説明

活性薬剤に対する結晶性微粒子表面の親和性を増大させることに基づく薬物処方の方法

活性薬剤による微粒子上の好ましい会合を容易にするために、微粒子の表面特性を変えることによって活性薬剤を用いて結晶性微粒子をコーティングするための方法が、提供される。本開示の方法によって変えられる表面特性の型は、静電特性、疎水特性、および水素結合特性によるものを含む。本発明は、静電的に駆動される会合、疎水的に駆動される会合、または水素結合によって駆動される会合を使用して、結晶性粒子(例えば、フマリルジケトピペラジン(FDKP)微粒子)を活性薬剤(例えば、タンパク質)によってコーティングするための改善された方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本願は、米国仮特許出願第60/717,524号(2005年9月14日出願)、および米国仮特許出願第60/744,882号(2006年4月14日出願)(これらの内容全体は、その全体が本明細書によって参考として援用される)に基づく、米国特許法第119条(e)の下における利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、薬物処方の領域における発明であり、そして特に、活性薬剤を結晶性微粒子の表面上にコーティングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
治療剤の送達は、主要な懸案事項である。経口投与は、投与の容易さ、患者のコンプライアンス、およびコストの減少に起因して、送達の最も一般的でありかつ好ましい経路の1つである。しかし、この経路の不利益としては、治療薬の低いかまたは変動する効力、および治療薬の非効率的な吸収(adsorption)が挙げられる。これは、特に、送達される化合物が胃腸管において直面する条件下で不安定である場合に明白である。種々のコーティング法および封入法が、当該分野で開発されているが、この問題への取り組みにおいて有効であるものはわずかしかない。さらに、胃腸管の条件で活性がより低い傾向にあり、そして有効量で血流中に吸収されるためにより高い投薬量で投与されなければならない治療用化合物が、存在する。
【0004】
広範な薬物処方系が、最適な薬物送達の懸案事項に取り組むために開発されており、そしてそれは、キャリアとして作用するマトリックス中への薬物の組み込みに基づく。薬物処方において考慮される因子としては、その薬物処方系が、非毒性でありかつ送達される薬物と非反応性であり、製造に関して経済的であり、容易に利用可能な成分から形成され、そして最終的な組成ならびに安定性および放出速度を含む物理的特性に関して合致する必要性が挙げられる。薬物送達系は正常な生理学的プロセスによって身体から容易に除去される材料から形成されることがまた、好ましい。
【0005】
微粒子薬物処方物は、多くの投与経路において使用され得るが、それは、特に、肺送達について十分に適している。全身効果を有する薬剤の送達に関する肺の利点としては、大量の表面積および粘膜表面による取り込みの容易さが挙げられる。特許文献1(本明細書中に参考として援用される)は、ジケトピペラジン微粒子およびポリマーベースの微粒子の形成に基づく、薬物肺送達系を記載する。
【特許文献1】米国特許第6,071,497号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本方法は、結晶性微粒子表面上に活性薬剤のコーティングを形成することを提供する。一般に、微粒子は、その微粒子の表面特性を改変することによって活性薬剤によってコーティングされることにより、その活性薬剤が、溶液中に保持されるものよりも高いその微粒子表面に対する親和性を有する。
【0007】
本発明は、静電的に駆動される会合、疎水的に駆動される会合、または水素結合によって駆動される会合を使用して、結晶性粒子(例えば、フマリルジケトピペラジン(FDKP)微粒子)を活性薬剤(例えば、タンパク質)によってコーティングするための改善された方法を提供する。本発明において、液体は、必要に応じて、(活性薬剤でコーティングされた微粒子の回収のために)濾過または乾燥によって除去され得るか、または異なる溶液媒体に交換することによって置換され得る。任意の場合において、液体媒体の除去は、活性薬剤−微粒子複合体の形成において必須の工程ではない。本発明は、上記結晶性微粒子の表面特性を変化させる活性薬剤の上記微粒子への吸着を達成することに基づく、微粒子のコーティングのための方法を開示する。
【0008】
本発明の特定の実施形態において、懸濁物中の予め形成された結晶性微粒子を活性薬剤によってコーティングする方法が、提供され、その方法は、i)上記活性薬剤と上記結晶性微粒子との間のエネルギー的相互作用を、溶媒除去とは関係なく調整する工程;およびii)上記活性薬剤を上記微粒子の表面上に吸着させる工程を包含する。いくつかの実施形態において、上記懸濁物中の予め形成された結晶性微粒子を活性薬剤によってコーティングする方法は、活性薬剤と微粒子との間の相互作用に対して実質的な効果を伴わずに上記溶媒を除去または交換する工程をさらに包含し得る。
【0009】
本発明の他の特定の実施形態において、上記微粒子を活性薬剤によってコーティングする方法は、上記微粒子の表面特性を改変することによって達成される。上記微粒子の表面特性の改変は、溶液の条件を変えることによって達成される。これらの条件は、非限定的な様式で、pHを変化させることを含む。本発明の他の実施形態において、上記微粒子の表面特性は、1)上記溶液の極性を変えること;2)一価イオンまたは多価イオンの添加;および3)上記微粒子の化学的誘導体化によって改変される。
【0010】
なお別の実施形態において、本発明は、上記活性薬剤を上記微粒子の懸濁物の流体相に溶解し、次いでそのpHを変化させる工程をさらに包含する。流体相に上記活性薬剤を溶解するこのような工程は、固体の溶解を指す。さらに、上記活性薬剤を溶解するこのような工程は、固体を添加することに加えて、上記活性薬剤のより濃縮された溶液の添加を指す。
【0011】
さらになお別の実施形態において、上記微粒子懸濁物のpH条件は、活性薬剤と微粒子との間の活性薬剤の添加の前または後に、相互作用を支援するために変えられる。
【0012】
他の実施形態において、上記活性薬剤は、上記微粒子表面との1つよりも多い型のエネルギー的に好ましい相互作用を有する。本発明の別の特定の実施形態において、上記活性薬剤は、インスリンまたはそのアナログである。
【0013】
本発明の別の特定の実施形態において、上記活性薬剤と微粒子との間の好ましい相互作用をもたらす表面特性は、静電特性、疎水特性、および水素結合特性からなる群より選択される。
【0014】
本発明の別の実施形態において、上記微粒子は、有孔であり、そして上記溶液のバルク流体(bulk fluid)に到達可能(accessible)な内部表面を有する。1つの実施形態において、上記微粒子は、ジケトピペラジン(例えば、フマリルジケトピペラジン)を含むが、これに限定されない。
【0015】
本発明の実施形態において、上記コーティングする方法は、上記微粒子表面上に活性薬剤の単一層を産生する。本発明の他の実施形態において、上記単一層は、連続的である。本発明の他の実施形態において、単一層中の活性薬剤は、好ましい配置(orientation)を有し得る。
【0016】
なお別の実施形態において、懸濁物中の予め形成された結晶性微粒子をインスリンによってコーティングする方法が、提供され、その方法は、上記活性薬剤と上記結晶性微粒子との間のエネルギー的相互作用を、溶媒除去とは関係なく調整する工程;および上記インスリンを上記微粒子の表面上に吸着させる工程を包含する。
【0017】
溶媒とは、本明細書中で使用される場合、上記活性薬剤および微粒子が「浸される(bathed)」流体媒体をいう。それは、全ての成分が溶けた状態であることを必要とすると解釈されるべきではない。実際に、多くの場合において、それは、上記微粒子が懸濁される液体媒体をいうために使用され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
