説明

流体保持体成形装置

【課題】肉厚が薄くても、液漏れが起き難く、軽量で断熱特性に優れた容器を提供することである。
【解決手段】 非結晶性樹脂を用いた発泡樹脂製の流体保持体を成形する装置であって、冷却用金型と、前記冷却用金型の内側に存在する所定形状の流体保持体材料中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸手段と、前記含浸手段によって超臨界状態の流体を含浸した流体保持体材料を発泡させる発泡手段と、前記冷却用金型の内・外から冷却する冷却手段とを具備する流体保持体の成形装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液体などの流体を保持する樹脂製の容器や管あるいはフィルターと言ったような流体保持体の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製の容器は従来から周知であり、そしてこのような容器が発泡樹脂で構成されることも周知の通りである。
【0003】
ところで、発泡樹脂で容器を構成した場合、その肉厚が薄い場合には、液漏れが起きてしまい、容器としての機能が十分には発揮されない。しかも、機械的強度の低下が大きい。この為、発泡樹脂で容器を構成しようとすると、その肉厚をある程度厚くせざるを得ない。
【0004】
しかしながら、そもそも、容器を発泡樹脂材で構成しようとする目的は、軽量化に有る。にもかかわらず、肉厚を厚くしなければならないのでは、結局の処、軽量化が十分には図れない。
【0005】
このように、従来の発泡剤を用いた発泡樹脂で容器を構成した場合、その素材上の特性から製品の性能には限界が有った。
【0006】
ところで、発泡樹脂製容器の発泡剤として超臨界状態の流体を用いることが提案されている(特許文献1,2,3)。
【特許文献1】特許第2625576号
【特許文献2】特開2000−226467号
【特許文献3】特開2002−59449号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記提案の技術が実施されても、十分な発泡特性のものが得られていない。すなわち、発泡倍率は高く、しかしながら、その気泡の径は小さな、つまり小さな気泡径の気泡が数多く出来ている特徴の発泡樹脂製のものが得られていなかった。
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、気泡径が小さな気泡が数多く出来ている発泡樹脂体を提供することである。例えば、肉厚が薄くても、液漏れが起き難く、軽量で、しかも機械的特性に優れた容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発泡特性についての研究が本発明者によって鋭意押し進められて行った。
【0010】
その結果、次のようなことが判って来た。
【0011】
先ず、発泡樹脂の特性は、単位体積当たりの気泡の基になる核の数(核数)によって決定される。そして、核数が多いと言うことは、気泡数が多くなることである。従って、核数が多いと、同じ発泡倍率のものを得ようとした場合、一つ一つの気泡径は小さくて済むことになる。そして、気泡径を微細にした場合、物理的特性の向上が期待できる。例えば、気泡径が小さければ、気泡はそれだけ独立気泡であることが予想でき、液漏れの恐れはそれだけ小さくなる。かつ、機械的強度も大きなことが予想できる。又、気泡の数が多くなって発泡倍率が高くなることは、それだけ密度が小さく、軽量なことを予想できる。
【0012】
ところで、発泡特性に大きな影響を与える因子である核数は、発泡剤である超臨界状態の流体(超臨界状態の液体・気体(二酸化炭素(二酸化炭素は31.1℃を越える温度及び7.43MPaを越える圧力で超臨界状態のものとなる。)、窒素、酸素、水、エタン等))の含浸量が多い程、多くなる。超臨界状態の流体の含浸量が少ない程、核数は少ない。
【0013】
そして、超臨界状態の流体の含浸量は、含浸時の温度が低いほど多い。含浸時の温度が高い場合には少ない。しかしながら、超臨界状態の流体の含浸速度は、含浸時の温度が高い方が速い。含浸時の温度が低い場合には、含浸速度は遅い。従って、含浸処理を短時間で済ませようとすると、含浸時の温度は高い方が好ましい。又、超臨界状態の流体の含浸量は、含浸時の圧力が高いほど多い。
