説明

流体から気体分子を採取するためのガスプローブおよびガスプローブを備えた装置

本発明は、流体から気体分子を採取するためのガスプローブ(1)に関する。このプローブは、オリフィス(3)を持つハウジング(2)を有し、テストガスセンサ(4)と気体連通した状態に置かれるように適合されている。プローブは積層体(6)を備え、気体サンプル分子は、積層体内のすべての層を通過しなければ、センサに到達できない。積層体は、少なくとも第一の膜層(7a)、第一のスペーサ層(8a)、第一のフィルタ層(9a)および第二のスペーサ層(8b)を含む。ハウジングは、第二のスペーサ層の中にブロッキングガス分子を取り込むための吸気口(10)と第一のスペーサ層からブロッキングガス分子を放出するための排出口(11)とを有する。ガスプローブは、前記第二のスペーサ層に入るブロッキングガス流を制御するための制御ユニット(12)に連結可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特許請求範囲の請求項1の前文(プリアンブル部分)による、流体から気体分子を採取するためのガスプローブに関する。加えて、本発明は、本発明によるガスプローブを備えるテストガス検出システムと、本発明によるガスプローブを備えるリークテストシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
さまざまなケースにおいて、ある流体に特定の気体、たとえばテストガスが含まれるか否かを判断することが必要とされ、または望まれる。このようなケースでは、ガスプローブを用いて流体から気体分子を採取し、採取された気体分子(すなわち、気体サンプル分子)の中に存在しうるテストガス分子を、テストガスセンサを用いて検出するのが一般的である。より詳しくは、流体からの採取された気体サンプル分子をガスプローブオリフィスからガスプローブハウジングの内部に導入し、気体サンプル分子の中に存在しうるテストガス分子を、ガスプローブハウジングの内部と気体連通するように配置されたテストガスセンサによって検出する。さらに、流体中にテストガスが存在するか否かを判断するだけでなく、流体中のその濃度を測定することも必要な場合があるかもしれない。その場合、測定ユニットをテストガスセンサに連結してもよい。測定ユニットは、センサからの信号を解釈し、測定して、テストガスセンサに到達する単位体積の気体サンプル分子におけるテストガス分子の濃度に対応する、たとえばデジタル、電気、音響または光信号を供給する。
【0003】
リークテストは、ガスプローブによって流体から気体分子を採取し、採取された気体分子の中に存在しうるテストガス分子を、テストガスセンサによって検出する行為がかかわるケースの1つである。リークテストの1つの方式では、漏れ試験の対象となる物体をトレーサガス(リークテストでは、テストガスは一般にトレーサガスと呼ばれる)によって加圧し、その結果、トレーサガス分子は試験対象物の漏れ孔を通って外に出る。その後、ガスプローブを用いて試験対象物の外で気体分子を採取し、採取された気体分子内に存在しうるトレーサガスを、トレーサガスセンサによって検出する。採取された気体分子の中にトレーサガス分子が発見されれば、この試験対象物には漏れ孔がある。さらに、トレーサガスセンサに到達した単位体積の気体サンプル分子におけるトレーサガスの濃度を、トレーサガスセンサに連結された測定ユニットによって測定することにより、漏れ孔の大きさを判断してもよい。一般的に利用されるトレーサガスの例としては、ヘリウム、水素、冷媒、六フッ化硫黄、二酸化炭素がある。
【0004】
リークテストの別の方式では、試験対象物の内部を真空化し、トレーサガスを試験対象物の外側に噴霧する。その後、ガスプローブを用いて試験対象物の内部から気体分子を採取し、採取された気体分子内に存在しうるトレーサガスを、トレーサガスセンサによって検出する。
【0005】
上記のトレーサガス方式は、局所的リークテスト、すなわち試験対象物の特定のリークテスト地点におけるリークテストに適用してもよい。上記の1つ目のトレーサガス方式を局所的リークテストに使用する場合、試験対象物をトレーサガスで加圧した後に、試験対象物の外部の特定のリークテスト地点において気体分子を採取し、採取された気体分子の中に存在しうるトレーサガス分子を検出する。もう一方のトレーサガス方式を局所的リークテストに使用する場合は、試験対象物の、特定のリークテスト地点にトレーサガスを噴霧する。その後、試験対象物の内部から気体分子を採取し、採取された気体分子の中に存在しうるトレーサガス分子を検出する。
【0006】
加えて、上記のトレーサガス方式は、いわゆる全体的リークテストに適用してもよく、このテストは蓄積試験とも呼ばれる。全体的リークテストの場合、試験対象物をキャビネットまたはテストチャンバ内に設置し、その試験対象物のいずれかの地点に漏れがあるか、または漏れがないかを試験し、特定のリークテスト地点に漏れ孔があるか否かではなく、試験対象物の「全体的」な漏れについて試験される。上記の1つ目のトレーサガス方式を全体的リークテストに使用する場合、試験対象物をテストチャンバ内に設置し、トレーサガスで加圧する。その後、テストチャンバ内の試験対象物の外の容積から気体分子を採取し、採取された気体分子の中に存在しうるトレーサガス分子を検出する。もう一方のトレーサガス方式を全体的リークテストに使用する場合は、試験対象物をテストチャンバ内に設置し、トレーサガスをテストチャンバ内に、試験対象物を取り囲むように噴霧する。その後、試験対象物の内部から気体分子を採取し、採取された気体分子の中に存在しうるトレーサガス分子を検出する。
【0007】
しかしながら、流体から気体分子を採取するためにガスプローブを使用すると、各種の液体および固体の汚染物質、たとえば粉塵、デブリ、油、グリースが気体サンプル分子とともに、ガスプローブハウジングの内部と、さらにはガスプローブハウジングの内部と気体連通するように配置されたテストガスセンサの中に入るかもしれない。テストガスセンサ、ひいては測定は、この汚染物質によって不利な影響を受ける。加えて、ガスプローブハウジングの内部と気体連通した状態に置かれたフィルタ、ホース、チューブ、バルブ等のその他の構成要素は、このような汚染物質によって不利な影響を受ける。たとえば、それによってこれらの構成要素の寿命が限定されるかもしれず、またその修理保守の必要性が増すかもしれない。したがって、テストガスセンサおよび、プローブハウジングの内部と気体連通するように配置されたその他の構成要素を液体や固体の汚染物質から保護する必要がある。
