説明

活性酸素の測定方法および活性酸素測定用素子

【課題】本発明の目的は、活性酸素種を、簡便に、高感度で検出できる活性酸素測定方法を提供することにあり、特に生体由来の被検体中の活性酸素種を、簡便に、高感度で定量分析できる活性酸素の測定方法およびそれに用いられ活性酸素検出用素子提供することにある。
【解決手段】蛍光プローブを用いて活性酸素を測定する活性酸素の測定方法であって、該蛍光プローブが半導体ナノ粒子であることを特徴とする活性酸素の測定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性酸素種を検出するための活性酸素測定方法に関し、さらに詳しくは、ヒトなどの好気性生物の血液、尿、汗、唾液、涙液、分泌液などの体液、飲料水などの食品、および医療用の薬品などに含まれる活性酸素種を、簡便に、高感度で検出するための活性酸素測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療の分野においては、各種生体物質中の活性酸素種の存在の情報が、生体物質の状態を把握する上での重要な情報の一つとして認識されている。
【0003】
活性酸素種は、その反応性が比較的高いために、直接検出することは難しく、下記のように活性酸素種と反応する化合物などと反応させ反応生成物を測定する方法が一般的に用いられている。
【0004】
例えば、活性酸素の検出方法としては、活性酸素と発光試薬と反応させ発光を測定する方法(特許文献1参照)、活性酸素と発色試薬とを反応させ発色を測定するなどが知られている(特許文献2参照)。
【0005】
また、気体中の微量の活性酸素を感度よく検出する方法として、色素からなる蛍光プローブを用いる方法が知られている(特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、これら従来の方法においては、感度を高めようとすると装置などが大がかりになりコストが上昇する、簡便な方法をとろうとすると、感度よく検出することが難しい、定量的に測定することが難しい、といった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−254352号公報
【特許文献2】特開2001−50946号公報
【特許文献3】特開2008−128905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、活性酸素種を、簡便に、高感度で検出できる活性酸素測定方法を提供することにあり、特に生体由来の被検体中の活性酸素種を、簡便に、高感度で定量分析できる活性酸素の測定方法、それに用いられ活性酸素検出用素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記課題は、下記の手段により達成できる。
【0010】
1.蛍光プローブを用いて活性酸素を測定する活性酸素の測定方法であって、該蛍光プローブが半導体ナノ粒子であることを特徴とする活性酸素の測定方法。
【0011】
2.検体と前記半導体ナノ粒子とを接触させ、接触させた後、該半導体ナノ粒子に励起光の照射を行い、該照射により発生した蛍光の測定を行い、活性酸素を測定することを特徴とする前記1に記載の活性酸素の測定方法。
【0012】
3.前記照射により発生した蛍光の測定を行い、検体と半導体ナノ粒子とを接触させる前の半導体ナノ粒子の蛍光の発光スペクトルの極大値を示す波長と、検体と前記半導体ナノ粒子とを接触させた後の半導体ナノ粒子の蛍光の発光スペクトルの極大値を示す波長との差を求めることを特徴とする前記2に記載の活性酸素の測定方法。
【0013】
4.前記活性酸素を測定する活性酸素の測定方法、が活性酸素の濃度を測定する活性酸素の測定方法であることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載の活性酸素の測定方法。
【0014】
5.前記半導体ナノ粒子を含有する活性酸素測定用素子を用いることを特徴とする前記1から4のいずれか1項に記載の活性酸素の測定方法。
【0015】
6.前記半導体ナノ粒子が、Siを含有する粒子であることを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載の活性酸素の測定方法。
【0016】
7.前記5または6に記載の活性酸素の測定方法に用いられる活性酸素測定用素子であって、半導体ナノ粒子を含有することを特徴とする活性酸素測定用素子。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、活性酸素種を、簡便に、高感度で検出できる活性酸素測定方法ならびにそれに用いられる活性酸素測定用素子および活性酸素測定用粒子が提供でき、特に生体由来の被検体中の活性酸素種を、簡便に、高感度で定量分析できる活性酸素測定方法ならびにそれに用いられる活性酸素検出用素子が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】活性酸素の測定に用いられる半導体ナノ粒子の発光スペクトルの変化を示す概略図である。