【0014】
又、超臨界状態の流体を含浸させる為に印加していた圧力を開放する減圧時の温度は低い程、核数が多くなる。減圧時の温度が高い程、核数は少ない。又、減圧速度が速い(減圧時間が短い)程、核数は多くなる。減圧速度が遅い程、核数は少ない。尚、減圧時の温度と減圧速度とを比べると、温度の因子の方が影響は大きなものであった。例えば、X℃で減圧させる場合と、(X+10)℃で減圧させる場合とを比べると、同じ核数のものを得ようとすると、10℃高い場合は減圧速度を一桁以上も速くしなければならないものであった。
【0015】
従って、核数を多くすることのみを鑑みたならば、低い温度で超臨界状態の流体を含浸させ、その後で急速減圧させることが好ましいことになる。
【0016】
しかしながら、気泡の成長を考えると、温度は低いことが絶対的なものでは無く、核から気泡への成長に相応しい温度であることも大事なことである。すなわち、気泡成長時は気泡成長が始まる温度より高い方が好ましい。そして、気泡成長が効果的に始まる温度として、非結晶性樹脂の場合には該非結晶性樹脂のガラス転移温度以上の温度が、又、結晶性樹脂の場合には該結晶性樹脂の結晶化温度以上の温度が見出された。
【0017】
このような知見に基づいて本発明が達成されたものである。
【0018】
すなわち、前記の課題は、
非結晶性樹脂を用いた発泡樹脂製の流体保持体を成形する装置であって、
冷却用金型と、
前記冷却用金型の内側に存在する所定形状の流体保持体材料中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸手段と、
前記含浸手段によって超臨界状態の流体を含浸した流体保持体材料を発泡させる発泡手段と、
前記冷却用金型の内・外から冷却する冷却手段
とを具備することを特徴とする流体保持体の成形装置によって解決される。
【0019】
又、非結晶性樹脂による流体保持体の製品形状が保持可能な温度であって、かつ、後述の発泡工程における温度よりも高い温度(T)条件下で、所定形状の非結晶性樹脂中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程における温度よりも低い温度であって、かつ、非結晶性樹脂のガラス転移温度以上の温度(T)条件下において、発泡させる発泡工程とを具備し、前記含浸工程時から発泡工程時における温度低下は前記冷却用金型の内外を冷却することにより流体保持体が成形されるに際して用いられる装置であって、
冷却用金型と、
前記冷却用金型の内側に存在する所定形状の流体保持体材料中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸手段と、
前記含浸手段によって超臨界状態の流体を含浸した流体保持体材料を発泡させる発泡手段と、
前記冷却用金型の内・外から冷却する冷却手段
とを具備することを特徴とする流体保持体の成形装置によって解決される。
【0020】
又、上記の流体保持体の成形装置であって、冷却用金型の外側に加熱手段が更に設けられてなることを特徴とする流体保持体の成形装置によって解決される。
【0021】
又、上記の流体保持体の成形装置であって、超臨界状態の流体を外部に放出する減圧手段が更に設けられてなることを特徴とする流体保持体の成形装置によって解決される。
【0022】
そして、上記成形装置を用いることによって、次のような成形が行なわれる。
【0023】
すなわち、非結晶性樹脂を用いた発泡樹脂製の流体保持体を成形する方法であって、
前記非結晶性樹脂による流体保持体の製品形状が保持可能な温度であって、かつ、後述の発泡工程における温度よりも高い温度(T)条件下で、所定形状の非結晶性樹脂中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程と、
前記含浸工程における温度よりも低い温度であって、かつ、非結晶性樹脂のガラス転移温度以上の温度(T)条件下において、発泡させる発泡工程
とを具備する流体保持体の成形方法が実施される。
【0024】
