説明

流体と蒸気を除去する方法及び装置

本発明は、流体と蒸気を、アレイ及びマイクロアレイフォーマットでプリントされたタンパク質スポットのような基体及び支持平面を含む隣接する表面から、閉じ込められた状態で除去するための方法及び装置に関する。この方法及び装置は、メニスカス相の表面張力の影響を減少させ、及び防止しながら、粒子及び生物基質を吸着した組織を含む物体、標本、及び構造体によって誘起される乾燥の度合いに対する一様な段階を可能にする、制御された繰返し可能な条件下で流体と蒸気を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイ及びマイクロアレイフォーマットにプリントされたタンパク質スポットのような、基体及び支持平面を含む隣接する分析試料面から流体と蒸気を除去するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体材料及び組織を含む柔らかい構造体のほとんどは、乾燥されたときに崩壊し、平らになり、又は収縮する。制御されていない空気乾燥に固有の主な欠点は、標本を通して空気と水との界面が後退していくことに関係する。長期にわたる空気乾燥プロセスの間中、関連する表面張力が、ほぼ13790kPa(2000p.s.i)までの剪断力及び応力をかける。柔らかい構造体の崩壊及び歪み並びに破壊を防止するために、乾燥される表面の上の及び/又は乾燥される構造体を通した界面の通過を調整することが必須である。これは、凍結乾燥、臨界点乾燥又は他の複雑な真空乾燥手順を含む複雑な技術を用いてナノ構造体の保全レベルまで達成することができる。これらの技術は本質的に実行するのが難しい。
【0003】
別の問題は、二次汚染を防止し人員を感染から保護するために、プロセスの間、テスト流体、エアロゾル、及び/又はバイオアレイに含まれるあらゆる病原体が乾燥装置内に閉じ込められ、効果的に除去され、不活性化されるようにする、遮られていない経路を実現するために、乾燥装置を限定された空間内でキャリア基体上に位置決めすることである。
【0004】
強化された保全を可能にするために、過剰なバルク処理流体を除去し、その後、乾燥されるべき物体又は基体の近傍の流体蒸気を、制御され且つ閉じ込められた状態で除去するための、改善された方法及び装置に対する必要性がある。効果的で、制御可能な、一般に調整可能な、軽量の、実行が簡単な装置を用いて、こうしたバルク流体の除去に続いて蒸気を除去する方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
メニスカス相の表面張力の影響を減少させ、及び防止しながら、粒子及び生物基質を吸着した組織を含む、物体、標本、及び構造体によって誘起される乾燥の度合いに対する一様な段階を可能にする、制御された繰返し可能な条件下で流体と蒸気を除去する方法及び装置に対するさらなる必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、分析面から流体と蒸気を除去するための方法を提供する。この方法は2つの段階に関係する。第1の段階において、分析面からバルク流体を除去するために、真空に接続された吸引管が用いられる。吸引管は、この段階の間、該吸引管がバルク流体を除去する際に分析面に対し移動される。バルク流体が除去されると、第2の段階が採用され、そこでは、残留蒸気を除去するための真空が吸引管に適用される。
【0007】
本発明は、この方法を実施するための装置を含む。この装置は、蒸気と流体を除去するための真空源に接続された吸引管を含む。吸引管は、アクチュエータによって移動される可動プラットフォームに取り付けられる。
【0008】
本発明の1つの態様によれば、表面から流体と蒸気を除去するための装置であって、移動手段に接続された可動プラットフォームと、第1及び第2開放端を有し該第2開放端が可動プラットフォームに結合されている吸引管と、前記管を通して真空を適用するための、吸引管の第2開放端に接続された真空源とを備える装置が提供される。
【0009】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つの穴を画定する表面を乾燥させるための方法であって、移動手段に接続された可動プラットフォームと、第1及び第2開放端を有し該第2開放端が可動プラットフォームに結合されている吸引管と、前記管を通して真空を適用するための、吸引管の第2開放端に接続された真空源とを備える乾燥装置を提供する工程と、吸引管の第1開放端を前記少なくとも1つの穴の中央部の近傍に配置する工程と、前記穴からバルク流体を除去するために前記吸引管を通して真空を適用する工程と、前記穴からバルク流体を除去するために吸引管を穴の中央部から前記穴の周辺端部へ及び前記穴の周辺付近へ動かす工程と、前記穴から吸引管を除去する工程と、吸引管の第1開放端が穴から所定の距離となるように前記吸引管を動かす工程と、前記穴から蒸気を除去するために前記吸引管を通して真空を適用する工程とを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の乾燥装置の好ましい実施例の斜視図である。