【0008】
上記に加え、さまざまな理由により、テストガスセンサに到達するテストガス分子の量を制御できることも好ましい。たとえば、あるセンサは、テストガスの濃度が高いと飽和するという点で、その測定範囲が限定されている。さらに、あるセンサは、高濃度のテストガスによって一時的または永久的に破壊される。さらに、言うまでもないが、特定の期間中、テストガス分子がテストガスセンサに到達しないように、採取をオフにできることも好ましい。
【0009】
特許文献1には、トレーサガスセンサと気体連通するように配置される透過性部材を有する漏れ検出システムが記載されている。この透過性部材は、特定の条件下で、漏れ検出に使用されるトレーサガス(同特許の場合、ヘリウム)に対して透過性を有するが、それ以外の気体、液体、粒子は遮断する。ある実施形態において、透過性部材は石英で作製される。石英のヘリウム透過率は温度によって変化するため、センサに到達するトレーサガス分子の量は温度調整によって制御してもよい。比較的高温ではヘリウム透過率が高いが、比較的低温ではヘリウム透過率が低く、採取がオフにされる。
【0010】
したがって、特許文献1に開示された透過性部材をガスプローブハウジングの中のオリフィスとテストガスセンサとの間に設置して、テストガスセンサおよび、ガスプローブハウジングの内部と気体連通するその他の構成要素を液体や固体の汚染物質から保護し、テストガスセンサに到達するテストガス分子の量を制御する(すなわち、テストガスセンサを飽和と過剰曝露から保護する)ことができる。しかしながら、透過性部材の透過率を調整するため、すなわちセンサに到達するテストガス分子の量を制御するために、加熱要素が必要となる。加えて、透過性部材の透過率の調整は比較的低速の工程であり、すなわち透過率を調整し、したがってテストガスセンサに到達するテストガス分子の量を調整するには比較的長い時間がかかる。さらに、特許文献1において開示された透過性部材は、主としてヘリウムがテストガスである場合に利用するのに適しており、液体への用途、すなわち液体から気体分子を採取して、その液体内の特定のテストガスを検出するために利用するのには適していない。
【0011】
そのため、改良されたガスプローブが依然として求められており、このガスブローブは流体から気体分子を採取するために使用してもよく、このガスプローブはオリフィスを有するプローブハウジングを備え、このガスプローブは、プローブハウジングの内部がテストガスセンサと気体連通するような構成となるように適合され、その結果、ガスプローブは、プローブハウジングの内部と気体連通するように配置されたテストガスセンサが液体および固体の汚染物質のほか過剰曝露と飽和から保護され、上記の欠点を持たないという点で改良される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2005/001410号パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明の1つの目的は、流体から気体分子を採取するための改良されたガスプローブを提供することであり、前記ガスプローブはプローブハウジングを有し、このハウジングは前記流体から前記気体サンプル分子を前記プローブハウジングの内部に取り入れるためのオリフィスを有し、前記ガスブローブは、前記プローブハウジングの前記内部が、前記気体サンプル分子の中のテストガス分子を検出するように構成されたテストガスセンサと気体連通した状態に置かれるような構成となるように適合されている。
【0014】
この目的は、特許請求範囲の請求項1の特徴部分によって達成される。
【0015】
本発明の別の目的は、改良されたテストガス検出システムを提供することである。
【0016】
この目的は、請求項9の特徴部分によって達成される。
【0017】
本発明のまた別の目的は、改良されたリークテストシステムを提供することである。
【0018】
この目的は、請求項13の特徴部分によって達成される。
【0019】
好ましい実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0020】
本発明の他の目的と特徴は、添付の図面と併せて以下の詳細の説明を考えることによって明らかとなるであろう。しかしながら、理解すべき点として、図面は説明のためにのみ設計されており、本発明の範囲を画定するものではなく、本発明に範囲を知るためには、付属の特許請求範囲を参照するべきである。さらに理解するべき点として、図面は必ずしも正しい縮尺で描かれておらず、特に別段の説明がないかぎり、図面は本明細書に記される構造を概念的に示すものにすぎない。
【0021】
図中、複数の図面にわたり、同様の参照記号は同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1a】本発明によるガスプローブの第一の実施形態の概略斜視図である。
【図1b】本発明によるガスプローブの第一の実施形態の断面図である。
【図2】本発明によるガスプローブの第二の実施形態を示す。
【図3】本発明によるガスプローブの第三の実施形態を示す。
【図4a】本発明によるガスプローブの第三の実施形態の変形版を示す。
【図4b】本発明によるガスプローブの第三の実施形態の別の変形版を示す。
【図5】本発明によるガスプローブの第三の実施形態のまた別の変形版を示す。
【図6】本発明によるテストガス検出システムの一実施形態を示す。
【図7】本発明による測定ユニットを有するテストガス検出システムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、流体から気体分子を採取するのに使用してもよいガスプローブを提供する。以下に説明するように、ガスプローブは、ある流体から気体分子を採取して、その流体中に特定のテストガスが存在するか否か、およびその流体内のテストガスの濃度をそれぞれ判断するために利用してもよい。「流体」という用語は、本明細書において、流れることができ、その形状を変化させる傾向のある力による作用を受けた場合に、定常状態の形状を変化させる物質、たとえば液体または気体を意味するものである。「テストガス」という用語は、本明細書において、流体中のその存在および、おそらくその濃度が判断されるべき特定の気体、すなわち特定の気体物質または化合物を意味するものである。たとえば、テストガスは、試験対象の流体中に通常存在する気体であっても、試験対象の流体中に通常は存在しない気体であってもよい。