説明

流体ハンドリング構造、リソグラフィ装置およびデバイス製造方法

【課題】泡混入の可能性を少なくとも低減できるリソグラフィ装置を提供する。
【解決手段】リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間から本流体ハンドリング構造の外部の領域への境界において、空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、線形アレイ状の複数のガス供給開口と、線形アレイ状の複数のガス供給開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備える。複数のガス供給開口はメニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、複数のガス供給開口はメニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体ハンドリング構造、リソグラフィ装置およびリソグラフィ装置を使用してデバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板、通常は基板のターゲット部分、に転写する機械である。リソグラフィ装置は例えば集積回路(IC)の製造に用いられる。この場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層に形成されるべき回路パターンを作成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウエハ)上のターゲット部分(例えば1つまたは複数のダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は典型的には、基板に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層へのイメージングを介して行われる。一般に一枚の基板にはネットワーク状に隣接する一群のターゲット部分が含まれ、これらは連続的にパターン形成される。公知のリソグラフィ装置にはいわゆるステッパとスキャナとがある。ステッパにおいては、ターゲット部分にパターン全体が一度に露光されるようにして各ターゲット部分は照射を受ける。スキャナにおいては、所与の方向(「走査」方向)に放射ビームによりパターンを走査するとともに基板を走査方向に平行または逆平行に走査するようにして各ターゲット部分は照射を受ける。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へパターンを転写することが可能である。
【0003】
リソグラフィ投影装置において基板を液体に浸すことが提案されている。この液体は比較的高い屈折率をもつ液体であり、例えば水である。投影システムの最終要素と基板との間の空間が液体で満たされる。液体はある実施の形態では蒸留水であるが、その他の液体も使用可能である。本発明のある実施の形態は液体に言及して説明されるであろう。しかしながら、その他の流体、特に濡れ性流体、非圧縮性流体、及び/又は屈折率が空気より高い、望ましくは屈折率が水より高い流体が適切なこともある。気体を除く流体が特に望ましい。その真意は、露光放射は液体中で波長が短くなるので、より小さい形状の結像が可能となるということである。(液体の効果は、システムの有効開口数(NA)を大きくし、焦点深度も大きくすることと見なすこともできる。)別の液浸液も提案されている。固体粒子(例えば石英)で懸濁している水や、ナノ粒子(例えば最大寸法10nm以下)で懸濁している液体である。懸濁粒子はその液体の屈折率と同程度の屈折率を有していてもよいし、そうでなくてもよい。その他に適切な液体は芳香族などの炭化水素、フッ化炭化水素、および/または水溶液を含む。
【0004】
基板を、又は基板と基板テーブルとを液体の浴槽に浸すこと(例えば米国特許第4,509,852号参照)は、走査露光中に加速すべき大きい塊の液体があることでもある。これには、追加のモータ又はさらに強力なモータが必要であり、液体中の乱流が望ましくない予測不能な効果を引き起こすことがある。
【0005】
液浸装置では液浸流体は流体ハンドリングシステム、デバイス構造または装置によって取り扱われる。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは液浸流体を供給してもよく、したがって流体供給システムであってもよい。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは液浸流体を少なくとも部分的に閉じ込めてもよく、流体閉じ込めシステムであってもよい。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは液浸流体に障壁(バリア)をもたらしてもよく、バリア部材であってもよい。バリア部材は流体閉じ込め構造であってもよい。ある実施の形態では、流体ハンドリングシステムは、ガスの流れを生成または使用してもよい。この流れは例えば液浸流体の流れ及び/または位置の制御に役立つ。ガス流が液浸流体を閉じ込めるシールを形成してもよく、流体ハンドリング構造がシール部材と呼ばれてもよい。シール部材は流体閉じ込め構造であってもよい。ある実施の形態では、液浸液は液浸流体として使用されてもよい。その場合、流体ハンドリングシステムは液体ハンドリングシステムである。上記説明に関して、本段落で流体について定義した特徴への言及は、液体について定義される特徴を含むものと理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
液浸液が流体ハンドリングシステムによって投影システム下の表面の局所的な領域に閉じ込められる場合、メニスカスがその流体ハンドリングシステムと表面との間に形成される。そのメニスカスが表面上の液滴と衝突すると、液浸液に泡が含まれる結果となりうる。流体ハンドリングシステムからの漏れを含む種々の理由によって表面上に液滴が存在しうる。液浸液内の泡によって結像誤差が生じうる。例えば基板への転写中に泡が投影ビームに干渉することによってそのような結像誤差が生じうる。
【0007】
例えば、泡混入の可能性を少なくとも低減できるリソグラフィ装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある態様によると、リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、線形アレイ状の複数のガス供給開口と、線形アレイ状の複数のガス供給開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、複数のガス供給開口はメニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、複数のガス供給開口はメニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられる、流体ハンドリング構造が提供される。
【0009】
ある態様によると、リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、かつ、メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられたガスナイフの開口と、ガスナイフの開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、少なくともひとつのガスリカバリ開口は、同様のまたは同一のサイズの複数のガスリカバリ開口を含む、流体ハンドリング構造が提供される。
【0010】
ある態様によると、リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、かつ、メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられたガスナイフの開口と、ガスナイフの開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、少なくともひとつのガスリカバリ開口は、線に沿った周期的パターンで配置された複数のガスリカバリ開口を含む、流体ハンドリング構造が提供される。
【0011】
ある態様によると、リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、かつ、メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられたガスナイフの開口と、ガスナイフの開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、少なくともひとつのガスリカバリ開口は、等間隔で配置された複数のガスリカバリ開口を含む、流体ハンドリング構造が提供される。
【0012】
ある態様によると、投影システムと基板との間の空間に閉じ込められた液浸液を通じてパターン形成された放射ビームを投影することと、線形アレイ状の複数のガス供給開口を通じて、液浸液のメニスカスに隣接する位置に、ガスを提供することと、線形アレイ状の複数のガス供給開口のうちの隣接するガス供給開口を通過した液体を、線形アレイ状の複数のガス供給開口の半径方向外側に設けられたガスリカバリ開口を通じて、回収することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の実施の形態は、例示のみを目的として添付の模式的な図面を参照して説明される。図面では、対応する参照符号は、対応する部分を示す。
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係るリソグラフィ装置を示す図である。
【0015】
【図2】リソグラフィ投影装置において使用される液体供給システムを示す図である。
【図3】リソグラフィ投影装置において使用される液体供給システムを示す図である。
【0016】
【図4】リソグラフィ投影装置において使用されるさらなる液体供給システムを示す図である。
【0017】
【図5】リソグラフィ投影装置において使用されるさらなる液体供給システムを示す図である。
【0018】
【図6】リソグラフィ投影装置において使用されるさらなる液体供給システムの断面図である。
【0019】
【図7】リソグラフィ投影装置において使用される液体供給システムの平面図である。
【0020】
【図8】リソグラフィ投影装置において使用される液体供給システムの平面図である。
【0021】
【図9】抽出開口の4つの異なる構成についての、抽出された水流をy軸に示し表面面積当たりの有効フローをx軸に示すグラフである。
【0022】
【図10】x軸に半径距離をとり、y軸に圧力をとったときのグラフを示す図である。
【0023】
【図11】x軸に横方向距離をとり、y軸に圧力をとったときのグラフを示す図である。
【0024】
【図12】リソグラフィ投影装置において使用される液体供給システムの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の実施の形態に係るリソグラフィ装置を模式的に示す図である。この装置は、放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調整するよう構成されている照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構成され、いくつかのパラメタに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成されている第1の位置決め装置PMに接続されている支持構造(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストでコーティングされた基板)Wを保持するよう構成され、いくつかのパラメタに従って例えば基板Wの表面などのテーブルの表面を正確に位置決めするよう構成されている第2の位置決め装置PWに接続されている支持テーブル(例えばひとつまたは複数のセンサを支持するセンサテーブルまたは基板テーブル)WTと、パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば1つまたは複数のダイからなる)ターゲット部分Cに投影するよう構成されている投影システム(例えば屈折投影レンズ)PSと、を備える。
【0026】