すなわち、樹脂による流体保持体の製品形状が保持可能な溶融温度に近い高温度(T)で発泡剤(超臨界状態の流体)を含浸させることにより、短時間での高速含浸が可能となり、結果的に核数の増大が図れる。すなわち、大量生産の観点からすると、含浸温度が比較的高いことによるデメリットよりも高速含浸によるメリットの方が大きいのである。尚、含浸温度が比較的高くなることによるデメリットに対しては、含浸圧力をより高くすることでも対応できる。
【0025】
上記樹脂中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程は、超臨界状態の流体を加圧することにより実施される。
【0026】
そして、前記温度Tより低く、かつ、ガラス転移温度(又は結晶化温度)以上の温度Tで発泡させることにより、気泡は効果的に成長する。
【0027】
この発泡は、樹脂中に超臨界状態の流体を含浸させる為に印加されていた圧力を開放(減圧)することで行われる。そして、この減圧時の温度は低い方が気泡の基になる核の数は多いものとなる。従って、本発明にあっては、含浸時の温度より降下せしめ、つまり含浸温度Tよりも低い温度に降下させて減圧することにした。しかしながら、核生成後の次の気泡成長を鑑み、ガラス転移温度(結晶化温度)以上の温度Tで行うことにした。これにより、核数の増加が期待できると共に気泡成長も期待できる。
【0028】
そして、溶融温度近傍の比較的高い温度で発泡剤(超臨界状態の流体)を含浸させ、次に温度を降下(但し、ガラス転移温度(又は結晶化温度)以上の温度に降下)させて減圧・発泡させる本発明の方法によれば、例えば射出成形機による成形後に、該成形品を一旦室温近くの温度まで下げ、このような低温にて発泡剤(超臨界状態の流体)を含浸させ、そしてガラス転移温度(又は結晶化温度)以上の高温にして発泡させる場合に比べて、遥かに小さな気泡径の気泡が数多く出来ているものであった。
【0029】
超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程における流体保持体の製品形状が保持可能な温度とは、対象となっている樹脂の溶融温度より低い温度である。すなわち、本発明にあっては、超臨界状態の流体の含浸は、例えば容器を形成する樹脂が溶融状態では行われない。
【0030】
上記においては、減圧によって気泡が成長する過程までを説明した。しかしながら、気泡成長を所望の時点で積極的に終了させる気泡成長停止工程を持っていることは好ましいことである。この気泡成長停止は冷却によって行える。特に、ガラス転移温度(又は結晶化温度)未満の温度に降下させることによって、気泡成長は、事実上、終了する。
【0031】
そして、本発明の装置は、冷却用金型の内外を冷却できるようにしているので、超臨界状態の流体を含浸させた後の急速冷却が可能になる。従って、低温での急速減圧が可能になり、それだけ核数の増加が図れ、気泡径が小さな気泡が数多く出来ている発泡樹脂体が得られる。
【0032】
上記装置にあっては、冷却用金型の外側に加熱手段(加熱用金型)が更に設けられていることが好ましい。これによって、加熱に要する熱ロスを少なくでき、即ち、減圧・発泡後に冷却用金型内に新しい流体保持体を供給して加熱する工程をスムーズに行わせることが可能になる。
【0033】
又、上記装置にあっては、超臨界状態の流体を外部に放出する減圧手段が更に設けられている。
【0034】
上記成形方法の実施、又は上記成形装置を用いての実施により、本発明が目的とする気泡径が小さな、例えば0.1〜200μm(特に、0.1μm以上。20μm以下。)の独立気泡が数多く、例えば1.0×10〜1.0×1016個/cm(特に、1.0×10個/cm以上。1.0×1015個/cm以下。)出来ている発泡樹脂製の流体保持体が得られる。
【発明の効果】
【0035】
微細な気泡が数多く出来ている発泡樹脂製の流体保持体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明は発泡樹脂製の流体保持体を成形する装置である。特に、非結晶性樹脂を用いた発泡樹脂製の流体保持体を成形する装置である。そして、冷却用金型と、前記冷却用金型の内側に存在する所定形状の流体保持体材料中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸手段と、前記含浸手段によって超臨界状態の流体を含浸した流体保持体材料を発泡させる発泡手段と、前記冷却用金型の内・外から冷却する冷却手段とを具備する。更に、好ましくは、冷却用金型の外側に加熱手段(加熱用金型)が設けられる。又、好ましくは、超臨界状態の流体を外部に放出する減圧手段が設けられる。