「測定体積」という用語は、本明細書において、気体分子の採取が行われる予定の流体が占める体積を意味するものとする。たとえば、測定体積は、閉鎖されたテストチャンバ内にあってもよく、試験対象物の内部(またはその内部の一部)であってもよく、試験対象物の外の体積であってもよく、あるいは流体を構成するその他どの体積であってもよい。リークテストの分野において、トレーサガスはテストガスであってもよい。「トレーサガス」という用語は、本明細書において、試験対象物の漏れ孔を検出するために使用される気体、すなわち漏れ孔通過後に検出されることになる気体を意味するものとする。トレーサガスは、テストのためにのみ使用される気体、すなわち、漏れ孔を検出するためだけに試験対象物に供給される気体、または漏れの試験が行われる物体の通常の成分である気体であってもよい。「ブロッキングガス」という用語は、本明細書において、気体サンプル流を遮断し、またはこれに対抗するブロッキングガス流を作るために利用される気体を意味するものとする。ブロッキングガスはテストガス以外の気体であり、テストガスセンサが感知しない気体である。「テストガスセンサ」という用語は、本明細書において、テストガスを感知する機器を指すものとする。
【0024】
図1a、図1bは、本発明によるガスプローブ1の第一の実施形態の、それぞれ概略斜視図と断面図であり、このガスプローブによって気体分子が流体から採取される。ガスプローブ1はプローブハウジング2を有し、ハウジングは流体からの気体サンプル分子をプローブハウジング2の内部に取り入れるためのオリフィス3を有する。さらに、ガスプローブ1は、プローブハウジング2の内部がテストガスセンサ4と気体連通した状態に置かれるような構成となるように適合されている。「ガスプローブは、プローブハウジングの内部がテストガスセンサと気体連通した状態に置かれるような構成となるように適合されている」という表現は、本明細書において、ガスプローブが、テストガスセンサがプローブハウジングの内部に配置されてもよいように適合されているか、あるいはプローブハウジングの内部がテストガスセンサを備える別のユニットに連結可能であるように適合されていることを意味する。図1a、図1bに示される実施形態において、テストガスセンサ4は、プローブハウジング2の内部に配置される。したがって、ガスプローブ1の第一の実施形態は、テストガスセンサ4がプローブハウジング2の内部に配置されてもよいように適合されており、それによって、プローブハウジング2の内部はセンサ4と気体連通した状態に置かれる。しかしながら、以下に説明する他の実施形態では、テストガスセンサ4は別のセンサユニットの中に配置され、このセンサユニットにプローブハウジング2の内部を連結できることにより、プローブハウジング2の内部はセンサ4と気体連通した状態に置かれる。本明細書で使用する定義によれば、テストガスセンサ4は、本発明によるガスプローブ1の一部ではない。ガスプローブ1とテストガスセンサ4は、本発明によるテストガス検出システム5の中に設けられる。
【0025】
テストガスセンサ4は、採取された気体分子、すなわち気体サンプル分子の中の特定のテストガス電子を選択的に検出するように構成されている。図1a、図1bに示される実施形態において、テストガスセンサは、水素ガス感知センサ、赤外線ガス分析計または半導体可燃性ガスセンサであってもよい。
【0026】
さらに、本発明によるガスプローブ1は、保護手段6を備える。保護手段6は、複数の層の積層体で構成される。積層体6は、プローブハウジング2の中に、流体からの気体サンプル分子がオリフィス3から、およびプローブハウジング2の中へと流れる流路の障害となるように配置される。気体サンプル分子は、さらにプローブハウジング2の中へと進むには、この障害を通過しなければならない。より詳しくは、積層体6は、プローブハウジング2の中で、流体からの気体サンプル分子がオリフィス3から、およびさらにプローブハウジング2の中へと流れる流路の中に配置され、流体からの気体サンプル分子は、さらにプローブハウジング2の中へと進むには、積層体6のすべての層を通過しなければならず、すなわち、流体からの気体サンプル分子は積層体6をその脇から通過できない。図1a、図1bに示される第一の実施形態において、積層体6はプローブハウジング2の中に、積層体6の各層の縁辺がプローブハウジング2の壁と連結されるように配置されて、気体サンプル分子が積層体6とプローブハウジング2のどの壁との間も通過できないように配置される。
【0027】
さらに、積層体6は、プローブハウジング2の中に、流体からの気体サンプル分子がテストガスセンサ4に到達するためには積層体6のすべての層を通過しなければならないように配置され、すなわち積層体6はオリフィス3とテストガスセンサ4との間に位置づけられる。気体サンプル分子は、気体サンプル流の中の、すなわちオリフィス3からテストガスセンサ4に向かって方向づけられる流れの中で積層体6を通過する。本発明によれば、積層体6の各層は、膜層、フィルタ層およびスペーサ層からなる群の中から選択される。
【0028】
図1a、図1bに示されるガスプローブ1の第一の実施形態において、積層体6は、気体サンプル流の方向に見て、第一の膜層7a、第一のスペーサ層8a、第一のフィルタ層9aおよび第二のスペーサ層8bを含む。したがって、第一の膜層7aが積層体6の最も外側の層であり、第二のスペーサ層8bが積層体6の最も内側の層である。
【0029】
「膜層」という用語は、本明細書において、膜によって構成される層を意味するものとする。本発明による「膜」は多孔質の分離部材であり、テストガスおよび、おそらくその他の1つまたは複数の気体に対して透過性を有する。しかしながら、本発明による「膜」は、液体または固体粒子の形態の汚染物質の浸透を完全に、または少なくとも基本的に遮断する。したがって、これは、たとえば粉塵、デブリ、油およびグリースの浸透を遮断する。さらに、本発明による膜の孔の寸法は、テストガス分子が基本的に分子流(「拡散」とも呼ばれる)のみによって膜を透過する寸法であり、すなわち膜を通過するテストガス分子の流れは主として分子流である(基本的に、層流ではない)。したがって、本発明による「膜」は、拡散バリアとも呼ばれる。
【0030】