照明システムILは、放射の方向や形状の調整またはその他の制御用に、各種の光学素子例えば屈折光学素子、反射光学素子、磁気的光学素子、電磁気的光学素子、静電的光学素子または他の各種光学部品を含んでもよく、あるいはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0027】
支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造は、パターニングデバイスMAの向きやリソグラフィ装置の構成、あるいはパターニングデバイスMAが真空環境下で保持されるか否かなどの他の条件に応じた方式でパターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、機械的固定、真空固定、またはパターニングデバイスMAを保持するその他の固定用技術を用いてもよい。支持構造MTは例えばフレームまたはテーブルであってよく、必要に応じて固定されていてもよいし移動可能であってもよい。支持構造MTは、パターニングデバイスMAを例えば投影システムPSに対して所望の位置に位置決めできるようにしてもよい。本明細書において「レチクル」または「マスク」という用語を用いた場合には、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義であるとみなされてもよい。
【0028】
本明細書では「パターニングデバイス」という用語は、例えば基板のターゲット部分にパターンを形成すべく放射ビームの断面にパターンを付与するために使用され得るいかなるデバイスをも指し示すよう広く解釈されるべきである。放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャやいわゆるアシストフィーチャを含む場合は、基板のターゲット部分における所望のパターンと厳密に対応していなくてもよいことを注意しておく。一般には、放射ビームに付与されるパターンは、ターゲット部分に形成される集積回路などのデバイスの特定の機能層に対応する。
【0029】
パターニングデバイスMAは透過型であっても反射型であってもよい。パターニングデバイスには例えばマスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィの分野では周知であり、バイナリマスクやレベンソン型位相シフトマスク、ハーフトーン型位相シフトマスク、更に各種のハイブリッド型マスクが含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例としては、小型のミラーがマトリックス状に配列され、各ミラーが入射してくる放射ビームを異なる方向に反射するように個別に傾斜されるというものがある。傾斜されたミラーは、ミラーマトリックスにより反射された放射ビームにパターンを付与する。
【0030】
本明細書で使用される「投影システム」なる用語は、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システムおよび静電光学システムまたはそれらの任意の組み合わせを含む任意のタイプの投影システムを指し示すものとして広義に解釈されるべきである。投影システムは、使用される露光放射に応じて、あるいは真空の使用や液浸液の使用などのその他の要因に応じて適切とされる投影システムであってもよい。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用する場合はいつでも、より一般的な用語である「投影システム」と同義であると見なされうる。
【0031】
図示されるように、装置は(例えば透過型マスクを使用する)透過型である。あるいはまた、装置は(例えば上述のタイプのプログラマブルミラーアレイを使用するまたは反射マスクを使用する)反射型であってもよい。
【0032】
リソグラフィ装置は2つ以上のテーブル(またはステージまたはサポート)、例えば2つ以上の基板テーブルまたはひとつの基板テーブルとひとつのセンサまたは測定テーブルとの組み合わせを備えるタイプのものであってもよい。このような「多重ステージ」型の装置においては、複数のテーブルが並行して使用されてもよく、あるいは1以上のテーブルが露光に使用されている間に1以上の他のテーブルで準備工程が実行されてもよい。リソグラフィ装置は2つ以上のパターニングデバイステーブル(またはステージまたはサポート)を有してもよく、それらのパターニングデバイステーブルは、基板テーブル、センサテーブルおよび測定テーブルと同様に、並行して使用されてもよい。
【0033】
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えば光源SOがエキシマレーザである場合には、光源SOとリソグラフィ装置とは別体であってもよい。この場合、光源SOはリソグラフィ装置の一部を構成しているとはみなされなく、放射ビームは光源SOからイルミネータILへとビーム搬送系BDを介して受け渡される。ビーム搬送系BDは例えば適当な方向変更用のミラー及び/またはビームエキスパンダを含んで構成される。他の場合、例えば光源SOが水銀ランプである場合には、光源SOはリソグラフィ装置と一体に構成されていてもよい。光源SOとイルミネータILとは、またビーム搬送系BDが必要とされる場合にはこれも合わせて、放射システムと称されることがある。
【0034】
イルミネータILは放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてもよい。一般には、イルミネータILの瞳面における強度分布の少なくとも半径方向外径及び/または内径の大きさ(通常それぞれ「シグマ−アウタ(σ−outer)」、「シグマ−インナ(σ−inner)」と呼ばれる)が調整される。加えてイルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の要素を備えてもよい。イルミネータILはビーム断面における所望の均一性及び照度分布を得るべく放射ビームを調整するために用いられてもよい。光源SOと同様に、イルミネータILはリソグラフィ装置の一部を形成するとみなされてもよいしみなされなくてもよい。例えば、イルミネータILはリソグラフィ装置と一体であってもよく、またはリソグラフィ装置と別体であってもよい。後者の場合、リソグラフィ装置はイルミネータILがそれに取り付け可能なように構成されてもよい。オプションで、イルミネータILは取り外し可能であって別途提供されてもよい(例えば、リソグラフィ装置の製造者または他のサプライヤーによって)。
【0035】
放射ビームBは、支持構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射して、当該パターニングデバイスMAによりパターンが付与される。パターニングデバイスMAを通過した放射ビームBは投影システムPSに進入する。投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに投影する。第2の位置決め装置PWと位置センサIF(例えば、干渉計、リニアエンコーダ、静電容量センサなど)により基板テーブルWTを正確に移動させることができる。基板テーブルWTは例えば放射ビームBの経路に異なるターゲット部分Cを位置決めするように移動される。同様に、第1の位置決め装置PMと他の位置センサ(図1には明示せず)とにより放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。この位置決めは例えばマスクライブラリからのマスクの機械検索後や走査中に行われる。一般に支持構造MTの移動は、第1の位置決め装置PMの一部を構成するロングストロークモジュール(粗い位置決め用)及びショートストロークモジュール(精細な位置決め用)により実現されうる。同様に基板テーブルWTの移動は、第2の位置決め装置PWの一部を構成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールにより実現されうる。ステッパでは(スキャナとは異なり)、支持構造MTはショートストロークのアクチュエータにのみ接続されているか、あるいは固定されていてもよい。パターニングデバイスMAと基板Wとは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いてアライメントされてもよい。図においては基板アライメントマークが専用の目標部分を占拠しているが、アライメントマークは目標部分C間のスペースに配置されてもよい(これはスクライブライン・アライメントマークとして公知である)。同様に、パターニングデバイスMAに複数のダイがある場合にはパターニングデバイスアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0036】
図示の装置は以下のモードのうち少なくとも1つで使用することができる。
【0037】
1.ステップモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンの全体が1回の照射でターゲット部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは実質的に静止状態とされる(すなわち、単一の静的な露光)。そして基板テーブルWTがX方向及び/またはY方向に移動されて、異なるターゲット部分Cが露光される。ステップモードでは露光フィールドの最大サイズが単一静的露光で転写されるターゲット部分Cのサイズを制限することになる。
【0038】
2.スキャンモードにおいては、放射ビームBに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、支持構造MT及び基板テーブルWTは同期して走査される(すなわち、単一の動的な露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)特性及び像反転特性により定められる。スキャンモードでは露光フィールドの最大サイズが単一の動的な露光でのターゲット部分Cの(非走査方向の)幅を制限し、走査移動距離がターゲット部分Cの(走査方向の)長さを決定する。
【0039】
3.別のモードにおいては、放射ビームに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される間、支持構造MTはプログラム可能パターニングデバイスを保持して実質的に静止状態とされ、基板テーブルWTは移動または走査される。このモードでは一般にパルス放射源が用いられ、プログラマブルパターニングデバイスは走査中に基板テーブルWTが移動するたびに、または連続する放射パルスと放射パルスの間に必要に応じて更新される。この動作モードは、上述のタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に適用可能である。
【0040】
上記の使用モードを組み合わせて動作させてもよいし、使用モードに変更を加えて動作させてもよく、さらに全く別の使用モードを用いてもよい。
【0041】
投影システムPSの最終要素と基板との間に液体を提供する構成は三種類に分類することができる。浴槽型、いわゆる局所液浸システム、及び全域濡れ液浸システムである。浴槽型では基板Wの実質的に全体が液槽に浸される。基板テーブルWTの一部も液層に浸されてもよい。
【0042】
局所液浸システムは、基板の局所区域にのみ液体を供給する液体供給システムを使用する。液体で満たされる空間は基板上面よりも小さく、液体で満たされた領域は基板Wがその領域の下を移動しているとき投影システムPSに対し実質的に静止状態にある。図2乃至図7はそのようなシステムに使用可能である供給装置をそれぞれ示す。局所区域に液体を封止するシール機能が存在する。そのための構成の一例がPCT特許出願第WO99/49504号に開示されている。
【0043】
全域濡れ構成においては液体は閉じ込められない。基板上面全体と基板テーブルの全体または一部が液浸液で覆われる。少なくとも基板を覆う液体の深さは小さい。液体は基板上の液体フィルムであってもよく、例えば基板上の液体薄膜であってもよい。液浸液は、投影システム及びそれに対向する対向表面の領域に供給される(そのような対向表面は基板表面及び/または基板テーブル表面であってもよい)。図2乃至図5の液体供給装置はいずれもこのシステムに使用可能である。しかしながら、シール機能はなくすか、動作させないか、通常ほどは効果的でないようにして、局所区域のみに液体を封じないようにする。
【0044】