【図2】本発明の乾燥装置の好ましい実施例の下面図である。
【図3】図2の線3−3に沿った断面図である。
【図4】本発明の乾燥装置によって乾燥させることができる分析装置の上部正面図である。
【図5】本発明に係るバルク流体の制御された除去のための後続するべき一連の作用を示す概略的な流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、乾燥装置1はフレーム2を有する。フレーム2は、フレームをXYZ平面に沿って三次元に動かすアクチュエータ(図示せず)に結合することができる。アクチュエータは、移動手段として機能し、当該技術分野では公知の多くのアクチュエータのうちの1つとすることができる。好ましいアクチュエータは、米国のBioTek Instruments製のELx405 Microplate Washerである。
【0012】
乾燥装置は、フレーム2に取り付けられたハウジング4を含む。ハウジング内に複数の吸引管10が設置される。代替的な実施例においては、乾燥器は、わずか1つの管を有することができる。管10の各々は、長さを画定し、第1開放端6と第2開放端8との間の長さに沿って縦孔12を画定する。図3に示すように、縦孔12は、第1開放端6が第2開放端8の直径よりも大きい直径を有するように先細りにすることが好ましい。
【0013】
吸引管10の長さは変化してもよい。好ましい実施例において、長さは、3.5度の円錐角ピッチに基づいた約1.7の開口部直径アスペクト比に合わせて導出された約18のアスペクト比を維持するのに十分なものである。基体の近傍の第1開放端6における吸引管10の壁の厚さは約400μmであることが好ましい。第1開放端6の直径は約5mmである。第2開放端8は約2mmの直径を有し、すべての吸引管10を通して真空ヘッドの中に一定の空気が流れることを可能にするのに好ましい直径は、除去可能な流体負荷を閉じ込める分析装置の周囲と壁の高さとの比によって定義される場合の基体表面にわたる流れアクセスの設定によって調整される。
【0014】
乾燥装置1は、各吸引管の第2開放端8に真空を適用するための手段を含む。真空を適用するための手段は、当該技術分野では公知の種々の手段のいずれかとすることができる。好ましい実施例において、真空手段は、米国VacuuBrand製の真空ポンプ、ME4C NT Varioである。
【0015】
好ましい実施例の乾燥器装置1は、特に図4に示された分析装置50のようなタイプの分析装置を乾燥するのに用いられることが好ましい。分析装置50は複数の穴52を有する。前記穴50の各々は、プレート上に効果的に上部構造を提供して単一の穴又は個別の多数の穴を形成する、交差する壁54によって分離される。多数の穴は、各穴がその上にプリントされた例えばタンパク質スポット・マイクロアレイフォーマットの形態の分析試料を有することができるので、多数の物体が同じプレート上で処理されることを可能にするという付加的恩恵を有する。
【0016】
作動時には、本発明は、特にマイクロアレイ・タンパク質スポット分析装置から流体と蒸気を除去するための2段階方法を提供する。乾燥器装置1によって実行される方法は、最初に、タンパク質スポット・マイクロアレイの洗浄及び処理に典型的に用いられる分析装置の表面から比較的大量のバルク流体を除去し、その後、マイクロアレイを構成する三次元タンパク質スポットにおける一様な水和状態を効果的に誘起するために残留している流体蒸気を除去することに関係する。理論によって拘束されることなく、マイクロアレイ構成成分の水和状態は信号強度に直接影響し、それにより、特に診断等級のマイクロアレイ信号に適用されたときに、バイオアレイデータの強化された定量分析を可能にすることが見出されている。本発明の方法は、マイナスの及び破壊的影響を誘起することなくタンパク質スポット・バイオ・アレイ・フォーマットの乾燥を提供して、流体と蒸気が直接又はタンパク質スポット・バイオ・アレイ表面の上の誘起された空気の流れと共に除去される際に、感染性物質が環境中に放散されるのを防止するために、これらの同時に除去された媒体が閉じ込められ除染されることを保証する。
【0017】
