説明

流体ハンドリング構造、リソグラフィ装置およびデバイス製造方法

【課題】投影システムの最終要素と基板との間の空間に液体を維持する流体ハンドリングシステムを提供する。
【解決手段】投影システムと本流体ハンドリング構造に対向する対向面との間に定義される空間に液浸液を供給するよう構成された流体ハンドリング構造が開示される。本流体ハンドリング構造の下面は、対向面に向けて流体を供給するよう構成された供給開口と、本流体ハンドリング構造と対向面との間から流体を除去するよう構成された複数の抽出開口と、供給開口と複数の抽出開口との間の突出部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体ハンドリング構造、リソグラフィ装置およびデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板、通常は基板のターゲット部分に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、例えばマスクまたはレチクルとも称されるパターニングデバイスが、集積回路の各層に形成されるべき回路パターンを形成するために使用される。このパターンが基板(例えばシリコンウエハ)の(例えばダイの一部、あるいは1つまたは複数のダイからなる)ターゲット部分に転写される。パターン転写は典型的には基板に形成された放射感応性材料(レジスト)層への結像による。一般に一枚の基板にはネットワーク状に隣接する一群のターゲット部分が含まれ、これらは連続的に露光される。公知のリソグラフィ装置にはいわゆるステッパとスキャナとがある。ステッパにおいては、ターゲット部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各ターゲット部分は照射を受ける。スキャナにおいては、所与の方向(「走査」方向)に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板を走査方向に平行または逆平行に走査するようにして各ターゲット部分は照射を受ける。パターニングデバイスから基板へのパターン転写は、基板にパターンをインプリントすることによっても可能である。
【0003】
リソグラフィ投影装置において基板を液体に浸すことが提案されている。この液体は比較的高い屈折率をもつ液体であり、例えば水である。投影システムの最終要素と基板との間の空間が液体で満たされる。液体はある実施の形態では蒸留水であるが、その他の液体も使用可能である。本発明の実施の形態は液体に言及して説明しているが、その他の流体、特に濡れ性流体、非圧縮性流体、及び/又は屈折率が空気より高い、望ましくは屈折率が水より高い流体が適切なこともある。気体を除く流体が特に望ましい。その真意は、露光放射は液体中で波長が短くなるので、より小さい形状の結像が可能となるということである(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくし、焦点深度も大きくすることと見なすこともできる)。別の液浸液も提案されている。固体粒子(例えば石英)で懸濁している水や、ナノ粒子(例えば最大寸法10nm以下)で懸濁している液体である。懸濁粒子はその液体の屈折率と同程度の屈折率を有していてもよいし、そうでなくてもよい。その他に適切な液体は炭化水素を含む。例えば芳香族、フッ化炭化水素、および/または水溶液がある。
【0004】
基板を、又は基板と基板テーブルとを液体の浴槽に浸すこと(例えば米国特許第4,509,852号参照)は、走査露光中に加速すべき大きい塊の液体があることでもある。これには、追加のモータ又はさらに強力なモータが必要であり、液体中の乱流が望ましくない予測不能な効果を引き起こすことがある。
【0005】
液浸装置では液浸流体は流体ハンドリングシステム、デバイス構造または装置によって取り扱われる。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは液浸流体を供給してもよく、したがって流体供給システムであってもよい。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは液浸流体を少なくとも部分的に閉じ込めてもよく、流体閉じ込めシステムであってもよい。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは液浸流体に障壁(バリア)をもたらしてもよく、バリア部材であってもよい。バリア部材は流体閉じ込め構造であってもよい。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは、ガスの流れを生成または使用してもよい。この流れは例えば液浸流体の流れ及び/または位置の制御に役立つ。気体流れが液浸流体を閉じ込めるシールを形成してもよく、流体ハンドリング構造がシール部材と呼ばれてもよい。そのようなシール部材は流体閉じ込め構造であってもよい。ある実施の形態では、液浸液は液浸流体として使用されてもよい。その場合、流体ハンドリングシステムは液体ハンドリングシステムである。上記説明に関して、本段落で流体について定義した特徴への言及は、液体について定義される特徴を含むものと理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、投影システムの最終要素と基板との間の空間に液体を維持する流体ハンドリングシステムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある態様によると、流体ハンドリング構造が提供される。この流体ハンドリング構造は、投影システムとこの流体ハンドリング構造に対向する対向面との間に定義される空間に液浸液を供給するよう構成される。この流体ハンドリング構造の下面は、対向面に向けて流体を供給するよう構成された供給開口と、この流体ハンドリング構造と対向面との間から流体を除去するよう構成された複数の抽出開口と、供給開口と複数の抽出開口との間の突出部と、を有する。
【0008】
ある態様によると、流体ハンドリング構造が提供される。この流体ハンドリング構造は、投影システムと流体ハンドリングシステムに対向する対向面との間に定義される空間に液浸液を供給するよう構成される。この流体ハンドリング構造の下面は、対向面に向けて流体を供給するよう構成された供給開口と、投影システムの光軸に対して供給開口よりも半径方向内側に設けられた突出部と、を有する。
【0009】
ある態様によると、流体ハンドリング構造が提供される。この流体ハンドリング構造は、投影システムと流体ハンドリングシステムに対向する対向面との間の空間に液浸液を供給するよう構成される。この流体ハンドリング構造の下面には、対向面に向けて液浸液を供給するためのひとつ以上の供給開口と、下面の面に設けられ、下面の幾何学的中心に対してひとつ以上の供給開口よりも半径方向外側となるステップと、が形成される。ステップは空間からの液浸液の半径方向外向きの流れを低減するよう構成される。
【0010】
ある態様によると、液浸リソグラフィ装置が提供される。この液浸リソグラフィ装置は、基板テーブルによって支持される基板上に放射ビームを投影する投影システムと、ここに開示される流体ハンドリング構造と、を備える。対向面は、基板の面および/または基板テーブルの面である。
【0011】
ある態様によると、デバイス製造方法が提供される。このデバイス製造方法は、投影システムの最終要素と基板との間に流体を提供することを含む。提供することは、流体ハンドリング構造の下面の供給開口を通じて基板に向けて液体を供給することと、流体ハンドリング構造の下面の抽出開口を通じて流体ハンドリング構造と基板および/または基板テーブルとの間から流体を除去することと、を含む。下面の供給開口と抽出開口との間に突出部が設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施の形態が添付の模式的な図面を参照して説明されるがこれらは例示に過ぎない。図面において対応する参照符号は対応する部分を指し示す。
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。
【0014】
【図2】リソグラフィ投影装置で使用される液体供給システムを示す図である。
【図3】リソグラフィ投影装置で使用される液体供給システムを示す図である。
【0015】
【図4】リソグラフィ投影装置で使用される別の液体供給システムを示す図である。
【0016】
【図5】リソグラフィ投影装置で使用される別の液体供給システムを示す図である。
【0017】
【図6】流体ハンドリング構造の模式的な平面図である。
【0018】
【図7】流体ハンドリング構造を投影システムの光軸に実質的に平行な平面で切断した断面図である。
【0019】
【図8】x軸を流体ハンドリング構造の対向面からの距離、y軸を静的力(左側のグラフ)および剛性(右側のグラフ)とするグラフである。
【0020】
【図9】流体ハンドリング構造の下面の平面図である。
【0021】
【図10】流体ハンドリング構造の下の圧力の、半径方向距離に対する変化を示す図である。
