説明

流体噴射装置、及び、流体噴射方法

【課題】画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【解決手段】ノズルが所定方向に並んだノズル列と、ノズル列を所定方向と交差する移動方向に移動する第1機構と、ノズル列と媒体とを所定方向に相対移動させる第2機構と、ノズル列が移動方向の一方側から他方側へ移動する際に或るノズルから噴射される流体の着弾位置とノズル列が移動方向の他方側から一方側へ移動する際に或るノズルから噴射される流体の着弾位置の所定方向の間隔に基づく補正値を記憶する記憶部と、第1機構がノズル列を移動方向の一方側から他方側へ移動する際にノズルから流体を噴射させた後に、第2機構がノズル列と媒体とを所定方向に相対移動させる処理と、第1機構がノズル列を移動方向の他方側から一方側へ移動する際にノズルから流体を噴射させた後に、第2機構がノズル列と媒体とを所定方向に相対移動させる処理とを制御し、記憶部に記憶された補正値によってノズル列と媒体の所定方向への相対移動量を補正する制御部とを有する流体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、流体噴射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置の一つとして、媒体に対してインク(流体)を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を備えるヘッドを有するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。また、そのヘッドを媒体に対してノズル列方向と交差する移動方向に移動させながらノズルからインクを噴射させる動作と、ヘッドと媒体とをノズル列方向に相対移動させる動作と、を繰り返すことによって、媒体に画像を印刷するプリンターがある。
【0003】
そして、高速印刷を実現するために、複数のヘッドがノズル列方向に並んで配置されたヘッドユニットを備えたプリンターが提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−1109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のヘッドがノズル列方向に並んだヘッドユニットが移動方向へ移動する際に、慣性力の影響などにより、ヘッドユニットが傾くことがある。また、ヘッドユニットが移動方向の一方側から他方側へ移動する時(往路時)と、ヘッドユニットが移動方向の他方側から一方側へ移動する時(復路時)とでは、ヘッドユニットの傾く方向が異なる。そのため、往路時にも復路時にも画像を印刷する場合、往路時の画像形成位置と復路時の画像形成位置がノズル列方向にずれてしまい、印刷画像の画質が劣化してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、(A)流体を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列と、(B)前記ノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動する第1機構と、(C)前記ノズル列と媒体とを前記所定方向に相対移動させる第2機構と、(D)前記第1機構によって前記ノズル列が前記移動方向の一方側から他方側へ移動する際に前記ノズル列に属する或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、前記第1機構によって前記ノズル列が前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、の前記所定方向の間隔に基づく、補正値を記憶する記憶部と、(E)前記第1機構が前記ノズル列を前記移動方向の前記一方側から前記他方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第1動作後に、前記第2機構が前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、前記第1機構が前記ノズル列を前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第2動作後に、前記第2機構が前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、を制御する制御部であって、前記記憶部に記憶された前記補正値によって、前記ノズル列と前記媒体の前記所定方向への相対移動量を補正する制御部と、(F)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】印刷システムの構成ブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターの概略断面図であり、図2Bはプリンターの概略上面図である。
【図3】ヘッドユニットにおける複数のヘッドの配置を示す図である。
【図4】ヘッドユニットがX方向への移動中に傾斜する様を示す図である。
【図5】往路時と復路時の着弾位置ずれを補正する補正値の取得フローである。
【図6】補正値を取得するためにプリンターに印刷させるテストパターンを示す図である。
【図7】スキャナーが読取った読取画像を示す図である。
【図8】罫線間距離dを算出する様子を示す図である。
【図9】設計上のドット形成位置に対する往路時および復路時のドット形成位置のずれを示す図である。
【図10】ヘッドおよびノズル列の違いによる往復のドット形成位置ずれの違いを示す図である。
【図11】往復のドット形成位置ずれを補正する様子を示す図である。
【図12】往路時にも復路時にもヘッド41のY方向の位置を補正する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、(A)流体を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列と、(B)前記ノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動する第1機構と、(C)前記ノズル列と媒体とを前記所定方向に相対移動させる第2機構と、(D)前記第1機構によって前記ノズル列が前記移動方向の一方側から他方側へ移動する際に前記ノズル列に属する或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、前記第1機構によって前記ノズル列が前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、の前記所定方向の間隔に基づく、補正値を記憶する記憶部と、(E)前記第1機構が前記ノズル列を前記移動方向の前記一方側から前記他方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第1動作後に、前記第2機構が前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、前記第1機構が前記ノズル列を前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第2動作後に、前記第2機構が前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、を制御する制御部であって、前記記憶部に記憶された前記補正値によって、前記ノズル列と前記媒体の前記所定方向への相対移動量を補正する制御部と、(F)を有することを特徴とする流体噴射装置である。
このような流体噴射装置によれば、第1動作時と第2動作時においてノズル列の傾き方が異なったとしても、第1動作時に形成される画像と第2動作時に形成される画像が所定方向にずれてしまうことを抑制し、画質劣化を抑制できる。
【0011】
かかる流体噴射装置であって、前記第1動作時に前記或るノズルから噴射された流体の前記所定方向の着弾位置から前記第2動作時に前記或るノズルから噴射された流体の前記所定方向の着弾位置を減算した値を、前記補正値として記憶し、前記第1動作後に前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる量に前記補正値を加算して補正し、前記第2動作後に前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる量に前記補正値を減算して補正すること。
このような流体噴射装置によれば、第1動作時に形成される画像と第2動作時に形成される画像の所定方向のずれを補正できる。
【0012】
かかる流体噴射装置であって、前記第1動作時と前記第2動作時のうちの何れか一方の動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記補正値の長さ分を補正し、他方の動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置とすること。
このような流体噴射装置によれば、第1動作時に形成される画像と第2動作時に形成される画像の所定方向のずれを補正できる。
【0013】
かかる流体噴射装置であって、前記第1動作時と前記第2動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の各相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記補正値の半分の長さ分を補正すること。
このような流体噴射装置によれば、媒体上における画像形成位置を設計上の位置に近付けることができる。
【0014】
かかる流体噴射装置であって、前記或るノズルから噴射される流体の設計上の着弾位置と、前記第1動作時に前記或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、の前記所定方向の間隔を、前記記憶部が別の補正値として記憶し、前記第1動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記別の補正値の長さ分を補正し、前記第2動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記補正値と前記別の補正値の差の長さ分を補正すること。