さらに、膜の孔の寸法は、膜が気体選択的となるような寸法であってもよく、すなわち、膜はテストガス分子に対して透過性であるが、他の特定の気体または他のすべての気体に対しては少なくとも基本的に不透過性であってもよい。たとえば、膜はテストガス分子に対して透過性であるが、より大きな分子質量の気体分子に対しては、少なくとも基本的に透過性であってもよい。したがって、膜はテストガスに対して透過性であり、その一方で、より重い気体は実質的に遮断してもよい。あるいは、膜はテストガス分子だけに対して不透過性であってもよい。さらに、膜はブロッキングガスに対して不透過性であってもよい。本発明による「膜」は、織物ポリマー材料の部材、不織材料の部材および多孔質材料の部材からなる群から選択される部材であってもよい。たとえば、本発明による「膜」は、たとえば、テフロン(登録商標)等のポリテトラフルオロエチレンであってもよい。
【0031】
「分子流」(または「拡散」)という用語は、本明細書において、その中の気体分子が他の気体分子とではなく、主に流路内の構造物(膜の孔の壁等)と衝突する流れを意味するものとする。本発明による分子流の基本的特徴は、テストガス流が部分的な圧力差によってのみ駆動されることと、したがってテストガスは、全体的な負の圧力差がないまたはそれに対向する場合であっても、流れることである。
【0032】
「層流」という用語は、本明細書において、その中の気体分子が流路内の構造物とではなく、主として他の気体分子と衝突する流れを意味するものとする。本発明による層流の基本的な特徴は、粘性を有するため、層流と反対方向への分子流(拡散)を禁止または制限することである。
【0033】
「フィルタ層」という用語は、本明細書において、フィルタにより構成される層を意味するものとする。本発明による「フィルタ」は、多孔質部材である。より詳しくは、穴の寸法は、テストガス分子とブロッキングガス分子が層流によってフィルタを透過できる寸法であり、すなわち、フィルタを通過するテストガス分子またはブロッキングガス分子の流れは主として層流(基本的に分子流ではない)である。したがって、本発明による「フィルタ」は、少なくともテストガスとブロッキングガスに対して透過性であり、本発明による膜より大きな寸法の孔を有する部材である。以下に詳しく述べるように、本発明による「フィルタ層」はまた、「分散層」と呼んでもよい。本発明による「フィルタ」は、焼結フィルタ、織物金属材料の部材、織物ポリマー材料の部材、不織材料の部材、および多孔質材料の部材からなる群から選択される部材であってもよい。
【0034】
「スペーサ層」という用語は、本明細書において、スペーサにより構成される層を意味するものとする。本発明による「スペーサ」とは、本発明によるフィルタより大きな穴を有する部材であってもよい。あるいは、本発明による「スペーサ」は、空隙であってもよい。テストガス分子とブロッキングガス分子は、層流によって「スペーサ」を通過してもよく、すなわちスペーサを通過するテストガス分子またはブロッキングガス分子の流れは主として層流(基本的に分子流ではない)である。本発明による「スペーサ」は、空隙、焼結フィルタ、織物金属材料の部材、織物ポリマー材料の部材、不織材料の部材、および多孔質材料の部材からなる群から選択される部材であってもよい。したがって、積層体6の各スペーサ層はそれぞれ、この群から選択された部材であってもよい。
【0035】
上記の定義により、膜はフィルタよりテストガス分子に対する流れ抵抗が大きく、フィルタはスペーサよりテストガス分子に対する流れ抵抗が大きい。同様に、膜はフィルタよりブロッキングガス分子に対する流れ抵抗が大きく、フィルタはスペーサよりブロッキングガス分子に対する流れ抵抗が大きい。
【0036】
上記により、テストガスは積層体6のすべての層を通過してテストガスセンサ4へと流れてもよい。したがって、流体からの気体サンプル分子、すなわちテストガス分子は、積層体6のすべての層を通過してもよい。しかしながら、テストガス以外の気体である、流れからの気体サンプル分子が積層体6を通過するか否かは、膜層7aの膜の種類によって決まる。したがって、膜がテストガス分子だけを通過させる場合、テストガスセンサ4に到達する気体サンプル分子はすべてテストガス分子である。しかしながら、膜が他の気体分子も通過させる場合、テストガスセンサに到達する気体サンプル分子はテストガス分子または、第一の膜層7aの膜を透過できた他の気体の気体分子であってもよい。
【0037】
上記の特徴を有する膜、フィルタ、スペーサは市販されており、当業者は各用途に適したものとなるように選択してもよい。特に、これらは、各用途のテストガスに応じて、すなわち、各用途において流体中の存在が検出されるべき特定の気体に応じて選択される。
【0038】
図1a、図1bに示される第一の実施形態において、保護手段6はオリフィス3に設置されているように示されている。より詳しくは、図1a、図1bにおいて、保護手段6は1つの層、すなわち第一の膜層7aがオリフィス3の中に位置づけられるように配置される。そのため、この層はオリフィス3を構成するように見えるかもしれない。しかしながら、別の例(図示せず)では、保護手段6はプローブハウジング2の中の別の場所、すなわちオリフィス3から離れた場所に設置してもよい。
【0039】
さらに、プローブハウジング2は、ブロッキングガス、すなわちブロッキングガス分子をプローブハウジング2の外から第二のスペーサ層8bの中に導入するための吸気口10と、ブロッキングガス分子を第一のスペーサ層8aからプローブハウジング2の外に放出するための排出口11を有する。上記の定義により、第一のフィルタ層9aはブロッキングガス分子に対して透過性である。排出口11に到達するためには、ブロッキングガス分子は第一のフィルタ層9aを、気体サンプル流の方向と反対の方向に向けられるブロッキングガス流として通過しなければならない。そのため、ブロッキングガス流は、第一のフィルタ層9aの中で、第二のスペーサ層8bから第一のスペーサ層8aへと向けられる。たとえば、ブロッキングガスは窒素ガスまたは空気であってもよい。
【0040】
前述のように、第一のフィルタ層9aは第二のスペーサ層8aよりもブロッキングガスに対する流れ抵抗が大きい。より詳しくは、第一のフィルタ層9aは、第二のスペーサ層8bと比較して、それが流れ分散層として機能するようなブロッキングガスに対する流れ抵抗を有する。したがって、この層は、吸気口10から第二のスペーサ層8bの中に導入されるブロッキングガス流を、第一のフィルタ層9aの上でより均一に、すなわち第二のスペーサ層8bの近辺に配置された第一のフィルタ層9aの表面上でより均一に分散させるために配置される。好ましくは、第一のフィルタ層9aは、第二のスペーサ層8bと比較して、第二のスペーサ層8bに導入されるブロッキングガス流が分散されて、完全な、または少なくとも基本的に完全な第一のフィルタ層9aの上のブロッキングガス流が第一のスペーサ層8aに向かう方向に確立されるような、ブロッキングガスに対する流れ抵抗を有する。