【0022】
【図11】流体ハンドリング構造の下の圧力の、半径方向距離に対する変化を示す図である。
【0023】
【図12】本発明の実施の形態の種々の異なる構成についての、流体ハンドリング構造の下面の基板からの距離に対する力の変化を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態の種々の異なる構成についての、流体ハンドリング構造の下面の基板からの距離に対する剛性の変化を示す図である。
【0024】
【図14】本発明の実施の形態に係る流体ハンドリング構造の下面の模式的な平面図である。
【0025】
【図15】本発明の実施の形態に係る流体ハンドリング構造の下面の模式的な平面図である。
【0026】
【図16】本発明の実施の形態に係る流体ハンドリング構造の下面の模式的な平面図である。
【0027】
【図17】本発明の実施の形態に係る流体ハンドリング構造の下面の模式的な平面図である。
【0028】
【図18】図17の流体ハンドリング構造の模式的な断面図である。
【0029】
【図19】y軸に空間11から液体閉じ込め構造12と対向面との間のギャップへのフローの変化を示し、x軸に開口70からの液体のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、
放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明システム(イルミネータ)ILと、
パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、所定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、
基板(例えばレジストでコーティングされたウエハ)Wを保持するよう構成され、所定のパラメータに従って基板Wを正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている基板テーブル(例えばウエハテーブル)WTと、
パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイからなる)ターゲット部分Cに投影するよう構成されている投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSと、を備える。
【0031】
照明システムILは、放射を方向付け、放射を形成し、または放射を制御するために、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0032】
支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスMAの向きやリソグラフィ装置の構成、あるいはパターニングデバイスMAが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械的固定、真空固定、またはパターニングデバイスMAを保持するその他の固定用技術を用いてもよい。支持構造MTは例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAを例えば投影システムPSに対して所望の位置に位置決めできるようにしてもよい。本明細書では「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」に同義であるとみなされるものとする。
【0033】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、例えば基板のターゲット部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、基板のターゲット部分に所望されるパターンと厳密に対応していなくてもよい。このような場合には例えば、放射ビームのパターンが位相シフトフィーチャあるいはいわゆるアシストフィーチャを含む場合がある。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、ターゲット部分に形成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応する。
【0034】
パターニングデバイスMAは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスの例としては、例えばマスクやプログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルなどがある。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。これらの傾斜ミラーにより、マトリックス状ミラーで反射された放射ビームにパターンが付与されることになる。
【0035】
本明細書では「投影システム」という用語は、使用される露光放射あるいは液浸や真空の利用などの他の要因に関して適切とされるいかなる投影システムをも包含するよう広く解釈されるべきである。投影システムには例えば屈折光学系、反射光学系、反射屈折光学系、磁気的光学系、電磁気的光学系、静電的光学系、またはこれらの任意の組み合わせなどが含まれる。以下では「投影レンズ」という用語は、より一般的な用語である「投影システム」と同義に用いられ得る。
【0036】
ここに図示されるのは、(例えば透過型マスクを用いる)透過型のリソグラフィ装置である。これに代えて、(例えば上述のようなプログラマブルミラーアレイまたは反射型マスクを用いる)反射型のリソグラフィ装置を用いることもできる。
【0037】
リソグラフィ装置は2つ以上(2つの場合にはデュアルステージと呼ばれる)のテーブル(及び/または2つ以上のパターニングデバイステーブル)を有し、それらのうちの少なくともひとつまたは全てが基板を保持しうるタイプのものであってもよい。このような「多重ステージ」型の装置においては追加されたテーブルは並行して使用されるか、あるいは1以上のテーブルで露光が行われている間に他の1以上のテーブルで準備工程を実行するようにしてもよい。ある実施の形態は2以上のテーブルを有してもよく、それらのテーブルうちのひとつは基板を支持するよう構成されてもよい。そられのテーブルのうちの別のテーブルは、例えば投影ビームの特性を検出するためのひとつ以上のセンサを支持してもよい。
【0038】
図1に示されるようにイルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源SOがエキシマレーザである場合には、光源SOとリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適切な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを含んで構成される。あるいは光源SOが例えば水銀ランプである場合には、光源SOはリソグラフィ装置に一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと総称される。
【0039】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータILの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータILはビーム断面における所望の均一性及び強度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられる。光源SOと同様に、イルミネータILはリソグラフィ装置の一部を形成するとみなされてもよいしみなされなくてもよい。例えば、イルミネータILはリソグラフィ装置と一体であってもよく、またはリソグラフィ装置と別体であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置はイルミネータILがそれに取り付け可能なように構成されてもよい。オプションで、イルミネータILは取り外し可能であって別途提供されてもよい(例えば、リソグラフィ装置の製造者または他のサプライヤーによって)。
【0040】
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、当該パターニングデバイスMAによりパターンが付与される。パターニングデバイスMAを通過した放射ビームBは投影システムPSを通過する。投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cにフォーカスする。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なるターゲット部分Cを位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリから機械検索後や走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現される。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現される。ステッパでは(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用のターゲット部分を占拠しているが、アライメントマークはターゲット部分C間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0041】
