説明

流体ディスペンサ装置

流体ディスペンサ装置であって、流体投与開口部(31)と、上流側端部と流体投与開口部(31)の近くで開口している下流側端部とを有する、加圧空気用の空気管(32,51,52)と、弾性的圧搾段階と弾性的弛緩段階とを経るのに適しており、空気管(32,51,52)の上流側端部に接続されて、弾性的圧搾段階においては空気流を送出し、空気管を介して流体投与開口部(31)まで届ける、という空気吐出器(4)と、空気管(32,51,52)に接続されている流体流路(25,33)と、を有し、流体流路(25,33)の中の流体は、ベンチュリ効果の力で加圧空気流に吸引され、空気吐出器(4)は、空気管を成す部分空気管(51,52)を少なくとも1つ有する接続スリーブ(5)が取着される単一の開口部(43)を有し、当該接続スリーブ(5)は、空気入口弁(56; 56b; 56c; 56d)を備えた空気入口通路(53)を更に有し、当該空気入口弁は、弾性的弛緩段階において外部の空気が空気吐出器の中に入ることを可能にすること、を特徴とする流体ディスペンサ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体貯蔵容器と組み合わされて流体ディスペンサを形成する流体ディスペンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を細かい液滴の形で噴霧する場合、しばしば、ディスペンサ自体を「スプレー」の用語で表す。本発明の効果的な利用分野は、香水または化粧品の分野であるが、当然のことながら、流体の投与が必要とされる他の分野にも利用可能であろう。
本発明のディスペンサ装置は特に、推進用ガス(通常は空気)と流体との混合投与または二相投与を行う種類のものである。従って、本ディスペンサ装置は通常、流体と空気との混合物が噴霧状に投与される流体投与開口部を有する。本装置は更に、加圧空気用の空気管と空気吐出器(例えば、可撓性の圧搾バルブ(squeezable bulb))とを有する。前記空気管の下流側の端部は投与開口部の近くで開口している。前記空気吐出器は、空気管の上流側の端部に接続されており、加圧空気流を送出する。送出された加圧空気流は、空気管を通って投与開口部に達する。また、本装置は流体流路を有し、当該流体流路と空気管とは、空気管の下流側端部またはその近傍で接続している。流体流路内の流体が、ベンチュリ効果によって加圧空気の流れに吸い上げられることで、空気と流体との混合物が投与開口部を通して投与されることになる。
【0003】
こうした種類のディスペンサ装置は、しばしば「バルブポンプ(bulb pump)」という名称で示されるが、この名称は、可撓性の圧搾バルブの形を取る空気吐出器を使用することに由来する。この種のディスペンサ装置は古くから知られているが、今日では、その作用は、流体ディスペンサにとって常套的または旧式なものである。こうしたディスペンサは、一方の手で貯蔵容器を保持し、もう一方の手でバルブを圧搾する、というやり方で使用される。投与開口部は貯蔵容器に固定されているため、貯蔵容器を保持している手が、投与開口部の向き(すなわち、噴霧される流体の噴流の向き)を定めることとなる。
【0004】
こうした種類のディスペンサ装置では、空気と流体とは投与開口部の近く(または前記投与開口部の少し上流)において混合される。可撓性バルブを圧搾することにより、空気は加圧された状態となって、空気管を通り、投与開口部に向かって流れる。この空気の流れによって流体流路内に吸引力が生じる(流体流路は通常、ディップチューブによって貯蔵容器に通じている)。その結果、流体流路内に存在する流体は加圧空気流によって吸い出されるが、これは公知のベンチュリ効果現象による。そして、流路から来た流体は空気管を出る空気流に導入される。流体は空気流と混合し、そうして得られた混合物は、流体の細かい液滴の形で投与開口部から放出される。
【0005】
つまり、空気吐出器(バルブ)の動作は2つの段階に分けられる(すなわち、弾性的圧搾段階と弾性的弛緩段階)。弾性的圧搾段階では、空気吐出器の容積は小さくなり、その中に入っている空気は加圧され、開口部を通って空気管に向かって流れる。弾性的弛緩段階では、空気吐出器の容積は空気吐出器の弾性復元力の作用で大きくなり、外部の空気が空気吐出器の中に入って来る。従来の構成の空気吐出器は、空気管に接続された開口部が一方の端部に形成されており、反対側のもう一方の端部には、空気入口弁が設けられている。当該空気入口弁は、弾性的弛緩段階では開いており、弾性的圧搾段階では閉じている。すなわち、本空気吐出器は2つの異なる開口部を別個に有している。この構成のため、第1に空気吐出器の製造、組立が複雑になり、第2に全体的な外観の魅力が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】英国特許第2 431 367号明細書