【0041】
第一のフィルタ層9aを通過するように確立されたブロッキングガス流は気体サンプル流と反対方向に向けられているため、そこを通過する気体サンプル分子の流れに対抗する。対抗の程度は、とりわけ第一のフィルタ層9aを通過する実際のブロッキングガスの流れの大きさに依存し、これはとりわけ、第二のスペーサ層8bの中に導入されるブロッキングガス流の大きさに依存する。第二のスペーサ層8bの中に導入されるブロッキングガスの大きさ、したがって上記の濃度を制御できるようにするために、本発明によるガスプローブ1は制御ユニット12に連結可能である。制御ユニット12は、吸気口10から第二のスペーサ層8bに導入されるブロッキングガス分子の流れを制御して、第一のフィルタ層9aを通過するブロッキングガス流を制御し、第一のフィルタ層9aを通過する反対の気体サンプル流を制御するように配置される。たとえば、制御ユニット12は、バルブまたは速度制御可能ポンプであってもよい。
【0042】
図1a、図1bは、第一の実施形態のガスプローブ1を制御ユニット12に連結した状態を示している。本発明によるガスプローブ1は、制御ユニット12を備えていてもよい。しかしながら、別の態様として、ガスプローブ1は制御ユニット12を備えず、制御ユニット12に連結可能であってもよい。
【0043】
したがって、本発明によれば、第一のフィルタ層9aを通過する気体サンプル分子の流れ、すなわち気体サンプル分子の量を、第二のスペーサ層8bに導入されるブロッキングガス流の大きさを制御することによって制御できる。気体サンプル分子は、テストガスセンサ4に到達するためには、第一のフィルタ層9aを通過しなければならないため、テストガスセンサ4に到達する気体サンプル分子の量は、それによって制御されてもよい。ブロッキングガス流の大きさは、第一のフィルタ層9aを通過できる気体サンプル分子が全くない、または基本的にまったくないように、すなわち第一のフィルタ層9aを通過する気体サンプル流を完全に遮断し、またはこれに実質的に対抗するように制御してもよい。すると、採取は完全に、または実質的にオフとなる。したがって、第一のフィルタ層9aを通過するブロッキングガス流の大きさを制御することによって、採取のオンとオフを切り替えてもよい。あるいは、ブロッキングガス流の大きさは、特定の量の気体サンプル分子が第一のフィルタ層9aを通過できるように、すなわち第一のフィルタ層9aを通る気体サンプル流に、特定の程度までしか対抗しないように制御してもよい。気体サンプル流に特定の程度までしか対抗しないと、気体サンプル分子は、第一のフィルタ層9aを、そこを通過するブロッキングガス流に対抗して通過するかもしれない。これは、テストガスセンサ4を飽和および/または過剰曝露、すなわち、センサ4が故障するような高い濃度のテストガスへの曝露を防止するために利用してもよい。これに加えて、ブロッキングガス流は完全に遮断してもよい。
【0044】
さらに、ブロッキングガス流の大きさを制御できることにより、ガスプローブ1の拒否率の設定も可能である。すると、ブロッキングガス流の大きさを設定でき、これは、特定の限界以下のすべての濃度のテストガス分子がテストガスセンサ4に到達しない、すなわち限界以下の濃度のテストガス分子が拒否されることを意味する。
【0045】
さらに、図1aに示されるガスプローブ1の第一の実施形態は、円筒形の形状を有するように概略的に示されている。しかしながら、これは適当であればどのような形状でもよく、たとえば銃のような形状でもよい。
【0046】
上記に加え、本発明によるガスプローブ1は、テストガス検出システム内の他の構成要素に連結するように配置してもよく、したがって、他の構成要素との1つまたは複数の連結手段を有していてもよい。1つの連結手段を、図1bにおいて参照番号13として概略的に示す。
【0047】
他の実施形態において、本発明によるガスプローブ1の積層体6は、第一の実施形態と比較して、1つまたは複数の別の膜層および/または1つまたは複数の別のフィルタ層および/または1つまたは複数の別のスペーサ層を備えていてもよい。したがって、積層体6は、適当であればいくつの膜層、フィルタ層、スペーサ層を備えていてもよい。しかしながら、いずれの実施形態においても、積層体6は、気体サンプル流の方向に見て、第一の膜層7a、第一のスペーサ層8a、第一のフィルタ層9aおよび第二のスペーサ層8bを備える。
【0048】
図2、図3は、本発明によるガスプローブ1の第二と第三の実施形態を示している。第二と第三の実施形態は第一の実施形態に対応しているが、相違点として、積層体6がさらに、第一の膜層7aに近接して配置された第二のフィルタ層9bを備えている。図2に示される第二の実施形態において、第二のフィルタ層9bが第一の膜層7aと第一のスペーサ層8aとの間に介在し、これによって、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第二のフィルタ層9bは第一の膜層7aの後で、第一のスペーサ層8aの前に配置される。図3に示される第三の実施形態では、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第二のフィルタ層9bは第一の膜層7aの前に配置される。第二のフィルタ層9bは機械的支持手段だけでなく、第一の膜層7aのための保護手段にもなる。
【0049】
さらに、図1a、図1b、図2、図3に示される第一、第二、第三の実施形態のいずれも、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第二のスペーサ層8bの後に配置された第三のフィルタ層9cと、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第三のフィルタ層9cの後に配置された第三のスペーサ層8cをさらに備えるように変更してもよい。このような変形版の1つを図4aに示す。より詳しくは、図4aの変形版は第三の実施形態に対応するが、相違点として、それは、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第二のスペーサ層8bの後に配置された第三のフィルタ層9cと、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第三のフィルタ層9cの後に配置された第三のスペーサ層8cをさらに備える。これに対応する、第一と第二の実施形態の変形版は示していない。第三のフィルタ層9cは、ブロッキングガスの流れを制御することにより(すなわち、ブロッキングガスの流れをオンとオフに切り替えるときに)発生する圧力衝撃と温度衝撃からセンサ4を保護するために配置してもよい。
