説明

流体中の微粒子のマルチパラメータ測定のための装置および方法

本発明は、流体中に存在する少なくとも2つの粒子集団の分類および屈折度の流動測定を行う方法を提供する。本方法は、検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された中心波長で減衰条件下で使用される、短いコヒーレンス時間、コヒーレンス長Lc<100μmを有する光源を使用する。本方法は、この光源と一緒に、選択された中心波長で検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された開口角の収束照射ビームを形成する装置を使用する。その後、粒子が通過する際にインピーダンス変化(RES)を測定するために、粒子を有する流体が測定オリフィスを貫流するようにする。粒子を有する流体は、ビームが照射される測定窓を貫流し、減衰(EXT)は、検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された開口角の収束受信ビームを有する装置または検出器を利用して、粒子が測定窓を通過する際にビーム軸上で測定される。本方法は、各イベントに対する相対屈折率の評価およびRES、EXT、およびIDXから選択される少なくとも1つのパラメータを用いたイベントのすべての分類を可能にするイベントを抽出するために、RESおよびEXTのデータを併合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子とくに生体細胞を特徴付けるべく流動測定を行うための装置および方法の一般分野に関する。本発明は、より特定的には、生体微粒子の屈折度を生物医学用途に有用な他のパラメータと一緒に測定することに関する。
【背景技術】
【0002】
これとの関連では、血液分析装置などのほとんどの自動細胞分析装置は、検査医による特定の障害の原因の特定を可能にする細胞特性を測定するように設計される。たとえば、特定の貧血、特定の癌の診断、または特定の医薬治療の追跡はすべて、各細胞の物理的特性を観測することにより行われる。
【0003】
本発明の目的は、生物学的サンプル中とくに血液中に含有される各粒子集団のより良好な識別ひいてはより良好な計数を可能にする装置および方法を開発することである。本発明はまた、各赤血球集団の細胞内ヘモグロビン含有量の非常に正確な測定を可能にする。そしてさらには、本発明に係る装置および方法は、サンプル中の白血球集団のより良好な分析を可能にする。
【0004】
赤血球細胞系に関して、最も一般的な分析装置により提供される慣例的パラメータは、次のとおり、すなわち、単位体積あたりの赤血球数(#RBC)、平均細胞容積(従来的には立方マイクロメートル(μm)単位で与えられるMCV)、赤血球分布指数(または幅)(%単位のRDW)、ヘマトクリットレベル(%単位のHT)、一次サンプル中の平均ヘモグロビン濃度(HB)、平均血球ヘモグロビン濃度(グラム毎デシリットル(g/dL)単位のMCHC)、および平均血球ヘモグロビン量(ピコグラム(pg)単位で表されるMCH)である。
【0005】
ほとんどの血液分析装置では、次のパラメータ、すなわち、#RBC、HB、およびヘマトクリットレベルが測定され、他のパラメータはすべて、計算により得られる。
それにもかかわらず、リボ核酸(RNA)の残基を含有しかつ「網状赤血球」として知られるほとんどの未成熟赤血球を特定のタイプの分析装置により測定しうることに気付くはずである。その場合、細胞質内RNAの存在を明らかにするために染色剤として色素マーカまたは蛍光マーカが使用される。RNAマーキングに特異的な蛍光信号または回折信号を示す赤血球の画分は、単位体積あたりの網状赤血球数(#RET)を決定するのに役立つ。
【0006】
これらのパラメータに加えて、特定の貧血の診断またはその治療の追跡には、各赤血球の血球ヘモグロビン濃度(CHC)および/または各網状赤血球の血球ヘモグロビン濃度(CHCr:corpuscular hemoglobin concentration of reticulocytes)についての知識が必要とされる。全赤血球集団にわたり計算される平均値であるパラメータMCHCおよびMCHとは異なり、CHCおよびCHCrは、各血液細胞中の血球ヘモグロビン濃度の値であり、それらは、赤血球および未成熟部(網状赤血球)の集団にわたりヘモグロビンの分布を示すヒストグラムを作成するために使用される。たとえば、同一の平均血球ヘモグロビン濃度を有する2名の患者は、赤血球および網状赤血球に関して非常に異なる統計分布を示すことがある。それは、細胞学でよく知られている。したがって、顕微鏡を用いて塗抹を調べる場合、赤血球の色は、そのヘモグロビン含有量に強く相関付けられる。すなわち、ヘモグロビンの濃度が高いほど、光の減衰は大きい。その観測は、光学濃度が溶質の濃度に比例することを示すBeer−Lambertの法則の結果である。さまざまな細胞内のヘモグロビンの統
計分布に関する知見は、患者の健康状態に関する情報を提供する。正常からの逸脱は、検査医により解釈される症状である。たとえば、低ヘモグロビン含有量を有する赤血球は、「低色素性」であると言われ、一方、高ヘモグロビン含有量を有する赤血球は、「高色素性」であると言われる。ヘモグロビン分布が赤血球ごとに大きく異なる場合、それは多染症の症状である。含有量が異常である細胞は、とくにサラセミアまたは鎌状赤血球症を伴う他の生理学的症状を引き起こす異常なレオロジー性を呈することが多い。健常被験者および患者でのこれらのパラメータの血液学的解釈は、非特許文献1に明記されている。
【0007】
したがって、網状赤血球のヘモグロビン含有量は、現在、主要な貧血の診断または実際には治療に対する患者の応答の追跡に非常に有用なパラメータとして認識されている。さらにまた、すべての赤血球にわたるヘモグロビン分布の臨床的解釈に関しても、その情報を得るために実施される方法に関しても、査読雑誌および多数の特許出願で多数の出版物がここ何年かにわたり出版されてきた。
【0008】
たとえば、鉄欠乏性貧血は、種々の人々、特定的には鉄負荷平衡が定期的に行われる透析療法を受けている人々に影響を及ぼす。出血もしくは失血を患う人々、血液透析による治療を受けている人々、または実際には栄養失調を患う人々は、鉄欠乏性貧血に罹患しやすい。さらにまた、エリトロポイエチン(EPO)で治療された被験者は、ヘモグロビン合成機序が鉄固定代謝のデレギュレーションにより制限されるので、自身の組織の鉄貯蔵量が十分であるかさらには過剰である場合でさえも、鉄欠乏性貧血症候群を発症することがある。フェリチンおよびトランスフェリン飽和係数アッセイは、それらの生物学的障害の診断に使用されることが多いが、それらの特異的タンパク質の漿液中濃度は、炎症性症候群または感染症の場合、他の因子により影響を受けることが確認されている。
【0009】
非特許文献2には、経口摂取された補充の鉄に対する応答は、網状赤血球の絶対カウント数および血球ヘモグロビン濃度を測定することにより追跡可能であると教示されている。したがって、その治療に陽性応答する人々は、網状赤血球数の増大および初日からのヘモグロビン負荷の増大の恩恵を同時に受ける。しかしながら、成熟赤血球指数は、治療後非常に長期間経過するまで影響を受けず、通常、数週間後にはじめて影響を受ける。したがって、#RETおよびCHCrヒストグラムの測定は、治療が効果的であるかを事前に決定するうえで非常に重要である。
【0010】
したがって、ほとんどの血液分析装置から得られる他のより従来型のパラメータに関連付けて赤血球系にわたるまたは実際にはその一部にわたるヘモグロビン濃度の統計分布を知ることが最も有利である。
【0011】
血小板に関して、血栓症の原因である凝集現象を示す可能性があることから医師が血小板活性化を計数および観測できることが最も有利である。活性化血小板と非活性化血小板とのこの識別は、血液分析装置で観測することが比較的困難である。
【0012】
大サイズの血小板(巨大血小板)と小赤血球(これは非常に小さいサイズの赤血球である)とを識別する能力もまた、特定の診断ミスをしないようにするために重要である。残念ながら、レーザに基づく以外の血液分析装置では、現在のところ、巨大血小板と小赤血球とのこうした混同の可能性を回避するための単純かつ効果的な解決策は存在しない。
【0013】
白血球細胞系に関して、検査医が質の高い臨床診断を行えるようにするために種々のタイプの細胞を正確に識別することがかなりの利点であることは明らかである。たとえば、非特許文献3には、リンパ球の屈折率を測定することによりワクチン接種後のその活性化レベルを決定しうることが示されている。
【0014】
赤血球系のヘモグロビン含有量を測定するために、フローサイトメトリに基づく種々の方法が、光学測定、主に、細胞の反射率または回折の測定に基づいて提案されてきた。そのような測定は、場合により、測定マイクロオリフィスを介して連続方式またはパルス方式で動作する電気的測定と組み合わされる。
【0015】
血球ヘモグロビンを測定する第1の方法は、D.H.Tyckoに帰属する。特許文献1では、著者は、計算により得られる非常に特定的な角度に対応する2つのパラメータにより規定される2つの空間領域で測定される光回折に基づく光学的方法を記載している。疑似球状の形状を付与するために赤血球が事前に化学処理されることに気付くはずである。その近似の範囲内では、赤血球を半径Rおよび屈折率IDXの均一な球であるとみなすことが可能である。その単純化赤血球モデルにMie理論を適用することにより、各三次元空間領域で拡散された強度を決定することが可能であり、等濃度曲線および等容曲線が交差することのないように一群の一義的曲線を規定する最適構成を決定することが可能である。一群の曲線により、検出系の2つのサブ瞳孔内に回折される光の2つの測定に基づく球の容積およびその屈折率の決定に依拠して逆問題を解くことが可能である。
【0016】
同著者は、特許文献2の第4欄の第39〜57行でその光学的方法の複雑さを認めている。回折光の2つの測定を行う代わりに、D.H.Tyckoは、マイクロオリフィスを通過する生体細胞から生じるインピーダンス変化の測定に依拠する従来のWallace
Coulter技術により細胞の容積を測定することを提案している。その電気的測定は、光学系の単一瞳孔内に回折される光の測定に関連付けられる。もう一度、Tyckoは、光学系の瞳孔内に回折される光の測定のみに基づいて赤血球のヘモグロビン含有量の単一解を与える一群の曲線を規定するのに役立つ2つの角度(θ;θ)に基づいて環状瞳孔を決定している。
【0017】
従来のラテックスビーズを用いたキャリブレーションを行うことができないので、Tyckoにより提案された方法のキャリブレーションを行うことは非常に困難であることに気付いたことに端を発して、ロシアのNovossibirskチームは、微粒子拡散指標の測定を可能にする独創的な概念を構築した。そのシステムは、「走査型フローサイトメータ(SFC)」と呼ばれる。光源と微粒子と検出器との角度は、流体ストリーム中の微粒子の運動の関数である。したがって、微粒子の運動は、比較的大きい角度範囲にわたり回折光指標の記録を可能にする角度セクターの走査を可能にする。そのロシアのチームの種々のメンバーは、赤血球の容積およびヘモグロビン含有量の測定にSFCを適用してきた。
【0018】
非特許文献4では、著者らは、赤血球により生成される回折パターンが一連の極大および極小を呈することを明らかにしている。それらの極値の位置および振幅特性は、事前のキャリブレーション作業を行うことなく赤血球の容積およびヘモグロビン濃度の推定を可能にする計算アルゴリズムを導出すべく組み合わせられる。
【0019】
特許文献3および特許文献4では、小角で回折を測定するためにレーザを使用することが必要である。測定は、Mie理論に基づくものであり、したがって、使用される原理は、Tyckoにより記載された装置で使用されるものに類似している。したがって、それらの文書では、回折測定を光信号であっても電気信号(electrical single)であってもよい他の信号の取得と組み合わせることによりは血小板のみの屈折度を計算することが可能である。記載の電気光学装置により他の細胞を識別することはできない。
【0020】
Beckman Coulter Inc.名義の特許文献5では、D.L.Kramerは、前方光回折の測定に基づく方法が細胞屈折度(それ自体は細胞質内屈折率に依存
する)に依拠するので誤差の問題を抱えていることを認めている。彼は、ヘモグロビン以外の溶質とくに塩の存在の関数としてその屈折率がかなり変化しうると述べている。彼は、他のシステムの不正確さを回避するために反射率測定に基づく装置を推奨している。彼の装置の操作は、赤血球ヘモグロビンの測定に適用される。反射率測定は、Coulter原理を用いた貫流する連続流を有する測定マイクロチャネルのインピーダンス変化に基づく技術により得られる細胞容積測定と組み合わされる。その装置の有効性は実証されていないが、著者は、反射率パラメータがヘモグロビン含有量に相関付けられると述べている。
【0021】
同一の会社により出願された特許文献6には、非光学的方法が提案されている。その特許では、血球ヘモグロビン含有量は、2つの電気的測定を一方は連続的に他方はパルス条件下で行うことにより決定される。連続条件下では、細胞の外容積が測定され、これに対して、パルス条件下では、電界が導電性を呈する細胞質内容物と相互作用し、これはヘモグロビンの濃度により制御されるように思われる。
【0022】
以上に挙げた発明または出版物が赤血球のヘモグロビン含有量の測定のみに関するものであり、網状赤血球についてはなんら言及されていないことにも気付くはずである。
フローサイトメトリでは、たとえば本出願人により出願された特許文献7に記載されているように、リボ核酸を特異的にマーキングした後はじめて網状赤血球を検出することが可能になる。種々の網状赤血球検出方法を比較する研究非特許文献5では、とくに蛍光法が最高性能を提供することが見いだされている。より特定的には、チアゾールオレンジ化合物は、核酸(DNAおよびRNA)の最良マーカの1つであることが判明している。その分子の優位性は、入射光を強く吸収しかつ核酸にハイブリダイズした後の蛍光収率が非常に高いという事実に由来する。その方法は、網状赤血球を自動計数するためのすべてHoriba Medical分析装置で提案されている非特許文献6。
【0023】
例として、Miles Inc.名義の特許文献8には、オキサジン750またはニューメチレンブルーを用いた核酸の染色方法が記載されている。オキサジン750は、核酸を沈殿させることにより、光減衰測定によるその検出を可能にする。著者らは、かれらの発明が従来の以上に記載のTycko装置への光減衰測定の適合化に依拠することを認めている。吸収測定は、未成熟細胞とくに網状赤血球の識別に排他的に使用され、これに対して、回折信号は、容積および血球ヘモグロビン含有量により構成される球体指標の計算に使用される。その特許では、未成熟細胞の解像に必要な吸収測定が回折測定と相互依存することが許容されている。第15および16欄の実施例3に記載されるように、そのような干渉を低減するために、著者らは、細胞間補正法を提案している。残念ながら、小振幅の2つの光学的現象(すなわち、第1は屈折度効果、第2は吸収効果であり、それらの2つの効果は、光減衰を測定する信号中に混合一体化される)を分離する必要があるので、それらの計算は複雑でありおそらく不正確である。その補正法の第1の限界は、血液細胞が完全均一球であると仮定される事実に由来する。光減衰信号から差し引かれるべき信号の部分を計算するために、Mie理論が使用される。その計算は、色素の寄与のみに帰属可能でありかつ核酸の量の測定ひいては赤血球の成熟度の決定に使用可能である新しい吸収値を与える。
【0024】
特許文献9の図18では、前記方法とマニュアル計数法との間で網状赤血球の計数結果が比較されている。相関係数は与えられていないが、測定はきわめてバラツキが多く、網状赤血球カウント数は2%未満では不正確であることがわかる。しかしながら、赤血球の平均寿命が120日間であることは公知であり、したがって、赤血球再生率は1日あたり平均で0.8%に等しいと推定しうることから、純粋に生物学的な観点からみて2%をかなり下回る測定が可能な高感度法を有する必要性があることは明らかである。
【0025】
同様にMiles Inc.名義の特許文献10には、Tyckoの原理に基づく血球ヘモグロビン含有量の決定方法が記載されている。すなわち、光回折は、「赤色低角散乱」および「赤色高角散乱」としてそれぞれ参照される2つの回折角で測定されるが、網状赤血球の測定は、特許文献9の場合のような光吸収の測定ではなく蛍光の原理に基づく。著者らは、2種の光励起可能な化合物(一方は赤色で(オキサジン750)、他方は青色で(アクリジンオレンジおよびその誘導体))を使用することを想定している。そのような環境下で、著者らは、光ビームが測定点で重なるように槽の上流の2つのレーザを結合することを提案している。提案された光学構成では、重なる照射軸および検出軸を使用するため、青色で光励起可能な化合物を使用する場合、4つの測定チャネルを利用する構成になるので、かなり複雑度が増す。その方法では、血液サンプル中に含有される各赤血球および各網状赤血球の対象となるパラメータ(容積および血球ヘモグロビン濃度)を決定するために、すべて光学的である方法が好ましい。
【0026】
Abbott名義の特許文献11では、以上に記載の方法と実質的に等価な方式で血球ヘモグロビン濃度測定の問題に対処している。その特許は、複数の細胞系とくに白血球系および赤血球系の解像を可能にする光学装置を提示している。システムは、単一の光源と、Mie理論を用いて血球ヘモグロビンおよび細胞容積を計算するための特異な構成を規定する3つの測定ゾーンを提供する単一の受信器と、を有する。主要な特徴が容積パラメータVおよび血球ヘモグロビンHCを計算するために3つの回折角を使用することに依拠するため、特定の検出器が必要であり、かつ赤血球の成熟度を測定するためのパラメータとして蛍光が追加された場合、三次元空間または四次元空間で操作する方法によりデータが処理されるので、技術的観点からみてかなり複雑さが増す。装置のキャリブレーション方法の複雑さもまた、その文書では対処されていない重要な問題である。
【0027】
XE2100分析装置用としてパラメータRET−yがSysmexにより提案されている。このRET−yパラメータの臨床上の利点を評価するために、いくつかのチームにより種々の実験研究が行われてきた。たとえば、非特許文献7では、パラメータRET−yが網状赤血球のヘモグロビン含有量に相関付けられることが示されている。そのパラメータ(これは、網状赤血球集団のみに限定された前方散乱(FSC)の平均値である)は、フローサイトメトリにより解析される細胞のサンプルの二パラメータFSC×FLUO表示から計算され、従来的には、パラメータFSCは、小角の回折に対応し、パラメータFLUOは、赤色で光励起可能でありかつ核酸(DNA/RNA)のマーキングおよび定量に使用されるポリメチンの蛍光に対応する。より最近になって、非特許文献8で、C.Briggsらは類似の結果を記載している。著者らは、パラメータMCHおよびCHrがパラメータRET−yに相関付けられることに気付いている。Bayer商標の参照Advia 120分析装置を用いてSysmex XE2100分析装置のキャリブレーションを可能にする非線形回帰法もまた提案されている。それらの結果は、2007年3月にSysmexにより出願された特許文献12に記載され明らかにされている。残念ながら、FSCの応答が非線形であるため、とくにパラメータCHrの値に関して、かなり不正確になる可能性がある。とくに40pg近傍の値では、RET−yがその値の周りでごくわずかに変化するだけなので、この方法は高感度でないことがわかる。さらにまた、その特許は、網状赤血球集団についてのみ言及し、FSX×FLUO二パラメーター表示は、循環血液中の他の粒子とくに白血球に適合化させていない。
【0028】
先行技術特許に記載されるような小角回折測定(たとえば、Tycko装置およびそれに由来する構成)は、5°〜15°の範囲内にある視直径の環状瞳孔を介して行われる。良好な信号雑音比で小角回折測定を行うために、それらの構成ではレーザが利用される。そのような操作条件下では、照射ビームの開口数は実質的にゼロである。実用的な観点から、レーザの使用は、実質的にゼロである開口数を用いて効果的な小角回折測定を行うのに必要な高出力(数ミリワット)の放射線の生成を可能にする唯一の解決策である。
【0029】
したがって、先行技術に記載の測定原理に基づく装置は、レーザを含むので高価である。
さらにまた、それらは、効果的にレーザビームを停止するためにストッパーの使用を必要とする。検出器の飽和を回避するために高確度でストッパーをアライメントする必要があるので、その原理で動作する装置の作製および調整はとくに難しい。
【0030】
さらにまた、先行技術の装置は、試薬による血液細胞の球状化の品質に非常に敏感である。小角回折で動作する装置では、回折現象は、実質的に平面波のものに相当し、これは、定義によれば、ゼロ発散を呈する。微粒子とのその相互作用の性質は、微粒子の形状効果に非常に敏感である。さらにまた、微粒子が完全な球でない場合、測定の結果は、顕著な誤差を含む。これは、図1Aおよび1Bに示されるように、実験的に判明している。これらは、1°〜30°の範囲内の角度にわたり測定された赤血球に関する容積(RES)パラメータおよびレーザ回折(FSC)パラメータの二パラメータプロットである。図1Aは、低球状化指数を有する供給業者ABX製の希釈剤(特許文献13−Fluored(登録商標))を用いて得られたものであり、これに対して、図1Bは、高球状化指数を有する試薬(Advia 2120で使用されるBayer希釈剤)を用いて得られたものである。図1Aは、一群の集団にきわめてバラツキが多いので、顕著な誤差を含むであることがわかる。これとは対照的に、図1Bでは、粒子集団は、楕円形状の群により示されるように高度のFSC×RES相関を有してよりコンパクトな群を規定する平面領域内に位置する。
【0031】
したがって、測定システムに関係なく、先行技術の装置では試薬の性質が結果にかなりの影響を及ぼすことは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0032】
【特許文献1】米国特許第4735504号明細書
【特許文献2】米国特許第5194909号明細書
【特許文献3】米国特許第5817519号明細書
【特許文献4】米国特許第6025201号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2005/0134833号明細書
【特許文献6】国際公開第97/26528号パンフレット
【特許文献7】仏国特許第2759166号明細書
【特許文献8】米国特許第5350695号明細書
【特許文献9】米国特許第5350695号明細書
【特許文献10】米国特許第5360739号明細書
【特許文献11】米国特許第6630990号明細書
【特許文献12】欧州特許第1967840A2号明細書
【特許文献13】仏国特許第2759166号明細書
【非特許文献】
【0033】
【非特許文献1】“Simultaneous measurement of reticulocytes and red blood cell indices in healthy subjects and patients with microcytic and macrocytic anemia”,Onofrio et al.,1995,Vol.85,pp.818−823
【非特許文献2】“Reticulocyte hemoglobin content(CHr):early indicator of iron deficiency and response to therapy”,Brugnara et al.,Blood 1994,Vol.83,pp.3100−3101
【非特許文献3】“The cytoplasmic refractive index of lymphocytes, its significance, and its changes during active immunization”,K.W.Keohane and W.F.Metcalf,January 1,1959,Experimental Physiology,44,pp.343−350
【非特許文献4】“Calibration−free method to determine the size and hemoglobin concentration of individual red blood cells from light scattering”,Sem’yanov et al.Applied Optics,Vol.39,No.31,November 2000
【非特許文献5】“Reticulocyte enumeration:past & present”,Riley et al.,Laboratory Medicine,Vol.32,No.10,October 2001
【非特許文献6】“Automated reticulocyte counting and immature reticulocyte fraction measurement”,Lacombe et al.,American Journal of Clinical Pathology,Vol.112,No.5,November 1999
【非特許文献7】“New red cell parameters on the Sysmex XE−2100 as potential markers of functional iron deficiency”,Briggs et al.,2001,Sysmex Journal International,Vol.11,No.2
【非特許文献8】“Potential utility of Ret−Y in the diagnosis of iron−restricted erythropoiesis”,Franck et al.,Clinical Chemistry 50:pp.1240−1242,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
したがって、本発明の主目的は、検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された中心波長で減衰条件下で使用される、短いコヒーレンス時間、コヒーレンス長Lc<100マイクロメートル(μm)の光源を用いて、流体中に存在する少なくとも2つの細胞粒子集団の分類および屈折度の流動測定を行う方法を提案することにより、そのような欠点を軽減することであり、この方法は、以下の工程、すなわち、
・この光源を用いて、選択された中心波長で検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された1°〜60°、好ましくは10°〜60°の範囲内にある開口角を有し、かつa×b×cの大きさの矩体容積内で10%よりも良好な照明均一性を呈する、収束照射ビームを形成する工程であって、ここで、a×bは、4未満のアスペクト比a/bを有するビームの矩形断面であり、かつcは、測定点を中心とする距離範囲として規定される被写界深度であり、それに対する出力は、10%以下の変動であり、その値は、約500μm±250μmに位置するものとする、工程と、
・粒子を有する流体が測定オリフィスを貫流するようにする工程と、
・粒子が測定オリフィスを通過する際にインピーダンス振動(RES)を測定する工程と、
・生物学的溶液が測定オリフィスから出口に配置されたビーム照射される測定窓に流入するようにする工程と、
・粒子が測定窓を通過する際にビーム軸上で減衰(EXT)を測定する工程であって、ここで、測定は、検討対象の粒子集団に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された1°〜60°の範囲内にある開口角の受信ビームを有する装置または検出器を利用して行われるものとする、工程と、
・RESおよびEXTのデータを併合してそれらからイベントを生成する工程と、
・以下の形式の式:
【0035】
【数1】