【図2】活性酸素濃度と、活性酸素と反応した蛍光プローブの発光スペクトルのピーク波長の変化量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、蛍光プローブを用いて活性酸素を測定する活性酸素の測定方法であって、該蛍光プローブが半導体ナノ粒子であることを特徴とする。
【0020】
蛍光プローブに半導体ナノ粒子を用いることで、簡便で、感度の高い活性酸素の測定方法が得られる。
【0021】
(測定方法)
蛍光プローブを用いる活性酸素の測定方法は、活性酸素と反応した反応生成物(蛍光プローブ)の蛍光を測定することで活性酸素を検出方法であるが、本発明の測定方法は、蛍光プローブとして下述する半導体ナノ粒子を用いる。
【0022】
本発明では、蛍光プローブである半導体ナノ粒子と検体中の活性酸素との反応生成物(半導体ナノ粒子)の蛍光を測定することで活性酸素を検出、定量する。
【0023】
即ち、本発明の活性酸素を測定する活性酸素の測定方法は、活性酸素を検出する方法であり、活性酸素の濃度を測定する方法である。
【0024】
本発明の測定方法においては、活性酸素を測定するための検体と半導体ナノ粒子とを接触させ、接触させた後、半導体ナノ粒子に励起光の照射を行い、照射により発生した蛍光の測定を行い、活性酸素を検出し定量することができる。
【0025】
蛍光の測定は、半導体ナノ粒子の励起光による蛍光の発光スペクトルを測定することにより行われ、検体と接触する前と後との発光スペクトルを比較することで活性酸素を検出することができる。
【0026】
即ち、励起光の照射により発生した蛍光の測定を行い、検体と半導体ナノ粒子とを接触させる前の半導体ナノ粒子の蛍光の発光スペクトルAの極大値を示す波長と、検体と前記半導体ナノ粒子とを接触させた後の半導体ナノ粒子の蛍光の発光スペクトルBの極大値を示す波長との差(波長差)を求めることで、活性酸素を検出、定量することができる。
【0027】
図1は、本発明の活性酸素の測定に用いられる半導体ナノ粒子の発光スペクトルの、検体と接触する前と後との変化を示す概略図である。
【0028】
半導体ナノ粒子の、検体と接触させる前の発光スペクトルAの極大値を示す波長aと、検体と接触させた後の発光スペクトルBの極大値を示す波長bとを比較することで活性酸素の検出することができる。
【0029】
半導体ナノ粒子の発光スペクトルの極大値を示す波長(蛍光ピーク波長)は、活性酸素と接触することで短波長側に変化する。(波長a−波長b)で表される極大値を示す波長差cは、活性酸素の量に応じ変化する。
【0030】
従って、波長aに対する波長差cの割合を求め、この割合と活性酸素濃度との関係を予め測定して、検量線を作成しておくことで、活性酸素濃度の測定が可能となる。
【0031】
検量線は、好ましくは、検体ごとに求めておくことが好ましい。例えば、血液中の血清の場合には、血清に予め既知の活性酸素種を加えて検量線を作成することで得られる。
【0032】
本発明においては、検体にもよるが、活性酸素の量、例えば過酸化水素の量が0〜100μモル/L範囲において、過酸化水素の量に応じて極大値を示す波長は変化し、特に10〜100μモル/Lの範囲においてほぼ直線的に比例する。
【0033】
極大値を示す波長は、概ね約25nm変化する。即ち波長差cとしては、0から約25nmまでの範囲で測定が可能である。
【0034】
本発明の活性酸素の測定方法としては、下述する活性酸素測定用素子に含有される半導体ナノ粒子と、検体とを活性酸素測定用素子中で接触させ、この活性酸素測定用素子を用い蛍光を測定する方法が好ましい態様である。
【0035】
本発明の活性酸素の測定方法は、半導体ナノ粒子をプローブとして用いるため、タンパク質などの生体物質を用いる測定方法に比べ熱的に安定であり、取り扱いが容易である。
【0036】
半導体ナノ粒子の発光スペクトルの変化が、活性酸素の量に対応する理由は明確ではないが、以下のように推測される。
【0037】
半導体ナノ粒子が活性酸素と反応することにより、発光波長に影響する半導体ナノ粒子の有効直径が変化し、この有効直径の変化が定量的に生じているためと推測される。
【0038】
本発明の活性酸素の測定が対象とする検体としては、血液、尿、汗、唾液、涙液、分泌液などの体液、食品、医療用の薬品などが挙げられるが、検体としては、液体状態のものに特に好適に用いることができる。
【0039】
(活性酸素)
本発明における活性酸素とは、活性酸素を放出する物質も含む。本発明では、例えば、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシルラジカル、ハイドロペルオキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素、一酸化窒素、二酸化窒素、オゾン、過酸化脂質等の活性酸素種に適用できる。
【0040】
