説明

流体充填容器用のシール

【課題】歯車装置又は原動機の流体充填容器用のシールに関して、容器の充填後又は取り付け後において、接合される容器の部品の確実なシールを達成し、運転中に見掛け上の漏洩をもはや発生させないシールを提供し、更に、このようなシールを備える容器を提供する。
【解決手段】シール1は、第1内側シール縁3を備える第1シール本体2を含んで構成される。また、第1シール本体2からは第1脚部4が突出し、第1脚部4の先端には第1脚部4から突出する第2外側シール縁6が配設される。これにより、確実なシールを達成することができ、同時に流体充填容器の見掛け上の漏洩を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原動機又は歯車装置の流体を充填可能な流体充填容器(以下、単に「容器」とする)用のシール、及び、このようなシールを備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を充填可能な容器、又は、シリンダヘッドカバーのようなカバー、或いは、金属又はプラスチック製のオイルパンを取り付ける際、個々の構成部品のシール用に弾性のシールが好ましくは使用される。このようなシールの機能は、流体を特定個所から隔離することだけに限られない。加えて、このようなシールは、接合される構成部品間に生じるギャップを埋める必要もある。このようなギャップは、取り付け工程中の必然的な製造ばらつきによって、或いは、容器、カバー又はトラフの使用中における熱的、機械的又はその他の影響に起因する変形により、形成され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
容器の使用中には、接合されるこのような容器の構成部品間にシーリングギャップが生じることは必然的であり、このギャップは、容器の縁部からシールまで及び、また、0.1mm以上の高さを有する。この結果、シーリングギャップ内の毛管効果により、外側から媒体(流体)が容器に浸透し得る。このようなシーリングギャップを視覚的に点検すると、シール自体が内側と外側との間の空間を確実にシールしないにもかかわらず、シールは完全であるという印象が与えられる。このような見掛け上の密封は、実際の漏洩と区別がつかない。
【0004】
流体を充填された容器にその後外側から充填装置又は注入口を介して各流体を注入すると、更なる問題が発生し得る。この充填装置又は注入口の位置或いは構造的配置によっては、必然的に、被供給流体の残量が充填工程中又は充填工程後にシーリングギャップへ到達する。使用されるシールが容器の内側から容器の外側までの領域を確実にシールするにもかかわらず、シーリングギャップに存在する流体のため、やはり漏洩があるという印象が与えられ得る。このような見掛け上の漏洩の結果、シーリングギャップから流体の残量を除去するための努力がなされる。これは、主に、外側からシーリングギャップに作用する複雑かつコストのかかる洗浄工程により行われる。このような洗浄工程の一例は、高圧ジェットによる洗浄である。
【0005】
容器に既に流体が充填されており、その容器が相互に剛結合及びシールされる構成部品を含んで構成される場合には、容器をメンテナンス処置のために取り外した際に、見掛け上の漏洩の問題が更に発生し得る。このような取り外し工程中、流体の残量は、容器のシーリング溝及びこれに隣接する外側フランジ部へ到達する。メンテナンスの完了後に、再び取り付けられる各構成部品から流体の残量を手作業で除去することは、よく行われている。その後に構成部品を取り付ける際、これら構成部品がシールと共に強固に押圧される結果、流体の残量がシーリング溝から搾り出される。確実なシールであるにもかかわらず、見掛け上の漏洩の問題が再発するため、面倒かつ殆ど無用な洗浄工程が行われる。
【0006】
本発明は、容器の充填後又は取り付け後において、接合される容器の部品(以下、単に「部品」とする)の確実なシールを達成し、運転中に上記のような見掛け上の漏洩をもはや発生させないシールを提供することを目的とする。更に、本発明は、このようなシールを備える容器を提供することを目的とする。
【0007】
当該目的は、独立請求項の主題により達成される。本発明の有利な更なる発展は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