図2及び図3に図示されているように、液体が少なくとも1つの入口によって基板上に、望ましくは最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給される。液体は、投影システムの下を通過した後に少なくとも1つの出口によって除去される。基板が−X方向に要素の下を走査されるにつれて、液体が要素の+X側にて供給され、−X側にて除去される。図2は、液体が入口を介して供給され、低圧源に接続された出口によって要素の他方側で除去される構成を概略的に示したものである。図2では液体が最終要素に対する基板の移動方向に沿って供給されるが、こうである必要はない。最終要素の周囲に配置された入口及び出口の様々な方向及び数が可能であり、一例が図3に示され、ここでは各側に4組の入口と出口が、最終要素の周囲に規則的なパターンで設けられる。なお液体の流れ方向を図2及び図3に矢印で示す。
【0045】
局所液体供給システムをもつ液浸リソグラフィの解決法が、図4に示されている。液体は、投影システムPLの両側にある2つの溝入口によって供給され、入口の半径方向外側に配置された複数の別個の出口によって除去される。入口を、投影ビームを通す穴を中心に有するプレートに設けることができる。液体は、投影システムPSの一方側にある1つの溝入口によって供給され、投影システムPSの他方側にある複数の別個の出口によって除去され、これによって投影システムPSと基板Wとの間に液体の薄膜の流れが生じる。どちらの組合せの入口と出口を使用するかの選択は、基板Wの移動方向によって決まる(他方の組合せの入口及び出口は作動させない)。なお流体の流れ方向および基板の流れ方向を図4に矢印で示す。
【0046】
提案されている別の構成は液体閉じ込め構造を液体供給システムに設けることである。液体閉じ込め構造は、投影システムの最終要素と基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。そのような構成が図5に示される。
【0047】
図5は、局所液体供給システムまたは流体ハンドリング構造12を模式的に示す図である。流体ハンドリング構造12は、投影システムの最終要素と基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間の境界の少なくとも一部に沿って延在する。(なお後述の説明で基板W表面への言及は、そうではないことを明示していない限り、基板テーブル表面をも意味するものとする。)流体ハンドリング構造12は、投影システムに対してXY面で実質的に静止しているが、Z方向(光軸の方向)では多少の相対運動があってよい。ある実施の形態においては、流体ハンドリング構造12と基板Wの表面との間にシールが形成される。このシールは、ガスシール(ガスシールをもつシステムが欧州特許出願公開公報EP−A−1420298号に開示されている)や液体シール等の非接触シールであってもよい。
【0048】
流体ハンドリング構造12は、投影システムPSの最終要素と基板Wとの間の空間11の少なくとも一部に液体を収容する。基板Wに対する非接触シール16が投影システムPSの像フィールドの周囲に形成され、投影システムPSの最終要素と基板W表面との間の空間に液体が閉じ込められてもよい。この空間11の少なくとも一部が流体ハンドリング構造12により形成される。流体ハンドリング構造12は投影システムPSの最終要素の下方に配置され、当該最終要素を囲む。液体が、投影システムPS下方かつ流体ハンドリング構造12内部の空間に、液体入口13によってもたらされる。液体出口13によって液体が除去されてもよい。流体ハンドリング構造12は、投影システム最終要素の少し上まで延在してもよい。液位が最終要素の上まで上昇することで、液体のバッファが提供される。ある実施の形態では、流体ハンドリング構造12は、上端において内周が投影システムまたはその最終要素の形状によく一致し、例えば円形であってもよい。下端において内周がイメージフィールドの形状によく一致し、例えば矩形であってもよい。しかしながら、必ずしもこうでなくてもよい。
【0049】
液体は、流体ハンドリング構造12の底部と基板Wの表面との間に使用時に形成されるガスシール16によって空間11に保持されてもよい。ガスシールはガスによって形成される。ガスシールのガスは、圧力下で入口15を介して流体ハンドリング構造12と基板Wとの隙間に提供され、出口14から抜き取られる。ガス入口15への過剰圧力、出口14の真空レベル、及び隙間の幾何学的形状は、液体を閉じ込める内側への高速のガス流16が存在するように構成される。流体ハンドリング構造12と基板Wとの間の液体にガスが印加する力が空間11に液体を保持する。入口/出口は空間11を取り巻く環状溝であってもよい。環状溝は連続していてもよいし不連続であってもよい。ガス流れ16は空間11に液体を保持する際に有効に働く。このようなシステムが、本明細書にその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2004−0207824号公報に開示されている。ある実施の形態では流体ハンドリング構造12がガスシールを有しない。
【0050】
図6は、液体供給システムの一部である流体ハンドリング構造12を示す。流体ハンドリング構造12は、投影システムPSの最終要素の周縁(例えば周)に沿って延在する。
【0051】
部分的に空間11を画定する表面に設けられた複数の開口20は、空間11に液体を供給する。液体は、対応するチャンバ24、26を通過し、側壁28、22の開口29、20をそれぞれ通過してから空間11に流入する。
【0052】
流体ハンドリング構造12の底部と対向表面、例えば基板Wまたは基板テーブルWTまたはそれらの両方、との間にシールが形成される。図6ではシールデバイスは非接触シールを提供し、いくつかの部材から構成されている。投影システムPSの光軸から半径方向外側に、空間11へと延在する流れ制御プレート51が設けられる(オプション)。制御プレート51は開口55を有してもよく、その開口55を通じて液体が流れうる。制御プレート51がZ方向に(例えば、投影システムPSの光軸と平行に)動かされる場合、開口55は有益でありうる。基板Wなどの対向表面に対向する(例えば反対側にある)流体ハンドリング構造12の底面において流れ制御プレート51の半径方向外側には開口180が設けられていてもよい。開口180は対向表面に向かう向きに液体を供給することができる。これは、基板Wと基板テーブルWTとの隙間を液体で満たすことにより液浸液中での気泡形成を抑制するという点で結像中に有効である。
【0053】
開口180の半径方向外側には、流体ハンドリング構造12と対向表面との間から液体を抽出するための抽出アセンブリ70が設けられていてもよい。抽出アセンブリ70は単相流を抽出する手段として動作してもよいし、二相流を抽出する手段として動作してもよい。抽出アセンブリ70はメニスカス固定特徴部として動作してもよい。メニスカス固定特徴部は、使用中、流体ハンドリング構造と対向表面との間にメニスカスを画定してもよい。メニスカスは、流体ハンドリング構造によって閉じ込められている液体の、少なくとも流体ハンドリング構造の下側にある外縁または境界であってもよい。
【0054】
ガスナイフ90は、抽出アセンブリの半径方向外側に存在する。抽出アセンブリおよびガスナイフの構成の詳細は、米国特許出願公開第2006/0158627号公報に開示されており、その出願の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
抽出アセンブリ70は単相抽出器として、本明細書にその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2006−0038968号に開示されているような液体除去デバイスまたは抽出部または入口を備えてもよい。ある実施の形態では、液体除去デバイス70は、液体とガスとを分離して単一液体相での液体抽出を可能とするために使用される多孔質材料111で覆われている入口を備える。チャンバ120の負圧は、多孔質材料110の孔に形成されるメニスカスが液体除去デバイス70のチャンバ121に周囲のガスが引き込まれることを実質的に妨げるよう選択される。しかしながら、多孔質材料111の表面が液体に接触しているときには流れを制限するメニスカスは無く、液体除去デバイス70の区画121に自由に液体が流れることができる。
【0056】
多孔質材料111は多数の小孔を有する。各孔の寸法例えば幅または直径は5マイクロメートル乃至50マイクロメートルの範囲にある。多孔質材料111は、対向表面などの液体が除去されるべき表面例えば基板Wの表面から50マイクロメートル乃至300マイクロメートルの範囲の高さに保持されてもよい。ある実施の形態では、多孔質材料111は少なくとも若干の親液体性であってもよい。つまり、液浸液例えば水に対する多孔質材料111の動的接触角は90度以下であってもよく、望ましくは85度以下または望ましくは80度以下であってもよい。
【0057】
ある実施の形態では、液体供給システムは液位変動を処理するための構成を有する。これにより、投影システムPSと液体閉じ込め構造12との間で上昇した(例えばメニスカス400を形成する)液体が処理され逃げない。この液体処理の1つの手法は、疎液性(例えば疎水性)コーティングを形成することである。そのコーティングが流体ハンドリング構造12の上面で開口および/または投影システムPSの最終光学素子の周囲を取り巻く帯状に形成されていてもよい。コーティングは投影システムPSの光軸の半径方向外側に設けられていてもよい。疎液性(例えば疎水性)コーティングは空間11に液浸液を保持するのに役立つ。この液体を処理する追加的なまたは代替的な方法は、液体閉じ込め構造12および/または投影システムPSに対する所定の位置(例えば高さ)に到達した液体を除去するために出口201を設けることである。
【0058】
他の局所領域構成は、気体吸引の原理を利用する流体ハンドリング構造である。このいわゆる気体吸引原理は例えば米国特許出願公開第2008−0212046号、2009−0279060号、および2009−0279062号に記載されている。このシステムにおいては、抽出孔が望ましくはコーナを有する形状に配列されている。そのコーナがステップ方向や走査方向などの所望の動作方向に合わせられていてもよい。これにより、所望の方向の所与の速さにおいて流体ハンドリング構造表面の2つの開口間のメニスカスに生じる力を、それら2つの出口が所望の方向に垂直に配列された場合に比べて、小さくすることができる。しかしながら、本発明の実施の形態は平面視において任意の形状を有する流体ハンドリングシステムに適用されうる。また、本発明の実施の形態は任意の形状に構成された抽出開口のような部材を有する流体ハンドリングシステムに適用されうる。非限定的なリストにあるそのような形状は、円などの楕円または矩形(例えば、正方形)などの直線で囲まれた形状または菱形などの平行四辺形または4以上の点の星などの4つ以上のコーナを有するコーナ形状を含む。
【0059】
本発明の実施の形態が関連しているUS2008/0212046のシステムの変形例では、開口はコーナを有する幾何的な形状にしたがって配置され、その幾何学的な形状は走査方向およびステッピング方向の両方において整列するコーナのなかに鋭角のコーナ(約60度から90度までの範囲、望ましくは75度から90度までの範囲、最も望ましくは75度から85度までの範囲)の存在を許容するものである。この幾何学的な形状によれば、整列した個々のコーナの方向における速さを増やすことができる。これは、走査方向における不安定なメニスカスに起因する液滴の生成、例えば臨界速さを超えたときの液滴の生成が抑制されることによるものである。走査方向およびステッピング方向の両方においてコーナが整列される場合、これらの方向において速さを大きくすることができる。走査方向およびステッピング方向における動作の速さは実質的に等しくされることが望ましい。
【0060】