このような流体噴射装置によれば、媒体上における画像形成位置を設計上の位置に近付けることができる。
【0015】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記ノズル列を前記移動方向の一方向側に移動する際に前記ノズルから流体を噴射させて、前記ノズル列を前記移動方向の他方向側に移動する際には前記ノズルから流体を噴射させない場合、前記補正値によって、前記ノズル列と前記媒体の前記所定方向への相対移動量を補正しないこと。
このような流体噴射装置によれば、第1動作時に形成される画像と第2動作時に形成される画像の所定方向の位置を揃えることができる。
【0016】
かかる流体噴射装置であって、前記制御部は、前記補正値によって、前記媒体に対する前記ノズル列の前記所定方向への移動量を補正すること。
このような流体噴射装置によれば、より精度よくノズル列と媒体の相対位置を補正できる。
【0017】
また、流体を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を有する流体噴射装置の流体噴射方法であって、前記ノズル列を前記所定方向と交差する移動方向の一方側から他方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第1動作後に、前記ノズル列と媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、前記ノズル列を前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第2動作後に、前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、を繰り返し、前記ノズル列が前記移動方向の一方側から他方側へ移動する際に前記ノズル列に属する或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、前記ノズル列が前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、の前記所定方向の間隔に基づく、補正値によって、前記ノズル列と前記媒体の前記所定方向への相対移動量を補正する、ことを特徴とする流体噴射方法である。
このような流体噴射方法によれば、第1動作時と第2動作時においてノズル列の傾き方が異なったとしても、第1動作時に形成される画像と第2動作時に形成される画像が所定方向にずれてしまうことを抑制し、画質劣化を抑制できる。
【0018】
===印刷システムについて===
以下、流体噴射装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、印刷システムの構成ブロック図である。図2Aは、プリンター1の概略断面図であり、図2Bは、プリンター1の概略上面図である。コンピューター60は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター60には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。
【0020】
コントローラー10(制御部に相当)は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター60とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13(記憶部に相当)はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群50が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0021】
搬送ユニット20は、媒体Sが連続する方向(以下、搬送方向)に、媒体Sを上流側から下流側に搬送するものである。モータによって駆動する搬送ローラー21によって印刷前のロール状の媒体Sを印刷領域に供給し、その後、印刷済みの媒体Sを巻取機構によりロール状に巻き取る。なお、印刷中に印刷領域に位置する媒体を下からバキューム吸着することで、媒体Sを所定の位置に保持することができる。
【0022】
駆動ユニット30は、ヘッドユニット40を、媒体の搬送方向に対応するX方向と媒体Sの紙幅方向に対応するY方向とに自在に移動させるものである。駆動ユニット30は、ヘッドユニット40をX方向に移動させるX軸ステージ31と、ヘッドユニット40をY方向に移動させるY軸ステージ32と、これらを移動させるモータ(不図示)とで、構成されている。
【0023】
ヘッドユニット40は、画像を形成するためのものであり、複数のヘッド41を有する。ヘッド41の下面には、インク噴射部であるノズルが複数設けられ、各ノズルにはインクが充填された圧力室が設けられている。なお、ノズルからのインク噴射方式は、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけて、圧力室を膨張・収縮させることによりインクを噴射するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを噴射するサーマル方式でもよい。
【0024】
図3は、ヘッドユニット40における複数のヘッド41の配置を示す図である。なお、ヘッド41およびノズルの配置をヘッドユニット40の上面から仮想的に見た図である。ここでは、ヘッドユニット40が15個のヘッド41(1)〜41(15)を有するとする。各ヘッド41のノズル面には、イエローインクを噴射するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを噴射するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを噴射するシアンノズル列Cと、ブラックインクを噴射するブラックノズル列Kが形成されている。各ノズル列はノズルを180個ずつ備え、180個のノズルは紙幅方向(所定方向に相当)に一定の間隔(180dpi)で整列している。図示するように紙幅方向の奥側のノズルから順に小さい番号を付す(#1〜#180)。
【0025】
また、紙幅方向に隣り合う2つのヘッド(例:41(1)・41(2))のうちの奥側のヘッド41(1)の最も手前側のノズル#180と、手前側のヘッド41(2)の最も奥側のノズル#1の間隔が一定の間隔(180dpi)となるように、複数のヘッド41が配置されている。つまり、ヘッドユニット40の下面では、ヘッドユニット40の幅長さに亘って、ノズルが紙幅方向に一定の間隔(180dpi)で並んでいることになる。
【0026】
なお、製造上の問題により、複数のヘッド41は千鳥状に配置されている。即ち、紙幅方向に隣り合うヘッド(例:41(1),41(2))は搬送方向にずれて配置されている。以下の説明のため、搬送方向上流側のヘッド41(1)、41(3)…、即ち、奇数番号のヘッドを「奇数ヘッド」と呼び、搬送方向下流側のヘッド41(2)、41(4)…、即ち、偶数番号のヘッドを「偶数ヘッド」と呼ぶ。また、紙幅方向の奥側のヘッド41から順に、第1ヘッド41(1)、第2ヘッド41(2)…と呼ぶ。
【0027】
最後に、印刷手順について説明する。まず、搬送ユニット20により印刷領域に媒体Sを供給する。そして、X軸ステージ31(第1機構に相当)にてヘッドユニット40をX方向(媒体の搬送方向・移動方向に相当)に移動させながらノズルからインクを噴射する画像形成動作と、Y軸ステージ32(第2機構に相当)によりX軸ステージ31を介して、ヘッドユニット40をY方向(紙幅方向)に移動する動作と、を繰り返す。その結果、先の画像形成動作により形成されたドット位置とは異なる位置に、後の画像形成動作によりドットを形成することができ、2次元の画像を印刷することができる。こうして印刷領域に位置する媒体への印刷が終了すると、搬送ユニット20により印刷が未だなされていない媒体部分が印刷領域に供給され、印刷領域の媒体に画像が印刷される。
【0028】
===往路罫線と復路罫線のずれについて===
図4は、ヘッドユニット40がX方向(搬送方向)への移動中に傾斜する様を示す図である。説明の簡略のため、ヘッドユニット40内のヘッド数およびノズル数を減らして描いている。本実施形態のプリンター1では、図2Bや図3に示すように、Y方向(紙幅方向)の奥側のX軸ステージ31(駆動モータが取り付けられた駆動軸)によってのみ、ヘッドユニット40をX方向に移動させる。即ち、ヘッドユニット40のY方向の片側端部だけを駆動してX方向に移動させる。更に、ヘッドユニット40には多数(15個)のヘッド41がY方向に並んで配置されており、ヘッドユニット40は比較的に重く、Y方向に長い構造となっている。そのため、ヘッドユニット40をX方向に移動する際に、X軸ステージ31側とは逆側(即ち、Y方向の手前側)のヘッドユニット40の端部に強く慣性力が働き、図示するように、ヘッドユニット40(ノズル列)がY方向に対して傾き易くなってしまう。なお、X軸ステージ31(駆動軸)の逆側にガイドレールなどを設けたとしても、片側駆動によってヘッドユニット40をX方向へ移動させる場合には、X方向への移動時にヘッドユニット40はY方向に対して傾いてしまう。
【0029】
また、本実施形態のプリンター1は、ヘッドユニット40がX方向の左側から右側へ移動する際にも(往路時にも)、ヘッドユニット40がX方向の右側から左側へ移動する際にも(復路時にも)、ヘッド41からインク滴を噴射し、画像を形成すること、即ち、双方向印刷を可能とする。図4に示すように、慣性力の影響により、往路時にはヘッドユニット40(ノズル列)はY方向に対して時計回り方向に傾き、復路時にはヘッドユニット40はY方向に対して反時計回り方向に傾く。即ち、往路時と復路時において、Y方向に対するヘッドユニット40の傾く方向が異なる。なお、図4では説明の為にヘッドユニット40を大きく傾かせて描いているが、実際には微小な傾きである。また、ここでは、ヘッドユニット40の左上の角部(黒い丸)をヘッドユニット40の回転支点とする。