〔式中、A、B、C、D、およびTは、測定サイクルに依存する係数である〕
を用いて各イベントに対する相対屈折率IDXを評価する工程と、
・RES、EXT、およびIDXから選択される少なくとも1つのパラメータを用いてイベントのすべてを分類する工程と、
を含む。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、細胞成熟度の種々の段階を識別するために蛍光測定を追加することにより拡張可能である。
したがって、図2に示されるように、本発明は、いくつかの細胞系の屈折率(または屈折度)の測定を可能にする単純な電気光学手段の利用方法を提案する。本発明に係る方法を用いて測定が行われるサンプルを調製する場合、適切な試薬が選択される。
【0037】
本発明の独創性は、粒子屈折度情報を得るために電気的方法により行われる容積測定と光減衰測定とを同時に利用することに依拠する。
粒子屈折度が、粒子が浸漬された液体媒体の屈折度に対する測定値であり、かつ最終的に、粒子屈折度測定値が、測定装置を特徴付けるパラメータに依存することに気付くはずである。
【0038】
したがって、粒子の屈折度またはその屈折率(mと記される)は、2つの物理量の比:
m=Ne/N
〔式中、所与の実験条件で、Neは、粒子の屈折率であり、かつNは、粒子が浸漬された液体媒体の屈折率であり、この相対屈折率はまた、本明細書では以下にIDXと記される〕
により表すことが可能である。
【0039】
細胞学的解析では、とくに血液学の分野では、この屈折度情報により、たとえば、検討対象の細胞集団の改良された分類を得ることが可能であり、または細胞内容物に関するもしくはその細胞膜の性質に関する追加情報が提供されるので細胞代謝に関する情報を提供することが可能である。
【0040】
本発明に係る方法では、屈折度を評価するために同類の回折測定は行われない。本発明は、光減衰の測定を用いることに基づく。したがって、光信号は、先行技術の装置を用いた場合のように暗いバックグラウンドではなく明るいバックグラウンドに対して測定される。直接的帰結の1つは、レーザを使用する必要性がないことである。レーザは、依然として比較的高価な素子であり、しかも依然として非レーザ光源よりも使用が複雑である。
【0041】
したがって、本発明に係る方法では、たとえば、発光ダイオード(LED)、超高輝度LEDなどの半導体ランプ、または実際には白熱ランプであってもよい非レーザ光源が利
用される。
【0042】
本発明では、光学構成は、先行技術の装置よりも単純である。それに加えて、とくに、明るいバックグラウンドに対して測定が行われるため、光電検出工程前に照射ビームを停止する必要性がないので、実現はより容易である。
【0043】
10度超の比較的大きい開口角で収束する照射ビームの本発明での使用は、赤血球の形状に対する低減された感度を提供するのに役立つ。
非コヒーレント収束ビームは、赤血球に対してさまざまな入射角を有する平面波のスペクトルとして解像可能であることが知られている。
【0044】
照射ビームの開口角は、これらの2つの値の差により定義される。
好ましい特徴によれば、この開口角は、10°〜60°の範囲内にある。
したがって、先行技術の装置とは異なり、粒子は、平面波の連続スペクトルにより照射される。次いで、各波は、測定信号が解析粒子によるすべての平面波の積分応答になるように回折パターンを生成する。
【0045】
各平面波はさまざまな角度で粒子に出合うので、形状異方性は「平均化」される。
このことから、粒子形状条件とくに粒子球状化に直面した場合、本発明に係る方法が先行技術の装置よりも優れていることは明らかである。とくに、赤血球の場合、この先行工程は、微粒子の化学処理により、たとえば、「フローサイトメトリによるより正確かつ精密な細胞容積測定のための赤血球の等容球状化」という論文(Cytometry,1983,Vol.3,Issue 6,pp.419−427)でY.R.KimaおよびL.Ornsteinにより記載されたような処理により、得られる。
【0046】
本発明に係る光学構成は、赤血球などの生物学的粒子の球状品質に関してはより許容性がある。したがって、球状化能に関して試薬に課される要件は低減される。粒子の球状化がもはや測定法の実現にそれほど決定的な因子ではないので、本発明によれば粒子内の特定構造の染色またはマーキングに必要とされる膜透過性などの他の化学的機能の増強または形成が可能になる。
【0047】
したがって、本発明によれば、実際の屈折度および容積の測定に基づいて、インピーダンスおよび減衰の両方を測定することにより解析粒子のクラス分けが可能になる。
このため、屈折度の関数として識別されるいくつかのクラスの決定が可能になるだけでなく、分率の和が100%になるように各クラスの粒子のパーセントとして分率の決定も可能になる。
【0048】
本発明の特定の実現形態では、図27に示されるように、光源S1の軸に90°のレーザと一緒に受信系にダイクロイックミラーF1を単に追加することにより、本発明に係る光学構成によれば、蛍光の測定ひいては赤血球と網状赤血球との識別も可能になる。
【0049】
同様に、この装置を用いれば、白血球の蛍光の測定が可能になり、ひいては蛍光応答の関数としてその分離が可能になる。
特定的には、本発明は、これまでに発表された解決策よりも良好な性能を有しかつより単純である解決策を提供する。
【0050】
本方法の適用は、赤血球および血小板の屈折度の測定に依拠する。赤血球の屈折力がわかれば、そのヘモグロビン濃度の決定が可能になる。
より一般的には、本発明によれば、赤血球および網状赤血球のヘモグロビン含有量の決定、全血のサンプル中に含有される他の細胞または微粒子(とくに赤血球および初期サン
プルの希釈に使用される種々の流体により伝達されるバックグラウンドノイズ)と対比される血小板の分類の改良、および血小板の活性化レベルの決定が可能になる。次いで、白血球の分類および/または特性付けのために循環血液中の細胞のすべて(特定的には、リンパ球、単球、好中球、好酸球(eosinopils)、および好塩基球、ならびに他の有核細胞)に本発明に係る方法を拡張することが可能である。
【0051】
有利な特徴によれば、相対屈折率は、以下の形式の式:
【0052】
【数2】