添付の図面は、本明細書の一部を形成し、そして本明細書中に開示される実施例の特定の局面をさらに示すために含まれる。本発明は、本明細書中で提供される特定の実施形態の詳細な説明と組み合せてこれらの図面の1つ以上を参照することによって、より十分に理解され得る。
【0019】
(送達される薬剤)
上記結晶性微粒子上にコーティングされる物質は、本明細書中で活性薬剤と称される。活性薬剤のクラスの例としては、治療的、予防的、および/または診断的な有用性を有する薬学的組成物、合成化合物、および有機高分子が挙げられる。
【0020】
一般に、任意の形態の活性薬剤は、結晶性微粒子の表面上にコーティングされ得る。これらの物質は、有機高分子(核酸が挙げられる)、合成有機化合物、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、多糖類および他の糖、ならびに脂質であり得る。ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドは全て、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の鎖である。ペプチドは、一般に、30個未満のアミノ酸残基であると見なされるが、30個より多くのアミノ酸残基を含んでもよい。タンパク質は、30個より多くのアミノ酸残基を含み得るポリマーである。当該分野において公知であり、そして本明細書中で使用されるような、用語「ポリペプチド」とは、ペプチド、タンパク質、または複数のペプチド結合を有する任意の長さであるが、一般に、少なくとも10アミノ酸を含む、アミノ酸の任意の他の鎖をいい得る。上記コーティング処方物において使用される活性薬剤は、種々の生物学的に活性なクラス(例えば、血管作動性薬剤、神経刺激性薬剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、細胞傷害性薬剤、抗生物質、抗ウイルス剤、抗原、および抗体)に納まり得る。より具体的には、活性薬剤としては、以下が挙げられ得るが、これらに限定されない:インスリンおよびそのアナログ、成長ホルモン、副甲状腺ホルモン(PTH)、グレリン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)、テキサスレッド(Texas Red)、アルキン類、シクロスポリン、クロピオグレル(clopiogrel)およびPPACK(D−フェニルアラニル−L−プロリル−L−アルギニンクロロメチルケトン)、抗体およびそのフラグメント(ヒト化抗体またはキメラ抗体;単独かまたは他のポリペプチドに融合されたF(ab)、F(ab)、または単鎖抗体;癌抗原、サイトカイン、感染因子、炎症メディエーター、ホルモン、および細胞表面抗原に対する治療用モノクローナル抗体または診断用モノクローナル抗体が挙げられるが、これらに限定されない)。腫瘍抗原に対する抗体の非限定的な例としては、抗SSX−241−49(滑膜肉腫、Xブレイクポイント2)、抗NY−ESO−1(食道腫瘍関連抗原)、抗PRAME(黒色腫の優先的に発現される抗原)、抗PSMA(前立腺特異的膜抗原)、抗Melan−A(黒色腫腫瘍関連抗原)、抗チロシナーゼ(黒色腫腫瘍関連抗原)、および抗MOPC−21(骨髄腫プラスマ細胞タンパク質)が挙げられる。
【0021】
(送達系−結晶性微粒子)
本質的に、用語「微粒子」とは、正確な外部構造または内部構造に関係なく、約0.5〜1000μmの直径を有する粒子をいう。微粒子の広範な分類内において、「マイクロスフェア」とは、均一な球形状を有する微粒子をいう。結晶性微粒子とは、本明細書中で使用される場合、結晶の内部構造を有するが、必ずしも結晶の外部形態を有さず、そして空間格子における原子の規則的な配列を有する微粒子をいう。イオン化可能な結晶表面とは、電荷を保有するためのさらなる能力を有する結晶性微粒子をいう。
【0022】
好ましくは、上記結晶性微粒子を含む化学物質は、上記活性薬剤と可逆的に反応し、送達され、非毒性であり、そして少なくともげっ歯類およびヒトによって代謝されない。さらに、好ましい微粒子の結晶構造は、活性薬剤によるコーティングのプロセスにおいて実質的に破壊されない。上記結晶性微粒子の組成は、どのような型の化学的相互作用が活性薬剤の上記微粒子表面への吸着を駆動するために操作され得るかを、決定する。
【0023】
多くの物質が、結晶性微粒子を形成するために使用され得る。外表面を有するものとして微粒子は、その外表面の特性が、コーティングプロセスにおいて操作され得る。結晶性微粒子が形成され得る代表的な物質としては、芳香族アミノ酸、規定されたpH範囲において限定された溶解性を有する塩(例えば、ジケトピペラジンおよびモルホリンサルフェート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
米国特許第5,352,461号および同第5,503,852号(その全体が本明細書中に参考として援用される)は、低いpHにおいて安定であり、そして血液または小腸のpHにおいて溶解するジケトピペラジン誘導体(例えば、3,6−ビス[N−フマリル−N−(n−ブチル)アミノ](フマリルジケトピペラジンまたはFDKPともいわれる;(E)−3,6−ビス[4−(N−カルボキシ−2−プロペニル)アミドブチル]−2,5−ジケトピペラジンとも称される))からのジケトピペラジン(DKP)微粒子の形成に基づく薬物送達系を記載する。上記の特許において考察されるように、送達される薬物は、薬物(負荷量)の存在下でDKP微粒子を形成することによってジケトピペラジン粒子と結合されるか、またはジケトピペラジン粒子に関して負荷される。ジケトピペラジン構造エレメントまたはその置換誘導体(ジケトモルホリンおよびジケトジオキサンが挙げられるが、これらに限定されない)のうちの1つに基づく系は、所望のサイズ分布範囲およびpH範囲および良好な負荷量許容性を有する微粒子を形成する。広範な安定であり再現可能な特徴は、置換基の適切な操作によってもたらされ得る。
【0025】
本発明において企図され得る他のジケトピペラジンとしては、3,6−ジ(4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン;3,6−ジ(スクシニル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン(スクシニルジケトピペラジンまたはSDKP);3,6−ジ(マレイル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン;3,6−ジ(シトラコニル(citraconyl)−4−アミノブチル)−2−5−ジケトピペラジン;3,6−ジ(グルタリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン;3,6−ジ(マロニル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン;3,6−ジ(オキサリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジンおよびそれらからの誘導体が挙げられ得る。ジケトピペラジン塩はまた、本発明において利用され得、そして、例えば、薬学的に受容可能な塩(例えば、Na、K、Li、Mg、Ca、アンモニウム、またはモノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウムまたはトリアルキルアンモニウム(トリエチルアミン、ブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、またはピリジンなどから誘導されるようなもの))を含み得る。上記塩は、単一塩(mono−salt)、二塩(di−salt)、または混合型の塩であり得る。より高次の塩もまた、R基が1つより多い酸基(acid group)を含むジケトピペラジンに関して企図される。本発明の他の局面において、上記薬剤の塩基性形態は、薬物がジケトピペラジンの対カチオンであるような上記ジケトピペラジンの薬物塩を形成するために、上記ジケトピペラジンと混合され得る。