図示の装置は例えば次のうちの少なくとも1つのモードで使用され得る。
【0042】
1.ステップモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンの全体が1回の照射でターゲット部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる(すなわち単一静的露光)。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なるターゲット部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写されるターゲット部分Cのサイズを制限することになる。
【0043】
2.スキャンモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される(すなわち単一動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一動的露光でのターゲット部分Cの(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離がターゲット部分Cの(走査方向の)長さを決定する。
【0044】
3.別のモードにおいては、支持構造MTがプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、放射ビームに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、基板テーブルWTが移動または走査される。このモードではパルス放射源が通常用いられ、プログラム可能パターニングデバイスは、基板テーブルWTの毎回の移動後、または走査中の連続放射パルス間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のプログラマブルミラーアレイ等のプログラム可能パターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
【0045】
上記で記載したモードを組み合わせて動作させてもよいし、各モードに変更を加えて動作させてもよいし、さらに全く別のモードでリソグラフィ装置を使用してもよい。
【0046】
投影システムの最終要素と基板との間に液体を提供する構成は少なくとも二種類に大きく分類することができる。浴槽型の構成といわゆる「局所」液浸システムとである。浴槽型では、基板の実質的に全体と任意的に基板テーブルの一部とが液槽に浸される。いわゆる局所液浸システムは、基板の局所域にのみ液体を供給する液体供給システムを使用する。後者の分類においては、液体で満たされる空間は平面図にて基板上面よりも小さく、液体で満たされた領域は基板がその領域の下を移動しているとき投影システムに対し実質的に静止状態にある。本発明のある実施の形態が指向する更なる一構成は、液体が閉じ込められないオールウェット(all wet)型である。この構成においては、基板上面全体と基板テーブルの全体または一部が液浸液で覆われる。少なくとも基板を覆う液体の深さは浅い。液体はフィルム状であってもよく、基板上の薄い液体フィルムであってもよい。図2乃至図5の液体供給装置はいずれもこうしたシステムに使用可能であるが、シール機能はなくすか、動作させないか、通常ほどは効果的でないようにするか、あるいはその他の手法で、局所域のみに液体を封じないようにする。4つの異なる形式の局所液体供給システムが図2乃至図5に図示されている。
【0047】
1つの提案される構成は、液体供給システムが基板の局所域のみにかつ投影システムの最終要素と基板との間に液体閉じ込めシステムを使用して供給するというものである(基板は一般に投影システムの最終要素よりも大きな面積をもつ)。そのための構成の一例がPCT特許出願第WO99/49504号に開示されている。図2及び図3に示されるように、液体が少なくとも1つの入口によって基板上に、好ましくは最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給され、投影システムの下を通過した後に少なくとも1つの出口によって除去される。つまり、基板が−X方向に最終要素の下を走査されると、液体が要素の+X側にて供給され、−X側にて除去される。図2は、液体が入口を介して供給され、低圧源に接続された出口によって要素の他方側で除去される構成を概略的に示したものである。基板Wの上方の矢印は液体流れ方向を示し、基板Wの下方の矢印は基板テーブル移動方向を示す。図2では液体が最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給されるが、こうである必要はない。最終要素の周囲に配置された入口及び出口の様々な方向及び数が可能であり、一例が図3に示され、ここでは各側に4組の入口と出口が、最終要素の周囲に規則的なパターンで設けられる。液体供給デバイス及び液体回収デバイスにおける矢印が液体流れ方向を示す。
【0048】
局所液体供給システムをもつ液浸リソグラフィの更なる解決法が、図4に示されている。液体は、投影システムPSの両側にある2つの溝入口によって供給され、入口の半径方向外側に配置された複数の分離された出口によって除去される。入口及び出口は、投影ビームを通す穴を中心に有するプレートに設けることができる。液体は、投影システムPSの一方側にある1つの溝入口によって供給され、投影システムPSの他方側にある複数の分離された出口によって除去され、これによって投影システムPSと基板Wとの間に液体の薄膜の流れが生じる。入口と出口のどちらの組合せを使用するかの選択は、基板Wの移動方向によって決まる(他方の組合せの入口及び出口は作動させない)。図4の断面図において矢印は入口での液体流入方向と出口での液体流出方向とを示す。
【0049】
本明細書にその全体が援用される欧州特許出願公開第1420300号及び米国特許出願公開第2004−0136494号明細書には、二重ステージまたはデュアルステージの液浸リソグラフィ装置の着想が開示されている。こうした装置には基板を支持するための2つのテーブルが設けられている。レベリング計測が1つのテーブルで第1位置で液浸液なしで実行され、露光が1つのテーブルで第2位置で液浸液ありで実行される。ある構成では、装置は1つのテーブルのみを有するかまたは、2つのテーブルを有し、それらのテーブルのうちの一方のみが基板を支持できる。ある実施の形態では、装置は2より多くのテーブルを有し、それらのテーブルのうちのひとつは基板を支持しないよう構成される。
【0050】
国際公開第2005/064405号には、液浸液が閉じ込められないオールウェット構成が開示されている。このようなシステムにおいては、基板上面全体が液体で覆われる。これは、基板上面全体が実質的に同じ条件にさらされるので有利な場合がある。これは、基板の温度制御および処理に有利に働く。国際公開第2005/064405号では、液体供給システムは、液体を投影システムの最終要素と基板との間のギャップに供給する。供給された液体は、基板の残り部分にわたって漏れる(または流れる)ことが許容されている。基板テーブルのエッジの障壁によって液体が漏れるのが防止され、制御された方法で基板テーブルの上面から液体を除去することができる。このようなシステムは、基板の温度制御および処理を改善するが、それでも液浸液の蒸発が生じる可能性がある。米国特許出願公開第2006/0119809号明細書には、この問題を多少とも解決するのに役立つ一つの方法が開示されている。基板を全ての位置において覆う部材が設けられており、該部材は、液浸液を自身と基板及び/または基板を保持する基板テーブルの表面との間に広げるよう構成される。
【0051】
提案されている別の構成は流体ハンドリング構造をもつ液体供給システムを設けることである。流体ハンドリング構造は、投影システムの最終要素と基板テーブルとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。こうした構成を図5に示す。流体ハンドリング構造は、投影システムに対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(光軸の方向)では多少の相対運動があってよい。流体ハンドリング構造と基板の表面との間にシールが形成される。ある実施の形態においては、流体ハンドリング構造と基板の表面との間にシールが形成され、このシールはガスシール等の非接触シールであってもよい。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号明細書に開示されている。別の実施の形態においては、流体ハンドリング構造は非ガスシールであるシールを有し、したがって液体閉じ込め構造と称されてもよい。