〔式中、A、B、C、D、およびTは、測定サイクルに依存する係数である〕
を用いて計算される。
【0053】
この特徴によれば、それは2つの変数および単純な対数関数から屈折率をモデリングする式であるので、迅速かつ単純な屈折率の計算が可能になる。
有利には、解析粒子は、生物学的液体中の細胞である。
【0054】
また、本発明の好ましい特徴によれば、粒子屈折度の測定に使用される波長は、0.6μmを超える赤色および近赤外に位置する。
微粒子容積が測定される範囲は、主に0〜500フェムトリットル(fL)に位置する。これは、とくに赤血球および白血球さらには血小板に適用される。
【0055】
赤血球の場合、選択される波長範囲は、溶液の一意性が確保されて各細胞の屈折度(それ自体は、光減衰およびインピーダンスの測定により決定される)に比例するヘモグロビン濃度を与えるものである。
【0056】
本発明の有利な特徴によれば、イベントの分類工程では、600ナノメートル(nm)〜800nmの範囲内にある波長および0.2〜0.6の範囲内にある開口数NA1=NA2を用いることにより赤血球および血小板が分離される。この分離工程は、血小板の属するゾーンを規定する閾値(デフォルトの値を有しかつ自動調整可能な閾値)の関数として行われる。
【0057】
この特徴によれば、観測されるサンプルに適合する分離閾値をもたせることが可能になる。本発明では、イベントを構成するために光減衰信号が測定されて抵抗信号と関連付けられる。特定の粒子で減衰が見られない場合、本発明に係る方法では、それをゼロ減衰に関連付ける。このサブ工程では、そのインピーダンス値のみに基づいてこのイベントを処理する。
【0058】
有利には、イベントの分類工程は、遭遇した粒子のすべてから作成されるヒストグラム中の谷部を決定することにより、減衰が測定できなかった粒子間の抵抗分離閾値を調整するサブ工程を含む。
【0059】
本発明の特定の特徴によれば、イベントの分類工程は、容積および光減衰の関数であるアフィン直線により規定される分離閾値下で遭遇した粒子について、統計パラメータ、平均値および、標準偏差から計算される抵抗分離閾値を調整するサブ工程を含む。
【0060】
こうした環境下でも、分離閾値の位置は、サンプルの関数として決定される。赤血球(RBC)および血小板(PLT)を分類するほとんどの現存機器はそれらの容積のみに基
づくので、これは、独創的な方法を構成する。したがって、この閾値により、小赤血球妨害が観測される他の機器ではできない小赤血球サイズの血小板の分類が可能になる。それにもかかわらず、レーザによる回折測定を利用する機器が存在するが、実現される方法は、本発明に係るものよりも複雑である。
【0061】
本発明の他の特定の特徴によれば、イベントの分類工程は、分離線を垂直に配置するようにインピーダンス(容積)/減衰平面全体を回転した後、分離線の両側に位置するイベントの横軸点から作成されるヒストグラム中の谷部を決定することにより、容積および(光)減衰の測定の関数であるアフィン直線により規定される閾値を調整するサブ工程を含む。
【0062】
もう一度述べるが、分離閾値の位置は、サンプルの関数として決定される。したがって、本発明によれば、血小板および小サイズの赤血球の識別ひいてはそれらの分類が可能になる。
【0063】
本発明の有利な特徴によれば、本方法は、屈折率IDXの関数であるアフィン表現を利用して赤血球集団に分類された粒子の血球ヘモグロビン濃度を計算する工程を含む。
したがって、本発明によれば、血球ヘモグロビンと屈折率IDXとの間の既知の関連を用いることにより血球ヘモグロビン量の計算が容易になる。
【0064】
有利には、本方法は、低色素性、高色素性、および正色素性の赤血球集団、ならびに小赤血球、大赤血球、および正赤血球の赤血球集団を分類する細分類工程を含む。
これらの集団が容積および屈折度の差だけ異なるかぎり、本発明を用いて行われる測定は、容積およびヘモグロビン含有量の関数として規定され構成される小赤血球、大赤血球、低色素性、または高色素性の集団を分類前に識別するのに役立つ。これらの集団間の差を規定する方法は、多くの場合、各実験室に特有なものである。それにもかかわらず、デフォルトの設定を提供することが可能である。
【0065】
本発明の有利な特徴によれば、本方法は、屈折率の関数であるアフィン表現を用いて血小板集団に分類された粒子の密度を計算する工程を含む。
本発明によれば、密度と屈折率との間の他のどこかで知られた関係により血小板の密度の評価が容易になる。
【0066】
有利には、本方法はさらに、密度とインピーダンス測定により知られた容積とからの血小板の乾燥重量を計算する工程を含む。
この工程により、生物学的観点から意味のある重要な量すなわち血小板の顆粒の量の利用が可能になる。この顆粒は、血小板が活性化された場合に排出される。したがって、血小板の密度から血小板の活性化が明らかになる。活性化された一群の血小板は、ほとんどまたはまったく顆粒を含有しない。したがって、屈折率の測定は、その活性化度の測定に間接的に役立つ。この場合、粒子の屈折率の測定は、粒子が浸漬された媒体に対するものであるとともに粒子に特有の構造に対するものでもあることを重要視されたい。したがって、血小板屈折度測定の解釈はまた、その内部複雑さに関連する。すなわち、高い屈折度の小さい顆粒を含有する血小板は、活性時にその顆粒を消失した同一の血小板よりも大きい見掛けの屈折率を有するであろう。最終的に、計算された屈折率は、解析粒子(血小板、顆粒球など...)と同一の光減衰を生じる微粒子の容積と等しい容積の均一な球のものである。
【0067】
特定の特徴によれば、本発明に係る方法は、正常血小板、活性化血小板、微小血小板、および巨大血小板を分類する細分類工程を含む。「巨大血小板」の概念は容積に関連するので、細分類は、赤血球の場合と同様に各実験室に対して適合化可能である。
【0068】
有利な特徴によれば、イベントの分類工程は、とくにリンパ球、単球、顆粒球、好中球、および好酸性顆粒球により構成される白血球集団を分離し、以下の工程、すなわち、
a)第1の二次元(2D)閾値化サブ工程(REX×EXTまたはVOL×IDX)を用いて、デブリ、血小板凝集体、赤芽球、アーチファクトなどの存在に対応するバックグラウンドノイズを分離する工程と、
b)以下のサブ工程、すなわち、
i)リンパ球と好中性顆粒球との間の閾値を自動調整するサブ工程と、
ii)好中性顆粒と好酸性顆粒球との間の閾値を自動調整するサブ工程と、
iii)単球と好中性顆粒球との間の閾値を自動調整するサブ工程と、
を含む、逐次的2D閾値化サブ工程を用いて種々の集団およびそれらの非定型または未成熟のサブ集団を分離する工程と、
を含む。
【0069】
本発明により可能になる屈折率(IDX)変換は、より正確なかつより直交性のある情報の利用を可能にする。それにより、光減衰で容積に相関付けられる成分を排除することが可能になる。したがって、2D閾値化は、有利には、インピーダンスパラメータ(RES)および本来の減衰パラメータ(EXT)の代わりに容積(VOL)および屈折率(IDX)から計算される量で行われる。以上に述べたように、統計的屈折度特性は、光減衰よりも正確な情報を提供する。
【0070】
その後、この情報は、集団ごとにさまざまな解釈がなされ、したがって、集団の分類に必要である。たとえば、活性化は、リンパ球に対して評価可能であり、顆粒化は、好中性または好酸性の顆粒球などに対して評価可能である。
【0071】
有利には、本方法は、計算された相対屈折率の関数であるアフィン表現を利用してリンパ球に分類された粒子の活性化指数を計算する工程を含む。
例として、リンパ球の屈折率変化は、「リンパ球の細胞質屈折率、その意義、および能動免疫時のその変化」というタイトルの文書(Metcalf et al.,Experimental Physiology,44,pp.343−350,1959)および「ウサギでの皮膚移植後の血中リンパ球の細胞質屈折率の変化」(Metcalf et al.,Blood 1972−39:pp.113−116)という文書に記載されている。
【0072】
本発明によれば、前記活性化と計算された相対屈折率との間の他のどこかで知られた関係を用いることによりリンパ球活性化の評価が可能になる。
本発明の有利な特徴によれば、本方法は、容積および光減衰の2D分布を解析することによりかつリンパ球の集団を取り囲む統計楕円を決定することによりリンパ球に分類された粒子の活性化指数を計算する工程を含む。この楕円は、その中心位置、その長軸、その短軸、およびその角度により規定される。
【0073】
容積および屈折率の情報を用いることによりリンパ球を取り囲む楕円を決定する能力は、同様に本発明を利用して可能になる。さらにまた、VOL×IDX平面内で、2D統計特性は、容積に相関付けられないのでより正確な追加情報の利用を可能にする。
【0074】
特定の特徴によれば、本発明に係る方法は、計算された相対屈折率IDXの関数であるアフィン表現を利用して好中性顆粒球に分類された粒子の分葉指数/粒状性指数を計算する工程を含む。
【0075】
本発明によれば、そのような分葉度/粒状度と計算された相対屈折度との関係により好
中性顆粒球の分葉度/粒状度の評価が容易になる。
本発明の有利な特徴によれば、本方法は、2D分布(抵抗および減衰)または(容積および屈折率)測定を解析することによりかつ好中性顆粒球の集団を取り囲む統計楕円を決定することにより好中性顆粒球に分類された粒子の分葉指数/粒状性指数を計算する工程を含む。この楕円は、その中心位置、その長軸、その短軸、およびその角度により規定される。
【0076】
この工程により平均指数の取得が可能になる。
特定の特徴によれば、イベントの分類工程は、他の白血球集団から好塩基性顆粒球を分離し、以下の工程、すなわち、
a)2D閾値化を用いて、赤血球デブリ、血小板凝集体、赤芽球、アーチファクトなどの存在に対応するバックグラウンドノイズを分離する工程と、
b)好塩基性顆粒球と他の白血球との間の閾値の自動調整を含む、2D閾値化により好塩基性顆粒球を他の白血球から分離する工程と、
を含む。
【0077】
「2D閾値化」という用語は、RES×EXT平面内、VOL×IDX平面内、または利用可能な量の任意の組合せの平面内で閾値化することを意味する。分類は、順序関係を保存する任意の変換の後に可能になる。
【0078】
測定および分類を進める前に、対象のサンプルは、好塩基球の核細胞質比を保存する特定の試薬(たとえば、供給業者Horiba Medical製のABX Basolyse試薬)で処理される。自動位置決め方法は、RES×EXT平面内で閾値化することにより実施可能であり、核の周りに「収縮」した他の白血球の分布の解析に依拠する。次いで、中心および標準偏差から出発して、閾値は、「収縮」白血球上に配置される。他の閾値は、固定される。他の形態のウィンドウ生成および他の調整法の場合、本発明に係る方法によれば、VOL×IDX平面内で同一の処理が可能になる。
【0079】
有利には、本発明に係る方法は、異常相対屈折率を呈しかつ実際には脂肪血、結晶、気泡などの存在に起因する妨害に対応するイベントの検出工程を含む。
そのような工程は、サンプルひいてはそれに対して行われた測定の品質を検出するのに役立つ。
【0080】
有利な特徴によれば、本方法は、異常な相対屈折率および乳濁液に特有な容積分布を有するイベントの検出工程を含む。その際に検出されるイベントは、妨害をもたらす。したがって、本発明によれば、その検出が可能になる。
【0081】
有利な特徴によれば、本方法は、蛍光現象を引き起こすように選択された波長の光を測定空間に照射する工程と、測定空間内で発生した蛍光を測定する工程と、遭遇した粒子の統計パラメータ、すなわち、最大値、標準偏差などから計算される蛍光分離閾値を調整するサブ工程を含むイベントの分類工程と、を含む。
【0082】
RES×EXT測定またはVOL×IDX測定に蛍光測定を追加することにより、イベントに関する示差的断片情報を与える3つの測定に基づいて分類を行うことが可能である。
【0083】
特定の特徴によれば、赤血球として同定されたイベントの分類工程では、蛍光測定に基づくかつ赤血球成熟度限界に対応する閾値の関数として網状赤血球から赤血球が分離される。この閾値は、自動調整に好適なデフォルト値を有する。
【0084】
有利には、本方法は、屈折度IDXの関数であるアフィン表現を用いることにより網状赤血球集団に分類された粒子の血球ヘモグロビン濃度を計算する工程を含む。
本発明によれば、網状赤血球集団を含めて、血球ヘモグロビンとIDXとの間の既知の関係を用いることにより血球ヘモグロビン量の計算がより容易になる。
【0085】
特定の特徴によれば、リンパ球または単球として同定されたイベントの分類工程では、単核白血球の成熟度限界に対応する蛍光測定の閾値の関数として高含有量の核酸(とくにRNA)を有する他の粒子から分離される。この閾値は、デフォルトの値を有しかつ自動調整に好適である。
【0086】
特定の特徴によれば、好中性または好酸性として同定されたイベントの分類工程では、顆粒球成熟度限界に対応する蛍光測定閾値の関数として顆粒球および未熟顆粒球が分離される。この閾値は、デフォルトの値を有しかつ自動調整に好適である。
【0087】
したがって、本発明は、流体中に存在する少なくとも2つの粒子集団の分類および屈折度の流動測定を行う方法を提供する。本方法は、検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された中心波長で減衰条件下で使用される、短いコヒーレンス時間、コヒーレンス長Lc<100μmの光源を使用する。本方法は、この光源と協同して、選択された中心波長で検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された開口角の収束照射ビームを形成する装置を使用する。次いで、粒子が通過する際にインピーダンス(RES)の変化を測定するために、粒子を有する流体が測定オリフィスを貫流するようにする。粒子を有する流体は、ビームが照射される測定窓を貫流し、減衰EXTは、粒子が測定窓を通過する際にビーム軸上で測定される。ただし、これは、検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された開口角の収束受信ビームを有する装置または検出器を利用して行われるものとする。本方法は、各イベントに対する相対屈折率の評価およびRES、EXT、またはIDXから選択される少なくとも1つのパラメータを利用したイベントのすべての分類を可能にするイベントを抽出するために、RESおよびEXTのデータを併合する。
【0088】
本発明の他の特徴および利点は、なんら限定的な特徴を有するものではない実現形態を示す添付の図面を参照しながらなされた以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1A】弱い球状化力を有する試薬を用いて先行技術の装置によりインピーダンス/レーザ回折平面内で得られた結果を示しているグラフ。
【図1B】強い球状化力を有する試薬を用いて先行技術の装置によりインピーダンス/レーザ回折平面内で得られた結果を示しているグラフ。
【図2】本発明に係る装置の断面図。
【図3A】小さい球状化指数を有する試薬を用いて本発明に係る装置によりインピーダンス/減衰平面内で得られた結果を示しているグラフ。
【図3B】大きい球状化指数を有する試薬を用いて本発明に係る装置によりインピーダンス/減衰平面内で得られた結果を示しているグラフ。
【図4】血球ヘモグロビン濃度の関数として水性溶液の屈折率を示しているグラフ。
【図5】λ=650nmおよびNA=0.3の場合について赤血球の見掛けの減衰値をその容積および血球ヘモグロビン濃度(g/dL)の関数として示しているグラフ。
【図6】λ=405nmおよびNA=0.3の場合について赤血球の見掛けの識別値をその容積および血球ヘモグロビン濃度(g/dL)の関数として示しているグラフ。
【図7】λ=800nmおよびNA=0.3の場合について赤血球の見掛けの識別値をその容積および血球ヘモグロビン濃度(g/dL)の関数として示しているグラフ。
【図8】28個の血液サンプルの平均血球ヘモグロビン濃度(MCHC)を測定した結果を比較したものであり、2つの異なる分析装置に対するこのパラメータの高値および低値をカバーしているグラフ。
【図9A】ヘキサンを用いた本発明に係る装置による乳濁液の測定結果を示しているグラフ。
【図9B】ヘプタンを用いた本発明に係る装置による乳濁液の測定結果を示しているグラフ。
【図9C】オクタンを用いた本発明に係る装置による乳濁液の測定結果を示しているグラフ。
【図9D】ノナンを用いた本発明に係る装置による乳濁液の測定結果を示しているグラフ。
【図9E】デカンを用いた本発明に係る装置による乳濁液の測定結果を示しているグラフ。
【図9F】ドデカンを用いた本発明に係る装置による乳濁液の測定結果を示しているグラフ。
【図10】屈折率の関数としてパラメータkおよびoのモデリングを示しているグラフ。
【図11】横軸としてRESおよび縦軸として計算された屈折率を有する平面内に種々の乳濁液を表示した図。
【図12】VOL×EXT平面内にRBC/PLTマトリックス。
【図13】RBCおよびPLTの分類のためのフロー図。
【図14】RES×EXTマトリックスを用いたRBC/PLT分類を示しているチャート。
【図15】図14の第1のゲーティング時に用いられたRBC/PLTマトリックスの閾値を示しているチャート。