【0026】
米国特許第6,444,226号、および同第6,652,885号(各々は、その全体が本明細書中に参考として援用される)は、活性薬剤の溶液が添加される水性懸濁物中のDKPの微粒子を調製および提供すること、ならびにその後の、活性薬剤のコーティングを有する微粒子を産生するためにその懸濁物を凍結乾燥する重要な工程を記載する。この処方についての基礎は、活性薬剤による微粒子のコーティングが凍結乾燥による液体媒体の除去によって駆動されることである(米国特許第6,440,463号(これは、その全体が本明細書によって参考として援用される)も参照のこと)。先行技術における教示とは対照的に、本発明は、溶媒除去の前に活性薬剤と上記微粒子との会合を調整するための手段を提供する。したがって、体積物理的(bulk physical)方法(例えば、濾過または沈降)または蒸発による方法(例えば、凍結乾燥または噴霧乾燥)による液体媒体の除去は、かなりの負荷をもたらし得る。
【0027】
(結晶性微粒子の制御されたコーティング)
制御されたコーティングとは、結晶性微粒子の表面上に活性薬剤を吸着させる指向性のプロセスをいう。そのコーティングプロセスは、溶液の条件(例えば、pH、温度、極性、イオン強度、および共溶媒)を変化させること、一価イオンまたは多価イオンへの複合体形成、あるいは化学的誘導体化のいずれかによって、流体懸濁物中の結晶性微粒子の表面特性を変化させる工程を包含する。活性薬剤の添加の前または後のいずれかにおいて上記微粒子の表面特性を変えることは、活性薬剤とのその微粒子の化学的相互作用に影響を及ぼし、それによって活性薬剤のその結晶性微粒子への吸着を生じる。上記微粒子と活性薬剤との間の化学的相互作用は、吸着を駆動し、そしてその微粒子の表面上にその活性薬剤の単一層をもたらす。一旦活性薬剤の分子が吸着されると、上記微粒子表面の部分は、特定の表面の点におけるさらなる活性薬剤のさらなる相互作用および吸着に曝されない。得られた単一層は、連続的(到達可能な表面にわたって、吸着された活性薬剤分子の間に隙間がない)または非連続的(吸着された活性薬剤分子の間に露出した微粒子表面の隙間がある)にいずれかであり得る。
【0028】
(活性薬剤の微粒子上への吸着)
上で考察されるように、上記活性薬剤の上記微粒子への吸着は、その活性薬剤のその微粒子への単一層形成(コーティング)を生じる。しかし、例えば、結晶性微粒子への活性薬剤(例えば、インスリン)の吸着における役割にて、1つより多い機構が、存在する。
【0029】
上記微粒子をコーティングする活性薬剤(例えば、インスリン)の単一層は、上記微粒子上へのインスリンの負荷プロセス1つの段階であるが、単量体の層および多量体の層の両方がその系のエネルギー論に基づいて形成され得るので、必ずしもその負荷プロセスの最終的な結果ではない。
【0030】
許容された溶解性の条件(例えば、低いインスリン濃度および/または低いpH(実質的にpH5.0未満))下において、インスリンと上記FDKP粒子表面との間の引力は、インスリンの自己引力(self−associative force)よりもずっと大きい。したがって、インスリンの上記微粒子上へのコーティングは、単一層の様式で生じ、そして飽和は、微粒子表面上への凝集または多層形成を伴わずに観察される(実施例6を参照のこと)。溶解性が高いインスリン濃度に起因して飽和に達し、そして/またはpHが5.0に接近する(野生型インスリンについての最小の溶解性)ので、インスリンの自己会合は、よりエネルギー的に好ましくなる。したがって、コーティングは、飽和した単一層の時点を過ぎて進行し得、そしてインスリンのさらなる層が、その粒子に付加され得る。以下の自己会合の2つの形態が、認識され得る:多量体化および凝集。多量体化は、特定の分子間相互作用および固定された化学量論によって特徴付けられる。凝集は、不特定の分子間相互作用および規定されていない化学量論によって特徴付けられる。一般的にいえば、多量体の活性薬剤は、多量体の状態で吸着され得るか、または単量体もしくはより低次の多量体へと解離され得、かつその状態で表面に吸着され得る。本発明者らの現在の理解に従って、本開示の実施例において使用される一般的な条件下(例えば、酢酸におけるインスリンの解離)において、インスリンのさらなる層の堆積が、非六量体インスリンの凝集として進行する。
【0031】
(微粒子をコーティングするための方法)
結晶性微粒子(例えば、予め形成された結晶性微粒子)を活性薬剤によってコーティングするための手順は、以下の通りに一般的に記載される:沈殿、または別の方法によって予め形成された結晶性微粒子は、液体媒体(例えば、水)に懸濁され;そしてその媒体は、活性薬剤の添加の前または後のいずれかにおいて粒子の表面を変えるために調整される。この時点において、上記活性薬剤は、上記微粒子表面に吸着され、そして時間間隔(例えば、1分間未満、1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、または10分間;好ましくは、1分間未満〜少なくとも5分間)の後、その負荷プロセスは完了する。上記液体媒体は、濾過、遠心分離、凍結乾燥または噴霧乾燥を含む任意の手段によって除去されても、媒体の交換によって置換されてもよい。吸着は、以下の2つの実験的アプローチのいずれかによって確認され得る:1)濾液または上清中に活性薬剤が著しい量で存在しないことを示す工程、および/あるいは2)固相中の活性薬剤の存在を示す一方で、活性薬剤が、上記微粒子の非存在下で同一の手順を採る場合に沈殿しないことを示す工程。
【0032】
(微粒子表面特性の操作)
本明細著中の他の場所で考察されるように、上記微粒子の表面特性は、種々の手段によって操作され得る。操作され得る微粒子表面特性としては、静電特性、疎水特性、および水素結合特性が挙げられるが、これらに限定されない。種々の実施形態において、これらの操作は、上記活性薬剤の非存在下または存在下において実行されるか、あるいは上記微粒子および上記活性薬剤を一緒に混合する前または後に実行される。上記操作が、上記活性薬剤の存在下で、例えば、溶液の条件を変えることによって行われる場合、上記活性薬剤が上記微粒子の表面に対するその親和性を改変する能力に対する効果が、存在し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、上記微粒子のコーティングは、表面特性の操作および上記活性薬剤の特性の改変を包含し得る。後者に関する方法は、本願と同じ年月日に出願された同時係属中である発明の名称「METHOD OF DRUG FORMULATION BASED ON INCREASING THE AFFINITY OF ACTIVE AGENTS FOR CRYSTALLINE MICROPARTICLE SURFACES」の米国特許出願第_/_(代理人整理番号51300−00035)(その全体は本明細書中に参考として援用される)に開示される。
【0033】
静電相互作用は、電荷が互いにより接近するにつれてより強力になる、反対の電荷間の引力、または同じような電荷間の反発力である。静電相互作用は、イオン性溶液中の荷電された物質(charged body)の間の相互作用を理解することにおいて、重要な成分を構成する。例えば、溶媒中に分散したコロイド粒子の安定性は、反発性の静電相互作用と誘引性のファンデルワールス相互作用との間の競合を考慮することによって説明され得る。また、上記微粒子表面の化学的官能性(例えば、COOH、NHなどであるが、これらに限定されない)は、イオン化された活性薬剤に対する対イオンとして利用され得ることにより、上記活性薬剤/粒子複合材は塩を含む。静電相互作用はまた、粒子間の相互作用および付着を考慮する場合に重要な相互作用である。