【特許文献2】オーストリア実用新案第7802号明細書
【特許文献3】仏国特許発明第2 912 670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、より簡単に製造でき、外観もより優れた空気吐出器を有する「バルブポンプ」型の流体ディスペンサ装置を作ることによって、従来技術の有する上記問題を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決のために本発明が提案するのは、流体貯蔵容器と組み合わされて流体ディスペンサを形成する流体ディスペンサ装置であって、流体投与開口部と、上流側端部と流体投与開口部の近くで開口している下流側端部とを有する、加圧空気用の空気管と、可撓性のバルブであって、弾性的圧搾段階と弾性的弛緩段階とを経るのに適しており、空気管の上流側端部に接続されて、弾性的圧搾段階においては加圧空気流を送出し、空気管を介して流体投与開口部まで届ける、という空気吐出器と、空気管に当該空気管の下流側端部の近くで接続されている流体流路と、を有し、流体流路の中の流体は、ベンチュリ効果の力で加圧空気流に吸引され、それによって空気と流体との混合物が流体投与開口部から投与されることとなり、空気吐出器は、空気管を成す部分空気管を少なくとも1つ有する接続スリーブが取着される単一の開口部を有し、当該接続スリーブは、空気入口弁を備えた空気入口通路を更に有し、当該空気入口弁は、弾性的弛緩段階において外部の空気が空気吐出器の中に入ることを可能にすると共に、弾性的圧搾段階において空気が空気入口通路を通って空気吐出器から出て行くことを防止するのに適していること、を特徴とする流体ディスペンサ装置である。
【発明の効果】
【0009】
言い換えると、空気吐出器の一方の端にあった空気入口弁を、接続スリーブを備えた開口部が形成された反対側の端に移動させたということである。これにより、空気吐出器からは開口部が1つ減り、空気吐出器が有する開口部は1つだけとなる。空気吐出器はもはや、空気入口弁専用の開口部を備える必要がないため、取りうる形状の幅も広がる。
また、効果的な特長として、空気入口弁と弁座とは、弾性的圧搾段階において空気入口弁が弁座に接する、という形で協働し、空気入口弁は、弾性的圧搾段階において生じる加圧空気流によって弁座に押し付けられるように配置されていること、とする。また、空気入口弁は開口部の中央に配置されており、空気管に向かって流れる加圧空気流は空気入口弁に向けられ、その後、空気入口弁の周囲を流れること、とするのも効果的である。さらに、変形例として、空気入口弁は、加圧空気流を囲むように配置されていること、とする。弾性的圧搾段階の間、空気入口弁は何らかの方法により、その弁座に空気漏れの生じない状態で接する状態とされる。
【0010】
また、本発明の別の効果的な特長として、接続スリーブは更に、弾性的弛緩段階において流体が空気管を通って空気吐出器内に吸い込まれるのを防止する逆止弁を有すること、とする。また、逆止弁と弁座とは、弾性的弛緩段階において逆止弁が弁座に接する、という形で協働すること、とするのも効果的である。そして、変形例として、逆止弁は、弾性的圧搾段階において生じる加圧空気流の作用で開き、弾性的弛緩段階においては気密状態で閉じる、という自己密封式のスロットから成ること、とする。また、更なる変形例として、空気入口弁と逆止弁とは一緒に移動させられること、とする。また、空気入口弁と自己密封式のスロットとは、単一の材料から、または2つの異なる材料の二重射出によって、単一の弁部材として作られていること、とするのが効果的である。そして、実際的な実施の形態として、弁部材は、堅い固定用ブッシングを有し、当該固定用ブッシングは、一方の端部に自己密封式のスロットが形成されたドーム部を備え、もう一方の端部には、外向きに延びて空気入口弁として働く可撓性の環状隔膜を備えていること、とする。
【0011】
本発明の原理は、空気吐出器を出入りする空気の流れを、空気吐出器とディスペンサ装置の他の部分とを接続する接続スリーブを備えた単一の開口部に一本化することである。本接続スリーブは、空気入口弁や逆止弁を有する。