【0030】
図4には、往路時に形成される往路罫線(実線)と復路時に形成される復路罫線(点線)が描かれている。同じヘッド41(2)の同じノズル#8にて罫線を形成したにも拘らず、往路罫線と復路罫線のY方向の位置が異なる。これは、往路時と復路時においてヘッドユニット40の傾く方向が異なるからである。往路時にはヘッドユニット40がY方向に対して時計回り方向に傾き、ノズル#8の位置がY方向の手前側にずれるため、往路罫線は比較的にY方向の手前側に形成される。これに対して、復路時にはヘッドユニット40がY方向に対して反時計回り方向に傾き、ノズル#8の位置がY方向の奥側にずれるため、復路罫線は比較的にY方向の奥側に形成される。その結果、往路罫線と復路罫線のY方向の位置が異なり、往路罫線に対して復路罫線はY方向の奥側に形成される。
【0031】
以上をまとめると、本実施形態のプリンター1では、片側駆動(X軸ステージ31のみ)によってヘッドユニット40をX方向に移動させ、双方向印刷を実施する。そうすると、往路時と復路時のヘッドユニット40の傾く方向が異なり、往路罫線(往路時のドット着弾位置)と復路罫線(復路時のドット着弾位置)がY方向にずれてしまう。この場合、仮に、何の補正を行わずに双方向印刷を実施すると、往路時に形成される画像(罫線)と復路時に形成される画像(罫線)がY方向にずれて、画像の繋ぎが悪くなり、印刷画像の画質が劣化してしまう。
【0032】
そこで、本実施形態では、往路時と復路時においてY方向に対するヘッドユニット40の傾き(傾く方向)が異なることによって発生する往路時と復路時の着弾位置のずれを補正し、印刷画像の画質劣化を抑制することを目的とする。
【0033】
===補正値Hの取得について===
図5は、往路時と復路時の着弾位置ずれを補正する補正値Hの取得フローである。図4に示すヘッドユニット40の傾きは、各プリンター1(各駆動ユニット30)の特性によって異なると考えられる。そのため、本実施形態では、プリンター1の製造工程(検査工程)において、プリンター1ごとに、往路時と復路時の着弾位置のずれを補正する補正値Hを取得する。なお、本実施形態では、往路と復路のドット形成位置ずれを補正するために、往路と復路の間にてヘッドユニット40をY方向(紙幅方向)に移動する際の移動量を補正する(詳細は後述)。ヘッドユニット40の移動量を補正する補正値Hを算出するために、プリンター1の製造工程において、補正値Hの取得対象となるプリンター1には、スキャナーとコンピューターが接続される。なお、プリンター1に接続されるコンピューターには、予め、プリンター1がテストパターン(後述)を印刷するための印刷データを作成し、プリンター1に印刷指令を出すプリンタードライバーと、スキャナーを制御するためのスキャナードライバーと、補正値Hを取得するための「補正値取得プログラム」がインストールされている。なお、この補正値取得プログラムや、プリンタードライバー、スキャナードライバーは、CD−ROMなどの記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。また、補正値取得プログラムが、プリンタードライバーやスキャナードライバーの役割を担ってもよい。以下、補正値Hの取得について順に説明する。
【0034】
<S001:テストパターンの印刷>
図6は、補正値Hを取得するためにプリンター1に印刷させるテストパターンを示す図である。図6では、テストパターンとテストパターンを印刷するヘッド41の位置関係を示す。まず、補正値取得プログラムは、補正値Hの取得対象プリンター1にテストパターンを印刷させる。そのために、補正値取得プログラムはプリンタードライバーに印刷指令を出し、プリンタードライバーはテストパターンを印刷するための印刷データと印刷指令をプリンター1に出力する。そして、テストパターンとして、Y方向(紙幅方向)に沿う「垂直基準線」と、X方向(媒体搬送方向)に沿う「水平基準線」と、往路時に形成されるX方向に沿う「往路罫線」と、復路時に形成されるX方向に沿う「復路罫線」が印刷される。
【0035】
ここでは、図示するように、プリンター1が有する15個のヘッド41(1)〜41(15)のうち、第9ヘッド41(9)以外のヘッド41に、各々往路罫線と復路罫線を印刷させる。往路罫線と復路罫線を印刷するノズルについての詳細は後述するが、少なくとも、各ヘッド41の往路罫線および復路罫線を印刷するノズルは同じノズル(或るノズルに相当)とする。また、同じヘッド41の往路罫線と復路罫線を印刷する間に、ヘッドユニット40を媒体に対してY方向に移動させることはない。そのため、本来であれば、同じヘッド41(ノズル)にて形成された往路罫線と復路罫線のY方向の位置は等しくなるはずである。ただし、本実施形態のプリンター1では、図4に示すように、ヘッドユニット40のX方向への移動時にヘッドユニット40がY方向に対して傾く虞があり、その場合に、同じヘッド41(ノズル)にて形成された往路罫線と復路罫線のY方向の位置がずれてしまう。
【0036】
また、本実施形態のプリンター1は連続媒体Sの紙幅長さに対してヘッドユニット40の長さが比較的に長く、ヘッドユニット40の方が媒体Sの紙幅長さよりも長くなる場合がある。そのため、ヘッドユニット40に属するヘッド41のうち、Y方向の奥側のヘッド41(1)〜41(8)とY方向の手前側のヘッド41(10)〜41(15)の2回に分けて、往路罫線と復路罫線を印刷する。以下の説明のため、Y方向の奥側ヘッド41(1)〜41(8)によって印刷された往路罫線および復路罫線を「第1罫線群」と呼び、Y方向の手前側ヘッド41(10)〜41(15)によって印刷された往路罫線および復路罫線を「第2罫線群」と呼ぶ。そのため、垂直基準線と水平基準線は、第1罫線群用と第2罫線群用として、各々2本ずつ印刷される。垂直基準線は、往路罫線および復路罫線がY方向に並ぶ長さ以上に亘って伸びた線であり、水平基準線は、各罫線群のY方向中央部の往路罫線および復路罫線の間(例:ヘッド41(4),41(5)の罫線の間)に印刷された線である。
【0037】
具体的には、パス1(往路時)にて、第1ヘッド41(1)〜第8ヘッド41(8)により、垂直基準線と、水平基準線と、各ヘッド41の往路罫線を印刷する。その後、ヘッドユニット40をY方向に移動することなく、ヘッドユニット40のY方向の位置を変えずに、パス2(復路時)にて、第1ヘッド41(1)から第8ヘッド41(8)により、復路罫線を印刷する。その後、ヘッドユニット40をY方向の奥側に移動し、パス3(往路時)にて、第10ヘッド41(10)から第15ヘッド41(15)により、垂直基準線と、水平基準線と、各ヘッド41の往路罫線を印刷する。その後、ヘッドユニット40をY方向に移動することなく、パス4(復路時)にて、第10ヘッド41(10)から第15ヘッド41(15)により、復路罫線を印刷する。なお、復路時に垂直基準線と水平基準線を印刷してもよい。
【0038】
<S002:テストパターンの読取結果の取得>
図7は、スキャナーが読取った読取画像を示す図である。プリンター1がテストパターンを印刷した後、検査者は、テストパターン用紙Sをスキャナーにセットし、スキャナーにテストパターンを読み取らせる。補正値取得プログラムは、テストパターンを読み取った読取画像をスキャナードライバーから取得する。また、補正値取得プログラムは、テストパターンの読取画像のうち、第1罫線群(Y方向奥側ヘッド41による罫線)と第1罫線群用の垂直基準線および水平基準線を含む読取画像(点線の範囲内)を「第1読取画像」として取得し、第2罫線群(Y方向手前側ヘッド41による罫線)と第2罫線群用の垂直基準線および水平基準線を含む読取画像を「第2読取画像」として取得する。
【0039】
なお、スキャナーによる読取画像上では、紙幅方向(Y方向)に対応する方向を「y方向」とし、紙幅方向手前側に対応する側を「+Δy側」とし、紙幅方向奥側に対応する側を「−Δy側」とする。また、読取画像上では、搬送方向(X方向)に対応する方向を「x方向」とし、搬送方向の右側に対応する側を「+Δx側」とし、搬送方向の左側に対応する側を「−Δx側」とする。
【0040】
<S003:読取画像の原点位置の決定>
次に、補正値取得プログラムは、各読取画像内の水平基準線を認識し、水平基準線の角度を算出する。具体的には、補正値取得プログラムは、水平基準線の2点の位置に基づき、x方向(水平方向)に対する水平基準線の角度θを算出する。その後、補正値取得プログラムは、水平基準線の角度θに基づいて、各読取画像の傾きを補正する。そうすることで、各ヘッド41によって印刷された往路罫線と復路罫線をx方向に沿わせることができる。
【0041】
次に、補正値取得プログラムは、各読取画像の原点位置Oを決定する。まず、補正値取得プログラムは、水平基準線の2点のy方向の位置の平均値を、水平基準線のy方向の位置として算出する。その後、予め設定されている水平基準線から原点Oまでのy方向距離に関するパラメーター分だけ水平基準線のy方向の位置から−Δy側の位置であり、垂直基準線上の位置である点を、原点Oとする。こうして、図7に示すように、補正値取得プログラムは、第1読取画像の原点O(左上の点)の位置と、第2読取画像の原点Oの位置を決定する。
【0042】
<S004:罫線間距離dの算出>