【0050】
積層体6が、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第二のスペーサ層8bの後に配置された第三のフィルタ層9cと、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第三のフィルタ層9cの後に配置された第三のスペーサ層8cをさらに備える変形版のいずれも、任意で、第三のフィルタ層9cと第三のスペーサ層8cとの間に介在する第二の膜層7bをさらに備えていてもよい。図4bはそのような変形版の1つを示しており、これは図4aの変形版に対応しているが、相違点として、それは第二の膜層7bをさらに備える。第二の膜層7bは、ブロッキングガスの流れを制御することにより(すなわち、ブロッキングガスの流れをオンとオフに切り替えるときに)発生する圧力衝撃と温度衝撃からセンサ4を保護するために配置してもよい。
【0051】
さらに、上記の実施形態またはその変形版のいずれも、積層体6が第一のスペーサ層8aと第一のフィルタ層9aとの間に介在する第四のフィルタ層9dと第四のスペーサ層8dを備えるようにさらに変形してもよい。第四のフィルタ層9dは、積層体6を通過する気体サンプル流の方向に見て、第四のスペーサ層8dの前に配置される。図5はそのような変形版の1つを示しており、これは図4aの変形版に対応するが、相違点として、第一のスペーサ層8aと第一のフィルタ層9aとの間に介在する第四のフィルタ層9dと第四のスペーサ層8dをさらに備える。第四のフィルタ層9dは、第四のスペーサ層8dよりブロッキングガスに対して流れ抵抗が大きく、すなわち、これは第一のフィルタ層9aと同様に、流れ分散層として機能する。第四のフィルタ層9dは、吸気口10から導入されるブロッキングガス流の分布を改善するために配置されてもよい。
【0052】
第四のフィルタ層9dと第四のスペーサ層8dを備える実施形態において、第二のスペーサ層8bから第一のスペーサ層8aへと、第一のフィルタ層9aと第四のフィルタ層9dの両方を通過するように向けられるブロッキングガス流が確立する。これによって、ブロッキングガス流は、第一のフィルタ層9aと第四のフィルタ層9dの両方を通過する気体サンプル流に対抗する。
【0053】
前述のように、本発明によるガスプローブ1の積層体6は、適当であればいくつの膜層、フィルタ層、スペーサ層を有していてもよい。膜層の各膜、フィルタ層の各フィルタ、スペーサ層の各スペーサは、それぞれ、上記の膜部材、フィルタ部材、スペーサ部材から個別に選択してもよい。したがって、どの2つの膜層も同じ種類でも異なる種類でもよく、すなわち、その特性は同じでも異なっていてもよい。同じことがどの2つのフィルタ層とどの2つのスペーサ層にもあてはまる。図中、スペーサ層は空虚として示されている。しかしながら、上記によれば、スペーサ層のスペーサは空虚である必要はなく、上記の群から選択してもよい。
【0054】
気体分子の試料を液体から採取する場合、ガスプローブ1の第二の実施形態またはその変形版を利用することが特に適している。これは、第一の膜層7aを液体と接触させる必要があるかもしれないからである。
【0055】
本発明によるガスプローブ1の上記の実施形態のいずれを使用する場合も、気体分子は流体から採取される。流体からの気体サンプル分子はオリフィス3からプローブハウジング2の内部に入る。しかしながら、積層体6はガスプローブハウジング2の中に、気体サンプル分子がさらにプローブハウジング2に入り、センサ4に到達するには、気体サンプル分子が積層体6を通過しなければならないように配置される。積層体6の第一の膜層7aにより、流体からどの気体分子がガスプローブハウジング2の中にさらに通過されるかが決まり、すなわち、第一の膜層7aによって,気体サンプル分子中のどの種類の気体分子がプローブハウジング2へとさらに通過するものとして発見されるかが決まる。第一の膜層7aの特性に応じて、テストガス分子だけが第一の膜層7を透過してもよく、あるいはテストガス分子とその他の気体分子が第一の膜層7aを透過してもよい。さらに、第一の膜層7aは液体と固体の汚染物質の浸透を遮断し、それによって、プローブハウジング2の内部と気体連通するセンサ4およびその他の構成要素が液体と固体の汚染物質から保護される。ブロッキングガス流を吸気口10から第二のスペーサ層8bに導入して、少なくとも第一のフィルタ層9aを通過するブロッキングガス流を確立してもよく、これはフィルタ層9aを通過する気体サンプル流の方向と反対方向に向けられる。ガスプローブ1に連結された制御ユニット12によって、ブロッキングガス流の大きさを制御してもよい。その結果、第一のフィルタ層9aを通過し、したがってテストガスセンサ4に到達する気体サンプル分子、そしてテストガス分子の量を制御でき、センサ4は飽和と、センサ4が故障するような大量のテストガス分子への曝露から保護される。加えて、ブロッキングガス流の制御により、採取のオン、オフが切り替えられる。
【0056】
本発明によるガスプローブ1は、流体内のテストガス分子を検出することが必要または望ましいさまざまなケースで利用できる。たとえば、トレースガスを利用する前述のリークテスト方式のいずれかを使用するリークテストの分野で用いられる。その場合、トレーサガスはテストガスとなる。ガスプローブ1を使って、流体から気体分子を採取し、流体内に存在しうるトレーサガス分子を、トレーサガスを選択的に検出するセンサ4によって検出する。トレーサガスは、水素、ヘリウム、二酸化炭素、六フッ化硫黄、炭化水素からなる群から選択してもよい。
【0057】
プローブ1の実施形態と前述の変形版において、ガスプローブ1は、テストガスセンサ4をプローブハウジング2の中に配置できるように適合されている。しかしながら、上記のガスプローブ1の実施形態およびその変形版のいずれも、テストガスセンサ4を別のユニットに設けて、そこにプローブハウジング2の内部を連結できるようにガスプローブ1が適合されるように変更してもよい。このような実施形態において、センサ4は、たとえば水素ガス感知センサ、赤外線ガス分析計、半導体可燃性ガス検出器または質量計であってもよい。図6は、テストガスセンサ4を有する別のセンサユニット15に連結されたガスプローブ1の第一の実施形態の断面が示されている。ガスプローブ1は連結手段13とホース14を通じてセンサユニット15に連結される。