【0034】
周囲の溶液系のpHを変えることは、懸濁物中のイオン化可能な結晶性微粒子の静電特性を変化させ得る。実施例3において示される通り、溶液のpHを変化させることは、活性薬剤が上記微粒子表面に吸着するように微粒子のイオン化を変化させる。具体的には、実施例4は、FDKP(3,6−ビス[N−フマリル−N−(n−ブチル)アミノ]2,5−ジケトピペラジン)から構成される微粒子がイオン化可能であることを示す。上記微粒子は、pH3.5未満で水に不溶性であるが、溶解性は、おそらく上記カルボキシル基のイオン化に起因してpH3.5とpH5.0との間において迅速に増大する。上記FDKP微粒子は、より高いpHにおける完全な溶解の前にpH5において部分的にイオン化され、このことは、超音波分光学によって間接的に観察され得る。実施例5は、タンパク質の上記FDKP微粒子表面上への制御されたコーティングを示す。1つの実施形態において、ジケトピペラジン微粒子は、酸性溶液に懸濁され、活性薬剤は、その懸濁物に添加され、そしてその溶液のpHは、その活性薬剤および微粒子が一緒に混合された後に上げられる。そのpHの増大は、上記活性薬剤がその微粒子に対して溶媒に対するよりも高い親和性を有する環境をもたらすために、上記微粒子の表面特性を変える。
【0035】
あるいは、上記微粒子懸濁物のpHは、上記溶液に活性薬剤を添加する直前に上げられ得る。上記微粒子の表面電荷特性は、活性薬剤が溶解状態のままであるよりも高い親和性をその微粒子に対して有するようにpHの変化によって変えられ、そして添加の際にその微粒子表面に吸着される。
【0036】
実施例6および7は、pH条件の操作によるインスリンのFDKP粒子上への負荷を示す。最終的に、タンパク質の吸着による微粒子の飽和および単一層の形成が、実施例6に記載される。
【0037】
(微粒子の表面を操作する他の方法)
静電特性に加えて、微粒子表面の他の特性が、活性薬剤の吸着を制御するために探索され得る。イミダゾール、ピリジン、Schiff塩基、ケトン、カルボン酸バイオイソスター(bioisostere)、アミド、または複数の構造において存在し得る他の官能基を有する化合物を含む微粒子は、表面特性を改変するために操作され得た。
【0038】
疎水的相互作用は、非極性基の水における不溶解性に起因する、水溶液中での非極性基の互いとの会合である。疎水的相互作用は、多くの分子プロセス(構造安定化(単一分子、2分子または3分子からなる複合体、またはより大きい集合体の構造安定化)および動力学が挙げられるが、これらに限定されない)に影響を及ぼし得、そしてタンパク質−タンパク質結合プロセスおよびタンパク質−リガンド結合プロセスに対して重要に寄与し得る。これらの相互作用はまた、タンパク質の折り畳みの初期の事象において役割を果たし、そして複合体集合および自己集合現象(例えば、膜の形成)に関与することが公知である。
【0039】
疎水的相互作用は、ヒスチジンから構成される結晶性微粒子のプロトン化を変化させることによって操作され得る。上記ヒスチジンをプロトン化することは、上記結晶性微粒子の求核性を減少させ、そして正の電荷を与える。
【0040】
水素結合相互作用は、特に、分子間における強力な双極子−双極子の力;極性結合(例えば、H−F、H−OまたはH−N)中の水素原子は、電子の共有されていない対を有する(代表的に、別の分子上のF原子、O原子、またはN原子)、隣接する電気的陰性の分子またはイオンによる引力を受け得る。水素結合は、水の固有の特性を担い、そして生物学的分子の組織化(特に、タンパク質およびDNAの構造に影響すること)において非常に重要である。
【0041】
本発明において、上記微粒子表面の水素結合特性は、化学的誘導体化によって制御され得る。水素結合のドナー/アクセプターは、上記微粒子表面を変えるために化学的に添加され得る。例えば、N−H結合中の水素は、C=O結合中の酸素への水素結合を受け得る。N−HがN−CHによって置換される場合、この特定の水素結合相互作用は、除去される。同様に、C=C基によるC=O基の置換もまた、この特定の結合相互作用を除去する。
【0042】
イオン化可能な芳香族基を含む表面を有する微粒子は、イオン化された場合に極性であるが、それらのイオン化されていない状態において疎水性である。プロトン化された表面によって開始すること、および粒子表面のイオン化を減少させるように溶液の条件を操作することは、疎水性または芳香族の活性薬剤に、上記微粒子表面をコーティングさせる。
【0043】
ケトン表面基を有する微粒子は、溶液の極性を変化させることによって操作され得た。溶媒の極性を減少させることによって(水溶液に低い極性の有機溶媒を添加することによって)、エノール形態は、上記粒子表面に優勢な化学種として作製される。このエノール形態が、水素結合のドナーであるのに対して、ケト形態は、水素結合のアクセプターである。窒素含有薬物の上記微粒子表面上への吸着は、この様式で促される。
【0044】
pH誘導性または温度誘導性の異性化を受ける表面基を有する微粒子がまた、薬物分子を吸着するために、溶液の条件を操作することによって誘導され得る。これらの表面の場合において、異性化に起因する直鎖状の表面基におけるねじれの導入は、微粒子表面におけるその基の移動性(流動性)を増大させる。これは、その表面に活性薬剤との接触を、整った表面と可能でであるよりも多く形成させる。上記活性薬剤とのさらなる相互作用が、それぞれ好ましい場合、正味の相互作用エネルギーは、好ましくなり、そして薬物は、上記微粒子表面に吸着する。
【0045】
(流体媒体除去の技術)
上記結晶性表面の活性薬剤による制御されたコーティングの後における溶媒の除去は、沈殿、濾過、または乾燥を含むが、これらに限定されない方法によって達成され得る。乾燥技術としては、凍結乾燥および噴霧乾燥が挙げられるが、これらに限定されない。これらの技術は、当業者に公知である。本発明の1つの実施形態において、溶媒は、噴霧乾燥によって除去される。ジケトピペラジン微粒子を噴霧乾燥する方法は、例えば、米国仮特許出願第60/776,605号(2006年2月22日出願)(これがジケトピペラジン微粒子の噴霧乾燥に関して含む全てのものについて、本明細書中に参考として援用される)に開示される。
【0046】
(表面特性改変の分析)
本発明は、流体懸濁物中の結晶性微粒子の表面特性の変化を分析するために、超音波分光学の技術を使用し、その変化は、活性薬剤の上記結晶性微粒子への吸着を促進または増強する。本明細書中の他の場所で開示されるように、このような変化は、活性薬剤の添加の前または後のいずれかにおいて上記微粒子の表面特性を変えるために、溶液の条件(例えば、pH、温度、極性、イオン強度、および共溶媒)を変化させること、一価イオンまたは多価イオンへの複合体形成、あるいは化学的誘導体化を包含する。
【0047】
超音波分光学は、当業者に公知である分析ツールである。要約すると、超音波分光学は、音波を使用する。特に、それは、サンプル/材料における分子間力を精査する高周波数の音波を使用する。超音波における振動の圧縮(および減圧)は、分子間の引力または反発力によって応答するサンプル中の分子配置の振動を引き起こす。
【0048】
サンプルを通して進行すると、超音波は、そのエネルギーを失い(振幅の減少)、そしてその超音波は、その速度を変える。この振幅の減少および速度の変化は、サンプルの特徴として分析される。したがって、超音波の伝搬は、超音波速度および超音波減衰によって決定される。
【0049】
超音波速度は、媒体の弾性および密度によって決定される。固体は、最も強い分子間相互作用を有し(液体および気体がその次に強い分子間相互作用を有する)、したがって液体および気体と比較してより剛性である。超音波減衰は、超音波がサンプルを通して進行する場合に超音波が失うエネルギーの尺度である。それは、サンプルの超音波透過を特徴付け、そしてその波の振幅の減少として見られ得る。