次に、補正値取得プログラムは、各読取画像の原点Oを基準に、往路罫線および復路罫線のそれぞれのy方向の位置を認識する。例えば、第2ヘッド41(2)の往路罫線のy方向の位置を認識する場合、補正値取得プログラムは、原点Oから+Δx側に所定の距離を離れた位置であり、原点Oから+Δy側に所定の距離を離れた位置の範囲(点線で囲まれた範囲)の読取データを取り出す。そして、取り出した読取データの中から濃い読取階調値を示す画素のy方向の位置を、第2ヘッド41(2)の往路罫線のy方向の位置として認識する。その後、補正値取得プログラムは、第2ヘッド41(2)の復路罫線のy方向の位置を認識する場合、往路罫線のときよりも原点Oから更に+Δx側に離れた位置であり、原点Oから+Δy側の位置が往路罫線のときと同じである範囲の読取データを取り出す。そして、取り出した読取データの中から濃い階調値を示す画素のy方向の位置を、第2ヘッド41(2)の復路罫線のy方向の位置として認識する。こうして、補正値取得プログラムは、各ヘッド41の往路罫線のy方向の位置、および、復路罫線のy方向の位置を認識する。なお、各罫線のy方向の位置を認識するために、原点Oを基準として取り出す読取データ(点線で囲まれた範囲)の位置に関するパラメーターは、予め設定されている。
【0043】
図8は、罫線間距離dを算出する様子を示す図である。図は第1ヘッド41(1)の或るノズル#4によって印刷された往路罫線(実線)と復路罫線(点線)を示す。補正値取得プログラムは、各ヘッド41の往路罫線および復路罫線のy方向の位置を認識した後、以下の式により「罫線間距離d」を算出する。罫線間距離dとは、あるノズルの往路時(第1動作に相当)におけるy方向のドット形成位置と、その同じノズルの復路時(第2動作に相当)におけるy方向のドット形成位置との差である。
罫線間距離d=往路罫線のy方向の位置−復路罫線のy方向の位置
【0044】
図8では、補正値取得プログラムが、第1ヘッド41(1)の往路罫線のy方向の位置を「y1」と認識し、第1ヘッド41(1)の復路罫線のy方向の位置を「y2」と認識したとする。本実施形態では、ヘッド41の左上角部を回転支点とし、往路時にはヘッド41がy方向に対して時計回り方向に傾き、復路時にはヘッド41がy方向に対して反時計回り方向に傾くとする。そのため、往路罫線の方が復路罫線よりもy方向の+Δy側に位置する(y1>y2)。そして、上記に式によれば、第1ヘッド41(1)の罫線間距離d(1)は、「y1−y2(>0)」となる。罫線間距離dが0よりも大きい場合、往路罫線が復路罫線よりもy方向の+Δy側(紙幅方向の手前側)に形成されたということである(図8)。逆に、罫線間距離dが0よりも小さい場合、往路罫線が復路罫線よりもy方向の−Δy側(紙幅方向の奥側)に形成されたということである。
【0045】
こうして、補正値取得プログラムは、各ヘッド41によって各々形成された往路罫線と復路罫線のy方向の位置の差である罫線間距離dを算出する。ここでは、14個のヘッド41に往路罫線と復路罫線を形成させたため、14個の罫線間距離dが算出される。なお、テストパターンをスキャナーに読み取らせた結果に基づいて罫線間距離dを算出するに限らず、例えば目視により罫線間距離dを計測してもよい。
【0046】
<S005:補正値Hの算出>
次に、補正値取得プログラムは補正値Hを算出する。本実施形態では、往路と復路のヘッドユニット40の傾きの違いによる往路と復路のドット形成位置ずれを補正するために、往路と復路の間にてヘッドユニット40をY方向(紙幅方向)に移動する際の移動量を補正する(詳細は後述)。そのため、ヘッドユニット40は複数のヘッド41を有するが、ヘッド41ごとに往路と復路の着弾位置を補正することは出来ず、ヘッドユニット40全体で往路と復路の着弾位置を補正することとなる。
【0047】
そこで、補正値取得プログラムは、各ヘッド41の罫線間距離dの平均値[=(d(1)+d(2)+…+d(8)+d(10)+…+d(15))/14]を算出し、その平均値を補正値Hとする。例えば、図8を用いて説明すると、各ヘッド41の罫線間距離dの平均値がd(1)であり、補正値Hが「+d(1)」として算出されたとする。この場合、往路罫線に対して復路罫線は紙幅方向の奥側に印刷されるため、往路印刷の後に(復路印刷の前に)ヘッドユニット40を紙幅方向の手前側に移動させる際に、設計上の移動量よりも補正値H(=d(1))分だけ多くヘッドユニット40を手前側に移動させる。そうすることで、往路罫線に対して復路罫線が紙幅方向の奥側にずれて印刷されてしまうことを防止できる。
【0048】
このように、本実施形態では、ヘッドユニット40の傾きによる往復の着弾位置ずれ(罫線間距離d)を補正する補正値Hを、ヘッドユニット40に対して1個だけ算出するにも拘らず、ヘッドユニット40に属する複数のヘッド41により往路罫線と復路罫線を印刷させる。そして、複数のヘッド41の各罫線間距離dを算出し、その平均値を補正値Hとする。このように、複数のヘッド41の各罫線間距離dの平均値に基づいて補正値Hを算出することで、ヘッド41やノズルの特性差を緩和した補正値Hを算出することができる。つまり、ヘッドユニット40が有する複数のヘッド41に対して平均的に補正効果が得られる補正値Hを算出できる。
【0049】
<S006:補正値Hの記憶>
最後に、補正値取得プログラムは、算出した補正値Hをプリンター1のメモリー13に記憶させる。補正値Hを記憶したプリンター1は工場から出荷される。なお、補正値取得プログラムが補正値Hをメモリー13に記憶させるに限らず、補正値取得プログラムが算出した補正値Hを、例えば検査者がプリンター1のメモリー13に記憶させてもよい。また、ここではプリンター1の製造工程において補正値Hを算出するとしているが、これに限らず、メンテナンス時にユーザーのもと等においても、補正値取得プログラムが補正値Hを算出する場合がある。
【0050】
なお、駆動ユニット30(Y軸ステージ32)の特性によって、ヘッドユニット40をY方向(紙幅方向)へ移動する設計上の移動量と実際の移動量に誤差が生じることがある。例えば、目標位置に対してヘッドユニット40が多く(手前側に)移動してしまう場合、ヘッドユニット40の設計上の移動量よりも少ない移動量に補正することで、ヘッドユニット40を目標位置に移動させることができる。プリンター1が、ここまでに算出した補正値Hの他に、駆動ユニット30の機械的誤差に対する補正値、即ち、ヘッドユニット40の移動量に対する補正値を有する場合、補正値取得プログラムは、それらの補正値を個別にプリンター1のメモリー13を記憶させてもよいし、両方の補正値を加味した補正値を記憶させてもよい。
【0051】
<テストパターンを印刷するノズルについて>
本実施形態では、往復の着弾位置ずれを補正する補正値Hを算出するために、ヘッドユニット40に属する複数のヘッド41により往路罫線および復路罫線を印刷させる。そして、各ヘッド41の往路罫線と復路罫線のy方向の位置の差(罫線間距離d)の平均値に基づいて、補正値Hを算出する。そうすることで、ヘッド41やノズルの特性差を緩和した補正値Hを算出することができる。以下、往路罫線および復路罫線を印刷するヘッド41やノズルの選定について説明する。
【0052】
図9は、設計上のドット形成位置に対する往路時および復路時のドット形成位置のずれを示す図である。なお、説明の簡略のため、ヘッド数およびノズル数を減らして描く。図9の左側には往路時のヘッドユニット40を示し、図9の中央にはヘッドユニット40(ノズル列方向)がY方向に対して傾かない様子を示し、図9の右側には復路時のヘッドユニット40を示す。設計上のドット形成位置とは、ヘッドユニット40がX方向への移動時に傾かない場合に形成されるドット位置である。即ち、図9の中央に示すヘッドユニット40のノズル位置が設計上のドット形成位置に相当する。
【0053】
慣性力の影響などにより、往路時のヘッドユニット40は左上角部を回転支点として、Y方向に対して時計回り方向に傾く。そのため、往路時のノズル位置(ドット形成位置)は、設計上のノズル位置(ドット形成位置)に対して、Y方向の手前側に位置する。例えば、図9の中央のヘッドユニット40の第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1(設計上のノズル位置)に対して、往路時の(左の)第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1は、距離S1だけY方向の手前側に位置する。これに対して、復路時のヘッドユニット40は左上角部を回転支点として、Y方向に対して反時計回り方向に傾く。そのため、復路時のノズル位置(ドット形成位置)は、設計上のノズル位置(ドット形成位置)に対して、Y方向の奥側に位置する。例えば、図9の中央の第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1に対して、復路時の(右の)第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1は、距離S3だけY方向の奥側に位置する。
【0054】
つまり、本実施形態のプリンター1では、往路時には設計上のドット形成位置に対してY方向の手前側にドットが形成され、復路時には設計上のドット形成位置に対してY方向の奥側にドットが形成される。そのため、同じヘッド41の同じノズルであっても往路時と復路時においてドット形成位置がY方向にずれる。
【0055】
なお、往路時には、ヘッドユニット40に属するヘッド41のうち、回転支点からY方向に離れるヘッド41(3)ほど、設計上のドット形成位置との差が小さくなる。例えば、回転支点に近い第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1と設計上の(中央の)第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1とのY方向の差S1の方が、回転支点から離れた第3ヘッド41(3)のブラックノズル#8と設計上の第3ヘッド41(3)のブラックノズル#8とのY方向の差S2よりも大きい(S1>S2)。これに対して、復路時には、ヘッドユニット40に属するヘッド41のうち、回転支点からY方向に離れるヘッド41(3)ほど、設計上のドット形成位置との差が大きくなる。例えば、回転支点に近い第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1と設計上の(中央の)第1ヘッド41(1)のブラックノズル#1とのY方向の差S3の方が、回転支点から離れた第3ヘッド41(3)のブラックノズル#8と設計上の第3ヘッド41(3)のブラックノズル#8とのY方向の差S4よりも小さい(S3<S4)。即ち、設計上のドット形成位置に対して、往路時にずれ量が大きくなるノズルでは復路時にずれ量が小さくなり、逆に往路時にずれ量が小さくなるノズルでは復路時にずれ量が大きくなる。そのため、Y方向のヘッド41(ノズル)位置の差によって、往復のドット形成位置のずれ量に大きな差は生じない。