図7は、本発明の実施の形態が関係してもよく、かつ、気体吸引原理を体現している抽出器を有する流体ハンドリングシステムまたは流体ハンドリング構造12のメニスカス固定特徴部を模式的に示す平面図である。例えば、図5のメニスカス固定構造14、15、16または図6に示される少なくとも抽出器アセンブリ70を置き換えることができるメニスカス固定デバイスの特徴が示されている。図7のメニスカス固定デバイスは抽出器の形をとる。メニスカス固定デバイスは、複数の離散開口50を備えている。これらの開口50の各々は、図には円形の開口として示されているが、必ずしも円形である必要はない。実際、これらの開口50のうちの1つまたは複数は、円形、楕円形、直線で囲まれた形状(例えば、正方形または矩形)、三角形、等々から選択される1つまたは複数の開口であってもよい。また、1つまたは複数の開口は細長いものであってもよい。個々の開口は、平面視で、0.2mm以上の、または0.5mm以上の、または1mm以上の長さ寸法(つまり1つの開口から隣接する開口への方向の寸法)を有している。ある実施の形態では長さ寸法は0.1mmから10mmまでの範囲から選択され、ある実施の形態では0.25mmから2mmまでの範囲から選択される。ある実施の形態では、個々の開口の幅は、0.1mmから2mmまでの範囲から選択される。ある実施の形態では、個々の開口の幅は、0.2mmから1mmまでの範囲から選択される。ある実施の形態では、長さ寸法は、0.2mmから0.5mmまでの範囲から選択され、または0.2mmから0.3mmまでの範囲から選択される。図6に示されるもの(符号180で示される)のような入口開口は、開口50の半径方向内側に設けられてもよい。
【0061】
図7のメニスカス固定デバイスの開口50の各々を、個別の低圧力源に接続することができる。別法または追加として、これらの開口50の各々または複数を、それ自体が低圧力に保持される共通のチャンバまたはマニホルド(環状であってもよい)に接続することも可能である。この方法によれば、これらの開口50の各々または複数における一様な低圧を実現できる。これらの開口50を真空源に接続することができ、および/または流体ハンドリングシステム(あるいは閉じ込め構造)を取り囲んでいる大気の圧力を高くして所望の圧力差を生成することも可能である。
【0062】
図7の実施の形態の場合、開口は流体抽出開口である。各開口は、流体ハンドリングシステムへのガス、液体、またはガスと液体の2相流体の通路における入口である。各入口は空間11からの出口と見なされうる。
【0063】
開口50は、流体ハンドリング構造12の表面に形成される。その表面は、使用中、基板Wおよび/または基板テーブルWTと対向する。ある実施の形態では、これらの開口は、流体ハンドリング構造12の平らな表面に存在している。ある実施の形態では、基板部材の底面にリッジが存在しうる。開口の少なくともひとつはリッジの中に存在してもよい。針またはチューブによってこれらの開口50が画定されてもよい。これらの針のうちのいくつか、たとえば隣接する針のボディは、一体に結合することができる。これらの針を一体に結合して単一のボディを形成することができる。この単一のボディはコーナ形状を形成してもよい。
【0064】
開口50は、たとえばチューブすなわち細長い通路の末端である。これらの開口は、使用中、それらが対向表面、例えば基板Wに向けられるよう、望ましくはそれらが対向表面に対向するよう配置されることが望ましい。これらの開口50のリム(つまり表面からの出口)は、対向表面の一部の上面と実質的に平行であってもよい。これらの開口50が接続される通路の長手軸は対向表面の頂部、例えば基板Wの上面に対して実質的に(直角から+/−45度以内、望ましくは35度以内、25度以内、さらには15度以内で)直角であってもよい。
【0065】
個々の開口50は、液体およびガスの混合物を抽出するように設計されている。液体は空間11から抽出され、一方、ガスは開口50の液体とは別の側にある大気から抽出される。これにより、矢印100によって示されているガス流が生成され、このガス流は、図7に示されているように、これらの開口50間のメニスカス320を実質的に所定の位置に固定するために有効である。このガス流は、運動量阻止による、ガス流誘導圧力勾配による、および/または液体に対するガス(例えば空気)流のドラッグ(ずり(shear))による、液体閉じ込めの維持に貢献する。
【0066】
開口50は、流体ハンドリング構造が液体を供給する空間を取り囲んでいる。これらの開口50は、流体ハンドリング構造の下側の表面に分散されていてもよい。これらの開口は、空間の周りに間隔を隔てて実質的に連続していてもよい(ただし、隣接する開口50間の間隔は変化してもよい)。ある実施の形態では、液体はコーナを有する形状の周り全体から抽出され、また、液体がコーナを有する形状に衝突するポイントで実質的に抽出される。これが達成されるのは、空間の周り全体にこれらの開口50が(コーナを有する形状に)形成されることによるものである。この方法によれば、液体を空間11に閉じ込めることができる。メニスカスは、動作中、開口50によって固定されうる。
【0067】
図7から分かるように、開口50は、平面図で、コーナを有する形状(つまりコーナ52を備えた形状)が形成されるように配置されている。図7の場合、これは、縁部すなわち辺54が湾曲した菱形、望ましくは正方形の形をしている。縁部54は、湾曲している場合負の半径を有している。縁部54は、コーナ52から離れた領域においてコーナを有する形状の中心に向かって湾曲していてもよい。本発明の実施の形態は、例えば菱形や正方形や矩形などの直線で囲まれた形状または円形または三角形または星形または楕円形などの説明される形状を含むがそれに限定されない任意の平面形状に適用可能である。
【0068】
コーナを有する形状は、投影システムPS下での基板Wの主進行方向に沿った主軸110、120を有する。これは、臨界走査速さ以下において最大走査速さが開口50が円形に配置された場合より大きいことを確かなものとするのに役に立つ。これは、2つの開口50間のメニスカスに対する力が係数cosθで低減されることによるものである。ここでθは、これらの2つの開口50を結んでいる線の、基板Wが移動する方向に対する角度である。
【0069】
コーナを有する形状を使用することにより、ステップ方向の運動および走査方向の運動の最大速さを実質的に同じ速さにすることができる。これは、形状のコーナ52の各々と走査方向およびステッピング方向110、120とを整列させることによって達成されうる。一方の方向、たとえば走査方向の運動をステップ方向の運動より速くすることが好ましい場合、ひし形形状を使用することができる。このような構造の場合、ひし形の主軸を走査方向に整列させることができる。ひし形形状の場合、コーナの各々を鋭角にすることができるが、たとえばステッピング方向におけるひし形の2つの隣接する辺の間の角度は、鈍角、すなわち90度より大きい角度であってもよい(たとえば約90度から120度までの範囲から選択され、ある実施の形態では90度と105度の範囲から選択され、ある実施の形態では85度と105度の範囲から選択される)。
【0070】
開口50の形状の主軸を基板の主移動方向(通常は走査方向)に整列させ、かつ、第2の軸を基板のもう一方の主移動方向(通常はステップ方向)に整列させることによって、スループットを最適化することができる。θが90度以外の任意の構造は、少なくとも1つの運動方向には有利であることは理解されよう。したがって、主軸と主移動方向との正確なアライメントは重要ではない。
【0071】
負の半径を有する縁部を提供する利点は、コーナをより鋭くすることができることである。走査方向に整列したコーナ52およびステップ方向に整列したコーナ52の両方に対して、75から85度までの範囲から選択される角度、さらにはそれより小さい角度を達成することができる。この特徴が無かったならば、両方の方向に整列したコーナ52に同じ角度を持たせるためには、これらのコーナは90度の角度を有するほかない。90度未満が望ましい場合、90度未満のコーナを有する一の方向を選択する必要があり、その結果、もう一方のコーナが90度より大きい角度を有することになる。
【0072】
開口50の半径方向内側には、メニスカス固定特徴部は存在していなくてもよい。メニスカスは、開口50間で、開口50に流入するガスによって誘導されるドラッグ力を使用して固定される。ガスドラッグ速度は、約15m/s、望ましくは約20m/s以上の速度で十分である。基板から液体が蒸発する量を少なくすることができ、それにより液体のはねかけ、ならびに熱膨張/収縮効果の両方を抑制することができる。
【0073】
ある実施の形態では、メニスカスを固定するために、それぞれ直径が1mmで、かつ、3.9mmだけ分離された、少なくとも36の離散的な開口50が有効であろう。ある実施の形態では112個の開口50が存在している。これらの開口50は、辺の長さが0.5mm、0.3mm、0.25mm、0.2mm、0.15mm、0.1mmまたは0.05mmの正方形であってもよい。このようなシステムの総ガス流量は毎分100リットルのオーダーである。ある実施の形態では、総ガス流量は、毎分50リットルから毎分130リットルまでの範囲から選択され、ある実施の形態では、総ガス流量は毎分70リットルから毎分130リットルまでの範囲から選択される。
【0074】
流体ハンドリング構造12の底部の他の幾何形状も可能である。例えば、米国特許出願公開第2004−0207824号または米国特許出願公開第2010−0313974号に開示されている任意の構造を本発明の実施の形態で使用することができる。
【0075】
図2−図7を参照して上述されたような局所領域流体ハンドリング構造12は、空間11への泡の混入で苦しむことがある。見られるように、メニスカス320は流体ハンドリング構造12と流体ハンドリング構造12の下の表面との間に張られる。図5および図6に示されるこのメニスカス320は空間11の縁を規定する。メニスカス320と液滴、例えば空間11から脱出した液滴、とが表面上で衝突すると、空間11に気泡が混入されうる。気泡が結像誤差を導きうる点で、空間11への泡の混入は有害である。通常、少なくとも以下の3つの状況のうちのひとつにおいて表面上に液滴が残される。(a)液体ハンドリングデバイスが基板Wの縁の上に位置し、かつ流体ハンドリング構造12と基板Wとの間に相対的な移動があるとき、(b)液体閉じ込め構造に対向する対向表面の高さが段階的に変化するところの上に流体ハンドリング構造12が位置し、かつ流体ハンドリング構造12と対向表面との間に相対的な移動があるとき、および/または(c)流体ハンドリング構造12と対向表面との間の相対的な速さが大きすぎることにより、例えば対向表面の臨界走査速さを超えるなどしてメニスカスが不安定になるとき。メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられたひとつ以上のさらなるフィーチャ、例えばガスナイフを使用して、脱出した液体を捕らえることができる。
【0076】
US2010/0313974に記載されるような流体ハンドリング構造12では、開口50の周りに、スリット開口(例えば、連続的な線形開口)の形態のガスナイフが設けられる。スリット開口の形態のガスナイフは、図6の実施の形態の抽出器70の周りに設けられてもよい。スリット開口の形態のガスナイフは、典型的には50μmの幅を有しうる。しかしながら、そのような開口を製造するのは難しく、そのため特にメニスカス固定特徴部の周り(例えば、周)でガスナイフの半径方向内側において圧力変動を発生させる可能性がある。加えて、スリットの形態のガスナイフは、コンタミの存在に特に敏感でありうる。これもまた、メニスカス固定特徴部の周りでの負圧の不安定性を発生させる可能性がある。本発明の実施の形態は、これらの(および追加的にまたは代替的に他の)課題のうちのひとつ以上を指向する。
【0077】
図6および図7に示される実施の形態では、複数のガス供給開口61(すなわち、離散的なアパーチャ)が線形アレイ状に設けられている。複数のガス供給開口61は、空間に対して、メニスカス固定特徴部(図6では抽出器70であり、図7では開口50)の半径方向外側に設けられている。複数のガス供給開口61によって形成される線形アレイは、開口50同士を結ぶ線に実質的に平行となっていてもよい。使用中、複数のガス供給開口61は正圧力源に接続され、メニスカス固定デバイスを囲む(空気などのガスを供給する)ガスナイフを形成する。線形アレイ状の(例えば、一次元または二次元線形アレイ状の)複数のガス供給開口61は、メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲む。
【0078】
線形アレイの一例は線である。線形アレイの一例は、2行以上の開口を含む。開口は、線形アレイに沿って周期的に設けられてもよい。例えば、開口は行に沿ってジグザグ状(staggered)に設けられてもよい。開口の行のうちのひとつ以上において、各開口は線状に整列していてもよい。それらの行のうちの2つにおける開口は互いにジグザグ状に(すなわち、孔の2つの列)設けられてもよい。
【0079】