【0050】
均一系における超音波減衰の多周波測定は、高速化学反応(例えば、プロトン交換、構造転移(例えば、異性化)、自己会合(例えば、二量体化)、凝集、リガンドの高分子への結合などであるが、これらに限定されない)の分析を可能にする。
【0051】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含まれる。以下の実施例において開示される技術が、本発明の実施において十分に機能するように本発明者によって見出された技術を再び示し、したがってその実施の好ましい様式を構成するために考慮され得ることは、当業者によって認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に鑑みて、多くの変更が、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示される特定の実施形態において行われ得、そして依然として同様かまたは類似する結果を得ることを認識する。
【実施例】
【0052】
(実施例1)
(活性薬剤によって微粒子を負荷するための一般的手順)
下の表1は、pHに制御された吸着を利用したイオン化可能な結晶性微粒子(FDKP微粒子)の静電的に駆動されるコーティングの例である。これらの実験において、FDKP微粒子懸濁物を、pH2.0およびpH4.5にて調製した。次いで、タンパク質(成長ホルモン)を、各々に添加して、5mg/mL FDKP粒子および200μg/mLタンパク質の最終濃度を得た。混合した後、バルク液体(bulk liquid)を、濾過によって懸濁物から除去した。次いで、そのフィルター上に捕捉された物質を、溶解および回収した。全ての分画中のタンパク質濃度を、HPLCによって定量した。
【0053】
低いpH(2.0)において、上記タンパク質は、上記粒子に吸着されず、そして全てのタンパク質を、最初の濾液中に見出した。pHを4.5まで増大させることによって、上記粒子の表面特性を、上記タンパク質に対する高い親和性を有するように変化させた。これらの条件下において、上記タンパク質は、上記微粒子に結合し、そしてそのタンパク質は、濾液中に見られなかった。上記微粒子と会合したタンパク質の量を決定するために、そのタンパク質を、その微粒子を溶解したときに回収した。粒子を含まないコントロールは、上記タンパク質がそれ自体で、使用した条件下でフィルター上に残らなかった(すなわち、上記タンパク質は、フィルター孔よりも大きい粒子へと自己会合または凝集しなかった)ことを示す。
【0054】
(表1.FDKP微粒子による吸着実験におけるタンパク質濃度)
【0055】
【表1】

(実施例2)
(pHを操作することによるFDKP微粒子のイオン化の制御)
FDKPは、各末端にカルボン酸官能基を有する棒形状の分子であり、FDKPは、そのカルボン酸が、プロトン化され、そして電荷を保有しない場合、pH3.5未満で水に本質的に不溶性である。FDKPの溶解性は、上記カルボキシル基のイオン化に対応して、pH3.5より上で迅速に増大する。FDKP結晶(2つの大きな平面および狭い辺を有するプレートとして形成する)のモデリングは、棒様のFDKP分子がそのプレートの辺に対して垂直に整列することにより、その分子のカルボン酸末端がそのプレートの大きい面上に配列されることを示す。理論的基礎において、FDKP結晶の表面は、約pH5.0で部分的にイオン化されるべきであり、その溶解性は、微粒子の10mg/mL懸濁物が溶解するpHの直下において約1mg/mLである。
【0056】
FDKP結晶表面のイオン化は、超音波分光学によって間接的に観察されている。図1において、FDKP微粒子および緩衝液の超音波滴定曲線を、示す。この実験において、200mM HClを含む溶液を、少量のアリコートで、20mM酢酸アンモニウム緩衝液中のFDKP微粒子の撹拌した10mg/mL懸濁物に添加した。最初のpHは、4.8であった。HClの各添加の後、その系を、平衡状態にし、そして超音波データを、収集した。
【0057】
漸増性の酸濃度(pHを減少させる)によって観察された超音波速度の減少は、上記系中のカルボン酸基のプロトン化を反映する。その基は、プロトン化され、そして非荷電になったので、それらの周りの水の構造は、弛緩し、そして超音波は、よりゆっくりと伝達された(超音波速度は減少する)。FDKP微粒子カルボキシレート表面および酢酸緩衝液中のカルボキシレート基は、化学的に非常に類似しており、その曲線もまた、類似する。しかし、その違いは、FDKP微粒子によって引き起こされた。最初に、FDKP微粒子による速度変化の大きさは、より大きかった。この違いは、FDKP微粒子表面上のイオン化されたカルボキシレート基のプロトン化から生じる。完全なプロトン化の時点の近くにおいて生じる減衰曲線のピークは、FDKP懸濁物において僅かにより高い酸濃度にシフトされた。最終的に、両方のFDKPパラメータは、pHが3.5から2.3まで減少したように、変化し続けた。これらの変化は、上記粒子の表面特性におけるさらなる改変を反映し、その改変は、表面カルボキシル基の秩序化または他の微細構造的な改変を含み得る。
【0058】
(実施例3)
(表面特性のpH操作によるFDKP微粒子上へのタンパク質の負荷)
pH操作によるイオン化可能な微粒子表面上へのタンパク質の吸着は、2つの方法で達成され得る。上記タンパク質が、添加され得、次いでpHが、タンパク質の随伴性の吸着による表面のイオン化をもたらすために調整され得る。このプロセスは、可逆的である。あるいは、上記粒子懸濁物のpHは、上記タンパク質が添加される前に上記表面のイオン化をもたらすために調整され得る。
【0059】
図2に示した超音波滴定データは、約2.9よりも大きいpHにおけるタンパク質(インスリン)とFDKP微粒子との会合を示し、そして約2.9よりも低いpHにおける相互作用の減少を示す。
【0060】
FDKP微粒子の懸濁物を、20mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH4.8)において調製し、そしてインスリンストック溶液と合わせて、10mg/mLのFDKP微粒子の最終濃度および1mg/mLのインスリン濃度を有する800μLの懸濁物を得た。この懸濁物を、超音波分光計に導入した。穏やかに撹拌しながら、氷酢酸を、5μLアリコートでゆっくりと加えて、pHを低下させた。滴定の各工程において、超音波データを、回収した。
【0061】
超音波速度の変化は、サンプル中の粒子および/または高分子の表面積(水和水)の量に関連(比例)する。図2は、約2.9より大きいpH(10% v/vの酢酸を添加した)での、微粒子単独(FDKP粒子)についての速度曲線および同時に含まれた微粒子とインスリンとの(FDKP粒子+インスリン)についての速度曲線を示す。これは、上記系の表面積の量がFDKP微粒子単独の表面積と本質的に同じであることを示した。そのインスリンは、ごく僅かな寄与を有した。なぜならばそのインスリンは、上記微粒子と比較して非常に小さいからである。pH2.9未満において、FDKP粒子の曲線およびFDKP粒子+インスリンの曲線は、相違した。FDKP粒子+インスリンの超音波速度の曲線は、ここで、より高く、これは、FDKP粒子単独のサンプルにおいてよりも水に曝される表面積が大きいことを示した。このさらなる表面積は、上記懸濁物中の遊離インスリン由来であった。pHは、約2.7から約2.9まで上昇したので、インスリンの表面積は、インスリンのFDKP微粒子表面への吸着によって失われ、そしてFDKP微粒子+インスリンの曲線のより高い強度は、上記系から消失した遊離インスリンとして消失した。
【0062】
上に示したように、タンパク質によって粒子をコーティングする第2のpH駆動性の方法は、流体媒体中に粒子を懸濁させ、そして粒子表面をイオン化するために溶液の条件を調整する。次いで、上記タンパク質は、上記懸濁物に添加され得、そしてタンパク質分子は、直ぐに吸着する。図3は、FDKP微粒子のpH調節性懸濁物への添加の際に吸着されたタンパク質(インスリン)の量を示す。