【図16A】抵抗分離の調整サブ工程の実現形態を示しているチャート。
【図16B】抵抗分離の調整サブ工程の実現形態を示しているグラフ。
【図17】減衰分離の調整サブ工程の実現形態を示しているチャート。
【図18】ヘモグロビン濃度が屈折率からどのように計算されるかを示しているグラフ。
【図19】容積およびヘモグロビン濃度による赤血球の細分類を示しているチャート。
【図20】容積および密度による血小板の細分類を示しているチャート。
【図21A】小赤血球症の場合の分類の比較を示しているチャート。
【図21B】小赤血球症の場合の分類の比較を示しているチャート。
【図22A】、巨大血小板の場合の分類の比較を示しているチャート。
【図22B】、巨大血小板の場合の分類の比較を示しているチャート。
【図23】RES×EXTマトリックス上に白血球の分類を示しているチャート。
【図24】粒子の2D楕円分布を解析する白血球集団のRES×EXTマトリックスを示しているチャート。
【図25A】正常血液のVOL×IDXマトリックスを示しているチャート。
【図25B】病理学的血液のVOL×IDXマトリックスを示しているチャート。
【図25C】図25Bとは異なる病理学的血液のVOL×IDXマトリックスを示しているチャート。
【図26A】好塩基球を識別するためのチャネルを用いたRES×EXTの分類を示しているチャート。
【図26B】VOL×IDX平面内に同一のチャネルを用いた正常血液を示しているチャート。
【図26C】VOL×IDX平面内に同一のチャネルを用いた脂質妨害を示しているチャート。
【図27】蛍光の測定と組み合わせて粒子の屈折度を測定するための装置を示す断面図。
【図28】赤血球を淡灰色でおよび網状赤血球を黒色で示したRES×FLUOマトリックスを示すチャート。
【図29A】赤血球を淡灰色でおよび網状赤血球を黒色で示したVOL×CHCマトリックスならびに網状赤血球単独のVOL×CHCマトリックスを示すチャート。
【図29B】赤血球を淡灰色でおよび網状赤血球を黒色で示したVOL×CHCマトリックスならびに網状赤血球単独のVOL×CHCマトリックスを示すチャート。
【図30】未成熟細胞がEXT×FLUOマトリックス上で白血球の蛍光によりどのように識別されるかを示すチャート。
【発明を実施するための形態】
【0090】
最も単純な形態では、本方法は、特定の試薬で希釈された全血サンプルから採取された細胞の懸濁液の2つのパラメータの測定に依拠する。試薬は、供給業者Horiba Medicalにより販売されている「ABX希釈剤」などの等張性希釈剤でありうるか、または示差的溶解試薬(たとえば、循環血液に由来する有核細胞のすべてを保存しつつ赤血球の全溶解を行う供給業者Horiba Medicalにより販売されている「Leukodiff」試薬を用いるなど)でありうる。細胞の懸濁液は、1マイクロリットルあたりの細胞数(それ自体は、分析システムに依存する)により特徴付けられる。たとえば、ヒドロフォーカシングの原理を用いるフラックスサイトメトリー装置を利用して細胞の懸濁液を解析する場合、等張性希釈剤による全血の希釈は、1:1000程度である。試薬が示差的溶解用である場合、希釈は、1:100程度である。したがって、全血サンプルに対するこれらの希釈レベルによれば、正常型または罹患型でありうる血液に対して1マイクロリットルあたり10〜10,000個の細胞を有する細胞の懸濁液を調製することが可能になる。細胞の2つの特性が測定される。すなわち、1)細胞容積Vが電気的方法により測定され、2)次いで、図2に図示された装置を用いて光減衰信号が取得される。
【0091】
図2に示される装置は、光源S、集光レンズL1、絞りD1、投影レンズL2、焦点板D’1の像を捕集するための捕集レンズL3、光電検出器D2、およびフォーカシングノズルBFCを含む。
【0092】
図3Aおよび3Bは、先行技術の装置のレーザ回折条件の代わりに光減衰条件で動作する図2に示される装置から得られる。
図3Aは、供給業者Horiba ABXにより販売されている「Fluored」試薬(仏国特許第2759166号明細書)を用いて本発明に係る装置により得られたものである。図3Bは、供給業者Bayer製の強い球状化力を有する試薬を用いて本発明に係る装置により得られたものである。この時点で、図がイベント群の位置および群の形状の両方に関して比較可能であることに気付くはずである。
【0093】
これらの図を図1Aおよび1Bと比較することにより、本発明に係る装置は、測定粒子の形状に対してより良好な許容性を提供するであることがわかる。
図2に示される実施形態では、125μmの直径を有するキャピラリーは、50μmの直径を有する小孔により構成されたフォーカシングノズルBFC内に細胞の懸濁液を方向付ける。矢印で表される二次流体は、測定オリフィスを通過するまで細胞の懸濁液を中心に集めるのに役立つ。このオリフィスは、電気的方法により容積測定を実現するために使用される。一定した流れがオリフィスを通過する。粒子がオリフィスを通過する時、チャネルのインピーダンスは改変され、計数孔の両端間の電圧に変化を生じる。この電圧は、粒子の容積に比例する。この測定法は公知であり、その実現に必要な電子部品構成は本明細書に記載されていない。
【0094】
その後、粒子は、可能なかぎり均一な強度の光を焦点板に投影することにより得られる光学的解析窓内に移相される。光減衰はされる。各粒子に対して測定される。本発明によれば、照射ビームは収束ビームであり、その開口数NA=sin u〔式中、uは、絞りD1の半開口角である〕により特徴付けられることに気付くはずである。
【0095】
測定槽では、照射ビームの開口数は、NA1=n*sin uである。
均一照射は、伝統的にはKoehler型構成により得られる。Koehler照射の原理は、レンズL2の瞳孔内に光源Sを結像させることに依拠する。これにより、第1に、レンズL2の瞳孔内に位置する光源Sの単一像を有し、第2に、焦点板D’1の像の光の分布を均一にすることが可能になる。
【0096】
照射系はまた、本出願人名義の国際公開第2006/053960号パンフレットに記載の造形光ファイバーの使用に基づくものであってもよい。
光ベンチのサイズは、光学窓のサイズさらには計数セル内のビームの開口度に依存する。平面P1内にLagrange不変量I=hu〔式中、hは、測定窓の高さの半分であり、uは、ビームの半開口角である〕を規定することが可能である。この不変量の値は、光学系内のすべて点で保持される。絞りD1の特性寸法に対して記号d、かつ絞りD1における半開口角に対してθを用いると、以下の関係式:
I=hu=dθ
が成立する。
【0097】
その後、絞りにより遮断されレンズL2により捕集される光束(φと記される)は、ビームの幾何学的広がり(Gと記される)と光源Sの輝度Lとを掛け算した積に等しい。すなわち、θ=LGである。無損失光学系では輝度Lは保存されるので、この光束は、幾何学的広がりG=πS sinθ〔式中、Sは、絞りの面積であり、かつθは、半開口角である〕により固定される。
【0098】
一般性を損なうことなく、絞りは、辺dの正方形であると仮定することが可能である。したがって、光束は、以下の式:
φ=LG=Lπdsinθ≒Lπdθ すなわち φ≒πLI
により与えられる。
【0099】
したがって、光束は、
・光源の輝度L、このパラメータは、光源の特性値であり、単位面積あたりかつ単位立体角あたり放出される光束(ワット毎平方メートル毎ステラジアン(W/m/sr)として定義される、および
・Lagrange不変量Iの二乗、このパラメータは、計数セル内のビームの幾何学的データにより完全に決定される、
に比例することが示される。
【0100】
Iが測定チャンバー内で設定された後、光学系の出力を増大させるために光源の輝度のみを変化させることが可能であることに気付くことが重要である。
実際上、絞りは矩形形状であり、かつその寸法は2つの要件により決定される。大きいほうの寸法は、シース流体のサイズにより決定され、この直径は、実質的に、容積測定に使用されるオリフィス(約60μmの直径を有する)の直径である。したがって、この寸法は、約100μmに設定される。
【0101】
小さいほうの寸法は、測定の空間分解能を決定し、これは、互いに非常に近接した2つの細胞を識別する能力である。理想的には、この寸法は、可能なかぎり小さいことが望ま
しい。速度vで光窓を通過する生物学的粒子の場合、窓の最小寸法は、光束への細胞の暴露の持続時間ひいては吸収および回折の物理的現象に対応する電気パルスの持続時間を規定する。実際上、この寸法は30μm程度である。したがって、通過時、解析窓のこのアスペクト比は約3であるに気付くはずである。
【0102】
理想的には、光学測定は、フォーカシングノズルからの出口にできるかぎり近接させて行うことが望ましい。この位置では、粒子は、流体ストリームが整合的であるので明確に規定された位置にある。したがって、フォーカシングノズルBFCからの出口の直後に光を集束させるのは当然である。焦点からノズルの出口までの距離をxと記した場合かつノズルの半径をyと記した場合、umax=x/yである。したがって、ノズルのサイズが小さいほど、ビームの開口度をより大きくすることが可能であり、測光平衡が良くなる。
【0103】
本発明に係る装置の光学特性についてのこの説明を終えるために、撮像光学素子の倍率であるパラメータGを設定することにより系が完全に規定されることに気付いていただきたい。このパラメータは、空間要件により決定される。
【0104】
大サイズの絞りは、レンズL2から非常に離れて配置する必要があるが、小サイズの絞りであれば、レンズL2により近接させて配置されるので、よりコンパクトな構成の使用が可能になる。Lagrange不変量から、パラメータθを適宜設定することが可能である。したがって、絞りD1のサイズは、関係式d=I/θにより与えられる。これを設定した後、倍率G=h/dは完全に決定される。
【0105】
図2の装置で作動距離(βと記される)が設定されると、対応する値α=β/Gは、決定された値になる。パラメータβ自体は、フォーカシングノズルBFCの対称軸に沿ったドットで表される粒子のストリームに達するようにするために、一般的にはガラスまたは石英で作製される測定チャンバーの壁の厚さおよび通過させる必要のある流体の厚さにより設定されることに気付くはずである。作動距離βを設定する場合、空間が利用可能になるようにこの光学的厚さを考慮に入れることが望ましい。最終的に、f=αβ/(α+β)であるので、レンズの焦点距離もまた決定される。これにより、一次的には、図2の構成の光学的および幾何学的データが設定される。
【0106】
粒子により回折、反射、または吸収された光は、光の伝搬時に撹乱を生じ、この撹乱は、レンズL3および検出器D2により構成された受信器により検出される。信号はすべて、以下では減衰として参照されEXTと記される光減衰の測定に寄与する。
【0107】
レンズL3と検出器D2とが関連付けられて、構成の受信部が構築される。構成の最も単純な形態では、受信光ビームの開口数は、照射ビームのものと等しい。
開口数NA2=n*sin(v)は、受信光学素子の開口数である。
【0108】
構成の最も単純な形態では、受信光ビームの開口数は、照射ビームのものと等しい。したがって、NA2=NA1。微粒子は照射されて屈折率nの同一流体中で測定されるので、角度uおよびvは等しいと推定可能である、
より一般的には、照射ビームは、微粒子の観測に使用されるビームと同一の開口数である必要はない。これは、開口数が照射ビームのコヒーレンスレベルを規定する光学顕微鏡法でよく知られている。さらにまた、回折現象は、一般的には、照射される物体の領域のコヒーレンスの関数であるので、光学系の応答は、照射系の開口数NA1に依存することが予想される。
【0109】
微粒子が通過する平面内の光領域のコヒーレンス半径は、rc=λ/w〔式中、λは中心波長であり、かつwは照射瞳孔の視直径である〕程度であることが知られている。これ
は、Van Cittert−Zernikeの定理の結果である。例として、このトピックに関して、L.Mandel and E.Wolf ”Optical coherence and quantum optics”,Cambridge University Press,1995,p.188を参照されたい。
【0110】
したがって、本発明では、空間周波数範囲がより大きいまたはより小さい可能性のある形態学的情報を光減衰に組み込む必要のある多かれ少なかれ影響を受けやすい範囲に依存して、測定点での照射の空間コヒーレンスを調整することが必要なこともある。たとえば、特定の白血球または血小板で起こりうるように、表面粒状度または実際には粒子内の顆粒の結果として、粒子が高い空間周波数を有する場合、集光レンズの開口数を低減することにより照射のコヒーレンスを低減することが可能である。そのような環境下では、照射ビームは、これらの高い空間周波数の存在を明らかにするのに十分な空間分解能を有しておらず、光減衰の測定は、そのような粒状度に影響を受けやすいであろう。それ以外では、顆粒との相互作用は増強され、光減衰測定は、それに対応してより顕著になる。言い換えれば、像の形成にAbbeの理論を適用すると、分析対象の粒子の空間周波数は、入射光を回折する。
【0111】
解析物体と相互作用した後、この相互作用は、光の角分散により特徴付けられるスペクトルをもたらす。観測に使用される対物レンズは、空間周波数の一部のみを通過する空間フィルターを構成する。フィルターの通過帯域は、開口数NA2により規定される。角スペクトルおよびコヒーレンスの影響に関するより詳細な説明については、Joseph W. Goodman entitled ”Introduction to Fourier optics”(3rd edition,Roberts & Company,Anglewood,Colorado,2005,p.127,Chapter
6)を参照されたい。Paris ”Institut d’Optique”のS.Slanskyの研究は、白色バックグラウンド上の黒色ドットのように非常に単純の物体に対してNA1およびNA2の同時的役割に関する情報を提供し、比NA1/NA2の適切な選択によりコントラストが最適化されることを示している。
【0112】
また、たとえば、S.Slansky ”Influence de la coherence de l’eclairage sur le contraste de
l’image d’un point noir en presence d’un petit defaut de mise au point” [The influence of the coherence of illumination
on the contrast in the image of a black
dot in the presence of a small focusing
error](Journal of Modern Optics,Vol.2,No.3,October 1955)をも参照されたい。
【0113】
本発明はコントラストの概念を利用しないが、そのような概念は、より大きいまたはより小さい可能性のある空間周波数の構造情報を含む本発明に係る実効屈折度測定にたとえられる。最終的に、分析対象の粒子の実効屈折度は、分析対象の粒子の容積と同一の容積Vを有するかつ(NA1、NA2、Lc、λ、a、b)により特徴付けられる同一の装置を用いて粒子自体と同一の光減衰現象を生成する均一球の屈折度に対応する。ただし、NA1は照射の開口数であり、NA2は受信の開口数であり、Lcは光源のコヒーレンス長であり、λは中心波長であり、aは粒子の移動方向の解析光学窓の短寸法であり、かつbは粒子の移動方向に垂直な解析光学窓の長寸法である。実効屈折率の概念の数値解析は、たとえば、A.DoicuおよびT.Wriedtにより「多重球状含有物を有する球の等価屈折率」というタイトルの彼らの論文(J.Opt.A:Pure Appl.Opt.3(2001),pp.204−209)に明記されている。
【0114】
最後に、なにか他のタイプの瞳孔(たとえば環状瞳孔)の使用が可能であることに気付くはずである。そのような解決策は、詳細に記載されていない本発明に係る特別な場合に対応する。最後に、システムのパラメータNA1、NA2、Lc、λ、a、およびbの選択は、かなりの程度まで解析粒子の特性に依存することに気付くはずである。
【0115】
以下では、循環血液細胞の屈折率を測定するためにこれらのパラメータに対して選択された値を例示する。以下の特性、すなわち、
NA1=NA2=0.3、Lc=15μm、λ=0.650μm、a=30μm、b=90μm
が使用される。
【0116】
光窓を通過する粒子は、照射ビームの光を吸収および分散する。これらの2つの現象は、本明細書では「減衰」として参照される光電信号のDC成分の低減に寄与する。
本発明は、波/粒子の相互作用の機構の解釈に関連している。この相互作用は、以下に記載されるように、入射波の妨害および分析対象粒子による入射波の拡散の鋭敏な結果である。
【0117】
回折現象の近似理論であり異常回折理論としても知られるVan de Hulstの理論的手法が使用される。
本発明によれば、生物学的粒子が焦点面の近傍で光ビームと相互作用するかぎり、平面波と均一球との相互作用の研究は有用である。この平面では、波構造は実質的に平面である。複素電界により表されるこの波は、以下のように記述可能である。
【0118】
【数3】