ある実施の形態では、複数のガス供給開口61は同様なサイズ、例えば同じサイズを有する。ある実施の形態では、複数のガス供給開口61は全て、所定のサイズのあるパーセンテージ以内、例えば5%以内のサイズを有する。ある実施の形態では、複数のガス供給開口61は、線に沿った周期的パターンで配置される。すなわち、複数のガス供給開口61は孔が繰り返し現れる列として構成され、その列においては孔のそれぞれの間のギャップは異なっている。例えば、2つの孔が接近して配置され、次にギャップがあり、そして2つの孔が接近して配置され、次にギャップがあり、といったものである。ある実施の形態では、複数のガス供給開口61は等間隔に配置されている。ある実施の形態では、隣接する開口は線に沿って設けられ、その線は直線である。ある実施の形態では、複数のガス供給開口61は、その複数のガス供給開口61から単位長さ当たりで実質的に一様なガスの流れを確かなものとするよう構成される。
【0080】
ある実施の形態では、複数のガス供給開口61は、流体ハンドリング構造12の下方の通路において、基板Wや基板テーブルWTなどの対向表面上に残される液体フィルムの厚さを低減するよう機能する。そのような液体フィルムは例えば線形アレイの半径方向外側からメニスカス320に向けて相対的に移動する液滴や、メニスカス320から半径方向外向きに相対的に移動する液滴である。複数のガス供給開口61(例えば直径90μmおよびピッチ200μm)を通じた実質的に同じフローレートによって、例えばスリット幅が50μmの同じフローレートを使用するスリット型ガスナイフの場合よりも高い平均圧力ピークを開口の下に実現することができる。したがって、離散的なガス供給開口61によると、流体ハンドリング構造12の下方を液体フィルムが通過した後、対向表面上にはより薄い液体フィルムが残されることとなりうる。平均圧力ピークがより高いことにより、メニスカス320に対して動く液滴を止める際の効率が改善されうる。基板Wのエッジと基板テーブルWTとの間のギャップを横断する場合に、平均圧力ピークがより高いことによりさらに良いパフォーマンスを得ることができる。スリット型のガスナイフを使用する場合、そのスリットからのガス流が開口50を通じて吸い取られる可能性があるので、スリットの下方の圧力ピークはつぶれうる。複数のガス供給開口61の圧力ピークは開口50を通じて吸い取られにくい。これにより圧力ピークがより安定するので、より良いパフォーマンスを実現できる(図10参照、後述)。
【0081】
ガス供給開口61は、液体フィルムが壊れて液滴になるのではなくむしろ液体が開口50に向けて駆動され抽出されることを確かなものとするために役に立ちうる。ある実施の形態では、ガス供給開口61は、フィルムの形成を妨げるよう動作する。ガス供給開口61は線形アレイ状に配置され、その線形アレイはメニスカス固定特徴部(例えば、開口50)の線に大まかに追随する。したがって、隣接するメニスカス固定特徴部(例えば、開口50)とガス供給開口61との距離は0.5mmから4.0mmの範囲内にあり、望ましくは2mmから3mmの範囲内にある。スリットガスナイフの場合と比べて、メニスカス320と液滴との衝突に起因して泡が発生するリスクを依然として低減しつつ、ガス供給開口61と開口50との距離を小さくできる。
【0082】
ある実施の形態では、ガス供給開口61は線形アレイ状に配置され、その線形アレイはメニスカス固定特徴部(例えば、開口50)の線と実質的に平行である。ある実施の形態では、メニスカス固定特徴部(例えば、開口50)およびガス供給開口61のうちの隣接するもの同士の距離は実質的に一定に維持される。
【0083】
ある実施の形態では、線形アレイ状の複数のガス供給開口61はガスナイフとして動作する。
【0084】
ステンレス鋼によって形成されてもよい液浸液ハンドリング構造12にスリットを形成することができる。このスリットを形成するために、2つの金属ブロックをそれらの間に適切な距離を設けたままボルトにより締結する。しかしながら、所望のおよび/または一定のスリット幅を達成することは難しい。対照的に、例えば材料を焼いてなくすためにレーザを使用する等のアブレーション(ablation)によって、離散的なガス供給開口61を形成することができる。これにより、開口の断面や寸法や位置の均一性を高めることができる。開口(開口の断面は丸いことが望ましい、そのような断面が最も製造容易であるからである)を5%の精度で掘ることが可能である。対照的に、50μmのスリットは+/−10μmの公差を有しうる。それは約+/−20%である。
【0085】
線形アレイ状の複数の離散的なガス供給開口61は、その開口(例えば、100μm)がスリット幅(例えば、50μm)よりも大きいので、スリット型のガスナイフほどにはコンタミやサイズの変動に敏感ではない。
【0086】
ガスナイフは、良いガスナイフ機能を確かなものとするために、ひとつ以上の鋭いエッジを有すべきである。エッジは物体との接触により損傷を受ける可能性がある。(そのような物体は例えば基板であり、そのような接触は作業距離(流体ハンドリング構造12と対向表面との距離)のゼロ動作中に生じうる。)
【0087】
より容易に製造できる可能性があることおよびコンタミや損傷の影響を受けにくいことの結果として、スリット型のガスナイフの代わりに離散的なガス供給開口61を使用することによって、メニスカス320に印加される圧力の均一性を高めることができる。実際、(理論上はスリットのほうがより良く振る舞うことが期待されているにもかかわらず、)離散的な開口61を通じたガスフローを、スリット型の開口を使用して提供されうるガスフローよりも増やすことができる。ガスナイフフィーチャ(例えば、離散的な開口の配置またはスリットの配置)の形状の平面視におけるコーナにおいて、離散的なガス供給開口61を使用した場合には生じ得ないような課題が、スリット型のガスナイフを使用した場合には生じうる。
【0088】
離散的な開口を使用すると、離散的なガス供給開口61からのフローレートを、メニスカス320を乱さずに、開口50からのフローの1.5倍程度まで増やすことができる。そのようなフローレートにおいて、同等なスリット型のガスナイフ(すなわち、単位長さ当たりで同じ開口面積を有するもの)は不安定なメニスカス320を生じさせるであろう。これは特に基板のエッジを横切る場合や基板テーブルWT上の高さの段階的変化を横切る場合にそうである。しかしながら、そのようなフローの設定において、同等な離散的なガスナイフ構成では、メニスカスはより高い安定性を有する。
【0089】
離散的なガス供給開口61がガスナイフ様の機能を示すために、開口面積は1メートル当たり6.0x10−5以下であることが望ましい。これは、スリット幅が60μmのガスナイフと同じ単位長さ当たりの開口面積と同等である。ある実施の形態では、1メートル当たりの開口面積は5.0x10−5以下であり、または4.0x10−5以下であり、または3.5x10−5以下である。開口面積率が低いほど、各開口下で達成可能な最大圧力を高めることができる。そして、レーキング動作(raking action)に似た動作を達成することができる。しかしながら、開口面積が小さくなりすぎると、ガスナイフの機能が失われる。隣接するガス供給開口間のピッチを180μm以下に低減することができないからである。ある実施の形態では、1メートル当たりの開口面積は1.0x10−5以上であり、または2.0x10−5以上であり、または2.5x10−5以上である。開口面積がより大きいとガスフローをより多くすることができ、達成可能な圧力を高めることができるので、より大きな開口面積が望ましい。
【0090】
ある実施の形態では、ガス供給開口61の断面は円形(丸形)である。ある実施の形態では、開口61が非円形である場合の直径または最大寸法は、125μm以下であり、望ましくは115μm以下である。これは、開口当たりの面積として(開口が正方形である場合の計算結果として)最大でも1.6x10−8であり、望ましくは最大でも1.3x10−8であることと等価である。ある実施の形態では、最大孔直径は200μmである。
【0091】
理論的な計算によると、ガス供給開口61の孔直径は作業距離の少なくとも二分の一であるべきであることが示される。作業距離は、流体ハンドリング構造12の底面と対向表面(例えば、基板W)との距離である。流体ハンドリング構造12の下面と対向表面との典型的な距離(作業距離または飛行高度(fly height))は150μmであり、これはある実施の形態では最小孔直径が75μmであることを示す。この条件が満たされる場合、ガス供給開口61を出るガスジェットのコアは、ジェットが貫通する流れのない環境によって乱されることなく対向表面に到達する。その結果、大きな圧力勾配が生成される。
【0092】
ある実施の形態では、離散的なガス供給開口61が非丸形である場合の直径または最小寸法は、80μm以上であり、より望ましくは90μm以上である。したがって、1メートル当たり5.0x10−9以上の断面積または1メートル当たり6.4x10−9以上の断面積が望ましい。この孔のサイズの範囲によると、製造可能性(サイズがより小さい方の範囲)と隣接するガス供給開口61間の許容可能な最大ピッチ(サイズがより大きい方の範囲)との間でバランスをとることができる。すなわち、許容可能な最大ピッチは、最小圧力が隣接する開口61間の所与の最小値(例えば、50mbar)よりも大きいことを導きうるピッチに関連する。加えて、隣接する開口間に残されるものが少なすぎる場合、弱体化および潜在的な破損が生じうる。これは最大孔直径を導く。
【0093】
ある実施の形態では、隣接するガス供給開口61間のピッチは180μm以上であり、望ましくは200μm以上である。反対に、ピッチは400μm以下であるべきであり、望ましくは200μm以下であるべきであり、より望ましくは280μm以下であるべきである。これらの範囲は、強度と、隣接する開口からのガス流を結合することと、の間のバランスを打つものであり、したがって開口間の大きな最小圧力(少なくとも30mbarであり望ましくは少なくとも50mbar)を提供する。
【0094】
ある実施の形態では、並んでいる複数のガス供給開口61のうちの隣接する孔の間の最小所望圧力を達成するために、その隣接する孔の間の物質の長さは、最大で、流体ハンドリング構造12の底面と対向表面との距離の半分であるべきである。これにより、物質の最小の長さは75μmとなる。ある実施の形態では、離散的なガス供給開口61のそれぞれからのガスジェットが隣接する離散的なガス供給開口を覆うように、ピッチが選択される。ガスジェットは4分の1形状(one over four shape)で広がる傾向にある。したがって、ある実施の形態では、ジェットが覆うためには、ガス供給開口61は作業距離の4分の1の2倍以下離れているべきであり、または作業距離の2分の1以下離れているべきである。
【0095】
ある実施の形態では、十分な強度を提供するために、隣接する開口61間に存在する物質の長さは少なくとも80μmであるべきであり、または少なくとも90μmであるべきである。
【0096】
隣接する開口61間に200μm以上の物質を設けることは不要であり、この場合ガスジェットを離してしまう可能性があり、したがって開口間に30mbar以下の圧力を生じさせる可能性がある。ある実施の形態では、隣接するガス供給開口61間の距離を最大で150μmとしてもよい。
【0097】
ある実施の形態では、ガス供給開口61は直径125μmおよびピッチ300μmを有し、その結果開口面積が1メートル当たり5.8x10−5となる。ピッチが180μmまで低減された場合、開口面積は9.8x10−5まで上昇する。しかしながら、ある状況では、その開口面積は大きすぎる可能性があり、開口61間に長さ55μmの物質を残すのみとなる。ある実施の形態では、開口61の直径は80μmである。これは、ピッチが180μmの場合、開口面積として2.79x10−5を導く。この開口面積は、スリット幅30μmの場合のものに近い。
【0098】
スリット型のガスナイフに対する製造容易性およびメニスカスの安定性の観点からの潜在的な改善は本発明者の予想を超えており、本明細書に記載されるひとつ以上の他の予期せぬ利点を提供しうる。例えば、直径が100μmでピッチが200μmなどのより大きな寸法の孔は、50μmなどのより小さな寸法のスリットよりも再現性よくかつ正確に製造可能である。したがって、その結果得られるガスフローはより予測が容易であり、より効果的である。加えて、離散的なガス供給開口61の開口の最大寸法(例えば、直径)はスリット型のガスナイフの最大寸法(例えば、スリット幅)よりも大きいので、複数の離散的なガス供給開口61を備えるガスナイフは作業距離のより広い範囲に対してより耐性があり、コンタミの影響をより受けにくい。