【0056】
図10は、ヘッド41およびノズル列(YMCK)の違いによる往復のドット形成位置ずれの違いを示す図である。図中では、ブラックノズル列Kのドット形成位置(ノズル位置)を実線で示し、シアンノズル列Cのドット形成位置を点線で示し、マゼンタノズル列Mのドット形成位置を一点鎖線で示し、イエローノズル列Yのドット形成位置を二点鎖線で示す。
【0057】
ヘッドユニット40内において、第2ヘッド41(2)に着目する。往路時(図10の左図)には、ブラックKのドット形成位置が最もY方向手前側に位置し、次にシアンCのドット形成位置がY方向手前側に位置し、その次にマゼンタMのドット形成位置がY方向手前側に位置し、イエローYのドット形成位置が最もY方向の奥側に位置する。即ち、往路時にはヘッドユニット40の回転支点からX方向に離れたノズル列(例:ブラックノズル列K)のドット形成位置ほど、Y方向の手前側に位置する。一方、復路時(図10の右図)には、ブラックKのドット形成位置が最もY方向奥側に位置し、次にシアンCのドット形成位置がY方向奥側に位置し、その次にマゼンタMのドット形成位置がY方向奥側に位置し、イエローYのドット形成位置が最もY方向の手前側に位置する。即ち、復路時には、往路時とは逆に、ヘッドユニット40の回転支点からX方向に離れたノズル列(例:ブラックノズル列K)のドット形成位置ほど、Y方向の奥側に位置する。
【0058】
そのため、第2ヘッド41(2)では、ブラックノズル列Kの罫線間距離dk(往復のドット形成位置ずれ)が最も大きく、次にシアンノズル列Cの罫線間距離dcが大きく、その次にマゼンタノズル列Mの罫線間距離dmが大きく、イエローノズル列Yの罫線間距離dyが最も小さくなる(dk>dc>dm>dy)。つまり、回転支点からX方向に離れたノズル列ほど罫線間距離dが大きくなる。この傾向は、図10に示すように、他のヘッド41(1),41(3)にも当てはまる。
【0059】
ただし、第2ヘッド41(2)の罫線間距離dと、第1ヘッド41(1),第3ヘッド41(3)の罫線間距離dを比較すると、第2ヘッド41(2)の罫線間距離dの方が大きい。本実施形態のヘッドユニット40では構造上の問題により、図3に示すように、Y方向に隣り合うヘッド(例:ヘッド41(1),41(2))をX方向にずらして千鳥状に配置している。そのため、奇数ヘッド41(1),41(3)に比べて偶数ヘッド41(2)の方が、ヘッドユニット40の回転支点からX方向離れた位置に配置される。よって、偶数ヘッド41(2)では、奇数ヘッド41(1),41(3)よりも、往路時のノズル列はより紙幅方向の手前側に位置し、復路時のノズル列はより紙幅方向の奥側に位置する。その結果、偶数ヘッド41(2)の罫線間距離dの方が、奇数ヘッド41(1),41(3)の罫線間距離dよりも大きくなる。
【0060】
以上をまとめると、同じヘッドユニット40内に属するヘッド41やノズルであっても、ヘッドユニット40の回転支点からの距離(特にX方向の距離)によって、罫線間距離d(往復のドット形成位置ずれ量)が異なる。偶数ヘッド(X方向右側のヘッド)の方が奇数ヘッド(X方向左側のヘッド)よりも回転支点からX方向に離れているため、偶数ヘッドの方が奇数ヘッドよりも罫線間距離dが大きくなる。また、同じヘッド41内においてもブラックノズル列Kの方がイエローノズル列Yよりも回転支点からX方向に離れているため、ブラックノズル列Kの方がイエローノズル列Yよりも罫線間距離が大きくなる(dk>dy)。
【0061】
ところで、本実施形態では、往復のドット形成位置ずれ(罫線間距離d)を、ヘッドユニット40のY方向への移動量を補正することによって解消する。そのため、ヘッドユニット40内のヘッド41やノズルの位置によって往復のドット形成位置ずれ量が異なったとしても、往復のドット形成位置ずれに対する補正値Hはヘッドユニット40に対して1個である。そこで、ヘッド41やノズルの位置によって偏ることなく、往復のドット形成位置ずれを平均的に解消する補正値Hを算出する必要がある。そのため、テストパターン(往路罫線および復路罫線)を印刷するヘッド41やノズルの選定が重要となる。
【0062】
まず、テストパターン(往路罫線および復路罫線)を印刷する「ヘッド41」の選定について説明する。図10にて説明しているように、ヘッドユニット40内にて千鳥に配置されたヘッド41のうち、X方向右側の偶数ヘッド41の方がX方向左側の奇数ヘッド41に比べて、往復のドット形成位置のずれ量(罫線間距離d)が大きい。そのため、仮に、偶数ヘッド41にばかりにテストパターンを印刷させたり、奇数ヘッド41の数に比べて偶数ヘッド41の数を多くしてテストパターンを印刷させたりすると、平均した罫線間距離dが大きくなり、補正値Hも大きくなってしまう。そうすると、奇数ヘッド41のドット形成位置ずれは補正され過ぎて、補正効果が低減してしまう。また、逆に奇数ヘッド41ばかりにテストパターンを印刷させると、罫線間距離dおよび補正値Hが小さく、偶数ヘッド41における往復画像のずれの補正効果が低減してしまう。
【0063】
そこで、テストパターンを印刷する偶数ヘッド41の数と奇数ヘッド41の数を同数にすることが好ましい。図6に示すように、本実施形態では、第9ヘッド41(9)以外のヘッド41(1)〜41(8),41(10)〜41(15)にて、それぞれ往路罫線と復路罫線を印刷している。即ち、14個(偶数個)のヘッド41でテストパターンを印刷し、14個のヘッド41のうちの半分(7個)のヘッド41を偶数ヘッドとし、残りの半分(7個)のヘッド41を奇数ヘッドとしている。そうすることで、偶数ヘッドと奇数ヘッドにおいて罫線間距離dが異なるとしても、平均的な罫線間距離dに基づいて補正値Hを算出することができ、偶数ヘッドにおける往復画像のずれも、奇数ヘッドにおける往復画像のずれも、平均的に補正することができる。
【0064】
なお、ここでは、ヘッドユニット40中央の第9ヘッド41(9)を除いてテストパターンを印刷しているが、これに限らず、他の奇数ヘッド41を除いてもよい。また、テストパターンを印刷するヘッド41の選定は、補正値取得プログラムがヘッドユニット40の構成に基づいて行ってもよいし、補正値取得プログラムに対して検査者が任意に選定できるようにしてもよい。
【0065】
ただし、テストパターンを印刷する偶数ヘッド41の数と奇数ヘッド41の数を同数にするに限らない。各ヘッド41の罫線間距離dを算出した後に平均値化する際に、奇数ヘッドの罫線間距離dと偶数ヘッドの罫線間距離dを分けて平均値化すれば、テストパターンを印刷する偶数ヘッド41の数と奇数ヘッド41の数が異なってもよい。例えば、本実施形態のヘッドユニット40の場合、全ての15個のヘッド41を用いてテストパターンを印刷し、各ヘッド41の罫線間距離dを算出したとする。その後、8個の奇数ヘッド41の各罫線間距離dを平均値化し、7個の偶数ヘッド41の各罫線間距離dを平均値化する。そして、最後に、奇数ヘッド41の罫線間距離dの平均値と偶数ヘッドの罫線間距離dの平均値を平均値化し、その値に基づいて補正値Hを算出する。そうすることで、偶数ヘッド41または奇数ヘッド41のどちらかの罫線間距離dに偏った補正値Hが算出されてしまうことを防止でき、往復画像のずれをヘッド41によらずに平均的に補正することができる。
【0066】
なお、ここでは、多数(14個)のヘッド41にテストパターンを印刷させているが、これに限らない。例えば、ヘッドユニット40内の1個のヘッド41にてテストパターンを印刷させて、補正値Hを算出してもよい。この場合、補正値取得処理が容易となるが、そのヘッド41の特性の影響を受け易い。また、前述のように、偶数ヘッド41と奇数ヘッド41において罫線間距離dに差があるため、少なくとも、1個の偶数ヘッド41と1個の奇数ヘッド41にてテストパターンを印刷させることが好ましい。
【0067】
次に、テストパターンを印刷する「ノズルの選定」について説明する。図10にて説明しているように、ヘッド41に属するノズル列(YMCK)によって、往復のドット形成位置ずれ量(罫線間距離d)が異なる。ヘッドユニット40の回転支点(左上角部)からX方向に離れたノズル列(例:K)ほど罫線間距離dが大きく、回転支点からX方向に近いノズル列(列:Y)ほど罫線間距離dが小さい。言い換えると、ヘッド41内においてX方向中央部のシアンノズル列Cやマゼンタノズル列Mの罫線間距離dは、大き過ぎず小さ過ぎない。例えば、仮に、イエローノズル列Yだけでテストパターンを印刷させると、全ての罫線間距離dが小さく、補正値Hが小さくなってしまう。そうすると、イエローノズル列Yの往復画像のずれは補正できるが、ブラックノズル列Kの往復画像のずれの補正効果が低減してしまう。
【0068】
そこで、ヘッド41に属するノズル列のうちX方向(又はノズル列方向と交差する方向)の中央部に位置するノズル列、即ち、マゼンタノズル列Mまたはシアンノズル列Cによって、テストパターンを印刷することが好ましい。即ち、テストパターンを印刷するように選定された全てのヘッド41において、各ヘッド41のマゼンタノズル列Mに属する或る1個のノズルによって往路罫線および復路罫線を印刷してテストパターンを形成させるか、又は、選定された全てのヘッド41において、各ヘッド41のシアンノズル列Cに属する或る1個のノズルによって往路罫線および復路罫線を印刷してテストパターンを形成させる。そうすることで、ヘッド41が有するノズル列(YMCK)の各罫線間距離dのほぼ平均の罫線間距離dc,dmによって、補正値Hを算出することができる。その結果、ノズル列の種類によらずに、往復画像のずれを平均的に補正することができる。
【0069】