【0063】
FDKP微粒子懸濁物を、5mg/mLにおいて調製し、そして過剰のタンパク質(2mg/mL)を、添加した(本明細書中に言及されるような過剰のタンパク質は、FDKP微粒子の到達可能な表面を覆う単一層を形成するのに必要とされる考えられる量である)。インキュベーション後、吸着されていないタンパク質を、濾過によって除去した。フィルター上に残った固体(残留物)を、溶解させ、そして上記フィルター上に残ったFDKP微粒子およびタンパク質を、HPLCによって定量した。上記タンパク質/粒子の質量比を、この定量から決定した。これらの粒子の既知の表面積および上記タンパク質の分子寸法に基づいて、吸着されたタンパク質の連続的な単一層は、約0.07の質量比で生じると推定された。その推定に基づいて、連続的な単一層がpH5.0において形成されたこと、および非連続的な単一層がpH3.5〜pH4.5において形成されたことが、この例から見られ得る。
【0064】
さらに、異なる多くの乾燥した活性薬剤でコーティングされたFDKP微粒子を、酸溶液(最終的にpH約2.0である)または水(最終的にpH約4.5である)のいずれかに懸濁した。その異なる活性薬剤は、表2に示したように、インスリン、成長ホルモンおよびインスリンアスパルト(insulin aspart)(即効型のインスリン)を含んだ。溶媒を、これらの懸濁物から濾過し、そして残った粒子を、溶解し、そして回収した。これらのサンプルの全てにおける活性薬剤の量を、HPLCによって定量した。その結果を、表2に示す。
【0065】
上記FDKP微粒子の各々について、活性薬剤は、酸性溶液においてその粒子から放出された。従って、微結晶の表面をプロトン化することによって、上記活性薬剤は、その結晶表面から脱着する。上記粒子を、水に再懸濁した場合(粒子表面のイオン化状態を変化させない)、タンパク質は、吸着されたままであった。
【0066】
(表2.FDKP微粒子上にコーティングされた活性薬剤)
【0067】
【表2】

表中の値は、HPLC定量からの積分したピーク面積である(215nmにおけるmAU秒)。
【0068】
(実施例4)
(インスリンのFDKP微粒子上へのpH駆動性吸着の特徴付け)
インスリンを、FDKP微粒子の水性懸濁物と、インスリンの水溶液とを混合することによって、pH制御プロセスにおいてFDKP微粒子上に吸着(負荷)させた。FDKP微粒子へのインスリンの結合に対するpHの効果を特徴付けるために、種々のpH値におけるFDKP粒子の5mg/mL懸濁物を、調製した。次いで、過剰の溶解したインスリンを、添加し、約5分間にわたって放置して吸着させ、その後、結合していないインスリンを、濾過によって除去した。吸着したインスリンを有する固体粒子を、そのフィルターから回収し(残留物)、溶解し、そして収集した。インスリンおよび溶解したFDKP微粒子の量を、HPLCによって定量した。吸着したインスリンの量を、合計した質量の残留物の分画として算出した。インスリン吸着のpH依存性を、図4Aに示す;pHの関数としての増大したインスリン吸着。同様の結果を、それぞれ、図4B、C、およびDに示したように、SSX−241−49モノクローナル抗体、PTH、およびグレリンについて得た。
【0069】
さらに、FDKP粒子を、異なるpHのインスリン溶液(10mg/mL)に懸濁した。インスリンに対するFDKP粒子の質量比は、10:1であった。上清中の結合していないインスリンの濃度を、その上清を遠心分離によって上記粒子から分離した後にHPLCによって決定した。インスリンの結合を、最初のインスリン濃度からの差として決定した。図5に報告したデータは、pHの上昇が溶液中のインスリンの減少およびFDKP粒子上のインスリン含量の増大をもたらしたことを示す。
【0070】
したがって、FDKP粒子へのインスリンの結合は、約pH3.0から約pH5までの上昇に伴って増大する。好ましくは、上記インスリン溶液を、pH3.6にて添加し、そしてこれらの条件下において、約75%のインスリンが、溶液から上記粒子上に吸着された。インスリンの結合は、pHが≧4.0に上昇する場合>95%まで増大する。次いで、完全な結合は、約4.2以上(好ましくは、約4.4)のpHにおいて達成される。5.0よりも高いpHにおいて、上記FDKP微粒子は、溶解し始め、そしてもはや結晶性微粒子の構造を維持しない。
【0071】
(実施例5)
(インスリンによるFDKP微粒子の負荷の説明)
生産スケール形式(production scale format)(2〜5kg)において、FDKPの微粒子を、酢酸による酸沈殿によって形成し、そして洗浄する。pH3.6のインスリン溶液を、FDKP粒子懸濁物に添加する。上記インスリンストック溶液を、10重量%のインスリンおよび2.5重量%の酢酸(約3.6のpH)である。水酸化アンモニウムを、使用して、混合物のpHを4.5に調整した。表3は、約11.4重量%のインスリンを含む粒子を調製するために使用した、処方物のキログラムあたりの種々の成分の量を使用する。ポリソルベート80は、粒子の処方の間に組み込まれ得、そして最終的な粒子の取り扱いの特徴を改善し得る。時間は、FDKP粒子上へのインスリンの吸着を可能にし、そして徹底的な混合を確保を可能にする。次いで、その混合物を、液体窒素に滴下して、その懸濁物を新鮮に凍結させる。その流体媒体を、凍結乾燥によって除去して、FDKP粒子/インスリンのバルク薬物生成物を生成する。あるいは、その混合物を、噴霧乾燥する。表4は、上記流体媒体の除去後におけるバルク生成物中の種々の成分の量を示す。
【0072】
(表3.FDKP粒子/インスリンバッチ処方物の組成)
【0073】
【表3】

(表4.FDKP粒子/インスリンの組成)
【0074】
【表4】

上記の表3および4において、NFは、国民医薬品集(National Formulary)を示す。
ポリソルベート80含量は、HPLC/MSアッセイによって推定される。
**FDKP/インスリン処方物は、凍結乾燥後に約1.2%の残留水を含む。微量の酢酸および水酸化アンモニウムもまた、存在し得る。
【0075】
(実施例6)
(タンパク質による微粒子表面の飽和(連続的な単一層の形成))
単一層による微粒子の表面コーティングは、飽和可能なプロセスであるべきである。すなわち、活性薬剤分子のその到達可能な表面積および直径は、微粒子表面の能力を決定する。図6は、この飽和を示す。
【0076】
FDKP微粒子の懸濁物を、調製し、そしてpHを、pH3.0とpH3.5(表面が部分的にイオン化するpH)との間に調整した。この手順において、より高いpHは、使用される可能性がなかった。なぜならば、それは、活性薬剤であるインスリンの自己会合を引き起こしたからである。濃縮したインスリン溶液のごく一部を、撹拌した懸濁物に添加した。各添加の後、サンプルを、放置して安定化させ、そして超音波データを、収集した。
【0077】
図6は、超音波速度の減少が、タンパク質濃度が上昇したこととして観察されることを示す。この型の超音波速度の変化は、水溶液におけるリガンドの結合に関して代表的であり、そして上記活性タンパク質の上記FDKP微粒子表面への吸着を示す。速度の減少は、上記FDKP微粒子表面およびタンパク質表面からの水和水の放出によって生じる。上記水和水が上記活性薬剤の吸着によって置換される場合、その構造は、弛緩し、そしてサンプルを通した超音波速度の正味の減少をもたらす。FDKP微粒子の表面上の全ての結合部位が飽和した場合(すなわち、タンパク質の単一層が形成された場合)、上記曲線レベルは、下がる(off)。単一層の形成をまた、図7A〜7Dのデータによって示し、これらは、種々の活性薬剤(GLP−1[図7A];PTH[図7B];抗SSX−241−49 モノクローナル抗体[図7C];および抗MOPC−21 モノクローナル抗体[図7D])の微粒子上への吸着が上記活性薬剤の濃度は一定濃度のFDKP微粒子(5mg/mL)において上昇した場合に飽和に達したことを示した。これらの研究を、上記活性薬剤の微粒子への最適な吸着が観察されるpH5.0において行った。GLP−1は、使用した濃度において自己会合しない(米国仮特許出願第60/744,882号に開示される通り)。