【0037】
上記成形装置を用いて次のような成形が行なわれる。例えば、非結晶性樹脂(又は結晶性樹脂)を用いた発泡樹脂製の流体保持体を成形する方法であって、前記非結晶性樹脂(又は結晶性樹脂)による流体保持体の製品形状が保持可能な温度であって、かつ、後述の発泡工程における温度よりも高い温度(T)条件下で、所定形状の非結晶性樹脂(又は結晶性樹脂)中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程における温度よりも低い温度であって、かつ、非結晶性樹脂のガラス転移温度(又は結晶性樹脂の結晶化温度)以上の温度(T)条件下において、発泡させる発泡工程とを具備する。上記樹脂中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程は、超臨界状態の流体を加圧(例えば、10〜30MPa。特に、15MPa以上。25MPa以下。)することにより実施される。上記発泡は、樹脂中に超臨界状態の流体を含浸させる為に印加されていた圧力を開放(減圧)することで行われる。この際の減圧速度は、好ましくは0.1〜8MPa/sである。特に、1MPa/s以上である。そして、6MPa/s以下である。又、上記TからTに温度を降下させる降温速度は、例えば0.1〜5℃/sである。特に、0.5℃/s以上である。そして、3℃/s以下である。上記超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程における流体保持体の製品形状が保持可能な温度とは、対象となっている樹脂の溶融温度より低い温度である。又、本発明にあっては、気泡成長を所望の時点で積極的に終了させる気泡成長停止工程を更に持っている。尚、この気泡成長停止は冷却によって行われる。特に、ガラス転移温度(又は結晶化温度)未満の温度に降下させることによって、気泡成長は、事実上、終了する。
【0038】
本発明になる流体保持体は上記成形装置を用いての実施により得られたものである。特に、0.1〜200μm(特に、0.1μm以上。20μm以下。更には、15μm以下。)の気泡径の独立気泡が、1.0×10〜1.0×1016個/cm(特に、1.0×10個/cm以上。1.0×1015個/cm以下。更には1.0×1011個/cm以下。)出来ているものである。
【0039】
尚、本明細書において、「超臨界状態の流体」とは、物質に固有な気体−液体−固体の状態のうち、気体−液体間には臨界点が存在し、臨界点以上の温度・圧力にすると凝縮が起きない高密度な流体相となり、このような状態で存するものを言う。又、ガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)や溶融温度(Tm)は、各々、超臨界状態の流体が含浸された状態でのガラス転移温度(Tg)、結晶化温度(Tc)や溶融温度(Tm)である。
【0040】
図1は本発明になる装置の概略断面図である。
【0041】
図1中、1は金型である。この金型1は、加熱用金型1aと冷却用金型1bとからなる二重構造の金型である。尚、冷却用金型1bの外側に加熱用金型1aが設けられている。そして、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形などによって所定形状に成形されたものを金型1(冷却用金型1b)内に装填できるものとする為、金型1は半体同士を突き合わせて合体させる構造のものとなっている。従って、突合時に突合面から超臨界状態の流体の漏れが起きることのないようにシール2が設けられている。
【0042】
冷却用金型1bと加熱用金型1aとの間には、所定の通路3が設けられている。そして、この通路3には冷却媒体がノズル4から流されるようになっている。すなわち、通路3に冷却媒体を流すことによって、冷却用金型1bは外側から冷却されるよう構成されている。又、冷却用媒体は、通路3を流されるのみでなく、ノズル4から冷却用金型1bの内部に供給されるようになっている。これによって、冷却用金型1b、即ち、冷却用金型1b内壁に沿って装填されている成形品Xは、内側からも冷却されるように構成されている。