(半導体ナノ粒子)
半導体ナノ粒子とは、平均粒径が100nm以下である半導体粒子をいう。
【0041】
平均粒径は、TEMを用いて電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について投影面積を計測し、その計測値を相当する円の面積としたときの直径を粒径として求めて、その算術平均を平均粒径とする。
【0042】
半導体粒子は、周期表のIV族、II−VI族、およびIII−V族の元素を含有する半導体化合物である。
【0043】
II−VI族の半導体の中では、特に、MgS、MgSe、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、HgS、HgSeおよびHgTeを挙げることができる。
【0044】
III−V族の半導体の中では、GaAs、GaN、GaPGaSb、InGaAs、InP、InN、InSb、InAs、AlAs、AlP、AlSbおよびAlSが好ましい。
【0045】
IV族の半導体の中では、Ge、PbおよびSiは特に適しており、本発明において、特に好ましいのは、Siである。
【0046】
本発明においては、半導体ナノ粒子として、コア/シェル構造を有する粒子を用いることが好ましい。この場合、半導体ナノ粒子は半導体粒子からなるコア粒子と当該コア粒子を被覆するシェル層とで構成されるコア/シェル構造を有する半導体ナノ粒子であって、当該コア粒子とシェル層の化学組成が相異するものであることが好ましい。
【0047】
コア粒子に用いられる半導体材料としては、種々の半導体材料を用いることができる。具体例としては、例えば、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、GaAs、GaP、GaSb、InGaAs、InP、InN、InSb、InAs、AlAs、AlP、AlSb、AlS、PbS、PbSe、Ge、Si、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0048】
本発明において、コア/シェル構造を有する粒子として好ましい半導体は、SiまたはGeである。なお、Gaなどのドープ材料を極微量含んでもよい。
【0049】
シェルに用いられる材料としては、種々の材料を用いることができる。具体例としては、例えば、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、MgS、MgSe、GaS、GaN、GaP、GaAs、GaSb、InAs、InN、InP、InSb、AlAs、AlN、AlP、AlSb、またはこれらの混合物等が挙げられる。本発明において、特に好ましい材料は、SiO、ZnSである。
【0050】
なお、シェル層は、コア粒子が部分的に露出して部分がなく、コア粒子の全表面を完全に被覆するものが好ましい。
【0051】
本発明に係る半導体ナノ粒子の平均粒径は100nm以下であるが、1nm以上20nm以下が好ましい。より好ましくは2nm以上10nm以下、特に好ましくは2nm以上8nm以下である。
【0052】
〈半導体ナノ粒子の製造方法〉
半導体ナノ粒子の製造については、従来公知の種々の方法を用いることができる。
【0053】
液相法の製造方法としては、沈殿法、共沈法、ゾル−ゲル法、均一沈殿法、還元法などがある。そのほかに、逆ミセル法、超臨界水熱合成法、などもナノ粒子を作製する上で優れた方法である(例えば、特開2002−322468号、特開2005−239775号、特開平10−310770号、特開2000−104058号公報等を参照。)。
【0054】
なお、液相法により、半導体ナノ粒子の集合体を製造する場合においては、半導体前駆体を還元反応により還元する工程を有する製造方法であることが好ましい。
【0055】
また、当該半導体前駆体の反応を界面活性剤の存在下で行う工程を有する態様が好ましい。なお、半導体前駆体は、上記の半導体材料として用いられる元素を含む化合物であり、たとえば半導体がSiの場合、半導体前駆体としてはSiClなどが挙げられる。その他半導体前駆体としては、InCl、P(SiMe、ZnMe、CdMe、GeCl、トリブチルホスフィンセレンなどが挙げられる。
【0056】
気相法の製造方法としては、(1)対向する原料半導体を電極間で発生させた第一の高温プラズマによって蒸発させ、減圧雰囲気中において無電極放電で発生させた第二の高温プラズマ中に通過させる方法(例えば特開平6−279015号公報参照。)、(2)電気化学的エッチングによって、原料半導体からなる陽極からナノ粒子を分離・除去する方法(例えば特表2003−515459号公報参照。)、(3)レーザーアブレーション法(例えば特開2004−356163号参照。)、(4)高速スパッタリング法(例えば特開2004−296781号参照)などが用いられる。また、原料ガスを低圧状態で気相反応させて、粒子を含む粉末を合成する方法も、好ましく用いられる。
【0057】
(活性酸素測定用素子)