以下、本発明について、非限定的な例としての本発明の複数の実施の形態を示す添付図面を参照しながら、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるディスペンサ装置の、貯蔵容器に取り付けられた状態での縦断面図である。
【図2】図1の接続スリーブの拡大縦断面図であり、(a)は圧搾段階を、(b)は弛緩段階をそれぞれ示す図である。
【図3】図2(a)、(b)と同様の図であり、第1の実施の形態の変形例を示す図である。
【図4】(a)、(b)とも、図2(a)、2(b)、3と同様の図であり、本発明による接続スリーブの第2の実施の形態を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態の接続スリーブの拡大切り欠き斜視図であり、弾性的弛緩段階における状態を示す図である。
【図6】図5と同様の図であり、本発明の第4の実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す本発明の流体ディスペンサ装置は、基本的に4つの構成要素から成る。すなわち、本体2、ヘッド3、空気吐出器4、接続スリーブ5である。また、本装置は他に、任意の構成要素や付属的な構成要素を有する場合もある(カバー用たが部材22、ネック部ガスケット25、カバーキャップ34など)。
ディスペンサ装置は、投与対象の流体を格納した貯蔵容器1のネック部11に取り付けられるものである。流体は通常、香りのあるもの、または噴霧可能な化粧品である。貯蔵容器1は、何らかの適当な種類の素材で作られており、ある程度の堅さを備える。ネック部11は、通常上方に突き出して頂上環状端部13を形作っている。ネック部11には更に、本発明のディスペンサ装置の固定に用いられる外側環状補強部12が形成されている。これらの特徴は、香水や化粧品の分野における流体貯蔵容器としては、全く従来と同じである。
【0014】
本発明のディスペンサ装置の本体2は固定手段を有し、当該固定手段によって貯蔵容器1のネック部11に固定することができる。本発明の説明に用いる例における本体2は、ネック部11の環状補強部12の下で固定することのできるスカート21を有する。スカート21を環状補強部12の下に係合させることで更に、ネック部ガスケット25をネック部の頂上環状端部13の上で圧迫してたいらにすることができる。スカート21がネック部11の周囲で安定した状態で固定されるように、スカート21の外側を囲むカバー用たが部材22を、本体2の少なくとも一部を覆うように設ける場合もある。カバー用たが部材22は金属製とするのが好ましい。
【0015】
本体2には更に入口管23が形成されており、当該入口管にはディップチューブ24の上側端部が係合している。ディップチューブは貯蔵容器1の内部に延び、その底壁(図示せず)近くまで達している。入口管23は、ディップチューブ24の端部から下流に延び、流体流路の第1の部分25を形成している。本体2には他の要素も形成されているが、本発明にとって重要なものではない。
【0016】
ヘッド3は本体2の上に取り付けられ、流体流路の第1の部分25の先に延びる流体流路の第2の部分33を形成している。第2の部分33は投与開口部31に通じており、投与開口部では、後述するように、流体と空気とが混合される。ヘッド3は、本体2の上に静止した状態で取り付けられる。ただし変形例として、ヘッド3を本体2に対して軸方向移動または回動が可能な形で取り付ければ、それによって流体流路25、33を閉じる機能を実現することができる。また、このように本体2に対してヘッド3を移動させることで通気孔(図示せず)を閉じる、という機能を実現することも可能であろう。そのようにした場合は、流体が本発明のディスペンサ装置によって貯蔵容器1から引き出されるのに応じて、外部の空気を貯蔵容器1に入れることができる。
【0017】
ヘッド3には更に、部分空気管32が形成されており、当該部分空気管の下流側端部は投与開口部31に直接通じている。よって、部分空気管32から来る加圧空気と流体流路25、33から来る流体とが開口部31において混合され、そうして生じた混合物は空気の圧力を受け、流体の細かい液滴の形で放出される。また、必須ではないが、ヘッド3にはカバーキャップ34を設けることもできる。カバーキャップは金属製とするのが効果的である。カバーキャップ34のうち投与開口部31に対応する位置には、穴が設けられている。さらに、キャップ34は、もう1つの穴を径方向において対向する位置に備えており、当該もう1つの穴には、後述するように接続スリーブ5が挿入される。そのために、部分空気管32は、その上流側端部に、接続スリーブ5用の接続ハウジング35を備えている。