【0043】
ノズル4は、上記冷却媒体を冷却用金型1bの内外に供給するのみでなく、超臨界状態の流体を冷却用金型1bの内側に供給できるようにも構成されている。
【0044】
尚、冷却媒体として超臨界状態の流体を利用することが出来る。本実施形態にあっては、超臨界流体発生装置5からの超臨界状態の流体を切替バルブ6を介して二つの経路で供給できるように構成されている。そして、一方の経路では、そのまま、超臨界状態の流体がノズル4に供給され、超臨界状態の流体が冷却用金型1bの内外に供給され、冷却媒体として用いられる。他方の経路では、ヒーター7を介して超臨界状態の流体が冷却用金型1bの内側に供給され、発泡剤として用いられる。
【0045】
8は加熱用金型1aの外側に設けられたヒーターであり、9はリークバルブ、10は急減圧用電磁弁である。
【0046】
次に、上記装置を用いて発泡樹脂製容器の成形方法について説明する。
【0047】
先ず、冷却用金型1b内に所望の樹脂材料で成形された未発泡の成形品Xを装填する。そして、ヒーター8により加熱用金型1aを加熱し、その熱で以って冷却用金型1b内に装填された成形品を所望の温度Tに加熱する。
【0048】
次に、この温度下で、超臨界流体発生装置5からの超臨界状態の流体(二酸化炭素)を切替バルブ6を介してノズル4から冷却用金型1b内に供給する。これにより、超臨界状態の二酸化炭素が樹脂中に含浸して行く。
【0049】
所定時間経過後、切替バルブ6を切り替え、超臨界流体発生装置5からの超臨界状態の流体を冷却用金型1bの内外に供給する。これにより、加熱用金型1aからの熱影響が抑えられ、冷却用金型1bは冷却され、冷却用金型1b内壁に沿って装填されている容器状の成形品Xは温度Tに冷却される。かつ、同時に、急減圧用電磁弁10を開放させ、成形品Xの樹脂中に超臨界状態の二酸化炭素を含浸させる為に加えていた圧力を急速減圧する。この工程により、減圧開始と共に気泡核が生成し、そして成長し、発泡樹脂製のものになる。
【0050】
更に、具体的に述べると次の通りである。
【0051】
樹脂として結晶性樹脂であるポリプロピレン(溶融温度は160℃で結晶化温度が145℃)を用いた場合で説明する。すなわち、超臨界二酸化炭素をポリプロピレン中に含浸させる時の含浸圧力、含浸させる時の含浸温度(T)、含浸後に冷却した減圧時の温度T、TからTへの降温速度(冷却速度)、T状態における減圧速度と、発泡特性(発泡倍率、セル径、セル数)との関係を調べたので、その結果を表−1,2に示す。尚、セル径およびセル数は、走査型電子顕微鏡でサンプルを撮影し、これに基づいて求めたものである。
【0052】
表−1
No 含浸温度T 含浸圧力 減圧温度T 減圧速度 冷却速度
(℃) (MPa) (℃) (MPa/s) (℃/s)
1本発明 150 19.6 148 4.95 9
2本発明 150 19.6 148 4.95 45
3本発明 150 19.6 148 4.95 78
4本発明 155 19.6 146 0.098 45
5本発明 155 19.6 146 0.098 78
6本発明 155 19.6 146 0.98 45
7本発明 155 19.6 146 0.98 78
8本発明 155 19.6 146 4.95 45
9本発明 155 19.6 146 4.95 78
10発明外 100 19.6 95 4.95 45
11発明外 210 22.5 160 0.098 8
【0053】
表−2
No 発泡倍率 セル径(μm) セル数(個/cm3
1 1.5 11.0 2.8×10
2 1.6 9.2 6.0×10
3 1.9 6.0 1.7×1010
4 1.3 11.0 1.4×10
5 1.4 10.0 1.5×10
6 1.6 8.5 3.0×10
7 1.8 7.0 1.5×1010
8 2.0 5.0 1.8×1010
9 2.5 4.8 2.0×1010
10 1.2 33.5 1.5×10
11 1.7 190.5 1.3×10
【0054】