歯車装置又は原動機の流体を充填可能な容器用の本発明に係るシールは、接合される部品間の確実なシール用でありかつ第1内側シール縁を備える第1シール本体を含んで構成される。ここで、該第1シール本体からは第1脚部が外側へ突出する。この第1脚部は、部品間のシーリングギャップの領域で延伸可能であり、その先端に、第1脚部から突出すると共に部品の外縁部のシールを可能とする第2外側シール縁が形成される。その結果、流体は外側からシーリングギャップに浸透することができず、また、前記第1内側シール縁と前記第2外側シール縁との間に位置する媒体(流体)は外側まで移動することができない。
【発明の効果】
【0009】
接合される部品間の確実なシールは、第1シール本体により達成される。第1シール本体から突出する第1脚部は、部品間のシーリングギャップの領域で広がるように配設することができる。前記第1脚部の先端又は外端の第2外側シール縁は、部品の外縁部のシールを可能とする。このため、流体は外側からシーリングギャップに浸透することができない。流体を容器に補充する必要があり、そしてシーリングギャップ内には残量が残存する場合、それらは第2外側シール縁によってもはや外側まで到達しない。このため、見掛け上の漏洩の印象は、もはや発生し得ない。残量は、部品の取り付けの際にシーリングギャップ内へ押し込まれるが、第2外側シール縁が流体のいかなる漏洩をも阻止するため、もはやそれらは外側まで移動しない。第1シール本体から突出する第1脚部と、そこから突出する第2外側シール縁と、の組み合わせにより、あらゆる見掛け上の漏洩が確実に阻止される。
【0010】
好ましくは、第1内側シール縁及び第2外側シール縁は、同一方向を指向する。このような実施形態では、第1内側シール縁と第2外側シール縁との間に、中間貯留室として流体の残量を保持可能な領域が形成される。こうして、そこに蓄積されるいかなる流体は、容器の内側に浸入することも、容器から流出することもない。外側から見て、見掛け上の漏洩とみなされることはない。
【0011】
第1シール本体は、シールが実質的にL字形をなすように、脚部として配設することもできる。第1シール本体からなる脚部は、シーリング溝へ良好に挿入することができるため、容器の一部に対してより容易にシールの取り付けが可能となる。更に、第1シール本体からなる脚部及び第1シール本体から突出する第1脚部により、中間貯留室のように流体を集合可能な領域を比較的大きくすることができる。第2外側シール縁は、中間貯留室に集合される流体が外側まで到達し得るのを確実に阻止する。
【0012】
本発明の更なる実施形態によれば、第1シール本体と第2外側シール縁とを相互に結合させる第2シール本体が、第1脚部から突出する。中間貯留室としての第1内側シール縁と第2外側シール縁との間の位置に集合した流体が容器の外周に沿って流動するのを阻止することができる。いくつかのこのような第2シール本体を設ければ、第1シール本体と、第2シール本体と、第2外側シール縁と、によって区画される室を形成することができる。
【0013】
第1脚部の表面と第2外側シール縁の上縁部との間の距離が、第1脚部の表面と第2シール本体の上縁部との間の距離と等しければ、同一の高さの壁を備える室が形成される。これにより、部品の比較的簡易な取り付け、及び、均等に確実なシール性を備えるシーリング材の均一な変形、が可能となる。
【0014】
前記目的は、原動機又は歯車装置用の容器によっても達成される。ここで、容器は、上述のシールと、容器の下側部品及び容器の上側部品と、を含んで構成される。そして、シールが容器の下側部品と上側部品との間に挿入される形で、シールと、容器の下側部品及び上側部品と、は分割面に沿って接合可能である。
【0015】
シールが、第1脚部の先端が容器の下側部品又は上側部品の外縁部と同一平面で広がるように挿入されると、流体は、外側から容器に浸透することができず、また、内側から外側まで到達することもできない。こうして、見掛け上の漏洩の発生が確実に阻止される。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、容器の上側部品の外縁部が容器の下側部品の外縁部に対する分割面の領域において突出する。これは、容器の下側部品の外縁部が容器の上側部品の外縁部に対する分割面の領域において突出するという、逆の変形にも当てはまる。こうして、確実に、突出する部分に、滴下縁部を形成することができる。外側から供給される流体は滴下することができ、そして、流体がシーリングギャップに浸透し得る見込みは殆どない。
【0017】
ここで、図面に示す実施形態を参照することにより、本発明を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明に係るシールの第1実施形態の断面図を示す。
【図2】図2は、本発明に係るシールの第2実施形態の断面図を示す。