この波の振幅が1であると仮定すると、拡散波は、以下の形式を有する球面波によりモデリングされる。
【0119】
【数4】

この式は、生物学的粒子により拡散された波の振幅を表す関数S(θ)を含む。特定的には、それは、パラメータθの関数として拡散波の空間分布に関する情報を明らかにする。
【0120】
定義によれば、減衰パラメータは、θ=0に対して規定され、それはCextと記される。
以下では、この減衰パラメータCextは、関数S(θ)の関数として表されることが示されている。
【0121】
装置の光軸の近傍では、以下の近似式が成立しうる。
【0122】
【数5】

x,y<<zであるならば、軸zの近傍の波は、以下のように記述可能である。
【0123】
【数6】

強度は、この複素数の絶対値の二乗をとることにより得られる。
【0124】
【数7】

中括弧内の項は、複素数の絶対値1+wである。さらにまた、zが十分に大きいと仮定されるので、二次項は、1と比較されて無視しうる。
【0125】
この強度は、軸zを中心とする小瞳孔の領域内で積分可能である。この積分は、以下のように記述可能である。
【0126】
【数8】

この積分は、瞳孔を通過する光子束が2つの項の合成であることを示唆する。第1項は、生物学的粒子の不在下の光子束を表し、第2項は、粒子の存在下の光子束を表す。この粒子は、回折により瞳孔の一部を抽出する。光束保存則は、この項が負であることを要求する。
【0127】
H.C.Van de Hulst表記を用いると、以下のように記述可能である。
【0128】
【数9】