【0052】
図5は、バリア部材または液体閉じ込め構造を形成する本体12を有する局所液体供給システムまたは流体ハンドリング構造若しくはデバイスを模式的に示す図である。局所液体供給システムは、投影システムPSの最終要素と基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間11の境界の少なくとも一部に沿って延在する。(以下の記載においては、明示的に別段の定めをした場合を除き、基板Wの表面について言及した場合、追加的にまたは選択的に基板テーブルWTの表面にもついても言及していることを留意されたい。)基板(および基板テーブルの同一平面上の面)は流体ハンドリング構造の下側と対向する対向面とされてもよい。液体ハンドリング構造は、投影システムPSに対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(一般には光軸方向)では多少の相対運動があってよい。ある実施の形態においては、本体12と基板Wの表面との間にシールが形成され、このシールはガスシールまたは流体シール等の非接触シールであってもよい。
【0053】
流体ハンドリング構造は、投影システムPSの最終要素と基板Wとの間の空間11の少なくとも一部に液体を収容する。基板Wに対する非接触シール、例えばガスシール16が投影システムPSの像フィールドの周囲に形成され、基板Wの表面と投影システムPSの最終要素との間の空間11に液体が閉じ込められてもよい。この空間11は少なくとも一部が本体12により形成される。本体12は投影システムPSの最終要素の下方に配置され、当該最終要素を囲む。液体が、投影システムPSの下方かつ本体12内部の空間11に、液体入口13によって供給される。液体出口13によって液体が除去されてもよい。本体12は、投影システムPSの最終要素の少し上方まで延在していてもよい。液位が最終要素の上まで上昇することで、液体のバッファが提供される。ある実施の形態においては本体12は、上端において内周が投影システムPSまたはその最終要素の形状に近似し、例えば円形であってもよい。下端において内周が像フィールドの形状に近似し、例えば長方形であってもよい。これらの形状は必須ではない。内周はいかなる形状であってもよく、例えば内周は投影システムの最終要素の形状に一致していてもよい。内周は円形であってもよい。
【0054】
液体は、本体12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間11に収容されてもよい。ガスシール16は、例えば空気又は合成空気、ある実施の形態ではN又はその他の不活性ガスなどの気体によって形成される。ガスシール16の気体は、圧力の作用で入口15を介して本体12と基板Wとの隙間に提供される。気体は出口14から抜き取られる。気体入口15での過剰圧力、出口14の真空レベル、及び隙間の幾何学的形状は、液体を閉じ込める内側への高速の気体流れが存在するように構成される。本体12と基板Wとの間の液体に作用する気体の力が空間11に液体を収容する。入口及び出口は空間11を取り巻く環状溝であってもよい。環状溝は連続していてもよいし不連続であってもよい。気体流れは空間11に液体を収容する効果がある。こうしたシステムは米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されている。
【0055】
図5の例はいわゆる局所域型であり、液体はいかなる時点においても基板Wの上面の局所域に供給されるのみである。異なる構成も可能であり、例えば米国特許出願公開第2006−0038968号には、単相抽出器または二相抽出器を利用する流体ハンドリング構造を含む構成が開示されている。ある実施の形態においては、単相抽出器または二相抽出器は、多孔質材料に覆われている入口を備えてもよい。ある実施の形態の単相抽出器においては、多孔質材料が気体から液体を分離し液体単相の液体抽出を可能とするために使用される。多孔質材料の下流のチャンバがいくらか負圧に保たれて液体で満たされる。そのチャンバの負圧は、多孔質材料の孔に形成されるメニスカスが周囲の気体のチャンバへの引き込みを妨げるような大きさとされる。その一方、多孔質材料が液体に接触すれば流れを制限するメニスカスはなくなるので液体が自由にチャンバに流入できる。多孔質材料は多数の小孔、例えば5μm乃至300μmの、望ましくは5μm乃至50μmの範囲の直径の小孔を有する。ある実施の形態においては、多孔質材料は少なくともいくらかの親液性(例えば親水性)をもつ。すなわち、多孔質材料は液浸液例えば水に対する接触角が90度未満である。
【0056】
図6は本発明の実施の形態のメニスカス固定デバイスを説明する図である。このメニスカス固定デバイスは、例えば図5のシール構成14、15、16と置き換えられてもよい。図6のメニスカス固定デバイスは、複数の分離された(抽出)開口50を備える。各開口50は円形のものとして図示されているが、これは必須ではない。実際、ひとつ以上の開口50の形状は、正方形、円形、直線で構成された形状、矩形、楕円形、三角形、スリットなどの細長い形状等から選択されたひとつ以上であってもよい。各開口50は平面視で大きな最大断面寸法(例えば直径)を有しており、最大寸法は約0.35mm(例えば0.25mm四方の正方形)であってもよく、または0.5mmより大きくてもよく、好ましくは1mmより大きくてもよい。したがって、複数の開口50が汚染によって大きく影響を受ける可能性は低い。
【0057】
図6のメニスカス固定デバイスの各開口50は別個の低圧源と接続されていてもよい。代替的にまたは追加的に、各開口50または複数の開口50は、それ自身が低圧に保持される(環状であってもよい)共通チャンバと接続されていてもよい。このようにすることにより、各開口50または複数の開口50における一様な低圧が達成されうる。必要とされる低圧を生成するために、開口50を真空源に接続することもできるし、および/または液体供給システムの周囲の気圧を増やしてもよい。
【0058】
各開口50は、液体と気体との混合物を例えば2相流として抽出するよう設計される。液体は空間11から抽出される一方、気体は開口50の液体とは反対側の大気から抽出される。これは矢印100で示される気体流を発生させる。この気体流は、開口50間のメニスカス90を実質的に図6に示されるような場所に、例えば隣接する開口50間に固定するのに有効である。この気体流は、運動量阻止による、気体流誘導圧力勾配による、および/または液体に対する気体流のドラッグ(ずり(shear))による、液体閉じ込めの維持に貢献する。
【0059】
図6から分かるように、開口50は平面視で多角形形状を形成するように配置される。図6の場合、これは主軸110、120を伴う菱形であり、主軸110、120は投影システムPS下での基板Wの主たる進行方向に揃えられている。これは、最大走査速度が開口50が円形に配置された場合より大きいことを確かなものとするのに役に立つ。これは、2つの開口50間のメニスカスに働く力が係数cosθで低減されることによるものである。ここでθは、これらの2つの開口50を結んでいる線の、基板Wが移動する方向に対する角度である。したがって、開口50の形状の主軸110を基板の主進行方向(通常は走査方向)に整列させ、かつ、第2の軸120を基板のもう一方の主進行方向(通常はステップ方向)に整列させることによって、スループットを最適化することができる。θが90度以外となる任意の構造は利点を与えることは理解される。したがって、主軸と主進行方向との正確なアライメントは重要ではない。円形の場合、進行方向と垂直に整列される2つの開口50が常に存在し、それら2つの出口の間のメニスカスは基板Wの移動によって可能な限りの最大の力を受けることは理解されるであろう。上記から、辺を基板の主進行方向に対して約45度に揃えた正方形を使用することによっても大きな利益を得ることができることが理解される。しかしながら、本発明の実施の形態は、複数の開口50によて形成される任意の平面形状、例えば円形などにも適用されうる。
【0060】
開口の半径方向外側にはガスナイフ開口が設けられ、そのガスナイフ開口を通じて気体流が動作中に供給されてもよい。そのような構成は図15に記載されており、また2009年5月25日に提出された米国特許出願第61/181,158号に記載されており、その出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0061】
図7は、図6に示されるVII−VII線に沿った流体ハンドリング構造の断面図である。図7において、矢印100は流体ハンドリング構造12の外部から開口50に関連する通路55の中への気体の流れを示す。矢印150は、空間11または後述の開口70から来て流体ハンドリング構造12の下側から開口50のなかへ流れる液体の通路を示す。通路55および開口50は、望ましくは環状フローモードにおいて2相抽出(すなわち、気体および液体)が生じるよう設計される。環状フローモードでは、気体は実質的に通路55の中央を流れ、液体は実質的に通路55の壁に沿って流れる。これにより、脈動の発生の少ないスムーズな流れを実現でき、それによりそうでなければ生じうるような振動を最小化または低減できる。