【0058】
本発明はテストガス検出システム5にも関し、これはガスプローブ1の上記の実施形態またはその変形版もしくは代替版のいずれかとテストガスセンサ4を備える。テストガスセンサ4は、プローブハウジング2の内部にあっても(図1a、図1b、図2、図3、図4a、図4b、図5)、別のセンサユニット15の中にあっても(図6)よい。本発明によるテストガス検出システム5は、任意で、ブロッキングガス供給源(図示せず)、ブロッキングガスポンプ(図示せず)および測定ユニット(図7)からなる群から選択される少なくとも1つのデバイスをさらに備えていてもよい。ブロッキングガス供給源はブロッキングガスの供給源となるように配置され、ブロッキングガスポンプは、ブロッキングガス供給源から吸気口10にブロッキングガスを送出するポンプを構成するように配置される。センサ4が別のセンサユニット15の中に配置されるテストガス検出システム5は、任意で、吸引流発生装置(図示せず)をさらに備えていてもよく、これによって、プローブハウジング2の内部からセンサユニット15へと、気体分子の吸引流が発生される。吸引流は、積層体6を通過してきた気体サンプル分子のセンサ4への輸送を加速するために発生される。図6は、センサ4が別のセンサユニット5の中に設置された本発明によるテストガス検出システム5の一例を示す。
【0059】
前述のように、本発明によるテストガス検出システム5は、任意で、測定ユニットをさらに備えていてもよい。測定ユニット16は、センサ4からの信号を解釈し、測定して、テストガスセンサ4に到達した単位体積の気体サンプル分子におけるテストガス分子の濃度に対応する、例えばデジタル、電気、音響または光信号を供給するように配置される。測定ユニット16を備えるテストガス検出システム15の一例を図7に示しており、システム5はガスプローブ1の第一の実施形態を備える。
【0060】
上記に加え、本発明はリークテストシステムにも関し、これは、本発明によるテストガス検出システム5と、試験対象物を受けるように配置された密閉可能なテストチャンバ、ガスプローブをテストチャンバに連結するためのフランジ、トレーサガス供給源、トレーサガス制御ユニット、トレーサガス圧力調整器、真空ポンプ、試験対象物のための固定具、固定具制御ユニットからなる群から選択される少なくとも1つの装置を備える。テストチャンバは蓄積試験で使用されるチャンバであってもよい。トレーサガス発生源は、トレーサガスの発生源となるように配置される。トレーサガス制御ユニットは、トレーサガス発生源から試験対象物の中、または試験対象物を取り囲む筐体内にトレーサガスを充填するのを管理する。トレーサガス圧力調整器はトレーサガス供給源からの出力圧を制御するように配置される。試験対象物のための固定具は、試験対象物に連結され、ガスの充填および排除を行い、また漏れ孔とならないその他の開口部を密閉するように配置される。固定具制御ユニットは、固定具の連結と密閉を操作するように配置される。
【0061】
さらに、本発明によるガスプローブ1を前述の蓄積試験方式のいずれかに使用して、漏れの試験対象物を閉鎖されたチャンバ内に設置し、試験対象物をトレーサガスで加圧する場合、ガスプローブ1はチャンバと気密状態で連結されるように設置される。より詳しくは、ガスプローブ1のオリフィス3は、チャンバと気密状態で連結するように配置される。チャンバは、試験対象物から漏出するトレーサガスをすべて回収するように配置される。テストサイクル内で1回または複数回、チャンバ内の試験対象物の外の体積から気体分子をガスプローブ1によって採取する。
【0062】
本発明によるガスプローブ1により、チャンバ内の圧力を基本的に低下させることなく、チャンバ内の流体から気体分子を採取することが可能となる。これは、気体サンプル分子が拡散によって第一の膜層7aを通過する必要があるためであり、すなわち、濃度の差が、気体サンプル分子がチャンバからガスプローブ1へと通過する理由である。これによって、チャンバとガスプローブ1との間で濃度の異なる気体の分子だけが、ガスプローブ1の中へと通過する。たとえば、空気は通常、チャンバとガスプローブの両方の中にあるため、空気は試料採取中、少なくとも基本的にチャンバからガスプローブ1の中へと通過しない。これによって、(多くの先行技術のデバイスのように、)各試料採取中に特定の体積の空気がチャンバから移動することはない。各試料採取中に特定の体積の空気がチャンバから移動するような場合、毎回の試料採取時にチャンバ内が減圧される。すると、1回の試料採取が次回の採取の結果に不利な影響を与えるため、測定結果が影響を受ける。本発明によるガスプローブ1によれば、各試料採取中にチャンバから特定の体積の気体を排除しないため、本発明によるガスプローブ1は、より正確に、より高い信頼性で、より高感度で漏れを検出するのに利用できる。
【0063】
以上のように、本発明の、その好ましい実施形態に適用される基本的な新規の特徴を示し、説明し、指摘してきたが、理解すべき点として、当業者であれば、説明した装置、方法ステップ、製品の形態と詳細に各種の省略、置換、変更を加えることができる。たとえば、実質的に同じ機能を実質的に同じ方法で果たし、同じ結果を達成する要素および/または方法ステップのあらゆる組み合わせは、本発明の範囲内に含められることは明確である。さらにまた、理解すべき点として、上で開示した本発明の形式または実施形態に関連して示し、および/または説明した構成および/または要素および/または方法ステップを、開示し、または説明し、または提案した他の形式または実施形態に、一般的な設計上の選択肢として取り入れることができる。したがって、本発明は付属の特許請求範囲によってのみ限定されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体から気体分子を採取するガスプローブ(1)であって、このガスプローブ(1)は、気体サンプル分子を前記流体からハウジングの内部に取り入れるためのオリフィス(3)を有するプローブハウジング(2)を備えて構成され、前記プローブハウジング(2)の前記内部が、前記気体サンプル分子の中のテストガス分子を検出するように構成されたテストガスセンサ(4)と気体連通した状態に置かれるような構成となっている、ガスプローブ(1)において、