同様にVan de Hulst表記を用いると、第2項は、それぞれ項(2πz/ik)1/2を含む2つのFresnel積分から構成される。積分が(x,y)平面内で∞まで拡張された極限では、以下の基本式を導出することが可能である。
【0129】
【数10】

〔式中、k=2π/λ〕
【0130】
【数11】

〔式中、x=ka{ここでaは、粒子の半径である}〕
したがって、単純な幾何学的要件により関数S(θ=0)を決定することが可能である。
【0131】
Van de Hulstの推論によれば、以下の積分を計算することによりこの関数を決定することが可能になる。
【0132】
【数12】

〔ここで、この積分は、生物学的粒子により投影されたシャドー内で行われる〕
この積分を正確に計算すると以下の式が得られる。
【0133】
【数13】

したがって、これらの結果を平均することにより、以下の形式で減衰係数を記述することが可能である。
【0134】
【数14】

m=IDXは、本明細書の冒頭で規定された微粒子の屈折度に対応する。赤血球の場合、mは、以下の式により与えられる。
【0135】
【数15】

赤血球および一般に任意の粒子の屈折度は、複素数で表されることに気付くはずである。実数部は、入射波の位相に影響を及ぼす。例として、それは、「生存細胞の屈折率測定」(Quarterly Journal of Microscopical Science, Vol. 95, Part 4, pp. 399−423, December 1954)というタイトルの論文でR.BarerおよびS.Josephにより行われた分析および観測の結果でありうる。虚数部は、吸収に関与し、その展開は、Beer−Lambertの法則の適用の域を出ることはない。
【0136】
検出器D2からの信号Siは、以下の式を用いて計算可能である。
【0137】
【数16】

ハイパスタイプの電子回路により光電信号を濾波した後、粒子の存在により生じた減衰は、以下の式を用いて計算可能である。
【0138】
【数17】

以下の数値データが用いられる。
【0139】
no=1.34、赤血球が浸漬された流体の屈折率と等しいとみなされるヘモグロビンの不在下の細胞質の屈折率、
NL=1.335、粒子が浸漬された流体の屈折率、
α=0.0019デシリットル毎グラム(dL/g)、溶質(ここではヘモグロビン)に依存する定数、
Hc=22g/dL〜46g/dL、血球ヘモグロビンが変化する範囲、
M:66650ダルトン(D)、ヘモグロビンの分子質量、
λ=0.650μm、照射波長、
εμm:0.2520平方センチメートル毎マイクロモル(cm2/μmol)、モル減衰係数、
Po=1.00マイクロワット(μW)、光ビームの出力、
a=33μm、解析窓の短寸法、および
b=100μm、解析窓の長寸法。
【0140】
以上をまとめると、この理論データおよび数値データにより、ヘモグロビン濃度の関数として赤血球の屈折率IDXを示す図4の曲線(縦軸は屈折率、横軸はヘモグロビン濃度)の予測が可能になる。
【0141】
図5は、種々の等価なヘモグロビン濃度値に対して球状粒子の容積Vの関数として減衰信号EXTをより正確に示している(横軸は粒子の容積)。図5は、所与の容積に対して、赤血球中に存在するヘモグロビンが多くなるほど、その減衰が大きくなることを示している。
【0142】
この一群の曲線は、赤血球の減衰信号がその容積だけでなくその屈折度の関数でもあることを示そうと試みた以上に記載の計算の結果であり、それ自体は、そのヘモグロビン濃度に線形従属である。
【0143】
405nmの波長では、計算された一群の曲線は図6(横軸は粒子の容積)に示されるとおりであることから、(CHC、V)を決定するための一意解は存在しないことが示唆され、このことはその波長ではこれらのパラメータを見積もることができないことを意味するので、この解決策は一般的でない。
【0144】
これとは対照的に、照射波長が800nmである場合、図7(横軸は粒子の容積)に示されるとおりであるので、赤外での測定はより有利である。
図8(グラフの上部の記載は「本発明の方法によって得られたMCHCと計数および分光分析法によって得られたMCHCの比較」、縦軸は「本発明の方法によるMCHC」、横軸は「Pentra 120DXのMCHC」)は、28個の血液サンプルの平均血球ヘモグロビン濃度(MCHC)パラメータを測定した結果を比較したものであり、このパラメータの高値および低値の両方をカバーしている。横軸は、Horiba ABX製の分析装置(Pentra 120)により得られたMCHC値に対応し、これに対して、縦軸は、本発明に係る方法により決定されたこのパラメータの値を与える。また、値は、CHCパラメータが測定された赤血球のすべてにわたり計算された平均値に対応する。第1に、Wintrobe定数であるこのパラメータの範囲が狭いこと、第2に、このパラメータを決定するために適用された方法が異なることを考えると、結果(R≒0.9)が満足すべきものであることに気付くはずである。血液分析装置では、複数の独立した測定、たとえば、#RBCと記される全赤血球数、MCVと記される平均細胞容積、およびHbと記されるサンプル中のヘモグロビン重量が組み合わされて、以下の式:
計算されたMCHC=Hb/(HT=MCV×#RBC)
を用いて、MCHC値が決定される。
【0145】
本発明では、MCHCは、3つの代わりに2つの独立した測定のみが計算に含まれるようにインピーダンスおよび減衰の測定から直接導出されている。
実際には、実験データの取得に使用される装置は、図2に示される装置である。本発明に係る方法の測定を行う前に、血液サンプルは、赤血球を球状にすべく選択された試薬で希釈される。球状化力は、典型的には、界面活性剤により得られる。試薬はまた、色素または蛍光色素を含んでいてもよい。たとえば、本出願人名義の仏国特許第2759166号明細書に記載されるように、これらの化学要素の存在により、細胞の他の性質の測定が可能になる。
【0146】
この測定原理は公知であることを考慮して、以下の説明は、変換のためのモデル、すなわち、減衰の測定およびインピーダンス法による容積の測定の関数として球状粒子のパラメータを決定するためのモデルに関する。目的は、得られた測定値の変換を可能にすることである。
【0147】
変換モデルは、有利には、順問題を解く際に含まれる近似および仮定により影響を受けないように実験データに基づいて決定される。
変換問題を解明くために、解析対象の生物学的粒子の屈折度の近傍にある既知の屈折度を有するように選択された有機溶媒から一群の乳濁液を調製した。
【0148】
赤血球の場合、選択された溶媒は、650nmの照射波長で屈折率が関心範囲内にあるアルカン類であった。
したがって、以下の表は、使用溶媒の屈折率IDXの値を与える。
【0149】
ヘプタン 1.39
オクタン 1.4
ノナン 1.405
デカン 1.41
ドデカン 1.42
乳濁液の観測により、各系列(ヘキサン、ヘプタン、……)に対して、したがって、各屈折率に対して、インピーダンスにより測定される容積の関数として光減衰応答をモデリングすることが可能になった。
【0150】
種々のモデルを使用することが可能であった。以下では、問題を解くために選択されたモデルは対数モデルである。次いで、系列iの減衰応答EXTは、
EXT=k.ln(RES+t)+o
によりモデリングされる。式中、kおよびoは、系列のパラメータであり、かつtは、定数であり、この例ではRBC/PLTチャネルで3000であり、これは、モデルkおよびoのあてはめを改良するのに役立つ。ここで、定数tは、使用機械の関数としておよび解析粒子の関数として変化することに気付くはずである。とくに、白血球を解析する場合、さまざまでありうる。
【0151】
経験から、そのような対数モデルは、乳濁液の(容積×減衰)応答間の対応を確立するために使用可能であることが示される。各溶媒の乳濁液は、本発明に係る装置の測定範囲にわたり連続的に分散された容積を有する一群の小滴を生成する。各小滴は、溶媒の性質により明確に規定される屈折率を有する。
【0152】
これは、図9A〜9Fにより示される。図中、各小滴は、小滴の容積Vに対応する横軸値によりかつ小滴の減衰に対応する縦軸値により規定される平面上の点で表され(ここでは、スケールは、チャネル数に関して示される)、また、チャネルの数によっても表される。
【0153】
各測定に対して計算された補間関数は、以下の形式
y=k.ln(x+t)+o
〔式中、iは溶媒の屈折率である〕
でグラフ上に記入される。
【0154】
したがって、逆問題は、対数モデルのパラメータ(すなわちパラメータkおよびo)を決定する際の未知の屈折率で構成される。
得られた実験データは、検討対象の一連の屈折率に対して以下のターゲット値を生成する。
【0155】
【表1】

したがって、図10に示されるアフィン近似によりこれらの係数を屈折率の関数として粗くモデリングすることが可能である。
【0156】
したがって、以下の式が得られる。式中、iは屈折率である。
=a.i+b
=c.i+d
〔式中、a、b、c、およびdは、前記アフィン近似により得られたものである〕
図10では、パラメータは、以下のとおりである。
【0157】
a=78519、b=−106853、c=−624927、およびd=850440
係数のこの線形近似を対数モデルに関連付けることにより、実験的係数に基づいて逆問題を解くことが可能になる。
【0158】
EXT=k.ln(RES+t)+o
=(a.i+b).ln(RES+t)+c.i+d
=(a.ln(RES+t)+c).i+b.ln(RES+t)+d
式中、
i=(EXT−b.ln(RES+t)−d)/(a.ln(RES+t)+c)
したがって、インピーダンスにより測定された所与の容積に対する減衰レベルにより、屈折率を決定することが可能になる。
【0159】
屈折率を決定するこの能力は、実験で使用された乳濁液の屈折率を決定することにより示される。この結果は図11に示される。
以下では、続いて、本発明に係る方法を用いて赤血球と血小板とを分離する方法に関する説明を行う。
【0160】
赤血球(RBCと記される)と血小板(PLTと記される)とのこの分離の原理は、2つの識別基準に依拠する。第1のものは、自動血液分析装置のほとんどの製造業者により使用されている。それは容積である。
【0161】
正常な血液の場合、血小板PLTの平均容積は、6fL〜10fLの範囲内にあり、一方、赤血球は、80fL〜100fLの範囲内にある平均値を有する。抵抗パルスの計測量は容積を表すので、これらの2つの集団の分類が可能になる
第2の基準は、RBC/PLT識別を改良するために使用可能である。これはヘモグロビン濃度である。血小板PLTは、まったく有していないが、これに対して、赤血球は、31g/dL〜35g/dLの範囲内にある平均ヘモグロビン濃度を有する。光学的遮蔽を特徴付ける減衰パルスの計測量は、このヘモグロビン含有量を表す。
【0162】
したがって、マトリックスを隣接多角形に細分するように2D閾値化を用いることによりRBC/PLTマトリックス中のイベントの位置に基づいて分離を行うのが適切であるように思われる。
【0163】
次いで、図12に破線で描かれた閾値を用いることにより各細胞の血球ヘモグロビン量に依存してRBCクラスに識別を追加する。
RES×EXT平面内にRBC/PLTマトリックスの形状を与える集団の配置は、図12に示される。
【0164】
分類アルゴリズムは、二段階、すなわち、
・赤血球と血小板とを分類する段階と、
・赤血球をそのヘモグロビン量に依存してかつ血小板をその密度に依存して細分類する段階と、
で行われる。
【0165】
これらの分類は、ゲート処理もしくはウィンドウ処理を行うことまたはRES×EXTマトリックス、VOL×CHC(血球ヘモグロビン濃度)マトリックス、もしくはVOL×DENS(血小板密度)マトリックスを用いて閾値を選択するによりマニュアル選択を行うことに依拠する同一の原理に基づく。
【0166】
ゲート処理操作について以下で説明する。
最初に、多角形を有限数の線分の形態で基準枠内に形成する。多角形を形成するために、最初の線分を最後の線分に結合させる。
【0167】
次いで、基準枠外に基準点を選択する。
多角形の何本の線分が基準点と試験点とを結ぶ線分と交差するかを数えることにより与点が多角形内に位置するかを判定する試験を行う。
【0168】
この数が奇数である場合にかぎり、点は多角形内に位置する。
基準点から試験点までの線分が多角形の頂点を通過する場合、基準点を移動させる。
その後、2つの線分[P1−P2]および[P3−P4]が次のように交差するかを試験する。
【0169】
最初に、以下の量を計算する。
Xa=X2−X1
Ya=Y2−Y1
Xb=X3−X1
Yb=Y3−Y1
Xc=X3−X4
Yc=Y3−Y4
d=Xa.Yc−Ya.Xc。
d=0の場合、線分は一直線上にある。
【0170】
そのような環境下で、それらが同一の直線(傾き、片寄り)に属する場合かつその線上で線分の一端が他の線分の両端間に位置する場合、その場合のみ線分は交差する。
そうでなければ、以下の計算を行う。
【0171】

s=(Xa.Yb−Ya.Xb)/d
t=(Xb.Yc−Yb.Xc)/d
((s<=1)かつ(t<=1)かつ(s>=0)かつ(t>=0))の場合にかぎり、線分は交差する。
【0172】

図12に示される合成マトリックス上には、異なるタイプの線を引くことにより、いくつかタイプの閾値が表されている。細線の閾値は固定閾値である。それらは、計算アルゴリズムの実施時にデフォルトで設定されたパラメータにより決定される。太線閾値は、分類アルゴリズムにより見いだしうる自動閾値に対応する。
【0173】
以下の表は、RBC/PLT分類アルゴリズムのクラスを与える。
【0174】
【表2】