【0099】
ある実施の形態では、隣接するガス供給開口61間を結ぶ方向において大きな圧力勾配が存在する。これにより、液滴が開口61間で圧力が最も低くなるポイントに向けて移動しうる。ここに液滴が集まる可能性がある。いくつかの液滴は、ガス供給開口61間で圧力が最も低くなるポイントを通過しうる。したがって、図6の断面図および図8の平面図で示されるように、ある実施の形態では、線形アレイ状に配置された複数の離散的なガス供給開口61の半径方向外側に、少なくともひとつの抽出開口210が設けられる。
【0100】
ある実施の形態では、少なくともひとつの抽出開口210は複数の抽出開口210であってもよい。ある実施の形態では、少なくともひとつの抽出開口210はひとつのスリット開口(すなわち、連続的)であってもよい。この実施の形態は、液滴が複数のガス供給開口61のどこを通過したかにかかわらず、その液滴を収集できる点で有利である。ある実施の形態では、隣接するガス供給開口61の間のスペースのそれぞれは対応する抽出開口210を有する。ある実施の形態では、抽出開口210は、線形アレイ状(例えば、線状)に配置された複数のガス抽出開口である。
【0101】
少なくともひとつの抽出開口210が複数の抽出開口210である実施の形態では、ガスナイフはスリットまたは連続的な開口の形態をとってもよい。すなわち、図8に示される複数のガス供給開口61は実際はスリット型の(すなわち、連続的な)開口を含む。
【0102】
ガスナイフがスリットの形態をとるかまたは複数のガス供給開口61の形態をとるかによらず、複数の離散的な抽出開口210を使用することの利点は、ガスナイフを通過する液体を除去するためのフローを低減できることである。抽出開口から抽出される必要がある液体の物理的な量についての仮定並びに開口のサイズおよびジオメトリに依存する負圧とフローとの間の経験的な関係に基づいた計算を行うことが可能である。そのような計算によると、直径が80μm、ピッチが250μmおよび周の長さが200mmから350mmの範囲にある一組の離散的な抽出開口について、毎分10リットルから毎分20リットルの間のフローレートが提供されるべきであることが示される。対照的に、計算によると、抽出開口210が100μm幅のスリットの形態をとる場合、5倍程度高いフローレートが要求される。実験は、同様なフローの改善を示す。図9は、4つの異なるタイプの抽出開口210について、抽出された水流をy軸にとり(ミリリットル毎分の単位)、それに対する単位表面積当たりの有効ガスフロー(ナノリットル毎分毎平方ミリメートルの単位)の結果を示す。孔直径100μmおよびピッチ200μmの抽出開口210についての結果は菱形によって示され、開口幅50μmのスリット開口についての結果は三角形によって示され、開口幅100μmのスリット開口についての結果は円によって示され、開口幅150μmのスリット開口についての結果は四角形によって示される。全ての実験は、流体ハンドリング構造の下面と対向表面との作業距離を150μmにして行われた。実験では、水滴に抽出開口210の下方を移動させ、抽出された水流Vおよび単位表面積当たりの有効フローQe/Aが記録された。これらの結果は、所与の抽出された水流について(すなわち、抽出開口210によって抽出される必要がある液体の所与の量について)、離散的な抽出開口における単位表面積当たりの有効ガスフローは、幅100μmまたは150μmのスリット開口の場合のものの4倍程度効率がよいことを示す。離散的な抽出開口についての単位表面積当たりの有効ガスフローは、幅50μmのスリット開口の場合のものの2倍程度効率がよい。
【0103】
開口50とガス供給開口61と抽出開口210との間でガスフローのバランスをとるために、抽出開口210内への所定のフローレートを提供すべきである。図9の実験結果によると、抽出開口210内への所与のフローレートに対して、離散的な抽出開口210を使用することにより抽出開口210内へのフローレートを高めることができ、それによって液体をより効率良く抽出できることが分かる。別の利点は、(開口の総面積がより小さいために)流体ハンドリング構造と対向表面との間に印加される力を低減できること、および/または、より少ないガスフローを使用できることがある。加えて、離散的な開口はスリットの場合よりもガス供給開口61の圧力ピーク(図10および関連する後の記載参照)に影響を与えにくい。
【0104】
より低い抽出フローレートを有することの利点は、流体ハンドリング構造が開口50とガス供給開口61と抽出開口210との間でのフローのインバランスの影響を受けにくいことである。コンタミの存在に対する感度についてのロバスト性は改善されうる。加えて、他の箇所に記載されているように、スリットと比べて孔は形成に時間がかからず技術的にもより形成容易であることから、製造容易性が改善されうる。さらに、システムは、ガス供給開口61と外側の抽出開口210との間により少ない液滴を生じさせうる。複数のガス供給開口61の場合、他の箇所に記載されているように、液滴を離散的な抽出開口210に向けて導くことができる。離散的な抽出開口210の位置はガス供給開口61間のギャップの位置に対応する。さらに、抽出開口210内へのガスフローレートを低減することができるので、流体ハンドリング構造12と対向表面(例えば、基板)との間に印加される静的な力をより小さくすることができる。これは、基板の位置の制御の観点から有利である。
【0105】
ガス供給開口61の線形アレイを通過する液滴は圧力が最も低い位置を通過するであろう。その結果、液滴は隣接する開口61から実質的に等距離のところを通過するであろう。したがって、上述のように抽出開口210を隣接する開口61から実質的に等距離のところに配置することによって(すなわち、隣接する開口61間のスペースを二等分する位置に配置することによって)、ガス供給開口61の線形アレイを通過する液滴は、その液滴が移動したスペースに対応する抽出開口210の下を通過する可能性が高い。その結果、液滴は抽出開口210によって抽出される可能性が高い。液滴が抽出開口210に接触すると抽出が発生する。したがって、接線方向の圧力勾配は液滴の集合を生じさせるのであるが、この圧力勾配による影響は利点となりうる。この圧力勾配により液滴はより大きくなり、抽出開口210により接触しやすくなるからである。
【0106】
抽出開口210は、上述のガス供給開口61と同じ特性および/または寸法を有してもよい。少なくともひとつの抽出開口210は不連続的であってもよく、連続的であってもよく、2次元線形アレイ状(例えば、実質的に平行な2本の開口の線)であってもよい。
【0107】
ある実施の形態では、少なくともひとつの抽出開口210と複数のガス供給開口61との距離は少なくとも0.2mmであり、最大で1.0mmである。液滴が捕捉される可能性はより高いので、この比較的短い距離は有利である。この距離が短すぎると、ガス供給開口61からのガスフローと抽出開口210へのガスフローとの干渉が生じうる。この干渉は望ましくない。
【0108】
複数の離散的なガス供給開口61の半径方向内側および開口50の半径方向外側に生成される負圧は、スリットの形態をとるガスナイフによって生成される負圧よりも低く、かつ、半径方向および接線方向においてより一定である。図10はこの現象を説明する。図10(および図11)は、少なくともひとつの抽出開口210を有さない実施の形態(図7で説明されるもの)および少なくともひとつの抽出開口210を有する実施の形態(図8で説明されるもの)の両方に適用可能である。図10および図11は、図8に係る実施の形態を使用して決定された。
【0109】
図10は、x軸に半径方向距離を、y軸に基板レベルでの相対圧力を、プロットしたものである。半径方向距離の負の数は、ガス供給開口61またはガスナイフの半径方向内側であることを示す。50μmのスリットを伴う例示的なガスナイフは破線によって示されており、−50mbarのオーダーの最大負圧を示しており、その負圧は開口50に近づくにつれて−10mbarに向けて減少する。対照的に、開口直径100μmおよびピッチ200μmを有する例示的な複数の離散的なガス供給開口61の場合、最小圧力は−10mbarである。これは、流体ハンドリング構造12と対向表面との間の引力を減少させるので有益である。加えて、開口50と離散的なガス供給開口61との間により少ない数のより小さな液滴が存在することとなりうる。これにより、空間11中の液浸液にガスの泡が入るリスクを低減できる。加えて、離散的な開口61によると、開口50とガス供給開口61との間の大部分に沿って、半径方向内側の圧力は比較的一定である。これは、スリット型のガスナイフを使用して生成される大きな圧力勾配が乱流を発生させるところ、離散的な開口61を使用することでこれを避けることができるので、有利である。
【0110】
図10の実験は、流体ハンドリングシステム12の下面と対向表面(例えば、基板)との距離が150μmであり、開口50からのフローレートが毎分30リットルであり、ガスナイフまたはガス供給開口61を通じたフローレートが毎分45リットルであり、抽出開口からのフローレートが毎分30リットルである状況において実行された。
【0111】
図11は、複数の離散的なガス供給開口61の線形アレイの長さ方向に沿った圧力の相対変化を示す。図10に関連して上述されたものと同じ動作条件が存在する。図示されるように、ガス供給開口61のそれぞれの下で最大圧力が実現され、隣接する開口61の間で最小圧力に到達する。図示されるように、隣接するガス供給開口61の間において圧力の低下が存在する。有利には、圧力の低下はゼロへの低下よりは小さいので、その位置で液滴は力を感じる。これは、したがってメニスカス固定特徴部の全周に亘って液滴が通過することへの抵抗が存在する(ガス供給開口61の線形アレイの全周に亘ってガス供給開口61の下に正圧が存在するからである)ので有利である。
【0112】
図11に示されるような圧力プロファイルは一連のピークおよび谷を有し、そのような一連のピークおよび谷は害のないサイズの小さな液滴を集めるのに十分である点で、そのような圧力プロファイルはスリット型のガスナイフの圧力プロファイルよりも有利である。これは、ガスが圧力プロファイルをより容易に通過できるので、メニスカス320の半径方向外側の圧力が上下しうることを意味する。その結果、メニスカス320を安定化させることができ、これはメニスカス320からの液体のロスを低減できることを意味する。加えて、基板Wのエッジと基板テーブルWTとの間のギャップが複数の離散的な開口61の下を通過するとき、そのギャップ内の液浸液は押し出されにくくなり、したがって泡混入のリスクが低減される。
【0113】
図10および図11の例による離散的なガス供給開口61においては、基板Wのエッジが流体ハンドリング構造12の下を横切るとき、非常に細かい液滴(直径50μm以下)のみが形成されうる。これは、スリット型のガスナイフを使用する場合の一桁程度大きな液滴と対照的である。したがって、大きな液滴がメニスカス320に衝突することによる泡混入のリスクはかなり低減される。
【0114】
図6の断面図および図12の平面図において示される通り、ある実施の形態では、隣接するガス供給開口61の間のスペースと対応する抽出開口210との間に、ひとつ以上の溝220が延在してもよい(ひとつのみが図示されている)。溝220は、流体ハンドリング構造12の下面に形成される。隣接するガス供給開口61の間のスペースに存在する液体を対応する抽出開口210へ導くのに溝220は有効である。溝220は、使用中液浸液によって占有される空間11を通過する方向に延びる。
【0115】
ある実施の形態では、溝は、空間11を通過し、かつ、対応する抽出開口210を通過する方向に延びる。ある実施の形態では、その方向は実質的に空間11の中心を通過する。流体ハンドリング構造12と対向表面との相対運動の方向が変わる期間中、溝は液体が抽出開口210に向けて抽出されることを促進する。すなわち、液滴が隣接するガス供給開口の間のスペースの下を通過した後、流体ハンドリング構造12と対向表面との相対的な進行方向が変わった場合、液滴はもはや、流体ハンドリング構造12に対して抽出開口210に向かう向きに進行しないであろう。溝210はそのような液滴に力を与えるのに役に立ち、したがって液滴を抽出開口210に向けて導く。溝220のさらなる詳細は、2010年7月20日に出願された米国特許出願第61/366116号において与えられている。
【0116】