【0062】
メニスカス90は開口50(例えば、開口50のリムの一部)の近くに、開口50への気体流によって誘起されるドラッグ力(drag forces)で固定される。ある実施の形態では、約15m/sより大きな気体ドラッグ速度、望ましくは20m/sより大きな気体ドラッグ速度で十分である。ある実施の形態では、ガスナイフは設けられない。ガスナイフの使用を避けることにより、基板Wからの液体の蒸発量を低減することができ、それにより液体の跳ねの影響および熱膨張/収縮の影響の両方を低減できる。
【0063】
複数(例えば、36などの40程度)の離散的な通路55は複数の針の形で設けられてもよい。各針は直径1mmであり、2mmから5mmの範囲内の距離、例えば3.9mmで離間されていてもよい。そのような離散的な通路55はメニスカスを固定するのに有効でありうる。そのようなシステムにおける総気体流は100l/分程度である。
【0064】
開口50および流体ハンドリング構造12のさらなる詳細は米国特許出願公開第2008/0212046号に見いだされうる。その出願は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0065】
流体ハンドリング構造12から流体(例えば、液浸液などの液体)を出すための1つ以上の供給開口70が下面40に形成される。供給開口70は空間11に液体を入れるもの(または供給するためのもの)として理解されてもよい。供給開口70は、投影システムPSの光軸に対して、抽出開口50よりも半径方向内側にある。供給および抽出開口50、70は表面51によって隔てられてもよい。通路75を通り流体ハンドリング構造12の開口70を出る液体は基板Wに向けられる。液浸液内に泡が発生する、例えば含まれる、可能性を低減するために、供給開口70が設けられる。気体は、基板Wのエッジと基板テーブルWTとの間のギャップにトラップされるかまたは含まれるようになるであろう。
【0066】
流体ハンドリング構造12の下面の進行側の部分においては、流体ハンドリング構造が基板Wの対向面に対して十分速く動いている結果、液体は空間11から開口50へ流れることができないであろう。下面は、最も半径方向外側のエッジにおける外側エッジまたはリム45と、最も半径方向内側のエッジにおける内側エッジと、の間に形成される。流体ハンドリング構造12の下面のうち下面40の内側エッジ20と開口50との間の部分は非濡れ状態(de-wetted)となりうる。下面40のうち開口50よりも半径方向内側の非濡れ部分は、開口50のメニスカス固定の有効性に影響を与えうる。したがって、望ましくは開口50の近くで供給開口70を通じて液体を供給することにより、泡の混入および非濡れ状態となるリスクを低減できる。
【0067】
供給開口70のジオメトリは液体を収容する際の流体ハンドリング構造12の有効性に影響を与える。
【0068】
特に、複数の供給開口70は、下面に沿った(例えば空間の周りの)平面形状であって開口50の平面形状のようにコーナを有する平面形状を有することが望ましい。(ある実施の形態ではただひとつの供給開口70が存在することを注意しておく。)実際、供給開口70のコーナを有する形状と開口50のコーナを有する形状とは実質的に似ていることが望ましい。ある実施の形態では、各形状は各コーナ52の頂点に供給開口70または開口50を有する。供給開口70は開口50から10mm、望ましくは5mm以内であることが望ましい。開口50によって作られる形状の全ての部分は、供給開口70によって作られる形状の部分から10mm以内であってもよい。
【0069】
抽出開口50および供給開口70に関するさらなる詳細は、米国特許出願公開第2009/0279060号に見いだされうる。その出願は全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0070】
基板W、基板テーブルWTまたはそれら両者の部分の対向面と抽出開口50との間には低圧が生成される。下面40が対向面に近いほど気体100の流れは強く、したがってメニスカス90の位置の固定はより良くなる。基板Wまたは基板テーブルWTと抽出開口50との間の低圧が大きいほど気体流100は多く、したがって、メニスカス90の位置はより安定的である。開口50と対向面W、WTとの間の低圧によって、流体ハンドリング構造12と対向面W、WTとの間に引力が生じる。
【0071】
供給開口70からの液体の流れによって対向面W、WTと流体ハンドリング構造12との間に斥力が生じる。
【0072】
流体ハンドリング構造12と基板Wおよび/または基板テーブルWTとの間の通常の離間距離については、合力(抽出開口50からの引力と供給開口70からの斥力と重力との和)は引力である。(例えば投影システムPSの光軸の方向であってもよいZ方向またはZ軸および/または基板の表面に総じて直交する方向における)流体ハンドリング構造12の剛性は、流体ハンドリング構造12と基板Wおよび/または基板テーブルWTとの間の距離の変化に応じて力のレベルがいかに変化するかを表す。ある実施の形態では、剛性は、y軸上の合力の、流体ハンドリング構造12の下面40と基板および/または基板テーブルWTとの間のx軸に沿った距離についての微分である。ある実施の形態では、x軸およびy軸は流体ハンドリング構造の下面に平行な平面上にあってもよい。x軸およびy軸は基板の表面に総じて平行な平面上にあってもよい。
【0073】
流体ハンドリング構造12の剛性が、基板Wおよび/または基板テーブルWTからの典型的な動作距離において高すぎる場合、合焦誤差が生じうる。この合焦誤差が生じうるのは、通常、基板Wおよび/または基板テーブルWTの上の流体ハンドリング構造12の高さには位置誤差が存在するからである。所望の高さから変化があるときはいつでも、力は公称の(および較正された)値とは異なる。力が異なると基板Wが期待される位置から変位し、これにより合焦誤差が生じる。
【0074】
本発明はいかなる特定のタイプの液体供給システムに限られるものではない。本発明は、投影システムの最終要素と基板との間の液体が例えば使用を最適化する際に閉じ込められる閉じ込め型液浸システムに対して使用すると有利であり得る。しかしながら、本発明は、本明細書で言及されているかもしれない他の任意のタイプの液体供給システムに対して使用されうる。
【0075】
図7に示される通り、抽出開口50および供給開口70は下面40の第1部分210に形成される。第1部分210の平面領域は流体ハンドリング構造12の剛性に大きな影響を与えうる。
【0076】
流体ハンドリング構造12の下面40に第2の部分220を形成することによって、第1の部分210の平面領域を減らすことができる。第2の部分220の使用中の基板Wおよび/または基板テーブルWTからの距離は、第1の部分210のそれとは異なる。第2の部分220は第1の部分210とは異なる平面上にある。第1の部分210と第2の部分220との間で対向面W、WTからの距離を異ならせるために、流体ハンドリング構造12の下面40は平面的ではなく、平坦でなくてもよい。ある実施の形態では、流体ハンドリング構造12の下面40の少なくとも一部は、基板Wおよび/または基板テーブルWTの上面とある角度をなす。
【0077】
ある実施の形態では、第2の部分220は第1の部分210よりも半径方向内側にある。第2の部分220は、下面40の内側エッジ20と第1の部分210との間に延在してもよい。
【0078】
図7において、第1の部分210の第2の部分220からのZ軸に沿った距離をD0と表記する。第1の部分210の基板Wおよび/または基板テーブルWTからの距離を寸法D1と表記する。第2の部分220の基板および/または基板テーブルWTからの距離をD2と表記する。D1とD2との差がD0である。ある実施の形態では、寸法D2はD1よりも大きい。寸法D2は寸法D1の少なくとも2倍であることが望ましく、より望ましくは少なくとも3倍または4倍である。したがって、D0の寸法は少なくともD1と同じであり、望ましくは2倍大きく、より望ましくはD1の3倍大きい。使用中、寸法D1は100−300ミクロンの範囲にあってもよく、望ましくは130−230ミクロンの範囲にある。図7の実施の形態では、第1の部分210と第2の部分220との間に高さのステップ変化80が存在する。そのステップ変化は、図6に示されるように下面40にステップエッジ81を形成する。
【0079】
ステップは下面における不連続的な変化として説明されてもよい。ある実施の形態では、第1の部分210と第2の部分220との間のステップの表面は、第1および第2の部分の一方または両方に対して角度がつけられていてもよい。ステップエッジ81の表面は平面的であってもよい。ある実施の形態では、第1の部分210と第2の部分220との間のステップエッジ81の表面は、第1および第2の部分の表面の一方または両方と直交していてもよい。第1の部分210と第2の部分220との間の下面40にはz軸に対して2つの不連続的な角度の変化があってもよい。例えば、第1の部分210とステップエッジ81の表面との間、およびステップエッジ81の表面と第2の部分220との間である。しかしながら必ずしもそうである必要はない。