図13は、分類アルゴリズムのフロー図である。
【0175】
第1の分類工程E0は、各イベントをクラスNIに初期化することに依拠する。
この工程E1は、図14に示されるRES×EXTマトリックスを用いてすべてのイベントを分類する。次いで、本来のRBC/PLT分類の工程E10を開始する。
【0176】
したがって、RBC/PLT分類工程の予備サブ工程E10では、次の集団:RBC(赤血球)、PLT(血小板)、PEC(小細胞要素)、およびSAT(飽和要素)が同定される。
【0177】
第1のゲート処理操作に依拠するこの第1のサブ工程E10では、減衰分離のために原点で傾きおよび片寄りを有するようにすべく、閾値rPLThおよびaPLThが使用される。血小板の分離はrPLThに制限されない。したがって、このゲート処理操作は、図15のマトリックスに依拠する。
【0178】
その後、サブ工程E11では、無減衰要素の抵抗分離の調節が行われる。これは、無減衰の赤血球および血小板の間で良好な分離を得るためである。光学的に見えない血小板は小サイズである。したがって、これは、それを赤血球と区別するために容積情報を利用しないことを正当化する。この選択肢は、ゼロでない減衰を有する血小板を用いて見いだされた閾値からの外挿に依拠するよりも良好であるように思われる。
【0179】
このサブ工程E11では、血小板および赤血球に分類されたイベントのみを考慮に入れる。それらの横座標値H_RESは、ヒストグラムを作成するために評価される。検索は、ヒストグラム中の谷部に関して行われる。谷部が二重赤血球集団を示す場合、谷部の出現回数が大きいので、検索は、他の谷部に関して行われる。血小板と赤血球との間での谷部が見いだされた後、十分に(sufficient)明確に識別できるのであれば、谷部上で閾値rPLTlを再調整する。
【0180】
その後、サブ工程E12では、抵抗分離の調節が行われる。この目的のために、以下の式:
傾き=(aPLTh−aPEC)/(rPLTh−rPEC)
片寄り=aPEC−傾き・rPEC
を用いて減衰分離の原点での傾きおよび片寄りを事前に計算する。
【0181】
サブ工程E11で閾値rPLThを調整した後に閾値aPLThを再計算する場合、これは必要である。
この時点では、血小板に分類されたイベントのみを考慮する。それらの横座標値H_RESは、ヒストグラムの生成のために使用される。検索は、その谷部に関して行われる。谷部を十分に明確に識別できるのであれば、その上で閾値rPLTlを再調整する。このサブ工程は、減衰分離により赤血球雲が切り離された状況で可能である。
【0182】
谷部を見いだせない場合または谷部が十分に明瞭ではない場合、rPLThの値は統計的に計算される。これは、経験的には、減衰分離により血小板のみが単離されたことを意味する。平均μおよび標準偏差σは、この雲から推定される。これは図16Aおよび16Bに示される。
【0183】
次いで、
rPLTh=μ+rFACTOR・σ
と記述することが可能であり、これから、
aPLTh=傾き・rPLTh+片寄り
を導出することが可能である。
【0184】
減衰分離を調整するサブ工程E13では、減衰がゼロでない血小板および赤血球に分類されたイベントのみを考慮する。
したがって、図17A〜17Cに示されるように、(2048,2048)を中心として、
θ=270−atan(傾き)×360/2π ここで 傾き=(aPLTh−aPEC)/(rPLTh−rPEC)
の角度だけ回転を行って、新しい軸:
=cosθ(X−2048)+sinθ(Y−2048)+2048
=−sinθ(X−2048)+cosθ(Y−2048)+2048
を与える。
【0185】
イベントの横座標Xは、ヒストグラムを作成するために評価される。検索は、その谷
部に関して行われる。谷部を十分に識別できるのであれば、それらの関数として閾値aPECおよびaPLTlを再計算し、そうでなければ、変更せずそのままにする。
【0186】
次いで、サブ工程E14では、再調整された閾値を用いてRES×EXTマトリックス上でRBC/PLT分類を行う。
次いで、RBCおよびPLTを細分類する工程E2を行う。
【0187】
この工程E2は、赤血球および血小板のサブ集団を分類することに依拠する。
第1の工程E20では、各粒子の屈折率は以下のように計算される。
IDX={H_ABS−b.ln(H_RES+3000)−d}/{a.ln(H_RES+3000)+c}
〔式中、A、B、C、D、およびTは、実験条件および測定サイクルに依存する係数である〕
その後、赤血球の低色素性集団、高色素性集団、および正色素性集団を分離できるようにするために、サブ工程E21でそれらの血球ヘモグロビン濃度(CHC)を計算する必要がある。したがって、イベントの分類に基づいて、以下の式:
HGBc=hgbcSlope*IDX+hgbcOffset
を用いて、屈折率から血球ヘモグロビン濃度への変換を赤血球に適用する。
【0188】
したがって、図18は、血球ヘモグロビン濃度を屈折率からどのように計算するかを示している。
サブ工程E22では、VOL×CHCマトリックスに基づいて赤血球を容積および血球ヘモグロビン濃度により細分類する。これにより、低色素性集団と高色素性集団と正色素性集団との識別および小赤血球集団と大赤血球集団との識別が可能になる。赤血球の9つのサブ集団は、このようにして得られ、図19のように示されうる。
【0189】
容積が閾値volMic未満であれば、小赤血球であり、volMac超であれば、大赤血球であり、そうでなければ、正常であるとみなされる。
その後、ヘモグロビン濃度が閾値CHCL未満であれば、低色素性であり、ヘモグロビン濃度が閾値CHCH超であれば、高色素性であり、そうでなければ、正常であるとみなされる。
【0190】
さらにまた、血小板密度は血小板活性化に関する情報を提供するので、サブ工程E23では血小板の密度もまた併行して計算される。したがって、同様に、そのように分類されたイベントに対して他のアフィン変換により血小板密度を評価することが可能であり、容積はインピーダンス測定からわかるので、乾燥重量:
PLT_COMPO=DENS=compoSlope*IDX+compoOffset
を決定することが可能である。
【0191】
その後、サブ工程E24では、血小板を容積および密度により細分類する。
活性化血小板、小血小板、および巨大血小板を識別するために、図20に示されるVOL×DENSマトリックスから血小板を細分類する。これにより、図20からわかるように血小板の4つのサブ集団が生成される。
【0192】
容積が20fL未満であれば、小血小板であり、20fL超であれば、巨大血小板である。
その後、密度が閾値PLTa未満であれば、活性化血小板である。
【0193】
本発明によりRES×EXTマトリックスで可能になる分離は、小赤血球症で非常に効
果的であることが判明している。赤血球の容積はより小さいので、最も大きい血小板の容積に近くなる傾向がある。したがって、抵抗測定のみを行って特定の方法で最大血小板と最小赤血球との分離を確立するのは困難である。したがって、本発明に係る分離は、抵抗単独での分離と比較して利点を提供することがわかる。
【0194】
さらにまた、小赤血球のヘモグロビン含有量はそのサイズに起因して当然ながら少ないので、識別のみに基づいて血小板を小赤血球から分離するのは困難である。しかしながら、これらの2つ測定を組み合わせることにより、適正な分離を達成することが十分可能になる。
【0195】
図21Aおよび21Bは、小赤血球症の場合の分類の比較を示している。
巨大血小板の場合、この分離は、まったく同様に顕著であることが判明している。そのような環境下では、血小板の26%は、抵抗チャンネル分離を用いた場合に赤血球として同定される巨大血小板である。
【0196】
図22Aおよび22Bは、巨大血小板の場合の分類を比較する。
本発明を用いて実現された分類の品質は、臨床的に興味深く、β−サラセミアの診断を可能にする。
【0197】
サラセミアは、低色素性小赤血球貧血により特徴付けられることが知られている。小赤血球のパーセントと低色素性細胞のパーセントとの比は、鉄欠乏性貧血とβ−サラセミアとを識別するための信頼性がある手段であることが示されている。
【0198】
平均血小板密度(MPD)は、活性化された血小板の比率の決定ひいてはおそらく血栓症の危険性の判定に役立つので、本発明はまた、血小板活性化の利用を可能にする。
最後に、本発明は、血小板の定性的異常とくに巨大血小板の存在の検出を可能にする。
【0199】
続いて、本発明を用いて白血球をどのように分類するかを簡単に説明する。
図23は、ゲート処理を用いて白血球を分析し集団を分離するためのRES×EXTマトリックスを示している。
【0200】
本発明では、2D統計量は、線形回帰を見いだすために、検討対象の点に対してRES×EXT平面内またはVOL×IDX平面内で計算される。
傾向線の傾きを求め、この線が水平になるように平面を回転する。
【0201】
次いで、一次元(1D)統計量を求め、標準偏差軸を与える2つのパラメータXcおよびYcを介してXsおよびYsの標準偏差によりそれぞれ楕円の長軸および短軸を与える。
【0202】
長軸が回転後のXcとXsの標準偏差との積に等しくかつ短軸が回転後のYcとYsの標準偏差との積に等しい楕円(たとえば、Xc、Yc)が得られる。実際には、これら因子は、検討対象の集団でのイベント数の関数としておよび集団の性質の関数として自動調整される。このタイプの楕円は、有利には、図24に示されるようにRES×EXTマトリックス上またはVOL×IDXマトリックス上に示される。
【0203】
この図では、好中球(NEU)は、2.5の比の長軸および短軸を有する楕円で囲まれる。リンパ球は、30件までのイベントでは2.0、30〜100件のイベントでは2.25、100件超のイベントでは2.5の比の長軸および短軸を有する楕円で囲まれる。
【0204】
図25A、25B、および25Cは、正常血液および2種の病理学的血液のそれぞれに
対して楕円が描かれたVOL×IDXマトリックスを示している。
したがって、図25Bでは、未成熟顆粒状好中球の存在および核異常または脱顆粒の形態の存在を観測することが可能である。また、好中球の平均高さは、正常血で観測されるものよりも低く、1391の代わりに1384であることもわかる。
【0205】
図25Cでは、リンパ球の位置は、正常血のものよりも小さく、1383の代わりに1378であることがわかる。
図26A、26B、および26Cは、他の調製物および仏国特許第2791138号明細書に記載されるような試薬を用いて得られた好塩基球の分類を示している。
【0206】
図26Aは、好塩基球が楕円で囲まれているRES×EXT平面内での分類を示している。
図26Bは、同一の血液をVOL−IDX平面内で示している。好塩基球に対応する点の雲は楕円で囲まれている。
【0207】
図26Cは、内部脂質の存在に起因する妨害の結果を示している。本発明に係る実験条件下で白血球に対する高値である約1.47の値のピークを有する屈折率分布が観測される。
【0208】
本発明によれば、1.46の屈折率を超える妨害の識別が可能になる。この高屈折率部分には、乳濁液に特有な一連容積が存在する。そのことから、サンプルを解析するうえで問題があることを示すことが可能になる。
【0209】
最後に、本発明の原理に基づいて種々の実現形態を実施しうることに気付くはずである。
たとえば、粒子の屈折度を測定するための本発明に係る方法は、図27に示されるように蛍光の測定と組み合わせることが可能である。そのような構成では、粒子の屈折度の測定方法(電気的方法による容積測定および本発明に係る光減衰測定に基づく)は、蛍光測定に関連付けられる。この測定は、「Fluowhite」またはFluored」試薬(仏国特許第2821428号明細書および仏国特許第2759166号明細書に記載)に含有されるような核酸色素を用いることにより粒子ごとに行うことが可能である。
【0210】
それらの特許では、核酸を標識するための手段としてチアゾールオレンジが挙げられている。したがって、図27の装置では、測定チャンバーM内の点Iで図27に示される平面から通り過ぎる粒子のストリームに照射するように、LEDなど第1の光源S1が配置される。S1およびS2から出射されたビームがそれぞれ測定チャンバーMのそれぞれの面を通って現れて点Iで交わるように、第2の測定ビーム(このビームは、第2の光源S2から出射される)もまた、点Iに集束される。
【0211】
例として、この照明配置は、仏国特許出願第08/54229号明細書に本出願人により記載されている。第1の光ビームは、本特許出願に記載の照射特性を呈する光ビーム(すなわち、アスペクト比すなわちa/bが1:3に等しくなるように、継続してa=30μmおよびb=90μmに等しい寸法でa×bの矩形断面を有する光ビーム)を形成するように、L1タイプの第1の光学的組合せにより形作られることに気付くはずである。照射波長は、δλ=30nmのスペクトル幅でλ=650nmを中心とする。これによりほぼλ/δλ≒15μmのコヒーレンス長Lcの系が得られる。開口数は、NA1=NA2=0.3である。この実施例では、488nmの波長を中心とする実質的に単色の光を発する半導体レーザダイオードにより構成された第2の光源S2に注目されたい。続いて、測定チャンバーに結合されてそのような照射条件下で動作する検出系の構成について説明する。
【0212】
検出系は、より低いコヒーレンスを有する光源すなわちS1の方向で測定チャンバーに結合される。したがって、これは、より大きいコヒーレンスを有する光源すなわちS2に対して90度で結合される。微粒子と照射ビームとの間の相互作用から生じた光は、Iに焦点を有する単一受信光学系(L2として参照される)により捕集される。すなわち、点Iからの光ビームは、光学系F2により平行にされる。
【0213】
光ビームは、第1に減衰測定が行われる光および第2に蛍光に起因する光を識別するためにこの特定の構成で一群のフィルターF1、F2、およびF3により解析される種々のスペクトル成分を有する。
【0214】
特定の状況では、核酸は、仏国特許第2759166号明細書に記載されるようなチアゾールオレンジ分子により事前に標識され、フィルターF1は、入射ビームに対して90度の方向に580nm未満のすべてのスペクトル成分を反射しかつ580nm超のスペクトル成分を透過するダイクロイック型フィルターである。
【0215】
フィルターF2およびF3は、検出器D1およびD2で要求されないスペクトル成分の排除を最適化するのに役立つ帯域通過型フィルターである。特定的には、検出器D1は、一定のスペクトルに制限され、50nmの幅を有し、かつ530nmを中心とするチアゾールオレンジの蛍光のスペクトル成分のみに感度を有するものでなければならない。
【0216】
D1では、他の波長、とくに、受信光学系L2の瞳孔に完全照射されるS1光源から出射された波長を10超で除去しなければならない。
F1、F2、およびF3は、好ましくは、マルチ誘電体フィルターである。光源S1の定義を考慮すれば、フィルターF2は、当然ながら650nmの波長を中心として約50nmの通過帯域を有する。したがって、この特定の構成では、各粒子で3つの物理的測定、すなわち、粒子の容積に対応する電気的測定、粒子の屈折度に関連した減衰測定、さらには、解析粒子の核酸含有量に関連した蛍光測定を行うことが可能である。例として、この構成は、網状赤血球として知られる未成熟赤血球の屈折度の測定にとくに有利である。
【0217】
蛍光値を用いれば、単に閾値化を用いることにより、赤血球/血小板分離によりすでに同定された赤血球を網状赤血球から分離することが可能になる。蛍光値が閾値を超えた場合、図28に示されるように、粒子は、網状赤血球として再分類される。
【0218】
赤血球と網状赤血球との間の分離閾値は、赤血球としてすでに同定された集団を統計解析することにより自動調整可能である。これを行うために、蛍光ヒストグラムが作成され、これから、fSigmaと記される標準偏差およびfModeと記される濃度最大値が求められる。
【0219】
次いで、以下が決定される。
分離閾値=fMode+fF1SigmaCoef*fSigma=fF1Offset
〔式中、fF1SigmaCoefおよびfF1Offsetは、調整可能なパラメータである〕
次いで、それらの屈折率さらにはそれらの血球ヘモグロビン量を決定するために、赤血球集団の場合と同様に分類を行う。
【0220】
次いで、網状赤血球のVOL×CHCrマトリックスで表示を行うことが可能であり、したがって、臨床パラメータCHr=MRV×E(CHCr)を利用することが可能である(図29B)。MRVは、平均網状赤血球容積であり、E(CHCr)は、CHCr分
布の期待値である。最後に、赤色または近赤外で減衰測定を行う必要があるので、蛍光用の測定帯域を広げることが可能である。蛍光色素の適切な選択を行って、細胞膜、ミトコンドリア、および細胞質などの種々の特定の区画をどのように標識するかは、当業者であればわかる。
【0221】
図30は、EXT×FLUO平面で、蛍光を用いることによりさまざまな成熟度レベルを有する集団を分離することが可能であることを示している。
蛍光値を用いれば、単に閾値化を用いることにより、図23のマトリックスによりすでに同定された顆粒球と未熟顆粒球とを識別することが可能になる。蛍光値が閾値を超えた場合、図30に示されるように、粒子は、未熟顆粒球として再分類される。骨髄細胞系の病変(急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性症候群(MPS)、骨髄異形成症候群(MDS))の場合、未熟顆粒球の存在は、好中球の屈折率測定を歪める可能性があるが、蛍光測定を用いれば、好中球集団を単独でより良好に同定することが可能になり、したがって、屈折率測定をその集団単独で行うことを保証することが可能になる。
【0222】
蛍光値は、単に閾値化を用いることにより、図23のマトリックスですでに同定されたリンパ球および単球を高RNA含量(HRC)細胞または未成熟細胞から分離するのに役立つ。蛍光値が閾値を超えた場合、図30に示されるように、細胞は、HRC細胞として再分類される。リンパ関連病変(急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(chronic lympocytic leukemia)(CLL))の場合、蛍光測定を用いれば、正常リンパ球集団を単独でより良好に同定することが可能になり、したがって、屈折率測定をその集団単独で行うことを保証することが可能になる。
【0223】
他のタイプの標識は、蛍光性化合物に結合されたモノクローナル抗体の使用に依拠しうる。蛍光性化合物から放出される多重蛍光は、各チャネルが各蛍光性化合物の蛍光の強度に関する情報を提供するマルチチャネル検出器により解析可能である。
そのような蛍光を処理することにより特定の細胞集団をより良好に同定しうることは、当業者であればわかる。そのような多重蛍光測定は、実効屈折率を表現型と一緒に測定可能な白血球の場合、たとえば、仏国特許第2895087号明細書の方法を用いてCD45、CD38、およびCD138表現型により検出される形質細胞の場合、とくに有利であることが見いだされる可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された中心波長で減衰条件下で使用される、短いコヒーレンス時間、コヒーレンス長Lc<100μmの光源を用いて、流体中に存在する少なくとも2つの粒子集団の分類および屈折度の流動測定を行う方法であって、以下の工程、すなわち、
・前記光源を用いて、前記選択された中心波長で検討対象の粒子に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された1°〜60°の範囲内にある開口角を有し、かつa×b×cの大きさの矩体容積内で10%よりも良好な照明均一性を呈する、収束照射ビームを形成する工程であって、ここで、a×bは、4未満のアスペクト比a/bを有するビームの矩形断面であり、かつcは、測定点を中心とする距離範囲として規定される被写界深度であり、それに対する出力は、10%以下の変動であり、その値は、約500μm±250μmに位置するものとする、工程と、
・粒子を有する流体が測定オリフィスを貫流するようにする工程と、
・前記粒子が前記測定オリフィスを通過する際にインピーダンス振動(RES)を測定する工程と、
・前記粒子を有する流体が前記測定オリフィスから出口に配置されたビームが照射される測定窓に流入するようにする工程と、
・前記粒子が前記測定窓を通過する際に前記ビームの軸上で減衰(EXT)を測定する工程であって、ここで、前記測定は、検討対象の粒子集団に対して予想される容積範囲および屈折率範囲の関数として選択された1°〜60°の範囲内にある開口角の受信ビームを有する装置または検出器を利用して行われるものとする、工程と、
・RESおよびEXTのデータを併合してそれらからイベントを生成する工程と、
・各イベントに対する相対屈折率IDXを評価する工程と、
・RES、EXT、およびIDXから選択される少なくとも1つのパラメータを用いてイベントのすべてを分類する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記収束照射ビームが、10°〜60°の範囲内にある開口角を呈することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記相対屈折率が、以下の形式の式:
【数1】