ある実施の形態では、各溝220は少なくとも40μmの幅を有し、望ましくは少なくとも50μmの幅を有する。ある実施の形態では、溝220は最大で150μmの幅を有し、望ましくは最大で100μmの幅を有する。このサイズ範囲の溝は、液滴を導きおよび/または液滴に毛管力を提供することによって、液滴を対応する抽出開口210に向けて引くのに特に有効でありうる。ある実施の形態では、溝220は少なくとも50μmの深さを有し、望ましくは少なくとも100μmの深さを有する。ある実施の形態では、溝は最大で500μmの深さを有し、望ましくは最大で300μmの深さを有する。
【0117】
ある実施の形態では、各溝は断面形状またはジオメトリを有する。溝断面ジオメトリは矩形または三角形(またはV形状)であってもよい。三角形の断面形状を有する溝は、矩形の断面形状を有する溝と比べて液滴の毛細管的広がりが強化されるので好ましい。 三角形の断面形状は、溝の両辺の間に形成される特徴角を有する。特徴角は40度から45度の範囲にあってもよい。ある実施の形態では、溝が液体を誘導する際の有効性を確実にするために、流体ハンドリング構造の下面(すなわち、溝が形成される面)を形成する材料の接触角は、溝の特徴角よりも小さい。材料の接触角は40度以下であることが望ましい。
【0118】
溝220は、スリットの形態または複数の離散的な開口の形態をとる抽出開口210を伴う、単一スリット開口または複数のガス供給開口61のガスナイフと共に使用されうる。
【0119】
フローレートを制御するコントローラ500が設けられ、フローレートを調整することにより、図10および図11に示されるように周辺方向(例えば、周方向)および接線方向の両方における圧力勾配を変えることができる。フローレートおよび流体ハンドリング構造12の下面のフィーチャの寸法を調整することにより、所望の圧力プロファイルを達成することができる。この圧力プロファイルは、図10に示されるようにガス供給開口61と開口50との間のスペースに最低の負圧を含み、かつ、隣接するガス供給開口61間の最小圧力(図11に関連して上述されたもの)が許容可能なレベルにあることを確かなものとするのに役に立つ。
【0120】
非常に小さな気泡は、空間11の露光領域に到達する前に液浸液に溶解しうる。任意の他の実施の形態と組み合わせ可能である実施の形態では、溶解の速さはトラップされたガスのタイプおよび液浸液の性質に依存するという事実が使用される。
【0121】
二酸化炭素(CO)の泡は典型的には空気の泡よりも速く溶解する。COの泡は窒素の55倍の溶解度および窒素の0.86倍の拡散率を有しており、典型的には、同じサイズの窒素の泡が溶解するのに要する時間の37分の1の短い時間で溶解する。
【0122】
本明細書に参照によりその全体が組み込まれる米国特許出願公開第2011−0134401号は、摂氏20度および全圧1atmにおいて5x10−3mol/kg以上の液浸液への溶解度を有するガスを空間11に隣接する領域に供給することを開示する。それはまた、摂氏20度および全圧1atmにおいて3x10−5cm−1以上の液浸液への拡散率を有するガスを空間11に隣接する領域に供給することを開示する。それはまた、摂氏20度および全圧1atmにおいて空気よりも大きな液浸液への拡散率と溶解度との積を有するガスを空間11に隣接する領域に供給することを開示する。
【0123】
ガスの泡が高い拡散率、高い溶解度、または液浸液への溶解度と液浸液における拡散率との大きな積を有するガスの泡である場合、その泡は液浸液により速く溶解するであろう。したがって、本発明の実施の形態を使用すると結像欠陥の数を低減でき、それによってスループットを高め(例えば基板Wの液体ハンドリング構造12に対する速さを大きくす)ることができ、また欠陥性を低減できる。
【0124】
したがって、本発明の実施の形態は、空間11に隣接する領域に(例えば、ボリューム(volume)に、またはエリア(area)に向けて)ガスを供給するよう構成されたガス供給デバイスを提供する。例えば、対向表面と液体ハンドリング構造12との間に張るメニスカス320に隣接する領域に存在するようにガスが提供される。
【0125】
例示的なガスは二酸化炭素である。二酸化炭素は、容易に入手可能であり、液浸システムにおいて他の用途で使用されうるので望ましい。二酸化炭素は、摂氏20度および全圧1atmにおいて水への溶解度として1.69x10−3kg/kgまたは37x10−3mol/kgを有する。液浸液に容易に溶解する任意の反応しないガスは好適である。
【0126】
本明細書で説明される本発明の実施の形態は、液浸液のメニスカス320、400の周りにCO雰囲気を形成してもよい。その結果、液浸液へガスがどのように混入されても液浸液のなかに溶解されうる。
【0127】
ガス状のCOを使用することで、メニスカスが液滴に衝突することに伴う課題が軽減されるか、軽減されないまでも低減されうる。典型的には、直径300マイクロメートルの液滴は直径30マイクロメートル(つまり、10分の1のサイズ)の泡を生成しうる。そのような二酸化炭素の泡は、通常露光領域に到達する前に液浸液へ溶解しうる。(そのようなサイズの液滴はひとつ以上の他の課題を生じうることを注意しておく)。したがって、液滴によって生じる課題はより重要でなくなる。液浸システムは空間から脱出した液浸液との相互作用についてより寛容となるであろう。
【0128】
二酸化炭素はガス供給開口61を通じて提供されてもよい。ある実施の形態では、ガスはガス供給開口の第2アレイを通じて供給され、またはガス供給開口およびガス開口の第2アレイの両方を通じて供給される。
【0129】
ある実施の形態では、開口50からの二酸化炭素のフローレートに抽出開口210からのガスのフローレートを足したものは、ガス供給開口61からのガスのフローレート以上である。ある実施の形態では、合計のガス抽出レートはガス供給レートの1.2倍以上であり、望ましくは1.4倍以上である。例えば、開口50へのガスフローレートは毎分60リットルであり、抽出開口210へのガスフローレートは毎分60リットルであり、ガス供給開口61からのガスフローレートは毎分90リットルであってもよい。この構成は、ガス供給開口61から供給されるガスが二酸化炭素である場合に有利である(後述)。これは、二酸化炭素が流体ハンドリング構造12の外部の干渉計と干渉しうるからである。フローレートを上述のように調整することで、流体ハンドリング構造12からの二酸化炭素のロスは低減されるか防止されうる。
【0130】
ガスナイフにおいてCOを使用する場合、ガスフローの不均一さに起因するフローの変動(スリット型のガスナイフを使用する場合に生じるようなもの)により、流体ハンドリング構造12の外部の大気からCOでないガス(例えば、空気)がフローに混入し、開口50に到達する可能性がある。これは望ましくなく、したがって、スリットと比べて複数のガス供給開口61を使用する方が有利である。
【0131】
ガス供給開口61から二酸化炭素が供給される場合、抽出開口210とガス供給開口61との距離は、少なくとも1mmまたは2mmであってもよく、1.0mmから4.0mmの範囲内であってもよく、望ましくは2mmから3mmの範囲内であってもよい。デザインルールとしては、作業距離を4倍して0.2mmから0.5mmを足し合わせることである。これにより、流体ハンドリング構造12の外部からの空気(すなわち、抽出開口210の半径方向外側の空気)がメニスカス320に隣接する二酸化炭素に混入することを効果的に防ぐことができる。
【0132】
ある実施の形態では、対向表面から液体を例えば液滴の形態で除去する際の抽出開口210の有効性は、ガス供給開口61からの距離がしきい値距離から増大するほど減少する。所望の動作条件における液滴除去のためのしきい値距離は、抽出開口210とガス供給開口61との所望の距離よりも小さくてもよい。ガス供給開口61を出るガスとして二酸化炭素を使用する場合、流体閉じ込め構造12の下面に設けられた溝220を使用すると有利でありうる。溝220は、ガス供給開口61と抽出開口210との間の液滴除去のためのしきい値距離を伸ばす役に立つからである。したがって、溝220は外側の抽出器を通じた効果的な二酸化炭素ガス除去および液滴除去を達成するのをアシストする。
【0133】
上述の実施の形態は、メニスカス固定特徴部を囲むガス供給開口61の線形アレイがひとつのみ存在する場合に関連して説明された。しかしながら、本発明の実施の形態は、線形アレイ状の第2の(およびそれ以上の)複数のガス供給開口61が第1の複数のガス供給開口61を少なくとも部分的に囲むよう配置される場合にも同様に適用可能である。その構成は、2つのスリット型のガスナイフの一方または両方が上述の複数の離散的なガス供給開口によって置き換えられる点を除いて、米国特許出願公開第2011−0090472号に記載されるものと同様である。流体ハンドリングシステム12と対向表面との速い相対運動が生じる場合にこれは特に有利でありうる。そのようなより大きな相対速度は、現行の産業的標準である300mmよりも大きな直径を有する基板、例えば直径450mmの基板を露光するリソグラフィ装置において使用されうる。
【0134】
理解されるように、上述の特徴のいずれかは他のいずれかとともに使用可能であり、明確に記述された組合せのみが本願の範囲に含まれるわけではない。例えば、本発明の実施の形態は、図2から図4の実施の形態にも適用されうる。
【0135】
本明細書ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用を例として説明しているが、リソグラフィ装置は他の用途にも適用することが可能であるものと理解されたい。他の用途としては、集積光学システム、磁区メモリ用ガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどがある。これらの代替的な適用に際して、本明細書において「ウエハ」あるいは「ダイ」という用語が使用される場合はいつでも、それぞれ「基板」あるいは「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義であるとみなされうると、当業者であれば理解するであろう。本明細書で言及される基板は露光前または露光後において例えばトラック(典型的にはレジスト層を基板に塗布し、露光後のレジストを現像するツール)、メトロロジツール、及び/またはインスペクションツールにおいて処理されてもよい。適用可能であれば、本明細書の開示はこれらのまたは他の基板処理装置にも適用され得る。また、基板は例えば多層ICを製造するために複数回処理されてもよく、その場合には本明細書における基板という用語は処理されている多数の層を既に含む基板をも意味してもよい。
【0136】
本明細書において「放射」及び「ビーム」という用語は、紫外(UV)放射(例えば約365nm、248nm、193nm、157nm、または126nmの波長を有する)を含むあらゆる種類の電磁放射を示す。「レンズ」という用語は文脈が許す限り、屈折光学素子及び反射光学素子を含むあらゆる光学素子またはそれらの組合せを示してもよい。
【0137】
本発明の具体的な実施の形態が上述のように説明されたが、本発明は上述の形式以外の形式でも実施可能であると理解されたい。例えば、本発明の実施の形態は、上述の方法を記述する機械で読み取り可能な命令の1つまたは複数のシーケンスを含むコンピュータプログラムの形式をとってもよいし、そのコンピュータプログラムを記録したデータ記録媒体(例えば半導体メモリ、磁気ディスク、または光ディスク)であってもよい。さらに、機械で読み取り可能な命令は2以上のコンピュータプログラムにより実現されてもよい。それら2以上のコンピュータプログラムは1つまたは複数の異なるメモリ及び/またはデータ記録媒体に記録されていてもよい。
【0138】
本明細書に記載の任意のコントローラは、リソグラフィ装置の少なくとも1つの構成要素内部に設けられた1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって1つまたは複数のコンピュータプログラムが読み取られたときに、おのおのがまたは組み合わせで動作可能であってもよい。コントローラはそれぞれまたは組み合わせで、信号を受信し処理し送信するのに適切な任意の構成を有してもよい。1つまたは複数のプロセッサは少なくとも1つのコントローラと通信するよう構成される。例えば、複数のコントローラの各々が上述の方法のための機械読み取り可能命令を含むコンピュータプログラムを実行するための1つまたは複数のプロセッサを含んでもよい。コントローラはそのようなコンピュータプログラムを記録するデータ記録媒体及び/またはそのような媒体を受けるハードウエアを含んでもよい。したがって、コントローラは1つまたは複数のコンピュータプログラムの機械読み取り可能命令に従って動作してもよい。