乾燥方法の段階1は、分析装置の穴からのバルク流体の除去に関係する。バルク流体を除去するために、プラットフォームは、一様な乾燥を提供するために吸引管をそれらの対応する穴に対し特定の及び所定の移動パターンで順次に移動させるように動かされる。段階1において、吸引管10を穴52の中央部又は表面から除去されるべき流体の体積の中に、支持基体よりも上の所定の高さまで浸漬するときに、流体除去が開始される。真空引きは、図5Bに示されているように、吸引によって十分な空気圧を生成して流体の順次の移動をもたらすために、吸引管10を通して適用される。穴52内に閉じ込められた流体が除去されて、穴52のような基体の半乾燥領域が残る。穴52の周辺部の周りの残留しているバルク流体が、メニスカスの力と保持壁54によってその場にとどまる。この残留しているバルク流体は、吸引管が図5Cの矢印によって示されるように好ましい制御された吸引経路をたどる際に、吸引管10を介して直ちに吸引される。好ましくは、移動手段は、吸引管10を中央位置24から第1周辺位置30まで、次いで第2周辺位置40まで、次いで第3周辺位置70まで、そして第4周辺位置60まで動かして、位置30で周辺流体除去行程を完了する。好ましい実施例において、穴は四角形の形状にされ、第1、第2、第3、及び第4周辺位置は、四角形の角部である。当業者であれば、この方法は、吸引管10を穴の所与の形状の周辺部の周りの位置に沿って動かすことによって、任意の形状の穴上で実行することができることを理解するであろう。
【0018】
吸引管10の高さの間隔、すなわち基体よりも上の距離は、50μmから2mmまでの範囲であることが好ましく、最も好ましい設定は200μmである。図5Dは、流体除去された状態の穴52を示しており、ここでは、穴52に残留している部分的に乾燥した物体(好ましい実施例においては、乾燥したタンパク質スポット・マイクロアレイ100である)を示している。タンパク質スポット・マイクロアレイは、代替的な実施例においては別の基体上にあってもよい。代替的な実施例において、穴内に又は基体上に設置されるタンパク質スポット・マイクロアレイ以外の物体も、本発明の方法に従って乾燥されてもよい。理論によって拘束されることなく、発明者らは、本発明が、順次に流体メニスカス相が物体を通して及び物体の周りを、そして基体の上を通過する際に物体上に解放される破壊的エネルギーの散逸を回避すると信じている。
【0019】
段階1のバルク流体の急速な非破壊的移動が完了するとき、部分的に乾燥した物体と穴52又は他の基体は、流体蒸気によって閉じ込められ包まれ続ける。段階2の蒸気相除去は、蒸気により湿った、様々に水和した基体プラットフォームと部分的に乾燥した物体との上の空気の流れを調整することによって、直ちに活性化され達成される。事実上、乾燥器装置1によって調整された空気の気流が、制御された条件下で、蒸気を除去するために蒸気源の全体にわたって活発に動かされて、真空により誘起された空気の気流内に設置された物体の一貫した脱水状態をもたらす。誘起された空気の気流は、結果として生じる湿った排気の流れと共に運ばれる潜在的に汚染された及び/又は感染性物質を同時に閉じ込め、分離し、消毒する。
【0020】
段階2の蒸気除去は、段階1の流体除去の完了後に穴52の付近及び内部に依然として残留しているあらゆる流体蒸気を平衡化させるために、乾燥装置1によって適用される。空気流の調整のために適用される好ましい真空は、約106デカパスカルから約10132デカパスカルまでの間の範囲である。管10のX−Y座標マトリクスの間隔は、好ましい実施例において、分析装置50に取り付けられた穴上部構造のX−Y座標マトリクスの位置と一致する。両方のX−Yマトリクスが正確な位置合わせを提供するとき、各穴52は、各穴52の中央部に挿入された単一の吸引管10を有することになり、吸引管10の第1開口端6は、プレート基体の表面よりも上の、好ましくは約10μmから7mmまでの範囲である、所定の最適な距離に配置される。好ましい設定は、吸引管の吸引端の高さがタンパク質スポット・マイクロアレイよりも上に約2mmに設定され、吸引開口部における吸引管10の周囲から最も近い穴壁54までの間隔が約1mmに達するときに、最適な空気流を提供する。真空引きは、あらゆる残留流体蒸気を除去する。
【0021】
本発明は、図面に示された本発明の実施例の詳細を参照しながら説明されたが、これらの実施例は、付属の請求項において特許請求されるような本発明の範囲を限定することを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から流体と蒸気を除去するための装置であって、
移動手段に接続された可動プラットフォームと、
第1及び第2開放端を有し、前記第2開放端が前記可動プラットフォームに結合されている吸引管と、
前記管を通して真空を適用するための、前記吸引管の前記第2開放端に接続された真空源と
を備える装置。
【請求項2】