前記ガスプローブ(1)はさらに、層(7a、7b、8a、8b、8c、8d、9a、9b、9c、9d)の積層体で構成される保護手段(6)を備え、前記保護手段である積層体(6)は、前記プローブハウジング(2)の中で、前記オリフィス(3)から、およびさらに前記プローブハウジング(2)の中へ入る気体サンプル分子のための流路内に配置され、その結果、気体サンプル分子が、前記プローブハウジング(2)の中へとさらに進んで前記テストガスセンサ(4)に到達するために、前記積層体(6)のすべての層(7a、7b、8a、8b、8c、8d、9a、9b、9c、9d)を通過する必要があり、気体サンプル分子は気体サンプル流の中で前記積層体(6)を通過し、前記積層体(6)は、前記気体サンプル流が前記積層体(6)を通過する方向に見て、少なくとも第一の膜層(7a)と、第一のスペーサ層(8a)と、第一のフィルタ層(9a)と、第二のスペーサ層(8b)とを有していること、
前記プローブハウジング(2)は、ブロッキングガス分子を前記第二のスペーサ層(8b)の中に導入するための吸気口(10)と、ブロッキングガス分子を前記第一のスペーサ層(8a)から外に放出するための排出口(11)とを有し、前記ブロッキングガス分子は、前記排出口(11)に到達するために、前記気体サンプル流の方向とは逆方向に向けられたブロッキングガス流内で前記第一のフィルタ層(9a)を通過する必要があること、および
前記ガスプローブ(1)は、前記吸気口(10)から前記第二のスペーサ層(8b)へのブロッキングガス分子の流れを制御し、前記第一のフィルタ層(9a)を通過する前記ブロッキングガス流を制御して、前記第一のフィルタ層(9a)を通過する前記気体サンプル流を制御するための制御ユニット(12)に連結可能であること、
を特徴とするガスプローブ(1)。
【請求項2】
前記ガスプローブ(1)は前記制御ユニット(12)を備えて構成されることを特徴とする、請求項1に記載のガスプローブ(1)。
【請求項3】
前記積層体(6)が、前記第一の膜層(7a)と前記第一のスペーサ層(8a)との間に介在する第二のフィルタ層(9b)をさらに備え、前記第二のフィルタ層(9b)は、前記積層体(6)を通過する前記気体サンプル流の方向に見て、前記第一の膜層(7a)の後で、前記第一のスペーサ層(8a)の前に配置されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガスプローブ(1)。
【請求項4】
前記積層体(6)は、前記積層体(6)を通過する前記気体サンプル流の方向に見て、前記第一の膜層(7a)の前に配置された第二のフィルタ層(9b)をさらに備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のガスプローブ(1)。
【請求項5】
前記積層体(6)は、前記積層体(6)を通過する前記気体サンプル流の方向に見て、前記第二のスペーサ層(8b)の後に配置された第三のフィルタ層(9c)と、前記積層体(6)を通過する前記気体サンプル流の方向に見て、前記第三のフィルタ層(9c)の後に配置された第三のスペーサ層(8c)とをさらに備えることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のガスプローブ(1)。
【請求項6】
前記積層体(6)は、前記第三のフィルタ層(9c)と前記第三のスペーサ層(8c)との間に介在する第二の膜層(7b)をさらに備えることを特徴とする、請求項5に記載のガスプローブ(1)。
【請求項7】
前記積層体(6)は、前記第一のスペーサ層(8a)と前記第一のフィルタ層(9a)との間に介在する第四のフィルタ層(9d)と第四のスペーサ層(8d)をさらに備え、前記第四のフィルタ層(9d)は、前記積層体(6)を通過する前記気体サンプル流の方向に見て、前記第四のスペーサ層(8d)の前に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のガスプローブ(1)。
【請求項8】
前記テストガスは、水素、ヘリウム、二酸化炭素、六フッ化硫黄、炭化水素からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のガスプローブ(1)。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のガスプローブ(1)と前記テストガスセンサ(4)とを備えることを特徴とする、テストガス検出システム(5)。
【請求項10】
前記テストガスセンサ(4)は、前記ガスプローブ(1)の前記プローブハウジング(2)の内部に配置されていることを特徴とする、請求項9に記載のテストガス検出システム(5)。
【請求項11】
前記テストガスセンサ(4)が、前記ガスプローブ(1)の前記プローブハウジング(2)の内部に連結可能な別のセンサユニット(15)の中に配置されていることを特徴とする、請求項9に記載のテストガス検出システム(5)。
【請求項12】
ブロッキングガス供給源、ブロッキングガスポンプおよび測定ユニット(16)からなる群から選択される少なくとも1つの装置をさらに備えることを特徴とする、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載のテストガス検出システム(5)。
【請求項13】
請求項9から請求項12のいずれか一項に記載のテストガス検出システム(5)、並びに、試験対象物を収容するように構成された密閉可能なテストチャンバと、前記ガスプローブ(1)を前記テストチャンバに連結するためのフランジと、トレーサガス供給源と、トレーサガス制御ユニットと、トレーサガス圧力調整器と、真空ポンプと、前記試験対象物のための固定具と、固定具制御ユニットとからなる群から選択される少なくとも1つの装置を備えることを特徴とする、リークテストシステム。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−520121(P2011−520121A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508438(P2011−508438)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/SE2008/050506
【国際公開番号】WO2009/136821
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(503447863)アディクセン スカンディナビア エービー (2)
【Fターム(参考)】