【0139】
本発明の1つまたは複数の実施の形態はいかなる液浸リソグラフィ装置に適用されてもよい。上述の形式のものを含むがこれらに限られない。液浸液が浴槽形式で提供されてもよいし、基板の局所領域のみに提供されてもよいし、非閉じ込め型であってもよい。非閉じ込め型においては、液浸液が基板及び/または基板テーブルの表面から流れ出ることで、基板テーブル及び/または基板の覆われていない実質的に全ての表面が濡れ状態であってもよい。そのような非閉じ込め液浸システムにおいては、液体供給システムは液浸液を閉じ込めなくてもよいし、液浸液の一部が閉じ込められるが完全には閉じ込めないようにしてもよい。
【0140】
本明細書で述べた液体供給システムは広く解釈されるべきである。ある実施の形態においては、投影システムと基板及び/または基板テーブルとの間の空間に液体を提供する機構または構造体の組合せであってもよい。1つまたは複数の構造体、及び1つまたは複数の流体開口の組合せを含んでもよい。流体開口は、1つまたは複数の液体開口、1つまたは複数の気体開口、1つまたは複数の二相流のための開口を含む。開口のそれぞれは、液浸空間への入口(または流体ハンドリング構造からの出口)または液浸空間からの出口(または流体ハンドリング構造への入口)であってもよい。ある実施の形態においては、液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの一部であってもよい。あるいは液浸空間の表面は基板及び/または基板テーブルの表面を完全に含んでもよいし、液浸空間が基板及び/または基板テーブルを包含してもよい。液体供給システムは、液体の位置、量、性質、形状、フローレート、またはその他の性状を制御するための1つまたは複数の要素をさらに含んでもよいが、それは必須ではない。
【0141】
ある実施の形態では、リソグラフィ装置はマルチステージの装置であり、投影システムの露光側に設けられた2以上のテーブルを備え、各テーブルはひとつ以上のオブジェクトを含むおよび/または保持する。ある実施の形態では、ひとつ以上のテーブルは放射感応性基板を保持してもよい。ある実施の形態では、ひとつ以上のテーブルは投影システムからの放射を測定するセンサを保持してもよい。ある実施の形態では、マルチステージ装置は、放射感応性基板を保持するよう構成された第1テーブル(すなわち、基板テーブル)と、放射感応性基板を保持するよう構成されていない第2テーブル(以下、一般におよび限定を目的とせずに測定および/またはクリーニングテーブルと称す)と、を備える。第2テーブルは、放射感応性基板ではない別のひとつ以上のオブジェクトを含んでもよいおよび/または保持してもよい。そのようなひとつ以上のオブジェクトは、投影システムからの放射を測定するセンサ、ひとつ以上のアライメントマークおよび/または(例えば液体閉じ込め構造を洗浄するための)クリーニングデバイスのなかから選択されたひとつ以上のものを含んでもよい。
【0142】
ある実施の形態では、リソグラフィ装置は装置のコンポーネントの位置や速度などを測定するエンコーダシステムを含んでもよい。ある実施の形態では、コンポーネントは基板テーブルを含む。ある実施の形態では、コンポーネントは測定および/またはクリーニングテーブルを含む。エンコーダシステムは、本明細書でテーブルに関して説明された干渉計システムに追加されるものまたはそれを代替するものであってもよい。エンコーダシステムは、センサと、スケールまたはグリッドを伴う(例えば対になった)トランスデューサまたはリードヘッドと、を備える。ある実施の形態では、移動可能なコンポーネント(例えば、基板テーブルおよび/または測定および/またはクリーニングテーブル)はひとつ以上のスケールまたはグリッドを有し、そのコンポーネントはリソグラフィ装置のフレームに対して移動し、そのフレームはセンサ、トランスデューサまたはリードヘッドのうちのひとつ以上を有する。センサ、トランスデューサまたはリードヘッドのうちのひとつ以上はスケールまたはグリッドと協働してコンポーネントの位置、速度などを決定する。ある実施の形態では、コンポーネントはリソグラフィ装置のフレームに対して移動し、そのフレームはひとつ以上のスケールまたはグリッドを有し、移動可能なコンポーネント(例えば、基板テーブルおよび/または測定および/またはクリーニングテーブル)はセンサ、トランスデューサまたはリードヘッドのうちのひとつ以上を有し、そのひとつ以上はスケールまたはグリッドと協働してコンポーネントの位置や速度などを決定する。
【0143】
ある実施の形態では、リソグラフィ装置は、メッシュまたは同様の多孔質材料で覆われた入口を有する液体除去デバイスを有する液体閉じ込め構造を備える。メッシュまたは同様の多孔質材料は、投影システムの最終要素と移動可能なテーブル(例えば、基板テーブル)との間の空間内の液浸液と接触する孔の2次元アレイを提供する。ある実施の形態では、メッシュまたは同様の多孔質材料はハニカムまたは他の多角形メッシュを含む。ある実施の形態では、メッシュまたは同様の多孔質材料は金属メッシュを含む。ある実施の形態では、メッシュまたは同様の多孔質材料は、リソグラフィ装置の投影システムのイメージフィールドの全周に亘って延在する。ある実施の形態では、メッシュまたは同様の多孔質材料は、液体閉じ込め構造の底面に設けられ、テーブルに向いている表面を有する。ある実施の形態では、メッシュまたは同様の多孔質材料は、その底面の少なくとも一部がテーブルの上面と総じて平行である。
【0144】
上述の記載は例示を目的としており、それに限定されるものではない。したがって下記の特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された発明に変更を加えることができるということは、関連技術の当業者には明らかなことであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、
前記空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、
線形アレイ状の複数のガス供給開口と、
前記線形アレイ状の複数のガス供給開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、
前記複数のガス供給開口は前記メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、前記複数のガス供給開口は前記メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられる、流体ハンドリング構造。
【請求項2】
前記少なくともひとつのガスリカバリ開口は、線形アレイ状の複数のガスリカバリ開口を含む、請求項1に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項3】
リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、
前記空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、
前記メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、かつ、前記メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられたガスナイフの開口と、
前記ガスナイフの開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、
前記少なくともひとつのガスリカバリ開口は、同様のまたは同一のサイズの複数のガスリカバリ開口を含む、流体ハンドリング構造。
【請求項4】
リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、
前記空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、
前記メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、かつ、前記メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられたガスナイフの開口と、
前記ガスナイフの開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、
前記少なくともひとつのガスリカバリ開口は、線に沿った周期的パターンで配置された複数のガスリカバリ開口を含む、流体ハンドリング構造。
【請求項5】
リソグラフィ装置のための流体ハンドリング構造であって、本流体ハンドリング構造は、液浸流体を入れるよう構成された空間の、本流体ハンドリング構造の外部の領域に対する境界において、
前記空間からの半径方向外向きの液浸流体の通過に抵抗するメニスカス固定特徴部と、
前記メニスカス固定特徴部を少なくとも部分的に囲み、かつ、前記メニスカス固定特徴部の半径方向外側に設けられたガスナイフの開口と、
前記ガスナイフの開口の半径方向外側に設けられた少なくともひとつのガスリカバリ開口と、を備え、
前記少なくともひとつのガスリカバリ開口は、等間隔で配置された複数のガスリカバリ開口を含む、流体ハンドリング構造。
【請求項6】
前記ガスナイフの開口は、線形アレイ状の複数のガス供給開口を含む、請求項3から5のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項7】
前記線形アレイ状の複数のガス供給開口のうちの隣接するガス供給開口間の空間のそれぞれは、前記線形アレイ状の複数のガスリカバリ開口のうちの対応するガスリカバリ開口を有する、請求項2または6に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項8】
前記対応するガスリカバリ開口は、前記対応するガスリカバリ開口を通って平面視で液浸流体を入れるよう構成された前記空間の中心に向かう線が、隣接するガス供給開口間の対応する空間を実質的に二等分するよう配置される、請求項7に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項9】
前記ガス供給開口または前記ガスナイフの開口と前記ガスリカバリ開口との離間距離は少なくとも0.2mmおよび/または最大で1.0mmである、請求項1から8のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項10】
前記ガス供給開口または前記ガスナイフの開口から前記ガスリカバリ開口に向かう向きに延びる、本流体ハンドリング構造の下面に設けられた溝をさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項11】
前記溝は少なくとも40μmまたは少なくとも50μmの幅を有し、および/または、前記溝は最大で150μmまたは最大で100μmの幅を有し、および/または、前記溝は少なくとも50μmの深さを有し、および/または、前記溝は最大で500μmの深さを有する、請求項10に記載の流体ハンドリング構造。
【請求項12】
前記メニスカス固定特徴部は、線形アレイ状の複数の開口または単相抽出器を含む、請求項1から11のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項13】
前記ガス供給開口または前記ガスナイフの開口は、平面視でコーナを有する形状を有する、請求項1から12のいずれかに記載の流体ハンドリング構造。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の流体ハンドリング構造を備える液浸リソグラフィ装置。
【請求項15】
投影システムと基板との間の空間に閉じ込められた液浸液を通じてパターン形成された放射ビームを投影することと、
線形アレイ状の複数のガス供給開口を通じて、前記液浸液のメニスカスに隣接する位置に、ガスを提供することと、
前記線形アレイ状の複数のガス供給開口のうちの隣接するガス供給開口を通過した液体を、前記線形アレイ状の複数のガス供給開口の半径方向外側に設けられたガスリカバリ開口を通じて、回収することと、を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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