又、樹脂として結晶性樹脂である高密度ポリエチレン(溶融温度は140℃で結晶化温度が120℃)を用いた場合について、超臨界二酸化炭素をポリエチレン中に含浸させる時の含浸圧力、含浸させる時の含浸温度(T)、含浸後に冷却した減圧時の温度T、TからTへの降温速度(冷却速度)、T状態における減圧速度と、発泡特性(発泡倍率、セル径、セル数)との関係を調べたので、その結果を表−3,4に示す。尚、セル径およびセル数は、走査型電子顕微鏡でサンプルを撮影し、これに基づいて求めたものである。
【0055】
表−3
No 含浸温度T 含浸圧力 減圧温度T 減圧速度 冷却速度
(℃) (MPa) (℃) (MPa/s) (℃/s)
21本発明 125 19.6 122 0.098 78
22本発明 125 19.6 122 0.98 9
23本発明 125 19.6 122 0.98 45
24本発明 125 19.6 122 0.98 78
25本発明 125 19.6 122 4.95 9
26本発明 125 19.6 122 4.95 45
27本発明 125 19.6 122 4.95 78
28発明外 100 19.6 95 4.95 45
29発明外 200 22.5 150 0.098 8
【0056】
表−4
No 発泡倍率 セル径(μm) セル数(個/cm3
21 1.5 14.5 8.3×10
22 1.4 15.0 8.9×10
23 1.5 13.0 9.8×10
24 1.7 12.0 1.4×10
25 1.6 13.0 1.1×10
26 1.7 11.0 1.2×10
27 1.8 10.0 1.5×10
28 1.3 40.2 1.3×10
29 1.5 201.0 1.5×10
【0057】
又、樹脂として非結晶性アクリル樹脂(溶融温度は130℃でガラス転移温度が95℃)を用いた場合について、超臨界二酸化炭素をポリエチレン中に含浸させる時の含浸圧力、含浸させる時の含浸温度(T)、含浸後に冷却した減圧時の温度T、TからTへの降温速度(冷却速度)、T状態における減圧速度と、発泡特性(発泡倍率、セル径、セル数)との関係を調べたので、その結果を表−5,6に示す。尚、セル径およびセル数は、走査型電子顕微鏡でサンプルを撮影し、これに基づいて求めたものである。
【0058】
表−5
No 含浸温度T 含浸圧力 減圧温度T 減圧速度 冷却速度
(℃) (MPa) (℃) (MPa/s) (℃/s)
31本発明 100 19.6 97 0.098 45
32本発明 100 19.6 97 0.098 78
33本発明 100 19.6 97 0.98 9
34本発明 100 19.6 97 0.98 45
35本発明 100 19.6 97 0.98 78
36本発明 100 19.6 97 4.95 9
37本発明 100 19.6 97 4.95 45
38本発明 100 19.6 97 4.95 78
39発明外 90 19.6 85 4.95 45
40発明外 180 22.5 130 0.098 8
【0059】
表−6
No 発泡倍率 セル径(μm) セル数(個/cm3
31 2.8 3.2 1.2×1010
32 2.7 2.1 2.3×1010
33 2.7 1.8 2.5×1010
34 2.7 1.4 3.2×1010
35 2.9 0.9 3.8×1010
36 2.8 0.7 1.2×1011
37 2.9 0.4 2.9×1011
38 2.8 0.1 3.1×1010
39 1.5 5.5 1.3×10
40 1.9 30.5 1.5×10
【0060】
又、上記No1,3,9,10,11,24,27,28,29,31,35,38,39,40のものについて、そのシャルビー衝撃強度、引張強度、熱伝導率、誘電率を調べたので、その結果を表−7に示す。
【0061】
表−7
No 平均セル径 発泡倍率 シャルビー 引張強度 熱伝導率 誘電率
(μm) (倍) 衝撃強度
1 11.0 1.5 120 70 130 70
3 6.0 1.9 125 75 135 75
9 4.8 2.5 138 85 145 80
10 33.5 1.2 55 17 123 60
11 190.5 1.7 41 12 121 55
24 12.0 1.7 128 75 130 75