【0080】
ある実施の形態では、ステップエッジ81は滑らかな表面形状とされてもよく、ステップエッジ81と第1および第2の部分210、220のうちの少なくともひとつとの間に不連続的な角度の変化がなくてもよい。ある実施の形態では、ステップエッジ81は第1の部分210と第2の部分220との間に滑らかな連続的表面を形成してもよい。
【0081】
流体ハンドリング構造12は気体吸引原理(gas drag principle)にしたがって動作してもよい。流体ハンドリング構造12の開口50の下は低圧となっており、その低圧によって基板Wに対して引力が生じる。供給開口70は斥力を生じさせるが、動作上の(例えば、通常の)高度(例えば、下面40の基板W上の距離)については、基板Wに対する合力は引力である。剛性は、力の大きさが高度の差に対していかに変化するかを表す。これらは図8に説明される。
【0082】
高すぎる力のレベルまたは高すぎる剛性によって合焦誤差が生じうる。下面40と対向面WT、Wとの間の最大相対速度(例えば、走査速度)を変えるために、種々のパラメータが変えられうる。そのようなパラメータは、開口50を通じた抽出フロー、下面40と対向面との間の距離(すなわち、高度)、図9に示される気体ダンパ長さL1(抽出開口50の半径方向外側で外側エッジ45までの下面40の長さ)、を含んでもよい。(液体ダンパ長さL2もまた図9に示される。)最大走査速度を増大させるためには、これらのパラメータのうちのひとつ以上が最適化されるべきである。例えば、開口50を通じた抽出フローはできる限り高くすべきである。高度はできる限り低くすべきである。気体ダンパ長さL1はできる限り大きくすべきである。
【0083】
不幸なことに、取り上げられた3つのファクタのおのおの全てが力のレベルと剛性とを上昇させうる。流体ハンドリング構造12のある実施の形態については、力および剛性のレベルは丁度仕様の範囲に収まっている。したがって、最大走査速度は最大の許されうる力のレベルおよび剛性によって制限される。
【0084】
静的力は供給開口70のフローを増やすことによって低減されうる。供給開口70を通じてのフローを増やすことは望ましくない。それが高価な供給および抽出システムを含むからである。液体フローを増やすと基板Wに余計な攪乱力が加わりうる。供給開口70を通じた液体フローを増やすと、液浸流体が空間11内に漏れることが起こりうる。その場合、結果として空間内の液体の熱的安定性および熱的調整が影響を受けうる。
【0085】
本発明の実施の形態は、リソグラフィ一般のさらなる発展および進歩のために相当の課題に取り組む。液体閉じ込め構造12に関する静的力および液体閉じ込め構造12の剛性である。
【0086】
下面40の例えば供給開口70と抽出開口50との間に突出部(またはリム)500が設けられる。図10に示されるように、突出部は気体吸引流体ハンドリング構造12の静的力および剛性を低減し、もって走査速度を増やすことを可能とする。矢印78はある実施の形態における空間11を横断する液浸液のバルクフローを示しており、例えば走査方向と平行な方向を示す。
【0087】
図10は、そのような構成の非常に模式的な概略であり、y軸に沿った圧力のグラフを伴う。グラフ上の点は、突出部500を伴う流体ハンドリング構造12の使用中の圧力を示す。グラフ上の実線は、供給開口70と抽出開口50との間の追加の突出部500を伴わない流体ハンドリング構造の使用中の圧力を示す。力は同じであるが、供給開口70フローは突出部500を備えるほうがより低い。図10に示される実施の形態は、抽出開口50と基板Wとの間に180μmのギャップを使用する。ここでは突出部500は高さ40μmおよび2.5mm幅であるが、これは単なる例にすぎない。ある実施の形態では、突出部は対向面から250μm以下のところにある。ある実施の形態では、突出部と対向面との距離は50μmから200μmの範囲にあり、より望ましくは突出部と対向面との距離は100μmから150μmの範囲にある。
【0088】
ある実施の形態では、供給開口70および/または抽出開口50(すなわち、距離D1)は表面から100μm以上のところにあり、望ましくは表面からの距離が100μmから250μmの範囲にあり、例えば200μm以上である。ある実施の形態では、供給開口70および/または抽出開口50と表面との距離は150μmから200μmの範囲にある。
【0089】
ある実施の形態では、突出部は少なくとも10μmだけ下面から突き出る。ある実施の形態では、突出部が下面から突き出る量は10μmから75μmの範囲にあり、より望ましくは25μmから50μmの範囲にある。
【0090】
図11は図10と同じ模式的な概略を示すが、今度は対向面W、WTと抽出開口50との間に120μmのギャップが設けられる。ここでは力の大きさの差は幾分より目立つものとなり、例えば顕著である。しかしながら、この動作構成の主たる利点は、供給開口70からの液体流量を半分以下としても、同じ(または少し良い)性能を達成できることである。突出部500を有するバージョン(このバージョンはグラフ上で点によって示される力の大きさを提供してもよい)について(供給開口70の半径方向内側において)力の変化が存在しないかまたはとても小さいことは、下面の下における空間11からの液体の半径方向流れが存在しないかまたはとても小さいことを示唆する。バルクフロー78と下面40の下における液体の流れ(ギャップフロー)とが分離されるので、下面40の下における空間11からの半径方向フローは望ましいものでありうる。
【0091】
基板Wからの距離D1に対する力および剛性の値が図12および図13にそれぞれ示される。点線(...)は、流体ハンドリング構造12(または液体閉じ込め構造)の下面が平面的(例えば平坦)である場合の力および剛性(力の微分)の値を示す。実線(−)は、単に小さな突出部(例えば、高さ30μm、2mm幅)を加えることの効果を示す。力は顕著により小さくなっている。剛性はより低い。両方の値の組は供給開口フローが2.0(lpm)のときに取られたものである。値の組のそれぞれは測定結果であってもよい。破線(---)はより小さい供給開口70フロー(1.5(lpm))の場合を示し、一点鎖線(_._._.)はとても小さい供給開口70フロー(1.0(lpm))の場合を示す。突出部500は小さな供給開口70フローにおいても力および剛性を低減するのに役に立つ。
【0092】
突出部500は空間11から抽出開口50へ向けての液浸液の漏れを制御するのに役に立つ。これは静的力および剛性の低減に追加されるものであってもよい。特に、突出部500が2009年6月9日に提出された米国特許出願第61/185361号の短液体ダンパとの組み合わせで空間11からの漏れを制御すると便利である。その出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。突出部500がない場合、空間11から抽出開口50に向けて漏れる液浸液が多すぎることとなりうる。抽出開口50に向けて漏れる液体が多すぎると、流体ハンドリング構造12の上面と投影システムPSとの間に不安定なメニスカス(浮いている泡)が生じうる。抽出開口50内の液浸液成分が増大することによって、より大きな攪乱力が生じうる。
【0093】
図14および15では、2つのリムまたは突出部500を有する実施の形態が示される。図14の実施の形態では、リム500は下面の周部の周りで切れ目無く、例えばリムは供給開口70の周りの閉じた構造である。図15の実施の形態では、リム500は流体ハンドリング構造12の平面形状の少なくともひとつのコーナにおいて欠けている。リムは2以上の部材を有してもよく、例えばリムは流体ハンドリング構造の形状のコーナにおいて遮られてもよい。遮られたリム500は、より多くの液体がコーナのスロット50に届くようにすることができる(安定性が向上する)。例えば、遮られたリム500は、リムの他の利点について過度に妥協することなしにコーナのスロットが非濡れ状態となることを防ぐのに役に立つ。
【0094】
図16は、本発明の実施の形態の流体ハンドリング構造12の下側の模式的な平面図である。図16の流体ハンドリング構造12は、以下に説明されることを除いて上で説明されたものと同じである。図16の実施の形態では、抽出開口50の半径方向外側にガスナイフ60が設けられる。ガスナイフ60は、開口50を結ぶ線と実質的に平行なひとつ以上のスリットとして設けられてもよい。液体閉じ込め構造12によって生成される攪乱力を低減するか最小化するために、開いたリムを伴う短液体ダンパL2(図9参照)が存在する。したがって、望ましくは、攪乱力の伝搬を受け持つ液体閉じ込め構造の総領域は低減されるか最小化される。
【0095】
ある実施の形態では、形状の辺に沿うスリットの代わりに、一連の離散的なアパーチャが設けられてもよい。使用中、ひとつ以上のスリットは高圧に接続され、開口50によって形成されるメニスカス固定システムを囲むガスナイフ60を形成する。このガスナイフの機能は2009年9月3日に提出された米国特許出願第61/239555号に説明される。