〔式中、A、B、C、D、およびTは、測定サイクルに依存する係数である〕
を用いて計算されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
解析される前記粒子が生物学的流体中の細胞であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
粒子屈折度測定に使用される波長が、0.6μmを超える赤色および近赤外に位置することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
イベントの分類工程が、血小板の属するゾーンを規定するデフォルト閾値(デフォルトの値を有しかつ自動調整可能な閾値)の関数として赤血球と血小板とを分離する工程を含んで、600nm〜800nmの範囲内にある波長および0.2〜0.6の範囲内にある開口数NA1=NA2を用いることにより赤血球と血小板とを分離することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
イベントの分類工程が、遭遇した粒子のすべてから作成されるヒストグラム中の谷部を決定することにより、減衰が測定できなかった粒子間の抵抗分離閾値を調整するサブ工程を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
イベントの分類工程が、インピーダンスおよび減衰の測定の関数であるアフィン直線により規定される分離閾値下で遭遇した粒子について、統計パラメータ、平均値、および標準偏差から計算される抵抗分離閾値を調整するサブ工程を含むことを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
イベントの分類工程が、分離線を垂直に配置するようにインピーダンス/減衰平面全体を回転した後、前記分離線の両側に位置するイベントの横軸点から作成されるヒストグラム中の谷部を決定することにより、インピーダンスおよび減衰の測定(RES、EXT)の関数であるアフィン直線により規定される閾値を調整するサブ工程を含むことを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
屈折率IDXの関数であるアフィン表現を利用して赤血球集団に分類された粒子の血球ヘモグロビン濃度を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
低色素性、高色素性、および正色素性の赤血球集団、ならびに小赤血球、大赤血球、および正赤血球の赤血球集団を分類する細分類工程を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
屈折率の関数であるアフィン表現を用いて血小板集団に分類された粒子の密度を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
密度とインピーダンス測定により知られた容積とから血小板の乾燥重量を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
正常血小板、活性化血小板、微小血小板、および巨大血小板を分類する細分類工程を含むことを特徴とする、請求項6〜9および12〜13のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項15】
イベントの分類工程が、リンパ球、単球、顆粒球、好中球、および好酸性顆粒球により構成される白血球集団を分離し、以下の工程、すなわち、
a)第1の2D閾値化サブ工程を用いて、デブリ、血小板凝集体、赤芽球、アーチファクトなどの存在に対応するバックグラウンドノイズを分離する工程と、
b)以下のサブ工程、すなわち、
i)リンパ球と好中性顆粒球との間の閾値を自動調整するサブ工程と、
ii)好中性顆粒と好酸性顆粒球との間の閾値を自動調整するサブ工程と、
iii)単球と好中性顆粒球との間の閾値を自動調整するサブ工程と、
を含む、逐次的2D閾値化サブ工程を用いて種々の集団およびそれらの非定型または未成熟のサブ集団を分離する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
計算された相対屈折率の関数であるアフィン表現を利用してリンパ球に分類された粒子の活性化指数を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
容積および光減衰の2D分布を解析することによりかつリンパ球の集団を取り囲む統計楕円(この楕円は、その中心位置、その長軸、その短軸、およびその角度により規定される
)を決定することによりリンパ球に分類された粒子の活性化指数を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
計算された相対屈折率IDXの関数であるアフィン表現を利用して好中性顆粒球に分類された粒子の分葉指数/粒状性指数を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
インピーダンスおよび減衰の測定または容積および屈折率の測定(REX×EXTまたはVOL×IDX)の2D分布を解析することによりかつ好中性顆粒球の集団を取り囲む統計楕円(この楕円は、その中心位置、その長軸、その短軸、およびその角度により規定される)を決定することにより好中性顆粒球に分類された粒子の分葉指数/粒状性指数を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
イベントの分類工程が、好塩基性顆粒球を他の白血球集団から分離し、以下の工程、すなわち、
a)2D閾値化を用いて、赤血球デブリ、血小板凝集体、赤芽球、アーチファクトなどの存在に対応するバックグラウンドノイズを分離する工程と、
b)好塩基性顆粒球と他の白血球との間の閾値の自動調整を含む、2D閾値化により好塩基性顆粒球を他の白血球から分離する工程と、
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
異常な相対屈折率を呈しかつ実際には脂肪、結晶、気泡などの存在に起因する妨害に対応するイベントの検出工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
異常な相対屈折率および乳濁液に特有な容積分布を有するイベントの検出工程を含むことを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
蛍光現象を引き起こすように選択された波長の光を測定空間に照射する工程と、発生した蛍光を測定する工程と、蛍光分離閾値を調整した後でイベントを分類する工程と、を含むことを特徴とする、請求項1〜22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
赤血球として同定されたイベントの分類工程が、蛍光測定に基づくかつ赤血球成熟度限界に対応する閾値(この閾値は、自動調整に好適なデフォルト値を有する)の関数として赤血球を網状赤血球から分離することを特徴とする、請求項6または23に記載の方法。
【請求項25】
屈折率の関数であるアフィン表現を用いることにより網状赤血球集団に分類された粒子の血球ヘモグロビン濃度を計算する工程を含むことを特徴とする、請求項6〜9および24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
リンパ球または単球として同定されたイベントの分類工程が、単核白血球の成熟度限界に対応する蛍光測定の閾値(この閾値は、デフォルトの値を有しかつ自動調整に好適である)の関数として高含有量の核酸HRCを有する他の粒子からリンパ球または単球を分離することを特徴とする、請求項15または23に記載の方法。
【請求項27】
好中性または好酸性として同定されたイベントの分類工程が、顆粒球成熟度限界に対応する蛍光測定閾値(この閾値は、デフォルトの値を有しかつ自動調整に好適である)の関数として顆粒球と未熟顆粒球とを分離することを特徴とする、請求項18または23に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図25C】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図27】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図11】
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【図13】
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【図17】
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【図28】
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【公表番号】特表2013−519872(P2013−519872A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552443(P2012−552443)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【国際出願番号】PCT/FR2011/050202
【国際公開番号】WO2011/098707
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(508000537)
【氏名又は名称原語表記】HORIBA ABX SAS
【Fターム(参考)】