27 10.0 1.8 130 80 135 80
28 40.2 1.3 45 11 122 57
29 201.0 1.5 40 10 120 50
31 3.2 2.8 135 60 125 70
35 0.9 2.9 140 65 135 75
38 0.1 2.8 150 70 140 80
39 5.5 1.5 60 18 123 65
40 30.5 1.9 50 15 122 60
シャルビー衝撃強度、引張強度、熱伝導率、誘電率は無発泡タイプを100とした時の相対値で表示。
【0062】
これ等の結果によれば、本発明のものは、微細な気泡が数多く出来ていることが判る。
【0063】
又、機械的強度に優れていることも判る。このことは、肉厚が薄くても良いことを示唆している。
【0064】
又、上記各例の容器内部に水を入れ、そして開口部をアルミ箔で密閉し、30日間放置して水分量の変化を調べた処、本発明になる容器の方が水の減少量は少ないものであった。このことは、本発明になるものは、液漏れが起き難いことを示唆している。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明になる成形装置の概略断面図
【符号の説明】
【0066】
1 金型
1a 加熱用金型
1b 冷却用金型
3 冷却媒体通路
4 ノズル
5 超臨界流体発生装置
6 切替バルブ
7 ヒーター
8 ヒーター
9 リークバルブ
10 急減圧用電磁弁

代 理 人 宇 高 克 己

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結晶性樹脂を用いた発泡樹脂製の流体保持体を成形する装置であって、
冷却用金型と、
前記冷却用金型の内側に存在する所定形状の流体保持体材料中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸手段と、
前記含浸手段によって超臨界状態の流体を含浸した流体保持体材料を発泡させる発泡手段と、
前記冷却用金型の内・外から冷却する冷却手段
とを具備することを特徴とする流体保持体の成形装置。
【請求項2】
非結晶性樹脂による流体保持体の製品形状が保持可能な温度であって、かつ、後述の発泡工程における温度よりも高い温度(T)条件下で、所定形状の非結晶性樹脂中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸工程と、前記含浸工程における温度よりも低い温度であって、かつ、非結晶性樹脂のガラス転移温度以上の温度(T)条件下において、発泡させる発泡工程とを具備し、前記含浸工程時から発泡工程時における温度低下は前記冷却用金型の内外を冷却することにより流体保持体が成形されるに際して用いられる装置であって、
冷却用金型と、
前記冷却用金型の内側に存在する所定形状の流体保持体材料中に超臨界状態の流体を含浸させる含浸手段と、
前記含浸手段によって超臨界状態の流体を含浸した流体保持体材料を発泡させる発泡手段と、
前記冷却用金型の内・外から冷却する冷却手段
とを具備することを特徴とする流体保持体の成形装置。
【請求項3】
冷却用金型の外側に加熱手段が更に設けられてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の流体保持体の成形装置。
【請求項4】
超臨界状態の流体を外部に放出する減圧手段が更に設けられてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の流体保持体の成形装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−12924(P2008−12924A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203802(P2007−203802)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【分割の表示】特願2003−146062(P2003−146062)の分割
【原出願日】平成15年5月23日(2003.5.23)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】