【0096】
ガスナイフ60は開口50に、それらの間の体積に亘って圧力勾配を生成するのに十分に近いことが望ましい。それらの間には停滞ゾーンがないことが望ましい。それらの間には液体層、液滴のいずれも溜まらないことが望ましい。ある実施の形態では、流体ハンドリング構造12の連続的な下面40はダンパを形成し、そのダンパは圧力勾配を生成するのを助ける。下面は基板または基板テーブルの対向する表面と実質的に平行であることが望ましい。ある実施の形態では、ダンパが存在することにより、開口50を、例えば正方形であってもよいガスナイフとは異なる形状、たとえば星形に構成することができる。
【0097】
開いたリムを伴う短液体ダンパL2のために、空間11から液体閉じ込め構造12の底側への液浸液の漏出はより多くなる。これは2つの課題を生じさせる。(1)投影システムPSの下で空間11を横切って流れる液浸液が少なくなる。これにより、空間11の液浸液のリフレッシュレートが低下し、その結果結像性能が低下しうる。および/または(2)流体ハンドリング構造12と投影システムPSとの間の液浸液のメニスカスが不安定となる。これにより、空間11に泡が混入しうる。これらの泡は液浸液と共に投影システムPSの下に運ばれて基板に結像される。これにより基板Wに欠陥が生じうる。
【0098】
空間11から流体ハンドリング構造12の下面と対向面W、WTとの間への液浸液の漏出を低減するために、小さな制限部1000が加えられてもよい。図17に示されるように、その制限部は空間11と流体ハンドリング構造12の下の液体との間の液体の流れを制限してもよい。図17は、下で説明されることを除いて上の実施の形態と同じである。
【0099】
制限部1000は半径方向においてはできる限り短くされる(例えば0.5−2mm)ことが望ましい。しかしながら、製造上および強度上の制約から、制限部1000は少なくとも長さ0.4mmとされる可能性が高い。図18に示されるように、制限部1000の底部と対向面W、WTとの間の距離は、開口50、70が定義される液体閉じ込め構造12の下面(例えば、第1の部分210の表面)と対向面W、WTとの間の距離(すなわち、距離D1)と実質的に同じであってもよい。例えば、制限部1000と対向面W、WTとの間の距離は100μm以上であってもよく、100μmから250μmの範囲にあることが望ましく、150μmから200μmの範囲にあることがより望ましい。この制限部1000の総領域は小さいことが望ましい。制限部1000の領域は、液体閉じ込め構造12の攪乱力を顕著に増大させることはないと考えられている。制限部1000は空間11を全て取り囲むことも可能であり、および/または必要であれば断片化されてもよい。
【0100】
図17は、短液体ダンパL2およびリム1000を有する流体ハンドリング構造12の底側を示す。図18は、短液体ダンパL2および制限部1000を有する流体ハンドリング構造12の断面図である。制限部1000は第2の部分220に形成されてもよい。半径方向内側の第2の部分220における構成は、そうでなければ平面的である流体閉じ込め構造12の下面に凹部1050を定義するものとみなされてもよい。
【0101】
ある実施の形態では、制限部1000、開口50、開口70および突出部500が形成される流体ハンドリング構造12の下面はひとつの平面である。
【0102】
上述の実施の形態のいずれにおいても、流体ハンドリング構造12に制限部1000が存在してもよく、また、突出部500が存在しなくてもよい。
【0103】
図19は、図16および図17の流体ハンドリング構造12について、制限部1000を有する場合と有さない場合とで行われた実験の結果を示すグラフである。空間11へのフロー78と空間11から開口50へのフローとの間の流量の差、すなわち開口50を通じた総フロー引く空間11からのフロー、がy軸にプロットされる。y軸によって示される値は、空間11から開口50へ流れる液体の量の尺度である。開口70からのフローがx軸にプロットされる。この結果は、対向面と開口50、70との間の距離D1が180μmのときに決定された。円を伴う結果は制限部1000が無い場合の結果を示す。三角形で示される結果は、制限部1000を有する以外は同じであるセットアップの場合の結果を示す。開口50からのアウトレットフローは100L/分が使用された。液体閉じ込め構造12と投影システムとの間に安定なメニスカスが見出された結果は塗りつぶされており、検出または見出されうる安定なメニスカスの存在を示している。見られるように、メニスカスはリークフローが小さいところで安定である。制限部1000が使用される場合、開口70からの流体流量がさらに小さいところでも安定なメニスカスが得られる。開口70からのフローレートを小さくすることは、提供する必要があるフローを少なくできるので望ましいことでありうる。
【0104】
理解されるように、本願にて網羅される明記された組み合わせには限られず、任意の上記の特徴は他の任意の上記の特徴とともに使用可能である。
【0105】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用案内パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。当業者であればこれらの他の適用に際して、本明細書における「ウエハ」あるいは「ダイ」という用語がそれぞれ「基板」あるいは「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされると理解することができるであろう。基板は露光前または露光後においてトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像する装置)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにより処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は既に処理されている多数の処理層を含む基板をも意味する。
【0106】
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を含む。「レンズ」という用語は、文脈が許す限り、屈折光学素子及び反射光学素子を含む1つの光学素子またはこれら各種の光学素子の組み合わせを指し示すものであってもよい。
【0107】
本発明の特定の実施の形態が上述されたが、説明したもの以外の態様で本発明が実施されてもよい。例えば、本発明の実施の形態は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令のひとつ以上のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式をとってもよいし、そのコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)であってもよい。機械で読み取り可能な命令は2以上のコンピュータプログラムにより実現されてもよい。それら2以上のコンピュータプログラムはひとつ以上の異なるメモリ及び/またはデータ記録媒体に記録されていてもよい。
【0108】
本明細書に記載のコントローラは各々がまたは組み合わされて、リソグラフィ装置の少なくともひとつの構成要素内部に設けられたひとつ以上のコンピュータプロセッサによってひとつ以上のコンピュータプログラムが読み取られたときに動作可能であってもよい。コントローラは信号を受信し処理し送信するのに適切ないかなる構成であってもよい。ひとつ以上のプロセッサは少なくとも1つのコントローラと通信可能に構成されていてもよい。例えば、コントローラの各々は、上述の方法のための機械読み取り可能命令を含むコンピュータプログラムを実行するためのひとつ以上のプロセッサを含んでもよい。コントローラはそのようなコンピュータプログラムを記録するデータ記録媒体及び/またはそのような媒体を受けるハードウエアを含んでもよい。したがって、コントローラはひとつ以上のコンピュータプログラムの機械読み取り可能命令に従って動作してもよい。
【0109】
本発明のひとつ以上の実施の形態はいかなる液浸リソグラフィ装置に適用されてもよい。上述の形式のものを含むがこれらに限られない。液浸液が浴槽形式で提供されてもよいし、基板の局所領域のみに提供されてもよいし、非閉じ込め型であってもよい。非閉じ込め型においては、液浸液が基板及び/または基板テーブルの表面から外部に流れ出ることで、基板テーブル及び/または基板の覆われていない実質的に全ての表面が濡れ状態であってもよい。非閉じ込め液浸システムにおいては、液体供給システムは液浸液を閉じ込めなくてもよいし、液浸液の一部が閉じ込められるが完全には閉じ込めないようにしてもよい。
【0110】