【0078】
(実施例7)
(静電相互作用の機構についての形跡)
相互作用の静電的機構についての形跡は、静電相互作用を弱めることによって吸着を妨げる能力である。これは、イオン化された粒子/活性薬剤系に塩を添加することによって示される。図8A〜8Dは、活性薬剤−FDKP微粒子系における増大するイオン強度が上記活性薬剤の上記微粒子への吸着を減少させることを示す。
【0079】
一連のサンプルを、上記活性薬剤のFDKP微粒子表面上への吸着が強力であるpH5.0において調製した。各サンプルは、図8A〜8Dの各バーの下に示したように(単位は、mMである)、異なる量の塩(塩化ナトリウム)を含んだ。上記活性薬剤を、上記懸濁物中に混合して、5mg/mLのFDKP微粒子および0.75mg/mLのインスリンの最終濃度(過剰;図8A)を得た。短時間のインキュベーション後、結合していない活性薬剤を、濾過によって除去し、そして吸着した活性薬剤を有する粒子を、再度溶解した。回収した活性薬剤および粒子の量を、HPLCによって定量し、そして質量比(%負荷)として示した。図8A〜8Dは、活性薬剤−FDKP微粒子系の増大するイオン強度が、5mg/mLのFDKP微粒子の存在下において、抗SSX−241−49モノクローナル抗体(0.2mg/mL;図8B)、グレリン(0.1mg/mL;図8C)およびPTH(0.25mg/mL;図8D)を含む活性薬剤の吸着の程度を減少させたことを示す。
【0080】
図8は、負荷懸濁物中の測定した吸着と塩濃度との間の逆相関を示す。これは、上記塩が粒子表面との相互作用について上記活性薬剤と競合した形跡として解釈され得る。塩濃度を上昇させた場合、塩は、表面結合部位について強力かつ有効に競合し、そして本質的に、上記粒子表面から上記活性薬剤を移動させた。上記活性薬剤の微粒子への結合の減少はDebye遮蔽に寄与し得ることもまた、推測される。
【0081】
特に示されない限り、明細書および特許請求の範囲において使用される成分の量、特性(例えば、分子量)、反応条件などを表す全ての数字は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されると理解されるべきである。したがって、逆のことが示されない限り、添付の明細書および特許請求の範囲において示される数値パラメータは、本発明によって得られることが追求される所望の特性に依存して変動し得る近似である。少なくとも、そして特許請求の範囲の範囲に対する均等論(doctrine of equivalents)の適用を制限する試みとしてではなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数に鑑みて、そして通常の丸め技術を適用することによって解釈されるべきである。広範にわたる本発明を示す数値範囲および数値パラメータが近似であるにもかかわらず、特定の例において示される数値は、可能な限り正確に報告される。しかし、あらゆる数値は、本質的に、それらの各試験の測定値において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を含む。
【0082】
用語「a」、「an」および「the」ならびに記載する本発明の文脈(特に、添付の特許請求の範囲の文脈)において使用される同様の指示対象は、本明細書中で特に示されないか、または文脈によって明確に否定されない限り、単数形および複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書中の数値の範囲の記述は、単に、その範囲内に納まるそれぞれ別個の値を個別に参照する略記法として機能することが意図される。本明細書中で特に示されない限り、それぞれ個々の値は、あたかもそれが本明細書に個別に引用されるかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載される全ての方法は、本明細書中で特に示されないか、そうでなければ文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書中に提供される任意かつ全ての例、または例示的な言語(例えば、「などの(such as)」)の使用は、単に、本発明を十分に明らかにすることが意図され、そして別に特許請求された本発明の範囲を限定しない。本明細書中の言語は、本発明の実施に必須である任意の特許請求されていない要素を示すと解釈されるべきではない。
【0083】
特許請求の範囲における用語「または」の使用は、明確に示されない限り、代替物のみか、または代替物が相互排他的であることに言及する「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」に言及する定義を支持する。
【0084】
代替的な要素または本明細書中に開示される本発明の実施形態の分類は、限定として解釈されるべきではない。各群のメンバーは、個別かまたは本明細書中に見出される群の他のメンバーもしくは他の要素との任意の組み合わせにおいて、言及および特許請求され得る。群の1つ以上のメンバーは、利便性および/もしくは特許性のために群に含まれ得るか、または群から削除され得ることが、予期される。任意のこのような包含または削除が生じる場合、本明細書は、ここで、改変され、そうして添付の特許請求の範囲において使用される全てのMarkush群の文書による説明を満たすような群を含むと見なされる。
【0085】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書中に記載され、それは、本発明を実施するために本発明者らとって公知である最良の形態を含む。当然に、それらの好ましい実施形態に対するバリエーションは、上述の説明を読む際に当業者にとって明らかとなる。本発明者は、当業者に、適切な場合にこのようなバリエーションを使用することを期待し、そして本発明者は、本発明について、本明細書中に具体的に記載されるものとは異なる方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適切な原理によって許容されるような、ここに添付された特許請求の範囲において列挙される対象事項の全ての改変および等価物を含む。さらに、上記の要素のあらゆる組み合わせが、本明細書中で特に示されないか、またはそうでなければ文脈によって明確に否定されない限り、その全ての可能なバリエーションにおいて本発明によって包含される。
【0086】
さらに、多くの参照は、本明細書全体を通して特許および出版刊行物に対してなされている。上記の引用された参考文献および出版刊行物の各々は、その全体が本明細書中に参考として個別に援用される。
【0087】
さらに、本明細書中で開示される本発明の実施形態は本発明の原理の例示であることが、理解されるべきである。使用され得る他の改変は、本発明の範囲内である。したがって、限定ではないが例として、本発明の代替的な構成は、本明細書中の教示に従って利用され得る。したがって、本発明は、明確に示されかつ記載されるものに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】図1は、本発明の教示に従って、フマリルジケトピペラジン(FDKP)懸濁物の別個の成分(FDKP粒子および緩衝液)についての超音波HCl滴定プロフィールを示す。超音波速度滴定プロフィールの変化の大きさ(図1;パネルA)は、サンプル成分のイオン化可能なカルボキシレート基のプロトン化によって引き起こされる水和の変化を反映する。過剰な超音波減衰ピーク(図1;パネルB)は、飽和の時点でのプロトン交換反応における高速緩和から生じる。周波数(F)は、15MHzであり、温度は、25℃である。
