】
次に、FACSを用いて蛍光体の漏出の比較を行った。HeLa細胞にDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AM(10μM; 共溶媒として0.1% DMSO)を30分間ロードした。化合物を含む培地を除き、NOC 13 (最終濃度:100μM) を加えて20分静置した。NOC 13を含む培地を除き、FACSにより蛍光強度の変化を測定した。結果を図4に示す。これらの結果から、DCl-DA Cal-AMの添加により細胞内で生成する上記のトリアゾール化合物が高い細胞内滞留性を有することが示された。
【0048】
例5
実際に細胞が産生する微量なNOの可視化を試みた。ウシ大動脈内皮細胞(Bovine aortic endothelial cells: BAEC)細胞はブラジキニン刺激によりNOを産生することが知られている。この細胞を用いてDCl-DA Cal-AM及び従来の蛍光プローブであるDAF2-DAにより一酸化窒素のイメージングを行った。
【0049】
BAEC細胞にDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AM(10μM; 共溶媒として0.1% DMSO)を60分間ロードした。化合物を含む培地を除き、30分間ポストインキュベートを行った。フレッシュな培地(HBSS)に置き換えて顕微鏡下で観察を開始した(0 sec)。200 secの時点でブラジキニン(最終濃度0.1μM)を加えて蛍光変化を観察した(200〜2000 sec)。細胞内に脱エステル化合物が存在していることを確認するため2000 secの時点でNOC 7 (最終濃度100μM)を加え、人工的に一酸化窒素を発生させて蛍光変化を観察した(2000〜2300 sec)。
【0050】
結果を図5に示す。DCl-DA Cal-AM及びDAF2-DAの両者でBAEC細胞の産生する一酸化窒素を可視化することができたが、DAF2-DAを用いた場合にはかろうじて蛍光の上昇が可視化できている程度であった。一方、DCl-DA Cal-AMを用いた場合には明らかな蛍光強度上昇が認められた(特に2000 secにおける結果を参照)。この結果は、DAF2-DAの脱エステル体から生成するトリアゾール化合物(蛍光性化合物)が細胞内から速やかに漏出していくのに対し、DCl-DA Cal-AMの脱エステル体から生成するトリアゾール化合物(蛍光性化合物)が長期にわたって細胞内に留まることを示している。NOC 7を加えて人工的に一酸化窒素を発生させた場合においてはいずれの場合にも蛍光強度の上昇が観察された(2300 secの結果を参照)。
【0051】
この結果は、DCl-DA Cal-AM及びDAF2-DAがいずれも細胞内に十分取り込まれていること、及びBAEC細胞など生細胞においては一酸化窒素が極めて微量ずつ発生しており、細胞内に取り込まれたごく一部のDCl-DA Cal-AM及びDAF2-DAのみが検出反応に関与していることを示すものであり、長時間にわたって細胞外に漏出されずにイメージングを行うことができるDCl-DA Cal-AM及びその脱エステル体が長時間にわたる細胞内一酸化窒素の測定に極めて有用であることを示している。
【0052】
図6は0〜2000 sec (NOC7を加える前まで)における蛍光強度の平均値の変化を比率で示した図である。DCl-DA Cal-AMでは蛍光強度が時間経過とともに上昇し続けていくのに対して、DAF2-DAでは600 secを過ぎたあたりから蛍光強度が減弱していくことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】DAl-DA Calと活性酸素種又は活性窒素種との反応を示した図である。(a)一酸化窒素;(b)パーオキシナイトライト;(c)ヒドロキシラジカル;(d)次亜塩素酸;(e)スーパーオキサイド;(f)一重項酸素;(g)過酸化水素の結果を示す。
【図2】一酸化窒素添加後のDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AMによるイメージングの結果を示した図である。
【図3】一酸化窒素添加後のDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AMの細胞内からの漏出の様子を示した図である。
【図4】一酸化窒素添加後のDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AMの細胞内からの漏出の様子をFACSにより測定した結果を示した図である。
【図5】BAEC細胞にDAF2-DA又はDCl-DA Cal-AMを添加して一酸化窒素のイメージングを行った結果を示した図である。
【図6】図5における0〜2000 sec (NOC7を加える前まで)における蛍光強度の平均値の変化を比率で示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I):
【化1】

〔式中、R1及びR2はそれぞれベンゼン環上の隣接した位置に置換するアミノ基を示し、ただしいずれか一方はモノC1-6アルキル置換アミノ基又は無置換アミノ基を示し、他方は無置換アミノ基を示し;R3及びR4はそれぞれ独立にハロゲン原子を示し;R5及びR6はそれぞれ独立に水素原子、アシル基、又はアシルオキシC1-6アルキル基を示し;R7及びR8はそれぞれ独立に-(CH2)p-N(R9)(R10)(式中、pは1ないし4の整数を示し、R9及びR10はそれぞれ独立に-(CH2)n-COOH(式中、nは1ないし4の整数を示す)で表される基を示す)を示す〕で表される化合物、その塩、又はそのエステル。
【請求項2】
R1及びR2がそれぞれベンゼン環上の隣接した位置に置換する無置換アミノ基であり、R3及びR4が塩素原子であり、R5及びR6がそれぞれ独立に水素原子又はアセトキシメチル基であり、R7及びR8が-CH2-N(CH2-COOH)2で表される基である請求項1に記載の化合物、その塩、又はそのエステル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の化合物、その塩、又はそのエステルを含む活性窒素種測定用試薬。
【請求項4】
活性窒素種が一酸化窒素である請求項3に記載の試薬。
【請求項5】
下記の一般式(II):
【化2】

〔式中、R11 及びR12 は互いに結合してベンゼン環上の隣接した位置に環を形成する-N=N-N(R19)- (式中、R19 は水素原子又はC1-6アルキル基を示す)で表される基を示し;R13及びR14はそれぞれ独立にハロゲン原子を示し;R15及びR16はそれぞれ独立に水素原子、アシル基、又はアシルオキシC1-6アルキル基を示し;R17及びR18はそれぞれ独立に-(CH2)s-N(R19)(R20)(式中、sは1ないし4の整数を示し、R19及びR20はそれぞれ独立に-(CH2)t-COOH(式中、tは1ないし4の整数を示す)で表される基を示す)を示す〕で表される化合物、その塩、又はそのエステル。
【請求項6】
活性窒素種の測定方法であって、
(1) 請求項1に記載の一般式(I)で表される化合物、その塩、又はそのエステルを活性窒素種と反応させる工程;及び
(2) 上記工程(1) において生成する請求項5に記載の一般式(II)で表される化合物、その塩、又はそのエステルを検出する工程
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133858(P2010−133858A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311221(P2008−311221)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度 独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】