【0018】
空気吐出器4は、形状記憶を有する弾性素材で作られたバルブ41で成る。従来と同じく、バルブ41は洋ナシまたは卵に似た形状を有する。本発明におけるバルブ41が有する開口部は、端部42(補強端部とするのが効果的である)に形作られた開口部43のみである。バルブ41は、弾性的圧搾段階と弾性的弛緩段階とを繰り返すのに適したものとなっている。圧搾段階では、バルブ41の中にあった空気は、圧力を加えられ、開口43を通って流れ出る。弾性的弛緩段階では、外部の空気が唯一の開口部43を通ってバルブ41に入って来る。
【0019】
接続スリーブ5はバルブ41の開口部43に取り付けられており、バルブに永続的に固定しておくのが好ましい。接続スリーブ5は開口部43を部分的に塞いで、1以上の出口用の部分空気管51、52と空気入口通路53とを形作っている。また、空気入口通路53は、空気入口弁56を備えており、それによって、弾性的弛緩段階の間に外部の空気を空気吐出器4に入れることができる一方で、弾性的圧搾段階の間に前記空気入口通路53を通って空気が空気吐出器から出て行く事態を防止できる。
【0020】
接続スリーブ5は、ヘッド3への接続のために、当該ヘッド3に形成された接続ハウジング35の内部に空気漏れを生じない状態で係合するように作られた係合用端部部材55を有する。接続スリーブ5に形成された部分空気管51、52は、ヘッド3に形成された部分空気管32と直接通じている。バルブ41を圧搾すると、その中に入っていた空気は放出され、部分空気管51、52、32を通って投与開口部31に達し、そこで加圧空気と流体流路25、33から来る流体とが混合される。弾性的弛緩段階では、空気吐出器4の内部で吸引力が生じる結果として、空気入口通路53が備える空気入口弁56が開くため、外部の空気が空気入口通路53を通って空気吐出器4に入ってくる。効果的な構成として、部分空気管51、52は逆止弁58を備えているが、これについては、以下、図2(a)、2(b)を参照しながら述べる。
【0021】
図2(a)、2(b)は、図1の第1の実施の形態に用いられている接続スリーブ5を拡大して、その詳細を示す図である。図2(a)は、弾性的圧搾段階における接続スリーブを示しており、図2(b)は、弾性的弛緩段階における同じ接続スリーブ5を示している。同図には、出て行く空気の流れと入って来る空気の流れとを矢印で示してある。接続スリーブ5はベース本体5aを有し、これに弁部材5bが組み合わされている。
【0022】
ベース本体5aは、ある程度の堅さを有する適当なプラスチック材から、単一の部品として作ることができる。ベース本体5aは、バルブ41の開口部43の内部に空気漏れの生じない状態で係合する外側ブッシング54を有する。バルブ41と外側ブッシング54との固定や密封については、何らかの適切な手段で実現すればよく、そうした手段としては、締り嵌め、スナップ留め、掛かり(barb)、接着剤、熱シール処理、オーバーモールド(over-molding)、二重射出(bi-injection)などがある。外側ブッシング54の内側には内側ブッシング54bがあり、当該内側ブッシング54bは、外側ブッシング54の内側に同心かつ同軸の状態で延びている。内側ブッシング54bは、後述するように、弁部材5b用の支持部材として用いられる。本発明では、空気入口通路53が外側ブッシング54と内側ブッシング54bとの間に形成されている。空気入口通路53の下流側端部には弁座54aがあり、当該弁座54aは外側ブッシング54に形成されている。加えて、内側ブッシング54bが延びた先には接続用端部部材55が形成されており、その内部に、加圧空気のための部分空気管52が形作られている。
【0023】
本実施の形態において、弁部材5bは、ほぼ円筒形の形状をした固定用部分57を有する。固定用部分57は、内側ブッシング54bの内部に、例えばクランプ留めによって係合される。固定用部分57は中空であり、内部に加圧空気用の部分空気管51が形作られている。固定用部分57の一方の端部には、自己密封式のスロット(slot)58を備えた可撓性のドーム部58aが形成されている。自己密封式のスロットの両側壁は、休止状態では互いに接して密封を実現している。これに対し、充分な圧力が加わると、前記両側壁は互いに遠ざかる形で移動し、開口が形成される。スロット58により2つの部分空気管51、52を隔てることができる。言い換えると、スロットが閉状態または密封状態にある時、部分空気管51が部分空気管52と連通することはできない。ドーム部58aは、部分空気管51から加圧空気が来た時にだけスロット58が開くように配置されている。一方、加圧空気が部分空気管52から来る時には、スロット58は密封状態で閉じたままである。従って、弾性的弛緩段階の間、空気吐出器4に空気が入るのを防止するという意味で、スロット58は逆止弁を構成している。この状態は図2(b)に見られる。それに対し、弾性的圧搾段階においては、スロット58は大きく開き、空気吐出器4から来る空気を通過させる。この状態は図2(a)に見られる。