【図2】図2は、本発明の教示に従って、FDKP粒子+インスリンおよびFDKP粒子単独についての超音波氷酢酸滴定プロフィールを示す。超音波速度プロフィールは、インスリンの寄与を減算することによって算出された;周波数は、8MHzであり、温度は、25℃である。過剰な超音波減衰はまた、添加された氷酢酸の濃度の関数として示される。氷酢酸誘導性の酸性化の2つの段階は、HCl滴定によって観察されるものと同様である。左のパネル(パネルA)における挿入パネルは、約2.9よりも大きいpHにおける活性薬剤とFDKP微粒子との会合を示す。左のパネル(パネルB)における挿入パネルは、約2.9を下回るpHにおける活性薬剤と微粒子との間の相互作用の減少を示す。
【図3】図3は、本発明の教示に従って、イオン化可能な微粒子上へのタンパク質の吸着を示す。タンパク質は、pH調整の後に微粒子懸濁物に添加され、結合していないタンパク質は、濾過で取り除かれ、そしてその微粒子は、結合したタンパク質を放出させるために溶解された。
【図4】図4は、本発明の教示に従って、活性薬剤のFDKP微粒子上への吸着についてのpH依存性を示す。図4Aは、インスリンの吸着を示し;図4Bは、抗SSX−241−49モノクローナル抗体の吸着を示し、図4Cは、副甲状腺ホルモン(PTH)の吸着を示し、そして図4Dは、グレリンの吸着を示す。
【図5】図5は、本発明の教示に従って、FDKP微粒子上へのインスリンの吸着とインスリン濃度の制限とのpH依存性を示す。
【図6】図6は、本発明の教示に従って、タンパク質(10mg/mL)を伴うFDKP微粒子の階段滴定の際のFDKP微粒子懸濁物(11mg/mL)における超音波速度の変化を示す。遊離タンパク質の寄与およびFDKP微粒子希釈の効果は、減算された。温度は、25℃である。
【図7】図7は、本発明の教示に従って、活性薬剤のFDKP微粒子上への吸着についての飽和曲線を示す。負荷曲線は、活性薬剤/FDKP微粒子について、pH5.0での活性薬剤濃度の関数として示される。図7Aは、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)の吸着を示し;図7Bは、PTHの吸着を示し;図7Cは、抗SSX241−49モノクローナル抗体の吸着を示し、そして図7Dは、抗MOPC−21モノクローナル抗体の吸着を示す。
【図8】図8は、本発明の教示に従って、塩の濃度を上昇させることによって影響されるようなpH5.0での活性薬剤の微粒子上への吸着を示す。その活性薬剤は、pH調整の後に微粒子懸濁物に添加され、結合していない薬剤は、濾過で取り除かれ、そしてその微粒子は、結合した薬剤を放出させるために溶解された。図8Aは、インスリンの吸着を示し、図8Bは、抗SSX−241−49モノクローナル抗体の吸着を示し、図8Cは、PTHの吸着を示し、そして図8Dは、グレリンの吸着を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物中の予め形成された結晶性微粒子を活性薬剤によってコーティングする方法であって、
i)該活性薬剤と該結晶性微粒子との間のエネルギー的相互作用を、溶媒除去とは関係なく調整する工程;および
ii)該活性薬剤を該微粒子の表面上に吸着させる工程;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記溶媒を除去または交換する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶媒を除去または交換する工程は、活性薬剤と微粒子との間の相互作用に対して実質的な効果を有さない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記調整する工程は、前記微粒子の表面特性を改変する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記微粒子の表面特性の改変は、溶液の条件を変える工程を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
溶液の条件を変える工程は、pHを変化させる工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性薬剤を前記微粒子の懸濁物の流体相に溶解し、次いで該流体相のpHを変化させる工程をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記pHは、前記活性薬剤の添加の前または後に変えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記微粒子の表面特性の改変は、前記溶液の極性を変える工程を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記微粒子の表面特性の改変は、一価イオンまたは多価イオンの添加を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記微粒子の表面特性の改変は、該微粒子の化学的誘導体化を包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記表面特性は、静電特性を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
前記表面特性は、疎水特性を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
前記表面特性は、水素結合特性を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記微粒子が、有孔であり、そして該微粒子が、前記溶液のバルク流体に到達可能な内部表面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記微粒子は、ジケトピペラジンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ジケトピペラジンは、フマリルジケトピペラジンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記コーティングする方法は、前記微粒子表面上に活性薬剤の単一層を産生する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記単一層は、連続的である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記単一層中の活性薬剤は、好ましい配置を有する、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記活性薬剤は、インスリンまたはインスリンアナログである、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
懸濁物中の予め形成された結晶性微粒子をインスリンによってコーティングする方法であって、
i)活性薬剤と該結晶性微粒子との間のエネルギー的相互作用を、溶媒除去とは関係なく調整する工程;および
ii)該インスリンを該微粒子の表面上に吸着させる工程;
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−507931(P2009−507931A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531355(P2008−531355)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/036034
【国際公開番号】WO2007/033372
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(503208552)マンカインド コーポレイション (50)
【Fターム(参考)】