前記吸引管がある長さを画定し、前記吸引管は、前記第1開放端が前記第2開放端よりも大きい直径を有するように、前記長さに沿って先細りした直径を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
複数の管を備え、前記平坦な表面が複数の穴を備え、前記管の各々が、前記穴の1つと相互作用するようにされている、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記移動手段が、前記管の各々が前記穴の各々の中央部から前記穴の各々の周辺に沿って移動されるように前記プラットフォームを動かすようにされている、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記移動手段が、前記吸引管の前記第1開放端が前記平坦な表面から50μmから2mmまでに設置されるように前記プラットフォームを動かすようにされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記長さが、3.5度の円錐角ピッチに基づいた約1.7の開口部直径アスペクト比に合わせて導出された約18のアスペクト比を維持するのに十分なものである、請求項2から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記吸引管が前記第1開放端において約400μmの厚さを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第2開放端における前記吸引管の前記直径が約2mmである、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
少なくとも1つの穴を画定する表面を乾燥させるための方法であって、
移動手段に接続された可動プラットフォームと、第1及び第2開放端を有し前記第2開放端が前記可動プラットフォームに結合されている吸引管と、前記管を通して真空を適用するための、前記吸引管の前記第2開放端に接続された真空源とを備える乾燥装置を提供する工程と、
前記吸引管の前記第1開放端を前記少なくとも1つの穴の中央部の近傍に配置する工程と、
前記穴からバルク流体を除去するために前記吸引管を通して真空を適用する工程と、
前記穴からバルク流体を除去するために前記吸引管を前記穴の中央部から前記穴の周辺端部へ及び前記穴の周辺付近へ動かす工程と、
前記穴から前記吸引管を除去する工程と、
前記吸引管の前記第1開放端が前記穴から所定の距離となるように前記吸引管を動かす工程と、
前記穴から蒸気を除去するために前記吸引管を通して真空を適用する工程とを含む方法。
【請求項10】
前記吸引管がある長さを画定し、前記吸引管は、前記第1開放端が前記第2開放端よりも大きい直径を有するように、前記長さに沿って先細りした直径を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の管を備え、前記平坦な表面が複数の穴を備え、前記管の各々が前記穴の1つと相互作用するようにされている、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記所定の距離が50μmから2mmである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記長さが、3.5度の円錐角ピッチに基づいた約1.7の開口部直径アスペクト比に合わせて導出された約18のアスペクト比を維持するのに十分なものである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記吸引管が前記第1開放端において約400μmの厚さを有する、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記第2開放端における前記吸引管の前記直径が約2mmである、請求項9から14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate


【公表番号】特表2012−504224(P2012−504224A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528152(P2011−528152)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001370
【国際公開番号】WO2010/034126
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(511078875)エスキューアイ ディアグノスティクス システムズ インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】