本明細書で述べた液体供給システムは広く解釈されるべきである。ある実施の形態においては投影システムと基板及び/または基板テーブルとの間の空間に液体を提供する機構または構造体の組合せであってもよい。ひとつ以上の構造体、及びひとつ以上の流体開口の組合せを含んでもよい。流体開口は、ひとつ以上の液体開口、ひとつ以上の気体開口、ひとつ以上の二相流のための開口を含む。開口のそれぞれは、液浸空間への入口(または流体ハンドリング構造からの出口)または液浸空間からの出口(または流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。ある実施の形態においては、空間の表面は基板及び/または基板テーブルの一部であってもよい。あるいは空間の表面は基板及び/または基板テーブルの表面を完全に含んでもよいし、空間が基板及び/または基板テーブルを包含してもよい。液体供給システムは、液体の位置、量、性質、形状、流速、またはその他の性状を制御するためのひとつ以上の要素をさらに含んでもよいが、それは必須ではない。
【0111】
上述の説明は例示であり、限定を意図しない。よって、後述の請求項の範囲から逸脱することなく既述の本発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影システムと本流体ハンドリング構造に対向する対向面との間に定義される空間に液浸液を供給するよう構成された流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造の下面は、
前記対向面に向けて流体を供給するよう構成された供給開口と、
本流体ハンドリング構造と前記対向面との間から流体を除去するよう構成された複数の抽出開口と、
前記供給開口と前記複数の抽出開口との間の突出部と、を有する、流体ハンドリング構造。
【請求項2】
使用中、前記供給開口および前記複数の抽出開口は前記対向面から実質的に同じ距離にある、請求項1に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項3】
使用中、前記突出部と前記対向面との間のギャップは、前記供給開口と前記対向面との間のまたは前記複数の抽出開口と前記対向面との間のギャップよりも小さい、請求項1または2に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項4】
使用中、前記突出部の前記対向面からの距離は250μmより小さく、望ましくは前記対向面からの距離は50μmから200μmの範囲内にあり、より望ましくは前記対向面からの距離は100μmから150μmの範囲内にある、請求項1から3のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項5】
使用中、前記供給開口および/または前記複数の抽出開口の前記面からの距離は100μmより大きく、望ましくは前記面からの距離は100μmから250μmの範囲内にあり、より望ましくは前記面からの距離は150μmから200μmの範囲内にある、請求項1から4のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項6】
前記突出部は前記下面から少なくとも10μm突出しており、望ましくは10μmから75μmの範囲で突出しており、より望ましくは25μmから50μmの範囲で突出している、請求項1から5のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項7】
前記供給開口の少なくとも一部および/または前記複数の抽出開口のうちの少なくともひとつは、平面視でコーナを有する形状に構成される、請求項1から6のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項8】
前記複数の抽出開口は前記供給開口を実質的に囲む、請求項1から7のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項9】
前記下面に定義される細長いアパーチャを有するガスナイフデバイスをさらに備える、請求項1から8のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項10】
前記細長いアパーチャは前記抽出開口を実質的に囲む、請求項9に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項11】
前記突出部は前記供給開口の周りに閉じた環を形成する、請求項1から10のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項12】
少なくともひとつの追加的な突出部をさらに備え、
前記突出部および前記追加的な突出部は、前記供給開口の平面視での形状のコーナ部を除いて前記供給開口を囲む、請求項1から10のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項13】
前記供給開口は複数の供給開口を含む、請求項1から12のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項14】
前記突出部は連続的な面を有する、請求項1から13のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項15】
前記突出部の面は平面である、請求項1から14のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項16】
使用中、前記突出部の面は前記対向面と平行である、請求項1から15のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項17】
本流体ハンドリング構造の下面にステップが存在し、そのステップは前記突出部と、前記供給開口が形成される前記下面の一部または前記複数の抽出開口が形成される前記下面の一部あるいはその両方と、の間に存在する、請求項1から16のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項18】
投影システムと本流体ハンドリングシステムに対向する対向面との間に定義される空間に液浸液を供給するよう構成された流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造の下面は、
前記対向面に向けて流体を供給するよう構成された供給開口と、
前記投影システムの光軸に対して前記供給開口よりも半径方向内側に設けられた突出部と、を有する、流体ハンドリング構造。
【請求項19】
流体を抽出するためのひとつ以上の開口が前記下面に形成される、請求項18に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項20】
前記ひとつ以上の開口は前記供給開口よりも半径方向外側に設けられる、請求項19に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項21】
前記突出部は、前記供給開口が形成される前記下面の第1部分の平面とは異なる平面にある前記下面の第2部分に形成される、請求項18から20のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項22】
使用中、前記第2部分は前記第1部分よりも前記対向面から遠い、請求項21に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項23】
投影システムと本流体ハンドリングシステムに対向する対向面との間の空間に液浸液を供給するよう構成された流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造の下面には、
前記対向面に向けて液浸液を供給するためのひとつ以上の供給開口と、
前記下面の面に設けられ、前記下面の幾何学的中心に対して前記ひとつ以上の供給開口よりも半径方向外側となるステップと、が形成され、
前記ステップは前記空間からの液浸液の半径方向外向きの流れを低減するよう構成される、流体ハンドリング構造。
【請求項24】
基板および/または基板テーブルの局所的な領域にのみ液浸液を供給するよう構成される、請求項1から23のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項25】
液浸リソグラフィ装置であって、
基板テーブルによって支持される基板上に放射ビームを投影する投影システムと、
請求項1から24のいずれかに記載の流体ハンドリング構造と、を備え、
前記対向面は、基板の面および/または基板テーブルの面である、液浸リソグラフィ装置。
【請求項26】
デバイス製造方法であって、投影システムの最終要素と基板との間に流体を提供することを含み、前記提供することは、
流体ハンドリング構造の下面の供給開口を通じて前記基板に向けて液体を供給することと、
前記流体ハンドリング構造の下面の抽出開口を通じて前記流体ハンドリング構造と前記基板および/または基板テーブルとの間から流体を除去することと、を含み、
前記下面の前記供給開口と前記抽出開口との間に突出部が設けられる、デバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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