【0024】
また、弁部材5bには、環状隔膜の形で空気入口弁56が形成されており、当該環状隔膜は、固定用部分57のうち、ドーム部58aを備える端部から見て反対側にある端部から、径方向外向きに延びている。環状隔膜の自由な外周縁部56aは、選択的に、外側ブッシング54に形成された弁座54aに空気漏れを生じない状態で接し、そうすることで空気入口通路53の下流側の終端を閉じる。空気入口弁56は、空気吐出器4の内部に位置していることの結果として、弾性的圧搾段階(図2(a))においては弁座54aに押しつけられるが、弾性的弛緩段階(図2(b))においては弁座を離れ、それによって、外部の空気は空気入口通路53を通って空気吐出器に入って来ることができる。
【0025】
また、空気入口弁56は部分空気管51を囲む位置に作られており、空気流によって生じる圧力を受けると、外周縁部56aが空気漏れの生じない状態で弁座54aに押しつけられることになる、という点に留意すべきである。これにより、弾性的圧搾段階の間は、空気吐出器によって発生させられる加圧空気流を利用して、空気入口弁を適正に閉じることができる。また、その一方で、弾性的弛緩段階の間、自己密封式のスロット58は、空気吐出器の内部に存在する吸引力によって閉状態に保たれるため、外部の空気が空気入口通路53を通って吸引され、空気入口弁56を開位置に押しやり、空気吐出器に入り込む。
【0026】
隔膜弁56の代わりに、対応する貫通穴を閉じるように作られた1または複数のフラップを有したフラップ弁を用いることも可能である。こうしたフラップは、隔膜56と同じ形状で実質的な堅さを備える環状フランジに切れ目を入れて作ればよい。
また、留意すべき点として、弁部材5bは単一のプラスチック材を用いて単一の部品として作ることができ、堅さおよび変形性に関する特性は、単に壁の厚みを変化させることで実現される。図2(a)、2(b)において注目すべき点は、固定用部分57の壁の厚みが、ドーム部58aや隔膜56の厚みを大きく上回っていることである。図3に示す変形例では、弁部材5bが、2つの部分57´、57´´から形成された固定用部分57を備える作りとなっており、これらの2つの部分は、オーバーモールドまたは二重射出によって成形するのが効果的である。固定用部分57´が可撓性のプラスチック材で作られている一方、固定用部分57´´は堅いプラスチック材で作られており、それによって、組立部品には、内側ブッシング54b内に安定した状態で弁部材5bを固定するのに充分な堅さが与えられる。
【0027】
図4(a)、4(b)は、本発明の第2の実施の形態における接続スリーブ5を示す。本接続スリーブもまた、ベース本体5aおよび弁部材5bを有する。上述した実施の形態と同じく、接続スリーブ5は空気吐出器4の開口部43の中に取り付けられる。取り付けは、確実かつ空気漏れを生じさせず、さらに永続的なものとするのが効果的である。これを実現するために、効果的な構成として、接続スリーブ5が有する外側ブッシング54は、掛かりの形をした固定用の刻み(notch)を備えている。ベース本体5aには更に、ヘッド側の対応するハウジング35に挿入される接続用の端部部材55が形成されている。端部部材55の内部には部分空気管52が形成されている。弁部材5bは外側ブッシング54の内部に取り付けられる。
【0028】
これを実現するために、弁部材5bは、2つの弁座590、591が形成されたリング59を有する。加えて、弁部材5bは可動弁本体57bを有し、当該可動弁本体57bには空気入口弁56bおよび逆止弁58bが形成されている。空気入口弁56bは、弁座590に対して選択的に空気漏れの生じない状態で接し、逆止弁58bは、弁座591に対して選択的に空気漏れの生じない状態で接する。空気入口弁56bは、実質的に円錐台形をした縁部(brim)の形をしており、逆止弁58bはわずかに凹形となった円盤の形をしている。2つの弁56b、58bは接続ロッド568によって相互接続されており、移動時も互いに対して固定されている。より厳密に言えば、可動弁本体57bは、リング59の構造によって定まる単一の軸に沿って移動する。そうして、一度に1つの弁だけが、弁座に対して空気漏れの生じない状態で接することになる。図4(a)では、空気入口弁56bがその弁座591に対して空気漏れの生じない状態で接しており、一方、図4(b)では、逆止弁58bがその弁座590に接している。