本発明の活性酸素測定用素子は、半導体ナノ粒子を含有する。
【0058】
活性酸素測定用素子は半導体ナノ粒子を保持する保持部材を有する。
【0059】
保持部材としては、半導体ナノ粒子と検体とを接触させた後、半導体ナノ粒子からの蛍光をそのまま測定できるようにするために、励起光、蛍光の吸収の少ない部材が好ましく、例えば石英、ガラス、ポリスチレンなどが好ましく用いられる。
【0060】
保持部材の形状としては、角柱形状の光学キュベット、チューブ状(U字形状)、多孔質薄膜シートなどが挙げられる。
【0061】
例えば、角柱形状の光学キュベットの場合5mm角〜50mm角のものが、チューブ状の場合チューブ径が5mm〜10mm、長さが10mm〜50mmのものが好ましく用いられる。
【0062】
活性酸素測定用素子の形態としては、これらの保持部材中に半導体ナノ粒子が充填された形態であり、半導体ナノ粒子が薄膜状で充填された形態が好ましい。
【0063】
充填される形態としては、粒子のみが充填されてもよいが、例えばmmオーダーの直径を有するビーズと共に充填される形態が、検体との混合がスムーズであり効率よく検体と半導体ナノ粒子を接触させることから、好ましい形態として用いられる。
【0064】
ビーズは、検体の成分、半導体ナノ粒子などの吸着防止の面から、ポリエチレングリコール等の高分子で被覆されている状態が好ましい。
【0065】
半導体ナノ粒子と検体との接触は、上記のような半導体ナノ粒子を保持した保持部材に検体を注入することで行われる。
【0066】
例えば、例えばマイクロシリンジで注入のスピードを50μl/s程度とすることで、泡立ちを防止して注入することができる。
【0067】
また、半導体ナノ粒子と検体とを接触させる際には、活性酸素測定用素子を振動することが好ましい。
【0068】
検体と接触した半導体ナノ粒子は、半導体ナノ粒子の蛍光を測定するために、励起光照射手段を有する装置にセットされ、蛍光スペクトルが測定される。
【0069】
蛍光スペクトルの測定は、活性酸素測定素子をそのままセットし測定してもよいし、素子から半導体ナノ粒子を分離する処理などの処理がほどこされた後測定してもよいが、そのままセットし測定する方法が好ましい。
【0070】
(測定装置)
本発明の活性酸素測定用素子を用いて、測定を行うには、半導体ナノ粒子に励起光の照射を行う照射手段、および照射により発生した蛍光の測定を行う蛍光測定手段を具備する活性酸素測定装置により行うことができる。
【0071】
励起光としては、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀ランプまたはLEDなど光源からの発光光が好ましく用いられ、活性酸素測定装置は、これらの光源を具備する。
【0072】
励起光の波長としては、概ね波長域280nm〜550nmの範囲の波長が利用でき、半導体ナノ粒子により選択される。例えば650nmの発光光を有する半導体ナノ粒子を用いる場合は、光源として、波長域280nm〜550nmの励起光成分を照射可能なものが使用される。このような光源としては、可視光から赤外光までの発光波長特性を有するキセノンランプやハロゲンランプ等の白色光源が好適に用いられる。
【0073】
蛍光測定部には、例えば、分光器と光電子増倍管等から構成される蛍光分光光度計等が使用できる。測定する蛍光特性としては、蛍光強度が極大を示す波長(蛍光ピーク波長)のシフトを測定する。なお、上記光電子増倍管としては、例えば浜松ホトニクス社製R928F等が使用できる。また、蛍光分光光度計としては、例えば分光器内蔵の日立ハイテク社製蛍光分光光度計F−7000等が使用できる。
【0074】
本発明においては、上記のような簡単な励起光光源と、蛍光の測定を行う市販の蛍光分光光度計を利用することができ、簡単に活性酸素を測定することができる。
【0075】
活性酸素測定素子が、光学キュベット状である場合、その側面が励起光に対して正対する向きに配置する。光源と測定キュベットの間には光学レンズが配置してあり測定キュベット部で焦点を結ぶように配置することができる。集光された励起光が半導体ナノ粒子に照射され、半導体ナノ粒子が発光するが、励起光が照射される面と直交する面より発せられる光を検出器にて測定する。
【0076】
また、励起光由来の高次光が混入する場合があるので、適宜光学フィルターで励起光以外の光が検出器に入らないようにすることが可能である。例えば、350nmの励起光を照射し700nmの蛍光を検出する場合、検出器では蛍光由来の700nm以外に励起光由来の700nmの光も測定される。励起光と検出器の間に400nm以下の波長以上の光をカットする光学フィルターを設置すると、これを防ぐことが可能である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0078】
(半導体ナノ粒子の作製)
シリコン基板およびシリカターゲットを用いて高速スパッタリング法(特開2004−296781号公報に記載の方法)にて、シリコン半導体ナノ粒子を作製した。
【0079】