但しこれに限らず、ヘッド41に属するノズル列のうちX方向(又はノズル列方向と交差する方向)の両端に位置するノズル列、即ち、イエローノズル列Yおよびブラックノズル列Kによって、テストパターンを印刷させてもよい。図10に示すように、ヘッド41が有するノズル列のうち、一方端のイエローノズル列Yの罫線間距離dyが最も小さく、他方端のブラックノズル列Kの罫線間距離dkが最も大きくなる。そこで、イエローノズル列Yの罫線間距離dyとブラックノズル列Kの罫線間距離dkの平均値化し、その平均値に基づいて補正値Hを算出するとよい。具体的には、テストパターンを印刷するように選定された全てのヘッド41において、各ヘッド41のイエローノズル列Yに属する或る1個のノズルによって往路罫線および復路罫線を印刷してイエローのテストパターンを形成させ、選定された全てのヘッド41において、各ヘッド41のブラックノズル列Kに属する或る1個のノズルによって往路罫線および復路罫線を印刷してブラックのテストパターンを形成させる。そうして、テストパターンを印刷したヘッド41ごとに、イエローノズル列Yの罫線間距離dyとブラックノズル列の罫線間距離dkを算出し、それらを平均値化した値に基づいて補正値Hを算出する。そうすることで、ノズル列の種類によらずに、往復画像のずれをより平均的に補正することができるが、テストパターンを印刷する回数が増えたり、補正値Hの算出処理が複雑化したりする。
【0070】
なお、本実施形態では、ヘッドユニット40が傾くことにより、往路と復路のY方向のノズル位置(ドット形成位置)のずれを補正する補正値Hを算出する。そのため、あるノズルの往路と復路のY方向の位置ずれは、そのノズルがヘッドユニット40の回転支点からY方向にどの程度離れているかよりも、回転支点からX方向にどの程度離れているかの方が影響する。よって、ヘッド41内のどのノズル列(YMCK)を使用するかが重要となる。また、図6では、選定したノズル列に属するノズル(#1〜#180)のうちの中央部のノズルを使用してテストパターンを印刷しているが、これに限らず、ノズル列の端部のノズルを使用してもよい。ただし、テストパターンを印刷する全てのヘッド41において、罫線を形成するノズルのY方向の位置を同じにするとよい(即ち同じ番号のノズルで罫線を形成するとよい)。その結果、各ヘッド41にて印刷する罫線のY方向の間隔を出来る限り離すことができる。そうすることで、スキャナーで読み取った読取画像から各罫線の位置を算出する際に、誤ったヘッド41の罫線を認識して位置を算出してしまうことを防止でき、同じヘッド41に印刷された往路罫線と復路罫線の間隔を算出することができる。
【0071】
また、ここまで、テストパターンを印刷するヘッド41(図6では14個のヘッド41)は、全て同じノズル列を使用してテストパターンを印刷するとしている。図10に示すように、ノズル列(YMCK)によって罫線間距離dが異なるため、無作為にテストパターンを印刷するノズル列を選択すると、平均的に補正効果のある補正値Hを算出できない虞がある。そこで、テストパターンを印刷するように選定された全てのヘッド41に関して、同じノズル列を使用してテストパターンを印刷するとよい。また、テストパターンを印刷するように選定された全てのヘッド41に関して使用するノズル列を同じにすることで、テストパターンの印刷制御が容易となり、テストパターンを印刷するために製造工場などにおいてプリンター1に補充するインクの種類を少なくすることができる。
【0072】
ただし、これに限らず、少なくとも各ヘッド41が往路罫線と復路罫線を印刷するノズルを同じにすれば、例えば、テストパターンを印刷する14個のヘッド41のうち、半分のヘッド41はシアンノズル列Cによって往路罫線および復路罫線を印刷し、残り半分のヘッド41はマゼンタノズル列Mによって往路罫線および復路罫線を印刷してもよい。シアンノズル列Cにて印刷された罫線間距離dcも、マゼンタノズル列Mにて印刷された罫線間距離dmも、ヘッド41が有するノズル列(YMCK)の各罫線間距離dの平均的な値である。そのため、ヘッド41によってマゼンタノズル列Mを使用したりシアンノズル列Cを使用したりしても、平均的に補正効果の得られる補正値Hを算出できる。
【0073】
また、テストパターンを印刷する14個のヘッド41のうち、半分のヘッド41はイエローノズル列Yによって往路罫線および復路罫線を印刷し、残り半分のヘッド41はブラックノズル列Kによって往路罫線及び復路罫線を印刷してもよい。ただし、イエローノズル列Yの罫線間距離dyは狭く、ブラックノズル列Kの罫線間距離dkは広いため、イエローノズル列Yを使用するヘッド41数とブラックノズル列Kを使用するヘッド41数を同じにするとよい。そうすることで、ノズル列の種類によらずに平均的に補正効果の得られる補正値を算出できる。
【0074】
===往復のドット形成位置ずれの補正方法===
次に、ヘッドユニット40のX方向への移動時の傾きにより発生する往復のドット形成位置ずれに関する補正値Hを使用して、往復のドット形成位置ずれを補正する方法について説明する。本実施形態のプリンター1では、プリンター1内のコントローラー10が、メモリー13に記憶された補正値Hを使用して、ヘッドユニット40のY方向の移動量を補正する。
【0075】
図11は、往復のドット形成位置ずれを補正する様子を示す図である。図11では、1個のヘッド41を描き、ノズル数も減らして描き、双方向印刷の様子を示す。図11の左図は、ヘッドユニット40に傾きが発生しなかった場合の様子を示し、図11の中央図は、ヘッドユニット40に傾きが発生するが補正を実施しなかった場合の様子を示し、図11の右図は、ヘッドユニット40に傾きが発生し補正を実施した場合の様子を示す。なお、本実施形態のプリンター1は、図2に示すように、連続媒体Sの紙幅に対してヘッドユニット40のY方向の長さが長く、実際の印刷ではヘッドユニット40をヘッドユニット40の幅よりも短い移動量でY方向に移動することになる。ただし、図11では説明のため、ヘッドユニット40のY方向への移動量を大きくする。
【0076】
図11の左図に示す設計上の印刷では、コントローラー10は、往路のパス1でヘッド41のノズル#4に罫線を印刷させ、その後、ヘッド41をY方向の手前側に「設計上の移動量D」を移動させる。次に、コントローラー10は、復路のパス2でヘッド41のノズル#4に罫線を印刷させ、再び、ヘッド41をY方向の手前側に移動量Dを移動させる。即ち、コントローラー10は、往路時または復路時にヘッド41のノズル#4に罫線を印刷させる動作と、ヘッド41をY方向の手前側に設計上の移動量Dを移動させる動作と、を繰り返す。その結果、Y方向に所定の間隔Dおきに、即ちヘッド41の移動量Dおきに、ノズル#4による罫線が印刷される。
【0077】
しかし、本実施形態のプリンター1では図4に示すように、ヘッドユニット40のX方向への移動時にヘッドユニット40(ノズル列)がY方向に対して傾いてしまう。そのため、補正を実施しない場合、図11の中央図に示すように、往路時(パス1やパス3)では、設計上のドット形成位置に対してY方向の手前側の位置に罫線が形成され、復路時(パス2やパス4)では、設計上のドット形成位置に対してY方向の奥側の位置に罫線が形成される。そのため、パス1の罫線とパス2の罫線との間隔が設計上の罫線間隔Dよりも狭くなり、パス2とパス3の罫線間隔が設計上の罫線間隔Dよりも広くなる。なお、パス1とパス2の罫線間隔は設計上の罫線間隔Dよりも、前述の罫線間距離d(例えば図8のd(1))だけ狭くなる。逆に、パス2とパス3の罫線間隔は設計上の罫線間隔Dよりも罫線間距離dだけ広くなる。このように、各パスの罫線間隔が一定にならないと、往路で形成される画像と復路で形成される画像の繋ぎが悪く、印刷画像が劣化してしまう。
【0078】
そこで、本実施形態では、図11の右図に示すように、ヘッド41のY方向への移動量を補正し、各パスの罫線間隔を一定の値Dとする。この図11では、往路時に或るノズルに形成される罫線と復路時にそのノズルに形成される罫線のy方向のずれ量(即ち、罫線間距離)が「+d」であり、図8と同様に、往路罫線の方が復路罫線よりもY方向の手前側に形成されるとする。そして、プリンター1のメモリー13には、補正値Hとして「+d」が記憶されているとする。
【0079】
プリンター1のコントローラー10は、コンピューター60から印刷指令を受信した際に、その印刷を、単方向印刷で実施するのか、双方向印刷で実施するのかを判断する。そして、コントローラー10は、その印刷を単方向印刷(ヘッドユニット40をX方向の一方側に移動する時にのみ画像を形成する印刷)で実施すると判断した場合、ヘッドユニット40のY方向の移動量を補正値Hで補正することはない。単方向印刷の場合、ヘッドユニット40が同じ方向に傾くときに画像が形成されるため、補正を実施しなくとも先のパスの罫線と次のパスの罫線のY方向の間隔は一定の間隔Dとなる。よって、単方向印刷では補正値Hによってヘッドユニット40のY方向の移動量を補正する必要がない。
【0080】
一方、コントローラー10が、図11のように、双方向印刷を実施すると判断した場合、ヘッドユニット40のY方向の移動量を補正値H(=d)にて補正する。ここでは、往路時におけるヘッドユニット40のY方向の位置は補正せずに、復路時におけるヘッドユニット40のY方向の位置を補正する。そのため、コントローラー10は、往路時のパス1(印刷開始時)のヘッドユニット40のY方向の位置を、設計上のヘッドユニット40のY方向の位置と同じにする。図11にも示すように、左端のパス1の設計上のヘッド41も、右端のパス1の補正有りのヘッド41も、ヘッド41の左上角部(回転支点)が一点鎖線上に位置する。
【0081】