【0029】
図4(a)に示す状態は、弾性的圧搾段階(すなわち、空気吐出器に入っていた空気が圧力を加えられて接続スリーブ5を通って流れる段階)に対応している。空気の通り道は、先端が矢印となった線によって示してある。ここでは、空気入口弁56bが閉じていることに留意すべきである。図4(b)は弾性的弛緩段階に対応している。この段階では、空気入口弁56bが弁座591から離れ、その結果として、開いた空気入口通路53を通って外部の空気が空気吐出器の中に入って来る。空気入口通路53は、リング59に形成された複数の側面引き込み口の形となっている。これら複数の側面引き込み口は、内部に接続ロッド57bが延びた中央通路において合流する。
【0030】
この第2の実施の形態において留意すべき点は、2つの弁58b、56bが互いに対して固定された状態で移動することである。これら弁は、理論的には単一の部品として作ることもできるが、実際的な組立作業上の理由から、2つの部品として作ってある。弁として働くディスク58bは、接続ロッド57bと一体の形に成形すればよい。空気入口弁56bは、弁として働く縁部を備えるよう形成されたキャップの形で作ればよい。その場合のキャップは、接続ロッド57bの自由端に、クランプ留めによって取り付けることができる。
【0031】
上述した通り、この二重弁スリーブの動作は、第1の実施の形態の場合の動作と同一である。唯一の相違は、2つの弁が物理的に結合されていて一緒に動くという点である。
図5は、接続スリーブ5の第3の実施の形態を示す。このスリーブもまた、弁部材5bと組み合わされたベース本体5aを有する。弁部材5bには、空気入口通路53と2つの弁座561、581とが形成されている。本実施の形態においては、空気入口弁56cは球体の形で形成されており、選択的に空気漏れの生じない状態で弁座561に接することになる。逆止弁58cはディスクの形を取っており、選択的に空気漏れの生じない状態で弁座581に接する。この二重弁スリーブの動作は、これまでに述べた実施の形態の動作と同一である。しかしながら、本実施の形態では、2つの弁56c、58cの間に接続部品がなく、両者は全く切り離されている。
【0032】
図6は、本発明の接続スリーブ5の第4の実施の形態を示す。本接続スリーブも、弁部材5bと組み合わされたベース本体5aを有する。弁部材5bには、一方の終端が弁座571、他方の終端が可撓性環状フランジ56dとなった固定用部分57が形成されており、当該可撓性環状フランジ56dは、ベース本体5aの外側ブッシング54に形成された弁座541に対して選択的に空気漏れの生じない状態で接するように作られている。空気入口通路53は、第1の実施の形態の場合と同様に形成されている(すなわち、外側ブッシング54と弁部材5bを収容する内側ブッシング54bとの間に形成されている)。本実施の形態における逆止弁58dは、空気漏れの生じない状態で弁座571に選択的に接する球体の形となっている。空気入口弁56dは可撓性環状フランジによって形成されている。図6は弾性的弛緩段階での状態を示している。ここでは、空気入口弁は開いており、吸引された外部の空気は空気入口通路53を通って空気吐出器の内部に達する。
【0033】
本実施の形態における逆止弁の弁座571は、空気入口弁56dと一体に作られている。
図示した全ての実施の形態において、接続スリーブ5は空気入口弁と逆止弁とを有する。ただし、接続スリーブが弁を1つだけ有する構成も可能であろう(その場合は、空気入口弁のみ有する構成とするのが効果的である)。
【0034】
すなわち、本発明は、1つまたは2つの弁が組み込まれた接続スリーブを用いて、開口部が1つだけの空気吐出器を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体貯蔵容器(1)と組み合わされて流体ディスペンサを形成する流体ディスペンサ装置であって、
流体投与開口部(31)と、
上流側端部と流体投与開口部(31)の近くで開口している下流側端部とを有する、加圧空気用の空気管(32,51,52)と、
可撓性のバルブであって、弾性的圧搾段階と弾性的弛緩段階とを経るのに適しており、空気管(32,51,52)の上流側端部に接続されて、弾性的圧搾段階においては加圧空気流を送出し、空気管を介して流体投与開口部(31)まで届ける、という空気吐出器(4)と、