この粒子は、粒子径8nm、波長405nmの励起光の照射により、赤色の蛍光を示すシリコン半導体ナノ粒子であった。
【0080】
この半導体ナノ粒子の2μgをディスポーザブル光学キュベットの底部に充填した。
【0081】
次に検体として、100μモル/1L過酸化水素水を準備し、そのキュベットに検体500μLを添加し、キュベットに蓋をした。
【0082】
シリコン半導体ナノ粒子と過酸化水素水を十分反応させるため、検体およびシリコン半導体ナノ粒子の入ったキュベットを1回転/秒の速度で1分間攪拌機(Vortex Genieなど)にて攪拌を行った。
【0083】
その後キュベットを蛍光分光計(日立ハイテク社、蛍光分光光度計F−7000)にセットし、励起光405nmを照射し、蛍光スペクトルを測定し、蛍光強度の極大値を示す波長(蛍光ピーク波長)を測定した。
【0084】
過酸化水素水と接触させる前の蛍光ピーク波長と接触後の蛍光ピーク波長を比較し、その差(波長の変化量)を求めた。
【0085】
その結果、波長の変化量は、22.2nmであった。尚、過酸化水素水と接触させる前の蛍光ピーク波長は、750nmであった。
【0086】
また、過酸化水素の濃度Dが各々、75、50、25、10、5μモル/1lの検体を準備し、同様の操作により蛍光ピーク波長の変化(波長の変化量)を測定したところ、各々13.8nm、8.5nm、3.2nm、0.7nm、0.2nmあった。
【0087】
図2に、過酸化水素の濃度と、蛍光ピーク波長の差(波長の変化量)との関係を示す。図2は、縦軸に過酸化水素の濃度、横軸に活性酸素と反応した蛍光プローブの発光スペクトルのピーク波長の変化量即ち、ピーク波長の、測定試料と接触させる前と後との差を示す。
【0088】
図2から、過酸化水素の濃度と、波長の変化量とは、1次相関関係を示すことが分かり、定量分析が可能であることが分かる。
【0089】
また、上記特許文献1の特開2007−254352号公報で示されているような化学発光物質を用いる方法では、検体と接触させ発光すると同時にこの発光を検出する必要があり、複雑な装置構成となるが、本発明では測定する時期の制限はなく、上記のように簡便に測定を行うことができる。
【0090】
また、上記特許文献3の特開2008−128905号公報に記載の方法の測定装置は全反射光などの極めて特殊な測定装置を必要とするのに対して、本発明では上記のように汎用的に用いられる蛍光分光光度計で測定可能であり、簡便に活性酸素を測定することができた。
【符号の説明】
【0091】
A 検体と接触させる前の発光スペクトル
B 検体と接触させた後の発光スペクトル
a 発光スペクトルAの極大値を示す波長
b 発光スペクトルBの極大値を示す波長
c 波長差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光プローブを用いて活性酸素を測定する活性酸素の測定方法であって、該蛍光プローブが半導体ナノ粒子であることを特徴とする活性酸素の測定方法。
【請求項2】
検体と前記半導体ナノ粒子とを接触させ、接触させた後、該半導体ナノ粒子に励起光の照射を行い、該照射により発生した蛍光の測定を行い、活性酸素を測定することを特徴とする請求項1に記載の活性酸素の測定方法。
【請求項3】
前記照射により発生した蛍光の測定を行い、検体と半導体ナノ粒子とを接触させる前の半導体ナノ粒子の蛍光の発光スペクトルの極大値を示す波長と、検体と前記半導体ナノ粒子とを接触させた後の半導体ナノ粒子の蛍光の発光スペクトルの極大値を示す波長との差を求めることを特徴とする請求項2に記載の活性酸素の測定方法。
【請求項4】
前記活性酸素を測定する活性酸素の測定方法、が活性酸素の濃度を測定する活性酸素の測定方法であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の活性酸素の測定方法。
【請求項5】
前記半導体ナノ粒子を含有する活性酸素測定用素子を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の活性酸素の測定方法。
【請求項6】
前記半導体ナノ粒子が、Siを含有する粒子であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の活性酸素の測定方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載の活性酸素の測定方法に用いられる活性酸素測定用素子であって、半導体ナノ粒子を含有することを特徴とする活性酸素測定用素子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−75479(P2011−75479A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229329(P2009−229329)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】