その後、本実施形態では、パス1(往路時)とパス2(復路時)の間にヘッド41をY方向の手前側に移動させる際に、設計上の移動量Dよりも補正値H分(罫線間距離d、往復のずれ量d)だけ長い距離D+dを移動させる。即ち、復路時のパス2ではヘッド41(ヘッドユニット40)のY方向の位置を、設計上の位置よりも罫線間距離d分だけ(補正値H分だけ)Y方向の手前側にする。図11にも示すように、パス2の設計上のヘッド41の回転支点は一点鎖線上に位置するのに対して、パス2の補正有りのヘッド41の回転支点は、一点鎖線よりもY方向手前側の実線上に位置する。こうすることで、パス1の往路時には設計上のドット形成位置よりもY方向手前側に罫線が形成され、パス2の復路時にはノズルがY方向の奥側にずれようとも、パス1とパス2の罫線間隔を設計上の罫線間隔Dにすることができる。
【0082】
その後、パス2(復路)とパス3(往路)の間にヘッド41をY方向の手前側に移動させる際に、設計上の移動量Dよりも補正値H分だけ短い距離D−dを移動させる。そうして、往路時のパス3では、ヘッド41のY方向の位置を設計上のヘッド41の位置と同じにする。図11にも示すように、パス3の設計上のヘッド41の回転支点は一点鎖線上に位置し、パス3の補正有りのヘッド41の回転支点も一点鎖線上に位置する。パス1とパス2の間のヘッド41の移動量を補正値H(=d)分だけ長くしたため、補正を実施したパス2の罫線は、補正を実施しないパス2の罫線よりもY方向の手前側に位置する。そのため、パス3のヘッド41のY方向の位置を設計上の位置とし、パス3のノズルがY方向の手前側に位置しようとも、パス2とパス3の罫線間隔を設計上の罫線間隔Dにすることができる。
【0083】
その後も同様に、先の往路と次の復路の間のヘッド41の移動量は設計上の移動量Dよりも補正値H分だけ長い移動量D+dとし、逆に、先の復路と次の往路の間のヘッド41の移動量は設計上の移動量Dよりも補正値H分だけ短い移動量D−dとする。
【0084】
前述のように(図8)、補正値H(罫線間距離d)は、「往路罫線のy方向の位置−復路罫線のy方向の位置」により算出され、補正値Hがプラスの値である時、往路罫線の方が復路罫線よりもY方向の手前側に形成され、補正値Hがマイナスの値である時、往路罫線の方が復路罫線よりもY方向の奥側に形成される。そして、本実施形態では、往路時の後のヘッドユニット40の移動量を、設計上の移動量Dに補正値H(罫線間距離d)を加算した値(D+d)とする。例えば、図11では、補正値Hがプラスの値であり、補正を実施しない場合、パス1の往路罫線に対してパス2の復路罫線がY方向奥側に位置し、罫線間隔が狭くなる。そこで、パス1の往路時とパス2の復路時の間のヘッド41の移動量を、設計上の移動量Dにプラスの補正値Hを加算した値、即ち、設計上の移動量Dよりも長い移動量にすることで、パス1とパス2の罫線間隔を広い間隔(設計上の間隔D)に補正できる。なお、図示しないが、補正値Hがマイナスの値であり、補正を実施しない場合、パス1の往路罫線に対してパス2の復路罫線がY方向手前側に位置し、罫線間隔が広くなる。そこで、ヘッド41の移動量を、設計上の移動量Dにマイナスの補正値Hを加算した値、即ち、設計上の移動量Dよりも短い移動量にする。そうすると、パス1とパス2の罫線間隔を狭い間隔(設計上の間隔D)に補正できる。
【0085】
そして、復路時の後のヘッドユニット40の移動量を、設計上の移動量Dから補正値H(罫線間距離d)を減算した値とする。例えば、図11では、補正値Hがプラスの値であり、補正を実施しない場合、パス2の復路罫線に対してパス3の往路罫線がY方向手前側に位置し、罫線間隔が広くなる。ただし、補正を実施する場合、パス2の前のヘッド41の移動時にヘッド41の移動量を長くし、パス2の復路罫線をY方向の手前側に形成する。よって、パス2の復路時とパス3の往路時の間のヘッド41の移動量を、設計上の移動量Dにプラスの補正値Hを減算した値、即ち、設計上の移動量Dよりも短い移動量とし、パス3のヘッド41のY方向の位置を設計上の位置としても、パス2とパス3の罫線間隔を狭い間隔(設計上の間隔D)に補正できる。
【0086】
このように本実施形態では、往路時の後のヘッドユニット40の移動量に補正値Hを加算し、復路時の後のヘッド41の移動量から補正値Hを減算して、印刷を行う。この場合、ヘッドユニット40の合計移動量は、設計上の合計移動量と同じとなり、また、印刷開始時を往路時とすると、往路時のヘッドユニット40のY方向の位置は設計上のヘッドユニット40の位置となる。即ち、往路時(例:パス1)のドット形成位置は補正しないが(ノズル列と媒体との所定方向の相対位置を設計上の相対位置とし)、往路と復路の間のヘッドユニット40の移動量を補正し、復路時(例:パス2)のドット形成位置を補正する(ノズル列と媒体との所定方向の相対位置を設計上の相対位置から補正値の長さ分を補正する)とも言える。このように、ヘッドユニット40の媒体に対するY方向への移動量を補正することで、往路時の画像と復路時の画像のY方向の間隔を、設計上の間隔と同じにすることができ、印刷画像の劣化を抑制できる。ただし、これに限らず、印刷開始時を復路時として、復路時のヘッドユニット40のY方向の位置を設計上のヘッドユニット40の位置としてもよい。
【0087】
図12は、往路時にも復路時にもヘッド41のY方向の位置を補正する様子を示す図である。前述の図11では、往路時(例:パス1)のドット形成位置が設計上のドット形成位置よりもY方向の手前側に位置するが、設計上のヘッド位置に対して、往路時のヘッド位置は補正せず、復路時のヘッド位置だけを補正する。そのため、媒体に対する印刷画像の位置が全体的にY方向の手前側に位置する。そこで、図12では、往路時(印刷開始時)のヘッド41のY方向の位置をY方向の奥側にずらし、媒体に対する印刷画像の位置を設計上の位置と同じにする。
【0088】
図11および図12に示すように、往路時のドット形成位置は設計上のドット形成位置よりも「距離α(別の補正値に相当)」だけY方向の手前側に位置する。なお、復路時のドット形成位置は設計上のドット形成位置よりも「距離β」だけY方向の奥側に位置し、距離αと距離βの合計量が補正値H(罫線間距離d=α+β)に相当する。この場合、往路時(パス1・パス3)のヘッド41のY方向の位置を設計上のヘッド41のY方向の位置よりも距離αだけY方向の奥側の位置とし、復路時(パス2・パス4)のヘッド41のY方向の位置を設計上のヘッド41のY方向の位置よりも距離βだけY方向の手前側の位置とすればよい。
【0089】
そのために、コントローラー10は、印刷開始時のパス1(往路時)において、設計上の印刷開始位置よりも、ヘッドユニット40が距離αだけY方向の奥側に位置するように補正する。この場合にも、往路時の後のヘッドユニット40の移動量(D+d)は設計上の移動量Dに補正値Hを加算した移動量とし、復路時の後のヘッド41の移動量(D−d)は設計上の移動量Dに補正値Hを減算した移動量とする。そうすることで、往路時の画像と復路時の画像のY方向の間隔(往路時と復路時の罫線間隔D)を、設計上の間隔と同じにすることができ、印刷画像の劣化を抑制できる。また、媒体に対する印刷画像の位置を設計上の位置と同じにすることができる。
【0090】
このように、印刷開始時(往路時)のヘッドユニット40の位置を補正するためには、図9に示すように、設計上のドット形成位置に対する往路時および復路時のドット形成位置のずれ量を算出する必要がある。例えば、図9において、ヘッド41(1)のノズル#1に着目すると、往路時のドット形成位置は設計上のドット形成位置に対して距離S1(距離αに相当)だけY方向手前側に位置する。そのため、往路時のヘッドユニット40のY方向の位置(印刷開始位置)を設計上のヘッドユニット40の位置よりも距離S1だけY方向の奥側にずらすとよい。なお、本実施形態のプリンター1では、図9に示すように、往路時には回転支点からY方向に離れるヘッド41(3)ほど設計上のドット形成位置との差が小さく(S1>S2)、復路時には回転支点からY方向に離れるヘッド41(3)ほど設計上のドット形成位置との差が大きくなる傾向があった(S3<S4)。そのため、往路時(印刷開始時)のヘッドユニット40の位置の補正量(図12の距離α)は、ヘッドユニット40に属するヘッド41のうち、Y方向の中央部のヘッド41のドット形成位置と設計上のドット形成位置とのずれ量にて算出するとよい。
【0091】
また、コントローラー10は、往路時(印刷開始時)においてヘッドユニット40が設計上の印刷開始位置よりも補正値Hの半分の長さだけY方向の奥側に位置するように補正し、復路時においてヘッドユニット40の位置が設計上の印刷開始位置よりも補正値Hの半分の長さだけY方向の手前側に位置するように補正してもよい。そうすることで、媒体に対する印刷画像の位置を図11に比べて設計上の位置に近づけることができ、別の補正値(図12の距離αや距離β)を算出する必要がない。
【0092】
ただし、図11に示すように、往路時のヘッド41を設計上のヘッド41の位置と同じにしても、設計上のドット形成位置に対する往路時のドット形成位置のずれ量αは微小であり、媒体に対する印刷画像の位置が、そのずれ量αだけずれたとしても大きな問題にならない。また、本実施形態のプリンター1は図2に示すように連続媒体Sに対して印刷画像を印刷するため、通常、後の工程において連続媒体Sから印刷画像が切り抜かれる。よって、媒体に対する印刷画像の位置がずれたとしても大きな問題にはならない。
【0093】
===変形例===
前述の実施形態では、図2に示すように、印刷領域に搬送された連続用紙Sに対して、連続用紙Sの搬送方向(X方向)にヘッドユニット40を移動しながら画像を形成する動作と、紙幅方向(Y方向)にヘッドユニット40を移動する動作と、を交互に繰り返すプリンター1を例に挙げているがこれに限らない。例えば、媒体(単票紙)に対してヘッド41(1個または複数のヘッド41)をノズル列方向と交差する移動方向に移動しながら画像を形成する動作と、媒体をノズル列方向に搬送する動作と、を交互に繰り返すプリンター1であってもよい。このようなプリンターにおいても、双方向印刷を実施する場合に、往路時と復路時でヘッド41の傾きが異なり、往路と復路のノズル列方向のドット形成位置がずれる場合がある。その場合には、前述の実施形態と同様に、往復のドット形成位置のずれ量(罫線間距離d)に基づいて、媒体の搬送量を補正するとよい。
【0094】