【図3】図3は、本発明に係るシールの第3実施形態の断面図を示す。
【図4】図4は、本発明に係るシールの第4実施形態の断面図を示す。
【図5】図5は、本発明に係るシールの第5実施形態の断面図を示す。
【図6】図6は、本発明に係るシールの第4実施形態の斜視断面図を示す。
【図7】図7は、本発明に係るシールの第4実施形態の一部に係る上面図を示す。
【図8】図8は、本発明に係る容器の第1実施形態の側断面図を示す。
【図9】図9は、本発明に係る容器の第2実施形態の側断面図を示す。
【図10】図10は、本発明に係るシールの実施形態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明に係るシールの第1実施形態を示す。シール1は、第1シール本体2と、これに結合された第1内側シール縁3と、を含んで構成される。第1シール本体2からは第1脚部4が突出し、第1脚部4の先端5には第2外側シール縁6が設けられる。第1シール本体2は、図1に示すような円形、又は、図2に示す実施形態のような第1脚部を延伸させたものとしての角付き形状、とすることができる。さらに、図3に示すように、第1内側シール縁3を第2外側シール縁6の反対側の方向に配設することもできる。この場合、第1内側シール縁3用の溝を容器の上側部品に、第2外側シール縁6用の更なる溝を容器の下側部品に、設けることができる。
【0020】
多くの場合、本発明に係るシールは、その周囲に沿った任意の形状とすることができ、この形状は、好ましくはシールされる容器の形状に適合する。図10は、少なくともシールされる部位で横断面が円形をなす容器用の本発明に係るシールの実施形態を示す。
【0021】
図4に示すように、第1シール本体2は、脚部7として配設することもできる。これは、脚部7が容易に溝へ挿入可能であり、また、取り付けの際にシール1が滑る可能性が殆どないため好都合である。これは、図5に示すような実施形態にも該当する。ここでは、第1シール本体2は、第1内側シール縁3のみならず、その反対位置にある更なるシール縁31をも含んで構成される。
【0022】
図4に示すような本発明に係る第4実施形態をねじれ描写した斜視図である図6に示すように、環状の第1内側シール縁3及び第2外側シール縁6について、これら第1内側シール縁3と第2外側シール縁6との間に、存在する可能性のある流体が集積又は蓄積され得る領域9が形成される。領域9に存在する流体が側面に沿って自由に流動するのを防止するために、第2シール本体8により境界を形成することができる。相互に距離をあけて配置される2つの第2シール本体8を設ける場合、領域9に存在するいかなる流体をも比較的狭小な領域へ区画する室が形成される。
【0023】
容器における本発明に係るシールの機能を、図8に一層明確に示す。図8は、下側部品21及び上側部品22を備える容器20と、下側部品21と上側部品22との間に取り付けられた状態の本発明に係るシールと、を示す。見掛け上の漏洩を防止するためには、本発明に係るシールにおいて、第1脚部4の端部に、流体が容器20の外側の領域(参照番号28を参照)から第1内側シール縁3へ到達するのを抑制する第2外側シール縁6を設けることが関連する。これは、逆に、流体が容器の内側26又は前記室から容器20の外側の領域28へ到達するのを第2外側シール縁6により阻止するときにも、同様に当てはまる。
【0024】
第1内側シール縁3を図8に従って容器20の溝23に挿入して容器20の下側部品21における内側の側壁に隣接して配置する際、第2外側シール縁6は、容器20の下側部品21におけるフランジ24の縁部29に配置することができる。第2外側シール縁6のため、流体は外側の領域28から容器20の内側26に流入することができない。外側から供給されるいかなる流体も、図8に示すような容器20の実施形態における外縁部30、特にその縁部25、へ集合する。流体は、そこで滴下が可能であるため、もはやシーリングギャップの領域には存在しない。弾性的に配置されたシール1の第1脚部4が第1シール本体2から突出し、かつ、第1脚部4が取り付け状態にある容器20における下側部品21と上側部品22との間の分割面27の領域においてシールを行うため、シーリングギャップはこの分割面27の領域には形成されない。
【0025】
メンテナンス後に上側部品22及びシール1を前記部品が圧縮されるように取り付ける際、溝23内の残留流体を前記室へ集合させることができる。第2外側シール縁6が、この流体が外側の領域28に到達するのを防止する結果、見掛け上の漏洩の印象が防止される。
【0026】