空気管(32,51,52)に当該空気管の下流側端部の近くで接続されている流体流路(25,33)と、を有し、
流体流路(25,33)の中の流体は、ベンチュリ効果の力で加圧空気流に吸引され、それによって空気と流体との混合物が流体投与開口部(31)から投与されることとなり、
空気吐出器(4)は、空気管を成す部分空気管(51,52)を少なくとも1つ有する接続スリーブ(5)が取着される単一の開口部(43)を有し、当該接続スリーブ(5)は、空気入口弁(56; 56b; 56c; 56d)を備えた空気入口通路(53)を更に有し、当該空気入口弁は、弾性的弛緩段階において外部の空気が空気吐出器の中に入ることを可能にすると共に、弾性的圧搾段階において空気が空気入口通路(53)を通って空気吐出器から出て行くことを防止するのに適していること、
を特徴とする流体ディスペンサ装置。
【請求項2】
空気入口弁(56; 56b; 56c; 56d)と弁座(54b; 591; 561; 541)とは、弾性的圧搾段階において空気入口弁が弁座に接する、という形で協働し、
空気入口弁は、弾性的圧搾段階において生じる加圧空気流によって弁座に押し付けられるように配置されていること、
を特徴とする請求項1に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項3】
空気入口弁(56b; 56c)は開口部(43)の中央に配置されており、
空気管に向かって流れる加圧空気流は空気入口弁に向けられ、その後、空気入口弁の周囲を流れること、
を特徴とする請求項2に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項4】
空気入口弁(56; 56d)は、加圧空気流を囲むように配置されていること、
を特徴とする請求項2に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項5】
接続スリーブは更に、弾性的弛緩段階において流体が空気管(52)を通って空気吐出器(4)内に吸い込まれるのを防止する逆止弁(58; 58b; 58c; 58d)を有すること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項6】
逆止弁(58b; 58c; 58d)と弁座(590; 581; 571)とは、弾性的弛緩段階において逆止弁が弁座に接する、という形で協働すること、
を特徴とする請求項5に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項7】
逆止弁は、弾性的圧搾段階において生じる加圧空気流の作用で開き、弾性的弛緩段階においては気密状態で閉じる、という自己密封式のスロット(58)から成ること、
を特徴とする請求項5に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項8】
空気入口弁(56b)と逆止弁(58b)とは一緒に移動させられること、
を特徴とする請求項2または6に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項9】
空気入口弁(56)と自己密封式のスロット(58)とは、単一の材料から、または2つの異なる材料の二重射出によって、単一の弁部材(5b)として作られていること、
を特徴とする請求項2または7に記載の流体ディスペンサ装置。
【請求項10】
弁部材(5b)は、堅い固定用ブッシング(57; 57´)を有し、当該固定用ブッシングは、一方の端部に自己密封式のスロット(58)が形成されたドーム部(58a)を備え、もう一方の端部には、外向きに延びて空気入口弁として働く可撓性の環状隔膜(56)を備えていること、
を特徴とする請求項9に記載の流体ディスペンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−501825(P2012−501825A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525595(P2011−525595)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051656
【国際公開番号】WO2010/026338
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】