なお、往路と復路のノズル列方向のドット形成位置ずれを補正するために、前述の実施形態のプリンター1では、媒体に対するヘッドユニット40の移動量を補正し、この変形例のプリンターでは、ヘッド41に対する媒体搬送量を補正する。即ち、本実施形態では、ヘッド41と媒体のノズル列方向の相対移動時に往路と復路のドット形成位置ずれを補正する。ここで、媒体に対してヘッド41をノズル列方向に移動することも、ヘッド41に対して媒体をノズル列方向に移動することも出来るプリンターである場合、媒体に対してヘッド41を移動する際に往復のドット形成位置ずれの補正を実施すると良い。これは、ヘッド41が傾くことにより発生する往復のドット形成位置のずれ量は微小であり、ヘッド41と媒体のノズル列方向への相対移動時の補正を精度良く行う必要があるからである。ヘッド41に対して媒体を搬送する場合、媒体の種類などによって搬送ローラー上での媒体のすべり易さなどが若干異なる。そのため、媒体に対してヘッド41を移動する方が、媒体の種類などに関係なく、往復のドット形成位置ずれの補正を精度よく実施することができる。即ち、前述の実施形態のプリンター1(図2)では往復のドット形成位置ずれの補正を精度よく実施できる。
【0095】
また、前述の実施形態では、図10に示すように、ヘッドユニット40の左上角部を回転支点とし、ヘッドユニット40のY方向に対する回転角度を往路時と復路時で同じにしている。その結果、全てのヘッド41において、往路時のドット形成位置が復路時のドット形成位置に対してY方向の手前側に位置している。そのため、図11に示すように、例えば、往路時(パス1)と復路時(パス2)の間の搬送量を長くすることで、往路画像と復路画像の間隔が一定となるように補正できる。ただし、実際のプリンター1では、回転支点がずれたり、往路時と復路時のヘッドユニット40の傾きに偏りが生じたり、個々のヘッド41が傾いてヘッドユニット40に取り付けられたりすることが考えられる。もし、全てのヘッド41において、往路時のドット形成位置に対する復路時のドット形成位置がY方向の同じ側(図10では奥側)にずれない場合、ヘッドユニット40の本体部に対して、複数のヘッド41が取り付けられたベースプレートの角度を調整したり、各ヘッド41の傾きを調整したりするとよい。
【0096】
===その他の実施の形態===
上記の各実施形態は、主としてインクジェットプリンターを有する印刷システムについて記載されているが、ドット形成位置の調整方法等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0097】
<流体噴射装置について>
前述の実施形態では、流体噴射装置としてインクジェットプリンターを例示していたが、これに限らない。流体噴射装置であれば、プリンター(印刷装置)ではなく、様々な工業用装置に適用可能である。例えば、布地に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等のディスプレイ製造装置、チップへDNAを溶かした溶液を塗布してDNAチップを製造するDNAチップ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21 搬送ローラー、
30 駆動ユニット、31 X軸ステージ、32 Y軸ステージ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
50 検出器群、60 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)流体を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列と、
(B)前記ノズル列を前記所定方向と交差する移動方向に移動する第1機構と、
(C)前記ノズル列と媒体とを前記所定方向に相対移動させる第2機構と、
(D)前記第1機構によって前記ノズル列が前記移動方向の一方側から他方側へ移動する際に前記ノズル列に属する或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、前記第1機構によって前記ノズル列が前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、の前記所定方向の間隔に基づく、補正値を記憶する記憶部と、
(E)前記第1機構が前記ノズル列を前記移動方向の前記一方側から前記他方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第1動作後に、前記第2機構が前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、前記第1機構が前記ノズル列を前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第2動作後に、前記第2機構が前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、を制御する制御部であって、
前記記憶部に記憶された前記補正値によって、前記ノズル列と前記媒体の前記所定方向への相対移動量を補正する制御部と、
(F)を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置であって、
前記第1動作時に前記或るノズルから噴射された流体の前記所定方向の着弾位置から前記第2動作時に前記或るノズルから噴射された流体の前記所定方向の着弾位置を減算した値を、前記補正値として記憶し、
前記第1動作後に前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる量に前記補正値を加算して補正し、
前記第2動作後に前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる量に前記補正値を減算して補正する、
流体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記第1動作時と前記第2動作時のうちの何れか一方の動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記補正値の長さ分を補正し、
他方の動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置とする、
流体噴射装置。
【請求項4】
請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記第1動作時と前記第2動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の各相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記補正値の半分の長さ分を補正する、
流体噴射装置。
【請求項5】
請求項2に記載の流体噴射装置であって、
前記或るノズルから噴射される流体の設計上の着弾位置と、前記第1動作時に前記或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、の前記所定方向の間隔を、前記記憶部が別の補正値として記憶し、
前記第1動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記別の補正値の長さ分を補正し、
前記第2動作時において、前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置を、設計上の前記ノズル列と前記媒体との前記所定方向の相対位置から前記補正値と前記別の補正値の差の長さ分を補正する、
流体噴射装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記ノズル列を前記移動方向の一方向側に移動する際に前記ノズルから流体を噴射させて、前記ノズル列を前記移動方向の他方向側に移動する際には前記ノズルから流体を噴射させない場合、
前記補正値によって、前記ノズル列と前記媒体の前記所定方向への相対移動量を補正しない、
流体噴射装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の流体噴射装置であって、
前記制御部は、前記補正値によって、前記媒体に対する前記ノズル列の前記所定方向への移動量を補正する、
流体噴射装置。
【請求項8】
流体を噴射するノズルが所定方向に並んだノズル列を有する流体噴射装置の流体噴射方法であって、
前記ノズル列を前記所定方向と交差する移動方向の一方側から他方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第1動作後に、前記ノズル列と媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、前記ノズル列を前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記ノズルから流体を噴射させる第2動作後に、前記ノズル列と前記媒体とを前記所定方向に相対移動させる処理と、を繰り返し、
前記ノズル列が前記移動方向の一方側から他方側へ移動する際に前記ノズル列に属する或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、前記ノズル列が前記移動方向の前記他方側から前記一方側へ移動する際に前記或るノズルから噴射される流体の着弾位置と、の前記所定方向の間隔に基づく、補正値によって、前記ノズル列と前記媒体の前記所定方向への相対移動量を補正する、
ことを特徴とする流体噴射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−110865(P2011−110865A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270681(P2009−270681)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】