図7は、図4のシール1の上面図を示す。ここで、シール1はいくつかの前記室を含んで構成される。また、第1内側シール縁3と第2外側シール縁6との間に孔10が設けられ、これを貫通して、例えばスリーブ41を備える取り付け用ねじ40を圧入することができる(図9を参照)。
【符号の説明】
【0027】
1 シール
2 第1シール本体
3 第1内側シール縁
4 第1脚部
5 先端
6 第2外側シール縁
7 脚部
8 第2シール本体
20 容器
21 下側部品
22 上側部品
27 分割面
29 外縁部
30 外縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯車装置又は原動機の流体充填容器(20)用のシール(1)であって、
接合される該流体充填容器の部品間の確実なシール用でありかつ第1内側シール縁(3)を備える第1シール本体(2)を含んで構成され、
該第1シール本体(2)から外側へ突出する第1脚部(4)が設けられ、
この第1脚部は、前記部品間のシーリングギャップの領域において延伸可能であり、その先端に、該第1脚部(4)から突出すると共に前記部品の外縁部のシールを可能とする第2外側シール縁(6)が配設され、
流体は外側からシーリングギャップに浸透することができず、前記第1内側シール縁(3)と前記第2外側シール縁(6)との間に存在する流体は外側まで浸透することができない流体充填容器用のシール(1)。
【請求項2】
前記第1内側シール縁(3)及び前記第2外側シール縁(6)は、同一方向を指向する請求項1に記載の流体充填容器用のシール(1)。
【請求項3】
前記第1シール本体(2)がシーリング溝へ好都合に挿入可能な脚部(7)として配設され、
実質的にL字形をなす請求項1または請求項2に記載の流体充填容器用のシール(1)。
【請求項4】
第2シール本体(8)が、前記第1脚部(4)から突出し、前記第1シール本体(2)と前記第2外側シール縁(6)とを相互に結合させ、
中間貯留室としての前記第1内側シール縁(3)と前記第2外側シール縁(6)との間の位置に集合した流体が前記流体充填容器(20)の外周に沿って流動するのを阻止することができる請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の流体充填容器用のシール(1)。
【請求項5】
前記第1脚部(4)の表面と前記第2外側シール縁(6)の上縁部との間の距離が、前記第1脚部(4)の表面と前記第2シール本体(8)の上縁部との間の距離と等しい請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の流体充填容器用のシール(1)。
【請求項6】
原動機又は歯車装置用の流体充填容器(20)であって、
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のシール(1)と、下側部品(21)及び上側部品(22)と、を含んで構成され、
前記シール(1)と、前記下側部品(21)及び前記上側部品(22)と、は分割面(27)に沿って相互に接合可能であり、
前記シール(1)は、前記下側部品(21)と前記上側部品(22)との間に挿入される流体充填容器(20)。
【請求項7】
前記シール(1)は、前記第1脚部(4)の前記先端(5)が前記下側部品(21)又は前記上側部品(22)の外縁部(29)と同一平面で広がるように挿入される請求項6に記載の流体充填容器(20)。
【請求項8】
前記上側部品の外縁部(30)が、前記下側部品(21)の前記外縁部(29)に対する前記分割面(27)の領域において突出するか、
又は、前記下側部品(21)の前記外縁部(29)が、前記上側部品(22)の前記外縁部(30)に対する前記分割面(27)の領域において突出する請求項6または請求項7に記載の流体充填容器(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−281589(P2009−281589A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−115313(P2009−115313)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(503375784)イーベーエスフィルトランクンストシュトッフメタルエルツォイクニッセ ゲーエムベーハー (11)
【氏名又は名称原語表記】IBS Filtran Kunststoff Metallerzeugnisse GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 19, 51597 Morsbach, GERMANY
【Fターム(参考)】